【実施例】
【0028】
実験結果
1.単一界面活性剤と2界面活性剤のドセタキセル製剤の溶解度および物理的安定性
【0029】
界面活性剤組成物中のドセタキセルの最大溶解度を以下の表1.1に要約する。
【0030】
【表1.1】
【0031】
単一界面活性剤および二界面活性剤配合物中のドセタキセルの溶解性、物理的安定性および放出を、37±0.5℃で平衡化された400mLの溶解媒体を用いたUSP2011の溶解装置II(Copley、UK)を使用して調べた。変化するpH条件および胃腸管に沿った通過時間をシミュレートするために、以下の例示的溶解試験方法を使用した:
a.サイズ0のゼラチンカプセルに650mgの液体製剤を充填する。
b.溶解パドルの撹拌速度を毎分100回転(rpm)に設定する。
c.pH1.2の溶解媒体(0.1N HCl)400mLを含む溶解容器中に前記カプセルを(シンカー装置内)2時間入れ、1時間、pH4.0に調整し(0.25M KH
2PO
4および20%KOHを100mL加え、得られたKH
2PO
4の濃度は50mM)で1時間)、その後、pH6.8(KOHの添加による)で1時間、次にpH7.5(KOHの添加による)に2時間で調整した。
d.以下の時点でサンプルを採取する:pH1.2では0,10,20,30,60,90および120分、pH4では10,20,30および60分、pH6.8では10,20,30および60分:pH7.5の場合、0,10,20,30,60,90および120分。各サンプリングによる損失を補うために、同量の新しい溶解媒体を交換する。
e.収集した試料を遠心分離し、上清をHPLC分析に使用した。
【0032】
溶解試験における液体製剤中のドセタキセルの分析のためのHPLC条件
液体製剤の希釈(メタノール=1:30)
分析条件:
機器:Agilent1260 Infinity
クロマトグラフパラメータ:
カラム:Zorbax Eclipse Plus C18,4.6×150mm、5μm
移動相:水中の0.2%ギ酸(A);アセトニトリル(B)(表1.2を参照)
流速:0.8mL/分
カラム温度:摂氏25度
注入量:20μL
検出波長:230nm
【0033】
【表1.2】
【0034】
図1.1A、BおよびCは、単一界面活性剤製剤:それぞれ100%Tween(登録商標)80,100%Cremophor(登録商標)EL,および100%Tween(登録商標)20製剤、からのドセタキセルの放出プロフィールを示す。
図1.1AおよびBは、ドセタキセルの放出がpH1.2およびpH4で遅く、210分を超えると最大放出に達することを示している。
図1.1Cは、ドセタキセルの放出が最初に速いことを示しているが、放出%は急速に50%に低下し、ドセタキセルが溶解媒体中に沈殿していたことを示している。
【0035】
図1.2A〜Fは、Tween(登録商標)80, Tween(登録商標)20, Cremophor(登録商標)EL, Cremophor(登録商標)RH40, Solutol(登録商標)HS15およびLabrasol(登録商標)を含む、混合界面活性剤配合物からのドセタキセルの溶解放出プロフィールを示す。全ての組み合わせ配合物で、最大濃度が30分以内に達成され、60〜80%の間、より高い定常状態放出が維持された。
【0036】
2. HM30181の同時投与の有り、無しの、単一界面活性剤製剤からのドセタキセルのバイオアベイラビリティ
【0037】
Sprague Dawley(登録商標)ラットに、単独投与でのドセタキセル(20mg/kg)と、HM30181(10mg/kg、ドセタキセルの30分前)と種々の単一界面活性剤製剤と同時投与でのドセタキセル(20mg/kg)、とのいずれかを経口胃管栄養法により投与した。各製剤を、少なくとも3匹のラット(体重180〜350g)の群で試験した。投与前、0.25,0.5,1.0,2,4,8,12および24時間に、頸静脈カニューレを介して血液サンプルを収集した。3匹のラットの別の群は、相対ドセタキセルバイオアベイラビリティの計算のために、市販のドセタキセル注射(Taxotere(登録商標),Sanofi)を用いてドセタキセル(5mg/kg)の静脈内投与を受けた。最大血漿中濃度(Cmax)、薬物血中濃度曲線下面積(AUC)およびドセタキセルのバイオアベイラビリティ(F)の増加によって示されるように、ドセタキセルをHM30181と同時投与したとき(すなわち、HM30181の投与後30分)に薬物動態データが改善した。最大血漿濃度(Tmax)、平均滞留時間(MRT)および半減期(t
1/2)に達するまでに要した時間も、以下の表に報告する。
【0038】
Tween(登録商標)80単独中のドセタキセル、HM30181との同時投与のドセタキセル、の投与後のドセタキセルの血漿中濃度を
図2.1に示す。表2.1に図示されているように、Tmax、Cmax、AUC、MRT、t
1/2、およびドセタキセルのバイオアベイラビリティは、最大で一桁増加した。
【0039】
【表2.1】
【0040】
図2.2は、Tween(登録商標)20単独とHM30181との同時投与でのドセタキセルの投与後の血漿中濃度を示している。表2.2に示すように、Cmax、AUC、およびドセタキセルのバイオアベイラビリティは増加した。
【0041】
【表2.2】
【0042】
図2.3は、Cremophor(登録商標)EL単独とHM30181との同時投与でのドセタキセルの投与後の血漿中濃度を示している。表2.3に示すように、Cmaxは3倍に増加した。AUCおよびドセタキセルのバイオアベイラビリティは約8倍増加した。これらの結果が、ポリソルベート80ドセタキセル製剤について得られたデータに匹敵するということは、Cremophor(登録商標)ELとエタノールで製剤化されたパクリタキセルが、ポリソルベート80およびエタノール中で処方されたパクリタキセルよりも低い経口バイオアベイラビリティを示したことを報告した最近の記事に鑑みて驚くべきことである。MM Malingreら、The co-solvent CremophorEL limits absorption of orally administered paclitacelin cancer patients, 85(10)、BRITISH JOURNAL OF CANCER 1472、1472-77(2001);HA Bardelmeijerら、Entrapment by Cremophor EL decreases the absorption of paclitaxel from the gut, 49 CANCER CHEMOTHER PHARMACOL 119,119-25(2002)。著者らは、Cremophor(登録商標)ELは小腸によっては余り吸収されないミセル中にパクリタキセルとシクロスポリンAの両方を封入することによって、パクリタキセルのCmax、AUCおよび吸収を低下させる、という仮説をたてている。
【0043】
【表2.3】
【0044】
図2.4は、Labrasol(登録商標)単独とHM30181との同時投与でのドセタキセルの投与後の血漿中濃度を示している。ビヒクルとしてLabrasol(登録商標)を使用した時に得られた結果と比較して、HM30181の効果は穏やかであった。表2.4に示すように、Cmax、AUC、およびドセタキセルのバイオアベイラビリティは増加した。
【0045】
【表2.4】
【0046】
3. HM30181の同時投与の有り、無しの、二界面活性剤製剤からのドセタキセルのバイオアベイラビリティ
【0047】
Sprague Dawley(登録商標)ラットに、ドセタキセル(20mg/kg)単独、またはHM30181(10mg/kg、ドセタキセルの30分前)と同時投与でのドセタキセル(20mg/kg)を、二種類の界面活性剤製剤(重量比が異なる)で、強制経口投与した。各製剤を、少なくとも3匹のラット(体重180〜350g)の群で試験した。投与前に、0.25,0.5,1.0,2,4,8,12および24時間に、頸静脈カニューレを介して血液サンプルを収集した。3匹のラットの別の群には、相対的なドセタキセルのバイオアベイラビリティの計算のために、市販のドセタキセル注射(Texotere(登録商標)、Sanofi)を使用してドセタキセル(5mg/kg)の静脈内投与を受けさせた。最大血漿濃度(Cmax)、薬物血中濃度曲線下面積(AUC)およびドセタキセルバイオアベイラビリティ(F)の増加によって示されるように、HM30181を同時投与したとき(すなわち、HM30181の投与後30分)に薬物動態データが改善した。最大血漿濃度(Tmax)、平均滞留時間(MRT)および半減期(t
1/2)に達するまでに要した時間も、以下の表に報告する。
【0048】
図3.1は、HM30181の同時投与後にTween(登録商標)80とCremophor(登録商標)EL(それぞれ65%および35重量%)でドセタキセルを投与した場合のドセタキセルの血漿濃度の上昇を示す。表3.1に示すように、Cmax、AUC、およびドセタキセルのバイオアベイラビリティは増加した。
【0049】
【表3.1】
【0050】
図3.2Aは、ドセタキセルを、Tween(登録商標)80のみ、Cremophor(登録商標)ELのみ、65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)EL、で製剤化した場合のドセタキセル投与後のドセタキセルの血漿濃度を示す。
図3.2Bは、HM30181を同時投与したドセタキセル製剤投与後のドセタキセルの血漿濃度を示す。
図3.2AおよびBの両方から見ることができるように、65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELでのドセタキセル製剤の投与後のドセタキセルの血漿濃度は、Tween(登録商標)80、Cremophor(登録商標)ELそれぞれ単体でドセタキセルを製剤した場合に達成された血漿濃度を僅かに上回った。HM30181との65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELでのドセタキセルの同時投与は、65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)EL中のドセタキセルを単独で投与した場合に観察されたCmaxと比較してCmaxの3.75倍の増大をもたらした。
【0051】
表3.2は、ドセタキセルを単独で投与した場合、又はHM30181と同時投与した場合の、Tmax、Cmax、AUC、MRT、t
1/2、およびバイオアベイラビリティに対するTween(登録商標)80およびCremophor(登録商標)ELの重量の比率を変化させた場合の影響を図示している。この実験において、Cremophor(登録商標)ELに対するTween(登録商標)80の比率が65〜35重量%であった時に、最も高いAUCとドセタキセルバイオアベイラビリティ値が観察された。
【0052】
【表3.2】
【0053】
図3.3AおよびBは、100%Tween(登録商標)80、100%Tween(登録商標)20および80%Tween(登録商標)80/20%Tween(登録商標)20製剤中のドセタキセルの投与後のドセタキセルの血漿濃度を示している。各医薬組成物を、HM30181の同時投与無し(
図3.3A)およびHM30181の同時投与有り(
図3.3B)で試験した。
図3.3Bに見られるように、HM30181と同時投与での80%Tween(登録商標)80/20%Tween(登録商標)20中のドセタキセル投与後のドセタキセルの血漿濃度は、Tween(登録商標)80およびTween(登録商標)20個別でドセタキセルを製剤した場合に達成された血漿濃度を超えている。
【0054】
表3.3は、ドセタキセルを単独で投与した場合と、HM30181と同時投与した場合の、Tmax、Cmax、AUC、MRT、t
1/2、およびバイオアベイラビリティに対するTween(登録商標)80およびTween(登録商標)20の重量の比率を変化させた場合の影響を図示している。この実験において、Tween(登録商標)20に対するTween(登録商標)80の比率が80〜20重量%であった時に、最も高いAUCとドセタキセルバイオアベイラビリティ値が観察された。
【0055】
【表3.3】
【0056】
図3.4Aは、100%Tween(登録商標)20、100%Cremophor(登録商標)ELおよび65%Tween(登録商標)20/35%Cremophor(登録商標)ELドセタキセル製剤の投与後のドセタキセルの血漿濃度を示している。
図3.4Bは、HM30181との同時投与の各ドセタキセル製剤の投与後の血漿ドセタキセル濃度を示している。
図3.4Aからわかるように、65%Tween(登録商標)20/35%Cremophor(登録商標)EL中のドセタキセルの投与後のドセタキセルの血漿濃度は、ドセタキセルをTween(登録商標)20およびCremophor(登録商標)EL単独で製剤した場合に達成される血漿濃度を上回っている。
図3.4AおよびBは、65%Tween(登録商標)20/35%Cremophor(登録商標)EL製剤が、Tween(登録商標)20単独又はCremophor(登録商標)EL単独製剤よりも高いCmax値を達成したことをはっきりと示している。
【0057】
図3.5AおよびBは、Labrasol(登録商標)、Cremophor(登録商標)ELおよび80%Labrasol(登録商標)/20%Cremophor(登録商標)EL中のドセタキセル投与後のドセタキセルの血漿濃度を示している。各医薬組成物を、HM30181との同時投与有り、無しでテストした。それぞれ個々の界面活性剤単体との製剤と比較して、ドセタキセルを80%Labrasol(登録商標)/20%Cremophor(登録商標)ELで製剤した場合にCmax値がより高いことが明らかである。
【0058】
従って、上記のデータに基づくと、第2の異なる界面活性剤の添加が、数多くの薬物動態パラメータに対して相加的効果以上の有意な効果を提供したことが容易に理解できる。理論上の相加値は、以下の式に従って計算することができる。
【0059】
【数1】
【0060】
相乗効果は、測定値が理論上の相加値を超える場合に観察される。別の言い方をすれば、相加的Cmax、AUCおよびバイオアベイラビリティ(F)は、2界面活性剤配合物中の各界面活性剤の割合に基づいて重み付けされるべきである。例えば、HM30181との同時投与での、100%Tween(登録商標)80,65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELおよび100%Cremophor(登録商標)ELに関する表3.2からのデータを使用して、100%Tween(登録商標)80中のドセタキセルのバイオアベイラビリティ(F)は12.3%、100%Cremophor(登録商標)ELのバイオアベイラビリティ(F)は20.1%、そして65/35Tween(登録商標)80/Cremophor(登録商標)ELでは(F)は25.8%であった。従って、相加的効果は、12.3%プラス21.0%で33.3%であると単純に考えるかもしれない。観察された25.8%は、33.3%未満、すなわち前記不適切な相加値、よりも小さいと思われる。これは誤った分析となる。正しい分析は、標準量の薬物の65%が、Tween(登録商標)80で、又35%でCremophor(登録商標)ELで投与されたと想像することである。それにより相加Fは加重平均、すなわち15.3%となる。観察された25.8%は添加剤Fの1.68倍であり、明らかに相加以上であり、相乗的であると正しく標識される。HM30181との同時投与無しでの、100%Tween(登録商標)80,65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELおよび100%Cremophor(登録商標)ELの表3.2からのデータを使用する別の例において、理論上の相加バイオアベイラビリティ(F)は1.7%である。観察されるバイオアベイラビリティは、4.1%であり、バイオアベイラビリティの2−4倍の相乗的増加となっている。
【0061】
表3.4は、表3.2および3.3で提供されたデータから導出された理論上のAUCおよび経口バイオアベイラビリティ値をまとめたものである。尚、データは予測不能であって、界面活性剤配合物の割合および同一性が変化するのに対して、相乗比の傾向を示さないことは容易に明らかである。従って、65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)EL(HM30181を併用しない場合および併用する場合)で経口投与されたドセタキセルのAUCおよびバイオアベイラビリティの相乗的増加は、予想外である。驚くべきことに、AUCおよびバイオアベイラビリティの相乗的増加は、ドセタキセルが、HM30181との同時投与で65%Tween(登録商標)80/35%Tween(登録商標)20で経口投与された時に観察され、それをHM30181の同時投与無しで経口投与された時には観察されなかった。
【0062】
【表3.4】
【0063】
このような知見は、少なくとも理論的には、界面活性剤の作用様式は実質的に同じであるはずであるので、特に予想外である。したがって、第2の異なる界面活性剤の添加は、相乗的に1つまたは複数の薬物動態パラメータを増加させる技術的効果を有する。具体的には、第1界面活性剤がTween(登録商標)80, Tween(登録商標)20又はLabrasol(登録商標)であり、第2界面活性剤がCremophor(登録商標)El又はTween(登録商標)20である時に特に顕著な増加が観察された。ここに提供される結果は、上記のMalingreとbardelmeijerとが、Cremophor(登録商標)ELは経口投与されるパクリタキセルのバイオアベイラビリティを低下させる、と教示していることから、特に予想外である。
【0064】
さらに、第1界面活性剤および第2界面活性剤の重量比が相対的にバランスしている場合、典型的には60:40〜85:15の範囲である場合に、1つまたは複数の薬物動態パラメータの特に有利な増加を観察することができた。
【0065】
4. 45mg/mLのドセタキセル濃度を有する液体医薬組成物の調製方法例(64.35%Tween(登録商標)80、34.65%Cremophor(登録商標)EL、0.5%アスコルビン酸、0.5%クエン酸):
a.1.95gのTween(登録商標)80と1.05gのCremophor(登録商標)ELとを20mLのガラスバイアル中に正確に計量する。
b.磁気棒攪拌によって十分に混合する。
c.アスコルビン酸16.5mgとクエン酸16.5mgを正確に計量する。
d.前記秤量したアスコルビン酸とクエン酸を、「工程b」からのTween(登録商標)80-Cremophor(登録商標)EL混合物に激しく磁気棒で撹拌しながら添加した。
e.有機酸を分散および溶解するために少なくとも10分間、超音波処理する。
f.すべての酸が溶解するまで攪拌超音波処理を続ける。これは約1−2時間かかるかもしれない。
g.ドセタキセル三水和物138mgを正確に秤量する。
h.いくつかの小さな部分(それぞれ〜30−40mg)に分け、「工程f」からのTween(登録商標)80-Cremophor(登録商標)EL−アスコルビン酸−クエン酸混合物に、35℃にて磁気棒で激しく攪拌しながら添加する。
i.ドセタキセルを分散および溶解するために少なくとも10分間超音波処理する。
j.全てのドセタキセルが溶解するまで攪拌音波処理を続ける。これには約4時間かかるかもしれない。
【0066】
5.ドセタキセル単剤および2界面活性剤の水中でのミセルサイズの測定
【0067】
ヒトの胃における希釈条件をシミュレートするために、単一界面活性剤および2界面活性剤ドセタキセル製剤を濃度1.25mg/mL(水120mL中のドセタキセル150mg)に希釈した。表5.1は、Delsa
TM Nano C Particle Analyzer(Beckman Coulter、US)を用いて測定した粒子サイズ(nm)を示す。沈殿を示したLabrasol(登録商標)組成物を除き、全ての製剤がヒトの胃の予想される希釈条件下でそれらのミセル状態にとどまった。
【0068】
【表5.1】
【0069】
6.アスコルビン酸および/またはクエン酸による液体製剤の安定性の促進
【0070】
以下の界面活性剤比を有する濃度45mg/mLのドセタキセル液体ドセタキセル製剤を硬ゼラチンカプセルに充填し、「加速安定性」条件(40℃/相対湿度75%)に供した。
【0071】
例1:64.35%Tween(登録商標)80,34.65%Cremophor(登録商標)EL,0.5%アスコルビン酸、0.5%クエン酸
【0072】
例2:64.35%Tween(登録商標)80,34.65%Cremophor(登録商標)EL 1%クエン酸
【0073】
表6.1は各製剤の組成を詳述している。
【0074】
【表6.1】
【0075】
液体製剤中のドセタキセルの分解生成物のHPLC分析
液体製剤の希釈(メタノール=1:30)
メタノールを含む1mg/mLのドセタキセルシステム適合性混合物(USP、ロット番号F0K229)
界面活性剤の存在に起因するピークを同定するために、液体製剤標準を使用した。
分析条件:
機器:Agilent 1260 Infinity
クロマトグラフパラメータ:
カラム:Zorbax Eclipse Plus C18,4.6*150mm、5μm
移動相:超純水(A);アセトニトリル(B)(表6.2参照)
流速:1.2mL/分
カラム温度:摂氏45度
注入量:20μL
検出波長:230nm
他の条件はUSP35ドセタキセル注入に従う。
【0076】
ドセタキセルおよびその分解生成物のアッセイを、最初と、1ヶ月後、3ヶ月後、および6ヶ月後に行った。表6.3および6.4は、アスコルビン酸およびクエン酸の様々な比を含有するすべての液体製剤の不純物レベルが、40℃および相対湿度75%で6ヶ月間USP限界以下にとどまったことを示している。これらの結果は、全ての不純物のレベルがUSP受入れ基準を下回っていることから、前記液体製剤が貯蔵期間中安定であることを示している。
【0077】
【表6.2】
【0078】
【表6.3】
【0079】
【表6.4】
【0080】
いくつかの実施形態において、数値パラメータは、報告された有効数字の数に鑑みて、通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値ではあるが、特定の実施例に示された数値は、実施可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態で提示される数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含みうる。
【0081】
本明細書の記述および以下の特許請求の範囲を通して使用において、「a」、「an」、および「the」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。また、本明細書の記載での使用において、「in」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、「in」および「on」を含む。
【0082】
本明細書で開示される本発明の代替要素または実施形態のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、またはここに記載されているグループまたは他の要素の他のメンバーと任意の組み合わせで参照および請求することができる。利便性および/または特許性の理由により、1つまたは複数のグループの要素を、あるグループに含める、又は削除することが可能である。そのような包含または欠失が生じる場合、明細書は、改変されたグループを含むとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述を満たすものとみなされる。
【0083】
尚、本明細書の発明概念から逸脱することなく、既に説明した以外の多くの変更が可能であることは、当業者には明らかである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるものではない。さらに、明細書および特許請求の範囲の両方を解釈するにあたり、全ての用語は、文脈と一致する最も広い可能な方法で解釈されるべきである。特に、用語「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、要素、構成要素またはステップを非排他的な方法で参照するものとして解釈されるべきであり、参照される要素、構成要素またはステップが存在するか、他の要素、構成要素、またはステップが明示的に参照されていないものとする。明細書の請求項が、A、B、C...Nからなる群から選択されたものの少なくとも1つを指す場合、A+N、B+N等、ではなく、そのグループの一つの要素のみを要件とすると解釈されなければならない。