【実施例】
【0015】
次に、本発明の実施例について
図1〜
図6を参照して説明する。但し、説明する各部の構造、形状、数量等は例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0016】
本実施例の可変動弁機構は、カム1で押圧されて揺動する入力アーム2と、揺動してバルブ3を押圧する出力アーム4と、出力アーム4に変位可能に設けられたロックピン5と、ロックピン5を入力アーム2の空揺動軌跡にかかるロック位置に変位させる駆動装置6と、ロックピン5を入力アーム2の空揺動軌跡にかからないロック解除位置に変位させるリターンスプリング7と、ロックピン5がロック解除位置にあるときの入力アーム2の空揺動を制動するロストモーションスプリング8とを含み構成されている。
【0017】
カム1は、断面形状が円形のベース円11と、該ベース円11から突出したノーズ12とから構成されている。
【0018】
出力アーム4は、アウタアームであって、先後方向に延び幅方向に互いに離間した二つの側壁13と、二つの側壁13の後部の間を連結する基部14と、二つの側壁13の先端部の下部の間を連結する作用部15とを備え、これらは鋼材により一体に形成されている。二つの側壁13の中間部の間と先端上部の間は空所である。基部14の下面には半球状凹部16が凹設され、該半球状凹部16が、シリンダヘッド17に装着された油圧式ラッシュアジャスタ18の上端の半球部19に摺動可能に嵌合されることにより、出力アーム4は半球部19を中心にして揺動可能に支持されている。作用部15の下面はバルブ押圧面である。
【0019】
基部14には先後方向に延びるピン穴20が貫設され、ピン穴20は丸穴であり、後側の内径が大きい大径部と、先側の内径が小さい小径部と、それらの間の段部とからなる。
【0020】
入力アーム2は、インナアームであって、出力アーム4の二つの側壁13の間(空所内)に配設されている。入力アーム2は、先後方向に延び幅方向に互いに離間した二つの側板21と、二つの側板21の後部の間を連結する後端部22とを備え、これらは鋼材により一体に形成されている。さらに入力アーム2は、二つの側板21の中間部に通されたローラ軸23と、ローラ軸23にニードルベアリング24を介して回転可能に取り付けられたローラ25とを備え、ローラ25の上端は二つの側板21の上端よりも上方にあってカム1が当接する。二つの側板21の先端付近は、出力アーム4の2つの側壁13の先端付近の間に挿着された揺動軸26に回動可能に軸着され、もって入力アーム2は出力アーム4に対して揺動可能に軸着されている。各側板21の先端上部にはスプリング掛合部27が設けられている。
【0021】
入力アーム2の後端部22の上面は、上向きの押返し面28となっている。また、入力アーム2の後端部22の後端面下部は側面視で矩形に切り欠かれ、その切欠天面が前記押返し面28より下にある下向きの被係止面29となっている。
【0022】
ロックピン5は、出力アーム4のピン穴20に変位可能に挿入され、ピン穴20よりも長い。ロックピン5は概ね丸棒であり、後側の外径が大きい大径部と、先側の外径が小さい小径部と、それらの間の段部とからなる。ロックピン5の先端部の下部は側面視で斜めに切り欠かれ、その切欠面が斜め下向きの押戻し面31となっている。また、ロックピン5の先端部の上部は側面視で矩形に切り欠かれ、その切欠面が前記押戻し面31より上にある上向きの係止面32となっている。
【0023】
駆動装置6は、出力アーム4の後方外部に設けられた外部駆動装置であって、出力アーム4の後方へ突出したロックピン5を押し込んでロック位置に変位させる。駆動装置6は、駆動源としての電磁ソレノイド(図示略)と、駆動源により駆動されて移動しロックピン5を押し込む移動子34とを含み構成されている。電磁ソレノイドによる駆動力は、
図6(b)に示すように、ロストモーションスプリング8が入力アーム2
を上へ空揺動させて押返し面28で押戻し面31を押戻す力には負け(すなわち弱く)(移動子34が一旦空移動して、入力アーム2と出力アーム4はロック準備状態となる)、且つ、リターンスプリング7がロックピン5を変位させる荷重には勝つ(すなわち強い)(該空移動後に移動子34がロック位置方向へ移動して、入力アーム2と出力アーム4はロック状態となる)ように、設定されている。
【0024】
また、本実施例は複数気筒の内燃機関の可変動弁機構であって、1つの電磁ソレノイドを複数気筒で共用し、該1つの電磁ソレノイドで複数気筒の各移動子34を一括して駆動するようになっている。よって、コスト面で有利である。前述のとおり、電磁ソレノイドによる駆動力はロストモーションスプリング8が押返し面28で押戻し面31を押戻す力には負ける程度でよいことから、このような共用が容易である。
【0025】
リターンスプリング7は、ロックピン5の外周に装着されて、ロックピン5の段部とピン穴20の段部との間で伸縮するコイルスプリングであり、ロックピン5をロック解除位置方向へ付勢している。
【0026】
駆動装置6がロックピン5を押圧しないとき、
図2(a)に示すように、リターンスプリング7は伸長してロックピン5をロック解除位置に変位させ、係止面32は被係止面29から外れるため、入力アーム2と出力アーム4はロック解除状態となる。このとき、ロックピン5の先端はほぼピン穴20内にあり、ロックピン5の後端は出力アーム4の後方へ突出している。
駆動装置6がロックピン5を押圧してロック位置に変位させたとき、
図2(b)に示すように入力アーム2が上にある場合には、直ちに係止面32が被係止面29に係止して、入力アーム2と出力アーム4はロック状態となり、
図6(b)に示すように入力アーム2が下にある場合には、入力アーム2と出力アーム4は、一旦、後述するロック準備状態となり、入力アーム2が上に来てからロック状態となる。
【0027】
ロストモーションスプリング8は、入力アーム2の揺動軸26の外周に装着され
たねじりコイルばねである。このねじりコイルばねは、コイル中央部36が入力アーム2の作用部15の上面に回転しないように当接して係止され、該コイル中央部36を境にして一方に左巻きコイル部37、他方に右巻きコイル部38とされた複合コイルであり、左巻きコイル部37からの延出部39が一方の側板21のスプリング掛合部27に掛合され、右巻きコイル部38からの延出部39が他方の側板21のスプリング掛合部27に掛合されている。入力アーム2が下に揺動すると、左巻きコイル部37と右巻きコイル部38がそれぞれ撓んで、入力アーム2をカム1に付勢する付勢力が生じる。
【0028】
以上のように構成された本実施例は、入力アーム2と出力アーム4が、ロック状態ではスイングアームタイプのローラアームとして動作してバルブ3を押圧し、ロック解除状態では休止してバルブ3を押圧しないタイプの可変動弁機構である。以下、この作用効果を詳しく説明する。
【0029】
(1)作動時の動作
図3(a)に示すように、ベース円区間(カム1のベース円11がローラ25に当接する区間)に、駆動装置6によりロックピン5を押し込んでロック位置に移動させており、係止面32は被係止面29に下から係止し、入力アーム2と出力アーム4はロック状態となっている。
図3(b)に示すように、ノーズ区間(カム1のノーズ12がローラ25に当接する区間)に、カム1は入力アーム2と共に出力アーム4を押し下げ、出力アーム4はバルブスプリング9の荷重に抗して半球部19を中心に揺動し、バルブ3をリフトする。ロックピン5はリフト開始と同時に入力アーム2から荷重を受け、セルフロック(前記係止が保持)されるため、該揺動により移動子34とロックピン5とが離れても、出力アーム4はバルブ3をリフトする(作動)。
図3(c)に示すように、再びベース円区間において、ロックピン5は入力アーム2からの荷重が抜け、ロック解除しようとするが、駆動装置6によりロックピン5は押し込まれているため、ロック解除されない。
【0030】
(2)休止時の動作
図4(a)に示すように、ベース円区間に、駆動装置6は、移動子34がロックピン5に接触しない位置まで下がっており、係止面32は被係止面29から外れ、入力アーム2と出力アーム4はロック解除状態となっている。
図4(b)に示すように、ノーズ区間に、ロック解除状態のため入力アーム2のみが空揺動し、出力アーム4はバルブ3をリフトしない(休止)。
図4(c)に示すように、ベース円区間に、駆動装置6の移動子34はロックピン5に接触しないため、リターンスプリング7によりロックピン5はロック解除状態を保持する。
【0031】
(3)作動時から休止時へ切り替えるときの動作
図5(a)に示すように、作動時のノーズ区間又はベース円区間に、駆動装置6の移動子34をロックピン5に接触しない位置まで下げる。
図5(b)に示すように、リフト終了と同時に、ロックピン5は入力アーム2からの荷重が抜け、リターンスプリング7によりロック解除位置に変位し、入力アーム2と出力アーム4はロック解除状態になる。
図5(c)に示すように、ノーズ区間に、ロック解除状態のため入力アーム2のみが空揺動し、出力アーム4はバルブ3をリフトしない。
【0032】
(4)休止時から作動時に切り替えるときの動作(その1)
図6(a)に示すように、休止時のノーズ区間に、駆動装置6によりロックピン5を押し込んでロック位置に変位させると、入力アーム2は下へ空揺動中なので、直ちに出力アーム4とロック状態にはならない。
図6(b)に示すように、ノーズ区間の後半に、ロストモーションスプリング8は入力アーム2
を上へ空揺動させて(駆動装置6の駆動力に抗して)押返し面28でロックピン5の押戻し面31を押戻す。すなわち、移動子34が一旦空移動して、入力アーム2と出力アーム4はロック準備状態となる。
図6(c)に示すように、ベース円区間になると、入力アーム2の上への空揺動が終わるので、駆動装置6が再びロックピン5を押し込んでロック位置に変位させ、係止面32が被係止面29に下から係止し、入力アーム2と出力アーム4はロック状態となる。よって、
図3(b)のように出力アーム4はバルブ3をリフトする。
【0033】
(5)休止時→作動時の動作(その2)
図2(b)に示すように、休止時のベース円区間に、駆動装置6によりロックピン5を押し込んでロック位置に変位させると、係止面32が被係止面29に下から係止し、入力アーム2と出力アーム4はロック状態となる。よって、
図3(b)のように出力アーム4はバルブ3をリフトする。
【0034】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)油圧式ラッシュアジャスタ18に代えて、ラッシュアジャスト機能のないピボットを用いてもよい。