特許第6985280号(P6985280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985280現在の歯列設定を一連の予定歯列設定と比較する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985280
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】現在の歯列設定を一連の予定歯列設定と比較する方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   A61C7/08
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-544331(P2018-544331)
(86)(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公表番号】特表2019-506244(P2019-506244A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2017054303
(87)【国際公開番号】WO2017144652
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2020年2月6日
(31)【優先権主張番号】PA201670102
(32)【優先日】2016年2月24日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】508158023
【氏名又は名称】3シェイプ アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヘンレク ジョン ブラント
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−528748(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0305453(US,A1)
【文献】 米国特許第06488499(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/00 − 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の一群の歯における少なくとも1つの歯を、最初の歯列設定から、一連の中間的歯列設定を経て、最終的歯列設定まで移動させるための一連の予め作製された歯列矯正アライナから1つのアライナを選択する方法であって、前記一連の予め作製された歯列矯正アライナにおける各アライナが、患者の各歯における前記少なくとも1つの歯を1つの歯列設定から次の歯列設定まで移動させるように提供される方法において、
当該方法が、
−患者の一群の歯のデジタル3D表現物を獲得し、
−最初の歯列設定と、期待される現在の歯列設定と、前記最初の歯列設定と前記期待される現在の歯列設定との間における歯列設定を表す少なくとも2つの中間的歯列設定とを含むデジタル式治療計画であって、前記一連の予め作製された歯列矯正アライナにおいては、前記少なくとも1つの歯を、対応する前記少なくとも2つの中間的歯列設定へと移動させる少なくとも2つのアライナが設けられるデジタル式治療計画を獲得し、
−前記少なくとも2つの中間的歯列設定の内のいずれが、患者の一群の歯の前記デジタル3D表現物に対して最も近い一致性を有するかをデジタル的に決定する、
ためのデジタル処理フローを含み、
当該方法が、前記最も近い一致性に基づき、前記一連の予め作製された歯列矯正アライナから1つのアライナを選択することをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記選択されたアライナが、前記一連の予め作製された歯列矯正アライナからの前記アライナであって、前記患者の一群の歯を、前記最も近い一致性の歯列設定から、前記次の歯列設定まで移動させるように構成されたアライナである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択されたアライナが、前記一連の予め作製された歯列矯正アライナからの前記アライナであって、前記患者の一群の歯を、前記最も近い一致性の歯列設定まで移動させるように構成されたアライナである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者の各歯における前記少なくとも1つの歯を、前記少なくとも2つの中間的歯列設定の間にある一時的歯列設定まで移動させる修正用アライナが作製される、請求項乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
−患者の一群の歯のデジタル3D表現物を獲得することと、
−最初の歯列設定と、期待される現在の歯列設定と、前記最初の歯列設定と前記期待される現在の歯列設定との間における歯列設定を表す少なくとも2つの中間的歯列設定とを含むデジタル式治療計画であって、前記一連の予め作製された歯列矯正アライナにおいては、前記少なくとも1つの歯を、対応する前記少なくとも2つの中間的歯列設定へと移動させる少なくとも2つのアライナが設けられるデジタル式治療計画を獲得することと、
−前記少なくとも2つの中間的歯列設定の内のいずれが、患者の一群の歯の前記デジタル3D表現物に対して最も近い一致性を有するかをデジタル的に決定することと、
前記最も近い一致性に基づき、前記一連の予め作製された歯列矯正アライナから1つのアライナを選択することと、
を含む、計画された治療の正しい計画段階を決定する、コンピュータ実行型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略的に、現在の歯列設定(dental setup)を一連の予定歯列設定と比較する方法に関する。さらに詳細には、この比較が、一連の予め作製された歯列矯正アライナ(dental aligner)から1つのアライナを選択し、且つ、そのアライナを使用して歯列矯正治療を進めるように使用される、という方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
今日、歯列矯正治療のためには、習用的に使用されたブラケット及び歯列矯正器(brace)に対する代替策として、歯列矯正アライナを使用することが非常に一般的となっている。
【0003】
正しい種類のアライナを供給するために、各歯を、最初の歯列設定から、多数の中間的歯列設定を経て、最終的歯列設定まで移動させるための治療計画が設定される。その結果、上記治療計画に従い各歯を移動させるために、各歯列設定に基づき、一連のアライナが設計かつ作製される。対応する歯列設定に到達したとき、上記治療の過程を辿るために、新たなアライナが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際の治療が、計画された治療から逸脱することがある。例えば、患者がアライナを十分に、又は、正しく装着しないとき、歯列設定は最後には、計画された治療から逸脱することになる。斯かる場合には、新たな治療計画を立てると共に、新たな複数のアライナを作製することが一般的である。しかし、このことは、時間が掛かると共に、不経済である。
【0005】
したがって、治療計画と、該治療を進めるために既に提供された各アライナとを、再使用できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
患者の一群の歯における少なくとも1つの歯を、最初の歯列設定から、一連の中間的歯列設定を経て、最終的歯列設定まで移動させるための一連の予め作製された歯列矯正アライナであって、該一連の予め作製された歯列矯正アライナにおける各アライナは、患者の各歯における上記少なくとも1つの歯を1つの歯列設定から次の歯列設定まで移動させるように提供される一連の予め作製された歯列矯正アライナから、1つのアライナを選択する方法であって、
該方法は、
患者の一群の歯のデジタル3D表現物を獲得し、
最初の歯列設定と、期待される現在の歯列設定と、上記最初の歯列設定と上記期待される現在の歯列設定との間における歯列設定を表す少なくとも2つの中間的歯列設定とを備えて成るデジタル式治療計画であって、上記一連の予め作製された歯列矯正アライナにおいては、上記少なくとも1つの歯を、対応する少なくとも2つの中間的歯列設定へと移動させる少なくとも2つのアライナが配備されるデジタル式治療計画を獲得し、
上記少なくとも2つの中間的歯列設定の内のいずれが、患者の一群の歯のデジタル3D表現物に対して最も近い一致性を有するかをデジタル的に決定する、
ためのデジタル処理フローを備えて成り、
該方法はさらに、上記最も近い一致性に基づき、上記一連の予め作製された歯列矯正アライナから1つのアライナを選択する段階を備えて成る、方法が開示される。
【0007】
一連のアライナから、歯列矯正治療を進めるために最適なアライナを後戻りして選択する手段を提供することにより、時間及び費用が節約され得る、と言うのも、患者は、完全に新しい一連のアライナを注文する必要なしに、即時に正しい治療へと再導入され得るからである。
【0008】
上記最も近い一致性の決定は、例えば、3Dモデル同士を比較する公知の方法である反復最近接点(ICP)アルゴリズムを使用するなどの、多数の手法で行われ得る。
【0009】
典型的に、各歯列設定は、対応する歯列設定において患者の各歯を表す3Dモデルとして提供され、これらは、例えば上記ICPのようなアルゴリズムの使用を促進する、と言うのも、これらの3Dモデルは、患者の一群の歯の複数の3D表現物の内から最も近い一致性をデジタル的に決定するように使用され得るからである。
【0010】
特定のアライナは、患者が現在において治療計画のどこにいるかに基づいて選択される。
【0011】
したがって、一実施形態において、上記選択されたアライナは、上記一連の予め作製された歯列矯正アライナからのアライナであって、患者の一群の歯を、上記最も近い一致性の歯列設定から、上記次の歯列設定まで移動させるように構成されたアライナである。
【0012】
別実施形態において、上記選択されたアライナは、上記一連の予め作製された歯列矯正アライナからのアライナであって、患者の一群の歯を、上記最も近い一致性の歯列設定まで移動させるように構成されたアライナである。
【0013】
幾つかの場合、患者は、単に既存のアライナまで戻るだけでは十分でないほど、計画された治療から離れることがある。斯かる場合には、患者の各歯における上記少なくとも1つの歯を、上記少なくとも2つの中間的歯列設定の間にある一時的歯列設定まで移動させる修正用アライナを作製することが解決策であり得る。
【0014】
引き続き、患者の各歯の上記少なくとも1つの歯が上記一時的歯列設定まで移動された後、計画された治療を進めるために、上記一連の予め作製された歯列矯正アライナから既存のアライナが選択され得る。
【0015】
別の見地において、本発明は、
患者の一群の歯のデジタル3D表現物を獲得する段階と、
最初の歯列設定と、期待される現在の歯列設定と、上記最初の歯列設定と上記期待される現在の歯列設定との間における歯列設定を表す少なくとも2つの中間的歯列設定とを備えて成るデジタル式治療計画であって、上記一連の予め作製された歯列矯正アライナにおいては、上記少なくとも1つの歯を、対応する少なくとも2つの中間的歯列設定へと移動させる少なくとも2つのアライナが配備されるデジタル式治療計画を獲得する段階と、
上記少なくとも2つの中間的歯列設定の内のいずれが、患者の一群の歯のデジタル3D表現物に対して最も近い一致性を有するかをデジタル的に決定する段階と、
を備えて成る、計画された治療の正しい計画段階を決定する、コンピュータ実行型方法に関する。
【0016】
本発明の上記の及び/又は付加的な目的、特徴及び利点は、添付図面を参照した本発明の実施形態に関する以下の例示的で非限定的である詳細な説明によりさらに論じられよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】意図された治療計画に従う歯列矯正治療の概略的全体図である。
図2】本発明の一実施形態に従い修正された歯列矯正治療の概略的全体図である。
図3】本発明の別実施形態に従い修正された歯列矯正治療の概略的全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明においては、本発明が如何にして実施され得るかを例示的に示す添付図面が参照される。
【0019】
図1は、一連の歯列矯正アライナ10、11、12及び13を使用することにより最初の歯列設定1から最終的歯列設定5まで変化させることで、各歯を、多数の(この場合には3つの)中間的歯列設定2、3及び4を通して最終的歯列設定5まで移動させる歯列矯正治療の治療計画を示している。各アライナは、患者の各歯を1つの歯列設定から次の歯列設定まで移動させるように設計されており、例えば、アライナ10は、各歯を、最初の歯列設定1から第1の中間的歯列設定2まで移動させるように設計される。
【0020】
しかし、幾つかの場合、上記治療は治療計画にしたがって進展せず、図2に示されるように、各歯は、計画された中間的歯列設定4の代わりに、最後には不都合な歯列設定4’となる。
【0021】
斯かる場合、単に新たな治療計画を立てると共に、新たな一群のアライナを作製することが一般的であった。
【0022】
しかし、不都合な歯列設定を、治療計画のために設計された各歯列設定と比較することにより、殆どの場合には、治療計画を遡って反復すると共に、先に作製されたアライナを見出し、且つ、患者を治療計画へと戻すためにこれを再使用することが可能である。
【0023】
例えば、図2に示されるように、不都合な歯列設定4’を、計画された各歯列設定とデジタル的に比較することにより、不都合な歯列設定が、最初の歯列設定と第1の中間的歯列設定との間に在り、且つ、第1の中間的歯列設定に対して最も近い一致性(closest match)を有することが決定される。この場合、患者は、不都合な歯列設定4’から第1の中間的歯列設定まで移動するために、第1アライナ10を使用することにより、元の治療計画へと戻され得る。
【0024】
幾つかの場合、図3に示されるように、各歯を適切な一時的歯列設定16まで戻すためには修正用アライナ15を作製することが必要なほど、不都合な歯列設定14が治療計画から離れて移動したことが判明することがある。一時的歯列設定16からは、第1アライナ10が使用されることで、歯列設定は治療計画まで戻され得る。理解され得るように、新たな一群のアライナの全ての代替策として、1つの付加的なアライナを作製すべきのみであることは、依然として有用である。
【0025】
幾つかの実施形態が詳細に記述して示されてきたが、本発明は、それらに制限されるのではなく、以下の各請求項において定義された主題の有効範囲内で、他の様式でも具現され得る。特に、本発明の有効範囲から逸脱せずに他の実施形態が利用され得ると共に、構造的及び機能的な改変が為され得ることは理解される。
図1
図2
図3