(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一のセンサ及び前記第二のセンサはそれぞれ放射エネルギ検出素子を含み、且つ、前記第一のセンサは、前記放射エネルギ検出素子の入射面側にレンズが設けられている請求項1に記載の過熱監視装置。
前記第一のセンサ及び前記第二のセンサは、同一の直線上に配置されているか、又は同一の直線を挟んで千鳥状に配置されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の過熱監視装置。
前記制御部は、前記放射エネルギと、前記第一のセンサ及び前記第二のセンサのうち、前記放射エネルギを検出したセンサを特定する識別情報とを対応付けて前記検出信号として出力し、
前記過熱検出部は、前記識別情報で特定される前記第一のセンサの前記第一の監視領域または前記識別情報で特定される前記第二のセンサの前記第二の監視領域から、前記過熱状態が生じている領域を特定する請求項9又は請求項10に記載の過熱監視装置。
前記過熱検出部は、前記検出信号に含まれる前記放射エネルギが、予め設定した基準エネルギよりも所定値以上大きいときに、過熱状態であると判断する請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の過熱監視装置。
前記過熱検出部は、当該過熱検出部と同一の放射エネルギ検出部に含まれる前記第一のセンサ及び前記第二のセンサに対応する同時刻における前記検出信号どうしを比較して前記過熱状態を検出する請求項9から請求項11のいずれ一項に記載の過熱監視装置。
前記過熱検出部は、前記第一のセンサ又は前記第二のセンサである一のセンサの過熱状態を、当該一のセンサの現時点の前記検出信号と、現時点よりも所定期間前の過去の時点における前記検出信号とを比較して検出する請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の過熱監視装置。
前記過熱検出部は、前記一のセンサの現時点を含む期間における前記検出信号と、前記過去の時点を含む期間における前記検出信号とを比較して、前記一のセンサの過熱状態を検出する請求項15に記載の過熱監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかである。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴的な構成の組み合わせの全てを含むものである。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一部分には同一符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なる。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る過熱監視装置の一例を示す構成図である。
図1に示す過熱監視装置100は、放射エネルギ検出部1と、過熱検出部2と、記憶部3と、過熱状態通知部4と、を備える。
放射エネルギ検出部1は、物体の放射エネルギを検知する三個以上のセンサ11と、制御部12とを備える。
センサ11は、第一のセンサSE1又は第一のセンサSE1の監視可能距離(第一の監視可能距離)よりも短い監視可能距離(第二の監視可能距離)を有する第二のセンサSE2からなる。放射エネルギ検出部1は、少なくとも第一のセンサSE1及び第二のセンサSE2を含み、合わせて三個以上のセンサ11を有し、後述の基板10に交互に一列に配置されるようになっている。ここでは、放射エネルギ検出部1が、三個のセンサ11a〜11cを有し、第一のセンサSE1からなるセンサ11a及び11cと、第二のセンサSE2からなるセンサ11bと、を備える場合について説明する。なお、ここでは、放射エネルギ検出部1が、二つの第一のセンサSE1と一つの第二のセンサSE2とを備える場合について説明するが、一つの第一のセンサSE1と、二つの第二のセンサSE2とを備える場合であっても適用することができる。また、センサ11の数、また、第一のセンサSE1、第二のセンサSE2の数は、合わせて三個以上であれば任意に設定することができる。
【0012】
第一のセンサSE1は、物体の放射エネルギを検知する第一の放射エネルギ検出素子SE1aと、この第一の放射エネルギ検出素子SE1aの受光面の前に、その表面と対向して配置されたレンズSE1bとを備える。第一のセンサSE1の視野角(第一の視野角)は、SN比の観点から、0°より大きく50°以下が好ましい。より好ましくは、視野角は20°である。
第二のセンサSE2は、第一の放射エネルギ検出素子SE1aと同一特性を有する第二の放射エネルギ検出素子SE2aを備える。第二のセンサSE2の視野角(第二の視野角)は、第一のセンサSE1の視野角よりも大きく且つ、この第一のセンサSE1の視野角との関係から、0°より大きく100°以下であることが好ましい。より好ましくは、視野角は80°である。
【0013】
第一の放射エネルギ検出素子SE1a及び第二の放射エネルギ検出素子SE2aは、例えば、赤外線検出素子又はサーモパイル等である。また、レンズSE1bは、ポリエチレン、シリコン等の赤外線透過性を有するフレネルレンズが適用される。なお、レンズは、フレネルレンズに限るものではなく、球面レンズ等、他のレンズであってもよい。
なお、ここでは、第一のセンサSE1のみがレンズSE1bを備える場合について説明するが、これに限るものではない。第一のセンサSE1及び第二のセンサSE2共にレンズを備えていてもよい。また、第一のセンサSE1が有する第一の放射エネルギ検出素子SE1a及び第二のセンサSE2が有する第二の放射エネルギ検出素子SE2aは、同一特性を有している必要はない。要は、第一のセンサSE1よりも第二のセンサSE2の方が監視可能距離がより短い特性を有していればよく、より具体的には、第一のセンサSE1の監視領域(第一の監視領域)を除く領域と第二のセンサSE2の監視領域(第二の監視領域)とが重なり、第一のセンサSE1と第二のセンサSE2とが互いに、監視領域どうし間で補間することが可能な特性を有していればよい。
【0014】
制御部12は、センサ11a〜11cに含まれる放射エネルギ検出素子SE1a又はSE2aで検出された放射エネルギを入力し、この放射エネルギの送信元のセンサ11を特定する識別情報を付加して検出信号として出力する。制御部12は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)等の処理回路と、MPU(microprocessor unit)等の演算回路と、SRAM(static random access memory)等の記憶部等と、を備えており、各センサ11で検出された放射エネルギと記憶部に格納された各センサの識別情報とを演算回路で対応付け、これを検出信号としてバス等の通信回線Lを介して有線又は無線で過熱検出部2に送信する。
過熱検出部2は、例えばマイクロコンピュータ等で構成され、制御部12から検出信号を入力し、検出信号に含まれる識別情報から、この検出信号の送信元のセンサ11を特定し、入力した放射エネルギが異常値を示しているか否かを判定する。
【0015】
放射エネルギが異常値を示しているか否かの判定は、例えば、放射エネルギが異常値であり修理が必要なレベルとみなすことの可能な値を第一の閾値Sth1とし、放射エネルギが基準エネルギよりも大きな値であるが修理を必要とするまでにはまだ余裕があり注意レベルであるとみなすことの可能な値を第二の閾値Sth2として予め設定しておく。なお、第二の閾値Sth2は、第一の閾値Sth1よりも小さく、基準エネルギよりも大きな値である。また基準エネルギは放射エネルギが正常であるとみなすことの可能な値である。たとえば、放射エネルギが第一の閾値Sth1よりも大きいときには放射エネルギは、修理レベルと判定し、第二の閾値Sth2よりも大きく第一の閾値Sth1以下であるときには、注意レベルと判定し、第二の閾値Sth2以下であるときには正常と判定する。
【0016】
また、放射エネルギが異常値を示しているか否かの判定は、以下の手順で行うようにしてもよい。すなわち、予め正常値であるとみなすことの可能な値を基準エネルギとして記憶部3に記憶しておく。そして、入力した放射エネルギが基準エネルギよりも大きく且つ両者の差分が予め設定した許容値Δεよりも大きいとき、異常と判定する。なお、第一のセンサSE1と第二のセンサSE2とは出力特性が異なるため、第一のセンサSE1及び第二のセンサSE2で、放射エネルギの値が正常値であるとみなすことの可能な値に基づいて共通の値を基準エネルギとして設定してもよく、それぞれ個別の値を基準エネルギとして設定してもよい。
なお、放射エネルギが異常値を示しているか否かの判定は、これに限るものではない。
【0017】
記憶部3には、過去の取得データ、放射エネルギが異常であるかの判定に用いる閾値等、異常判定に必要な情報が格納される。
過熱状態通知部4は、過熱検出部2から放射エネルギが異常であることが通知されたとき、これを外部に通知する。過熱状態通知部4は、例えば、警報ランプ、表示装置、警報音発生回路、上位システムとの通信装置等のうちの一又は複数で形成される。そして、過熱検出部2から放射エネルギが異常であることが通知されたとき、警報ランプを点灯させる、或いは表示装置に放射エネルギが異常であることを表示する、或いは警報音を発生させる。また、過熱状態通知部4が、過熱検出部2から放射エネルギが異常であるセンサを特定する情報も入力するようにし、特定したセンサと対応付けて表示装置に異常であることを表示装置に表示するようにしてもよい。また、例えば、複数の放射エネルギ検出部1が設けられている場合には、放射エネルギ検出部1が設けられている箇所それぞれに過熱状態通知部4として警報ランプを設けておき、放射エネルギの異常が通知されたセンサ11を含む放射エネルギ検出部1に対応する警報ランプを点灯させるように構成してもよい。
【0018】
次に、放射エネルギ検出部1が有するセンサ11a〜11cについて、
図2を伴って説明する。
図2は、放射エネルギ検出部1の一例を示す上面図である。
図2に示すように、放射エネルギ検出部1は、第一のセンサSE1からなるセンサ11aと、第二のセンサSE2からなるセンサ11bと、第一のセンサSE1からなるセンサ11cと、制御部12とが、上面視が細長い長方形状の基板10に形成されている。なお、
図2では、制御部12の図示を省略している。
センサ11cは、
図2に示すように、直線上に等間隔に配置されている。センサ11a及び11cはレンズSE1bをそれぞれ備え、センサ11bはレンズを備えていないため、センサ11a、11cの上面視における監視領域は、
図2中に破線で示すように、センサ11bの監視領域に比較して小さい。
【0019】
図3は、
図2に示すように配置されたセンサ11a〜11cの監視領域を側面から見た図である。なお、
図3では、基板10を二つ並べて、六個のセンサ11a〜11fを備える場合を示す。センサ11a、11c、11eは、第一のセンサSE1からなりレンズSE1bを有する。センサ11b、11d、11fは、第二のセンサSE2からなりレンズを持たない。
【0020】
そのため、
図3に示すように、レンズSE1bを備えたセンサ11a、11c、11eの監視可能距離L1に対し、レンズを有さないセンサ11b、11d、11fの監視可能距離L2は短く、レンズSE1bを備えたセンサ11a、11c、11eの視野角θ1に対し、レンズを有さないセンサ11b、11d、11fの視野角θ2はより広い(θ2>θ1)。そのため、
図3に示すように、レンズSE1bを備えたセンサ11a、11c、11eの監視領域に比較して、レンズを持たないセンサ11b、11d、11fの監視領域は、監視可能距離はより短く、視野角はより広い。そのため、センサ11a、11c、11eの監視領域に含まれない領域が、センサ11b、11d、11fの監視領域に含まれる状態となる。その結果、センサ11a〜11fによって、領域Ar全体をほぼ監視することができる。また、複数のセンサ11を、等間隔に配置しているため、いずれのセンサ11の監視領域にも含まれない死角領域の偏りを抑制することができ、領域Arに対し、各センサ11a〜11fの監視領域を効率よく設定することができる。
【0021】
これに対し、レンズを持つ第一のセンサSE1のみで領域Arを監視しようとした場合、第一のセンサSE1の視野角は、レンズを持たない第二のセンサSE2の視野角よりも小さいため、領域Ar全体を、第一のセンサSE1のみで監視する場合、
図3に示すセンサ11の間隔よりもさらに狭い間隔で配置する必要がある。つまり、より多くのセンサ11が必要となる。
また、センサ11の監視領域は側面視で略円錐形をしている。ここで、円錐の直径に対して監視対象の物体が小さいと、SN比が小さくセンサ11の検出精度が低くなる。センサ11の検出精度を確保するために、レンズを設け、視野角を絞ることで、SN比の向上を図ることができるが、レンズを設けると視野角が狭くなるため、レンズを有するセンサ11のみを配置しただけでは、センサ11の監視領域に含まれない領域が存在し、この領域も監視するためには、レンズを有するセンサ11を、間隔を狭めて配置する必要がある。また、このように間隔を狭めて配置したとしても、センサ11に近い部分の、センサ11同士の間の領域を監視領域に含むためにはセンサ11をより一層密に配置する必要があり、センサ11を密に配置すると、センサ11から遠い部分ではセンサ11同士の監視領域が重なることになり、効率が悪い。
【0022】
また、レンズを持たない、視野角の広い第二のセンサSE2のみで領域Arを監視するためには、第二のセンサSE2として監視可能距離がより長いセンサを用いる必要があり、この場合も領域Arを漏れなく監視しようとすると、より多くのセンサが必要となる。
上述のように、監視可能距離が異なり、監視領域の異なる第一のセンサSE1と、第二のセンサSE2とを交互に配置し、互いの監視領域を補間するようにセンサ11を配置することによって、より少ない数のセンサで、所望の領域全体を、いずれかのセンサ11の監視領域内に含めることができ、すなわち、放射エネルギの監視を行うことができる。
つまり、特にレンズを用い、視野角を絞ることによってSN比の向上を図ることができると共に、領域Arを漏れなく監視するために必要なセンサ11の数をより削減することができる。
【0023】
次に、本発明の一実施形態に係る過熱監視装置100の動作を、
図4〜
図6を伴って説明する。ここでは、過熱監視装置100を、工場等に配置されている配電盤200の温度監視に適用した場合について説明する。
過熱監視装置100の放射エネルギ検出部1は、
図4に示すように、略直方体状の配電盤200内の、上面及び下面それぞれに、放射エネルギの入射面が対向するように配置される。上面及び下面に配置された放射エネルギ検出部1は、それぞれ三つのセンサ11が設けられた基板10が長手方向に例えば四つ連接して配置される。このとき、四つの基板10に配置されたセンサ11は、第一のセンサSE1と第二のセンサSE2とが交互に直線上に並ぶように配置される。隣り合う基板10どうしは例えばバス接続され、一方の端部の基板10と過熱検出部2とが通信回線Lによって接続される。つまり、過熱検出部2には、配電盤200の上面に配置した放射エネルギ検出部1Uと、下面に配置した放射エネルギ検出部1Dからの検出信号が入力される。
図4では、放射エネルギ検出部1U及び1Dを、分かりやすくするために実線で記載している。
【0024】
なお、ここでは、配電盤200内の上面及び下面それぞれに放射エネルギ検出部1を設けることで、配電盤200の上面及び下面で挟まれる領域の放射エネルギ異常を検出するようにしているが、これに限るものではない。例えば、配電盤200の高さと、センサ11の検出可能距離との関係から、配電盤200の上面及び下面のいずれか一方にのみ放射エネルギ検出部1を設けたとしても配電盤200内の各部の放射エネルギを十分検出することが可能であれば、上面及び下面のいずれか一方にのみ、放射エネルギ検出部1を設けてもよい。
過熱監視装置100の過熱検出部2及び記憶部3は、例えば、工場の集中管理室に配置される。また、過熱状態通知部4は、例えば、表示装置であって、過熱検出部2から放射エネルギの異常の判定結果とセンサ11の識別情報とを入力し、配電盤200内のどのセンサ11で異常が生じているかを表示する。
【0025】
図5は、過熱検出部2での判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
配電盤200に設けられた放射エネルギ検出部1では、制御部12が、各センサ11で検出した放射エネルギとセンサ11の識別情報とを対応付けて検出信号として通信回線Lを介して、集中管理室に配置された過熱検出部2に送信する。制御部12では、例えば、予め設定された所定周期で各センサ11の検出信号を過熱検出部2に送信する。
【0026】
過熱検出部2では、制御部12から検出信号を読み込むと(ステップS1)、検出信号に含まれる識別情報から、この検出信号の送信元のセンサ11を特定する(ステップS2)。続いて、通知された放射エネルギと第一の閾値Sth1とを比較し、通知された放射エネルギSeが第一の閾値Sth1より大きいときには(ステップS3)、ステップS8に移行し、修理レベルと判定する。ステップS3で、通知された放射エネルギSeが第一の閾値Sth1以下であるときには、ステップS3からステップS4に移行し、放射エネルギSeと第二の閾値Sth2とを比較する。ここで、第二の閾値Sth2は第一の閾値Sth1より小さい。ステップS4において、放射エネルギSeが第二の閾値Sth2以下であるときには、ステップS5に移行し、放射エネルギSeは正常であると判定する。そして、ステップS6に移行し、例えば、この正常と判定された放射エネルギSeの送信元のセンサ11の配置位置と、放射エネルギは正常であるとの情報とを、過熱状態通知部4としての表示装置に表示する。ステップS4において、放射エネルギSeが第二の閾値Sth2より大きいとき、すなわち第一の閾値Sth1以下で、かつ第二の閾値Sth2より大きいときには、ステップS7に移行し、放射エネルギSeは注意レベルであると判定する。同様に他の検出信号についても処理を行い、判定結果を表示装置に表示することによって、集中管理室の監視員は、配電盤200内の放射エネルギは正常であるかつまり過熱が生じていないかを判定することができる。
【0027】
例えば、いずれかのセンサ例えば11aの監視領域内の放射エネルギが上昇すると、ステップS4で、通知された放射エネルギSeが第二の閾値Sth2を超えた時点で、ステップS4からステップS7に移行し、過熱検出部2では、注意レベルと判定する。
そのため、表示装置には、センサ11aの放射エネルギは注意レベルと表示される。監視員は、この表示を見ることによって、配電盤200内のセンサ11aの監視領域内で放射エネルギが上昇していることを認識することができる。そのため、注意を払うことができる。
【0028】
そして、センサ11aの監視領域内の放射エネルギがさらに上昇し、放射エネルギSeが第一の閾値Sth1を超えると、ステップS3からステップS8に移行し、過熱検出部2では、修理レベルと判定する。
そのため、表示装置には、センサ11aの放射エネルギは修理レベルと表示される。監視員は、この表示を見ることによって、配電盤200内のセンサ11aの監視領域内で放射エネルギが、修理が必要なレベルとなっており、すなわち異常が生じていることを認識することができる。そして、配電盤200内の上面及び下面に設けられたセンサ11それぞれについて、異常判定の結果が表示されるため、どのセンサ11で異常が検出されているのかを容易に認識することができる。そのため、監視員が、実際に配電盤200において目視しなくとも、配電盤200内のどの部分に異常が生じているのかを容易に認識することができる。
【0029】
図6は、あるセンサ11で検出された放射エネルギSeの推移を示したものである。放射エネルギSeが、
図6に示すように推移した場合、放射エネルギSeが時点t1で、第二の閾値Sth2を超えるまでの間は、正常と判定され、時点t1で、放射エネルギSeが第二の閾値Sth2を上回ると、注意レベルと判定される。そして、時点t2で、放射エネルギSeが第一の閾値Sth1を上回ると修理レベルと判定される。
図6において、横軸は経過時間、縦軸は放射エネルギSeである。
なお、上記実施形態においては、予め設定した閾値Sth1、Sth2を用いて、放射エネルギSeの異常判定を行う場合について説明したが、これに限るものではない。
【0030】
例えば、配電盤200内に設けられた各センサ11の同時刻における放射エネルギを取得し、各センサ11のうち、その放射エネルギのレベルが他のセンサ11の放射エネルギレベルに比較して、閾値以上大きいときに、このセンサ11の検出信号は異常であると判定するようにしてもよい。
例えば、
図7に示すように、配電盤200内に配置された複数のセンサ11で検出される放射エネルギが推移した場合、例えば、センサ11毎に、一のセンサ11の放射エネルギと、他のセンサ11の放射エネルギとの差分が閾値ΔSよりも大きいか否かを判断し、一のセンサ11の放射エネルギが他のセンサ11の放射エネルギの差分が閾値ΔSよりも大きいとき、一のセンサ11の放射エネルギは異常であると判定する。
【0031】
図7の場合には、時点t11で、センサ11aの放射エネルギが上昇するまでの間は、センサ11aの放射エネルギは正常値であると判定され、時点t11で、センサ11aの検出信号のみが上昇を開始し、時点t12で、センサ11aで検出された放射エネルギと他のセンサで検出された放射エネルギとの差分が閾値ΔSを上回ると、この時点t12でセンサ11aの放射エネルギは異常と判定される。これにより、システム稼働率の変化による全体的なベースラインの変動がある場合でも、部分的な放射エネルギ異常を検出できる。なお、
図7において、横軸は経過時間、縦軸は放射エネルギSeである。
また、上記実施形態においては、予め設定された閾値と比較することで放射エネルギの値が正常であるか否かを判定する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、配電盤200に接続されるケーブルの他端側の装置が稼動しており、且つ放射エネルギが正常値であるときの、放射エネルギの分布をパターンとして記憶しておき、この記憶している放射エネルギ分布のパターンと、実際の放射エネルギ分布のパターンとを照合することで、放射エネルギの異常を検出するようにしてもよい。
【0032】
図8は、放射エネルギ分布のパターンを照合して、異常判定を行う方法を説明するための説明図であり、
図8において、横軸はセンサの位置、縦軸は放射エネルギSeである。
稼動時における放射エネルギは、負荷の変動等がない場合には、略一定の値で推移すると予測される。したがって、
図8中に破線で示す、略一定で推移する正常時の放射エネルギ分布のパターン20と、
図8中に実線で示す、実際の放射エネルギ分布のパターン21とを照合すると、異常が生じている場合には両者の乖離が大きくなることから、異常と判定することができる。また、例えば、センサ11毎に例えば過去の一定期間の検出信号を記憶部3に記憶しておき、この過去の一定期間内における実際の放射エネルギの大きさに基づいて閾値を設定し、この閾値を用いて現時点における異常判定を行うようにしてもよい。つまり、放射エネルギは、工場の稼動状況に応じても変化することから、現在の稼動状況に応じて閾値を設定することによって、実際に則した閾値を設定することができ、より精度良く、異常判定を行うことができる。
【0033】
また、上記実施形態においては、
図2に示すように、センサ11を直線上に配置した場合について説明したが、
図9に示すように、同一直線を挟んで千鳥状に配置してもよい。このように配置することによって、第一のセンサSE1の監視領域と第二のセンサSE2の監視領域とを、より適切に補間することができる。
また、センサ11を、
図10に示すように、マトリクス状に配置してもよい。この場合には、列方向及び行方向共に、第一のセンサSE1及び第二のセンサSE2が交互となるように配置すればよい。この場合、上述のように、基板10に三つのセンサ11を形成しているため、三つのセンサ11が形成された基板10を列方向及び行方向に複数配置することでセンサ11をマトリクス状に配置してもよい。その際、行方向及び列方向にセンサ11が同一直線上に並ぶように基板10を配置してもよい。または、列方向に配置する基板10を行方向にずらし、行方向から見たとき、一の基板10のセンサ11どうしの間に行方向に隣接する他の基板10のセンサ11が位置するように、基板10をずらして配置してもよい。
【0034】
また、上記実施形態においては、第一のセンサSE1と第二のセンサSE2とを交互に配置する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、第一のセンサSE1、第一のセンサSE1、第二のセンサSE2、第一のセンサSE1、第一のセンサSE1、というように、中央のセンサ11として監視可能距離が短い第二のセンサSE2を配置し、他のセンサ11は監視可能距離がより長い第一のセンサSE1を用いるようにしてもよい。例えば、監視対象の物体が基板10の配置位置から比較的遠い場所と比較的近い場所とに配置されている場合には、基板10に配置された複数のセンサ11のうち、センサ11xの近傍に監視対象の物体が存在しているセンサ11については、監視可能距離がより短い第二のセンサSE2を配置し、他のセンサ11については、監視可能距離がより長い第一のセンサSE1を適用することも可能である。つまり、監視対象の物体の配置が予めわかっていれば、監視対象の物体の配置位置を考慮して、センサ11として第一のセンサSE1と、第二のセンサSE2とを決定することによって、監視対象の物体の配置に合わせて監視領域を設定することができ、効果的である。
【0035】
また、上記実施形態においては、各センサ11の検出信号を制御部12から過熱検出部2に送信し、過熱検出部2において、異常判定を行う場合について説明したが、これに限るものではない。基板10に形成された制御部12において異常判定を行い、判定結果を集中管理室に送信するようにしてもよい。また、配電盤200に、放射エネルギに異常が生じたことを通知するための警報ランプが過熱状態通知部4として設けられている場合には、制御部12において、判定結果に応じて警報ランプを点灯させるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、本発明の一実施形態に係る過熱監視装置100を用いて、配電盤200の温度監視を行う場合について説明したが、これに限るものではなく、温度監視を行うものであれば適用することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。