特許第6985199号(P6985199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985199金網把持装置およびこれを備える金網セット装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985199
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】金網把持装置およびこれを備える金網セット装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 18/04 20060101AFI20211213BHJP
   B22C 9/08 20060101ALI20211213BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B22D18/04 X
   B22C9/08 A
   B25J15/08 C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-63757(P2018-63757)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-171443(P2019-171443A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年9月8日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年11月24日に日立金属株式会社熊谷軽合金工場に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000142883
【氏名又は名称】株式会社五十鈴製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】村上 聖
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−031382(JP,A)
【文献】 特開平08−048488(JP,A)
【文献】 特開平05−245581(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3113877(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 18/04,
B22C 9/08,
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造用金型の湯口にセットされる金網を把持する金網把持装置であって、
前記金網の網目に挿通可能に構成された細長の一対の爪部と、
該一対の爪部を互いに近付く方向および互いに遠ざかる方向に作動可能に構成された作動部と、
前記一対の爪部を前記金網の網目に挿通する際に、前記金網に当接するよう構成された当接部と、
を備え
前記当接部は、前記金網に当接することによって、前記一対の爪部が前記金網の網目から突出する突出量を規制する
金網把持装置。
【請求項2】
前記一対の爪部の先端部には、凹部が形成されており、
該凹部は、互いに向き合う位置関係に配置されている
請求項1に記載の金網把持装置。
【請求項3】
前記当接部に対して前記一対の爪部を長手方向に相対的に作動可能に構成された第2作動部をさらに備えている
請求項1または2に記載の金網把持装置。
【請求項4】
準備位置に配置された金網を取り上げ、取り上げた該金網を鋳造用金型の湯口にセットする金網セット装置であって、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の金網把持装置と、
該金網把持装置を支持すると共に前記準備位置と前記湯口との間で前記金網把持装置を移動可能に構成されたロボット本体と、
を備え、
前記金網把持装置は、前記準備位置においては、前記一対の爪部を互いに近付く方向に作動させることによって前記金網を把持し、前記湯口においては、前記一対の爪部を互いに遠ざかる方向に作動させることによって前記金網の把持を解除するよう構成されている
金網セット装置。
【請求項5】
前記金網把持装置は、前記金網の把持を解除する際、前記当接部を前記金網に当接させた状態で、前記第2作動部によって前記一対の爪部を長手方向に作動するよう構成されている
請求項に従属する請求項に記載の金網セット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造用金型の湯口にセットされる金網を把持する金網把持装置およびこれを備える金網セット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平5−245581号公報(特許文献1)には、先端部に向かうに伴って先細りとなる金網保持針と、当該金網保持針を昇降させる昇降部と、を備え、昇降部によって金網保持針を下降させて金網に突き刺すことによって、当該金網を把持するように構成された金網把持装置が記載されている。
【0003】
当該金網把持装置では、金網の網目の大きさに基づいて金網保持針の下降量を変更する構成とすることによって、異なる網目の大きさを有する金網を把持する際に、網目の大きさに応じた金網保持針に交換しなくても、金網を確実に金網保持針に突き刺して把持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−245581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した公報に記載の金網把持装置では、金網保持針を金網に突き刺すのみで金網を把持する構成であるため、金網保持針の網目に対する突き刺しの程度によっては、金網の自重によって、あるいは、当該自重に加えて金網を把持した状態で搬送する際の振動などの入力によって、金網が落下する場合がある。金網保持針を網目に深く突き刺すことによって、金網が金網保持針から抜け出ることを防止することも考えられるが、搬送先で金網の把持を解除することが困難となってしまい、金網の把持性および把持の解除性の両立という点において、なお改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、金網の把持性の向上および把持解除性の向上の両立に資する技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金網把持装置およびこれを備える金網セット装置は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係る金網把持装置の好ましい形態によれば、鋳造用金型の湯口にセットされる金網を把持する金網把持装置が構成される。当該金網把持装置は、細長の一対の爪部と、作動部と、当接部と、を備えている。一対の爪部は、金網の網目に挿通可能に構成されている。作動部は、一対の爪部を互いに近付く方向および互いに遠ざかる方向に作動可能に構成されている。当接部は、一対の爪部を金網の網目に挿通する際に、金網に当接するように構成されている。そして、当接部が金網に当接することによって、一対の爪部が金網の網目から突出する突出量が規制されるように構成されている。
【0009】
本発明によれば、金網の網目に一対の爪部を挿通して、当該一対の爪部を互いに近付く方向に作動することによって、一対の爪部によって金網を挟み込む態様で把持することができる。これにより、金網の自重や当該金網を把持した状態で移動する際に生じる振動などによって金網の把持が解除されることを良好に抑制することができ、金網の網目に突き刺すのみの構成に比べて安定した把持性を確保することができる。また、一対の爪部を互いに遠ざかる方向に作動することによって、一対の爪部による金網の把持を容易に解除することができる。もとより、金網の材質に関わらず、金網を把持することができる。さらに、一対の爪部が金網の網目から突出する突出量を常に一定に維持することができるため、金網を常に同じ状態で把持することができる。これにより、金網の把持性をより向上することができる。
【0010】
本発明に係る金網把持装置の更なる形態によれば、一対の爪部の先端部には、凹部が形成されている。そして、当該凹部は、互いに向き合う位置関係に配置されている。
【0011】
本形態によれば、一対の爪部によって金網を挟み込む態様で把持する際に、凹部に当該金網を係合させることができる。これにより、金網が一対の爪部から抜け落ちることを効果的に抑制することができる。この結果、金網をより安定して把持することができ、把持性をより向上することができる。
【0014】
本発明に係る金網把持装置の更なる形態によれば、金網把持装置は、第2作動部をさらに備えている。当該第2作動部は、当接部に対して一対の爪部を長手方向に相対的に作動可能に構成されている。
【0015】
本形態によれば、一対の爪部による金網の把持を解除する際に、金網を当接部によって抑えた状態で一対の爪部を金網の網目より引き抜くことができるため、一対の爪部を金網の網目から円滑かつ確実に引き抜くことができる。これにより、金網を適正な状態で鋳造用金型の湯口にセットすることができる。
【0016】
本発明に係る金網セット装置の好ましい形態によれば、準備位置に配置された金網を取り上げ、取り上げた当該金網を鋳造用金型の湯口にセットする金網セット装置が構成される。当該金網セット装置は、上述したいずれかの態様の本発明に係る金網把持装置と、当該金網把持装置を支持すると共に準備位置と湯口との間で当該金網把持装置を移動可能に構成されたロボット本体と、を備えている。そして、金網把持装置は、準備位置においては、一対の爪部を互いに近付く方向に作動させることによって金網を把持し、湯口においては、一対の爪部を互いに遠ざかる方向に作動させることによって金網の把持を解除するように構成されている。
【0017】
本発明によれば、上述したいずれかの態様の本発明に係る金網把持装置を備える構成であるため、本発明の金網把持装置が奏する効果と同様の効果、例えば、金網を安定かつ確実に把持することができると共に、金網の把持を確実に解除することができる効果や、金網の材質に関わらず、金網を把持することができる効果などを奏することができる。
【0018】
金網把持装置が第2作動部を有する態様の本発明に係る金網セット装置の更なる形態によれば、金網把持装置は、金網の把持を解除する際、当接部を金網に当接させた状態で、第2作動部によって一対の爪部を長手方向に作動するように構成されている。
【0019】
本形態によれば、金網を当接部に当接させた状態、換言すれば、金網を当接部によって抑えた状態で、一対の爪部を金網の網目より引き抜くことができるため、一対の爪部を金網の網目から円滑かつ確実に引き抜くことができる。これにより、金網を適正な状態で鋳造用金型の湯口にセットすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金網の把持性の向上および把持解除性の向上の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る金網セット装置1を備える鋳造ラインの構成の概略を示す概略構成図である。
図2図1のA−A断面を示す断面図である。
図3図1の矢印Y方向から見た矢視図である。
図4】本発明の実施の形態に係るロボットハンド10の構成の概略を示す三面図である。
図5図4のB−B断面を示す断面図である。
図6】ブラケット14、一対の枠体22,22およびカバー50のみを図4のC−C断面で切った状態の本発明の実施の形態に係るロボットハンド10を示す説明図である。
図7】一対の爪46,46の要部を拡大して示す要部拡大図である。
図8図4のC−C断面を示す断面図である。
図9】一対の爪46,46によって金網80が挟み込まれる様子を示す説明図である。
図10】コンベヤ4上の金網80を取り上げる際の本発明の実施の形態に係る金網セット装置1の様子を示す説明図である。
図11】コンベヤ4上の金網80の真上にロボットハンド10が移動された状態を示す説明図である。
図12】コンベヤ4上の金網80の底面に円筒カバー54の底壁55が当接した状態を示す説明図である。
図13】一対の爪46,46が金網80の網目に挿通された状態を示す説明図である。
図14】コンベヤ4上の金網80がロボットハンド10によって把持された状態で持ち上げられた様子を示す説明図である。
図15】金網80を下型72の湯口72aにセットする際の本発明の実施の形態に係る金網セット装置1の様子を示す説明図である。
図16】下型72の湯口72aの真上に金網80を把持した状態のロボットハンド10が移動された状態を示す説明図である。
図17】下型72の湯口72a内に金網80がセットされる様子を示す説明図である。
図18】下型72の湯口72a内にセットされた金網80の網目から一対の爪46,46を引き抜かれた際の状態を示す説明図である。
図19】下型72の湯口72a内に金網80をセットした後にロボットハンド10が上昇された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0023】
本発明の実施の形態に係る金網セット装置1は、図1ないし図3に示すように、ロボットアーム2と、当該ロボットアーム2に取り付けられた本発明の実施の形態に係るロボットハンド10と、複数の金網80を整列配置した状態で搬入するコンベヤ4と、を備えており、コンベヤ4によって搬入される金網80を鋳造装置70における金型の下型72に設けた湯口72aにセットする装置として構成されている。下型72は、本発明における「鋳造用金型」に対応する実施構成の一例である。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、図1の上側を「上側」ないし「上方」として規定し、の下側を「下側」ないし「下方」として規定する。
【0024】
ロボットアーム2は、サーボモータの駆動力で関節を駆動させて、腕部分(リンク)を移動させながら先端に取り付けたロボットハンド10を目的の位置に移動させることができる垂直多軸関節型ロボットとして構成されており、図1および図2に示すように、鋳造装置70とコンベヤ4との間に設置されている。ロボットアーム2は、本発明における「ロボット本体」に対応する実施構成の一例である。
【0025】
本発明の実施の形態に係るロボットハンド10は、図4に示すように、ハンド本体12と、ハンド本体12をロボットアーム2のアーム先端に取り付けるためのブラケット14と、から構成されている。ハンド本体12は、図5および図6に示すように、ブラケット14に締結された長尺状の一対の枠体22,22と、当該一対の枠体間に挟み込まれる態様で固定されたテーブル付きスライドシリンダ32と、当該テーブル付きスライドシリンダ32に取り付けられた平行開閉型エアチャック40と、一端が当該平行開閉型エアチャック40に取り付けられた一対のジョイントアーム44,44と、当該一対のジョイントアーム44,44の他端(先端)に取り付けられた細長の一対の爪46,46と、一対のジョイントアーム44,44および一対の爪46,46を覆うように一対の枠体22,22に取り付けられたカバー50と、から構成されている。ロボットハンド10は、本発明における「金網把持装置」に対応する実施構成の一例である。
【0026】
一対の枠体22,22は、図4に示すように、それぞれ一対の主面を有する板状部材として構成されている。一対の枠体22,22は、当該一対の主面の法線に沿う方向の一方側から見た場合の形状が略長方形状に形成されている。また、一対の枠体22,22には、主面を貫通する2つの貫通孔22a,22bが形成されている(図4および図6参照)。当該2つの貫通孔22a,22bは、一対の枠体22,22の長手方向に長い略長方形状に形成されており、当該一対の枠体22,22の長手方向に沿って直列に配置されている。なお、貫通孔22aの長さは、貫通孔22bの長さよりも長く形成されている。こうして構成された一対の枠体22,22は、互いの一方の主面が対向する態様で、長手方向に直交する方向に延在する一方の短辺小口面がブラケット14に当接されて、ボルトによって当該ブラケット14に締結される。
【0027】
テーブル付きスライドシリンダ32は、図5に示すように、主に、内部にシリンダ(図示せず)が形成されたシリンダチューブ33と、シリンダ内を摺動するピストン(図示せず)と、当該ピストンに取り付けられたピストンロッド34と、当該ピストンロッド34の先端に取り付けられたテーブル35と、シリンダチューブ33に取り付けられたリニアガイド36と、を備えており、空気圧によってピストンロッド34と共にテーブル35を往復運動させる複動型シリンダとして構成されている。テーブル付きスライドシリンダ32は、本発明における「第2作動部」に対応する実施構成の一例である。
【0028】
テーブル付きスライドシリンダ32は、図4に示すように、一対の枠体22,22間に挟み込まれる態様で配置され、シリンダチューブ33がボルトによって一対の枠体22,22に締結されることによって固定される。
【0029】
テーブル35は、図5に示すように、L字型に構成されており、一片部35aがピストンロッド34にナット締めによって固定されており、他片部35bがリニアガイドに締結されている。これにより、テーブル35は、ピストンロッド34の往復直線運動に伴ってリニアガイドにガイドされた状態で往復直線運動する。
【0030】
平行開閉型エアチャック40は、図5および図6に示すように、内部にシリンダ(図示せず)が形成されたボディ42と、シリンダ内を摺動するピストン(図示せず)と、当該ピストンに揺動自在に取り付けられた一対のレバー(図示せず)と、当該一対のレバーに係合された一対のフィンガ43,43と、を備えており、空気圧によってピストンを往復運動させることでレバーを揺動させて一対のフィンガ43,43を互いに近づく方向および互いに遠ざかる方向に摺動させる。なお、一対のフィンガ43,43は、通常状態においては互いに遠ざかる方向に付勢されている。平行開閉型エアチャック40は、本発明における「作動部」に対応する実施構成の一例である。
【0031】
平行開閉型エアチャック40は、図5に示すように、ボディの長手方向に直交する方向に延在するボディの一端面がテーブル35の一片部35aにボルトによって締結されることにより、テーブル付きスライドシリンダ32に固定される。即ち、平行開閉型エアチャック40は、テーブル付きスライドシリンダ32の作動に伴って、ピストンロッド34およびテーブル35と共に往復直線運動される。
【0032】
一対のフィンガ43,43は、ボディの長手方向に直交する方向に延在するボディの他端面において、当該ボディの長手方向に沿う方向に延出するように配置されている。当該一対のフィンガ43,43には、一対のジョイントアーム44,44の一端がボルトなどによって締結されている。また、一対のジョイントアーム44,44の他端には、一対の爪46,46がボルトなどによって締結されている。
【0033】
一対の爪46,46は、例えば、ピアノ線によって構成されており、一対の爪46,46の先端寄り(一対のジョイントアーム44,44に締結された側と反対側)の部分には、図7に示すように、一条の凹溝46a,46aが形成されている。当該凹溝46a,46aの溝幅は、金網80の線径よりも大きな値に設定されている。一対の爪46,46は、図9に示すように、一条の凹溝46a,46aが互いに向かい合う態様で一対のジョイントアーム44,44に締結される。一対の爪46,46は、本発明における「一対の爪部」に対応し、一条の凹溝46a,46aは、本発明における「凹部」に対応する実施構成の一例である。
【0034】
カバー50は、図4ないし図6に示すように、一対の枠体22,22にボルトによって締結されるジョイントカバー52と、当該ジョイントカバー52にボルトによって締結される円筒カバー54と、から構成されている。
【0035】
円筒カバー54は、図4ないし図6に示すように、長手方向の一端が開口され、他端が閉じられた有底円筒形状に構成されており、図8および図9に示すように、底壁55には、一対の長孔55a,55aが形成されている。なお、一対の長孔55a,55aは、幅(長手方向に直交する方向の寸法)が一対の爪46,46の直径よりも若干大きい値に設定されており、長さ(長手方向の寸法)が一対のフィンガ43,43の摺動量よりも若干大きい値に設定されている。円筒カバー54および底壁55は、本発明における「当接部」に対応する実施構成の一例である。
【0036】
こうして構成されたカバー50が一対の枠体22,22に取り付けられた際には、一対の爪46,46が一対の長孔55a,55aを介して底壁55から突出された状態となる。なお、一対の爪46,46が一対の長孔55a,55aを介して底壁55から突出されたときには、当該一対の爪46,46に形成された一対の凹溝46a,46aが底壁55よりも外方に露出されている。ここで、一対の凹溝46a,46aは、図9に示すように、底壁55の外面55bと略同じ位置に配置されることが望ましい。
【0037】
次に、こうして構成された金網セット装置1の動作について説明する。ロボットアーム2が下型72の湯口72aに金網80をセットするように指示を受けると、ロボットアーム2は、図1ないし図3に示す待機状態からコンベヤ4上の金網80を取り上げるべく、図10および図11に示すように、ロボットハンド10をコンベヤ4上の取り上げるべき金網80の直上に移動させる。コンベヤ4上に載置された金網80は、本発明における「準備位置に配置された金網」に対応する実施構成の一例である。
【0038】
続いて、ロボットアーム2は、図12に示すように、カバー50の円筒カバー54の底壁55が金網80の底面に当接するまでロボットハンド10を下降させる。このとき、ロボットハンド10の一対の爪46,46は、図13に示すように、金網80の網目を貫通する(網目に挿通される)。なお、一対の爪46,46は、平行開閉型エアチャック40によって互いに遠ざかる方向に付勢されている。
【0039】
そして、カバー50の円筒カバー54の底壁55が金網80の底面に当接した後、図9に示すように、平行開閉型エアチャック40を作動して一対の爪46,46を互いに近づく方向に摺動させる。これにより、金網80が一対の爪46,46によって挟み込まれた態様で把持される。このとき、一対の爪46,46の凹溝46a,46aに金網80が係合される。当該状態でロボットアーム2が、図14に示すように、ロボットハンド10を上昇させることで金網80がコンベヤ4から取り上げられる。
【0040】
ここで、一対の爪46,46の凹溝46a,46aに金網80が係合されるため、金網80を把持した状態でロボットハンド10が移動されている際に、金網80の自重やロボットハンド10に生じる振動によって金網80が落下することを効果的に防止することができる。
【0041】
次に、持ち上げた金網80を下型72の湯口72aにセットするべく、ロボットアーム2は、図15および図16に示すように、金網80を把持した状態のロボットハンド10を湯口72aの真上まで移動させると共に、図17に示すように、ロボットハンド10を下降させて湯口72aのセット位置まで金網80を押し込む。ここで、金網80は、円筒カバー54の底壁55によって底面が押圧されながら湯口72a内に押し込まれる。これにより、適正な姿勢を維持した状態で安定して金網80をセット位置まで押し込むことができる。
【0042】
続いて、平行開閉型エアチャック40を作動して一対の爪46,46を互いに遠ざかる方向に摺動させて金網80の把持を解除すると共に(図13参照)、図18に示すように、テーブル付きスライドシリンダ32を作動して平行開閉型エアチャック40を上昇させる。これにより、金網80の網目から一対の爪46,46が引き抜かれる。ここで、円筒カバー54の底壁55が金網80の底面に当接された状態、換言すれば、円筒カバー54の底壁55によって金網80が押さえられた状態で金網80の網目から一対の爪46,46を引き抜くことができるため、下型72の湯口72aのセット位置に金網80が適正にセットされた状態を維持したまま、一対の爪46,46を金網80の網目から円滑に引き抜くことができる。
【0043】
そして、最後に、ロボットハンド10を上昇させて(図19参照)、待機位置まで移動させることで、金網80のセット作業が完了する。
【0044】
以上説明した本発明の実施の形態に係る金網セット装置1によれば、金網80の網目に挿通される一対の爪46,46を、平行開閉型エアチャック40によって互いに近づく方向に摺動させることで、金網80を挟み込む態様で把持する構成であるため、金網80の把持を確実に維持することができる。これにより、金網80の自重や当該金網80を把持した状態で移動する際に生じる振動などによって金網80の把持が解除されて落下することを効果的に抑制することができる。また、平行開閉型エアチャック40によって一対の爪46,46を互いに遠ざかる方向に摺動させることで、一対の爪46,46による金網80の把持を容易に解除することができる。もとより、金網80の材質に関わらず、金網80を把持することができる。
【0045】
また、本発明の実施の形態に係る金網セット装置1によれば、一対の爪46,46に一条の凹溝46a,46aを形成し、金網80を把持する際に当該一条の凹溝46a,46aを金網80に係合させる構成であるため、金網80が一対の爪46,46から抜け落ちることをより効果的に抑制することができる。この結果、金網80をより安定して把持することができ、把持性をより向上することができる。
【0046】
さらに、本発明の実施の形態に係る金網セット装置1によれば、円筒カバー54の底壁55によって金網80を押さえた状態で、当該金網80の網目から一対の爪46,46を引き抜く構成であるため、下型72の湯口72aのセット位置に金網80が適正にセットされた状態を維持したまま、一対の爪46,46を金網80の網目から円滑に引き抜くことができる。なお、円筒カバー54の底壁55が金網80の底面に当接されることによって、一対の爪46,46が金網80の網目から突出する突出量を常に一定に維持することができるため、常に同じ状態で金網80を把持することができる。これにより、金網80の把持性をより一層向上することができる。
【0047】
本実施の形態では、一対の爪46,46に一条の凹溝46a,46aを形成する構成としたが、これに限らない。例えば、一対の爪46,46の互いに向かい合う面に複数の凹溝を形成する構成としても良い。また、複数の凹溝に換えて複数の窪みを形成する構成としても良い。あるいは、一対の爪46,46には、凹溝46a,46aを形成しなくても良い。
【0048】
本実施の形態では、一対の爪46,46および一対のジョイントアーム44,44を含む平行開閉型エアチャック40を往復直線運動させるアクチュエータとして、空気圧により作動するテーブル付きスライドシリンダ32を用いる構成としたが、これに限らない。例えば、油圧により作動する油圧シリンダや、電気により作動するリニアソレノイドなどを用いる構成としても良い。なお、テーブル35は無くても構わない。
【0049】
本実施の形態では、一対の爪46,46を互いに近づく方向および互いに遠ざかる方向に摺動させるアクチュエータとして、空気圧により作動する平行開閉型エアチャック40を用いる構成としたが、これに限らない。例えば、油圧により作動する油圧シリンダや、電気により作動するリニアソレノイドなどを用いる構成としても良い。
【0050】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 金網セット装置
2 ロボットアーム(ロボット本体)
4 コンベヤ
10 ロボットハンド(金網把持装置)
12 ハンド本体
14 ブラケット
22 枠体
22a 貫通孔
22b 貫通孔
32 テーブル付きスライドシリンダ(第2作動部)
33 シリンダチューブ
34 ピストンロッド
35 テーブル
35a 一片部
35b 他片部
36 リニアガイド
40 平行開閉型エアチャック(作動部)
42 ボディ
43 フィンガ
44 ジョイントアーム
46 爪(爪部)
46a 凹溝(凹部)
50 カバー
52 ジョイントカバー
54 円筒カバー(当接部)
55 底壁(当接部)
55a 長孔
70 鋳造装置
72 下型(鋳造用金型)
72a 湯口(湯口)
80 金網(金網)
図1
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