(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筒状部材には、前記角度調整部材に連結固定するための筒状部材固定ネジ孔と、前記手摺部材を固定するための手摺固定ネジ孔とが並んで設けられている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の手摺固定具。
前記角度調整部材に、離間配置された2つの角度調整部材間の距離を測るための計測テープを貼着可能なテープ貼付面が形成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の手摺固定具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
階段やスロープに手摺を設置する場合、階段やスロープの傾斜に応じて高さが異なる位置に複数の手摺ブラケットを取り付け、手摺ブラケット間に手摺部材を架設する。このため、手摺部材の設置寸法を採寸する際、離間配置された手摺ブラケット間の離間距離の採寸する作業や、手摺部材の手摺ブラケットへの取付作業を一人の作業者が行うことが難しく、二人以上の作業者が必要となる。これに対し、近年では作業者の人手不足などの影響で、手摺部材を壁部に取り付ける作業を一人の作業者で行うことが望まれていた。
【0006】
特許文献1に開示の手摺ブラケットの場合、コンベックス(メジャー)の端部を手摺ブラケットに係止させて手摺部材の設置寸法を採寸する。しかし、手摺ブラケット間の距離が長いと、コンベックスが撓んで設置寸法が正確に測定できず、手摺部材が適正寸法となる迄切断作業を繰り返す場合がある。また、採寸時に、端部を手摺ブラケットに係止させたコンベックスを作業者が把持して階段を昇降するとコンベックスの係止が外れる場合があり、採寸に手間が掛かっていた。また、特許文献1に開示の手摺ブラケットの場合、採寸後に、手摺部材を取り付ける手摺保持部を支持部から一旦取り外す必要があり、手摺部材の取付作業に手間を要していた。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は、手摺部材を取り付ける作業が容易に行える手摺固定具及び手摺取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る手摺固定具は、2つの棒状の手摺部材の長手方向の端部同士を連結する手摺固定具であって、2つの開口部を有する連結部本体と、前記開口部に配置され、前記連結部本体に対して回動可能に連結され、前記連結部本体に固定可能に構成された角度調整部材と、前記手摺部材が挿通可能な挿通孔を有し、前記角度調整部材に着脱可能に係合される筒状部材と、を備え、前記角度調整部材には、前記手摺部材の端面と当接可能な当接面を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、連結部本体に対して回動可能に連結された角度調整部材により隣り合う手摺固定具間の角度が調整可能である。また、角度調整部材には手摺部材の端面と当接可能な当接面を有し、角度調整部材と着脱可能な筒状部材を有するため、筒状部材に挿通された手摺部材の端面を当接面に当接させた状態で筒状部材を角度調整部材に係合させると、手摺部材を手摺固定具に容易に取り付けられる。この結果、角度調整部材を位置決めした後は角度調整部材を動かすことがないため、手摺固定具の固定までの一連の取付作業が円滑に行える。したがって、手摺部材を傾斜させて取り付ける作業が容易に行える手摺固定具を提供できる。
【0010】
本発明に係る手摺固定具では、前記連結部本体に、建物の壁部に固定するための壁固定部が設けられていてもよい。
【0011】
この発明によれば、壁固定部を介して連結部本体を建物の壁部へ固定できる。
【0012】
本発明に係る手摺固定具では、前記角度調整部材と、前記筒状部材とに、互いに係合する位置合わせ部がそれぞれ設けられていてもよい。
【0013】
この発明によれば、角度調整部材と、筒状部材とに、互いに係合する位置合わせ部が設けられているため、手摺部材を挿通した筒状部材を、連結部本体に固定された角度調整部材に容易に位置決めして係合させることができる。
【0014】
本発明に係る手摺固定具では、前記筒状部材には、前記角度調整部材に固定するための筒状部材固定ネジ孔と、前記手摺部材を固定するための手摺固定ネジ孔とが並んで設けられていてもよい。
【0015】
この発明によれば、筒状部材固定ネジ孔を介して筒状部材と角度調整部材とが固定され、手摺固定ネジ孔を介して筒状部材と手摺部材とが固定される。また、筒状部材固定ネジ孔と手摺固定ネジ孔とが並んで設けられているため、筒状部材を介して角度調整部材と手摺部材とを固定する作業を連続して円滑に行える。
【0016】
本発明に係る手摺固定具では、前記角度調整部材に、離間配置された2つの角度調整部材間の距離を測るための計測テープを貼着可能なテープ貼付面が形成されていてもよい。
【0017】
この発明によれば、角度調整部材に、離間配置された2つの角度調整部材間の距離を測るための計測テープを貼着可能なテープ貼付面が形成されているため、角度調整部材が連結部本体に位置決めされた後、計測テープをテープ貼付面に貼着させると、角度調整部材から計測テープが外れ難い。この結果、階段のように高さが異なる二点間に架設する手摺部材の取付寸法を容易に計測できる。
【0018】
本発明に係る手摺取付方法は、上記手摺固定具を用いた手摺取付方法であって、2以上の前記手摺固定具の前記連結部本体をそれぞれ建物の壁部に固定する連結部本体取付工程と、隣り合う前記手摺固定具の前記角度調整部材の前記当接面同士を対向させた位置で前記角度調整部材の前記連結部本体に対する位置を位置決めして固定する角度調整部材位置決め工程と、隣り合う前記手摺固定具の前記当接面間の離間距離を計測する離間距離計測工程と、計測した前記離間距離の長さに前記手摺部材を切断する手摺部材切断工程と、切断した前記手摺部材に前記筒状部材を挿入して、前記手摺部材の第一端面を前記手摺固定具の一方の前記当接面に当接させる手摺部材当接工程と、前記筒状部材を前記手摺部材が当接した前記角度調整部材に係合させる筒状部材係合工程と、前記手摺部材の前記第一端面側の端部と前記筒状部材とをねじ固定する手摺部材固定工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、角度調整部材位置決め工程により角度調整部材を位置決めして固定すると、その後、角度調整部材を動かす必要がない。このため、手摺部材を取り付ける作業が簡略化できる。また、角度調整部材の離間距離が変動しないため、計測された離間距離の長さで切断した手摺部材と、実際の設置寸法との誤差の発生を抑えることができる。したがって、手摺部材を取り付ける作業が容易に行える。
【0020】
本発明に係る手摺取付方法では、前記離間距離計測工程において、離間配置された2つの角度調整部材間の距離を測るための計測テープの端部を前記角度調整部材に貼り付けて前記離間距離を計測してもよい。
【0021】
この発明によれば、離間距離計測工程において、計測テープの端部を角度調整部材に貼り付けて離間距離を計測するため、離間距離計測時にメジャーが外れることがなく、一人の作業者でも計測できる。
【発明の効果】
【0022】
手摺部材を取り付ける作業が容易に行える手摺固定具及び手摺取付方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係る手摺固定具1Aについて
図1から
図4を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る手摺固定具1Aを使用して手摺を取り付けた施工例を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る手摺固定具1Aを示す斜視図である。
図3は、本実施形態に係る手摺固定具1Aを示す側面図である。
図4は、本実施形態に係る手摺固定具1Aの分解斜視図である。
【0025】
本実施形態に係る手摺固定具1Aは、2つの棒状の手摺部材10,10の長手方向の端部同士を連結する器具である。例えば、
図1に示すように、手摺固定具1Aは、階段Sの壁部Wに手摺部材10を設置する際に使用される。
図1には、後述する第二実施形態及び第三実施形態に係る手摺固定具1B,1Cも併せて図示している。手摺Hは、複数の手摺固定具1A,1B,1Cと、複数の手摺部材10とからなる手摺ユニット100で構成されている。手摺ユニット100には、離間配置された2つの角度調整部材間の距離を測るための計測テープ7を更に備えてもよい。階段Sに手摺Hを設ける場合、手摺部材10が階段Sの傾斜に沿って傾斜して取り付けられる。
図1に示すような平面視L字型の階段Sの壁部Wに手摺Hを設ける場合、壁部Wの平面領域に取り付ける手摺固定具1Aと、壁部Wの入隅部に取り付ける手摺固定具1Bと、壁部Wの出隅部に取り付ける手摺固定具1Cとを適宜用いる。本実施形態に係る手摺固定具1Aは、壁部Wの平面領域に取り付ける例である。
【0026】
手摺部材10は、木製、樹脂製、アルミニウム合金製等の円柱形状の長尺部材である。
【0027】
手摺固定具1Aは、
図1から
図4に示すように、連結部本体2Aと、角度調整部材3,3と、回転規制部材6,6と、筒状部材4,4と、を備える。手摺固定具1Aは、手摺部材10を壁部Wから離間した位置で、壁部Wに平行となるように壁部Wに取り付ける。詳細は後述するが、
図4に示すように、手摺固定具1Aは、基準線Lに沿って、連結部本体2Aの両側に、角度調整部材3と、筒状部材4とがそれぞれ並んで設けられている。基準線Lは、後述する連結部本体2Aの開口部21の中心軸を通る線である。以下の説明では、手摺固定具1Aが壁部Wに固定された状態において上下方向となる向きを適宜上下方向と称する。
【0028】
連結部本体2A,角度調整部材3、及び筒状部材4は、アルミニウム合金製の部材であり、回転規制部材6は、樹脂製の部材である。
【0029】
図4に示すように、連結部本体2Aは、外形状が略円柱形であり、円柱の中心軸線方向の両端部にそれぞれ開口部21が形成されている。連結部本体2Aの2つの開口部21は、それぞれ連結部本体2Aの中心軸(基準線L)に沿って窪む穴状に形成されており、穴状の内部にシャフト22が設けられている。シャフト22は、開口部21の底部から連結部本体2Aの端部に向かって中心軸上に沿って突出している。シャフト22には長手方向に延びるネジ孔23が形成されている。
【0030】
連結部本体2Aには、建物の壁部Wに連結部本体2Aを固定するための壁固定部5Aが設けられている。
図2に示すように、壁固定部5Aは、アーム部55と、壁部Wに固定される壁固定端50Aと、連結部本体2Aに固定される本体固定端54とを備えている。アーム部55の下端部に壁固定端50Aが設けられ、アーム部55の上端部に本体固定端54が設けられている。本体固定端54は、連結部本体2Aの円弧形状に沿った曲面形状を有し、上下方向に貫通するネジ孔543,543(
図4参照)が形成されている。本体固定端54は連結部本体2Aの外周側面の下部に当接させた状態で本体固定端54の下部で固定されている。
図4に示すように、アーム部55の下部には、着脱可能なカバー部材551を備えている。
【0031】
本実施形態に係る手摺固定具1Aは、壁部Wの平面領域に取り付けられる為、壁固定端50Aは、鉛直方向に延びる平面状に形成されている。壁固定端50Aは、壁部Wに固定されるブラケット(不図示)との係合孔541及び複数のネジ孔542を備える。
【0032】
角度調整部材3は、連結部本体2Aに対して回動可能に連結され、連結部本体2Aに固定可能に構成された部材である。
図5は、角度調整部材3の
図4に示す基準線Lに沿う方向の断面図である。
図6は、角度調整部材3を基準線L方向に沿って柱部36から見た図である。
図4及び
図5に示すように、角度調整部材3は、略半球体形状を有する球状部35と、球状部35の円端面35aから基準線L方向に突出する柱部36とを有する。円端面35aは、基準線Lに直交する面である。角度調整部材3は内部にシャフト22が挿通可能な中空部38が形成されている。
【0033】
球状部35には、球状部35の内外に貫通し、シャフト22が挿通可能な角度調整スリット33(以下、「スリット33」と記す。)が形成されている。スリット33は、球状部35の頂部に第一端部33aが位置し、球状部35を基準線L方向から見たときに、球面の頂部から上下方向に直線状に延びて形成されている。スリット33は、第一端部33aから第二端部33bまでの開口角度θが50度の円弧状のスリットである。
【0034】
柱部36は、球状部35の円端面35aの外周縁部よりも内側に位置する。
図6に示すように、柱部36の中空部38には、上下方向に沿って形成され、対向して形成された一対のガイド面39a,39aからなる矩形部39を有する。矩形部39は、中空部38の上部及び下部に2か所形成されている。上下の各矩形部39,39は、ガイド面39a,39a同士の離間距離が等しく形成されている。
【0035】
柱部36の上下端部には、柱部36の外面から中空部38まで貫通するネジ孔37,37が形成されている。
図5に示すように、ネジ孔37,37は、柱部36の外面から中空部38の球状部35側に向かって傾斜して形成されている。
【0036】
柱部36には、離間配置された2つの角度調整部材3,3間の距離を測るための計測テープ7(
図13参照)を貼着可能なテープ貼付面34が形成されている。テープ貼付面34は、柱部36の横側面の両側に形成されている。テープ貼付面34は、柱部36の上下方向に平行な平面である。
【0037】
柱部36は、基準線L方向における球状部35とは反対側の端部に、基準線Lと直交する平面部からなる当接面32が形成されている。当接面32は、手摺部材の端面と当接可能な面である。
【0038】
柱部36と、球状部35の円端面35aとの境界部分には、円端面35aから基準線L方向に突出する凸部31(位置合わせ部)が形成されている。凸部31は、基準線L方向から見たときに、柱部36の横側面の両側に設けられている。つまり、円端面35aと各テープ貼付面34との境界部分に凸部31が形成されている。
【0039】
図4に示すように、角度調整部材3と開口部21との間には座金29が設けられている。座金29は、球状部35の曲面と同様に湾曲して形成されている。座金29の中央部にはシャフト22が挿通される挿通孔29aが形成されている。挿通孔29aには、開口部の円弧形状に沿って湾曲する一対の円弧壁29b,29bが形成されている。
【0040】
回転規制部材6は、位置決めされて固定された後の角度調整部材3が回転することを防ぐために設けられた部材である。回転規制部材6は、略円柱形状を有し、中空部を有する樹脂部材である。回転規制部材6は、基準線L方向の一端部側の面にシャフト22が挿通される貫通孔61が基準線Lに沿って形成されている。回転規制部材6には、回転規制部材6の横側面の両側に平面部62が形成されている。平面部62は、回転規制部材6の上下方向に平行な平面である。平面部62間の寸法は、柱部36の矩形部39の一対のガイド面39a,39a間の離間距離よりも僅かに小さく、矩形部39内に挿入可能に構成されている。
【0041】
筒状部材4は、角度調整部材3に着脱可能に係合される部材である。筒状部材4は、略円筒形状の部材であり、手摺部材10が挿通可能な挿通孔44を有する。筒状部材4の外径は、角度調整部材3の球状部35の直径と略等しい。筒状部材4は、角度調整部材3側に位置する端部開口45に、2つの凹部41,41(位置合わせ部)が形成されている。2つの凹部41,41は、筒状部材4の上下方向に直交する位置に形成されている。
【0042】
筒状部材4には、下端部に上下方向に貫通する第1ネジ孔42(筒状部材固定ネジ孔)と第2ネジ孔43(手摺固定ネジ孔)とが形成されている。第1ネジ孔42は、筒状部材4を角度調整部材3に連結固定するためのネジ孔である。第2ネジ孔43は、手摺部材10を筒状部材4に固定するためのネジ孔である。第1ネジ孔42と第2ネジ孔43とは、基準線L方向に沿って離間して並んで形成されている。
【0043】
次に、手摺固定具1Aを構成する各部材の接続態様を説明する。
手摺固定具1Aは、連結部本体2Aの各開口部21に角度調整部材3が配置されている。具体的には、座金29が角度調整部材3の球状部35に当接され、一対の円弧壁29b、29bがスリット33内に挿入されている。この状態で座金29と球状部35とが、連結部本体2Aの開口部21内に挿入されている。角度調整部材3の中空部38内には、回転規制部材6が挿入されている。
【0044】
シャフト22は、連結部本体2A側から順に、座金29の挿通孔29a、角度調整部材3のスリット33、及び回転規制部材6の貫通孔61を貫通している。シャフト22の突出端は、回転規制部材6の貫通孔61に係合されている。この状態で、長ネジ202が、回転規制部材6側から連結部本体2A側に向かって挿通されている。回転規制部材6の貫通孔61と、スリット33と、座金29とに挿通されたシャフト22のネジ孔23に、長ネジ202が螺合されている。このため、角度調整部材3と、回転規制部材6とは、連結部本体2Aに対する基準線L方向の相対位置が固定されている。また、回転規制部材6は、シャフト22に係合されており、連結部本体2Aに対する位置は変化しない。
【0045】
角度調整部材3は、連結部本体2Aに対して基準線L周りに回転可能且つ上下方向に回動可能に連結されている。シャフト22がスリット33の頂部側の第一端部33aに当接しているときに、角度調整部材3は、連結部本体2Aに対してシャフト22周り(基準線L周り)に回転可能に構成されている。
【0046】
スリット33は、シャフト22がスリット33内を摺動可能な開口寸法を有する。シャフト22及び長ネジ202により、角度調整部材3は連結部本体2Aの開口部21に対する基準線L方向の相対位置は固定されているが、上下方向への移動は可能に構成されている。また、長ネジ202を更に締め込むと、連結部本体2Aに対する角度調整部材3の位置が固定されるように構成されている。
【0047】
角度調整部材3は、スリット33の第二端部33bが連結部本体2Aの上部側または下部側に位置するときのみ、上下方向に移動可能に構成されている。つまり、基準線L方向から見たときにスリット33の延設方向が上下方向に沿って配置されているときのみ、角度調整部材3が連結部本体2Aに対して上下方向に回動する(
図3参照)。角度調整部材3は、基準線L方向の相対位置が固定されているため、施工者が角度調整部材3の柱部36を把持して上下方向に力を加えると、球状部35の球面が開口部21内をスリット33の延設方向に沿って移動し、柱部36の基準線Lに対する角度が変わる。つまり、スリット33がシャフト22との交点に沿って上下方向に相対移動し、角度調整部材3は、シャフト22を起点として上下方向に回動可能である。スリット33の開口角度θは50度であるため、角度調整部材3は、基準線Lに対する角度が0度(基準線L上)から50度の範囲で回動する(
図5参照)。
【0048】
また、角度調整部材3を基準線L周りに180度回転させることにより、スリット33の第二端部33bの位置が変更できる。スリット33は球状部35の頂部から上下方向の一方に延設されているため、角度調整部材3を基準線Lに対して上方に傾斜させる場合は、スリット33の第二端部33bを上方に配置する。角度調整部材3を基準線Lに対して下方に傾斜させる場合は、スリット33の第二端部33bを下方に位置する。
【0049】
回転規制部材6は、連結部本体2Aに対して回動不能である。このため、角度調整部材3が上下方向に回動し、柱部36が基準線Lに対して傾斜しても、回転規制部材6は基準線L上で保持される。したがって、角度調整部材3が上下方向に回動する際、角度調整部材3のみが回動し、基準線L上で位置が保持された回転規制部材6は中空部38の矩形部39内に進入する。その結果、柱部36が基準線Lに対して傾斜するように角度調整部材3が回動すると、角度調整部材3は、回転規制部材6により基準線L周りの回転が規制される。
【0050】
筒状部材4は、製品の納入時の形態では、連結部本体2Aとは分離されている。筒状部材4は、端部開口45が角度調整部材3の円端面35aに当接するように柱部36に外挿される。このとき、凹部41を凸部31と係合させることにより、筒状部材4と角度調整部材3との周方向の位置が固定可能である。
【0051】
筒状部材4は、第1ネジ孔42と柱部36のネジ孔37とが対向配置された状態でネジ90を介して筒状部材4が角度調整部材3に固定可能に構成されている。
【0052】
(第二実施形態)
第二実施形態に係る手摺固定具1Bについて
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、本実施形態に係る手摺固定具の上面図である。
図8は、本実施形態に係る手摺固定具の斜視図である。本実施形態に係る手摺固定具1Bは、入隅部用の手摺固定具であり、連結部本体2Bの構成が第一実施形態と異なる。以下の説明において、上記の第一実施形態と同様の構成には第一実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0053】
図1及び
図8に示すように、本実施形態に係る手摺固定具1Bは、階段Sの壁部Wの入隅部において、手摺部材10をそれぞれの壁部Wに沿って配置して連結可能に構成されている。第一実施形態では、壁部Wの平面領域に取り付ける手摺固定具1Aの例を示した為、連結部本体2Aが円筒形状である例を示した。一方、本実施形態に係る手摺固定具1Bは、壁部Wの入隅部に設けられる。そのため、
図7に示すように、連結部本体2Bは、連結する各手摺部材10を各壁部Wに沿って配置するために、曲折して開口部21B,21Bが平面視において90度ずれた位置で開口している。したがって、各開口部21B,21Bの中央を通る基準線Lが90度の角度となるように開口部21B,21Bが設けられている。
【0054】
壁固定部5は、連結部本体2Bの三角形状の中央部の下面に本体固定端54が固定され、アーム部55が外側の一辺24Bよりも外側に延びて配置されている。壁固定端50Bは、平面視で中央部が略直角に突出して形成され、壁部Wの入隅部に面接触して固定可能に構成されている。
【0055】
角度調整部材3及び筒状部材4の各構成は第一実施形態と同様であり、それぞれ基準線L上に配置されている。
【0056】
手摺固定具1A,1B、1Cでは、各開口部の中心軸と基準線Lとが一致するように、角度調整部材及び筒状部材を取り付ける。第一実施形態に係る手摺固定具1Aでは、基準線Lが一直線の場合を示したが、この他、第二実施形態及び後述する第三実施形態の場合、各開口部からのびる基準線Lが平面視で略直交する方向に延びる。
【0057】
(第三実施形態)
第三実施形態に係る手摺固定具1Cについて
図9及び
図10を用いて説明する。第三実施形態に係る手摺固定具1Cは壁部Wの出隅部に設けられる手摺固定具である。第三実施形態に係る手摺固定具1Cは、壁固定部5Cの構成が第二実施形態に係る手摺固定具1Bと異なる。第二実施形態では、壁固定部5Bが各開口部21B,21Bの開口方向とは反対側に壁固定端50Bが位置するように設けられている。これに対し、本実施形態に係る手摺固定具1Cは壁部Wの出隅部に設けられるため、
図9及び
図10に示すように、壁固定部5Cは、連結部本体2Cの下面に固定され、平面視において、アーム部55が中央部の曲折部分の内側に延設されている。また、壁固定端50Cが平面視略直角な凹形状で形成されている。壁固定端50Cは、出隅部における壁部Wの2面に固定可能に構成されている。
【0058】
図11は、第三実施形態に係る手摺固定具1Cの変形例を示す斜視図である。手摺固定具1A,1B,1Cでは、壁固定部5A,5B,5Cがそれぞれ連結部本体2A,2B,2Cに固定されている例を示したが、壁固定部5Cが連結部本体2Bに固定されている構成は必須の構成ではない。
図11に示す変形例のように、壁固定部51Cが手摺部材10に直接固定される構成であってもよい。
【0059】
(手摺取付方法)
次に、手摺固定具1Aを用いて手摺部材10を取り付ける手摺取付方法について
図12から
図16を参照して説明する。一例として、階段Sの壁部Wに第一実施形態に示した平面固定用の手摺固定具1Aを階段Sの下段側及び上段側の2か所に設け、この手摺固定具1AD,1AU間に手摺部材10を設ける例を示す。
図12から
図15は、手摺固定具1AD,1AUを用いた手摺取付方法を示す模式図である。
図16は、手摺固定具1AD,1AUを用いた手摺取付方法を示すフローチャートである。
【0060】
まず、
図12に示すように、階段Sの壁部Wに2つの手摺固定具1AD,1AUの各連結部本体2AD,2AUを固定する(連結部本体取付工程S1)。壁固定部5AD,5AUは予め連結部本体2Bの下面に固定されている。階段Sの下段側及び上段側の壁部Wにブラケット(不図示)を固定する。続いて、下段側の壁固定部5ADのカバー部材551(
図4参照)をアーム部55から取り外し、壁固定端50Aの係合孔541をブラケットに係止して壁固定端50Aをブラケットに当接させ、ネジ孔542にネジ(不図示)を通して壁部Wに壁固定部5ADを固定する。再度カバー部材551を壁固定部5ADに取り付ける。上段側の壁固定部5AUも同様に壁部Wに固定する。壁固定部5AD,5AUを取り付ける順序は上段側が先であってもよい。
【0061】
次に、隣り合う手摺固定具1AD,1AUの角度調整部材3D,3Uの当接面32D,32U同士を対向させた位置で、角度調整部材3D,3Uの連結部本体2AD,2AUに対する位置を位置決めして固定する(角度調整部材位置決め工程S2)。すなわち、階段Sの下段側の壁部Wに取り付けた手摺固定具1ADにおける2つの角度調整部材3のうち、上段側に位置する角度調整部材3Dを当接面32Dが斜め上方を向くように回動させる。また、階段Sの上段側の壁部Wに取り付けた手摺固定具1AUにおける下段側に位置する角度調整部材3Uを当接面32Uが斜め下方を向くように回動させる。
【0062】
具体的には、施工者が下段側の手摺固定具1ADの角度調整部材3Dを、スリット33の第二端部33bが上方に位置するように、角度調整部材3の基準線L周りの向きを調整する。続いて、角度調整部材3Dを、当接面32が斜め上方に向くように上方に回動させる。当接面32の向きが調整されたら、長ネジ202を締めて角度調整部材3Dの角度を固定する。上段側の手摺固定具1AUの角度調整部材3Uは、スリット33の第二端部33bが下方に位置するように、角度調整部材3Uの基準線L周りの向きを調整する。続いて、角度調整部材3Uを、当接面32Dが斜め下方に向くように下方に回動させる。当接面32の向きが調整されたら、長ネジ202を締めて角度調整部材3の角度を固定する。
【0063】
次に、
図13に示すように、隣り合う手摺固定具1AD,1AUの当接面32D,32U間の離間距離を計測する(離間距離計測工程S3)。ここで、離間配置された2つの角度調整部材3D,3U間の距離を測るための紙製の計測テープ7を使用する。計測テープ7は、後述する手摺部材切断工程S4で切断する前の初期状態の手摺部材10の長さ以上の長さを有する長尺部材である。計測テープ7の長手方向の両端部には、接着剤が塗布されたシール部71D,71Uが設けられている。シール部71D,71Uのうちの一方は、角度調整部材3のテープ貼付面34の基準線L方向の寸法と略等しい寸法で設けられており、他方のシール部は、テープ貼付面34の基準線L方向の寸法よりも長く設けられている。シール部71D,71Uは複数回貼付け可能な接着剤が塗布されている。
【0064】
シール部71D,71Uは計測テープ7の中間部分と異なる色で着色されており、シール部71D,71Uの位置が目視により識別可能に構成されている。また、
図13の(b)に拡大して示すように、計測テープ7の長手方向の端部に、角度調整部材3の凸部31の形状に合わせた切欠き711を設けてもよい。
【0065】
計測テープ7の一方のシール部71Uを上段側の手摺固定具1AUのテープ貼付面34に貼り付ける。テープ貼付面34は、横側面の両側に形成されているため、上段側の角度調整部材3U及び下段側の角度調整部材3Dの各テープ貼付面34,34に貼り付けると、壁部Wに平行して計測テープ7を架設できる。なお、計測テープ7をテープ貼付面34,34間に架設するときに角度調整部材3D,3Uの当接面32D,32Uの向きを微調整して再度、角度調整部材3を固定してもよい。計測テープ7を角度調整部材3D,3Uの当接面32D,32U間に架設後、計測テープ7の余剰部分を切断する。隣り合う手摺固定具1AD,1AUの各当接面32D,32Uに長手方向の端面を当接させる。そのため、計測テープ7に、当接面32D,32Uの位置をマーキングする。この結果、隣り合う手摺固定具1AD,1AUの当接面32,32間の離間距離が計測できる。
【0066】
続いて、切断後の計測テープ7を用いて、計測した離間距離の長さに手摺部材10を切断する(手摺部材切断工程S4)。計測テープ7のシール部71U,71Dをテープ貼付面34,34から剥がし、手摺部材10に貼り付ける。手摺部材10は、計測テープ7のマーキング位置に合わせて公知の方法により切断する。
【0067】
次に、
図14に示すように、切断した手摺部材10に筒状部材4D,4Uを挿入して、手摺部材10の第一端面を手摺固定具1AD,1AUの一方の当接面32に当接させる(手摺部材当接工程S5)。例えば、上段側の手摺固定具1ADの筒状部材4Dの挿通孔44内に手摺部材10の一端面側の端部を挿入する。筒状部材4Dは、凹部41が設けられている端部開口45が手摺部材10の端面側となるように手摺部材10に外挿する。その後、手摺部材10の一端面を手摺固定具1ADの当接面32に当接させる。
【0068】
次に、手摺部材10の端面を当接面32Dに当接させた状態で筒状部材4Uを角度調整部材3Uに係合させる(筒状部材係合工程S6)。具体的には、
図15に示すように、手摺部材10の端面を当接面32Dに当接させた状態で筒状部材4Dを角度調整部材3D側に移動させ、筒状部材4Dの凹部41を角度調整部材3Dの凸部31と係合させる。このとき、第1ネジ孔42及び第2ネジ孔43が下部に位置するように、筒状部材4Uの周方向の位置を合わせる。凹部41と凸部31とを係合させると、筒状部材4Dの第2ネジ孔43が角度調整部材3Dの下側のネジ孔37に対向する。この状態で、ネジ90を第2ネジ孔43及びネジ孔37に螺合させて筒状部材4Dを角度調整部材3と固定する。
【0069】
次に、手摺部材10の第一端面側の端部と筒状部材4Dとをねじ固定する(手摺部材固定工程S7)。筒状部材4Dの第1ネジ孔42にネジ91を挿入し、手摺部材10の下部を筒状部材4Dに固定する。この結果、手摺部材10が筒状部材4Dを介して角度調整部材3に固定される。上段側の手摺固定具1AUにおいても、手摺部材当接工程S5から手摺部材固定工程S7を行うことにより、手摺部材10を下段側の手摺固定具1AUに固定する。
【0070】
以上により、手摺部材10を壁部Wに取り付けられる。入隅部用及び出隅部用の手摺固定具1B,1Cも同様に、上記工程により取り付けることができる。
【0071】
本実施形態に係る手摺固定具1A,1B,1Cによれば、連結部本体2A,2B,2Cに対して回動可能に連結された角度調整部材3A,3B,3Cにより隣り合う手摺固定具1A,1B,1C間の角度が調整可能である。また、角度調整部材3A,3B,3Cには手摺部材10の端面と当接可能な当接面32を有し、角度調整部材3A,3B,3Cと着脱可能な筒状部材4を有するため、筒状部材4に挿通された手摺部材10の端面を当接面32に当接させた状態で筒状部材4を角度調整部材3A,3B,3Cに係合させると、手摺部材を手摺固定具1A,1B,1Cに容易に取り付けられる。この結果、角度調整部材3A,3B,3Cを位置決めした後は角度調整部材3A,3B,3Cを動かすことがないため、手摺固定具1A,1B,1Cに手摺部材10を固定するまでの一連の取付作業が円滑に行える。したがって、手摺部材10を傾斜させて取り付ける作業が容易に行える手摺固定具1A,1B,1Cを提供できる。
【0072】
本実施形態に係る手摺固定具1A,1B,1Cによれば、壁固定部5A,5B,5Cを介して連結部本体2A,2B,2Cを建物の壁部Wへ固定できる。
【0073】
本実施形態に係る手摺固定具1A,1B,1Cによれば、角度調整部材3A,3B,3Cの凸部31と、筒状部材4の凹部41とが互いに係合するため、手摺部材10を挿通した筒状部材4を、連結部本体2A,2B,2Cに固定された角度調整部材3A,3B,3Cに容易に位置決めして係合させることができる。
【0074】
本実施形態に係る手摺固定具1A,1B,1Cによれば、第1ネジ孔42を介して筒状部材4と角度調整部材3A,3B,3Cとが固定され、第2ネジ孔43を介して筒状部材4と手摺部材10とが固定される。また第1ネジ孔42と第2ネジ孔43とが並んで設けられているため、筒状部材4を介して角度調整部材3A,3B,3Cと手摺部材10とを固定する作業を連続して円滑に行える。また、第1ネジ孔42及び第2ネジ孔43を手摺固定具1A,1B,1Cの下側に設けられるため、ネジによる固定部が外部から視認され難く、意匠性に優れた手摺固定具1A,1B,1Cを提供できる。
【0075】
本実施形態に係る手摺固定具1A,1B,1Cによれば、角度調整部材3A,3B,3Cに、計測テープ7を貼着可能なテープ貼付面34が形成されているため、角度調整部材3A,3B,3Cが連結部本体2A,2B,2Cに位置決めされた後、計測テープ7をテープ貼付面34に貼着させると、角度調整部材3A,3B,3Cから計測テープ7が外れ難い。この結果、階段Sのように高さが異なる二点間に架設する手摺部材10の取付寸法を容易に計測できる。
【0076】
本実施形態に係る手摺取付方法によれば、角度調整部材3A,3B,3Cが位置決めされて固定されると、その後、角度調整部材3A,3B,3Cを動かす必要がない。このため、手摺部材10を取り付ける作業が簡略化できる。また、角度調整部材3A,3B,3Cの離間距離が変動しないため、計測された離間距離の長さで切断した手摺部材10と、実際の設置寸法との誤差の発生を抑えることができる。したがって、手摺部材10を取り付ける作業が容易に行える。
【0077】
本実施形態に係る手摺取付方法によれば、離間距離計測工程S3において、計測テープ7の端部を角度調整部材3A,3B,3Cに貼り付けて離間距離を計測するため、離間距離計測時にメジャーが外れることがなく、一人の作業者でも計測できる。
【0078】
上記実施形態では、計測テープ7をテープ貼付面34に貼り付ける例を示したが、計測テープ7は必須の構成ではなく、メジャーを用いてもよい。
【0079】
上記実施形態では、階段Sの壁部Wに手摺固定具1A,1B,1Cを設ける例を示したが、スロープの壁部Wに設ける手摺固定具としても使用できる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
また、上述の実施形態及び各変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。