(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車室(キャビン)の床(フロア)にはフロアカーペットが敷設される。フロアカーペットは車室のフロア形状に沿って立体的に成形される。例えばフロアパネルの車幅方向中央には、床面から上方に隆起するフロアトンネルが車長方向に沿って延設される。これに対応して、フロアカーペットの車幅方向中央部には、床面から上方に隆起するトンネルカバー部が形成される。
【0003】
車両の組み立て時には、既に組み上げられた車体(ボデー)内にフロアカーペットが装入される(詰め込まれる)。展開状態のフロアカーペットを車体内に装入させようとしても、車体のピラー等に引っ掛かって装入できないので、予めコンパクトに折り畳まれた状態でフロアカーペットが車体内に装入される。
【0004】
例えば特許文献1では、フロアカーペットの折り畳み作業を容易に行うために、
図5に例示されるように、フロアカーペット100のトンネルカバー102の裏地に車長方向に溝104が形成される。
図5下段に例示されるように、この溝104を折れ線としてフロアカーペット100が折り畳まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フロアカーペットの裏面に溝を形成してこれを折れ線とした場合、フロアカーペットを折り畳んだ状態から展開した際に、溝の反対側、つまりフロアカーペットの表面に折れ皺が形成される場合がある。このような折れ皺が、トンネルカバー等、乗員の目に付き易い箇所に形成されると、フロアカーペットの見栄えが悪化するおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、フロアカーペットの折れ皺が乗員に視認されることを抑制可能な、車両用フロアカーペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両用フロアカーペットに関する。当該フロアカーペットは、車室のフロア形状に沿って立体的に成形される。車両用フロアカーペットは、トンネルカバー部とフロアカバー部を備える。トンネルカバー部は、フロアの車幅方向中央に形成されたフロアトンネルの形状に沿って成形され、床面から上方に隆起し車長方向に延設される。フロアカバー部は、トンネルカバー部の車幅方向両側に設けられ、上記床面を構成する。フロアカバー部の、フロアマットに覆われる被覆部には、折れ線となる溝が形成される。
【0009】
上記発明によれば、フロアカバー部の、フロアマットに覆われる被覆部に、折れ線となる溝が形成される。普段乗員の目に晒されない被覆部に溝が形成されることで、当該溝に対応して形成される折れ皺が乗員に視認されることを抑制可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フロアカーペットの折れ皺が乗員に視認されることを抑制可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1−
図4を参照して、本実施形態に係る車両用フロアカーペットを説明する。なお
図1−
図4において、車両前後方向(以下適宜、車長方向と記載する)を記号FRで表される軸で示し、車両幅方向(以下適宜、車幅方向と記載する)を記号RWで表される軸で示し、鉛直方向(以下適宜、車高方向と記載する)を記号UPで表される軸で示す。記号FRはFrontの略であり、車長方向軸FRは車両前方を正方向とする。記号RWはRight Widthの略であり、車幅方向軸RWは車幅右方向を正方向とする。また車高方向軸UPは上方向を正方向とする。
【0013】
図1に例示されるように、本実施形態に係る車両用フロアカーペット10は、車室のフロア形状に沿って立体的に成形される。例えばフロアカーペット10には、プレス加工等の立体成形加工が施される。
【0014】
例えばフロアカーペット10は、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の合成繊維から構成される不織布をプレス加工等することで成形される。またフロアカーペット10は、裏地と表地とからなる多層構造としてもよい。この場合、裏地に後述する溝16を形成することで、乗員による溝16の視認が免れる。
【0015】
フロアカーペット10は、例えば車室床面の全面、またはほぼ全面を覆うように敷設される。なお、
図1ではフロアカーペット10の(車長方向)前方部分のみを抜き出して図示しており、例えばフロントシート(前席)から後方部分については図示を省略している。
【0016】
また、
図1に例示されているように、フロアカーペット10の前方部分は車幅方向右側部分と左側部分とに分割されているが、後方部分は繋がっており、全体として単一(一枚もの)の部材となっている。
【0017】
フロアカーペット10は、フロアパネル34(
図2参照)に形成されたそれぞれの部位をカバーする。具体的にフロアカーペット10は、フロアカバー部11とトンネルカバー部20を備える。
【0018】
フロアカバー部11は、トンネルカバー部20の車幅方向両側に設けられ、車室の床面を構成する。例えばフロアカバー部11は、その被覆する箇所に応じて、トーボードカバー部12、前席足元カバー部13、フロントシートクロスメンバカバー部14、及びシートブラケットカバー部15を備える。
【0019】
後述するように、前席足元カバー部13及びトーボードカバー部12は、細幅の破線で示されるようにフロアマット30で覆われる。この、フロアマット30で覆われる、フロアカバー部11の被覆部に、折れ線となる溝16が形成される。
【0020】
トンネルカバー部20は、フロアトンネル32(
図2参照)の形状に沿って成形される。フロアトンネル32は、フロアパネル34の車幅方向中央に形成され、床面に対して上方に隆起し、車長方向に延設される。フロアトンネル32には、例えば図示しない排気管が収容される。フロアトンネル32は車室前端のダッシュパネルから車長方向に沿って延設される。
【0021】
このようなフロアトンネル32を覆うように、トンネルカバー部20が形成される。トンネルカバー部20は、フロアカーペット10の幅方向(車幅方向)中央に形成され、フロアカーペット10の床面、つまりフロアカバー部11の上面から車高方向上方に隆起し、車長方向に延設される。
【0022】
図2にはフロアカーペット10が車室のフロアに敷設されたときの例が示される。なお、
図2では、
図1のA−A断面図に対応した断面図が例示されている。
【0023】
フロアパネル34上には防音材であるフロアサイレンサ36が敷設される。さらにフロアサイレンサ36上にフロアカーペット10が敷設される。
【0024】
図1、
図2を参照して、トンネルカバー部20は、上方に延設され車幅方向に対向する一対の側面部22A,22Bと、一対の側面部22A,22B間に水平に延設される上面部24と、一対の側面部22A,22Bと上面部24(24A,24B)とを繋ぐ曲面部26A,26Bを有する。例えば曲面部26A,26Bは、
図2のように、背面視で円弧状となっている。これら側面部22A,22B、上面部24、及び曲面部26A,26Bは上述したようにプレス加工等によって成形される。
【0025】
また、トンネルカバー部20の上面部24は車幅方向に分割される。例えばトンネルカバー部20の上面部24には、車長方向に切り込み28が形成される。これにより、上面部24は一対の上面部小片24A,24Bに分割される。これら一対の上面部小片24A,24Bは、車両組み立ての際に、曲面部26A,26Bの中央部分から上方に起こされ、
図2に例示されるように、インストルメントパネルの車幅方向中央から下方に延設されるセンターパネル52A,52Bに固定される。
【0026】
図1に戻り、フロアカバー部11のトーボードカバー部12及び前席足元カバー部13には、細幅破線で示すフロアマット30が敷設される。フロアマット30は図示しない固定ピンや面ファスナー等によって、トーボードカバー部12及び前席足元カバー部13に脱着可能に固定される。そしてフロアマット30が汚れた際にはトーボードカバー部12及び前席足元カバー部13からフロアマット30が外され洗浄される。
【0027】
ここで、トーボードカバー部12及び前席足元カバー部13の、フロアマット30に覆われる部分(被覆部)は、通常状態、つまりフロアマット30が固定(装着)されている状態では乗員の視線に晒されない。そこで本実施形態に係るフロアカーペット10では、フロアマット30に覆われる被覆部、言い換えると隠れ面となる部位に、フロアカーペット10を折り畳む折れ線となる溝16を形成している。
【0028】
後述するように、フロアカーペット10を車室のフロアに敷設させる際に、フロアカーペット10がコンパクトに折り畳まれた状態で車室に装入される(詰め込まれる)。この折り畳みの際に、フロアカーペット10に折り癖が付いて溝16の反対側に折れ皺が形成される場合がある。このような場合であっても、本実施形態に係るフロアカーペット10では、折れ線となる溝16がフロアカーペット10の被覆部に形成されるため、当該溝16の反対側に折れ皺が形成されても、当該折れ皺はフロアマット30に被覆され、乗員の目に触れることが抑制される。
【0029】
例えば
図1に例示されるように、溝16はフロアカバー部11に形成される。溝16は車長方向に直線状に形成される。フロアマット30に被覆されることから、溝16はフロアカバー部11の表面、つまり車室への露出面に形成されてもよく、またフロアカバー部11の裏面、つまりフロアパネルへの取り付け面に形成されてもよい。フロアマット30の取り外し時における溝16の乗員への露出を避けるとの観点から、例えば
図3に例示されるように、溝16(16A,16B)はフロアカーペット10の裏面(フロアパネル34への貼り付け面)に形成されることが好適である。
【0030】
例えば、フロアカーペット10が裏地層と表地層の二層構造である場合に、裏地層のみに溝16が形成されてよい。このような構成とすることで、フロアカーペット10の表面(上面)に溝16(切り込み)が露出することが避けられる。
【0031】
また、溝16は、例えば立体成形されたフロアカーペット10の稜線に接続されるように形成されていてもよい。例えば
図1を参照して、溝16は、トンネルカバー部20の車幅方向側面に形成された、フットレストカバー部17の稜線17Aの延長線上に形成されてもよい。
【0032】
フロアカーペット10の稜線に接続されるようにして溝16が形成されることで、溝16の裏面、つまりフロアカーペット10の表面に形成された折れ皺は、フロアカーペット10の稜線に接続される。このような構成とすることで、折れ皺を稜線に接続された意匠の一部として利用することができる。したがって、フロアマット30の除去時等、仮に折れ皺が乗員に露出されても、見栄えの悪化を抑制可能となる。
【0033】
図4には、本実施形態に係るフロアカーペット10の折り畳みプロセスが例示される。
図4では
図1のA−A断面図に対応した断面を用いて、折り畳みプロセスが例示される。なお、折り畳みの形状を説明するため、トンネルカバー部20を挟んで車幅方向左右に配置された前席足元カバー部13が符号A,Bで区別される。また前席足元カバー部13とトンネルカバー部20の側面部22との切替部29についても同様の区別が施される。
【0034】
図4上段から中段に例示されるように、トンネルカバー部20の曲面部26Aを折れ線として、車幅方向右半分、つまり側面部22A及び前席足元カバー部13Aが反時計回りに反転される。これによりフロアカーペット10の車幅方向の寸法が約半分になる。
【0035】
さらに
図4の中段から下段に例示されるように、溝16Aを折れ線として、前席足元カバー部13Aが下方に屈曲させられる。これにより切替部29Aが倒れこむ。同様にして、溝16Bを折れ線として、前席足元カバー部13Bが上方に屈曲させられる。これにより切替部29Bが倒れこむ。これにより、フロアカーペット10の高さ(車高方向幅)が低減される。
【0036】
このようにしてコンパクトに折り畳まれた状態でフロアカーペット10が車体(ボデー)内に装入される。車体内に装入された後、フロアカーペット10は展開されフロアパネル等のフロア部材に固定される。
【0037】
上記折り畳みプロセスにおいて、フロアカーペット10に折り癖が付いて展開後にもフロアカーペット10上に折れ皺が残留する場合がある。具体的には溝16A,16Bの反対面、つまりフロアカーペット10の表面(車室内への露出面)に折れ皺が形成される。
【0038】
しかしながら本実施形態に係るフロアカーペット10においては、フロアカバー部11の被覆部(前席足元カバー部13)に溝16を形成しこれを折れ線とすることで、その箇所に折れ皺を形成させ、通常、つまりフロアマット30の敷設時には乗員の視認を免れることが可能となる。