特許第6985261号(P6985261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985261
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】車両用ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   B62D1/06
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-521249(P2018-521249)
(86)(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公表番号】特表2018-533519(P2018-533519A)
(43)【公表日】2018年11月15日
(86)【国際出願番号】EP2016077447
(87)【国際公開番号】WO2017081262
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2018年6月18日
【審判番号】不服2021-1418(P2021-1418/J1)
【審判請求日】2021年2月1日
(31)【優先権主張番号】1560778
(32)【優先日】2015年11月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ボイティアウ、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】モイナード、ファブリス
【合議体】
【審判長】 藤井 昇
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 島田 信一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0224040(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/128559(WO,A1)
【文献】 特開2003−284697(JP,A)
【文献】 特開2010−250980(JP,A)
【文献】 実開昭64−51564(JP,U)
【文献】 特開2007−76491(JP,A)
【文献】 特開2012−206692(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/123222(WO,A1)
【文献】 特表2014−516873(JP,A)
【文献】 特開2015−147531(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0026711(US,A1)
【文献】 特開2012−145407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム(10)と、
前記リム(10)上に複数の検知ゾーン(11、12、13)を形成するとともに、使用者の手と前記検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触を検知する静電容量型の複数の存在検知センサ(41、42、43)と、
前記リムの長手方向に沿って配置され、前記複数の存在検知センサ(41、42、43)の全てに電気的に接続される共通フィルム又は布状の接地導電体シート(44)と、
電気絶縁体によって形成され、前記複数の存在検知センサ(41、42、43)を支持し、前記リムの長手方向に沿って、前記複数の存在検知センサ(41、42、43)と前記接地導電体シート(44)との間に配置される支持体と
前記複数の存在検知センサ(41,42,43)及び前記接地導電体シート(44)の全体を被覆する外部シース(16)と、を備えたことを特徴とする、車両用ステアリングホイール。
【請求項2】
前記複数の存在検知センサ(41,42,43)が、
使用者の手と、前記リム(10)の内側部分に配置された第1の検知ゾーン(11)との間の近接及び/又は接触を検知するように構成された第1の存在検知センサ(41)と、
使用者の手と、前記リム(10)の外側部分の第1の半分に配置された第2の検知ゾーン(12)との間の近接及び/又は接触を検知するように構成された第2の存在検知センサ(42)と、
使用者の手と、前記リム(10)の外側部分の第2の半分に配置された第3の検知ゾーン(13)との間の近接及び/又は接触を検知するように構成された第3の存在検知センサ(43)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用ステアリングホイール。
【請求項3】
前記複数の存在検知センサ(41、42、43)と前記支持体と前記接地導電体シート(44)とを含む検知層(40)は、それぞれ長手方向に2つの端部を接続する2つの長手方向縁部を有する細長形状を有し、前記複数の存在検知センサ(41、42、43)及び前記接地導電体シート(44)は、それぞれ接続部を有し、前記接続部は全て同じ長手方向側縁部に配置される、請求項1に記載の車両用ステアリングホイール。
【請求項4】
前記複数の存在検知センサ(41,42,43)が、第1の存在検知センサ(41)、第2の存在検知センサ(42)及び第3の存在検知センサ(43)を含み、
前記第2の存在検知センサ(42)の前記接続部及び前記第3の存在検知センサ(43)の前記接続部は、前記第1の存在検知センサ(41)の2つの側に配置される、請求項3に記載の車両用ステアリングホイール。
【請求項5】
前記複数の存在検知センサ(41,42,43)が、第1の存在検知センサ(41)、第2の存在検知センサ(42)及び第3の存在検知センサ(43)を含み、
前記第1の存在検知センサ(41)の前記接続部は、前記第2の存在検知センサ(42)と前記第3の存在検知センサ(43)との間に配置される、請求項3に記載の車両用ステアリングホイール。
【請求項6】
前記リム(10)に対して、少なくとも1つのブランチ(21、22、23)を介して連結されたハブをさらに備え、
前記複数の存在検知センサ(41、42、43)と前記支持体と前記接地導電体シート(44)とを含む検知層(40)は、前記複数の存在検知センサ(41、42、43)に連結された接続部(45)を備え、
前記接続部(45)は、前記少なくとも1つのブランチ(21、22、23)を介して前記ハブに対して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用ステアリングホイール。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の前記車両用ステアリングホイールを備える自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車に取り付けられるとともに、存在検知センサーが装備され、それにより、運転者がステアリングホイールを握っているか放しているかを検知し、後者の場合、例えば警報を発する、車両用ステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、特許文献1によって開示されているような、かかる存在検知センサーが装備されたフープを備えるステアリングホイールが既知である。しかし、このシステムは、製造中、ステアリングホイール上に位置決めし、適所に保持することが困難である複数のセンサーを提案しているのが特に欠点である。さらに、これらの存在検知センサーは、目に見えてはならず、したがって、フープの外面の下に配置しなければならないため、シース(例えば、革製)の下に位置決めするか、プラスチック材料(例えば、ポリウレタン等)に埋め込むか、又は更にはプラスチック材料でオーバーモールドしなければならないことに留意されたい。したがって、この複数の存在検知センサーは、ステアリングホイールの製造にとって欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/267422号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、上述の従来技術文献の欠点を解消し、特に、第1には、複数の存在検知センサーを有するが、その製造が単純である車両用ステアリングホイールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明の第1の態様は、
フープと、
フープ上に複数の別個の検知ゾーンの中の1つの検知ゾーンを形成するとともに、使用者の手(limb)と上記検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触を検知するようにそれぞれ構成された複数の存在検知センサーと、
複数の存在検知センサーを覆う外部シースと、
を備え、
上記複数の存在検知センサーは、同じ支持体に取り付けられ、存在検知センサーを備える支持体は、支持体を含む検知層を形成し、支持体は、ポリエチレン等の電気絶縁体によって形成され、第1の面において、例えば、少なくともニッケルで覆われたポリアミド糸によって形成された存在検知センサーを支持し、第2の面において、例えば、少なくともニッケルで覆われたポリアミド糸によって形成された少なくとも1つの接地導電体フィルム又は布を支持し、検知層は、複数の存在検知センサーのための接地導電体フィルム又は布を含むことを特徴とする、車両用ステアリングホイールに関する。
【0006】
換言すれば、接地導電体フィルム又は布は、複数の存在検知センサーに共通又は共有のものである。
【0007】
存在検知センサー及び/又は接地導体フィルムは、シート又はフィルムの形態であり、織布又は不織布から作製することができる。ただし、形成される検知層は可撓性である(検知層は、例えば、革によって覆われると目に見えなくなるように、引き伸ばすか又は圧縮するために、フープの周りに巻き付け、更には変形させることができる)。さらに、複数のセンサーに対して単一かつ共通の接地導体フィルム又は布(ガード又はシールドとも呼ぶ)により、検知層の構造が単純化され、車両に対する接続部の数が抑えられ、接続される電子部品が単純化される。実際のところ、全ての存在検知センサーに対して1つの接地接続部があれば事は足りる。これにより、ハブ内及び/又はシースの下に多数の接地導電体を通す必要が回避される。さらに、同じ接地素子が全てのセンサーに対して用いられるため、接地導体に接続される電子部品を多重化する必要がない。したがって、ステアリングホイール及び関連する電子部品は、より単純になる。
【0008】
支持体は、1つの接地導電体フィルム又は布を含むことが有利である。
【0009】
外部シースは、フープの少なくとも一部の周りに延在する少なくとも1つのシームで縫い合わされることが有利である。
【0010】
上記存在検知センサーのうちの少なくとも1つは、外部シースのシームの少なくとも一部に面して配置され、上記少なくとも1つのシームの少なくとも一部を含み、上記少なくとも1つのシームに対する横断方向における、上記少なくとも1つのシームのいずれの側にも延在する検知ゾーンを形成するようになっていることが有利である。
【0011】
上記実施形態に係るステアリングホイール(縫い合わされた外部シースがフープを覆っている)は、複数のセンサーを備えるが、これらのセンサーは、1つの同じ支持体に組み込まれている。これにより、製造中の取扱い及び適所に保持することが簡単になる。さらに、存在検知センサーのうちの1つは、フープの周りに延在する外部シースのシームに面する。
【0012】
そのようなシームは、シースをフープ上に固定するために、外部シースの2つの長手方向縁部をともに接続する。実際には、ステアリングホイール上に取り付ける前、外部シースは、通常、概ね矩形形状の材料片である。この矩形は、2つの長手方向縁部を有し、その長さは、実質的にフープの内周の長さであり(シームは、ハブに面するフープの内側にあるため)、そして、例えば、縁部同士が縫い合わされる。さらに、この矩形は、2つの側縁部を有し、その長さは、実質的に、ステアリングコラムの軸を含む平面におけるフープの断面の周囲の長さである。シームがフープの内側に位置することから、外部シースは、フープの外側付近に予め位置決めされ、その後、側縁部がフープの内側に面するように、内方に折り曲げられる。
【0013】
外部シースのシームに面する存在検知センサーに話を戻すと、存在検知センサーは、シームに沿って、またシームのいずれの側にも延在しており、シームを含むとともにこのシームのいずれにも沿って延在する検知ゾーンに対する近接及び/又は接触を検知することが可能である。換言すれば、運転者がステアリングホイールのフープの内側部分(ハブに面する部分)に触れているか否かを単一のセンサーによって検知することが可能である。したがって、この実施形態はまた、全体的なアーキテクチャを単純化することによって製造に改善を与える。すなわち、ただ1つの存在検知センサーがあれば十分であり、ただ1つの存在検知センサーにより、シームにおける、また(シームの長手方向に関して)シームのいずれの側にもおける近接及び/又は接触を検知することが可能である。
【0014】
存在検知センサーの縁部間の空間に起因して検知が不可能であるシームに配置された接合ゾーン(センサーの縁部が触れることなく向き合う)を有する、フープを囲む存在検知センサーを備えるステアリングホイールと比較して、本発明は、シームにおいて1つのみの存在検知センサーによって検知の利点を提供する。換言すれば、本発明は、2つの検知ゾーン間の空間を利用して、接合ゾーンを位置決めする。これにより、検知ゾーンのカバー範囲が最適化される。
【0015】
シームの少なくとも一部に面して配置される存在検知センサーは、常にシームの同じ側にある少なくとも1つの縁部を有することが有利である。このセンサーは、例えば、概ね矩形形状を有することができる。このセンサーの1つ又は2つの辺は、シームに対して実質的に平行とすることができる。これにより、シームにおける全体の感度を維持しながら、センサー及び同時にセンサー支持体の切断面が最適化される。シームがフープの内側に位置することから、センサー支持体は、フープの内側、正面又は背面に予め位置決めされ、その後、側縁部が、フープの内側ではなく外側、正面又は背面を向くように折り返される。換言すれば、外部シースがフープの内側でシームにおいて閉じることから、センサー支持体は、外部シースに対して反対向きに、又は90度回転して位置決めされる。
【0016】
センサーは、静電容量型であることが有利である。
【0017】
上記少なくとも1つのシームは、外部シースのみを通ることが有利である。この実施形態は、シームに面する存在検知センサーが影響を受けないことを意味する。
【0018】
本発明の別の態様は、
フープと、
フープ上に複数の別個の検知ゾーンの中の1つの検知ゾーンを形成するとともに、使用者の手と上記検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触を検知するようにそれぞれ構成された複数の存在検知センサーと、
少なくとも1つのスポークによってフープに接続されるハブと、
少なくとも複数の存在検知センサーを覆うプラスチック材料製の外被と、
を備え、
上記複数の存在検知センサーは、1つの支持体に取り付けられ、存在検知センサーを備える支持体は、支持体を含む検知層を形成し、支持体は、ポリエチレン等の電気絶縁体によって形成され、第1の面において、例えば、少なくともニッケルで覆われたポリアミド糸によって形成された存在検知センサーを支持し、第2の面において、例えば、少なくともニッケルで覆われたポリアミド糸によって形成された少なくとも1つの接地導電体フィルム又は布を支持し、検知層は、複数の存在検知センサーのための接地導電体フィルム又は布を含むことを特徴とする、車両用ステアリングホイールに関する。
【0019】
換言すれば、接地導電体フィルム又は布は、複数の存在検知センサーに共通又は共有のものである。
【0020】
存在検知センサー及び/又は接地導体フィルムは、シート又はフィルムの形態であり、織布材料又は不織布材料から作製することができる。ただし、形成される検知層は、可撓性である(検知層は、例えば、革によって覆われると目に見えなくなるように、引き伸ばすか又は圧縮するために、フープの周りに巻き付け、更には変形させることができる)。さらに、複数のセンサーに対して単一かつ共通の接地導体フィルム又は布(ガード又はシールドとも呼ぶ)により、検知層の構造が単純化され、それにより、車両に対する接続部の数が抑えられ、接続される電子部品が単純化される。実際のところ、全ての存在検知センサーに対して1つの接地接続部があれば事は足りる。これにより、ハブ内及び/又はシースの下に多数の接地導電体を通す必要が回避される。さらに、同じ接地素子が全てのセンサーに対して用いられるため、接地導体に接続される電子部品を多重化する必要がない。したがって、ステアリングホイール及び関連する電子部品は、より単純になる。
【0021】
支持体は、1つの接地導電体フィルム又は布を含むことが有利である。
【0022】
上記存在検知センサーのうちの少なくとも1つは、ハブに面するフープの内周の少なくとも一部の周りに配置されており、上記少なくとも1つの内周の少なくとも一部を含み、上記少なくとも1つの内周に対する横断方向における、上記少なくとも1つの内周のいずれの側にも延在する検知ゾーンを形成するようになっていることが有利である。
【0023】
上記実施形態に係るステアリングホイール(滑らかで連続した外被を有する、又は、フープの周りにシームがなく、フープを覆って、複数の存在検知センサーをオーバーモールドするか若しくは埋め込んでいる)は、複数のセンサーを備えるが、これらのセンサーは、1つの同じ支持体に組み込まれている。それにより、製造中の取扱い及び適所に保持することが簡単になる。さらに、存在検知センサーのうちの1つは、フープの内周(ハブに面する部分)に配置され、そして、この内周の少なくとも一部の周りに、またいずれの側にも延在し、それにより、内周を含むとともに、この内周のいずれの側にも延在する検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触が可能である。換言すれば、運転者がステアリングホイールのフープの内側部分(ハブに面する部分)に触れているか否かを単一のセンサーによって検知することが可能である。したがって、この実施形態はまた、全体のアーキテクチャを単純化することによって製造に改善を与える。すなわち、ただ1つの存在検知センサーがあれば十分であり、ただ1つの存在検知センサーにより、内周における、また(内周の長手方向に関して)内周のいずれの側にもおける近接及び/又は接触を検知することが可能である。
【0024】
したがって、本発明は、通常は存在検知を有しないゾーンにおいて縫合シース又はシームレスシースを有するステアリングホイールのための検知を提供する。
【0025】
車両用ステアリングホイールは、
使用者の手と、フープの内側部分に配置された第1の検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触を検知するように構成された第1の存在検知センサーと、
使用者の手と、フープの外側部分の第1の半分に配置された第2の検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触を検知するように構成された第2の存在検知センサーと、
使用者の手と、フープの外側部分の第2の半分に配置された第3の検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触を検知するように構成された第3の存在検知センサーと、
を備えることが有利である。この実施形態に係るステアリングホイールは、使用者の握り方を識別することが可能である。使用者がステアリングホイールのフープの内側部分に触れている場合、第1の存在検知センサーがそれを検知する。使用者が右手のみでステアリングホイールのフープの外側に触れている場合、第2の存在検知センサー又は第3の存在検知センサーのうちの一方がそれを検知する。最後に、運転者が左手のみでステアリングホイールのフープの外側に触れている場合、第2の存在検知センサー又は第3の存在検知センサーのうちの他方がそれを検知する。当然ながら、この検知は、左右を区別するために、ステアリングホイールの回転を考慮することができる。
【0026】
車両用ステアリングホイールは、フープをハブに接続する少なくとも1つのスポークを備え、第1の存在検知センサーは、上記少なくとも1つのスポークを囲み、及び/又は、上記少なくとも1つのスポークを囲む切欠き部を有し、上記少なくとも1つのスポークによって分離される内周の少なくとも2つの部分をカバーすることが有利である。
【0027】
第1の存在検知センサーは、上記少なくとも1つのスポークによって分離される内周の部分のそれぞれを少なくとも部分的にカバーすることが有利である。
【0028】
複数の存在検知センサーの中の各存在検知センサーは、使用者の手とそれぞれの検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触を連続的に検知するように構成されることが有利である。
【0029】
検知層及び/又は存在検知センサーを備える支持体は、フープの周りに配置される前は、2つの長手方向縁部及び2つの側縁部を有する細長く平坦な形状を有することが有利である。
【0030】
ステアリングホイールのフープは、実質的に、半径Rの円の周りにフープの断面を回転させることによって得られるトーラスの形態であることが有利である。
【0031】
長手方向縁部は、半径Rの円の円周と実質的に等しい長さであることが有利である。
【0032】
側縁部は、フープの断面(ステアリングホイール又はハブ又はステアリングコラムの回転軸を含む平面に沿った断面又は切断部)の円周と実質的に等しい長さであることが有利である。
【0033】
検知層は、それぞれ長さ方向に2つの端部を接続する2つの長手方向縁部を有する細長形状を有し、複数の存在検知センサー及び上記少なくとも1つの接地導電体フィルム又は布は、それぞれ接続部を有し、接続部は全て同じ長手方向縁部に沿って配置されることが有利である。この実施形態により、全ての接続部が検知層の同じ側にあるので、検知層の電気的接続を単純化することが可能である。さらに、センサーの全てに共通である1つのみの接地フィルム又は布が存在することから、共通の接地フィルム又は布の表面が、必然的にこの長手方向縁部に接する又は共通であるため、1つの長手方向縁部に沿って接続部を設けることが簡単になる。したがって、本発明に係るステアリングホイールの層と車両の車載ネットワークとの接続部を設けることがより簡単になる。接続部は、センサー部であり、すなわち、センサーの材料と同じ材料で形成され、それにより、検知層が、別の部材を用いることにより過度に厚くなることがない。
【0034】
接続部は、フープと少なくとも1つのスポークとの間の接続ゾーンに位置決めされることが有利である。接続ゾーンは、ステアリングホイールの底部、代替的には6時位置ゾーンと呼ばれるところに位置することが好ましい。これにより、検知ゾーンに対する接続ゾーンの位置を最適化することが可能である。
【0035】
第2のセンサーの接続部及び第3のセンサーの接続部は、第1のセンサーのいずれの側にも配置されることが有利である。
【0036】
第1のセンサーの接続部は、第2のセンサーと第3のセンサーとの間に配置されることが有利である。
【0037】
車両用ステアリングホイールは、フープをハブに接続する少なくとも1つのスポークを備え、上記少なくとも1つのスポークの第1の側縁部が、第1の曲率半径を有してフープに接続し、上記少なくとも1つのスポークの第2の側縁部が、フープを第1の曲率半径よりも大きい第2の曲率半径に接続し、支持体及び存在検知センサーのうちの少なくとも1つは、上記少なくとも1つのスポークの一部を覆い、支持体及びセンサーのうちの上記少なくとも1つは、上記少なくとも1つのスポークの幅に対して第1の側縁部に向かってオフセットされた切欠き部を有することが有利である。この実施形態は、小さい方の曲率半径を有する側縁部の切欠き部を近づけることによって、検知層のテンプレート又は平坦形状の切欠きを容易にする。これにより、また、ステアリングホイールにおけるテンプレートの被覆が容易になり、折り目の形成されるリスクが抑えられる。
【0038】
本発明の別の態様は、
フープと、
フープ上に複数の別個の検知ゾーンの中の1つの検知ゾーンを形成するとともに、使用者の手と上記検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触を検知するようにそれぞれ構成された複数の存在検知センサーと、
複数の存在検知センサーを覆い、フープの少なくとも一部の周りに延在する少なくとも1つのシームで縫い合わされる外部シースと、
を備え、
上記複数の存在検知センサーは、同じ支持体に取り付けられることと、上記存在検知センサーのうちの少なくとも1つは、外部シースのシームの少なくとも一部に面して配置されており、上記少なくとも1つのシームの少なくとも一部を含むとともに、上記少なくとも1つのシームに対する横断方向における、上記少なくとも1つのシームのいずれの側にも延在する検知ゾーンを形成するようになっていることを特徴とする、車両用ステアリングホイールに関する。
【0039】
上記実施形態に係るステアリングホイール(縫い合わされた外部シースがフープを覆っている)は、複数のセンサーを備えるが、これらのセンサーは、1つの同じ支持体に組み込まれている。これにより、製造中の取扱い及び適所に保持することが簡単になる。さらに、存在検知センサーのうちの1つは、フープの周りに延在する外部シースのシームに面する。
【0040】
そのようなシームは、シースをフープ上に固定するために、外部シースの2つの長手方向縁部を接続する。実際には、ステアリングホイール上に取り付ける前、外部シースは、通常、普通は矩形形状の材料片である。この矩形は、2つの長手方向縁部を有し、その長さは、実質的にフープの内周の長さであり(シームは、ハブに面するフープの内側にあるため)、そして、例えば、縁部同士が縫い合わされる。さらに、この矩形は、2つの側縁部を有し、その長さは、実質的に、ステアリングコラムの軸を含む平面におけるフープの断面の周囲の長さである。
【0041】
外部シースのシームに面する存在検知センサーに話を戻すと、存在検知センサーは、シームに沿って、またシームのいずれの側にも延在しており、シームを含むとともにこのシームのいずれの側にも沿って延在する検知ゾーンに対する近接及び/又は接触を検知することが可能である。換言すれば、運転者がステアリングホイールのフープの内側部分(ハブに面する部分)に触れているか否かを単一のセンサーによって検知することが可能である。したがって、この実施形態はまた、全体的なアーキテクチャを単純化することによって製造に改善を与える。すなわち、ただ1つの存在検知センサーがあれば十分であり、ただ1つの存在検知センサーにより、シームにおける、また(シームの長手方向に関して)シームのいずれの側にもおける近接及び/又は接触を検知することが可能である。
【0042】
存在検知センサーの縁部間の空間に起因して検知が不可能であるシームに配置された接合ゾーン(センサーの縁部が触れることなく向き合う)を有する、フープを囲む存在検知センサーを備えるステアリングホイールと比較して、本発明は、シームにおいて1つのみの存在検知センサーによって検知の利点を提供する。換言すれば、本発明は、2つの検知ゾーン間の空間を利用して、接合ゾーンを位置決めする。これにより、検知ゾーンのカバー範囲が最適化される。
【0043】
センサーは、静電容量型であることが有利である。
【0044】
上記少なくとも1つのシームは、外部シースのみを通ることが有利である。この実施形態は、シームに面する存在検知センサーが影響を受けないことを意味する。
【0045】
本発明の別の態様は、
フープと、
フープ上に複数の別個の検知ゾーンの中の1つの検知ゾーンを形成するとともに、使用者の手と上記検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触を検知するようにそれぞれ構成された複数の存在検知センサーと、
少なくとも1つのスポークによってフープに接続されるハブと、
少なくとも複数の存在検知センサーを覆うプラスチック材料製の外被と、
を備え、
上記複数の存在検知センサーは、1つの支持体に取り付けられることと、上記複数の存在検知センサーは、ハブに面するフープの内周の少なくとも一部の周りに配置されており、上記少なくとも1つの内周の少なくとも一部を含むとともに、上記少なくとも1つの内周に対する横断方向における、上記少なくとも1つの内周のいずれの側にも延在する検知ゾーンを形成するようになっていることとを特徴とする、車両用ステアリングホイールに関する。
【0046】
上記実施形態に係るステアリングホイール(滑らかで連続した外被を有する、又は、フープの周りにシームがなく、フープを覆って、複数の存在検知センサーをオーバーモールドするか若しくは埋め込んでいる)は、複数のセンサーを備えるが、これらのセンサーは、1つの同じ支持体に組み込まれている。それにより、製造中の取扱い及び適所に保持することが簡単になる。さらに、存在検知センサーのうちの1つは、フープの内周(ハブに面する部分)に配置され、そして、この内周の少なくとも一部の周りに、またいずれの側にも延在し、それにより、内周を含むとともに、この内周のいずれの側にも延在する検知ゾーンとの間の近接及び/又は接触が可能である。換言すれば、運転者がステアリングホイールのフープの内側部分(ハブに面する部分)に触れているか否かを単一のセンサーによって検知することが可能である。したがって、この実施形態はまた、全体のアーキテクチャを単純化することによって製造に改善を与える。すなわち、ただ1つの存在検知センサーがあれば十分であり、ただ1つの存在検知センサーにより、内周における、また(内周の長手方向に関して)内周のいずれの側にもおける近接及び/又は接触を検知することが可能である。
【0047】
したがって、本発明は、通常は存在検知を有しないゾーンにおいて縫合シース又はシームレスシースを有するステアリングホイールのための検知を提供する。
【0048】
当然ながら、上記独立態様の全ては、本発明の特定の実施形態を得るために組み合わせることができる。
【0049】
本発明の別の態様は、先行する態様に係るステアリングホイールを備える自動車に関する。
【0050】
本発明の更なる特徴及び利点は、非限定的な例として与えられ、添付図面によって示されている、本発明の一実施形態の以下の詳細な記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】使用者の手とフープとの間の近接及び/又は接触の3つの検知ゾーンを有する、本発明に係る車両用ステアリングホイールの正面図である。
図2】軸II−IIに沿った図1の車両用ステアリングホイールの断面図である。
図3図2に示されている断面の詳細図である。
図4図1の3つの検知ゾーンを形成する検知層の第1の実施形態を示す図である。
図5図4の検知層の一代替形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、フープ10と、3つのスポーク21、22、23によってフープ10に接続されるハブ30とを備える車両用ステアリングホイールを示している。本発明によれば、ステアリングホイールは、複数の存在検知センサー41、42、43(図3において外部シース16(図2に示されている、例えば、革製)の下に配置されて示されている)を備える。
【0053】
製造中、外部シース16は、ステアリングホイール上、特にフープ10上に配置され、次いで、フープ10の周りに延在する、図2に示されている少なくとも1つのシーム15で縫い合わされる。
【0054】
複数の存在検知センサー41、42、43の各存在検知センサーは、使用者の手とフープ10との間の近接及び/又は接触の検知ゾーン11、12、及び13を形成する。図1に示されているように、検知ゾーン11は、フープ10の内側部分、すなわち、ハブ30に面する部分に位置する。すなわち、検知ゾーン11は、外部シース16のシーム15を含むとともに、シーム15のいずれの側にも延在し、フープ10のハブ30に面する内側部分全体をカバーする。これは、図2に示されている。
【0055】
図2は、外部シース16の下にある検知層40を示す、図1に示されている軸II−IIに沿った断面図である。この検知層40は、存在検知センサー41、42、及び43が取り付けられる支持体を備える。これは、存在検知センサー41に関して図3に示されている。
【0056】
図2は、フープ10の上部において、検知層40がフープ10の周りに巻き付けられ、3時位置付近、すなわち運転者の反対側に位置する接合部を有することが示されている。このゾーンIIIによって囲まれた部分は、図3において更に詳細に示されている。3時位置付近で閉鎖するために、層40は、組立時、9時位置付近(すなわち、ステアリングホイールの正面)に予め位置決めされ、次いで、ステアリングホイールの背面に向かって3時位置に側縁部を折り曲げられる。層40の初期位置は、接合部が9時位置から3時位置の間にある限り、すなわち、図3の上部にあり、フープの内側領域に位置しない限り変更してもよい。
【0057】
換言すれば、部材がステアリングホイールのフープにおいて被覆される場合の通例のように、検知層の長手方向縁部が互いに面する接合ゾーンが、シーム15の下にあるのではない。この接合ゾーンは、角度オフセットされており、それにより、連続的な1つの検知ゾーン11を形成するのに1つのみの存在検知センサー41を有することが可能である。一般知識に従った、シームの下に接合ゾーンを有する実施形態は、必然的に、シームの下に、検知を伴わないゾーンを形成するものである。なお、検知層40の縁部は触れ合わない、すなわち、これらの縁部間には電気的接触が存在しない。
【0058】
最後に、図2は、スポーク21とフープ10との接続点において、検知層40がスポーク21の一部をカバーしていることを示している。スポーク21、22、23間の接続半径のため、検知層40に切欠き部を設け、これらのスポーク部分を同じテンプレートによってカバーすることができる。スポーク22に関して、異なる2つの接続半径R1及びR2がある場合、製造中に検知層40における折り目を制限するために、小さい方の半径の側に切欠き部を設けることが有利である。例えば、切欠き部は、図1に示されている、スポーク22の幅に関して半径R2よりも半径R1に近い線47において設けることができる。好ましくは、切欠き部は、運転者の反対側の面の、ステアリングホイールの背面にある検知層40の部分に設けられる。
【0059】
図4は、検知層40の第1の実施形態を示している。この実施形態は、全ての存在検知センサー41、42、43と、接地フィルム又は布44と、存在検知センサー41、42、43と接地フィルム又は布44との間に配置される支持体(図示せず)とを備える。通常、存在検知センサー41、42、43及び接地フィルム又は布44は、ニッケルで少なくとも部分的に覆われた少なくとも1つのポリアミド糸を含む、シート又はフィルム又は布である。換言すれば、存在検知センサー41、42、43は、静電容量センサーであり、検知層40は、このために、サンドイッチ形又は複合体を形成する。したがって、支持体は、電気絶縁体であり、例えば、発泡ポリエチレンから作製することができる。この図及び図5において、後のシーム15の位置が、一点鎖線46で示されている。図示のように、センサー41は、概ね矩形形状を有し、その長辺は、シーム15に対して実質的に平行である。したがって、長辺は、常にシーム15の同じ側にある。こうして、センサー41の切断面は、切断時に損失が生じないことから、最適化される。シームがフープの内側に位置するため、センサー支持体は、フープの内側に予め位置決めされ、その後、側縁部がフープの外側を向くように外方に折り曲げられる。換言すれば、センサー支持体は、外部シースがフープの内側で閉じるのに対し、センサー支持体は、フープの外側で閉じることから、外部シースに対して反対向きに位置決めされている。
【0060】
したがって、存在検知センサー41、42、43及び接地フィルム又は布44は、電気的に接続されなければならず、ゾーン45には、車載ネットワークに接続する部分が設けられる。組立てを単純化するために、接続部の全てが、検知層40の同じ縁部、すなわち、検知層40がここでの例のように矩形形状を有する場合には、長手方向縁部の一方に設けられる。なお、ここに示される形状は略図であり、本発明に係る検知層40は、ステアリングホイールのスポーク21、22、23を囲む凹部を含むことができることに留意しなければならない。
【0061】
この場合、存在検知センサー41の接続部は、他の2つの存在検知センサー42及び43の間に配置される。存在検知センサー42及び43を用いてステアリングホイールの左右外側における存在を検知することを可能にするように、底部スポーク21(6時位置に位置する)において車載ネットワークに対する接続を想定する場合は、検知層40の2つの端部は、ステアリングホイールの12時位置に配置される。一点鎖線46の長手方向反対側に接続ゾーン45を位置決めすることにより、検知層がステアリングホイール上に被覆されると、この接続ゾーンがスポーク21の上方でステアリングホイール上に位置決めされる結果となる。これにより、スポーク21は、検知層をハブに接続するためにケーブル束を通す必要がないため、車両ネットワークへのその後の接続が単純化される。同様に、これにより、接続部の全てが1つの同じスポークに設けられ、それにより、単純なケーブル束がもたらされる。
【0062】
代替的には、図5に示されているように、接続部を接続層40’の端部に設けることができ、存在検知センサー41’は、存在検知センサー42’の接続部と存在検知センサー43’の接続部との間に設けられる。当然ながら、存在検知センサー41’の接続部及び接地フィルム又は布44’の接続部も、同じく端部において、常に接続層40’の長手方向の同じ側にある。一点鎖線46に対して長手方向に近い方の側に接続ゾーン45’を位置決めすることにより、検知層がステアリングホイール上に被覆されると、この接続ゾーンがスポーク21の下方でステアリングホイール上に位置決めされる結果となる。ここでは、スポーク21は、検知層をハブに接続するために、ケーブル束を通す又はケーブル束で囲む必要がある。したがって、ここでも、接続部の全てが1つの同じスポークに設けられ、それにより、非常に単純なケーブル束がもたらされる。
【0063】
当業者には明らかである種々の変更及び/又は改良を、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の本発明の様々な実施形態に対して行うことができることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5