特許第6985255号(P6985255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985255製紙における充填剤を処理する組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985255
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】製紙における充填剤を処理する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/69 20060101AFI20211213BHJP
   D21H 17/29 20060101ALI20211213BHJP
   D21H 17/37 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   D21H17/69
   D21H17/29
   D21H17/37
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-516502(P2018-516502)
(86)(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公表番号】特表2018-529852(P2018-529852A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】CN2016101171
(87)【国際公開番号】WO2017054774
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年8月20日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2015/091314
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラオ チンロン
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/107933(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104053836(CN,A)
【文献】 特表2015−533392(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0059949(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104755673(CN,A)
【文献】 特開2007−138305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.カチオン性デンプンを溶解するためにカチオン性デンプン溶液を所望の温度まで加熱することと、
b.充填剤に前記カチオン性デンプン溶液及びカチオン性凝集剤を組み合わせることと、
c.前記充填剤、カチオン性デンプン、及びカチオン性凝集剤にせん断力を与え、メジアン粒径が5〜150ミクロンの充填剤フロックを形成することと、
d.前記充填剤フロックをセルロース繊維ストックと組み合わせることと、
e.前記充填剤フロックと前記セルロース繊維ストックとの前記組み合わせから紙を形成することと、を含み、
デンプン:凝集剤の重量比が1:9〜9:1である、製紙方法。
【請求項2】
前記デンプン及び前記カチオン性凝集剤は、前記充填剤での処理前に一緒に予混合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デンプン及び前記カチオン性凝集剤は、前記充填剤に同時に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記充填剤は、炭酸カルシウム、カオリン粘土、タルク、二酸化チタン、シリカ、ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、アルミナ三水和物、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カチオン性デンプンは、1〜5mol%の電荷密度を有するように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カチオン性凝集剤は、(メタ)アクリルアミド、ジアリル−N,N−二置換ハロゲン化アンモニウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート及びその第四級アンモニウム塩、ジメチルアミノエチルアクリレート及びその第四級アンモニウム塩、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルメチル(β−プロピオンアミド)アンモニウムクロライド、(β−メタクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムメチルサルフェート、四級化ポリビニルラクタム、ビニルアミン、マンニッヒまたは第四級マンニッヒ誘導体を生成するように反応したアクリルアミドまたはメタクリルアミド、及びそれらの組み合わせのホモポリマー、コポリマー、及びターポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カチオン性凝集剤は、四級化N,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(DMAEA MCQ)とアクリルアミドとのコポリマー、ジアリルジメチルアンモウニウムクロライド(DADMAC)とアクリルアミドとのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記デンプン及び前記凝集剤は、1:9〜9:1の重量比で一緒に予混合される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記デンプン及び前記凝集剤は、1:4〜4:1の重量比で一緒に予混合される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記カチオン性凝集剤は、1〜50mol%の電荷密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記カチオン性凝集剤は、10〜30mol%の電荷密度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記充填剤フロックのメジアン粒径が10〜75ミクロンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記充填剤が乾燥した形態の100%非分散充填剤であり、アニオン性凝集剤が、前記カチオン性凝集剤及び前記デンプンの前記添加前に、前記充填剤に添加される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年9月30日に出願された国際PCT特許出願第PCT/CN2015/091314号の優先権の利益を主張するものであり、その全開示はその全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙や筆記用紙の充填剤量を増やすことは、原材料及びエネルギーコストの削減だけでなく、製品品質の向上にも大きな関心事である。しかしながら、セルロース繊維を炭酸カルシウム及び粘土のような充填剤で置き換えると、完成したシートの強度が低下する。充填剤量を増加させる場合の別の問題は、三次元シート構造にわたって充填剤の均一な分布を維持することが困難になることである。充填剤量を増加させるこれらの負の影響を低減する手法は、充填剤を、抄紙機のウエットエンドアプローチシステムへのそれらの添加前に予凝集させることである。
【0003】
「予凝集」という用語は、凝固剤及び/または凝集剤の供給ストックへの凝集及び添加前に、凝固剤及び/または凝集剤で処理することによる充填剤粒子の凝集体への改質を指す。このプロセスの凝集処理及びせん断力は、供給ストックに添加する前のフロックの粒度分布及び安定性を決定する。現代の高速製紙に存在する化学的環境及び高い流体せん断速度は、充填剤フロックが安定していること及びせん断抵抗を必要とする。予凝集処理によって提供されるフロック粒度分布は、充填剤量の増加に伴うシート強度の低下を最小限に抑え、充填剤粒子からの光学効率の損失を最小限に抑え、シート均一性及び印刷適性への悪影響を最小限に抑えるべきである。さらに、システム全体が経済的に実現可能でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/101499号
【特許文献2】国際公開第2015/095377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、高いせん断安定度とシャープな粒径分布の組み合わせは、充填剤の予凝集技術の成功にとって不可欠である。しかしながら、一般に使用されるデンプンを含む低分子量凝固剤単独で形成された充填剤フロックは、抄紙機の高いせん断力下で分解する比較的小さな粒径を有する傾向がある。単一の高分子量凝集剤によって形成された充填剤フロックは、制御が困難な広範囲の粒径分布を有する傾向があり、主として粘性凝集剤溶液のスラリーへの混合が不十分であるため、充填剤固形分が高くなると粒径分布が悪化する。したがって、改良された予凝集技術の継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本開示は、充填剤がデンプンとカチオン性凝集剤との組み合わせで処理されて充填剤フロックを形成する製紙方法に関する。次いで、充填剤フロックは、セルロース繊維ストックと組み合わせられて、充填剤フロックとセルロース繊維ストックとの組み合せから敷紙を形成する。いくつかの実施形態では、デンプン及びカチオン性凝集剤は、充填剤での処理前に一緒に予混合される。いくつかの実施形態では、デンプン及びカチオン性凝集剤は、充填剤に同時に添加される。
【0007】
別の実施形態では、本開示は、充填剤がデンプンと凝集剤との他のイオン性混合物で処理されて充填剤フロックを形成する製紙方法に関する。例示的な組み合わせには、非イオン性デンプンとアニオン性凝集剤との組み合わせ、またはアニオン性デンプンとアニオン性凝集剤との組み合わせを含む。次いで、充填剤フロックは、セルロース繊維ストックと組み合わせられて、充填剤フロックとセルロース繊維ストックとの組み合わせから敷紙を形成する。いくつかの実施形態では、デンプン及び凝集剤は、充填剤での処理前に予混合される。いくつかの実施形態では、デンプン及び凝集剤は、充填剤に同時に添加される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】カチオン性デンプンの濃度の増加に伴う、様々な充填剤処理の粒径のグラフである。
図2】紙の充填剤量の増加に伴う、様々な充填剤処理のシート強度を示すグラフである。
図3】せん断時間の増加に伴う、様々な充填剤処理の粒径のグラフである。
図4】紙の充填剤量の増加に伴う、様々な充填剤処理のシート強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、デンプンをカチオン性凝集剤と予混合し、次に、予混合したデンプン/凝集剤混合物を充填剤と組み合わせることによる、製紙プロセスにおける充填剤粒子を処理する方法に関する。デンプン及びカチオン性凝集剤を充填剤に添加する前に、それらを予混合することにより、充填剤の粒径が増大することが判明した。充填剤の粒径を増大させることには、いくつかの利点があると考えられている。第1に、充填剤のせん断安定度の改善をもたらす。第2に、充填剤の表面積を減少させ、充填剤とセルロースとが組み合わせられると、充填剤がセルロース−セルロース水素結合と干渉しにくくなる。第3に、改善されたセルロース結合は、より強いシート強度をもたらす。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、デンプン及びカチオン性凝集剤を充填剤に同時に添加することによる、製紙プロセスにおける充填剤粒子を処理する方法に関する。このプロセスは、特にデンプン及び凝集剤の逐次添加と比較して、充填剤の粒径の増大、セルロース−セルロース結合の改善、及びより強力なシート強度ももたらす。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、デンプンを凝集剤と予混合し、次いで予混合されたデンプン/凝集剤混合物を充填剤と組み合わせることによる、製紙プロセスにおける充填剤粒子を処理する方法に関する。デンプンと凝集剤との例示的な組み合わせは、カチオン性デンプンとカチオン性凝集剤、カチオン性デンプンと非イオン性凝集剤、非イオン性デンプンとカチオン性凝集剤、非イオン性デンプンと非イオン性凝集剤、非イオン性デンプンとアニオン性凝集剤、またはアニオン性デンプンとアニオン性凝集剤を含む。双性イオン性デンプンまたは両性デンプンは、カチオン性、非イオン性、またはアニオン性凝集剤と共に使用することもできる。
【0012】
充填剤
例示的な充填剤は、紙または板紙シートの不透明度または輝度を増加させる、平滑性を高める、またはコストを低減するために使用される無機粒子もしくは無機顔料、または有機粒子もしくは有機顔料を含む。例示的な充填剤は、炭酸カルシウム、カオリン粘土、タルク、二酸化チタン、シリカ、ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、カルシウムサルフェート、アルミナ三水和物、バリウムサルフェート、水酸化マグネシウムなどを含む。炭酸カルシウムは、乾燥した又は分散スラリー形態の重質炭酸カルシウム(またはGCC)、チョーク、任意の形態の沈降炭酸カルシウム(またはPCC)、及び分散スラリー形態の沈降炭酸カルシウムを含む。GCCまたはPCCの分散スラリー形態は、典型的には、ポリアクリル酸高分子分散剤またはポリリン酸ナトリウム分散剤を用いて製造される。これらの分散剤の各々は、炭酸カルシウム粒子に有意なアニオン電荷を付与する。カオリン粘土スラリーは、ポリアクリル酸高分子またはポリリン酸ナトリウムを用いて分散させることもできる。
【0013】
いくつかの実施形態では、充填剤は、炭酸カルシウム、カオリン粘土、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、充填剤は、沈降炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン粘土、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、充填剤は、100%重質炭酸カルシウム、100%沈降炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムと他の充填剤との混合物、沈降炭酸カルシウムと他の充填剤との混合物、または重質炭酸カルシウムと沈降炭酸カルシウムとの混合物であり、任意に他の充填剤を含む。
【0014】
デンプン
デンプンは、好ましくは、生デンプン、非イオン性デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン、双性イオン性デンプンもしくは両性デンプン、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、デンプンは、好ましくは、生デンプン、非イオン性デンプン、またはカチオン性デンプンである。いくつかの実施形態では、デンプンは、カチオン性デンプンである。
【0015】
生デンプンは、化学的に変性されていないトウモロコシ、ジャガイモ、米、ワキシマイズ、小麦、サゴ、及びタピオカデンプンを含むが、これらに限定されない。
【0016】
非イオン性デンプンは、それらが中性電荷を運ぶように変性されたトウモロコシ、ジャガイモ、米、ワキシマイズ、小麦、サゴ、及びタピオカデンプンを含むが、これらに限定されない。例示的な非イオン性変性物は、酸変性デンプン、酸化デンプン(例えば、過酸化水素、過酢酸、過マンガン酸塩、過硫酸塩を有する)、ハロゲン変性デンプン(例えば、塩素、次亜塩素酸塩、臭素、次亜臭素酸塩)、ジアルデヒドデンプン、デキストリン、アセチル化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプン(例えば、酸化エチレンと反応したデンプン)、ヒドロキシプロピル化デンプン(例えば、酸化プロピレンと反応したデンプン)、リン酸化デンプン(例えば、オルト−、ピロ−、メタ−、またはトリポリリン酸塩と反応したデンプン)、リン酸デンプンジエステル、リン酸デンプン、硫酸デンプン、硝酸デンプン、及びデンプンザンセート、アリルデンプン、ベンジルデンプン、カルバモイルエチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、シアノメチルデンプン、ならびにメチル及びエチルデンプンを含む。
【0017】
カチオン性デンプンは、それらが正電荷を運ぶように変性されたトウモロコシ、ジャガイモ、米、ワキシマイズ、小麦、サゴ、及びタピオカデンプンを含むが、これらに限定されない。カチオン性デンプンを調製するための主要試薬は、アミノ、イミノ、アンモニウム、スルホニウム、またはホスホニウム基を有するものを含む。したがって、カチオン性デンプンの1つの例示的なクラスは、一般構造を有する第三級アミノアルキルデンプンエーテルを含み、
【化1】
式中、R、R、及びRは、置換または非置換アルキル基のいずれかであり、Xは、対イオンである。別クラスのカチオン性デンプンは、一般構造を有する第四級アンモニウムデンプンエーテルを含み、
【化2】
式中、R、R、R、及びRは、置換または非置換アルキル基のいずれかであり、Xは、対イオンである。別クラスのカチオン性デンプンは、一般構造を有するイミノアルキルデンプンを含み、
【化3】
式中、R及びRは、置換または非置換アルキル基のいずれかである。これらのイミノアルキルデンプンは、酸による酸性化後にカチオン性活性を示す。別クラスのカチオン性デンプンは、一般構造を有するアミノアルキルデンプンを含み、
【化4】
式中、Rは、置換または非置換アルキル基である。これらのアミノアルキルデンプンは、酸による酸性化後にカチオン性活性を示す。
【0018】
いくつかの実施形態では、カチオン性デンプンは、約1〜10mol%、約2〜約8mol%、または約3〜約5mol%の電荷密度を有するように選択される。
【0019】
アニオン性デンプンは、それらが負電荷を運ぶように変性されたトウモロコシ、ジャガイモ、米、ワキシマイズ、小麦、サゴ、及びタピオカデンプンを含むが、これらに限定されない。例示的なアニオン性デンプンは、デンプンが無水コハク酸と反応して以下の構造を形成するコハク酸デンプンを含み、
【化5】
式中、Xは、ナトリウムのような対イオンである。別の例は、アルケニルコハク酸のような置換環状ジカルボン酸無水物と反応したデンプンである。例示的な構造は、以下を含み、
【化6】
式中、Xは、ナトリウムのような対イオンであり、Rは、ジメチレンまたはトリメチレンラジカルであり、Rは、アルキル基である。アニオン性デンプンの別の例は、デンプンがマレイン酸エステルで変性され、次いで、重硫酸ナトリウムと反応して以下の構造を有するスルホコハク酸誘導体を形成するスルホコハク酸デンプンである。
【化7】
【0020】
双性イオン性デンプンは、それらが正電荷及び負電荷の両方を運ぶように変性されたトウモロコシ、ジャガイモ、米、ワキシマイズ、小麦、サゴ、及びタピオカデンプンを含むが、これらに限定されない。双性イオン性デンプンの一例は、N−(2−ハロエチル)イミノビス−(メチレン)ジホスホン酸、またはN−(アルキル)−N−(2−ハロエチル)アミノメチルホスホン酸で変性されたデンプンである。この変性は、アニオン性メチレン−ホスホン酸基及びカチオン性窒素を作製する。
【0021】
両性デンプンは、それらが正電荷及び負電荷の両方を運ぶように変性されたトウモロコシ、ジャガイモ、米、ワキシマイズ、小麦、サゴ、及びタピオカデンプンを含むが、これらに限定されない。例示的な両性デンプンは、塩化アンモニウム種で処理され、さらにリン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、またはカルボキシル基で置換された第三級または第四級アンモニウムデンプンエーテルを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、デンプンの投入量は、少なくとも約0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100kg/トン(処理された充填剤)である。いくつかの実施形態では、デンプンの投入量は、約0.5〜約500kg/トン(処理された充填剤)、約10〜約200kg/トン(処理された充填剤)、または約50〜約100kg/トン(処理された充填剤)であり、kg/トンは、乾燥充填剤1トン当たりの活性デンプンのキログラムを指す。
【0023】
凝集剤
凝集剤は、好ましくは、カチオン性凝集剤またはカチオン性凝集剤とアニオン性、非イオン性、双性イオン性、または両性凝集剤との混合物である。理論に縛られることを望むものではないが、充填剤は、一般にそれらに付随するアニオン電荷を有し、カチオン性凝集剤の添加は、凝集剤と充填剤との間の望ましい電荷バランスを提供すると考えられる。さらに、デンプンと凝集剤との予混合は、この電荷バランスを補助し、充填剤と混合する凝集剤の能力を向上させると考えられる。カチオン性凝集剤の選択が好ましい実施形態であることが理解される。カチオン性、アニオン性、非イオン性、双性イオン性、または両性デンプン(またはそれらの組み合わせ)と、アニオン性、非イオン性、両性、及び双性イオン性凝集剤(またはそれらの組み合わせ)とを含む、デンプンと凝集剤との他の組み合わせを使用することができる。デンプンと凝集剤との例示的な組み合わせは、カチオン性デンプンとカチオン性凝集剤、カチオン性デンプンと非イオン性凝集剤、非イオン性デンプンとカチオン性凝集剤、非イオン性デンプンと非イオン性凝集剤、非イオン性デンプンとアニオン性凝集剤、アニオン性デンプンとアニオン性凝集剤、またはアニオン性デンプンと非イオン性凝集剤を含む。双性イオン性または両性デンプンは、カチオン性、非イオン性、アニオン性、双性イオン性、または両性凝集剤のいずれかと共に使用することもできる。同様に、双性イオン性または両性凝集剤は、カチオン性、非イオン性、アニオン性、双性イオン性、または両性デンプンと共に使用することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、凝集剤は、200,000Da、500,000Da、1,000,000Da、3,000,000Da、5,000,000Da、または20,000,000Daを超える分子量を有する。いくつかの実施形態では、分子量は、約200,000〜約20,000,000Da、約500,000〜約5,000,000Da、約1,000,000〜約5,000,000Da、約1,000,000〜約3,000,000Da、または約3,000,000〜約5,000,000Daである。
【0025】
ポリマー凝集剤は、典型的には、両性ポリマーを作製するために、1つ以上のカチオン性、アニオン性、または非イオン性モノマーのビニル付加重合、1つ以上のカチオン性モノマーと1つ以上の非イオン性モノマーとの共重合、1つ以上のアニオン性モノマーと1つ以上の非イオン性モノマーとの共重合、1つ以上のカチオン性モノマーと1つ以上のアニオン性モノマー及び任意に1つ以上の非イオン性モノマーとの共重合により、または、双性イオン性ポリマーを形成するために、1つ以上の双性イオン性モノマーと任意に1つ以上の非イオン性モノマーとの重合により、調製される。1つ以上の双性イオン性モノマーと任意に1つ以上の非イオン性モノマーとを、1つ以上のアニオン性またはカチオン性モノマーと共重合させて、双性イオン性ポリマーにカチオンまたはアニオン電荷を付与することもできる。
【0026】
本発明の一実施形態では、凝集剤中のカチオン性モノマーのモル数をモノマーの全モル数で除し、次いで100%を掛けることによって、凝集剤中のカチオン電荷の含量を得ることができる。いくつかの実施形態では、凝集剤は、約80mol%未満、約60mol%未満、または約40mol%未満、または約20mol%未満、または約10mol%未満、または約5mol%未満の電荷密度を有する。いくつかの実施形態では、凝集剤は、約1〜50mol%、約5〜約40mol%、または約10〜約30mol%の電荷密度を有する。
【0027】
カチオン性ポリマー凝集剤は、カチオン性モノマーを使用して形成することができるが、カチオン荷電ポリマーを作製するために、特定の非イオン性ビニル付加ポリマーを反応させることも可能である。このタイプのポリマーは、ポリアクリルアミドとジメチルアミン及びホルムアルデヒドとの反応によって調製され、マンニッヒ誘導体を作製するものを含む。
【0028】
同様に、アニオン性モノマーを使用してアニオン性ポリマー凝集剤を形成することができるが、アニオン荷電ポリマーを形成するために、特定の非イオン性ビニル付加ポリマーを変性することも可能である。このタイプのポリマーは、例えば、ポリアクリルアミドの加水分解により調製されたものが含まれる。
【0029】
凝集剤は、水溶液として、油中水型乳剤として、または水中分散液として、固体の形態で調製することができる。例示的なカチオン性ポリマーは、(メタ)アクリルアミドとジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、ジエチルアミノエチルアクリレート(DEAEA)、ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEM)またはジメチルサルフェート、メチルクロライドまたはベンジルクロライドで製造されたそれらの第四級アンモニウム形態のコポリマー及びターポリマーを含む。例示的なアニオン性ポリマーは、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウム及び/または2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)またはアクリルアミド基の一部をアクリル酸に転化するために加水分解されたアクリルアミドホモポリマーのコポリマーを含む。
【0030】
追加的凝集剤は、(メタ)アクリルアミド、ジアリル−N、N−二置換アンモニウムハライド、ジメチルアミノエチルメタクリレート及びその第四級アンモニウム塩、ジメチルアミノエチルアクリレート及びその第四級アンモニウム塩、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルメチル(β−プロピオンアミド)アンモニウムクロライド、(β−メタクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムメチルサルフェート、四級化ポリビニルラクタム、ビニルアミン、ならびにマンニッヒまたは第四級マンニッヒ誘導体を生成するように反応したアクリルアミドまたはメタクリルアミドのホモポリマー、コポリマー、及びターポリマーのようなカチオン荷電ビニル付加ポリマーを含む。適切な第四級アンモニウム塩は、メチルクロライド、ジメチルサルフェート、またはベンジルクロライドを用いて作製することができる。ターポリマーは、ポリマー上の全電荷がカチオン性である限り、アクリル酸または2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸のようなアニオン性モノマーを含むことができる。
【0031】
他の適切な凝集剤には、ミョウバン、アルミン酸ナトリウム、ポリアルミニウムクロライド、クロルヒドロキシアルミニウム、水酸化アルミニウムクロライド、ポリアルミニウムヒドロキシクロライド、硫酸化ポリアルミニウムクロライド、ポリアルミニウムシリカサルフェート、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン(EPI−DMA)、EPI−DMAアンモニアクロスリンクポリマー、エチレンジクロライド及びアンモニアのポリマー、エチレンジクロライドのポリマー、ジメチルアミンのポリマー、多官能ジエチレントリアミンの縮合ポリマー、多官能テトラエチレンペンタミンの縮合ポリマー、多官能ヘキサメチレンジアミンの縮合ポリマー、多官能性エチレンジクロライドの縮合ポリマー、メラミンポリマー、ホルムアルデヒド樹脂ポリマー、カチオン荷電ビニル付加ポリマー、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、カチオン性凝集剤は、四級化N、N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(DMAEA.MCQ)及びDEV210(イリノイ州ネーパービルのNalco Company)のようなアクリルアミドのコポリマーまたはジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)及びN−7527(イリノイ州ネーパービルのNalco Company)のようなアクリルアミドのコポリマーである。
【0033】
一実施形態では、凝集剤は、少なくとも0.5dL/g、少なくとも1dL/g、少なくとも3dL/g、少なくとも10dL/g、または少なくとも15dL/gのRSVを有し、ここで、「RSV」は、換算比粘度を表す。実質的に線状でよく溶媒和された一連のポリマー同族体の中で、希薄ポリマー溶液の「換算比粘度」またはRSV測定値は、ニューヨーク州イサカのCornell University PressのPrinciples of Polymer Chemistry、Chapter VII(1953)の266〜316ページ Paul J.Floryの分子量の測定によるポリマー鎖長及び平均分子量の指標である。RSVは、所与のポリマー濃度及び温度で測定され、以下のように計算され、
RSV=[(η/η)−l]/c
式中、ηは、ポリマー溶液の粘度であり、ηoは、同じ温度での溶媒の粘度であり、cは、溶液中のポリマーの濃度である。
【0034】
濃度「c」の単位は、(グラム/100mlまたはg/デシリットル)である。したがって、RSVの単位は、dL/gである。特記しない限り、1.0モル濃度の硝酸ナトリウム溶液を用いてRSVを測定する。この溶媒中のポリマー濃度は、0.045g/dLである。RSVは30℃で測定される。粘度η及びηは、Cannon Ubbelohdeセミミクロ希釈粘度計(サイズ75)を用いて測定する。粘度計は、30+/−0.02℃に調整された恒温槽中で完全に垂直な位置に取り付けられる。本明細書に記載のポリマーについてのRSVの計算に固有の典型的な誤差は、約0.2dL/gである。あるシリーズ内の2つのポリマー同族体が同様のRSVを有する場合、それは、分子量が似ていることを示す。
【0035】
いくつかの実施形態では、凝集剤の投入量は、少なくとも約0.1、0.2、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100kg/トン(処理された充填剤)である。いくつかの実施形態では、凝集剤の投入量は、約0.1〜100kg/トン(処理された充填剤)、約0.2〜約50kg/トン(処理された充填剤)、約0.2〜約20kg/トン(処理された充填剤)、約0.5〜約10kg/トン(処理された充填剤)、または約1〜約5kg/トン(処理された充填剤)であり、kg/トンは、乾燥充填剤1トン当たりの活性ポリマーのキログラム指す。いくつかの実施形態では、凝集剤の投入量は、約2kg/トン(処理された充填剤)である。
【0036】
いくつかの実施形態では、充填剤は、100%沈降炭酸カルシウムまたはPCCであってもよい。そのような実施形態では、最初に充填剤をアニオン性凝集剤で処理し、その後それを本開示によるカチオン性凝集剤及びデンプンで処理することが望ましい場合がある。
【0037】
例示的なアニオン性凝集剤は、(メタ)アクリル酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩、スルホエチル−(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、または他の二塩基酸、またはそれらの塩もしくはそれらの混合物のようなアクリルアミドポリマーを加水分解することによって、またはアニオン性モノマーを重合することによって作製されるものを含む。これらのアニオン性モノマーはまた、(メタ)アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、N−ビニルメチルアセトアミド、N−ビニルメチルホルムアミド、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、及びそれらの混合物のような非イオン性モノマーと共重合することもできる。
【0038】
例示的な非イオン性凝集剤は、(メタ)アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、N−ビニルメチルアセトアミド、N−ビニルメチルホルムアミド、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、及びそれらの混合物のような非イオン性モノマーを共重合することによって製造されるものを含む。
【0039】
両性凝集剤は、少なくとも1つのアニオン性モノマー、少なくとも1つのカチオン性モノマー、及び任意に非イオン性モノマーの組み合わせを重合することによって製造されるものを含む。例示的なアニオン性、カチオン性、及び非イオン性モノマーは、上述されている。
【0040】
充填剤の処理
いくつかの実施形態では、デンプン及び凝集剤は、充填剤と接触させる前に一緒に予混合される。この実施形態では、デンプンは、凝集剤と混合する前に、溶液中に完全に溶解する。デンプンを溶液中に完全に溶解することは、バッチ加熱または連続加熱を使用することによって達成することができる。バッチ加熱では、デンプンのスラリーを、好ましくはライブスチームで所望の温度(例えば、95℃)に加熱し、連続して撹拌する。デンプン粒の完全な可溶化を確実にするために、少なくとも5、10、20、または30分間、この温度でデンプンを保持しなければならない。連続加熱では、乾燥デンプンをまずスラリータンクに計量し、冷水と混合する。次いで、スラリーをベンチュリジェットに通し、原則として水圧真空ポンプと同様にして、ライブスチームと混合されて加熱コイルに入る前に、デンプンが十分な時間、温度(例えば120〜130℃)で保持され、顆粒の完全な加熱を確保する。コイルから出た後、デンプン溶液を冷水で希釈して最終濃度を約2%に低下させる。デンプンを任意に加熱した後、凝集剤をデンプンに添加し、スタティックミキサのような適切な混合装置を用いて混合することができる。最終混合物は、好ましくは、約1〜約99重量%のデンプン及び約99〜約1重量%の凝集剤、または約10〜約90重量%のデンプン及び約90〜約10重量%の凝集剤、または約20〜約80重量%のデンプン及び約80〜約20重量%の凝集剤、または約40〜約60重量%のデンプン及び約60〜約40重量%の凝集剤、または約50重量%のデンプン及び約50重量%の凝集剤を含む。デンプン及び凝集剤は、デンプン:凝集剤の重量比、約1:99〜約99:1、約1:9〜約9:1、約1:8〜約8:1、約1:5〜約5:1、約1:4〜約4:1、または約1:2〜約2:1、または約1:1内に含まれ得る。
【0041】
次に、充填剤が製紙用供給材に添加される前に(例えば、セルロース繊維ストックの不在下で)予混合デンプン及び凝集剤が充填剤に添加される。デンプン/凝集剤の予混合は、約0.1〜約100kg/トン(充填剤)、約1〜約10kg/トン(充填剤)、または約2〜約5kg/トン(充填剤)の濃度で充填剤に投入され得る。これは、バッチ方式または連続方式で行うことができる。これらのスラリー中の充填剤濃度は、典型的には約80質量%未満であり、約5〜約65質量%、または約10〜約50質量%、または約15〜約40質量%であってもよい。
【0042】
バッチ処理は、オーバーヘッドプロペラミキサーを備えた大きな混合タンクを含むことができる。充填剤スラリーを混合タンクに充填し、所望量の予混合デンプン/凝集剤を連続混合下でスラリーに供給する。スラリー及び予混合デンプン/凝集剤は、使用される混合エネルギーに応じて、典型的には約1秒〜5分、5秒〜3分、または10秒〜1分にわたって、デンプン/凝集剤混合物をシステム全体にわたって均一に分布させるのに十分な時間混合される。充填剤フロックの適切な粒度分布が得られると、混合速度は、フロックが安定するレベルまで低下する。次いで、凝集した充填剤のこのバッチを、充填剤フロックを分散液中に均一に懸濁した状態に保つのに十分な混合をして、より大きな混合タンクに移す。凝集した充填剤は、この混合タンクから抄紙用供給材にポンプ輸送される。
【0043】
連続処理では、予混合デンプン/凝集剤の所望量を、充填剤を含むパイプにポンプで注入し、必要に応じてインライン静止混合器で混合する。充填剤と予混合デンプン/凝集剤との十分な混合を可能にするのに十分な長さのパイプまたは混合容器を含めることができる。次いで、充填剤フロックの所望の粒度分布を得るために、高速混合が必要である。混合装置のせん断速度または混合時間のいずれかを調整することにより、充填剤の粒度分布を制御することができる。連続処理は、固定容積装置内の調整可能なせん断速度の使用に役立つであろう。そのような装置の1つが、米国特許第4,799,964号に記載されている。この装置は、その遮断圧力を超える背圧で操作される場合、ポンプ能力のない機械的せん断装置として機能する、調節可能な速度の遠心ポンプになる。他の適切なせん断装置は、調節可能な圧力低下を伴うノズル、タービン型乳化装置、または固定容積容器内の調節可能な速度の高強度ミキサを含む。せん断後、凝集した充填剤スラリーを製紙用供給材に直接供給する。
【0044】
デンプン及び凝集剤が充填剤に同時に投入されるとき、それらは、同様の濃度、投入速度、及び上記の様式でバッチ処理または連続処理の一部として投入されてもよい。しかしながら、一緒に予混合する代わりに、デンプン及び凝集剤は、予混合組成物の一部としてではなく、所望の割合で、所望の比率または濃度で充填剤に同時に添加される。
【0045】
上記のバッチ処理及び連続処理の両方では、オーバーサイズの充填剤フロックを除去するためのフィルタまたはスクリーンの使用を採用することができる。これにより、紙または板材により大きな充填剤フロックが含まれることから生じる潜在的な機械の走行性及び紙質の問題が排除される。
【0046】
いくつかの実施形態では、処理された充填剤は、少なくとも5μm、少なくとも10μm、または少なくとも20μmのメジアン粒径を有する。いくつかの実施形態では、処理された充填剤のメジアン粒径は、約5〜約150μm、約10〜約75μm、または約20〜約50μmである。
【0047】
製紙工程
処理された後、次に、処理された充填剤は、繊維スラリーに供給され、繊維スラリーと混合される。追加の紙添加剤は、繊維スラリー中に存在してもよく、または処理された充填剤が繊維スラリーと組み合わせられた後に添加されてもよい。次いで、充填剤と(他の任意の添加剤を伴う)繊維の混合物を移動スクリーンにポンプ輸送し、湿紙を作るために水を排出する。湿紙をプレス内に供給して、より多くの水を機械的に絞り出す。プレス後の湿紙は、乾燥機に供給され、加熱によって残りの水が除去される。シート強度特性は、結果として得られる乾燥紙を用いて測定される。
【0048】
実施例1
実施例1は、デンプン単独、凝集剤単独、またはデンプン/凝集剤比が1:1〜8:1であるデンプンと凝集剤との組み合わせのいずれかで100%重質炭酸カルシウム充填剤を処理した。使用したデンプンはC26であり、General Starch Limited(Shanghai,China)から市販されている。凝集剤は、米国イリノイ州ネーパービルのEcolab Company(Naperville,IL,USA)のNalcoから市販されているDADMAC/アクリルアミドのコポリマーであるカチオン性凝集剤N−7527であった。重質炭酸カルシウム(GCC)は、Gold East、Asian Pulp and Paper(Zhenjiang,Jiangsu Province,China)から市販されているものであった。
【0049】
デンプン粉末6gを、冷水道水294g中に、250rpmで撹拌しながら添加することによってデンプン溶液を調製した。この溶液を5分間で95℃まで加熱した。撹拌速度を500rpmに上げ、デンプンをさらに15分間加熱した。結果として得られた2%のデンプン溶液を使用前に冷却した。
【0050】
1gのN−7527を99gの水道水に添加し、次いで激しく振盪することによって、1%のN−7527溶液を調製した。
【0051】
所望のN−7527:デンプン比を得るために、2%のデンプン溶液に適量のN−7527を添加することにより、N−7527とデンプンとの混合物を調製した。次に、この混合物を激しく振盪した。
【0052】
充填剤を処理するために、水道水を用いて充填剤スラリーを10%濃度まで希釈した。300mlの希釈充填剤溶液を800rpmで撹拌した。適量のデンプン、N−7527またはデンプンとN−7527との予混合された組み合わせを、シリンジを用いてスラリーに添加した。化学薬品の添加後、撹拌速度を1500rpmに上げてスラリーを2分間せん断した。その後、結果として得られた充填剤スラリーの粒度分布を、Malvern Instruments Ltd(Worcestershire,UK)から市販されているMalvern Mastersizerを用いて測定した。メジアン粒径またはD(v,0.5)を各溶液について記録した。
【0053】
結果を図1に示し、デンプンと凝集剤とを一緒に予混合し、次いで充填剤と組み合わせた場合、充填剤の粒径は、デンプンまたは凝集剤のみを充填剤と混合した場合よりも大きいことを示している。
【0054】
実施例2
この実施例では、100%重質炭酸カルシウム(GCC、Asian Pulp and Paper Gold East(Zhenjiang,Jiangsu Province,China))を1:1または4:1の割合のデンプン、凝集剤、またはデンプン+凝集剤の組み合わせのいずれで処理した。処理手順は実施例1と同じであった。未処理の充填剤(100%GCC)を対照として使用した。デンプンは、General Starch LimitedのC26であり、カチオン性凝集剤はNalcoのN−7527であった。
【0055】
ハンドシートの調製
濃度0.5%の希薄ストックを800rpmで、ビーカー内で混合した。このストックは、Gold East、Asian Pulp and Paper(Zhenjiang,JiangSu Province,China)から得た。混合開始時に、適量の未処理または処理済の充填剤を供給材に添加し、続いて以下の製紙添加剤を添加した:15秒で10kg/トンのStalok400デンプン、30秒で0.6kg/トンのN−62101、45秒で2.5kg/トンのBentonite、60秒で0.5kg/トンの N7546。N−62101は、MCQ.DMAEA/アクリルアミドのカチオン性コポリマーであり、N−7546はアクリルアミド/アクリル酸ナトリウムのアニオン性コポリマーである。N−62101及びN−7546の両方は、Ecolab Company(Naperville,IL,USA)のNalcoから市販されている。混合を75秒で停止し、供給材をFORMAX(商標)ハンドシート型のデックルボックスに移した。ハンドシート型は、シートごとに水を指定ラインまで充填した。80メッシュ形成ワイヤを通った排水によって8インチの正方形のハンドシートを形成した。ハンドシートは、湿ったハンドシート上に2枚の吸取紙と金属板を置き、25ポンドの金属ローラを6回通過させることによって、シート型から取り出された。形成ワイヤと上部の吸取紙を取り外し、ハンドシートと吸取紙を2枚の新しい吸取紙の上に置いた。次に、金属板をハンドシートの上に置いた。5枚の形成されたハンドシートをこのようにして積み重ね(新しい吸取紙、形成されたハンドシート及び吸取紙、板)、0.565MPaの圧力設定で5分間L&Wハンドシートプレスに入れた。ハンドシートのラベルをシートの右下のワイヤ側に置き、この側を乾燥機の表面に接触させた。回転ドラム式乾燥機を用いて、シートを105℃で60秒間一回通過させて乾燥させた。
【0056】
ハンドシートの物理試験
シートを試験前に湿度50%及び23℃で一晩保存した。シートは、坪量、灰含量、キャリパー及びスコットボンドについて評価した。スコットボンドをTAPPI試験法T541om−89に従って測定し、坪量をTAPPI試験法T410om−98に従って測定し、灰含量をTAPPI試験法T211om−93に従って測定した。
【0057】
結果を図2に示し、混合物によって処理された充填剤を有するシートが、有意に高いスコットボンドまたは内部強度を有することを実証する。これは、デンプン:凝集剤の1:1及び4:1比の両方について観察された。
【0058】
実施例3
実施例3では、充填剤フロックのせん断安定度を試験した。この実施例は、充填剤が重質炭酸カルシウム(GCC)と沈降炭酸カルシウム(PCC)との1:1混合物であった以外は、実施例1と同じであった。GCC/PCC充填剤を、カチオン性凝集剤、またはカチオン性デンプンまたはカチオン性凝集剤とカチオン性デンプンとの混合物で処理した。デンプンは、General Starch Limitedから市販されているC26であった。カチオン性凝集剤は、Ecolab Company(Naperville,IL,USA)のNalcoから市販されているDEV210、DMAEA.MCQ/アクリルアミドコポリマーであった。未処理のGCC及びPCCを対照として使用した。
【0059】
実施例3では、凝集された充填剤スラリーを様々な時間、1500rpmでせん断して、充填剤フロックのせん断安定度を調べた。
【0060】
結果を図3に示し、デンプンと凝集剤とを一緒に予混合し、次いで充填剤と組み合わせた場合、充填剤の粒径は、デンプンまたは凝集剤のみを充填剤と混合した場合よりも大きいことを示す。さらに、カチオン性デンプンとカチオン性凝集剤との混合物は、よりせん断抵抗性のある充填剤フロックを生成した。
【0061】
実施例4
実施例4は、充填剤が重質炭酸カルシウム(GCC)と沈降炭酸カルシウム(PCC)との1:1混合物であったことを除いて、実施例2と同じであった。充填剤を実施例3のように処理した、すなわち、充填剤を2kg/トンDEV210単独で処理するか、または2kg/トンDEV210と2kg/トンカチオン性デンプンとの混合物で処理するかのいずれかで処理した。未処理のGCC及びPCCを対照として使用した。
【0062】
結果を図4に示し、カチオン性凝集剤とカチオン性デンプンとの混合物で処理した充填剤を有するシートは、有意に高いスコットボンドを有することを示している。
【0063】
実施例5
この実施例では、100%重質炭酸カルシウム(Jinhai、Asia Pulp and Paper(Haikou,Hainan Province,China))は、0.25:1、0.5:1、1:1、及び4:1の比率で、デンプン+凝集剤の組み合わせで処理した。凝集剤の投入量は、2kg/トン充填剤だった。デンプンは、General Starch Limitedから市販されているC26、カチオン性デンプンであった。凝集剤は、Ecolab Company(Naperville,IL,USA)のNalcoから市販されているDEV210であった。充填剤の処理工程は、せん断速度及び時間が1500rpm、8分間であったことを除いて、実施例1と同じであった。結果を表1に示し、凝集剤に対するデンプンの濃度を増加させると、処理された充填剤のより大きな粒径が得られることを実証する。
【0064】
実施例6
実施例6は、デンプンと凝集剤とを同時に(予混合せず)添加し、その割合が1:1であった以外は、実施例5と同じであった。凝集剤の投入量は2kg/トン充填剤であった。結果を表1に示し、デンプンと凝集剤との同時添加により、順次添加された凝集剤とデンプンとの同程度の濃度よりも改良された(より大きい)充填剤の粒径が得られたことを実証する。
【0065】
実施例7
実施例7は、デンプンを最初に添加した後、凝集剤を1:1の割合で添加した以外は、実施例5と同じであった。凝集剤の投入量は、2kg/トン充填剤であった。結果を表1に示し、凝集剤とデンプンとの逐次添加により、予混合されたデンプン及び凝集剤またはデンプンと凝集剤との同時添加と比較したときに、より小さな粒径を有する処理された充填剤が作製されたことを実証する。
【0066】
実施例8
実施例8は、凝集剤を最初に添加した後、デンプンを1:1の割合で添加した以外は、実施例5と同じであった。凝集剤の投入量は、2kg/トン充填剤であった。結果を表1に示し、凝集剤とデンプンとの逐次添加により、予混合されたデンプン及び凝集剤またはデンプンと凝集剤との同時添加と比較したときに、より小さな粒径を有する処理された充填剤が作製されたことを実証する。
【0067】
実施例9
実施例9は、デンプンが天然のジャガイモデンプン(Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd(China)から市販された製造番号69023736)であり、デンプン+凝集剤の割合が1:1であること以外は、実施例5と同じであった。凝集剤の投入量は、2kg/トン充填剤であった。結果を表1に示す。このデータは、カチオン性デンプンと生デンプンとの予混合も、カチオン性デンプンのみと比較して、性能を高めることができたことを実証する。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例10
この例では、100%沈降炭酸カルシウム(PCC、Asian Pulp and Paper Gold East(Zhenjiang,Jiangsu Province,China))を、Ecolab Company(Naperville,IL,USA)のNalcoから市販されているアクリルアミドとアンモニウムアクリレートとのコポリマーであるアニオン性凝集剤DEV117で最初に処理し、次いで、カチオン性凝集剤、あるいは1:1または4:1の割合のデンプンとカチオン性凝集剤との組み合わせのいずれかで処理した。凝集剤の投入量は、2kg/トン充填剤であった。未処理の充填剤(100%PCC)を対照として使用した。デンプンは、General Starch LimitedのC26であるカチオン性デンプンであった。カチオン性凝集剤は、Ecolab Company(Naperville,IL,USA)のNalcoから市販されているDEV210であった。結果を表2に示し、カチオン性凝集剤とデンプンとを予混合することにより、アニオン性凝集剤を最初に添加した場合、非分散性充填剤(PCC)の粒径が改善されることが実証される。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例11
実施例11は、充填剤がチョーク(JinGui、Asian Pulp and Paper(Qinzhou,Guangxi Province,China))であること以外は、実施例10と同じであった。結果を表3に示し、カチオン性凝集剤とデンプンとを予混合することによって、アニオン性凝集剤を最初に添加した場合に、非分散性充填剤(チョーク)の粒径を改善できることを実証する。
【0072】
【表3】
【0073】
上記の明細書、実施例、及びデータは、本開示の組成物の製造及び使用の完全な説明を提供する。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の多くの実施形態を行うことができるため、本発明は、特許請求の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4