【実施例】
【0023】
本発明の実施の形態に係る金網セット装置1は、
図1ないし
図3に示すように、ロボットアーム2と、当該ロボットアーム2に取り付けられた本発明の実施の形態に係るロボットハンド10と、複数の金網80を整列配置した状態で搬入するコンベヤ4と、を備えており、コンベヤ4によって搬入される金網80を鋳造装置70における金型の下型72に設けた湯口72aにセットする装置として構成されている。下型72は、本発明における「鋳造用金型」に対応する実施構成の一例である。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、
図1の上側を「上側」ないし「上方」として規定し、の下側を「下側」ないし「下方」として規定する。
【0024】
ロボットアーム2は、サーボモータの駆動力で関節を駆動させて、腕部分(リンク)を移動させながら先端に取り付けたロボットハンド10を目的の位置に移動させることができる垂直多軸関節型ロボットとして構成されており、
図1および
図2に示すように、鋳造装置70とコンベヤ4との間に設置されている。ロボットアーム2は、本発明における「ロボット本体」に対応する実施構成の一例である。
【0025】
本発明の実施の形態に係るロボットハンド10は、
図4に示すように、ハンド本体12と、ハンド本体12をロボットアーム2のアーム先端に取り付けるためのブラケット14と、から構成されている。ハンド本体12は、
図5および
図6に示すように、ブラケット14に締結された長尺状の一対の枠体22,22と、当該一対の枠体間に挟み込まれる態様で固定されたテーブル付きスライドシリンダ32と、当該テーブル付きスライドシリンダ32に取り付けられた平行開閉型エアチャック40と、一端が当該平行開閉型エアチャック40に取り付けられた一対のジョイントアーム44,44と、当該一対のジョイントアーム44,44の他端(先端)に取り付けられた細長の一対の爪46,46と、一対のジョイントアーム44,44および一対の爪46,46を覆うように一対の枠体22,22に取り付けられたカバー50と、から構成されている。ロボットハンド10は、本発明における「金網把持装置」に対応する実施構成の一例である。
【0026】
一対の枠体22,22は、
図4に示すように、それぞれ一対の主面を有する板状部材として構成されている。一対の枠体22,22は、当該一対の主面の法線に沿う方向の一方側から見た場合の形状が略長方形状に形成されている。また、一対の枠体22,22には、主面を貫通する2つの貫通孔22a,22bが形成されている(
図4および
図6参照)。当該2つの貫通孔22a,22bは、一対の枠体22,22の長手方向に長い略長方形状に形成されており、当該一対の枠体22,22の長手方向に沿って直列に配置されている。なお、貫通孔22aの長さは、貫通孔22bの長さよりも長く形成されている。こうして構成された一対の枠体22,22は、互いの一方の主面が対向する態様で、長手方向に直交する方向に延在する一方の短辺小口面がブラケット14に当接されて、ボルトによって当該ブラケット14に締結される。
【0027】
テーブル付きスライドシリンダ32は、
図5に示すように、主に、内部にシリンダ(図示せず)が形成されたシリンダチューブ33と、シリンダ内を摺動するピストン(図示せず)と、当該ピストンに取り付けられたピストンロッド34と、当該ピストンロッド34の先端に取り付けられたテーブル35と、シリンダチューブ33に取り付けられたリニアガイド36と、を備えており、空気圧によってピストンロッド34と共にテーブル35を往復運動させる複動型シリンダとして構成されている。テーブル付きスライドシリンダ32は、本発明における「第2作動部」に対応する実施構成の一例である。
【0028】
テーブル付きスライドシリンダ32は、
図4に示すように、一対の枠体22,22間に挟み込まれる態様で配置され、シリンダチューブ33がボルトによって一対の枠体22,22に締結されることによって固定される。
【0029】
テーブル35は、
図5に示すように、L字型に構成されており、一片部35aがピストンロッド34にナット締めによって固定されており、他片部35bがリニアガイドに締結されている。これにより、テーブル35は、ピストンロッド34の往復直線運動に伴ってリニアガイドにガイドされた状態で往復直線運動する。
【0030】
平行開閉型エアチャック40は、
図5および
図6に示すように、内部にシリンダ(図示せず)が形成されたボディ42と、シリンダ内を摺動するピストン(図示せず)と、当該ピストンに揺動自在に取り付けられた一対のレバー(図示せず)と、当該一対のレバーに係合された一対のフィンガ43,43と、を備えており、空気圧によってピストンを往復運動させることでレバーを揺動させて一対のフィンガ43,43を互いに近づく方向および互いに遠ざかる方向に摺動させる。なお、一対のフィンガ43,43は、通常状態においては互いに遠ざかる方向に付勢されている。平行開閉型エアチャック40は、本発明における「作動部」に対応する実施構成の一例である。
【0031】
平行開閉型エアチャック40は、
図5に示すように、ボディの長手方向に直交する方向に延在するボディの一端面がテーブル35の一片部35aにボルトによって締結されることにより、テーブル付きスライドシリンダ32に固定される。即ち、平行開閉型エアチャック40は、テーブル付きスライドシリンダ32の作動に伴って、ピストンロッド34およびテーブル35と共に往復直線運動される。
【0032】
一対のフィンガ43,43は、ボディの長手方向に直交する方向に延在するボディの他端面において、当該ボディの長手方向に沿う方向に延出するように配置されている。当該一対のフィンガ43,43には、一対のジョイントアーム44,44の一端がボルトなどによって締結されている。また、一対のジョイントアーム44,44の他端には、一対の爪46,46がボルトなどによって締結されている。
【0033】
一対の爪46,46は、例えば、ピアノ線によって構成されており、一対の爪46,46の先端寄り(一対のジョイントアーム44,44に締結された側と反対側)の部分には、
図7に示すように、一条の凹溝46a,46aが形成されている。当該凹溝46a,46aの溝幅は、金網80の線径よりも大きな値に設定されている。一対の爪46,46は、
図9に示すように、一条の凹溝46a,46aが互いに向かい合う態様で一対のジョイントアーム44,44に締結される。一対の爪46,46は、本発明における「一対の爪部」に対応し、一条の凹溝46a,46aは、本発明における「凹部」に対応する実施構成の一例である。
【0034】
カバー50は、
図4ないし
図6に示すように、一対の枠体22,22にボルトによって締結されるジョイントカバー52と、当該ジョイントカバー52にボルトによって締結される円筒カバー54と、から構成されている。
【0035】
円筒カバー54は、
図4ないし
図6に示すように、長手方向の一端が開口され、他端が閉じられた有底円筒形状に構成されており、
図8および
図9に示すように、底壁55には、一対の長孔55a,55aが形成されている。なお、一対の長孔55a,55aは、幅(長手方向に直交する方向の寸法)が一対の爪46,46の直径よりも若干大きい値に設定されており、長さ(長手方向の寸法)が一対のフィンガ43,43の摺動量よりも若干大きい値に設定されている。円筒カバー54および底壁55は、本発明における「当接部」に対応する実施構成の一例である。
【0036】
こうして構成されたカバー50が一対の枠体22,22に取り付けられた際には、一対の爪46,46が一対の長孔55a,55aを介して底壁55から突出された状態となる。なお、一対の爪46,46が一対の長孔55a,55aを介して底壁55から突出されたときには、当該一対の爪46,46に形成された一対の凹溝46a,46aが底壁55よりも外方に露出されている。ここで、一対の凹溝46a,46aは、
図9に示すように、底壁55の外面55bと略同じ位置に配置されることが望ましい。
【0037】
次に、こうして構成された金網セット装置1の動作について説明する。ロボットアーム2が下型72の湯口72aに金網80をセットするように指示を受けると、ロボットアーム2は、
図1ないし
図3に示す待機状態からコンベヤ4上の金網80を取り上げるべく、
図10および
図11に示すように、ロボットハンド10をコンベヤ4上の取り上げるべき金網80の直上に移動させる。コンベヤ4上に載置された金網80は、本発明における「準備位置に配置された金網」に対応する実施構成の一例である。
【0038】
続いて、ロボットアーム2は、
図12に示すように、カバー50の円筒カバー54の底壁55が金網80の底面に当接するまでロボットハンド10を下降させる。このとき、ロボットハンド10の一対の爪46,46は、
図13に示すように、金網80の網目を貫通する(網目に挿通される)。なお、一対の爪46,46は、平行開閉型エアチャック40によって互いに遠ざかる方向に付勢されている。
【0039】
そして、カバー50の円筒カバー54の底壁55が金網80の底面に当接した後、
図9に示すように、平行開閉型エアチャック40を作動して一対の爪46,46を互いに近づく方向に摺動させる。これにより、金網80が一対の爪46,46によって挟み込まれた態様で把持される。このとき、一対の爪46,46の凹溝46a,46aに金網80が係合される。当該状態でロボットアーム2が、
図14に示すように、ロボットハンド10を上昇させることで金網80がコンベヤ4から取り上げられる。
【0040】
ここで、一対の爪46,46の凹溝46a,46aに金網80が係合されるため、金網80を把持した状態でロボットハンド10が移動されている際に、金網80の自重やロボットハンド10に生じる振動によって金網80が落下することを効果的に防止することができる。
【0041】
次に、持ち上げた金網80を下型72の湯口72aにセットするべく、ロボットアーム2は、
図15および
図16に示すように、金網80を把持した状態のロボットハンド10を湯口72aの真上まで移動させると共に、
図17に示すように、ロボットハンド10を下降させて湯口72aのセット位置まで金網80を押し込む。ここで、金網80は、円筒カバー54の底壁55によって底面が押圧されながら湯口72a内に押し込まれる。これにより、適正な姿勢を維持した状態で安定して金網80をセット位置まで押し込むことができる。
【0042】
続いて、平行開閉型エアチャック40を作動して一対の爪46,46を互いに遠ざかる方向に摺動させて金網80の把持を解除すると共に(
図13参照)、
図18に示すように、テーブル付きスライドシリンダ32を作動して平行開閉型エアチャック40を上昇させる。これにより、金網80の網目から一対の爪46,46が引き抜かれる。ここで、円筒カバー54の底壁55が金網80の底面に当接された状態、換言すれば、円筒カバー54の底壁55によって金網80が押さえられた状態で金網80の網目から一対の爪46,46を引き抜くことができるため、下型72の湯口72aのセット位置に金網80が適正にセットされた状態を維持したまま、一対の爪46,46を金網80の網目から円滑に引き抜くことができる。
【0043】
そして、最後に、ロボットハンド10を上昇させて(
図19参照)、待機位置まで移動させることで、金網80のセット作業が完了する。
【0044】
以上説明した本発明の実施の形態に係る金網セット装置1によれば、金網80の網目に挿通される一対の爪46,46を、平行開閉型エアチャック40によって互いに近づく方向に摺動させることで、金網80を挟み込む態様で把持する構成であるため、金網80の把持を確実に維持することができる。これにより、金網80の自重や当該金網80を把持した状態で移動する際に生じる振動などによって金網80の把持が解除されて落下することを効果的に抑制することができる。また、平行開閉型エアチャック40によって一対の爪46,46を互いに遠ざかる方向に摺動させることで、一対の爪46,46による金網80の把持を容易に解除することができる。もとより、金網80の材質に関わらず、金網80を把持することができる。
【0045】
また、本発明の実施の形態に係る金網セット装置1によれば、一対の爪46,46に一条の凹溝46a,46aを形成し、金網80を把持する際に当該一条の凹溝46a,46aを金網80に係合させる構成であるため、金網80が一対の爪46,46から抜け落ちることをより効果的に抑制することができる。この結果、金網80をより安定して把持することができ、把持性をより向上することができる。
【0046】
さらに、本発明の実施の形態に係る金網セット装置1によれば、円筒カバー54の底壁55によって金網80を押さえた状態で、当該金網80の網目から一対の爪46,46を引き抜く構成であるため、下型72の湯口72aのセット位置に金網80が適正にセットされた状態を維持したまま、一対の爪46,46を金網80の網目から円滑に引き抜くことができる。なお、円筒カバー54の底壁55が金網80の底面に当接されることによって、一対の爪46,46が金網80の網目から突出する突出量を常に一定に維持することができるため、常に同じ状態で金網80を把持することができる。これにより、金網80の把持性をより一層向上することができる。
【0047】
本実施の形態では、一対の爪46,46に一条の凹溝46a,46aを形成する構成としたが、これに限らない。例えば、一対の爪46,46の互いに向かい合う面に複数の凹溝を形成する構成としても良い。また、複数の凹溝に換えて複数の窪みを形成する構成としても良い。あるいは、一対の爪46,46には、凹溝46a,46aを形成しなくても良い。
【0048】
本実施の形態では、一対の爪46,46および一対のジョイントアーム44,44を含む平行開閉型エアチャック40を往復直線運動させるアクチュエータとして、空気圧により作動するテーブル付きスライドシリンダ32を用いる構成としたが、これに限らない。例えば、油圧により作動する油圧シリンダや、電気により作動するリニアソレノイドなどを用いる構成としても良い。なお、テーブル35は無くても構わない。
【0049】
本実施の形態では、一対の爪46,46を互いに近づく方向および互いに遠ざかる方向に摺動させるアクチュエータとして、空気圧により作動する平行開閉型エアチャック40を用いる構成としたが、これに限らない。例えば、油圧により作動する油圧シリンダや、電気により作動するリニアソレノイドなどを用いる構成としても良い。
【0050】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。