(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る調光フィルム用透明導電フィルム(以下、透明導電フィルムと記載することがある)は、調光フィルムに用いられる。透明導電フィルムは、透明である。透明には半透明も含まれる。透明導電フィルムは、例えば、光透過性を有する。透明導電フィルムが光透過性を有するとは、例えば、波長550nmにおける全光線透過率が、好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上であることを意味する。
【0020】
本発明に係る透明導電フィルムは、基材フィルムと、導電層とを備える。上記導電層は、上記基材フィルムの一方の表面側に配置されている。
【0021】
本発明に係る透明導電フィルムでは、上記導電層が、インジウムスズ酸化物層(ITO層)である。
【0022】
本発明に係る透明導電フィルムでは、TOF−SIMS分析において、上記導電層の厚み方向の中央部におけるInOH
−イオンの強度の、全マイナスイオンの強度の合計に対する比(InOH
−イオンの強度/全マイナスイオンの強度の合計)が0.0005以下である。上記導電層の上記基材フィルム側とは反対の表面は、調光層が配置される側の表面である。上記導電層の上記基材フィルム側とは反対の表面は、例えば、調光層に接する側の表面である。
【0023】
本発明に係る透明導電フィルムでは、上記の構成が備えられているので、導電層の耐酸性が高く、酸性条件下に晒された導電層の抵抗値(シート抵抗値)の変化を抑制することができる。結果として、調光フィルムの調光性能の低下を抑制することができる。
【0024】
酸性条件下に晒された導電層の抵抗値の変化を抑制するためには、導電層の基材フィルム側とは反対の表面ではなく、導電層の厚み方向の中央部の上記の強度比を制御する必要があることが見出された。これは、酸性条件下に晒された導電層の表面が劣化したとしても、導電層の内部(中央部を含む領域)にて劣化が効果的に抑制されるので、導電層全体として劣化を抑制できるためであると考えられる。
【0025】
なお、TOF−SIMS分析において、上記導電層の厚み方向の中央部における強度比は、以下のように測定される。
【0026】
導電層の基材フィルム側とは反対の表面の同一地点にてC60スパッタを連続して行う。In
+イオンの検出数がSi
+イオンの検出数よりも少なくなったスパッタ回数が奇数である場合には、In
+イオンの検出数がSi
+イオンの検出数よりも少なくなったスパッタ回数の中央(半分)の回数時点での測定結果から、上記導電層の厚み方向の中央部における強度比を求める。In
+イオンの検出数がSi
+イオンの検出数よりも少なくなったスパッタ回数が偶数である場合には、In
+イオンの検出数がSi
+イオンの検出数よりも少なくなったスパッタ回数の中央の2つの回数時点での測定結果の平均値から、上記導電層の厚み方向の中央部における強度比を求める。
【0027】
TOF−SIMS分析において、上記導電層の厚み方向の中央部におけるInOH
−イオンの強度の全マイナスイオンの強度の合計に対する比を求める。導電層の耐酸性をより一層高める観点からは、上記比(InOH
−イオンの強度/全マイナスイオンの強度の合計)は、好ましくは0.0004以下、より好ましくは0.0003以下、更に好ましくは0.0002以下、特に好ましくは0.0001以下である。上記比(InOH
−イオンの強度/全マイナスイオンの強度の合計)は、通常0以上である。
【0028】
TOF−SIMS分析において、上記導電層の上記基材フィルム側とは反対の表面におけるH
3O
+イオンの強度のIn
+イオンの強度に対する比(H
3O
+イオンの強度/In
+イオンの強度)を求める。導電層の耐酸性をより一層高める観点からは、上記比(H
3O
+イオンの強度/In
+イオンの強度)は好ましくは0.05以下、より好ましくは0.04以下、更に好ましくは0.03以下、特に好ましくは0.02以下である。上記比(H
3O
+イオンの強度/In
+イオンの強度)は、通常0以上である。
【0029】
なお、TOF−SIMS分析において、上記導電層の上記基材フィルム側とは反対の表面における強度比は、1回目のスパッタでの測定結果から求められる。
【0030】
上記強度比を上記範囲に制御する方法としては、スパッタリングにより導電層を形成する場合にスパッタ時の全圧を制御する方法、スパッタリングにより導電層を形成する場合にスパッタ時の水分圧を制御する方法、及びRtRスパッタ時の成膜ロール(キャンロール)温度を制御する方法等が挙げられる。上記スパッタ時の全圧は、一般に装置の真空部の容積、真空ポンプの排気量、プラズマを発生させるために導入するArなどのガス流量等を調整することで制御することができる。また、上記スパッタ時の水分圧は、スパッタ成膜を開始するまでの真空保持時間、基材フィルムの事前乾燥処理方法、プラズマを発生させるために導入するArなどのガス流量等を調整することで制御することができる。また、上記RtRスパッタ時の成膜ロール温度は、成膜ロールに循環させる冷媒の温度等を調整することで制御することができる。
【0031】
上記透明導電フィルムは、アクリル樹脂を含む調光層に上記導電層が接するように用いられることが好ましい。本発明では、導電層がアクリル樹脂を含む調光層に接したとしても、導電層の抵抗値の変化を抑制することができる。なお、本発明では、導電層がアクリル樹脂を含まない調光層に接したとしても、導電層の抵抗値の変化を抑制することができる。
【0032】
上記透明導電フィルムは、アニール処理された透明導電フィルムであることが好ましい。
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る調光フィルム用透明導電フィルムを示す断面図である。
【0035】
図1に示す透明導電フィルム1は、調光フィルムに用いられる。
【0036】
透明導電フィルム1は、基材フィルム11と、導電層12とを備える。
【0037】
基材フィルム11は、光透過性を有する。基材フィルム11は、光透過性を有する材料により構成されている。基材フィルム11は、第1の表面11a及び第2の表面11bを有する。第1の表面11aと、第2の表面11bとは、互いに対向している。
【0038】
基材フィルム11の第1の表面11a側に、導電層12が配置されている。導電層12は、光透過性を有する。導電層12は、光透過性が高く、かつ導電性を有する材料により構成されている。導電層12は、基材フィルム11の第1の表面11a上に直接積層されている。導電層は、基材フィルムの第1の表面上に直接積層されていなくてもよい。例えば、導電層と基材フィルムの間に、アンダーコート層が配置されてもよい。
【0039】
本実施形態では、TOF−SIMS分析において、導電層12の厚み方向の中央部における上記比(InOH
−イオンの強度/全マイナスイオンの強度の合計)が上記上限以下である。
【0040】
また、
図1に示す透明導電フィルム1は、ロール状に巻かれていてもよい。
【0041】
光透過性をより一層高める観点からは、上記透明導電フィルムの波長550nmにおける全光線透過率は、好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上である。上記透明導電フィルムの波長550nmにおける全光線透過率は、通常100%以下である。
【0042】
上記全光線透過率は、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH−2000」、又はその同等品)を用いて、JIS K7105に基づいて、測定される。
【0043】
光透過性をより一層高める観点からは、上記透明導電フィルムのヘイズ値は、好ましくは1.3%以下、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.8%以下である。上記透明導電フィルムのヘイズ値は、通常0%以上である。
【0044】
上記ヘイズ値は、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH−2000」、又はその同等品)を用いて、JIS K7136に基づいて、測定される。
【0045】
以下、透明導電フィルムを構成する各層の詳細を説明する。
【0046】
(基材フィルム)
基材フィルムは、高い光透過性を有することが好ましい。従って、基材フィルムの材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリスルホン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、及びセルロースナノファイバー等が挙げられる。上記基材フィルムの材料は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0047】
基材フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上、好ましくは190μm以下、より好ましくは125μm以下である。基材フィルムの厚みが、上記下限以上及び上記上限以下である場合、調光フィルムの総厚みを薄くすることができ、かつ、調光フィルムの製造時のハンドリング性を良好にできる。
【0048】
基材フィルムの波長380〜780nmの可視光領域における平均透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。上記基材フィルムの波長380〜780nmの可視光領域における平均透過率は、通常100%以下である。
【0049】
また、基材フィルムは、各種安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤及び着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0050】
基材フィルムは、一方または両方の表面上に、ハードコート層を有していてもよい。
【0051】
上記ハードコート層の材料は、硬化樹脂であることが好ましい。上記硬化樹脂は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0052】
上記硬化樹脂としては、熱硬化樹脂、及び紫外線硬化樹脂等の活性エネルギー線硬化樹脂等が挙げられる。生産性及び経済性を良好にする観点から、上記硬化樹脂は、紫外線硬化樹脂であることが好ましい。
【0053】
上記紫外線硬化樹脂は、光硬化性モノマーが重合された樹脂であることが好ましい。上記紫外線硬化樹脂は、光硬化性モノマー以外のモノマーが重合された樹脂であってもよい。上記光硬化性モノマー及び上記光硬化性モノマー以外のモノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0054】
上記光硬化性モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジメタクリレート等のジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート等のトリアクリレート化合物;ペンタエリトリトールテトラアクリレート及びジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物;並びにジペンタエリトリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレート等のペンタアクリレート化合物等が挙げられる。上記紫外線硬化樹脂は、5官能以上の多官能アクリレート化合物であってもよい。上記多官能アクリレート化合物は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。また、上記多官能アクリレート化合物に、光開始剤、光増感剤、レベリング剤、及び希釈剤等を添加してもよい。
【0055】
上記ハードコート層は、フィラーを含んでいてもよい。上記ハードコート層は、上記硬化樹脂と上記フィラーとを含んでいてもよい。上記フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、シリカ、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化セリウム、インジウム−錫酸化物などの金属酸化物粒子;並びにシリコーン、(メタ)アクリル、スチレン、及びメラミン等を主成分とする樹脂微粒子等が挙げられる。上記樹脂微粒子として、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの樹脂微粒子を用いることができる。上記フィラーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0056】
(導電層)
導電層は、光透過性を有する導電性材料により形成されている。上記導電性材料は、ITO(インジウムスズ酸化物)である。
【0057】
導電層の厚みは、好ましくは12nm以上、より好ましくは16nm以上、更に好ましくは17nm以上、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、更に好ましくは19.9nm以下である。
【0058】
導電層の厚みが上記下限以上である場合、透明導電フィルムの導電層の表面抵抗値を効果的に低くすることができ、導電性をより一層高めることができる。導電層の厚みが上記上限以下である場合、透明導電フィルムをより一層薄くすることができる。
【0059】
透明導電フィルムの導電層の表面抵抗値(シート抵抗値)は、好ましくは150Ω/□以下、より好ましくは130Ω/□以下、更に好ましくは100Ω/□以下である。上記導電層の表面抵抗値は、通常0Ω/□以上である。上記導電層の表面抵抗値が上記上限以下であると、調光フィルムの駆動速度を向上させることができ、また、色調の変化のむらを抑えることができる。
【0060】
上記導電層の表面抵抗値は、上記導電層の基材フィルム側とは反対の表面側で、JIS K7194に基づいて、測定される。
【0061】
(アンダーコート層)
上記導電層と上記基材フィルムとの間に、アンダーコート層が配置されていてもよい。上記アンダーコート層は、例えば、屈折率調整層である。上記アンダーコート層が配置されることにより、導電層と基材フィルム(基材フィルムがハードコート層を有する場合は、導電層とハードコート層)との間の屈折率の差を小さくすることができるので、透明導電フィルムの光透過性をより一層高めることができる。
【0062】
アンダーコート層の材料は、屈折率調整機能を有する材料である限り特に限定されない。上記アンダーコート層の材料としては、SiO
2、MgF
2、Al
2O
3等の無機材料、並びにアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、及びシロキサンポリマー等の有機材料が挙げられる。
【0063】
アンダーコート層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法又は塗工法により形成することができる。
【0064】
アンダーコート層の材料が、SiO
2である場合、スパッタリング法などの成膜プロセスを調整することで、完全酸化されたSiO
2層と部分酸化されたSiO
x(0≦x<2)層とが積層されたアンダーコート層を形成することができる。具体的にはSiターゲットを用いてスパッタリング法によりSiO
2層を形成する際のO
2分圧を調整することで、Siの酸化度を調整することができる。また、アンダーコート層がSiO
x層である場合、導電層とSiO
2層との密着性、及び基材フィルムとSiO
2層との密着性を高めることができる。
【0065】
(保護フィルム)
上記基材フィルムの上記導電層側とは反対の表面上(他方の表面上)に保護フィルムが配置されていてもよい。
【0066】
保護フィルムは、基材フィルムシート及び粘着剤層により構成されていることが好ましい。
【0067】
上記基材フィルムシートは、高い光透過性を有することが好ましい。上記基材フィルムシートの材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリスルホン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、及びセルロースナノファイバー等が挙げられる。
【0068】
上記粘着剤層は、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系接着剤又はエポキシ系接着剤により構成することができる。熱処理による粘着力の上昇を抑制する観点から、上記粘着剤層は、(メタ)アクリル系粘着剤により構成されていることが好ましい。
【0069】
上記(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル重合体に、必要に応じて架橋剤、粘着付与樹脂及び各種安定剤などを添加した粘着剤である。
【0070】
上記(メタ)アクリル重合体は、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、他の共重合可能な重合性モノマーとを含む混合モノマーを共重合して得られた(メタ)アクリル共重合体であることが好ましい。
【0071】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜12の1級又は2級のアルキルアルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られる(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0072】
上記他の共重合可能な重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸及びフマル酸等の官能性モノマーが挙げられる。上記他の共重合可能な重合性モノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0073】
上記架橋剤としては、特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤、多官能アクリレート等が挙げられる。上記架橋剤は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0074】
上記粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体及び脂環式系共重合体等の石油系樹脂;クマロン−インデン系樹脂;テルペン系樹脂;テルペンフェノール系樹脂;重合ロジン等のロジン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂等が挙げられる。上記粘着付与樹脂は、水素添加された樹脂であってもよい。上記粘着付与樹脂は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0075】
保護フィルムの厚みは、好ましくは25μm以上、より好ましくは50μm以上、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。保護フィルムの厚みが、上記下限以上及び上記上限以下である場合、調光フィルムの施工性に優れ、かつ、製造時のハンドリング性を良好にできる。
【0076】
(調光フィルム)
本発明に係る調光フィルムは、第1の透明導電フィルムと、第2の透明導電フィルムと、調光層とを備える。上記調光層は、上記第1の透明導電フィルムと上記第2の透明導電フィルムとの間に配置されている。本発明に係る調光フィルムでは、上記第1の透明導電フィルム及び上記第2の透明導電フィルムの内の少なくとも一方が、本発明に係る透明導電フィルムである。上記第1の透明導電フィルム及び上記第2の透明導電フィルムの一方が、本発明に係る透明導電フィルムであってもよく、上記第1の透明導電フィルム及び上記第2の透明導電フィルムの双方が、本発明に係る透明導電フィルムであってもよい。
【0077】
図2は、
図1に示す調光フィルム用透明導電フィルムを用いた調光フィルムの一例を示す断面図である。
【0078】
調光フィルム21は、2つの透明導電フィルム1と、調光層31とを備える。2つの透明導電フィルム1の間に、調光層31が配置されている。透明導電フィルム1における導電層12は、調光層31に接している。
【0079】
調光フィルム21では、2つの透明導電フィルム1の導電層12間に、電界が印加される。電界が印加されている状態と、電界が印加されていない状態とで、調光フィルム21を通過する光量を変化させることができる。
【0080】
上記調光層は、アクリル樹脂を含んでいてもよい。上記調光層は、アクリル樹脂中に液晶分子を含んでいてもよい。導電層と調光層との密着性を効果的に高める観点からは、上記調光層はアクリル樹脂を含むことが好ましい。
【0081】
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例に基づき、更に詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0082】
(実施例1)
透明導電フィルムの作製:
基材フィルムとして、厚み125μmのPETフィルムを用意した。PETフィルムの一方の面にジルコニア粒子を分散したアクリル系ハードコート樹脂を塗布し、厚み1.0μmのハードコート層1を形成した。PETフィルムの他方の面に、アクリル系ハードコート樹脂を塗布し、厚み1.5μmのハードコート層2を形成した。このようにして、両面ハードコートフィルムを得た。
【0083】
この両面ハードコートフィルムを真空装置内に設置し、真空排気を実施した。真空度が9.0×10
−4Paまで到達した後、全圧が0.33Paになるようにアルゴンガスを導入し、プロセスガスモニタ(アルバック社製「Qulee CGM」)にて水分圧が0.0005Paになるまで待機した。次いで、DCマグネトロンスパッタリング法によりハードコート層1側からSiO
x層(2nm)、SiO
2層(16nm)、SiO
x層(2nm)をこの順で成膜し、その上にインジウムスズ酸化物(ITO)層を積層した。具体的には、RtRスパッタ装置の成膜ロール(キャンロール)温度を−10℃にし、SnO
2が7重量%のITO焼結体ターゲット、及びターゲット表面の最大水平磁束密度が1000ガウスとなるカソードを用いて、厚み17nmの導電層(インジウムスズ酸化物層)を形成した。その後熱風循環式オーブンにて150℃で、60分アニール処理を行うことで、光透過性導電フィルムを得た。
【0084】
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
導電層の形成条件(スパッタ全圧、スパッタ時の水分圧、及びロール温度)を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、透明導電フィルムを得た。なお、スパッタ全圧はアルゴン導入流量を調整することで制御した。スパッタ時の水分圧はスパッタ成膜を開始するまでの真空保持時間、及び両面ハードコートフィルムの事前乾燥処理方法(乾燥温度105℃)を調整することで制御した。
【0085】
(評価)
(1)TOF−SIMS分析
導電層の基材フィルム側とは反対の表面の同一地点にてC60スパッタを連続して行うことで、厚み方向の測定を行った。In
+イオンの検出数がSi
+イオンの検出数よりも少なくなったスパッタ回数の半分の回数時点での測定結果から、上記導電層の厚み方向の中央部における強度比(InOH
−イオンの強度/全マイナスイオンの強度の合計)を求めた。
【0086】
さらに、TOF−SIMS分析において、上記導電層の上記基材フィルム側とは反対の表面における1回目のスパッタでの測定結果から、強度比(H
3O
+イオンの強度/In
+イオンの強度)を求めた。
【0087】
TOF−SIMSの具体的な測定条件は以下の通りである。
【0088】
TOF−SIMS装置:ION−TOF社製、TOF−SIMS5型
一次イオン:209Bi
+1
イオン電圧:25kV
イオン電流:1pA
質量範囲:1〜500mass
分析エリア:500μm□
チャージ防止:電子照射中和
スパッタイオン:C60
イオン電圧:20keV
イオン電流:3nA
スパッタエリア:300μm□
【0089】
(2)耐酸性1の評価
透明導電フィルムを1重量%の塩酸に30分浸漬した。浸漬前後のシート抵抗値(導電層の表面抵抗値)の変化率を求めた。浸漬後のシート抵抗値Rsの浸漬前のシート抵抗値Rs0に対する比は1.0に近いほどよい。シート抵抗値は、三菱化学アナリテック社製「ロレスタAX MCP−T370」を用いて、JIS K7194に基づいて測定した。
【0090】
(3)耐酸性2の評価
透明導電フィルムを5重量%の塩酸に30分浸漬した。上記(2)耐酸性1の評価と同様にして、浸漬前後のシート抵抗値(導電層の表面抵抗値)の変化率を求めた。浸漬後のシート抵抗値Rsの浸漬前のシート抵抗値Rs0に対する比は1.0に近いほどよい。なお、シート抵抗値Rsが大きく悪化したことにより測定レンジ範囲外となり、測定結果が得られなかった場合に、表1に「測定できず」と記載した。
【0091】
(4)シート抵抗値(導電層の表面抵抗値)
得られた透明導電フィルムのシート抵抗値(導電層の表面抵抗値)を、三菱化学アナリテック社製「ロレスタAX MCP−T370」を用いて、JIS K7194に基づいて測定した。
【0092】
(5)全光線透過率
得られた透明導電フィルムの波長550nmにおける全光線透過率を、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH−2000」)を用いて、JIS K7105に基づいて、測定した。
【0093】
(6)ヘイズ値
得られた透明導電フィルムのヘイズ値を、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH−2000」)を用いて、JIS K7136に基づいて、測定した。
【0094】
導電層の形成条件、及び結果を下記の表1に示す。