特許第6985192号(P6985192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985192
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】複合材組立体
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20211213BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   F16B5/02 U
   B64C1/00 B
   B64C1/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-51610(P2018-51610)
(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公開番号】特開2019-163803(P2019-163803A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 良輔
(72)【発明者】
【氏名】須原 正好
(72)【発明者】
【氏名】森下 邦宏
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−182578(JP,A)
【文献】 特開2012−127387(JP,A)
【文献】 特開昭62−098011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/02
B64C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一孔が形成された第一複合材と、
第二孔が形成された第二複合材と、
前記第一孔、及び前記第二孔に挿通されることで前記第一複合材と前記第二複合材とを接続するファスナと、
を備える複合材組立体であって、
前記第一孔の両端のうち少なくとも一方には、面取りされた第一面取り部が形成され、
前記第二孔の両端のうち少なくとも一方には、面取りされた第二面取り部が形成され
前記ファスナと前記第一面取り部との間に形成された隙間を充填する第一リングと、前記ファスナと前記第二面取り部との間に形成された隙間を充填する第二リングと、をさらに備え、
前記第一リング、及び前記第二リングは、前記第一複合材、及び前記第二複合材よりも弾性率の高い材料で形成されている複合材組立体。
【請求項2】
前記第一面取り部が、前記第一孔の両端のうち、前記第二複合材側の端縁のみに形成され、
前記第二面取り部が、前記第二孔の両端のうち、前記第一複合材側の端縁のみに形成されている請求項1に記載の複合材組立体。
【請求項3】
前記第一面取り部が、前記第一孔の両端に形成され、
前記第二面取り部が、前記第二孔の両端に形成されている請求項1に記載の複合材組立体。
【請求項4】
前記第一面取り部が、前記第一孔の両端のうち、前記第二複合材とは反対側の端縁のみに形成され、
前記第二面取り部が、前記第二孔の両端のうち、前記第一複合材とは反対側の端縁のみに形成されている請求項1に記載の複合材組立体。
【請求項5】
前記ファスナは、
前記第一孔、及び前記第二孔に挿通されるボルトと、
該ボルトの先端に取り付けられたナットと、
前記ボルトの頭部と前記第一複合材との間に介在する第一ワッシャと、
前記ナットと前記第二複合材との間に介在する第二ワッシャと、を有し、
前記第一リングは、前記第一ワッシャと一体に形成され、
前記第二リングは、前記第二ワッシャと一体に形成されている請求項1又は4に記載の複合材組立体。
【請求項6】
前記第一面取り部は、前記第一孔の内周面から前記第一複合材の表面に向かうに従って次第に湾曲する曲面形状をなし、
前記第二面取り部は、前記第二孔の内周面から前記第二複合材の表面に向かうに従って次第に湾曲する曲面形状をなしている請求項1からのいずれか一項に記載の複合材組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機の胴体や翼を複合材料(複合材)で形成する例が増えている。複合材として具体的には、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic(略してFRP))が挙げられる。これらの複合材は、強化材やプラスチックをそれぞれ単体で用いた場合に比べて有利な点を持っている。例えば、繊維強化プラスチックは、プラスチックを単体で用いた場合に比べて強度が向上しており、かつ耐腐食性の点で金属材料よりも優れている。
【0003】
繊維強化プラスチックのように樹脂を基材とする複合材を用いて大型の構造物を構成する場合、複数に分割された部材同士を組み立てる構成を採ることが一般的である。この場合、金属材料と異なり、溶接による接合は行えない。そこで、下記特許文献1に記載されているようなファスナ(金属ボルト)によって部材同士が接合される場合が多い。より具体的には、特許文献1には、積層板の被接合母材端部同士を厚さ方向に重ね合わせた後、重ね合わせられた部分に形成された貫通孔にファスナを挿通して被接合母材同士を結合する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−175634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された構造では、ファスナを基準として被接合母材の面方向に沿って引っ張り力が働いた場合、穴縁に応力集中が生じるだけでなく、ファスナ(金属ボルト)の外周面と貫通孔の端縁との片当たりによって応力が集中し、強度が低下することがある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、強度の低下を抑制できる複合材組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の複合材組立体は、第一孔が形成された第一複合材と、第二孔が形成された第二複合材と、前記第一孔、及び前記第二孔に挿通されることで前記第一複合材と前記第二複合材とを接続するファスナと、を備える複合材組立体であって、前記第一孔の両端のうち少なくとも一方には、面取りされた第一面取り部が形成され、前記第二孔の両端のうち少なくとも一方には、面取りされた第二面取り部が形成されている。
【0008】
本態様によれば、第一複合材と第二複合材の面方向(両者の広がる方向)において両者が離間する方向に引っ張り力が働いた場合、ファスナと第一孔の両端のうち少なくとも一方、及びファスナと第二孔の両端のうち少なくとも一方では応力集中が生じる。上記の構成では、第一複合材の第一孔の両端のうち少なくとも一方に第一面取り部が形成され、第二複合材の第二孔の両端のうち少なくとも一方に第二面取り部が形成されている。したがって、第一面取り部、及び第二面取り部によって応力集中を緩和することができる。これにより、第一複合材、及び第二複合材に、引っ張り力による強度の低下を抑制できる。
【0009】
第2の態様の複合材組立体は、前記第一面取り部が、前記第一孔の両端のうち、前記第二複合材側の端縁のみに形成され、前記第二面取り部が、前記第二孔の両端のうち、前記第一複合材側の端縁のみに形成されている第1の態様の複合材組立体である。
【0010】
第3の態様の複合材組立体は、前記第一面取り部が、前記第一孔の両端に形成され、前記第二面取り部が、前記第二孔の両端に形成されている第1の態様の複合材組立体である。
【0011】
第4の態様の複合材組立体は、前記第一面取り部が、前記第一孔の両端のうち、前記第二複合材とは反対側の端縁のみに形成され、前記第二面取り部が、前記第二孔の両端のうち、前記第一複合材とは反対側の端縁のみに形成されている第1の態様の複合材組立体である。
【0012】
第5の態様の複合材組立体は、前記ファスナと、前記第一面取り部との間に形成された隙間を充填する第一リングと、前記ファスナと、前記第二面取り部との間に形成された隙間を充填する第二リングと、をさらに備え、前記第一リング、及び前記第二リングは、前記第一複合材、及び前記第二複合材よりも弾性率の高い材料で形成されている第1から第4のいずれかの態様の複合材組立体である。
【0013】
第6の態様の複合材組立体は、前記ファスナと、前記第一面取り部との間に形成された隙間を充填する第一リングと、前記ファスナと、前記第二面取り部との間に形成された隙間を充填する第二リングと、をさらに備え、前記第一リング、及び前記第二リングは、前記第一複合材、及び前記第二複合材よりも弾性率の高い材料で形成されており、前記ファスナは、前記第一孔、及び前記第二孔に挿通されるボルトと、該ボルトの先端に取り付けられたナットと、前記ボルトの頭部と前記第一複合材との間に介在する第一ワッシャと、前記ナットと前記第二複合材との間に介在する第二ワッシャと、を有し、前記第一リングは、前記第一ワッシャと一体に形成され、前記第二リングは、前記第二ワッシャと一体に形成されている第1、2、4のいずれかの態様の複合材組立体である。
【0014】
第7の態様の複合材組立体は、前記第一面取り部は、前記第一孔の内周面から前記第一複合材の表面に向かうに従って次第に湾曲する曲面形状をなし、前記第二面取り部は、前記第二孔の内周面から前記第二複合材の表面に向かうに従って次第に湾曲する曲面形状をなしている第1から第6のいずれかの態様の複合材組立体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、強度の低下を抑制できる複合材組立体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一実施形態に係る複合材組立体の構成を示す断面図である。
図2】第一実施形態に係る複合材組立体に引っ張り力が働いた場合の様子を示す説明図である。
図3】第一実施形態に係る複合材組立体の変形例を示す断面図である。
図4】第一実施形態に係る複合材組立体の他の変形例を示す断面図である。
図5】第一実施形態に係る複合材組立体のさらに他の変形例を示す断面図である。
図6】第二実施形態に係る複合材組立体の構成を示す断面図である。
図7】第三実施形態に係る複合材組立体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る複合材組立体100は、例えば航空機の胴体や翼を形成する板材である。図1に示すように、複合材組立体100は、第一複合材1と、第二複合材2と、これらを接続するファスナ3と、を備えている。
【0018】
第一複合材1、及び第二複合材2は、繊維強化プラスチック(FRP)で形成された板状をなしている。航空機の胴体や翼のように比較的に大型の構造体を構成するに当たっては、複数の板材を互いに接続する構成を採ることが多い。本実施形態では、第一複合材1の端部と第二複合材2の端部とを両者の厚さ方向に重ね合わせるとともに、端部に形成された貫通孔にファスナ3を挿通することで第一複合材1と第二複合材2とを接続している。第一複合材1と第二複合材2とが互いに接する面は当接面4とされている。なお、以降の説明では、第一複合材1、及び第二複合材2の厚さ方向を、単に「厚さ方向」と呼ぶことがある。
【0019】
第一複合材1の端部付近には当該第一複合材1を厚さ方向に貫通する第一孔51が形成されている。第一孔51は円形断面を有する。厚さ方向における第一孔51の少なくとも一方側の端縁は曲面形状に面取りされることで第一面取り部51Cとされている。より具体的には、第一面取り部51Cは、第一孔51の内周面(第一内周面51A)側から第一複合材1の表面(第一裏面1B)側に向かうに従って次第に湾曲している。即ち、第一面取り部51Cは断面視において連続的な曲線状をなしており、角部(直線部同士の交差する部分)が形成されていない。本実施形態では、第一孔51における当接面4側(即ち、第二複合材2側)の端縁のみに第一面取り部51Cが形成されている。即ち、第一内周面51Aと、第一複合材1における第一裏面1Bとは反対側の面(第一表面1A)との間には角部が形成されている。
【0020】
第二複合材2の端部付近には当該第二複合材2を厚さ方向に貫通する第二孔52が形成されている。第二孔52は円形断面を有する。厚さ方向における第二孔52の少なくとも他方側の端縁は曲面形状に面取りされることで第二面取り部52Cとされている。より具体的には、第二面取り部52Cは、第二孔52の内周面(第二内周面52A)側から第二複合材2の表面(第二表面2A)側、即ち当接面4側に向かうに従って次第に湾曲している。即ち、第二面取り部52Cは断面視において連続的な曲線状をなしており、角部(直線部同士の交差する部分)が形成されていない。本実施形態では、第二孔52における当接面4側(即ち、第一複合材1側)の端縁のみに第二面取り部52Cが形成されている。即ち、第二面取り部52Cは、上記の第一面取り部51Cと厚さ方向に対向している。これにより、ボルト6(後述)の外周面(ボルト外周面6A)と第一面取り部51Cとの間、及びボルト6の外周面と第二面取り部52Cとの間にはそれぞれ隙間G1、隙間G2が形成されている。なお、第二内周面52Aと、第二複合材2における第二表面2Aとは反対側の面(第二裏面2B)との間には角部が形成されている。
【0021】
第一複合材1と第二複合材2とは、上記の第一孔51と第二孔52とが互いに同軸となるように、厚さ方向に重ね合わせられている。ファスナ3は、第一孔51と第二孔52とに挿通されることで第一複合材1と第二複合材2とを接続している。より具体的には、ファスナ3は第一孔51と第二孔52とに挿通される軸部61、及び軸部61に一体に設けられた頭部62を有するボルト6と、軸部61における頭部62とは反対側の端部に取り付けられたナット7と、を有している。
【0022】
ボルト6の軸部61は、第一孔51、及び第二孔52の内径寸法よりもわずかに小さな外径寸法を有している。頭部62は六角形状をなしており、レンチ等の工具を係合させることで軸部61の中心軸回りに回転させることが可能である。なお、本実施形態では、第一複合材1側に頭部62が位置している場合を例に説明する。しかしながら、頭部62は第二複合材2側に位置していてもよい。頭部62と第一複合材1の表面(第一表面1A)との間には、円環状の第一ワッシャW1が介在している。第一ワッシャW1は頭部62よりも十分に大きな面積を有することで、頭部62と第一表面1Aとの間で生じる応力をより広範囲に分散させる。厚さ方向における第一ワッシャW1の寸法は、厚さ方向における頭部62の寸法よりも十分に小さい。
【0023】
軸部61の先端(即ち、頭部62とは反対側の端部)を含む部分には雄ネジが形成されている。この雄ネジにはナット7の内周面に形成された雌ネジがかみ合った状態で取り付けられている。ナット7と第二複合材2の第二裏面2Bとの間には第二ワッシャW2が介在している。第二ワッシャW2は、第一ワッシャW1と同様に、ナット7と第二裏面2Bとの間で生じる応力を分散させるために設けられている。以上の構成によって、第一複合材1と第二複合材2とが互いに接続されている。
【0024】
ここで、例えば航空機の胴体に複合材組立体100を適用した場合、飛行中のキャビンへの与圧等の外力によって、複合材組立体100に対して引っ張り力が働く場合がある。同様に、航空機の翼に複合材組立体100を適用した場合、翼の撓みや変形に起因する引っ張り力が働く場合がある。具体的には図2に示すように、ファスナ3を基準として、第一複合材1と第二複合材2の面方向(厚さ方向に直交する方向)において両者が離間する方向に力が加わることがある。
【0025】
上記のような引張り力が働いた場合、第一複合材1の端部(即ち、第一孔51を含む部分)は、厚さ方向において第二複合材2から離間する側に湾曲する。第二複合材2の端部(即ち、第二孔52を含む部分)は、厚さ方向において第一複合材1から離間する側に湾曲する。ファスナ3(ボルト6)は厚さ方向に対してわずかに傾く。この時、ボルト外周面6Aと第一孔51の内周面(第一内周面51A)との間、及びボルト外周面6Aと第二孔52の内周面(第二内周面52A)との間には応力が生じる。特に、第一孔51の一方側(第一裏面1B側)の端縁、及び第二孔52の他方側(第二表面2A側)の端縁には、他の端縁に比べて、大きな応力が集中する。このような応力集中が生じた場合、これら端縁に凹みや剥離といった局所的な変形が生じる可能性がある。
【0026】
しかしながら、本実施形態では、第一孔51の一方側の端縁に第一面取り部51Cが形成され、第二孔52の他方側の端縁に第二面取り部52Cが形成されている。したがって、第一面取り部51C、及び第二面取り部52Cによって応力集中を緩和することができる。これにより、第一複合材1、及び第二複合材2に、引っ張り力による局所的な変形が生じる可能性を低減することができる。その結果、複合材組立体100の強度の低下を抑制できる。
【0027】
特に、第一孔51における第二複合材2側の端縁、及び第二孔52における第一複合材1側の端縁には、それぞれの反対側の端縁に比べて大きな応力集中が生じる。本実施形態に係る構成によれば、このように特に大きな応力集中が生じる箇所のみに第一面取り部51C、及び第二面取り部52Cが形成されている。その結果、加工コストを最低限に抑えつつ、より効果的に第一複合材1、及び第二複合材2の強度の低下が抑制できる。
【0028】
上記のとおり本実施形態では、第一面取り部51C、及び第二面取り部52Cは断面視において曲線をなしている。
このときの第一面取り部51C、及び第二面取り部52Cは断面視における曲線のR形状は、ボルト6の軸部61の外径寸法と第一孔51、及び第二孔52の内径寸法によって決まるボルト6の軸部61の可動角度、及びボルト6に作用するせん断力によるボルト6の弾性変形を考慮して設定されてもよい。
このとき、ボルトの弾性変形に追従するように、第一面取り部51C、及び第二面取り部52CのR形状が設定されれば、第一面取り部51C、及び第二面取り部52Cと、ボルト6との接触面圧をより均一に分散できる。このため、第一面取り部51C、及び第二面取り部52Cと、ボルト6との間での片当たりによる応力集中を回避できる。
【0029】
以上、本発明の第一実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、第一孔51の一方側の端縁に第一面取り部51Cが形成され、第二孔52の他方側の端縁のみに第二面取り部52Cが形成されている例について説明した。しかしながら、第一面取り部51C、及び第二面取り部52Cが形成される位置は上記に限定されない。他の例として、図3に示すように、第一面取り部51Cが第一孔51の両端にそれぞれ形成されるとともに、第二面取り部52Cが第二孔52の両端にそれぞれ形成されている構成を採ることも可能である。具体的には、上記の構成では、第一表面1Aと第一内周面51Aとが形成する角部が面取りされることで、第一面取り部51Cが形成されている。さらに、第二裏面2Bと第二内周面52Aとが形成する角部が面取りされることで、第二面取り部52Cが形成されている。
【0031】
この構成によれば、第一複合材1、及び第二複合材2は、上述の引っ張り力を含めて、あらゆる方向の応力に対して十分に抗することができる。
【0032】
さらに、図4に示す構成を採ることも可能である。同図の例では、第一面取り部51Cが、第一孔51の両端のうち、第二複合材2とは反対側の端縁のみ(即ち、厚さ方向における他方側の端縁のみ)に形成されている。さらに、第二面取り部52Cが、第二孔52の両端のうち、第一複合材1とは反対側の端縁のみ(即ち、厚さ方向における一方側の端縁のみ)に形成されている。
【0033】
この構成によれば、第一孔51の両端に第一面取り部51Cが形成され、かつ第二孔52の両端に第二面取り部52Cが形成されている場合に比べて、加工コストを抑えることができる。さらに、上記の構成によれば、第一面取り部51C、及び第二面取り部52Cが、第一複合材1、及び第二複合材2における当接面4とは反対側の端縁に形成されている。したがって、第一複合材1と第二複合材2とを重ね合わせた後であっても容易に第一面取り部51C、及び第二面取り部52Cを形成することができる。即ち、複合材組立体100の組み立てに際して、作業性を向上させることができる。
【0034】
さらに加えて、図5に示す構成を採ることも可能である。同図の例では、第一面取り部51Cが、第一孔51の両端のうち、第二複合材2とは反対側の端縁のみ(即ち、厚さ方向における他方側の端縁のみ)に形成されている。さらに、第二面取り部52Cが、第二孔52の両端のうち、第一複合材1側の端縁のみ(即ち、厚さ方向における他方側の端縁のみ)に形成されている。
【0035】
この構成によれば、第一孔51の両端に第一面取り部51Cが形成され、かつ第二孔52の両端に第二面取り部52Cが形成されている場合に比べて、加工コストを抑えることができる。加えて、上記の構成では、第一複合材1、及び第二複合材2ともに一方の面のみ(即ち、厚さ方向における他方側の表面のみ)にそれぞれ第一面取り部51C、第二面取り部52Cを形成すればよい。したがって、第一複合材1と第二複合材2とを区別することなく、複合材組立体100を構成することができる。即ち、組立ての作業性をさらに高めることができる。
【0036】
さらに、上記実施形態では、複合材組立体100を航空機の胴体や翼に適用した例について説明した。しかしながら、複合材組立体100の適用対象は航空機に限定されず、自動車等を含む他の輸送機械、さらに他の構造物に複合材組立体100を適用することも可能である。
【0037】
加えて、上記実施形態ではファスナ3としてボルト6(及びナット7)を用いた例について説明した。しかしながら、ファスナ3の具体的な態様は上記に限定されず、リベットを含む他の締結具をファスナ3として用いることも可能である。
【0038】
<第二実施形態>
続いて、本発明の第二実施形態について、図6を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態に係る複合材組立体200では、第一孔51の両端にそれぞれ第一面取り部51Cが形成され、第二孔52の両端にそれぞれ第二面取り部52Cが形成されている。加えて、各第一面取り部51Cとボルト外周面6Aとの間にはそれぞれ第一リング8,8´が取り付けられ、各第二面取り部52Cとボルト外周面6Aとの間にはそれぞれ第二リング9,9´が取り付けられている。
【0039】
第一リング8,8´は円環状をなすとともに、第一面取り部51Cとボルト外周面6Aとの間に形成された隙間G1,G1を充填している。即ち、第一リング8,8´の外周面(第一リング外周面8A,8A´)は、第一面取り部51Cと同一の曲面形状をなしている。同様に、第二リング9,9´の外周面(第二リング外周面9A,9A´)は、第二面取り部52Cと同一の曲面形状をなしている。一方で、第一リング8,8´の内周面(第一リング内周面8B,8B´)、及び第二リング9,9´の内周面(第二リング内周面9B,9B´)は、ボルト外周面6Aに沿って広がっている。言い換えると、第一リング内周面8B,8B´、及び第二リング内周面9B,9B´は、ボルト6(軸部61)の中心軸を中心とする円筒面状をなしている。
【0040】
第一リング8,8´、及び第二リング9,9´は、いずれも第一複合材1、第二複合材2よりも高い弾性率を有する材料で形成されている。具体的には、第一リング8,8´、第二リング9,9´は、アルミニウム、チタン、鉄等の金属材料で形成されている。
【0041】
この構成によれば、第一リング8,8´がファスナ3と第一面取り部51Cとの間の隙間G1を充填していることから、ファスナ3と第一面取り部51Cとの間で生じる応力が第一リング8,8´によって分散される。即ち、応力集中をさらに低減することができる。同様に、第二リング9,9´がファスナ3と第二面取り部52Cとの間の隙間G2を充填していることから、ファスナ3と第二面取り部52Cとの間で生じる応力が第二リング9,9´によって分散される。
【0042】
加えて、第一リング8,8´、及び第二リング9,9´は、第一複合材1、及び第二複合材2よりも弾性率の高い材料で形成されている。したがって、ファスナ3の外周面(ボルト外周面6A)と第一リング内周面8Bとの間、及びボルト外周面6Aと第二リング内周面9Bとの間で生じる応力に対して十分に抗することができる。
【0043】
以上、本発明の第二実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態における第一リング8,8´と第二リング9,9´のうち、当接面4上で互いに隣接する第一リング8´と第二リング9´(即ち、一対の第一リング8,8´のうち、厚さ方向一方側に位置する第一リング8´と、一対の第二リング9,9´のうち、厚さ方向他方側に位置する第二リング9´)とを一体に形成することも可能である。この構成によれば、部品点数を削減することができる。
【0045】
さらに、上記実施形態では、複合材組立体200を航空機の胴体や翼に適用した例について説明した。しかしながら、複合材組立体200の適用対象は航空機に限定されず、自動車等を含む他の輸送機械、さらに他の構造物に複合材組立体200を適用することも可能である。
【0046】
加えて、上記実施形態ではファスナ3としてボルト6(及びナット7)を用いた例について説明した。しかしながら、ファスナ3の具体的な態様は上記に限定されず、リベットを含む他の締結具をファスナ3として用いることも可能である。
【0047】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、図7を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態に係る複合材組立体300では、第一孔51の他方側の端縁のみに第一面取り部51Cが形成され、第二孔52の一方側の端縁のみに第二面取り部52Cが形成されている。第一面取り部51Cとボルト外周面6Aとの間には第一リング8が取り付けられ、第二面取り部52Cとボルト外周面6Aとの間には第二リング9が取り付けられている。さらに、本実施形態では、第一リング8は第一ワッシャW1と一体に形成されている。第二リング9は第二ワッシャW2と一体に形成されている。具体的には、第一リング8は、厚さ方向における第一ワッシャW1の一方側の面に一体に設けられている。第二リング9は、厚さ方向における第二ワッシャW2の他方側の面に一体に設けられている。
【0048】
この構成によれば、第一ワッシャW1と第一リング8が一体に形成され、第二ワッシャW2と第二リング9が一体に形成されていることから、第一リング8、及び第二リング9の寸法体格が大きくなる。その結果、第一リング8、及び第二リング9の弾性率・強度を向上させることができる。即ち、第一リング8、及び第二リング9が、それぞれ第一ワッシャW1、及び第二ワッシャW2と独立して形成されている場合に比べて、第一リング8、及び第二リング9に変形が生じる可能性を低減することができる。さらに、複合材組立体300の部品点数、及び工数を削減することもできる。
【0049】
以上、本発明の第三実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0050】
例えば、上記の構成に対して、第二実施形態で説明した構成を組み合わせることも可能である。即ち、第一孔51の両端に第一面取り部51Cが形成されるとともに、第二孔52の両端に第二面取り部52Cが形成されていてもよい。さらに、両方の第一面取り部51Cに第一リング8が取り付けられ、両方の第二面取り部52Cに第二リング9が取り付けられている構成を採ることも可能である。
【0051】
加えて、上記実施形態では、複合材組立体300を航空機の胴体や翼に適用した例について説明した。しかしながら、複合材組立体300の適用対象は航空機に限定されず、自動車等を含む他の輸送機械、さらに他の構造物に複合材組立体300を適用することも可能である。
【0052】
さらに加えて、上記実施形態ではファスナ3としてボルト6(及びナット7)を用いた例について説明した。しかしながら、ファスナ3の具体的な態様は上記に限定されず、リベットを含む他の締結具をファスナ3として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
100 複合材組立体
200 複合材組立体
300 複合材組立体
1 第一複合材
2 第二複合材
3 ファスナ
4 当接面
6 ボルト
7 ナット
8 第一リング
8´ 第一リング
9 第二リング
9´ 第二リング
51 第一孔
52 第二孔
61 軸部
62 頭部
1A 第一表面
2A 第二表面
51A 第一内周面
51C 第一面取り部
52A 第二内周面
52C 第二面取り部
6A ボルト外周面
8A 第一リング外周面
8A´ 第一リング外周面
8B 第一リング内周面
8B´ 第一リング内周面
9A 第二リング外周面
9A´ 第二リング外周面
9B 第二リング内周面
9B´ 第二リング内周面
G1 隙間
G2 隙間
W1 第一ワッシャ
W2 第二ワッシャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7