特許第6985273号(P6985273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985273包接化合物及びその製造方法並びにその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985273
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】包接化合物及びその製造方法並びにその用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 39/17 20060101AFI20211213BHJP
   C07D 233/56 20060101ALI20211213BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20211213BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C07C39/17CSP
   C07D233/56
   C07D487/04 150
   C08G59/40
【請求項の数】15
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2018-531880(P2018-531880)
(86)(22)【出願日】2017年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2017027683
(87)【国際公開番号】WO2018025799
(87)【国際公開日】20180208
【審査請求日】2020年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-153684(P2016-153684)
(32)【優先日】2016年8月4日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】山形 憲一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 祐一郎
【審査官】 武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/047037(WO,A1)
【文献】 特開平05−194711(JP,A)
【文献】 特開2009−234998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C08G 59/00− 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物をホスト化合物とし、環の構成原子として複数の窒素原子を含む5又は6員複素環又はその縮合複素環を有する化合物をゲスト化合物として含む包接化合物(A)であって;
【化1】
(式中、Ar、Ar、Z及びZは、それぞれ同一又は異なって単環式アレーン環又は多環式アレーン環を示し;R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なってハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素基、基−OR10、基−SR10、基−COOR10、基−COR10又は基−CON(R10(R10は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す)を示し;n1及びn2は同一又は異なって0〜4の整数を示し、n1及びn2のうち少なくとも一方が少なくとも1以上の整数であり;m1、m2、p1及びp2はそれぞれ同一又は異なって0〜4の整数を示す)
下記(A1)又は(A2)である包接化合物。
(A1)前記包接化合物(A)のうち、下記式(I)で表されるフルオレン化合物と、下記式(II)で表されるイミダゾール化合物との包接化合物を除く包接化合物
【化2】
(式中、Xは、それぞれ同一又は異なってハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいC1−6アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、又はシアノ基を示し;
mは0〜4の整数を示し、nは0〜4の整数を示し;
は、それぞれ同一又は異なってハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいC1−6アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、又はシアノ基を示し;
pは0〜4の整数を示し、q0は0〜4の整数を示す
【化3】
(式中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、又は置換基を有していてもよいC6−10アリール基を示し;
II〜RIVは、それぞれ同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、置換基を有していてもよいC6−10アリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示す)
(A2)前記ホスト化合物が、前記式(1)において、Ar及びArがベンゼン環であり;Z及びZがベンゼン環であり;R及びRがアルキル基であり;m1及びm2が1である化合物であり、
前記ゲスト化合物が、2,4−ジアルキルイミダゾールである包接化合物
【請求項2】
前記包接化合物(A1)におけるホスト化合物が、式(1)において、Ar及びArが、同一又は異なって、ベンゼン環又はナフタレン環であり;Z及びZが、同一又は異なって、ベンゼン環又はナフタレン環であり;R及びRが、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基であり;R及びRが、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基であり;n1及びn2が、同一又は異なって1〜3の整数であり;m1及びm2が、同一又は異なって0〜2の整数であり;p1及びp2が同一又は異なって0〜2の整数である請求項1記載の包接化合物。
【請求項3】
前記包接化合物(A1)におけるホスト化合物が、式(1)において、Ar及びArがベンゼン環であり;Z及びZがベンゼン環又はナフタレン環であり;n1及びn2が1又は2であり;R及びRが、同一又は異なって、C1−4アルキル基又はC6−10アリール基であり、m1及びm2が0〜2の整数であり;p1及びp2が0である請求項1又は2記載の包接化合物。
【請求項4】
前記包接化合物(A1)におけるホスト化合物が、式(1)において、R及びRがメチル基又はフェニル基であり、m1及びm2が1又は2である請求項1〜3のいずれかに記載の包接化合物。
【請求項5】
前記包接化合物(A1)におけるゲスト化合物が下記式(2)で表される化合物を含む請求項1〜4のいずれかに記載の包接化合物。
【化4】
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノエチル基、又はトリアジン−アルキル基を示し;R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を示し、前記アルキル基はヒドロキシル基を有していてもよく、RとRとは互いに結合して隣接する窒素原子及び炭素原子とともに環を形成してもよく;qは0又は1を示し;実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示す)
【請求項6】
前記包接化合物(A1)におけるゲスト化合物が下記式(2a)及び/又は(2b)で表される化合物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の包接化合物。
【化5】
(式中、rは0〜5の整数を示し;Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノエチル基、又はトリアジン−アルキル基を示し;R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を示し、前記アルキル基はヒドロキシル基を有していてもよく;実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示す)
【請求項7】
ホスト化合物1モルに対してゲスト化合物を0.5〜5モルの割合で含む請求項1〜6のいずれかに記載の包接化合物。
【請求項8】
請求項1記載の式(1)で表される化合物と、環の構成原子として複数の窒素原子を含む5又は6員複素環又はその縮合複素環を有する化合物とを混合し、請求項1〜7のいずれかに記載の包接化合物を製造する方法。
【請求項9】
エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤又は硬化促進剤であって、請求項1〜7のいずれかに記載の包接化合物を含む硬化剤又は硬化促進剤。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の包接化合物とエポキシ樹脂とを含む硬化性組成物。
【請求項11】
エポキシ樹脂が液状エポキシ樹脂である請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
エポキシ樹脂100重量部に対して包接化合物を0.1〜25重量部の割合で含む請求項10又は11記載の硬化性組成物。
【請求項13】
酸無水物系化合物をさらに含む請求項10〜12のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかに記載の硬化性組成物が硬化した硬化物。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれかに記載の硬化性組成物を加熱して硬化させ、硬化物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン化合物をホストとする新規な包接化合物とその製造方法、並びにその用途(硬化剤及び/又は硬化促進剤、硬化性組成物とその硬化物)に関する。
【背景技術】
【0002】
9,9−ビスアリールフルオレン化合物は、耐熱性や光学特性(透明性、屈折率など)に優れることから、電子材料や光学材料の原料として用いられている。例えば、特開2013−203695号公報(特許文献1)には、9,9−ビスアリールフルオレン骨格及びトリアジン骨格を有するエポキシ化合物が高い耐熱性及び有機溶媒に対する溶解性を有することが記載され、特開2013−64119号公報(特許文献2)には、フルオレン骨格を有する特定のジオール成分と、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分とを重合成分とするポリエステル樹脂が、高い屈折率と低複屈折率とを有することが記載されている。
【0003】
9,9−ビスアリールフルオレン化合物には、上記の特色の他、分子構造の嵩高さに由来して、小分子を包接する機能を有している。例えば、特開2009−234998号公報(特許文献3)には、9,9−ビスアリールフルオレン化合物をホスト化合物とし、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、ニトリル類又は炭化水素類をゲスト化合物とする包接化合物が記載され、この文献の実施例では、ビスクレゾールフルオレンと、青葉アルコール、1−アダマンタノール、酢酸イソアミル、アセトン、イソプロパノール、ジイソプロピルエーテルなどとの包接化合物が記載されている。特開平6−166646号公報(特許文献4)には、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのアルカンテトラキスフェノールをホスト化合物とする包接化合物が記載され、ゲスト化合物として、アルコール類などの他、ピリジン、イミダゾールなどの単環式含窒素複素環化合物が例示され、実施例では、ゲスト化合物としてジエチルアミン、トリエチルアミンなどを用いた例が記載されている。さらに、特開平11−71449号公報(特許文献5)には、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのアルカンテトラキスフェノールをホスト化合物に、イミダゾールをゲスト化合物とする包接化合物をエポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤として用いることが提案されている。
【0004】
このような包接化合物は、ゲスト化合物を不揮発化するとともに化学的安定性を高め、粉末化して取扱性を向上できる。また、ゲスト化合物の放出が温度依存性を有することを利用した温度感応型材料、選択分離性を利用した分離材料などの広い分野で使用できる。しかし、ゲスト化合物が限定されるため、包接化合物の利用が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−203695号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2013−64119号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開2009−234998号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献4】特開平6−166646号公報(特許請求の範囲、[0009]、実施例)
【特許文献5】特開平11−71449号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ホストとしてフルオレン化合物を含む新規な包接化合物及びその製造方法並びにその用途を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、エポキシ樹脂の硬化剤及び/又は硬化促進剤などとして有用な包接化合物及びその製造方法並びにその用途を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、硬化物の物性を低下させることなく高い貯蔵安定性を有し、かつ加熱により迅速に硬化可能な硬化性組成物とその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、フェノール性ヒドロキシル基を有する9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が、複数の窒素原子を有する複素環化合物と包接化合物を形成すること、この包接化合物をエポキシ樹脂の硬化剤として利用すると、保存安定性が高く、しかも加熱により迅速にエポキシ樹脂が硬化することを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の包接化合物は、下記式(1)で表される化合物をホスト化合物とし、環の構成原子として複数の窒素原子(例えば、塩基性窒素原子)を含む5又は6員複素環(例えば、脂肪族又は芳香族複素環)又はその縮合複素環を有する化合物をゲスト化合物として含む。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Ar、Ar、Z及びZは、それぞれ同一又は異なって単環式アレーン環又は多環式アレーン環を示し;R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なって置換基を示し;n1及びn2は同一又は異なって0〜4の整数を示し、n1及びn2のうち少なくとも一方が少なくとも1以上の整数であり;m1、m2、p1及びp2はそれぞれ同一又は異なって0〜4の整数を示す)
【0013】
前記式(1)において、環Ar及びArが、同一又は異なって、ベンゼン環又はナフタレン環であり;環Z及びZが、同一又は異なって、ベンゼン環又はナフタレン環であり;R及びRが、同一又は異なって、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基であり;R及びRが、同一又は異なって、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基であり;n1及びn2が、同一又は異なって1〜3の整数であり;m1及びm2が、同一又は異なって0〜2の整数であり;p1及びp2が、同一又は異なって0〜2の整数であってもよい。
【0014】
前記ホスト化合物は、式(1)において、環Ar及びArが、ベンゼン環であり;環Z及びZが、ベンゼン環又はナフタレン環であり;n1及びn2が1又は2であり;R及びRが、同一又は異なって、C1−4アルキル基又はC6−10アリール基であり、m1及びm2が0〜2の整数であり;p1及びp2が0である場合が多く、式(1)において、R及びRが、メチル基又はフェニル基であり、m1及びm2が1又は2である場合が多い。
【0015】
ゲスト化合物は、下記式(2)で表される化合物を含んでいてもよい。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノエチル基、又はトリアジン−アルキル基を示し;R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を示し、前記アルキル基はヒドロキシル基を有していてもよく、RとRとは互いに結合して隣接する窒素原子及び炭素原子とともに環を形成してもよく;qは0又は1〜3の整数を示し;実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示す)
【0018】
前記ゲスト化合物は、下記式(2a)及び/又は(2b)で表される化合物を含んでいてもよい。
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、rは0〜5の整数を示し;R〜R及び実線と破線との二重線は前記に同じ)
【0021】
前記包接化合物において、ゲスト化合物の割合は、ホスト化合物1モルに対して0.5〜5モル程度であってもよい。
【0022】
前記包接化合物は、前記式(1)で表される化合物と、環の構成原子として複数の窒素原子(塩基性窒素原子など)を含む5又は6員複素環(脂肪族又は芳香族複素環など)又はその縮合複素環を有する化合物とを混合することにより製造できる。
【0023】
このような包接化合物に含まれる前記複素環化合物は、二級アミノ基又は三級アミノ基を有するため、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤又は硬化促進剤として機能させることができる。そのため、本発明は、前記包接化合物を含む硬化剤又は硬化促進剤;前記包接化合物とエポキシ樹脂とを含む硬化性組成物も包含する。この硬化性組成物において、エポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂であってもよい。なお、包接化合物の使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜25重量部程度であってもよい。また、前記硬化性組成物は、フェノール系化合物及び酸無水物系化合物から選択される少なくとも一種の化合物(第2の硬化剤)をさらに含んでいてもよい。
【0024】
本発明は、前記硬化性組成物が硬化した硬化物;前記硬化性組成物を硬化(例えば、加熱して硬化)させ、硬化物を製造する方法も包含する。
【0025】
本明細書では、前記複数の窒素原子を含む5又は6員複素環又はその縮合複素環を有する化合物を単に「複素環化合物」と記載する場合がある。また、前記のように、前記複素環化合物は、二級アミノ基又は三級アミノ基を有しており、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤又は硬化促進剤として機能させることができる。そのため、「硬化剤又は硬化促進剤」を単に「硬化剤」として記載する場合がある。また、「包接化合物」とは、前記式(1)で表される化合物と前記複素環化合物との包接化合物に限らず、前記式(1)で表される化合物のフェノール性ヒドロキシル基と塩基とで形成した塩も含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するフルオレン化合物で形成される空間内に複数の窒素原子を有する複素環化合物をゲスト化合物として取り込むことができ、新規な包接化合物を提供できる。この包接化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤などとして有用である。また、前記包接化合物は、エポキシ樹脂組成物において、硬化物の物性を低下させることなく高い貯蔵安定性を有し、かつ加熱により迅速に硬化可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1の包接化合物のH−NMRスペクトルである。
図2】実施例1の包接化合物のTG−DTAチャートであり、実線がTG、破線がDTAを示す。
図3】実施例2の包接化合物のH−NMRスペクトルである。
図4】実施例2の包接化合物のTG−DTAチャートであり、実線がTG、破線がDTAを示す。
図5】実施例3の包接化合物のH−NMRスペクトルである。
図6】実施例3の包接化合物のTG−DTAチャートであり、実線がTG、破線がDTAを示す。
図7】実施例4の包接化合物のH−NMRスペクトルである。
図8】実施例4の包接化合物のTG−DTAチャートであり、実線がTG、破線がDTAを示す。
図9】実施例5の包接化合物のH−NMRスペクトルである。
図10】実施例5の包接化合物のTG−DTAチャートであり、実線がTG、破線がDTAを示す。
図11】実施例6の包接化合物のH−NMRスペクトルである。
図12】実施例6の包接化合物のTG−DTAチャートであり、実線がTG、破線がDTAを示す。
図13】実施例7の硬化性組成物のDSCチャートである。
図14】実施例8の硬化性組成物のDSCチャートである。
図15】実施例9の硬化性組成物のDSCチャートである。
図16】比較例1の硬化性組成物のDSCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(包接化合物)
包接化合物では、ホスト分子により形成された空間内にゲストとして小分子が取り込まれ、共有結合によらずゲストが安定に存在する。
【0029】
(ホスト化合物)
本発明の包接化合物において、ホスト化合物は、式(1)で表される化合物を含んでいる。
【0030】
【化4】
【0031】
(式中、Ar、Ar、Z及びZは、それぞれ同一又は異なって単環式アレーン環又は多環式アレーン環を示し;R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なって置換基を示し;n1及びn2は同一又は異なって0〜4の整数を示し、n1及びn2のうち少なくとも一方が少なくとも1以上の整数であり;m1、m2、p1及びp2はそれぞれ同一又は異なって0〜4の整数を示す)
【0032】
前記式(1)において、環Ar及びArで表される単環式アレーン環(単環式芳香族炭化水素環)としては、ベンゼン環などが例示できる。多環式アレーン環としては縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)が例示でき、縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン(例えば、ナフタレンなどの縮合二環式C10−16アレーン)環、縮合三環式アレーン(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環は、ナフタレン環、アントラセン環などであり、特に、ナフタレン環である。
【0033】
好ましい環Ar及びArは、ベンゼン環又はナフタレン環(例えば、ベンゼン環)である。環Ar及びArは同一又は異なっていてもよい。例えば、環Ar及びArの双方がベンゼン環又はナフタレン環であってもよく、環Arがベンゼン環であり、環Arがナフタレン環であってもよい。環Arがベンゼン環であり、環Arがナフタレン環である化合物は、ベンズ[a]フルオレン化合物、ベンズ[b]フルオレン化合物、ベンズ[c]フルオレン化合物を形成してもよい。
【0034】
環Z及びZで表される単環式アレーン環としては、ベンゼン環などが例示できる。多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。縮合多環式アレーン環としては、前記環Ar及びArと同様の縮合アレーン環、例えば、ナフタレン環、アントラセン環などが例示できる。好ましい縮合多環式アレーン環は、ナフタレン環である。好ましい環Z及びZは、ベンゼン環又はナフタレン環であり、通常、ベンゼン環であってもよい。
【0035】
環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環アレーン環)としては、ビアレーン環、例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC6−12アレーン環、テルアレーン環、例えば、テルフェニレン環などのテルC6−12アレーン環などが例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC6−10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
【0036】
置換基R、R、R及びRの種類は、ゲスト化合物の包接を損なわない限り特に制限されず、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基など)、基−OR10、基−SR10、基−COOR10、基−COR10、基−CON(R10(R10は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などを示す)などの広い範囲から選択できる。
【0037】
及びRとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など);アリール基(フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基など);アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など);アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基(例えば、C1−8アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基)など);シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルコキシ基など);アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など);アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など);前記アルコキシ基に対応するアルキルチオ基(C1−10アルキルチオ基);前記シクロアルコキシ基に対応するシクロアルキルチオ基(C5−10シクロアルキルチオ基);前記アリールオキシ基に対応するアリールチオ基(C6−10アリールチオ基);前記アラルキル基に対応するアラルキルチオ基(C6−10アリール−C1−4アルキルチオ基);アシル基(例えば、アセチル基などのC1−6アシル基など);カルボキシル基;アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基[ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など)、ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジ(C1−4アルキル−カルボニル)アミノ基など)]などが例示できる。なお、前記炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基など)は、置換基(アルキル基、ハロゲン原子など)を有していてもよく、例えば、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)を形成してもよい。
【0038】
これらの置換基R及びRのうち、好ましい置換基R及びRは、アルコキシ基(直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基)、アルキル基(直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基)、アリール基(C6−12アリール基)などである。特に好ましい置換基R及びRは、C1−4アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)又はアリール基(フェニル基などのC6−12アリール基)である。なお、置換基R及びRがアリール基であるとき、置換基R及びRは、環Z及び/又はZとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。これらの置換基R及びRの種類は、同一の又は異なる環Z及び/又はZにおいて、同一又は異なっていてもよい。
【0039】
本発明において、ヒドロキシル基(フェノール性ヒドロキシル基OH)の置換数n1及びn2のうち少なくとも一方が少なくとも1以上の整数である。すなわち、本発明のホスト化合物において、環Z及び/又は環Zはフェノール性ヒドロキシル基を有している。n1及びn2は、0〜4の整数、好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1又は2(例えば、1)であってもよい。n1及びn2は環Z及びZにおいて、同一又は異なっていてもよい。
【0040】
ヒドロキシル基(フェノール性ヒドロキシル基OH)の置換位置は特に制限されず、環Z及び/又はZの適当な位置に置換でき、例えば、環Z及びZがベンゼン環であるとき、2〜6−位のいずれであってもよく、2−位、3−位、4−位などであってもよい。また、環Z及びZがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8−位である場合が多く、例えば、環Ar及びArを含む縮合環(例えば、フルオレンの9−位など)に対してナフタレン環の1−位又は2−位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5−位、2,6−位などの関係(特にn1及びn2が1である場合、2,6−位の関係)で置換している場合が多い。また、n1及びn2が2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Z及び/又はZにおいて、ヒドロキシル基の置換位置は、特に限定されず、例えば、環Ar及びArを含む縮合環(例えば、フルオレンの9−位など)に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Z及びZの3−位又は4−位が環Ar及びArを含む縮合環(例えば、フルオレンの9−位など)に結合していてもよく、ビフェニル環Z及び/又はZの3−位が環Ar及びArを含む縮合環(例えば、フルオレンの9−位など)に結合しているとき、ヒドロキシル基を有する置換基の置換位置は、2−,4〜6−位,2’〜6’−位のいずれであってもよく、通常、4−,5−,6−位,3’−,4’−位、好ましくは4−,6−位,4’−位(特に、6−位)に置換していてもよい。
【0041】
置換基R及びRの置換数m1及びm2は、0〜4(例えば、0〜3)、好ましくは0〜2(例えば、1又は2)程度の整数であってもよい。置換数m1及びm2が1以上(例えば、1又は2)の整数である化合物は、前記複素環化合物を安定に包接するようである。m1及びm2は、環Z及びZにおいて同一又は異なっていてもよい。
【0042】
置換基R及びRとしては、例えば、前記置換基R及びRと同様の炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、カルボキシル基又はC1−2アルコキシ−カルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基などが例示できる。
【0043】
置換数p1及びp2は、0〜4(例えば、0〜3)、好ましくは0〜2(例えば、0又は1)程度の整数、特に0である。なお、置換数p1及びp2は、互いに同一又は異なっていてもよく、p1及びp2が2以上である場合、置換基R及びRの種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換基R及びRの置換位置は、特に限定されず、環Ar及びArがベンゼン環である場合、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、3−位及び/又は7−位など)であってもよい。
【0044】
前記式(1)で表される代表的な化合物には、下記化合物が含まれる。
【0045】
(A)環Ar及びArがベンゼン環である化合物
本発明において、式(1)で表され、ホスト分子として用いられる代表的な化合物には、環Ar及びArがベンゼン環である9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類が含まれる。このような化合物には、前記式(1)において、(a1)環Z及びZがベンゼン環であり、n1及びn2が1である9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;(a2)環Z及びZがナフタレン環であり、n1及びn2が1である9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類;(a3)環Z及びZがベンゼン環であり、n1及びn2が2以上である9,9−ビス(ポリヒドロキシフェニル)フルオレン類などが含まれる。
【0046】
(a1)9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類
9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、R及びRが炭化水素基であり、m1及びm2が0又は1である化合物が好適に使用される。
【0047】
具体的には、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アルキルヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(C1−6アルキルヒドロキシフェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジアルキルヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(ジC1−6アルキルヒドロキシフェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(シクロアルキルヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(C5−10シクロアルキルヒドロキシフェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アリールヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(C6−10アリールヒドロキシフェニル)フルオレンなど]などが挙げられる。
【0048】
(a2)9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類
上記9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類には、上記例示の9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類の環Z及びZがナフタレン環である9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(2−ヒドロキシ−6−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス[1−(5−ヒドロキシナフチル)]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなど}などが含まれる。
【0049】
(a3)9,9−ビス(ポリヒドロキシフェニル)フルオレン類
さらに、上記9,9−ビス(ポリヒドロキシフェニル)フルオレン類には、前記9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類[9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類]に対応するフルオレン類、例えば、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスカテコールフルオレン)など];9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−5−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−6−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(C1−4アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン類が含まれる。
【0050】
(B)環Ar及び環Arのうち少なくとも一方がナフタレン環である化合物
代表的な上記式(1)で表される化合物には、(b1)一方の環Arがベンゼン環であり、他方の環Arがナフタレン環であるベンゾフルオレン類、(b2)環ArおよびArがナフタレン環であるジベンゾフルオレン類などが含まれる。
【0051】
(b1)ベンゾフルオレン類
ベンゾフルオレン類には、例えば、11,11−ビス(ヒドロキシアリール)ベンゾ[a]フルオレン類,11,11−ビス(ヒドロキシアリール)ベンゾ[b]フルオレン類、7,7−ビス(ヒドロキシアリール)ベンゾ[c]フルオレン類が含まれる。
【0052】
具体的には、前記式(1)において、ZおよびZがベンゼン環であり、n1及びn2が1であるベンゾフルオレン類、例えば、11,11−ビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾ[a]フルオレン類,11,11−ビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾ[b]フルオレン類、7,7−ビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾ[c]フルオレン類;Z及びZがナフタレン環であり、n1及びn2が1であるベンゾフルオレン類、例えば、11,11−ビス(ヒドロキシナフチル)ベンゾ[a]フルオレン類,11,11−ビス(ヒドロキシナフチル)ベンゾ[b]フルオレン類、7,7−ビス(ヒドロキシナフチル)ベンゾ[c]フルオレン類;Z及びZがベンゼン環であり、n1及びn2が2以上であるベンゾフルオレン類、例えば、11,11−ビス(ポリヒドロキシフェニル)ベンゾ[a]フルオレン類,11,11−ビス(ポリヒドロキシフェニル)ベンゾ[b]フルオレン類、7,7−ビス(ポリヒドロキシフェニル)ベンゾ[c]フルオレン類などが含まれる。
【0053】
(b2)ジベンゾフルオレン類
代表的なジベンゾフルオレン類には、12,12−ビス(ヒドロキシアリール)ジベンゾ[b,h]フルオレン類が含まれる。
【0054】
具体的には、前記式(1)において、Z及びZがベンゼン環であり、n1及びn2が1であるジベンゾフルオレン類、例えば、12,12−ビス(ヒドロキシフェニル)ジベンゾ[b,h]フルオレン類;Z及びZがナフタレン環であり、n1及びn2が1であるジベンゾフルオレン類、例えば、12,12−ビス(ヒドロキシナフチル)ジベンゾ[b,h]フルオレン類;Z及びZがベンゼン環であり、n1及びn2が2以上であるジベンゾフルオレン類、例えば、12,12−ビス(ポリヒドロキシフェニル)ジベンゾ[b,h]フルオレン類などが含まれる。
【0055】
これらのホスト化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
(ゲスト化合物)
本発明において、ゲスト分子として用いられる化合物は、環の構成原子として複数の窒素原子(例えば、塩基性窒素原子)を含む5又は6員複素環又はその縮合複素環を有する複素環化合物を含んでいる。複素環化合物は、脂肪族性複素環(非芳香族性複素環)又は芳香族性複素環のいずれであってもよい。複素環化合物において、環を形成する窒素原子(例えば、塩基性窒素原子)の数は、例えば、2〜5、好ましくは2〜4程度であってもよい。
【0057】
このような複素環化合物には、例えば、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン(DABCO;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)などが例示できる。好ましい複素環化合物(ゲスト化合物)は、例えば、下記式(2)で表される化合物を含んでいてもよい。
【0058】
【化5】
【0059】
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノエチル基、又はトリアジン−アルキル基を示し;R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を示し、前記アルキル基は、ヒドロキシル基を有していてもよく、RとRとは互いに結合して隣接する窒素原子及び炭素原子とともに環を形成してもよく;qは0又は1〜3の整数を示し;実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示す)
【0060】
で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ノニル基、i−ノニル基、デシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基が例示できる。好ましいアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−6のアルキル基であってもよい。
【0061】
で表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基などが例示できる。好ましいシクロアルキル基は、C5−8シクロアルキル基、特にC5−6シクロアルキル基などであってもよい。
【0062】
で表されるアリール基は、単環式又は多環式アリール基であってもよく、多環式アリール基は、完全不飽和のみならず、部分飽和の基であってもよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基などのC6−16アリール基などが例示できる。好ましいアリール基はC6−10アリール基(フェニル基、ナフチル基など)であってもよい。
【0063】
で表されるアラルキル基(アリールアルキル基)は、上記アリール基とアルキル基とが結合した基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニル−n−プロピル基、1−フェニル−n−へキシル基、ナフタレン−1−イルメチル基、ナフタレン−2−イルエチル基、1−(ナフタレン−2−イル)−n−プロピル基、インデン−1−イルメチル基などのC6−12アリールC1−6アルキル基などが例示できる。好ましいアラルキル基は、C6−10アリールC1−4アルキル基(ベンジル基、フェネチル基など)であってもよい。
【0064】
前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−6アルコキシ基など)、アシル基(ホルミル基;アセチル基、プロピオニル基などのC1−10アルキル−カルボニル基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(C1−4アルコキシ−カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基などのC1−6アルキル基など)などが例示できる。
【0065】
で表されるトリアジン−アルキル基において、トリアジンは、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジンなどであってもよく、トリアジン環の炭素原子には、アミノ基、ヒドロキシル基などが置換していてもよい。代表的なトリアジン−アルキル基としては、例えば、4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン−2−メチル基、4−アミノ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2−メチル基、4,6−ジヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2−メチル基などの1,3,5−トリアジン−2−C1−4アルキル基などが例示できる。好ましいトリアジン−アルキル基は、4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン−2−C1−2アルキル基であってもよい。
【0066】
好ましいRは、水素原子、C1−4アルキル基、C6−10アリール基、C6−10アリールC1−4アルキル基、シアノエチル基、又は1,3,5−トリアジン−2−C1−2アルキル基などであってもよく、通常、水素原子、シアノエチル基などである場合が多い。
【0067】
〜Rで表されるハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。R〜Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、i−ノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルキル基(例えば、C1−18アルキル基)が例示できる。好ましいアルキル基は、C1−12アルキル基(例えば、C1−10アルキル基)であってもよい。アルキル基は、ヒドロキシル基を有していてもよい。ヒドロキシル基を有するアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC1−20アルキル基(例えば、ヒドロキシC1−18アルキル基)などが例示できる。好ましいヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシメチル基などのヒドロキシC1−6アルキル基(例えば、ヒドロキシC1−2アルキル基)などであってもよい。
【0068】
〜Rで表されるシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基としては、前記置換基Rと同様の基が例示できる。
【0069】
〜Rで表されるアシル基は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基などの有機基とカルボニル基とが結合した基であればよい。アシル基としては、例えば、ホルミル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、へプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3−メチルノナノイル基、8−メチルノナノイル基、3−エチルオクタノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1−メチルペンタデカノイル基、14−メチルペンタデカノイル基、13,13−ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15−メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1−メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基、ヘナイコサノイル基などのC1−26アルキル−カルボニル基;アクリロイル基、メタクリロイル基、アリルカルボニル基、シンナモイル基などのC2−6アルケニル−カルボニル基;エチニルカルボニル基、プロピニルカルボニル基などのC2−6アルキニル−カルボニル基;ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、ビフェニルカルボニル基、アントラニルカルボニル基などのC6−18アリール−カルボニル基;2−ピリジルカルボニル基、チエニルカルボニル基などのヘテロアリール−カルボニル基(例えば、非芳香族又は芳香族5員又は6員ヘテロアリール−カルボニル基)などが例示できる。好ましいアシル基は、C1−20アルキル−カルボニル基(例えば、C1−6アルキル−カルボニル基など)などであってもよい。
【0070】
とRとは互いに結合して隣接する窒素原子及び炭素原子とともに環(例えば、4〜12員環、好ましくは5〜10員環)を形成してもよい。
【0071】
qは0又は1〜3の整数を示し、通常、0〜2(例えば、0又は1)であってもよい。
【0072】
実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示し、通常、RとRとが互いに結合して環(複素環)を形成する場合、単結合であってもよく、RとRとが環(複素環)を形成しない場合、二重結合であってもよい。
【0073】
好ましいRは、水素原子、アルキル基、アリール基などであってもよく、アルキル基であってもよい。好ましいR及び/又はRは、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基などであってもよい。
【0074】
ゲスト化合物としての複素環化合物は、より具体的には、例えば、下記式(2a)で表される化合物及び/又は下記式(2b)で表される化合物を含んでいてもよい。
【0075】
【化6】
【0076】
(式中、rは0〜5の整数を示し;R〜R及び実線と破線との二重線は前記に同じ)
【0077】
rは、0〜5、例えば、1〜5(例えば、1〜4)程度の整数であってもよい。
【0078】
具体的に、式(2a)で表される化合物(イミダゾール化合物)としては、イミダゾール;1−メチルイミダゾールなどの1−アルキルイミダゾール;2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾールなどの2−アルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾールなどの2−アリールイミダゾール;4−メチルイミダゾールなどの4−アルキルイミダゾール;1,2−ジメチルイミダゾールなどの1,2−ジアルキルイミダゾール;1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどの1−アラルキル−2−アルキルイミダゾール;1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールなどの1−シアノエチル−2−アルキルイミダゾール;1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどの1−シアノエチル−2−アリールイミダゾール;1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールなどの1−アラルキル−2−アリールイミダゾール;2−エチル−4−メチルイミダゾールなどの2,4−ジアルキルイミダゾール;2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどの2−アリール−4−アルキルイミダゾール;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどの1−シアノエチル−2,4−ジアルキルイミダゾール;2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどの2−アリール−4−アルキル−5−ヒドロキシアルキルイミダゾール;2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどの2−アリール−4,5−ジヒドロキシアルキルイミダゾールなどが例示できる。なお、イミダゾール化合物はR〜Rのうち少なくとも1つの置換基を有している場合が多い。
【0079】
これらの化合物のうち、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール又は2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどが好ましい。
【0080】
式(2b)で表される化合物(環状アミジン化合物)としては、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、ジアザビシクロノネン(DBN:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)などが例示できる。
【0081】
これらの複素環化合物は、酸、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、イソシアヌル酸などの有機酸又は塩酸などの無機酸との塩であってもよい。
【0082】
包接化合物において、ホスト化合物1モルに対してゲスト化合物の割合は、0.5〜5モル、好ましくは0.7〜2.5モル(例えば、0.75〜2.3モル)、さらに好ましくは0.8〜2.2モル(例えば、1〜2モル)程度であってもよい。
【0083】
なお、本発明の包接化合物において、フェノール性ヒドロキシル基は塩(例えば、塩基との塩)を形成してもよい。本発明の包接化合物には、包接形態を有する限り、このような塩を形成した化合物も含まれる。
【0084】
(包接化合物の調製方法)
本発明の包接化合物は、前記式(1)で表される化合物(ホスト化合物)と、前記複素環化合物(ゲスト化合物)とを、混合又は反応させることにより調製できる。なお、ホスト化合物及びゲスト化合物のうち少なくとも一方の成分が混合温度(例えば、常温又は30〜100℃程度)で液体である場合、液体である一方の成分に他方の成分を添加して混合してもよい。例えば、ゲスト化合物が液体である場合、ゲスト化合物に、ホスト化合物を添加し、必要に応じて混合(又は撹拌)し、ろ取などにより回収することにより生じた包接化合物を得ることができる。加熱下で混合又は撹拌する場合、冷却した後、回収することにより包接化合物を得ることができる。
【0085】
ホスト化合物とゲスト化合物との混合又は反応は、必要により溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エーテル類、例えば、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)などのセロソルブ類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)などのカルビトール類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテルなど;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(エチルセロソルブアセテート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(エチルカルビトールアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテルエステル類;ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが例示できる。溶媒は、アミド類、スルホキシド類などの非プロトン性極性溶媒であってもよい。これらの溶媒は単独で又は2種以上の混合溶媒として使用できる。
【0086】
ホスト化合物とゲスト化合物との割合は、ホスト化合物1モルに対して、ゲスト化合物0.5〜5モル、好ましくは0.7〜3モル、さらに好ましくは0.8〜2.5モル程度であってもよい。
【0087】
溶媒とホスト化合物及びゲスト化合物とを含む混合物を、必要に応じて撹拌しながら混合し、生成した固体をろ取などにより回収することにより、包接化合物を得ることができる。前記混合液は加熱下で混合してもよく、加熱温度は、溶媒の沸点以下、例えば、30〜120℃(好ましくは50〜100℃)程度であってもよい。加熱後、必要に応じて冷却し、生成した固体を回収してもよい。
【0088】
反応終了後、溶媒は、固体の回収前に、必要に応じて、常圧蒸留、減圧蒸留などの慣用の方法で留去してよい。また、溶媒を含む反応混合物は、反応溶媒とは異なる溶媒と混合し、包接化合物を析出させてもよい。
【0089】
回収した包接化合物は、必要により洗浄又は乾燥してもよい。
【0090】
本発明の包接化合物において、ホスト化合物とゲスト化合物との組成比は、慣用の分析方法、例えば、H−NMRスペクトルの積分比により容易に決定できる。また、熱重量分析(TG−DTA)により、加熱に伴い、包接化合物から放出されたゲスト化合物の量に基づいて、ホスト化合物とゲスト化合物との組成比を決定することもできる。本発明において、包接化合物のホスト化合物とゲスト化合物との組成比は、H−NMRスペクトル及び/又はTG−DTAにより、分析した結果から、最も単純な整数比となるように決定することもできる。
【0091】
さらに、本発明の包接化合物の構造は、単結晶X線構造解析、粉末X線回折などの手法により決定することができる。
【0092】
(硬化性組成物)
本発明の包接化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能する複素環化合物を安定に包接するため、エポキシ樹脂と混合しても低温(常温若しくは貯蔵温度)では長時間に亘り安定である。一方、包接化合物は、加熱に伴って複素環化合物を放出するため、所定温度に加熱すると、エポキシ樹脂を迅速に硬化させることができる。また、本発明の包接化合物は、第一級アミノ基又は第二級アミノ基とともに第三級アミノ基を有しているためか、エポキシ樹脂の硬化剤として機能するとともに硬化促進剤として機能させることもできる。そのため、本発明の包接化合物は、(B)エポキシ樹脂(エポキシ化合物)を硬化させるための(A)硬化剤及び/又は硬化促進剤として有用である。さらに、(A)包接化合物(硬化剤及び/又は硬化促進剤)は、(B)エポキシ樹脂(エポキシ化合物)と組み合わせて硬化性組成物を調製するのに有用である。
【0093】
この硬化性組成物は前記包接化合物とエポキシ樹脂とを含んでいればよく、必要により、通常のエポキシ樹脂の硬化剤及び/又は硬化促進剤(慣用の硬化剤及び/又は硬化促進剤)を含んでよく、このような硬化剤は、エポキシ樹脂のオキシラン環(又はエポキシ基)と反応してエポキシ樹脂を硬化させる化合物であれば、特に制限はなく、硬化促進剤も上記硬化反応を促進する化合物であれば、特に制限されない。このような硬化剤又は硬化促進剤としては、例えば、アミン系化合物(脂肪族アミン類、脂環式及び複素環式アミン類、芳香族アミン類、変性アミン類など)、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、アミド系化合物、エステル系化合物、フェノール系化合物、アルコール系化合物、チオール系化合物、エーテル系化合物、チオエーテル系化合物、尿素系化合物、チオ尿素系化合物、ルイス酸系化合物、リン系化合物、酸無水物系化合物、オニウム塩系化合物(又はカチオン重合開始剤)、活性珪素化合物−アルミニウム錯体などが例示できる。
【0094】
具体的には、硬化剤、及び硬化促進剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0095】
脂肪族アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状アルキレンジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類;ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどのN,N−ジアルキルアミノアルキルアミン類又はN,N−ジアルキルアミノシクロアルキルアミン類;ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジエチレングリコールビスプロピルアミン、ポリプロピレングリコールジアミンなどの(ポリ)エーテルジアミン類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミンなどのN−アルキル置換アルキレンジアミン類;ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノールなどのアルカノールアミン類;モノ−t−アルキルアミンなどが挙げられる。
【0096】
脂環式及び複素環式アミン類としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N−(アミノエチル)ピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの単環式アミン類;ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどのビス(アミノシクロヘキシル)アルカン類;N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンなどのトリアジン類;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(トリエチレンジアミン)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)などの橋架け環式アミン類などが挙げられる。
【0097】
芳香族アミン類としては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、m−キシリレンジアミン、1,3,5−トリス(アミノメチル)ベンゼン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのトリス−2−エチルヘキシル酸塩、フタロシアニンテトラミン、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ピコリン、α−メチルベンジルメチルアミンなどが例示できる。
【0098】
変性アミン類としては、例えば、エポキシ化合物にアミンが付加したポリアミン(エポキシアダクト)、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン(ケチミン)、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素−ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素−モノエチルアミン錯体などが例示できる。
【0099】
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、5−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、5−エチルイミダゾール、1−n−プロピルイミダゾール、2−n−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、2−n−ブチルイミダゾール、1−イソブチルイミダゾール、2−イソブチルイミダゾール、2−ウンデシル−1H−イミダゾール、2−ヘプタデシル−1H−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール、4−メチル−2−フェニル−1H−イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール塩酸塩などが例示できる。
【0100】
イミダゾリン系化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0101】
アミド系化合物としては、例えば、ダイマー酸[重合脂肪酸又は多量体化脂肪酸](例えば、不飽和高級脂肪酸の二量体〜四量体)とポリアミン(例えば、アルキレンジアミン、ポリエチレンポリアミンなど)との縮合により得られるポリアミド(ポリアミノアミド)などが挙げられる。
【0102】
エステル系化合物としては、例えば、カルボン酸のアリール及びチオアリールエステルなどの活性カルボニル化合物などが挙げられる。
【0103】
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール樹脂硬化剤として、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などのアラルキル型フェノ−ル樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、これらの変性樹脂、例えば、エポキシ化又はブチル化したノボラック型フェノール樹脂などのフェノ−ル樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、パラキシレン変性フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂などが例示できる。また、アルコール系化合物、チオール系化合物、エーテル系化合物、及びチオエーテル系化合物としては、例えば、ポリオールポリメルカプタンポリスルフィドなどが挙げられる。
【0104】
尿素系化合物、チオ尿素系化合物、ルイス酸系化合物としては、例えば、ブチル化尿素、ブチル化メラミン、ブチル化チオ尿素、三フッ化ホウ素などが挙げられる。
【0105】
リン系化合物としては、有機ホスフィン化合物、例えば、エチルホスフィン、ブチルホスフィンなどのアルキルホスフィン、フェニルホスフィンなどのアリールホスフィンなどの第1ホスフィン類;ジメチルホスフィン、ジプロピルホスフィン、メチルエチルホスフィンなどのジアルキルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどの第2ホスフィン類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの第3ホスフィン類などが挙げられる。
【0106】
酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水クロレンド酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)などの芳香族ポリカルボン酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(例えば、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸など)、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水ハイミック酸、無水メチルハイミック酸、無水メチルナジック酸などの脂環族ポリカルボン酸無水物;無水マレイン酸、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物などの脂肪族ポリカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0107】
オニウム塩系化合物、及び活性珪素化合物−アルミニウム錯体としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アリールメチルスルホニウム塩(ベンジルメチルスルホニウム塩など)、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリフェニルシラノール−アルミニウム錯体、トリフェニルメトキシシラン−アルミニウム錯体、シリルペルオキシド−アルミニウム錯体、トリフェニルシラノール−トリス(サリシルアルデヒダート)アルミニウム錯体などが挙げられる。
【0108】
これらの硬化剤及び/又は硬化促進剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの硬化剤及び硬化促進剤のうち、フェノール系化合物、酸無水物系化合物などが汎用される。そのため、本発明の硬化性組成物は、フェノール系化合物(例えば、ノボラック型フェノール樹脂など)、酸無水物系化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含んでいてもよく、耐熱性[ガラス転移温度、高温環境下(例えば、260℃)における曲げ特性など]を向上できる観点から、酸無水物系化合物(例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びこれらの混合物など)を含むのが好ましい。
【0109】
前記包接化合物(第1の硬化剤)と、上記硬化剤及び/又は硬化促進剤(第2の硬化剤)との割合は、前記第2の硬化剤の種類や官能基当量(水酸基当量や酸無水物基当量など)などに応じて適宜選択でき、例えば、前者/後者(重量比)=100/0〜30/70、好ましくは100/0〜50/50、さらに好ましくは100/0〜70/30程度であってもよい。前記第2の硬化剤が酸無水物系化合物である場合、前記包接化合物(第1の硬化剤)と、前記第2の硬化剤との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=70/30〜1/99(例えば、50/50〜3/97)、好ましくは30/70〜5/95(例えば、20/80〜7/93)程度であってもよい。前記第2の硬化剤がフェノール系化合物である場合、前記包接化合物(第1の硬化剤)と、前記第2の硬化剤との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=70/30〜1/99(例えば、50/50〜5/95)、好ましくは30/70〜10/90(例えば、20/80〜12/88)程度であってもよい。
【0110】
また、上記第2の硬化剤を用いる場合、第2の硬化剤中のエポキシ基と反応可能な官能基(例えば、酸無水物基、水酸基など)の割合は、(B)エポキシ樹脂中のエポキシ基に対して、例えば、0.7〜1.3当量(例えば、0.8〜1.2当量)、好ましくは0.9〜1.1当量程度であってもよく、通常、1当量程度であってもよい。
【0111】
(B)エポキシ樹脂は、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、不飽和二重結合を酸化してエポキシ化したエポキシ化合物などであってもよい。
【0112】
(B)エポキシ樹脂のうちグリシジルエーテル型エポキシ化合物(又は樹脂)としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、s−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテルなどのアルカンモノオール類のグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのアルカンポリオール類のポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAなどのビスフェノール類のアルキレンオキド(エチレンオキシドなど)付加体のポリグリシジルエーテル;ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノールなどの単核多価フェノール類のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、ジ(ヒドロキシフェニルアルカン[メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール(ビスフェノールAD)、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ヒドロキシ(モノ又はポリ)アルコキシアリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル)フルオレンなど]など]、トリ又はテトラ(ヒドロキシフェニルアルカン[1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなど]、ジ(ヒドロキシフェニルケトン、ジ(ヒドロキシフェニルエーテル、ジ(ヒドロキシフェニルチオエーテル、ジ(ヒドロキシフェニルスルホン、ノボラック又はノボラック樹脂(フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラックなど)、テルペンフェノールなどの多核多価フェノール類のポリグリジルエーテル化合物;トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環化合物のポリグリジルエーテル化合物などが例示できる。
【0113】
グリシジルエステル型エポキシ化合物(又は樹脂)としては、例えば、バーサティック酸グリシジルエステルなどのモノカルボン酸類のモノグリシジルエステル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸などの脂肪族、脂環族又は芳香族多価カルボン酸類のグリシジルエステル類、およびグリシジル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体などが例示できる。
【0114】
グリシジルアミン型エポキシ化合物(又は樹脂)としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、N,N−ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノールなどのアミン類のグリシジルアミン化合物などが例示できる。
【0115】
不飽和二重結合がエポキシ化したエポキシ化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペートなどの環状オレフィン類のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物などのエポキシ化共役ジエン重合体などが例示できる。
【0116】
これらのエポキシ化合物(又は樹脂)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、エポキシ化合物(又は樹脂)は、単量体であってもよく、2量体〜10量体程度の多量体を含んでいてもよい。また、アルカンモノオール類又はアルカンポリオール類のモノ又はポリグリシジルエーテル、モノカルボン酸類のグリシジルエステル、環状オレフィン類のエポキシ化物などは反応性希釈剤として使用する場合が多い。
【0117】
好ましいエポキシ化合物(又は樹脂)としては、分子内に複数のエポキシ基(又はオキシラン環)を有するポリグリシジルエーテル化合物、例えば、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール(ビスフェノールAD)、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシ(モノ又はポリ)アルコキシアリール)フルオレンなどのビスフェノール化合物のポリグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0118】
さらに、エポキシ樹脂は、室温(15〜20℃)で流動性を有する液体、流動性に乏しい高粘度(又は高粘稠)の半固体又は固体であってもよく、通常、包接化合物と混合する温度(加工温度)において流動性を有しており、混合温度において液状又は粘稠な液状エポキシ樹脂であってもよく、室温(15〜20℃)で液状又は粘稠なエポキシ樹脂であってもよい。
【0119】
本発明の硬化性組成物において、包接化合物の使用量は、硬化方法に応じて、ゲスト化合物としての複素環化合物が、通常、硬化剤及び/又は硬化促進剤として使用される使用量であってもよい。例えば、エポキシ基との反応により、硬化樹脂中に必ず硬化剤分子が組み込まれる付加型硬化剤である場合には、包接化合物の使用量は、硬化樹脂の特性に応じて、通常、エポキシ基(又はオキシラン環)1モルに対して包接されているゲスト化合物又は複素環化合物(硬化剤及び/又は硬化促進剤)換算で、0.1〜1モル(例えば、0.2〜0.8モル、好ましくは0.25〜0.5モル程度)程度であってもよい。また、硬化剤分子が、硬化樹脂中に組み込まれることなく触媒的にエポキシ基の開環を誘発し、エポキシ化合物間の重合付加反応を生じさせる重合型硬化剤や光開始型硬化剤である場合や硬化促進剤として使用する場合などでは、包接化合物の使用量は、エポキシ基(又はオキシラン環)1モルに対してゲスト化合物又は複素環化合物換算で1モル以下(例えば、0.001〜0.5モル、好ましくは0.005〜0.1モル程度)であってもよい。
【0120】
包接化合物の使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、包接化合物中のゲスト化合物として、例えば、0.1〜25重量部、好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部(例えば、1.5〜5重量部)程度であってもよい。
【0121】
なお、ホスト化合物としてのフルオレン化合物はエポキシ樹脂との相溶性も高く、非溶解性添加剤に対する分散性も高い。そのため、硬化性樹脂組成物が前記フルオレン化合物を含んでいても、硬化物の特性に悪影響を及ぼすことも少ない。
【0122】
本発明の硬化性組成物は、(A)成分及び(B)成分を混合することにより製造できる。例えば、例えば、(A)包接化合物(硬化剤及び/又は硬化促進剤成分)及び(B)エポキシ樹脂(エポキシ化合物)[並びに、必要に応じて、前記第2の硬化剤や後述する種々の添加剤など]を、ホモジナイザー、ミキサー又は混合機、混練機(ニーダーやロール、押出機など)、らいかい機(擂潰機)を使用して、硬化反応(又はゲル化)が生じない又は抑制できる温度、時間で混合又は混練(例えば、溶融混練など)することにより、本発明の硬化性組成物を調製できる。また、混合又は混練は加熱下(例えば、50〜100℃程度)で行ってもよく、低温(例えば、室温〜50℃、好ましくは室温〜40℃程度)で混合又は混練し、加熱下での混合又は混練を省略してもよい。なお、前記と同様の有機溶媒の存在下で(A)成分及び(B)成分を混合又は混練してもよい。
【0123】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、有機溶剤、反応性希釈剤、充填剤、補強剤、着色剤(顔料など)、難燃剤、離型剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、増量剤、増粘剤などを添加してもよい。
【0124】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが例示できる。可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、アジピン酸などのアルカンジカルボン酸系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などが例示できる。
【0125】
有機溶剤としては、前記例示の溶媒が例示でき、反応性希釈剤としては、前記例示のエポキシ化合物、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジエポキシドなどのエポキシ化合物、フェノール、クレゾール、t−ブチルフェノールなどのフェノール類などが例示できる。
【0126】
充填剤としては、例えば、重炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、天然シリカ、合成シリカ、溶融シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、カオリン、クレー、マイカ、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、セピオライト、ゾノトライトなどが例示できる。着色剤は、カーボンブラックなどの黒色顔料、酸化チタンなどの白色顔料、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料などのいずれであってもよい。補強剤としては、例えば、有機繊維[セルロースファイバー(セルロースナノファイバーなど)などの天然繊維、ポリアルキレンアリレート繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維などの合成繊維など]、無機繊維[ガラス繊維、炭素繊維など]が例示できる。
【0127】
離型剤としては、例えば、脂肪酸系離型剤(高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸カルシウムなど)、ワックス類(例えば、カルナバワックス、ポリエチレン系ワックスなど)、シリコーンオイルなどが例示できる。
【0128】
難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモシクロデカン、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールA、トリス(ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、デカブロモジフェニルオキサイド、ビス(ペンタブロモ)フェニルエタン、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ポリブロモフェニルインダン、臭素化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネート、臭素化フェニレンエチレンオキシド、ポリペンタブロモベンジルアクリレートなどの臭素化物、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシリルジフェニルホスフェート、クレジルビス(ジ−2,6−キシレニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジ−2,6−キシレニル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモプロピル)ホスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネートなどのリン酸エステル類、陰イオン蓚酸処理水酸化アルミニウム、硝酸塩処理水酸化アルミニウム、高温熱水処理水酸化アルミニウム、錫酸表面処理水和金属化合物、ニッケル化合物表面処理水酸化マグネシウム、シリコーンポリマー表面処理水酸化マグネシウム、プロコバイト、多層表面処理水和金属化合物、カチオンポリマー処理水酸化マグネシウムなどが例示できる。
【0129】
さらに、本発明の硬化性組成物は、必要であれば、エポキシ樹脂の他に、エラストマー(又はエラストマー変性剤)、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、液状ポリブタジエン、ポリブタジエン(ブタジエンゴム,BR)、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、変性シリコーンゴム、架橋NBR、架橋BR、アクリル系ゴム(コアシェル型アクリルゴムを含む)、ウレタンゴム、ポリエステルエラストマー、官能基含有液状NBR、液状ポリエステル、液状ポリスルフィド、ウレタンプレポリマーなどを含んでいてもよい。
【0130】
必要であれば、エポキシ樹脂の他に、他の樹脂、例えば、オレフィン系樹脂(高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などを含有していてもよく、樹脂は、エンジニアリングプラスチック(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ビスフェノールA型ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなど)であってもよい。
【0131】
これらの添加剤、エラストマー及び樹脂の使用量は、特に限定されず、用途に応じて選択できる。
【0132】
本発明は、前記硬化性組成物が硬化した硬化物も包含する。このような硬化物は、硬化性組成物の用途に応じて、前記硬化性組成物を加熱して硬化させることにより調製できる。例えば、前記硬化性組成物を、基材へ塗布して硬化させてもよく、所定部に注入又は封止して硬化させてもよく、注型して硬化させてもよく、基材(繊維基材)に含浸してプリプレグを調製し、このプリプレグを、重ね合わせや巻回などの方法で積層して所定形状に成形加工して硬化させてもよい。硬化は、ゲスト化合物が包接化合物から放出可能な温度で行うことができ、例えば、100〜250℃(好ましくは120〜200℃、さらに好ましくは130〜180℃)程度であってもよい。
【0133】
このようにして得られる硬化物は、低分子化合物であるホスト化合物を含むにもかかわらず、各種物性(例えば、曲げ強さ、曲げ弾性率、動的粘弾性などの機械的性質、ガラス転移温度、高温時の曲げ特性などの熱的性質、比誘電率、誘電正接などの電気的性質、吸水率など)を大きく変化(又は低下)させることなく保持(又は維持)できる。そのため、本発明の硬化性組成物は、硬化物における物性低下を抑制しつつ、高い安定性で有効に貯蔵できる。
【実施例】
【0134】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において各種特性は次のようにして測定した。
【0135】
H−NMRは、包接化合物を、重クロロホルム、重メタノール、重ジメチルスルホキシドなどに溶解し、ブルカー・バイオスピン社製「AVANCE III HD」(H共鳴周波数:300MHz)を用いて測定した。
【0136】
TG−DTAは、セイコーインスツル(株)製「EXSTAR 6000 TG/DTA 6200」を用いて測定した。
【0137】
1.包接化合物の調製
[実施例1](BCF:2E4MZの包接化合物の合成)
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCF、大阪ガスケミカル(株)製、3.78g,10mol)の酢酸エチル(10mL)溶液に、70℃で、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業(株)製、2.30g,21mmol)で加えた。1時間の撹拌の後、加熱を停止して室温まで冷却し、生成した固体をろ取、乾燥し、生成物を得た(白色固体、収量3.66g)。得られた包接化合物は、H−NMRおよびTG−DTAにより包接比BCF:2E4MZ=1:1の包接化合物であることを確認した。
【0138】
図1に実施例1の包接化合物のH−NMRスペクトルを示し、図2に実施例1の包接化合物のTG−DTAチャートを示す。なお、H−NMRスペクトルにおいて、縦軸は「強度」、横軸は単位「ppm」を示し、TG−DTAチャートにおいて、横軸は「温度(℃)」、左縦軸は「DTA」、右縦軸は「TG」を示し、TG(熱重量分析)チャートを実線で示し、DTA(示差熱分析)チャートを破線で示す。また、TG−DTAチャートにおいて、「Cel」は「℃」を意味する。
【0139】
[実施例2](BXF:2E4MZの包接化合物の合成)
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン(BXF、大阪ガスケミカル(株)製、4.05g,10mmol)の酢酸エチル(15mL)懸濁液に、70℃で、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業(株)製、2.26g,21mmol)で加える以外、実施例1と同様にして生成物を得た(白色固体、収量4.18g)。得られた包接化合物は、H−NMRおよびTG−DTAにより包接比BXF:2E4MZ=1:1の包接化合物であることを確認した。
【0140】
図3に実施例2の包接化合物のH−NMRスペクトルを示し、図4に実施例2の包接化合物のTG−DTAチャートを示す。
【0141】
[実施例3](BNF:2E4MZの包接化合物の合成)
9,9−ビス(6−ヒドロキシナフタレン−2−イル)フルオレン(BNF、大阪ガスケミカル(株)製、907mg、2mmol)のメタノール(4mL)溶液に、60℃で、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業(株)製、444mg,4mmol)で加えた。1時間の撹拌の後、冷却し、反応混合液を水(50mL)に加え、生成した固体をろ過し、乾燥し、生成物を得た(白色固体、収量712mg)。得られた包接化合物は、H−NMRおよびTG−DTAにより包接比BNF:2E4MZ=1:1の包接化合物であることを確認した。
【0142】
図5に実施例3の包接化合物のH−NMRスペクトルを示し、図6に実施例3の包接化合物のTG−DTAチャートを示す。
【0143】
[実施例4](BCF:2MZ−Hの包接化合物の合成)
BCF(3.78g、10mmol)の酢酸エチル(15mL)の溶液に、70℃で、2−メチルイミダゾール(2MZ−H、四国化成工業(株)製、1.81g,22mol)を加えた。5分間の加熱の後、冷却し、生成した固体をろ過し、乾燥し、生成物を得た(白色固体、収量3.00g)。H−NMRおよびTG−DTAにより包接比BCF:2MZ−H=1:2の包接化合物であることを確認した。
【0144】
図7に実施例4の包接化合物のH−NMRスペクトルを示し、図8に実施例4の包接化合物のTG−DTAチャートを示す。
【0145】
[実施例5](BXF:2MZ−Hの包接化合物の合成)
BXF(4.07g,10mmol)の酢酸エチル(15mL)の溶液に、70℃で、2−メチルイミダゾール(2MZ−H、四国化成工業(株)製、1.81g,22mol)を加えた。100分間の加熱の後、冷却し、生成した固体をろ過し、乾燥し、生成物を得た(白色固体、収量3.91g)。H−NMRおよびTG−DTAにより包接比BXF:2MZ−H=1:1の包接化合物であることを確認した。
【0146】
図9に実施例5の包接化合物のH−NMRスペクトルを示し、図10に実施例5の包接化合物のTG−DTAチャートを示す。
【0147】
[実施例6](BCF:DBUの包接化合物の合成)
BCF(377mg、1mmol)の酢酸エチル(8mL)の溶液に、ジアザビシクロウンデセン(DBU、東京化成(株)製、344g,2.mmol)を加えた。DBUの漏出を防止しつつ容器中、100℃で加熱撹拌の後、冷却し、生成した固体をろ過し、乾燥し、生成物を得た(白色固体、収量660mg)。H−NMRおよびTG−DTAにより包接比BCF:DBU=1:2の包接化合物であることを確認した。
【0148】
図11に実施例6の包接化合物のH−NMRスペクトルを示し、図12に実施例6の包接化合物のTG−DTAチャートを示す。
【0149】
表1に各包接化合物の組成及びゲスト化合物の放出温度を示す。
【0150】
【表1】
【0151】
2.硬化性組成物の調製およびその特性
[実施例7:硬化性組成物]
液状エポキシ樹脂100重量部(jER828、三菱化学(株)製)に、実施例1で得られた包接化合物(BCF:2E4MZ)13.3重量部(2E4MZとして3重量部)を加え、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製、エースホモジナイザーAM−10)を用い、回転数15000rpmで10分撹拌し、硬化性組成物を調製した。
【0152】
[比較例1:硬化性組成物]
液状エポキシ樹脂100重量部(jER828、三菱化学(株)製)に3重量部の2E4MZを加え、実施例7と同様にして硬化性組成物を調製した。
【0153】
[ゲル化時間の測定]
JIS C 2161に準拠し、所定の温度に温められたステンレス板上に試料をおき、毎分60回の速度で円状にスパチュラでかきまぜ、試料がゲル状になり、試料がスパチュラに付着しなくなった点あるいは糸引きがなくなった点を終点とした。表2に示すように、実施例7の硬化性組成物は、比較例1と同等のゲル化時間を示した。
【0154】
【表2】
【0155】
[硬化性組成物のDSC測定]
液状エポキシ樹脂100重量部(jER 828、三菱化学(株)製)と、実施例2〜3で得られた所定量の包接化合物(イミダゾールとして3重量部)とを用いて実施例7と同様にして硬化性組成物(実施例8及び実施例9の硬化組成物)を調製した。また、対照として比較例1の硬化性組成物を用いた。
【0156】
そして、硬化性組成物の一部をアルミパンに取り、示差走査熱量計DSC(セイコーインスツル(株)製「EXSTAR 6000 DSC 6220」)を用いて熱分析した。結果を表3に示す。また、図13に実施例7の硬化性組成物のDSCチャート、図14に実施例8の硬化性組成物のDSCチャート、図15に実施例9の硬化性組成物のDSCチャート、図16に比較例1の硬化性組成物のDSCチャートを示す。なお、DSCチャートにおいて、「Cel」は「℃」を意味する。
【0157】
【表3】
【0158】
表3及び図13図16から明らかなように、実施例の包接化合物を用いた硬化性組成物は、シャープな発熱ピークを示したが、イミダゾールを用いた比較例1の硬化性組成物は、ブロードで複数の発熱ピークを示した。
【0159】
[硬化性組成物の貯蔵安定性]
前記硬化性組成物を収容する容器を氷水で冷却しながら混練後、25℃で20分間静置した後、組成物の一部をサンプリングし、E型粘度計(東機産業(株)製「TVE−22L」)を用いて、25℃で所定時間毎に粘度(mPa・s/25℃)を測定した。結果を表4に示す。
【0160】
【表4】
【0161】
表4から、実施例の硬化性組成物は、48時間後に粘度が初期値の約2倍になったのに対して、比較例1の硬化性組成物は、24時間後に粘度が初期値の7倍に達していた。
【0162】
3.硬化物の作製および物性測定
以下の手順に従い、硬化物試験片を作製した。
【0163】
[実施例10:硬化物試験片の作製]
液状エポキシ樹脂(jER 828、三菱化学(株)製)100重量部、実施例1で得られた包接化合物(BCF:2E4MZ)10重量部を、らいかい機(石川式撹拌擂潰機18号、(株)石川工場製)を用いて、包接化合物をエポキシ樹脂に分散させたのち、真空脱泡して注型用セル[セロハン張りのアルミニウム板(3mm厚)2枚の間に、スペーサーとして直径Φ3mm又は4mmのシリコーンゴムを介在させてクリップで固定したセル]に注ぎ込み、熱風循環オーブン中で下記表5に記載の条件にて硬化させた。なお、スペーサーの直径は、試験片のサイズに応じて適宜変更した。
【0164】
[比較例2:硬化物試験片の作製]
液状エポキシ樹脂(jER 828)100重量部及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)3重量部をスパチュラを用いてよく混合した。これを真空脱泡して注型用セルに注ぎ込み、熱風循環オーブン中で下記表5に記載の条件にて硬化させた。
【0165】
[実施例11:硬化物試験片の作製]
液状エポキシ樹脂(jER 828)100重量部、実施例1で得られた包接化合物(BCF:2E4MZ)10重量部を、らいかい機(石川式撹拌擂潰機18号、(株)石川工場製)を用いて混練後、酸無水物系化合物(MH−700、新日本理化(株)製、酸無水物当量164g/eq.)86.3重量部を加えて、スパチュラで混合し、真空脱泡後、注型用セルに注ぎ込み、熱風循環オーブン中で下記表5に記載の条件にて硬化させた。なお、酸無水物系化合物は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、酸無水物系化合物の酸無水物基1モルの割合で配合した。
【0166】
[比較例3:硬化物試験片の作製]
液状エポキシ樹脂(jER 828)100重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)3重量部及び酸無水物系化合物(MH−700)86.3重量部をスパチュラを用いてよく混合した。これを真空脱泡して注型用セルに注ぎ込み、熱風循環オーブン中で下記表5に記載の条件にて硬化させた。なお、酸無水物系化合物は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、酸無水物系化合物の酸無水物基1モルの割合で配合した。
【0167】
[実施例12:硬化物試験片の作製]
フェノール系化合物(PSM−4261、群栄化学工業(株)製、フェノール樹脂、水酸基当量103g/eq.)54.2重量部及び実施例1で得られた包接化合物(BCF:2E4MZ)10重量部を二本ロール(6インチミキシングロールDY6−15、(株)ダイハン製)にて100℃で混練し、さらに、液状エポキシ樹脂(jER 828)100重量部を添加して約5分間混練を行った。ロールから取り出した後、100℃に加熱して、注型用セルに注ぎ込み、熱風循環オーブン中で下記表5に記載の条件にて硬化させた。なお、フェノール系化合物は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、フェノール系化合物の水酸基1モルの割合で配合した。
【0168】
[比較例4:硬化物試験片の作製]
液状エポキシ樹脂(jER 828)100重量部及びフェノール系化合物(PSM−4261)54.2重量部を二本ロールにて90〜100℃で混練した。ロールから取り出した後、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)3重量部を添加し、100℃のオーブンで加熱してスパチュラで混合したのち、注型用セルに注ぎ込み、熱風循環オーブン中で下記表5に記載の条件にて硬化させた。なお、フェノール系化合物は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、フェノール系化合物の水酸基1モルの割合で配合した。
【0169】
表5に各硬化物の配合比および硬化条件を示す。
【0170】
【表5】
【0171】
実施例10〜12及び比較例2〜4で得られた硬化物の各種物性は、以下に記載の手法を用いて測定した。
【0172】
[曲げ試験]
試験片:約80mm×10mm×4.0mm
測定条件:試験速度 2mm/min;
支点間距離 64mm
試験温度 室温又は260℃
測定装置:万能材料試験機 5582型(インストロン社製)
なお、曲げ弾性率は初期直線部分の接線弾性率から算出した。
【0173】
[誘電率・誘電正接測定]
試験方法:空洞共振器接道法(ASTM D 2520に準拠)
試験片:80mm×1.5mm×1.5mm厚
測定条件:周波数 1GHz
試験環境 23±2℃、50±5%RH
測定数 n=2
測定装置:PNA−L ネットワークアナライザ N5230A(アジレント・テクノロジー(株)製)
空洞共振器 CP431((株)関東電子応用開発製)。
【0174】
[熱機械分析(TMA)測定]
測定条件:測定温度 室温〜300℃
昇温速度 5℃/min
雰囲気 窒素気流中(50mL/min)
測定モード 圧縮モード(荷重 20mN)
測定装置:TMA 8310((株)リガク製)。
【0175】
[動的粘弾性(DMA)測定]
測定項目:E’、E”、tanδ
試験片:短冊 50mm×10mm×3mm
測定条件:測定温度 室温〜300℃
昇温速度 4.0℃/min
周波数 1Hz
雰囲気 窒素気流中(300mL/min)
測定モード 曲げモード
測定装置:EXSTAR DMS6100 ((株)日立ハイテクサイエンス製)。
【0176】
[吸水率測定]
試験片:約50mm×50mm×3.0mm
試験方法:試験片を下記条件で乾燥後、水中に浸漬し、浸漬後の試験片重量と、事前乾燥後の試験片重量との差を、事前乾燥後の試験片重量で除することにより算出した
測定条件:事前乾燥 50℃×24h
水中への浸漬 23℃×24h
測定数 n=3。
【0177】
各種物性の測定結果を以下の表6に示す。
【0178】
【表6】
【0179】
表6の結果から、本発明の包接化合物を含む硬化性組成物の硬化物は、イミダゾール化合物単体を含む硬化性組成物の硬化物と比べて、ほぼ同等の物性値を示した。よって、本発明の包接化合物を用いることで、物性を大きく損なうことなく、高い貯蔵安定性を有する硬化性組成物を得ることができる。
【0180】
また、酸無水物系化合物を含む実施例11では、他の実施例とは異なり、対応する比較例3に比べて、260℃における曲げ強さ及び曲げ弾性率が高く、ガラス転移温度が10℃以上も上昇し、耐熱性が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明では、包接化合物を形成するため、エポキシ樹脂を含む硬化性組成物の貯蔵安定性が向上し、しかも加熱により迅速に硬化する特性を示す。そのため、本発明の硬化性組成物は、エポキシ樹脂が適用される種々の用途、例えば、絶縁材料、封止材料(半導体、発光ダイオードなどの電子部品の封止材料、例えば、半導体封止材など)、積層板(エポキシ樹脂積層板、ガラス布、紙、合成繊維布、銅箔などの基材との積層板、例えば、プリント配線板用積層板など)、複合材料(ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの補強繊維との繊維強化複合材料)、注型材料、コンクリート構造体の補修材料、接着剤、ワニス、塗料(粉体塗料を含む)、インクなどのコーティング剤などの種々の用途に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16