特許第6985275号(P6985275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985275
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】液晶混合物
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/42 20060101AFI20211213BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20211213BHJP
   C09K 19/60 20060101ALI20211213BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20211213BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20211213BHJP
   G02F 1/137 20060101ALI20211213BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20211213BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20211213BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20211213BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C09K19/42
   C09K19/30
   C09K19/60 A
   C09K19/34
   C09K19/32
   G02F1/137
   G02F1/13 500
   C09K19/20
   C09K19/14
   C09K19/12
   C09K19/60 C
   C09K19/60 Z
【請求項の数】13
【全頁数】78
(21)【出願番号】特願2018-535123(P2018-535123)
(86)(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公表番号】特表2019-508526(P2019-508526A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2016002091
(87)【国際公開番号】WO2017118464
(87)【国際公開日】20170713
【審査請求日】2019年12月9日
(31)【優先権主張番号】16150279.4
(32)【優先日】2016年1月6日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】16166708.4
(32)【優先日】2016年4月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ユンゲ
(72)【発明者】
【氏名】ウアズラ パトヴァール
(72)【発明者】
【氏名】ペーア キアシュ
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/090506(WO,A1)
【文献】 特表平11−501692(JP,A)
【文献】 特開2010−144041(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103773385(CN,A)
【文献】 特開平09−302349(JP,A)
【文献】 特許第4065967(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/42
C09K 19/30
C09K 19/60
C09K 19/34
C09K 19/32
G02F 1/137
G02F 1/13
C09K 19/20
C09K 19/14
C09K 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)または式(2)
【化1】
式(1)
【化2】
式(2)であり、
式(1)の化合物が、式(1−1)
【化3】
式(1−1)であり、
式(2)の化合物が、式(2−1)、(2−2)、(2−3)または(2−4)
【化4】
式(2−1)、
【化5】
式(2−2)、
【化6】
式(2−3)、
【化7】
式(2−4)
であり、
[式中、出現する変数は次のことが当てはまる:
21、A22、A23、A24は、
【化8】
から選択され
11、R12、R21、R22は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、H、F、Cl、CN、NCS、1〜10のC原子を有するアルキル基、1〜10のC原子を有するアルコキシ基、1〜10のC原子を有するチオアルコキシ基、2〜10のC原子を有するアルケニル基、および2〜10のC原子を有するアルケニルオキシ基から選択され、ここで、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルケニル基、およびアルケニルオキシ基中の1つ以上のH原子は、F、ClまたはCNに置き換えられてよく;
Tは、−CNであり; ]に相当する1つ以上の化合物、
および式(3)
【化9】
式(3)であり、
式(3)の化合物は、式(3−A)または(3−B)
【化10】
式(3−A)
【化11】
式(3−B)
であり、
[式中、出現する変数は次のことが当てはまる:
31は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、
【化12】
から選択され;
31およびR32は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、H、F、Cl、CN、NCS、1〜10のC原子を有するアルキル基、1〜10のC原子を有するアルコキシ基、1〜10のC原子を有するチオアルコキシ基、2〜10のC原子を有するアルケニル基、および2〜10のC原子を有するアルケニルオキシ基から選択され、ここでアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルケニル基、およびアルケニルオキシ基中の1つ以上のH原子は、F、ClまたはCNに置き換えられていてよく;
31は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、単結合、−(C=O)−O−、−O−(C=O)−、−CF2−O−、−O−CF2−、−O−CH2−、−CH2−O−、および−CH2−CH2−から選択され;
による1つ以上の化合物を含む混合物において、
前記混合物中の式(1)による化合物の割合と、式(2)による化合物の割合と、式(3)による化合物の割合との合計は、少なくとも58%であり、
前記混合物の屈折率の異方性Δnの値が0.065未満であり、
前記混合物は少なくとも105℃の澄明点を有し、
かつここで、次の条件a)およびb):
a) 前記混合物は、4つ以上の環を含む1つ以上の化合物Vを含むこと、
b) 前記混合物は、式(2)による化合物の少なくとも25%の割合を含むこと
の一方または両方が満たされている混合物であって、
化合物Vは、式(V−1)
【化13】
式(V−1)
[式中、
V1は、−(C=O)−O−および−CH2−O−から選択され、ここで、
AV1は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、
【化14】
から選択され、かつ、ここで
V1およびRV2は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、H、F、Cl、CN、NCS、1〜10のC原子を有するアルキル基、1〜10のC原子を有するアルコキシ基、1〜10のC原子を有するチオアルコキシ基、2〜10のC原子を有するアルケニル基、および2〜10のC原子を有するアルケニルオキシ基から選択され、ここでアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルケニル基およびアルケニルオキシ基中の1つ以上のH原子は、F、ClまたはCNに置き換えられていてよい]
である、前記混合物。
【請求項2】
式(2)の化合物が、式(2−1−1)
【化15】
式(2−1−1)
[式中、R21、R22およびTは、請求項1の場合と同様に定義される]に相当することを特徴とする、請求項1載の混合物。
【請求項3】
前記混合物は、式(2−1−1)による化合物を少なくとも25%の割合で有することを特徴とする、請求項記載の混合物。
【請求項4】
式(3)、または(3−A)、および(3−B)でA31は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、
【化16】
から選択されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の混合物。
【請求項5】
前記混合物は、式(1)の1つ以上の化合物も、式(2)の1つ以上の化合物も含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項6】
式(1)の化合物は、前記混合物中に少なくとも25%の割合で含まれていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項7】
式(2)の化合物は、前記混合物中に少なくとも25%の割合で含まれていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項8】
式(1)、式(2)および式(3)の化合物の割合から生じる合計は、95%より高いことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項9】
前記混合物は、1つ以上のベンゼン環を含む化合物について60%未満の割合を含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項10】
前記混合物は、1つ以上の色素を含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項11】
前記混合物は、アゾ化合物、アントラキノン、ベンゾチアジアゾール、ジケトピロロピロール、およびリレンから選択される1つ以上の色素を含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の混合物を含む層を含む、光学切り替え装置。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の混合物を含む層を含む、切り替え可能な窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、下記に示す式(1)または(2)による化合物から選択される1以上の化合物を含む混合物、およびこの混合物の平面素子を通る光の通過を調節する装置中での使用に関する。
【0002】
光の概念とは、本出願の範囲内で、ことにUV−A領域、VIS領域、およびNIR領域内の電磁放射線、つまり通常の定義によると320nm〜2000nmの波長の光であると解釈される。
【0003】
好ましくは、本発明による装置により通過が調節される光とは、太陽光であると解釈される。太陽光は、好ましくは太陽に直接由来する。しかしながら、この太陽光は、任意の材料による反射、屈折、または吸収および引き続く放射を介して、太陽に間接的に由来してもよい。
【0004】
本発明による装置は、相応して、好ましくは、太陽光の通過を平面素子により調節するために、ことに十分に閉鎖された空間要素内への太陽光の通過を平面素子により調節するために使用される。この種の装置は、切り替え可能な窓(switchable windows, smart windows)の上位概念としても公知である。この種の装置は、概観で、例えば、B. Jelle et al., Solar Energy Materials & Solar Cells 2012, p. 1 - 28に記載されている。切り替え可能な窓の概念には、この場合、切り替え可能な光透過性の屋根、例えば天窓または自動車ルーフも含まれる。
【0005】
この切り替え可能な窓の変形形態は、色素を含む液晶材料を使用する。この種の装置の例は、とりわけ国際公開第2009/141295号(WO 2009/141295)に記載されている。
【0006】
相変わらず、ことに上述の使用のために、新規材料の需要が生じる。この場合、望ましい技術的特性は、材料の広い液晶相、ことに100℃以上の高い澄明点、および屈折率異方性Δnについての小さな値、ことに0.065未満のΔnの値である。Δnについての低い値は、ことに液晶材料を含む層の厚みが高い用途の場合に望ましい。
【0007】
さらに望ましい技術的特徴は、液晶材料中での色素の良好な溶解度、液晶材料中での色素の良好な溶媒安定性、ことに液晶材料中での時間的に長く続く良好でかつ完全な溶解度、液晶材料、ことに色素を含む液晶材料の高い光安定性、二色性色素についての高い秩序度、ならびに屈折率およびΔnについての値の低い分散である。
【0008】
意外にも、下記に説明するような混合物は、上述の望ましい特性の少なくとも1つ、好ましくはいくつかを有することが見出された。
【0009】
したがって、本発明の主題は、式(1)または式(2)
【化1】
式(1)
【化2】
式(2)
[式中、出現する変数は次のことが当てはまる:
11、A12、A21、A22、A23、A24は、
【化3】
から選択され;
11、Z21、Z22、Z23は、単結合、−(C=O)−O−、−O−(C=O)−、−CF2−O−、−O−CF2−、−O−CH2−、−CH2−O−、および−CH2−CH2−から選択され、
11、R12、R21、R22は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、H、F、Cl、CN、NCS、1〜10のC原子を有するアルキル基、1〜10のC原子を有するアルコキシ基、1〜10のC原子を有するチオアルコキシ基、2〜10のC原子を有するアルケニル基、および2〜10のC原子を有するアルケニルオキシ基から選択され、ここで、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルケニル基、およびアルケニルオキシ基中の1つ以上のH原子は、F、ClまたはCNに置き換えられてよく;
Tは、−CN、F、−N3、−NCS、NO2、−C≡C−R3、1〜10のC原子を有するアルキル基、および1〜10のC原子を有するアルコキシ基から選択され、ここで、アルキル基およびアルコキシ基中で1つ以上のH原子は、F、ClまたはCNに置き換えられてよく;
3は、H、CN、1〜10のC原子を有するアルキル基、および−C≡C−R4から選択され、ここで、アルキル基中で1つ以上のH原子は、F、ClまたはCNに置き換えられてよく;
4は、H、CN、および1〜10のC原子を有すアルキル基から選択され、ここで、アルキル基中で1つ以上のH原子は、F、ClまたはCNに置き換えられていてよく;
iは、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、0または1であり、ここで、1つの式中での添え字iの合計は少なくとも1であり;
kは、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、0または1であり、ここで、1つの式中での添え字kの合計は少なくとも1であり;
pは、0または1に等しい]に相当する1つ以上の化合物、
および式(3)
【化4】
式(3)
[式中、出現する変数は次のことが当てはまる:
31は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、
【化5】
から選択され;
31およびR32は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、H、F、Cl、CN、NCS、1〜10のC原子を有するアルキル基、1〜10のC原子を有するアルコキシ基、1〜10のC原子を有するチオアルコキシ基、2〜10のC原子を有するアルケニル基、および2〜10のC原子を有するアルケニルオキシ基から選択され、ここでアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルケニル基、およびアルケニルオキシ基中の1つ以上のH原子は、F、ClまたはCNに置き換えられていてよく;
31は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、単結合、−(C=O)−O−、−O−(C=O)−、−CF2−O−、−O−CF2−、−O−CH2−、−CH2−O−、および−CH2−CH2−から選択され;
mは、0、1、2または3に等しい]による1つ以上の化合物を含む混合物において、
この混合物中の式(1)による化合物の割合と、式(2)による化合物の割合と、式(3)による化合物の割合との合計は、少なくとも58%であり、かつここで、次の条件a)およびb):
a) この混合物は、4つ以上の環を含む1つ以上の化合物Vを含むこと、
b) この混合物は、式(2)による化合物の少なくとも25%の割合を含むこと
の一方または両方が満たされている混合物である。
【0010】
混合物中の複数の化合物の割合の%で表す表示において、本出願の場合に、パーセントとは、質量パーセントであると解釈される。
【0011】

【化6】
、例えば
【化7】
は、本出願の場合に、文章の流れで読みやすさを改善するために、「Ax」、例えば「A11」と省略される。
【0012】
記号
【化8】
とは、本出願の場合に、1,4−シクロヘキシレンであると解釈される。
【0013】
本出願の場合に、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルケニル基、およびアルケニルオキシ基とは、好ましくは次の群であると解釈される:メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、ネオヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、s−ペントキシ、2−メチルブトキシ、n−ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n−ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、i−プロピルチオ、n−ブチルチオ、i−ブチルチオ、s−ブチルチオ、t−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、s−ペンチルチオ、n−ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n−ヘプチルチオ、シクロヘプチルチオ、n−オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2−トリフルオロエチルチオ。
【0014】
混合物は、好ましくは液晶材料である。これは、ここでは、混合物が少なくとも1つの温度範囲内で液晶特性、ことにネマティック液晶特性を有すると解釈される。
【0015】
本発明による混合物は、広いネマティック液晶相により特徴付けられる。好ましくは、この混合物は、−40℃から100℃まで、特に好ましくは105℃まで、全く特に好ましくは110℃までネマティック液晶相を有する。好ましくは、混合物は、少なくとも100℃の澄明点、特に好ましくは少なくとも105℃の澄明点、全く特に好ましくは少なくとも110℃の澄明点を有する。
【0016】
さらに、本発明による混合物は、屈折率の異方性Δnについて低い値を有する。好ましくは、この値は、0.065未満、特に好ましくは0.06未満、全く特に好ましくは0.055未満、最も強く好ましくは0.05未満である。
【0017】
好ましくは、混合物は、少なくとも100℃の澄明点および0.065未満のΔnについて値を有する。特に好ましくは、混合物は、少なくとも105℃の澄明点および0.06未満のΔnの値を有する。全く特に好ましくは、少なくとも110℃の澄明点および0.055未満のΔnの値を有する。
【0018】
さらに、混合物は、低温での高い貯蔵安定性を有する。貯蔵安定性とは、この場合、ことに分解しないことおよび晶出しないことの特性であると解釈される。本発明による混合物について、−30℃未満の温度、好ましくは−40℃未満の温度で数週間の、好ましくは数ヶ月の貯蔵安定性が好ましい。
【0019】
好ましくは、混合物は、式(1)の1つ以上の化合物も、式(2)の1つ以上の化合物も含む。混合物中で式(1)および(2)の化合物の割合は合わせて、好ましくは45%〜70%、特に好ましくは55%〜70%、全く特に好ましくは60%〜70%である。
【0020】
さらに、式(1)の化合物は、混合物中で少なくとも25%、特に好ましくは少なくとも30%の割合で存在することが好ましい。
【0021】
さらに、式(2)の化合物は、混合物中で少なくとも25%、特に好ましくは少なくとも30%の割合で存在することが好ましい。
【0022】
式(1)および(2)の化合物について、次の優先要件が当てはまる:
11、A12、A21、A22、A23、A24は、好ましくは
【化9】
から選択され;特に好ましくは
【化10】
に等しい。
11、Z21、Z22、Z23は、好ましくは、単結合、−O−CH2−、および−CH2−CH2−から選択され;特に好ましくは単結合である。
【0023】
さらに好ましくは、pは0に等しい。
【0024】
式(1)の化合物は、好ましくは、式(1−1)
【化11】
式(1−1)
に相当し、ここで、出現する基は、式(1)についてと同様に定義される。
【0025】
式(2)の化合物は、好ましくは、式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)、または式(2−4)
【化12】
式(2−1)
【化13】
式(2−2)
【化14】
式(2−3)
【化15】
式(2−4)
に相当し、ここで、出現する基は、式(2)についてと同様に定義される。
【0026】
好ましくは、式(2−1)および(2−2)および(2−4)中のA21、A22およびA23および場合によりA24は、
【化16】
に等しい。
【0027】
好ましくは、式(2−3)中のA21およびA22は、
【化17】
に等しい。
【0028】
好ましくは、式(2−3)中のA23は、
【化18】
に等しく、特に好ましくは、
【化19】
に等しい。
【0029】
式(2)の特に好ましい実施形態は、式(2−1−1)
【化20】
式(2−1−1)
に相当し、ここで、出現する基は、式(2)についてと同様に定義される。
【0030】
本発明による混合物についての、式(2)による化合物の少なくとも25%の割合を有するという条件は、好ましくは、この混合物が式(2−1−1)による化合物について少なくとも25%の割合を有することに当てはまる。
【0031】
好ましくは、Tは、CN、F、CF3およびOCF3から選択され、特に好ましくは、TはCNに等しい。
【0032】
さらに、R11、R12、R21およびR22は、好ましくは、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、1〜10のC原子を有するアルキル基およびアルコキシ基、ならびに2〜10のC原子を有するアルケニル基、特に好ましくは1〜10のC原子を有するアルキル基から選択される。
【0033】
式(1)および(2)の特に好ましい化合物は、次に記載されている:
【化21-1】
【化21-2】
【化21-3】
【化21-4】
【0034】
さらに、混合物は、4つ以上の環を含む1つ以上の化合物Vを含むことが好ましい。化合物Vは、好ましくは、式(V)
【化22】
式(V)
[式中、出現する変数は次のことが当てはまる:
V1およびRV2は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、H、F、Cl、CN、NCS、1〜10のC原子を有するアルキル基、1〜10のC原子を有するアルコキシ基、1〜10のC原子を有するチオアルコキシ基、2〜10のC原子を有するアルケニル基、および2〜10のC原子を有するアルケニルオキシ基から選択され、ここで、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルケニル基およびアルケニルオキシ基中の1つ以上のH原子は、F、ClまたはCNに置き換えられていてよく;
V1は、出現する場合に、同じであるかまたは異なり、
【化23-1】
【化23-2】
【化23-3】
から選択され;
Xは、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、F、Cl、CN、1〜10のC原子を有するアルキル基、1〜10のC原子を有するアルコキシ基、および1〜10のC原子を有するチオアルコキシ基から選択され、ここで、アルキル基、アルコキシ基およびチオアルコキシ基中の1つ以上の水素原子は、FまたはClに置き換えられていてよく、かつアルキル基、アルコキシ基およびチオアルコキシ基中の1つ以上のCH2基は、OまたはSに置き換えられてよく;
V1は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、単結合、−(C=O)−O−、−O−(C=O)−、−CF2−O−、−O−CF2−、−O−CH2−、−CH2−O−、および−CH2−CH2−から
nは、1、2または3に等しい]に相当する。
【0035】
化合物Vは、好ましくは混合物中に0〜15%の割合で存在し、特に好ましくは1〜10%の割合で存在し、全く特に好ましくは2〜8%の割合で存在する。
【0036】
好ましくは、式(V)の化合物中でnは1に等しい。
【0037】
さらに、ZV1は、好ましくは、単結合、−(C=O)−O−および−CH2−O−から選択される。
【0038】
さらに、AV1は、好ましくは、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、
【化24】
から選択される。
【0039】
さらに好ましくは、RV1およびRV2は、1〜10のC原子を有するアルキル基である。
【0040】
式(V)の好ましい実施形態は、式(V−1)
【化25】
式(V−1)
であり、ここで、ZV1は、−(C=O)−O−および−CH2−O−から選択され、かつここで、その他の出現する変数は、式(V)についと同様に定義される。
【0041】
式(V)の化合物の好ましい実施形態は、次に記載されている:
【化26-1】
【化26-2】
【0042】
式(3)の化合物は、混合物中で、好ましくは15〜55%の割合で存在し、特に好ましくは18〜50%の割合で存在し、全く特に好ましくは25〜40%の割合で存在する。
【0043】
好ましくは、式(1)、式(2)および式(3)の化合物の割合の合計について、60%より大きい、特に好ましくは70%より大きい、全く特に好ましくは80%より大きいことが当てはまる。最も強く好ましくは、式(1)、式(2)および式(3)の化合物の割合の合計は、95%より大きい。
【0044】
好ましくは、式(3)中で、A31は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、
【化27】
から選択される。
【0045】
さらに、Z31は、好ましくは、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、単結合および−(C=O)−O−から選択される。
【0046】
さらに、R31およびR32は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり、H、1〜10のC原子を有するアルキル基、1〜10のC原子を有するアルコキシ基、1〜10のC原子を有するチオアルコキシ基、2〜10のC原子を有するアルケニル基、および2〜10のC原子を有するアルケニルオキシ基から選択される。特に好ましくは、R31およびR32は、1〜10のC原子を有するアルキル基である。
【0047】
さらに好ましくは、mは、0または1または2に等しい。
【0048】
式(3)の化合物についての好ましい実施形態は、化合物(V)について上述に示されたものの他に、次のものである:
【化28-1】
【化28-2】
【0049】
式(3)の好ましい実施形態は、式(3−A)、(3−B)および(3−C)
【化29】
式(3−A)
【化30】
式(3−B)
【化31】
式(3−C)
に相当し、
ここで、出現する変数は、式(3)についてと同様に定義される。式(3−A)、(3−B)および(3−C)について、相応して、式(3)について挙げられた好ましい実施形態が当てはまる。
【0050】
混合物は、好ましくは、式(3−A)の化合物を、10〜40%の割合で、特に好ましくは12〜30%の割合で、全く特に好ましくは15〜25%の割合で含む。
【0051】
混合物は、好ましくは、式(3−B)の化合物を、0〜20%の割合で、特に好ましくは2〜15%の割合で、全く特に好ましくは3〜12%の割合で含む。
【0052】
混合物は、好ましくは、式(3−C)の化合物を、0〜15%の割合で、特に好ましくは1〜10%の割合で、全く特に好ましくは2〜8%の割合で含む。
【0053】
好ましくは、混合物中に、式(3−1)
【化32】
式(3−1)
の1つ以上の化合物が含まれ、
ここで、出現する変数は、式(3)についてと同様に定義され、かつここで、次のことが当てはまる:
31-1は、それぞれ出現する場合に、同じであるかまたは異なり
【化33】
から選択される。
【0054】
式(3−1)については、相応して式(3)についての上述の好ましい実施形態が当てはまる。
【0055】
31-1は、好ましくは
【化34】
である。
【0056】
好ましくは、混合物は、式(3−1)の化合物を、5〜50%の割合で、特に好ましくは10〜40%の割合で、全く特に好ましくは20〜30%の割合で含む。
【0057】
さらに好ましくは、混合物は、1つ以上のベンゼン環を含む化合物を60%未満、好ましくは50%未満、特に好ましくは40%未満含むことを特徴とする。
【0058】
さらに好ましくは、混合物は、2つ以上のベンゼン環を含む化合物を20%未満、好ましくは10%未満含むか、特に好ましくはほぼ含まないことを特徴とする。
【0059】
混合物は、好ましくは1つ以上の色素と組み合わせて使用される。相応して、上述の成分の他にさらに1つ以上の色素を含む混合物が好ましい。色素は、好ましくは有機化合物、特に好ましくは少なくとも1つの縮合されたアリール基またはヘテロアリール基を含む有機化合物である。
【0060】
好ましくは、混合物は、少なくとも2つ、特に好ましくは少なくとも3つ、全く特に好ましくは3または4つの異なる色素を含む。好ましくは、少なくとも2つの色素は、光スペクトルのそれぞれ異なる領域をカバーする。
【0061】
混合物中に2つ以上の色素が存在する場合、これらの固体の吸収スペクトルは、好ましくは、光の全体の可視スペクトルをほぼ吸収するように補い合う。それにより、肉眼にとって黒色の印象が生じる。好ましくは、これは、少なくとも1つの青色光、少なくとも1つの緑色〜黄色の光、および少なくとも1つの赤色光を吸収する3つ以上の異なる色素を使用することにより達成される。光の色は、この場合、B. Bahadur, Liquid Crystals - Applications and Uses, Vol. 3, 1992, World Scientific Publishing, Abschnitt 11.2.1に相応して定義されている。
【0062】
混合物中の色素の全体の割合は、好ましくは0.01〜20%、特に好ましくは0.1〜15%、全く特に好ましくは0.2〜12%である。1つ以上の色素のそれぞれの個別の割合は、好ましくは0.01〜15%、好ましくは0.05〜12%、全く特に好ましくは0.1〜10%である。
【0063】
混合物中に含まれる色素は、好ましくは混合物中に溶解している。色素は、好ましくはその配列において、液晶状態にある混合物の分子の配列により影響を受ける。
【0064】
好ましくは、この色素は、二色性色素、特に好ましくは、正の二色性色素である。正の二色性とは、色素が、正の異方性度Rを有することであると解釈される。特に好ましくは、異方性度Rは、0.4をより大きく、全く特に好ましくは0.5より大きく、最も強く好ましくは0.6より大きい。異方性度Rは、この場合、国際公開第2015/154848号(WO2015/154848)の出願テキストの実施例に記載されたように決定される。
【0065】
これとは別の実施形態の場合に、色素は負の二色性色素であることも好ましいことがある。負の二色性とは、色素が、負の異方性度Rを有することであると解釈される。
【0066】
好ましくは、混合物中に存在する色素は、全て正の二色性であるか、または全て負の二色性である。
【0067】
さらに好ましくは、本出願による色素は、主にUV−VIS−NIR領域内の光、つまり320〜1500nmの波長領域内の光を吸収する。特に好ましくは、色素は、主にVIS領域内の光、つまり380〜780nmの波長領域内の光を吸収する。特に好ましくは、色素は、上述に定義されたUV−VIS−NIR領域内で、好ましくはVIS領域内で、つまり380nm〜780nmの波長内で1つ以上の吸収極大を有する。可視領域内での適用にとって、同様に、色素が、NIR領域内、ことに780nm〜1500nmの間で1つ以上の吸収極大を有する場合が特に好ましいことがある。
【0068】
さらに好ましくは、色素は、B. Bahadur, Liquid Crystals - Applications and Uses, Vol. 3, 1992, World Scientific Publishing, 11.2.1章に記載された色素クラスから選択され、特に好ましくはこの表中に記載された明確な化合物から選択される。
【0069】
好ましくは、色素は、アゾ化合物、アントラキノン、メチン化合物、アゾメチン化合物、メロシアニン化合物、ナフトキノン、テトラジン;リレン、ことにペリレンおよびテリレン;ベンゾチアジアゾール;ピロメテンおよびジケトピロロピロールから選択される。特に、この中でも、ことに国際公開第2014/187529号(WO 2014/187529)に開示されたようなアゾ化合物、アントラキノン、ベンゾチアジアゾール、ことに国際公開第2015/090497号(WO 2015/090497)に開示されたようなジケトピロロピロール、およびことに国際公開第2014/090373号(WO 2014/090373)に開示されたようなリレンが好ましい。
【0070】
次の化合物は、挙げられた色素の例である:
【化35-1】
【化35-2】
【化35-3】
【化35-4】
【化35-5】
【化35-6】
【化35-7】
【化35-8】
【化35-9】
【化35-10】
【化35-11】
【化35-12】
【化35-13】
【化35-14】
【化35-15】
【化35-16】
【化35-17】
【化35-18】
【化35-19】
【化35-20】
【化35-21】
【化35-22】
【化35-23】
【化35-24】
【化35-25】
【0071】
混合物は、好ましくは1つ以上のキラルドーパントを含む。好ましくは、この場合、液晶状態にある混合物の分子は、混合物を含む装置の層内で、特に好ましくは、表示装置のTNモードまたはSTNモード(twisted nematic modeまたはsupertwisted nematic mode)から公知のように互いにねじれて存在する。
【0072】
キラルドーパントは、混合物中で、好ましくは0.01質量%〜3質量%、特に好ましくは0.05質量%〜1質量%の全体濃度で使用される。ねじれについて高い値を得るために、キラルドーパントの全体濃度を、3質量%より高く、好ましくは最大10質量%まで選択してもよい。
【0073】
好ましいドーパントは、次の表中に記載された化合物である:
【化36-1】
【化36-2】
【化36-3】
【0074】
この混合物は、さらに好ましくは1つ以上の安定剤を含む。安定剤の全体濃度は、全体混合物の好ましくは0.00001質量%〜10質量%、特に好ましくは0.0001質量%〜1質量%である。
【0075】
好ましい安定剤は、次の表中に示されている:
【化37-1】
【化37-2】
【化37-3】
【化37-4】
【化37-5】
【化37-6】
【0076】
好ましくは、混合物の誘電異方性Δεは、−1〜−7、特に好ましくは−2〜−6である。
【0077】
先に定義されたような混合物は、基本的に任意の光学切り替え装置中で使用することができる。この光学切り替え装置は、表示装置または切り替え可能な窓中で使用することができる。切り替え可能な窓、ことに1つ以上の二色性色素を有する液晶材料を含む切り替え可能な窓中での使用が好ましい。
【0078】
平面素子を通して光の通過を均一に調節するための、ことに太陽光の通過を調節するための装置中での本発明による混合物の使用が好ましい。上述の装置は、好ましくは切り替え可能な窓での使用である。均一に調節とは、この場合、平面素子内の全ての箇所での透過が十分に同じ高さであることと解釈される。
【0079】
したがって、本発明の主題は、平面素子を通して光の通過を均一に調節するための、本発明による混合物を含む装置である。平面素子は、この場合、好ましくは少なくとも0.05m2、特に好ましくは少なくとも0.1m2、特に好ましくは少なくとも0.5m2、全く特に好ましくは少なくとも0.8m2の面積を有する。
【0080】
混合物は、平面素子を通した光の通過を調節するための装置中に、好ましくは層中に存在する。この層は、好ましくは切り替え可能であり、つまり切り替え層である。この層は、好ましくは12〜40μm、特に好ましくは14〜30μm、全く特に好ましくは15〜25μmの厚みを有する。
【0081】
本発明による装置は、好ましくは、太陽光の形で環境から室内への光の通過を調節するために適している。室は、この場合、任意の十分に環境から隔絶された室、例えば建物、車両、またはコンテナであることができる。この装置は、一般に、任意の室のために、特に、環境に対して限定的なだけの空気交換を有し、かつ光透過性の境界面を有し、この境界面を通して外部から光エネルギーの形でエネルギーの導入が行われることがある場合に、使用することができる。特に、光透過性の平面を通して、例えば窓面を通して強い太陽放射線に曝されている室のために、この装置の使用が好ましい。この例は、外側に向かって大きな窓面を有する室、および車両、ことに自動車の室内である。
【0082】
本発明による装置は、好ましくは、大きな平面状構造の開口部内に配置され、ここで、平面状構造自体は、光の通過を許容しないかまたはわずかにしか許容せず、この開口部は相対的に見て光透過性である。好ましくは、平面状構造は、壁であるか、またはその他の、外部に対する室の境界部である。
【0083】
本発明による装置は切り替え可能である。切り替えとは、この場合、装置を通した光の通過の変化であると解釈される。
【0084】
本発明による装置は、好ましくは電気的に切り替え可能である。この場合、この装置は、好ましくは2つ以上の電極を含み、これらの電極は、本発明による混合物を含む層の両面に取り付けられている。これらの電極は、好ましくはITO、または薄い、好ましくは透明な金属層および/もしくは金属酸化物層、例えば銀もしくはFTO(フッ素ドープ酸化スズ)、またはこの他の、この使用のために当業者により公知の材料からなる。ITO電極には、不動態化層、例えばSiO2が設けられていてよい。これらの電極に、好ましくは、電気的接続部が取り付けられている。電圧は、好ましくは電池、蓄電池、または外部電源により準備されている。
【0085】
切り替え動作は、電気的切り替えの場合に、電圧の印加による液晶状態にある混合物の分子の配列により行われる。
【0086】
好ましい実施形態の場合に、この場合、装置は、電圧の印加により、電圧なしで存在する高い吸収を示す、つまり低い光透過性を示す状態から、低い吸収を示す、つまりより高い光透過性を示す状態に移行する。好ましくは、混合物は、装置中の層内で、両方の状態でネマティック液晶性である。無電圧の状態は、好ましくは、混合物の分子が液晶状態で存在し、それにより色素の分子は切り替え層の平面に対して平行方向に配列して存在することを特徴とする。これは、好ましくは、相応して選択された配向層により達成される。特に好ましくは、この分子は、切り替え層の平面に対して平行方向でねじれネマティック状態で存在する。ねじれ角は、好ましくは完全な回転よりも少なく、特に好ましくは30〜270°、全く特に好ましくは100°〜260°、さらに強く好ましくは160〜255°、最も強く好ましくは230〜250°である。電圧印加下での状態は、好ましくは混合物の分子が液晶状態で存在し、それにより色素の分子は切り替え層の平面に対して垂直方向で存在することを特徴とする。
【0087】
本発明の好ましい実施形態の場合に、必要なエネルギーを、装置と接続されている太陽電池、または光および/もしくは熱エネルギーを電気エネルギーに変換するその他の装置により供給することにより、この装置を外部電源なしで動作させることができる。太陽電池によるエネルギーの供給は、直接的、または間接的に、つまり、介在された電池、または蓄電池、またはエネルギーを貯蔵するその他のユニットを介して行うことができる。好ましくは、太陽電池は、装置の外側に取り付けられているか、または太陽電池は、例えば国際公開第2009/141295号(WO 2009/141295)に開示されたように装置の内部構成要素である。
【0088】
本発明による装置は、好ましくは次の層順序を有し、この場合、付加的に他の層が存在してよい。好ましくは、次に示された層は、装置内で互いに直接隣接している。
− 好ましくはガラスまたはポリマーからなる基板層
− 好ましくはITOからなる導電性の透明層
− 配向層
− 本発明による混合物を含む切り替え層
− 配向層
− 好ましくはITOからなる導電性の透明層
− 好ましくはガラスまたはポリマーからなる基板層
【0089】
個々の層の好ましい実施形態を次に示す。
【0090】
好ましくは、本発明による装置は、1つ以上の、特に好ましくは2つの配向層を含む。配向層は、好ましくは、本発明による混合物を含む層の両面に直接接するように存在する。
【0091】
本発明による装置の配向層として、これについて当業者に公知の任意の層を使用することができる。ポリイミド層が好ましく、特にラビングされたポリイミドからなる層が好ましい。当業者に公知の種類の特定のラビングされたポリイミド上で、分子が配向層に対して平行方向に存在する場合(平面状の配列)、液晶状態にある混合物の分子のラビング方向への配列が引き起こされる。この場合、液晶状態にある混合物の分子は、配向層上で完全には平面状に存在しておらず、わずかな傾斜角を有する(プレチルト)ことが好ましい。配向層の表面に対する分子の垂直方向の配列の達成のために(ホメオトロピック配列)、好ましくは配向層用の材料として特定の手法で処理されたポリイミドが使用される(極めて高いプレチルト角のためのポリイミド)。さらに、偏光を用いた露光手順により得られたポリマーを、配向軸にしたがった分子の配列の達成のための配向層として使用することができる(フォトアライメント)。
【0092】
好ましくは、本発明による装置中では、本発明による混合物を含む切り替え層を取り囲む両方の配向層のラビング方向が30°〜270°の角度をなすことが好ましい。
【0093】
さらに、本発明による装置中では、本発明による混合物を含む層が2枚の基板層の間に配置されているか、またはこれらの基板層に包囲されていることが好ましい。基板層は、例えばガラスまたはポリマー、好ましくは光透過性ポリマーからなることができる。
【0094】
好ましくは、この装置は、ポリマーを基礎とする偏光子を含まず、特に好ましくは固体材料相の形で存在する偏光子を含まず、全く特に好ましくは偏光子を全く含まないことを特徴とする。
【0095】
しかしながら、これとは異なる実施形態の場合に、装置は1つ以上の偏光子を有していてもよい。好ましくは、偏光子はこの場合、直線偏光子である。
【0096】
さらに好ましくは、本発明による装置は、好ましくは国際公開第2009/141295号(WO 2009/141295)に記載されたように、光を太陽電池にまたはその他の、光および/または熱エネルギーを電気エネルギーに変換する装置に案内する導光系を含む。
【0097】
好ましい実施形態の場合に、本発明による装置は、その光透過性を切り替え可能な窓の構成要素、特に好ましくは少なくとも1つのガラス面を含む窓の構成要素、全く特に好ましくは断熱性合わせガラスを含む窓の構成要素である。
【0098】
窓とは、この場合、ことに建物内の、フレームとこのフレームにより取り囲まれた少なくとも1枚の板ガラスを含む構造であると解釈される。好ましくは、この窓は、断熱性フレームと、2枚以上の板ガラスとを含む(断熱性合わせガラス)。
【0099】
好ましい実施形態の場合に、本発明による装置は、窓のガラス面上に直接取り付けられ、特に好ましくは断熱性合わせガラスの2枚の板ガラスの間の内部空間内に取り付けられている。
【0100】
実施例
次に、液晶化合物の構造を、省略記号により表す(頭字語)。この省略記号は、国際公開第2012/052100号(WO 2012/052100)に明確に紹介されかつ説明されている(63頁〜89頁)ので、本出願においてこの省略記号の説明のために上述の公開された出願を指摘する。
さらに、次の頭字語を使用する:
【化38】
【0101】
全ての物理特性は、「Merck Liquid Crystals, Physical Properties of Liquid Crystals」、Status Nov. 1997, Merck KGaA、独国に従って決定され、かつ20℃の温度が通用する。
【0102】
A) 使用した液晶混合物
次の本発明による混合物を製造する:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【0103】
B) 使用された色素
【化39】
【0104】
C) 混合物の貯蔵安定性の測定
製造された混合物は、低温で高い貯蔵安定性を有する。貯蔵安定性は、該当する温度で試料を貯蔵し、かつ可視の晶出または分解が生じない期間を決定することにより決定される。貯蔵安定性について次のデータが測定される:
【表17】
【0105】
D) 使用例
本発明による混合物を含む切り替え装置を製造する。この切り替え装置は、次の層順序を有する:
a) Corningの研磨された1.1mmのソーダ石灰ガラスからなるガラス層
b) ITO層、200オングストローム
c) JSRのポリイミドJALS-2096-R1からなるラビングされた配向層O1
d) 液晶媒体を有する切り替え可能層(組成および厚みは下記の相応する実施例に記載)
e) c)と同様に構成された配向層O2;層c)のラビング方向に対して記載された角度でラビングされている
f) b)と同様
g) a)と同様
【0106】
ITO層は、電気的に切り替え可能であるために相応して接続されている。
【0107】
実施例1:
混合物M−12 98.7%に、D1 0.33%、D2 0.50%およびD3 0.60%を添加する。この混合物99.476%に、キラルドーパントS−811 0.524%を添加する。ピッチは23.1μmである。
【0108】
この混合物を、15.4μmの層の厚みを有する上述の装置内に充填する。このセルのチルト角は基板平面に対して相対して88.5°である。ねじれ(O1のラビング方向とO2のラビング方向との間の角度)は240°である。
【0109】
この装置について、20℃の動作温度での光透過率について次の値が得られる:
【表18】
【0110】
光透過率τvは、欧州規格EN410、方程式(1)(ガラスの測光的および放射物理学的特性パラメータの決定)に従って、標準光の相対分光分布および標準観測者の比視感度の考慮下で測定されたスペクトル透過率から算出される。
【0111】
この実施例は、49.8%の光透過率の高い引き上げ(Δτv)を示す。ガラスの波形によるわずかに見えるだけの縞およびわずかなパーティクル欠陥を認識することができる。
【0112】
実施例2:
混合物M−2 97.35%に、D1 0.6%、D2 0.85%およびD3 1.2%を添加する。この混合物99.478%に、キラルドーパントS−811 0.522%を添加する。ピッチは22.4μmである。
【0113】
この混合物を、15μmの層の厚みを有する上述の装置内に充填する。このセルのチルト角は基板平面に相対して88°である。ねじれ(O1のラビング方向とO2のラビング方向との間の角度)は240°である。
【0114】
この装置について、20℃〜100℃の動作温度での光透過率について次の値が得られる:
【表19】
【0115】
この実施例は、本発明による混合物によって、広い温度範囲内で、ことに100℃の温度で、装置の機能は維持され、ことに明状態および暗状態での光透過性について十分に一定の値が維持されることを示す。