(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
出力された前記修正された配合データに基づき配合された修正色の塗料を塗装して得られた塗色を前記光学センサで測定した修正色測色データを取得する修正色測色データ取得部をさらに備え、
前記配合データ修正部は、取得された前記修正色測色データと前記目標色測色データとの差異に基づき、出力された前記修正された配合データを再修正し、
前記修正色出力部は、再修正された前記配合データを出力する、請求項1に記載の塗料配合データ提供装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における、塗料配合データ提供装置、塗料配合データ提供方法及び塗料配合データ提供プログラムについて詳細に説明する。
【0020】
先ず、
図1を用いて、塗料の調色を行う塗料配合データ提供システムの構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る塗料配合データ提供システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0021】
図1において、塗料配合データ提供システム1は、塗料配合データ提供装置10、光学センサ21、入力装置22、表示装置23、スピーカ24、プリンタ25、塗装装置26、温湿度計27及び計量装置28の各機器を有している。塗料配合データ提供システム1は、ネットワーク9を介してサーバ3と接続されている。
図1は、塗料配合データ提供装置10と上記各機器との間が、有線又は無線によって通信可能に接続されている場合を示している。塗料配合データ提供装置10と上記各機器とは、例えば、ネットワークを介して接続され、通信が行われてもよい。また、上記各機器のいずれかは、塗料配合データ提供装置10と通信可能に接続されずに単独で存在してもよい。すなわち、
図1に示す塗料配合データ提供装置10と各機能の構成は、塗料配合データ提供装置10と各機器との接続形態や設置場所を限定しない。例えば、塗料配合データ提供装置10と各機器とがネットワークを介して接続されている場合、上記各機器は、図示しない端末装置を経由して塗料配合データ提供装置10と接続されてもよい。また、塗料配合データ提供装置10が各機器と接続されていない場合、例えば、記録媒体を経由してデータのやり取りを行ってもよい。また、各機器で取得したデータを端末装置から手入力等して塗料配合データ提供装置10に送信したり、塗料配合データ提供装置10から送信されたデータを端末装置に表示等して、手動で各機器に入力するようにしてもよい。
【0022】
光学センサ21は、物体の色を測定した測色データを取得するセンサである。本実施形態において、光学センサ21は、後述する補修対象部位の周囲の色や所定の配合で調整した塗料を塗装して得られた塗色を測定する分光光度計を例示する。本実施形態で用いる光学センサ21は、光源の波長400〜700nmの間において10nm毎の単色光を用い、照査した光のうちで塗装面から反射光の強度をフォトダイオードで測定することにより分光反射率を測定する。光学センサ21は、入射光に対する反射光の受光角度による強度を測定する。光学センサ21は、入射光を、塗装面から垂直方向を0°とした場合の−45°の入射角度で入射させる。塗装面から垂直方向を0°とした場合の45°の角度における反射光が正反射となる。受光角度はこの正反射の角度を基準に設定される。受光角度は、正反射光の受光角度を0°とした場合の、15°、25°、45°(塗装面から垂直方向)、75°及び110°の5角度である。また、−15°又は105°の受光角度を用いてもよい。例えば、上記5角度を用いる場合、塗装におけるハイライトは15°及び25°の受光角度で、フェースは45°の受光角度で、また、シェードは75°及び110°の受光角度で測定される。なお、測定する波長や受光角度は、塗装の塗色系によって適宜選択してもよい。また、光学センサ21の光源は、可視領域の波長を用いる代わりに、赤外領域又は紫外領域の波長を用いる光源であってもよい。
【0023】
入力装置22は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置である。作業者は、入力装置22から、作業者名等の情報を入力することができる。表示装置23は、例えば、液晶ディスプレイであり、例えば、後述する配合データ出力部104から出力される塗料の配合データを表示し、また、アラート報知部106から報知されるアラート内容を表示する。スピーカ24は、例えば、アラート報知部106から報知されるアラート内容を音声で出力する。プリンタ25は、例えば、配合データ出力部104から出力される塗料の配合データを印字出力し、また、アラート報知部106から報知されるアラート内容を印字出力する。入力装置22、表示装置23、スピーカ24又はプリンタ25は、例えば、タブレット端末等によって実施されてもよい。
【0024】
塗装装置26は、自動車等の被塗装物を塗装する装置である。以下の説明では、塗装装置26が塗料配合データ提供装置10に対して装置の属性(仕様)データを送信できる場合を説明する。但し、装置の属性データの送信は、他の装置からの送信又は作業者による手入力による送信等であってもよい。装置の属性データとは、例えば、霧化方式又は静電方式等の塗装方式、装置の型式、ノズルの型式、加圧空気圧、ノズルを動作させるアクチュエータの情報等のデータである。また、装置の属性データには、ユーザIDを関連付けてもよい。なお、塗装装置26は、被塗装物を固定して塗料を吐出するノズルを移動させつつ被塗装物を塗装する装置、ノズルを固定して被塗装物を移動させつつ被塗装物を塗装する装置、ノズル及び被塗装物の双方を相対的に移動させつつ被塗装物を塗装する装置等を用いることができる。塗装装置26は、塗板を被塗装物とすることができる。ノズルや被塗装物の移動は自動的に行われてもよいし、手動で行われてもよい。本実施形態においては、1台の塗料配合データ提供装置10に対して1台の塗装装置26が接続されている場合を図示しているが、塗装装置26は複数台が接続されてもよい。
【0025】
温湿度計27は、塗装装置26において被塗装物を塗装する塗装ブース、塗料を調合する作業場所、光学センサ21を用いた分光反射率測定場所等の温湿度を測定して、塗料配合データ提供装置10に対して温湿度データを送信する。塗装ブースにおいて、温湿度は塗装の仕上がりに影響して塗装色が変わってしまう場合がある。また、光学センサ21を用いた分光反射率測定においては、測定誤差を生じる可能性がある。送信された温湿度データは、例えば、塗料の配合情報、又は光学センサ21による測色データと関連させて配合データ記憶部107等に記憶しておくことにより、後述するCCS(Computer Color Search)やCCM(Computer Color Matching)において有効な情報となる。温湿度データの送信は、温湿度計27から塗料配合データ提供装置10に対して直接送信しても、作業者が温湿度を入力する端末から入力するようにしてもよい。
【0026】
計量装置28は、配合する塗料を計量する専用のハカリである。計量装置28は、例えば、塗料配合データ提供装置10から塗料の配合割合を示す配合データを取得して、取得した配合データを図示しない表示装置に表示し又は印字装置から印字することにより出力する。塗料を調合する作業者は、出力された配合データに基づき塗料の重量を計測して塗料を調合する。例えば、作業者は、計量装置28に表示された配合量を見て配合する塗料を調整する。計量装置28は、塗料配合データ提供装置10から取得した配合データに基づき塗料を自動的に計量してもよい。
【0027】
計量装置28において計量された塗料の調合量(配合量)は計量装置28に記録されるとともに、計量作業終了後には塗料配合データ提供装置10に対して送信される。計量された塗料の調合量を送信することにより、例えば、塗料配合データ提供装置10から提供された配合データと作業者が実際に調合した塗料の配合が異なる場合、その差異を塗料配合データ提供装置10にフィードバックすることが可能となる。
【0028】
なお、計量装置28が汎用的なハカリである場合、作業者はプリンタ25によって印字されたデータ等に基づき塗料を配合し、配合結果を入力装置22から手入力する。
【0029】
サーバ29は、例えば、遠隔地に設置されるデータサーバである。サーバ29は、塗料配合データ提供装置10で実行されるプログラムや使用されるデータを塗料配合データ提供装置10に対して供給してもよい。また、サーバ29は、塗料配合データ提供装置10で作成されたデータを取得してもよい。
【0030】
塗料配合データ提供装置10は、測色データ取得部101、配合データ検索部102、配合データ修正部103、配合データ出力部104、差異判定部105、アラート報知部106、配合データ記憶部107の各機能を有している。
【0031】
塗料配合データ提供装置10は、デスクトップ型PC、ノート型PC、タブレット型PC、PDA、又はスマートフォン等の汎用装置、又は塗料配合データを検索するための専用装置である。塗料配合データ提供装置10は、図示しない、CPU(Central Processing Unit)が、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)又はHDD(Hard Disk Drive)に記憶されたプログラムを実行することによって動作することができる。すなわち、塗料配合データ提供装置10の測色データ取得部101等の上記各機能は、塗料配合データ提供装置10で実行されるソフトウェア(プログラム)で実現することができる。測色データ取得部101等の上記各機能は、プログラムを記録した記録媒体(コンピュータ可読媒体)で提供することができる。また、塗料配合データ提供装置10は、
図1に示す光学センサ21、入力装置22等を通信可能に接続するためのインターフェースを有している。
【0032】
測色データ取得部101は、光学センサ21で測定された測色データを取得する。測色データ取得部101は、測定された測色データの種類に応じた取得部を有している。本実施形態において測色データ取得部101は、目標色測色データ取得部1011、候補色測色データ取得部1012、修正色測色データ取得部1013を有する。目標色測色データ取得部1011は、配合する塗料の目標色の測色データ(目標色測色データ)を取得する。目標色とは、例えば、修理対象の車両の塗装色である。目標色測色データ取得部1011は、修理対象の車両の補修部位周囲の塗色を光学センサ21で測定された目標色測色データを取得して記憶する。候補色測色データ取得部1012は、候補色として出力された配合データに基づき配合された塗料を塗装して得られる塗色を光学センサ21で測定した候補色の測色データ(候補色測色データ)を取得して記憶する。修正色測色データ取得部1013は、修正色として出力された修正された配合データに基づき配合された修正色の塗料を塗装して得られた塗色を光学センサ21で測定した修正色の測色データ(修正色測色データ)を取得して記憶する。修正色測色データ取得部1013は、修正色の塗料を塗装して得られた塗色が作業者の目視によって目標色と一致することが確認されるまで、都度修正色測色データを取得する。なお、上述したように測色データは、波長毎、反射角度毎に測定された分光反射率のデータである。測色データは、所定の色空間に変換されたデータであってもよい。
【0033】
配合データ検索部102は、目標色測色データ取得部1011で取得した測色データに基づき、配合データ記憶部107に記録された配合データを検索する。配合データとは、塗料に含まれる材料の配合割合のデータである。ここで、本実施形態において配合される塗料について説明する。
【0034】
塗料は、塗料の彩色を形成する顔料と展色材(ビヒクル)の成分を含む。顔料には、塗装の色を決める着色顔料、塗装に厚み等を加える体質顔料、また防錆機能や光輝性機能等の機能を与える機能性顔料を含む。ビヒクルには、塗膜における耐候性、柔軟性又は耐水性などの性能を決定する主要素である樹脂、塗装の目的に応じて添加される添加剤、若しくは塗料を希釈して塗膜形成時に揮発する、水や有機溶剤等の希釈剤を含む。添加剤には、例えば、塗料の流動性を調整するためのレオロジーコントロール剤、消泡やレベリング性改良に用いられる表面調整剤を含む。
【0035】
自動車補修用塗料(溶剤系)における塗料の調色の場合、カラーベース塗料(着色顔料を含む)、パールベース塗料(光輝性顔料を含む)、アルミベース塗料(アルミフレーク顔料を含む)、艶調整塗料(艶調整剤を含む)、硬化剤(複数の硬化剤を含む)、又は溶剤(速乾タイプ又は遅乾タイプを含む)が組み合わされて調整される。また、白色塗料においては、高濃度の顔料ペーストを添加する調色が行われる。
【0036】
塗料の調色においては、上述した様々な成分を含む原色塗料が用意されて、原色塗料が適宜配合(混合)される。原色塗料には、赤、黄、青、緑、黒、赤錆、黄土、白等の塗料がある。自動車補修用の調色においては、例えば、顔料を含まない透明塗料であるエナメルクリヤーに、着色顔料ペーストや予め溶剤と混合した光輝性顔料を添加して行われる。
配合データ記憶部107は、塗料の配合データと、その配合データによって配合(調合)された塗料を塗装したときの測色データとを対応付けて記憶している。以下の説明では、主に原色塗料の配合について説明し、他の成分についての調色については説明を省略する。
【0037】
配合データ検索部102は、配合データ記憶部107に配合データと対応付けられて記憶されている測色データの中から、検索条件として光学センサ21で測定された目標色測色データに近似しているデータを検索(CCS)する。目標色測色データは、サンプルとなる配合データによって配合された塗料を標準的な塗装方法で塗装された被塗装物を光学センサで測色して得られたデータである。このため、配合データ記憶部107に予め記憶されている測色データは、サンプルの個数に応じた数となる。配合データを変えたサンプルの個数を増やすことにより、目標色測色データにより近い測色データを予め用意することができる。CCSにおいては、多数のサンプルの中から近似した測色データを有する配合データを瞬時に検索することができる。本実施形態では、塗装に使用される頻度を考慮した配合データのサンプルについて測色データを予め用意しておき、その測色データの中から目標色測色データに近似したデータを検索する。測色データの近似とは、例えば、所定の色空間におけるパラメータが近似したデータである。従って、目標色測色データは予め記憶された複数の測色データに近似する可能性がある。配合データ検索部102は、所定の近似条件に合致した1又は複数の測色データを検索して、検索した測色データに対応付けられた近似色の配合データを取得する。なお、配合データの検索条件は任意に設定できる。例えば、検索条件としてパラメータの範囲、検索個数等を設定できるようにする。また、使用可能な原色塗料等の条件を検索条件としてもよい。
【0038】
配合データ修正部103は、目標色測色データと近似色の測色データに所定値以上の差異があるか否かを判断して、所定値以上の差異がある場合、近似色を基点として微調色修正した配合データを生成する(CCM)。配合データ記憶部107に予め記録されている測色データはサンプルであるため、目標色測色データ取得部1011で取得された目標色測色データと、配合データ検索部102で検索された近似色の測色データとの差異が生じる場合がある。差異が所定値以上である場合は微調色修正した配合データが初回の配合データとなる。一方、差異が所定値未満である場合、配合データ修正部103は配合データを修正しないため、検索された近似色が初回の配合データとなる。
【0039】
配合データ修正部103は、測色データの差異に基づき、着色塗料のそれぞれの基礎データを参照して配合データを修正する。基礎データとは、例えば、塗料の原色毎の着色力である。着色力とは、一定量の原色塗料で塗装色に着色できる大きさをいう。黒や紺の原色は少量を加えても塗料の色を着色できるため着色力が大きい。一方、黄色の原色は相当量を加えても塗装色の色を着色しにくいため着色力が小さい。配合データ修正部103は、測色データの差異と配合する原色塗料の色の着色力に基づき配合データを修正することができる。なお、着色力は、塗料の色に対する着色力ではなく、乾燥塗膜の色に対する着色力である。また、着色力は、下地の素材や原色塗料の下地の隠蔽力によって異なる。配合データ修正部103は、これらの要因を含めて配合データを修正してもよい。
【0040】
配合データ修正部103は、測色データの差異に基づき、上記着色塗料のそれぞれの基礎データに加えて、ユーザの実績に対応した係数を掛けて配合データを修正してもよい。ユーザの実績に対応した係数とは、例えば、配合データ修正部103における配合データの修正記録から得られる修正の傾向を示す係数である。例えば、塗装装置等の機器の種類、塗装環境等はユーザによって異なり、塗装色に影響を与える場合がある。また、ユーザによって塗装色に好みの傾向が生じる場合がある。修正記録から得られる修正の傾向を係数として掛けることにより、これらの要因を予め考慮した配合データを生成することが可能になる。
【0041】
また、配合データ修正部103は、目標色測色データ取得部1011で取得された目標色測色データと、候補色測色データ取得部1012で取得された候補色測色データとの差異が所定値未満である場合、この差異に基づき、候補色測色データを基点として配合データを調色修正した修正色の配合データである補正色配合データを生成する。すなわち、配合データ修正部103は、修正色の塗料を塗装して得られた塗色が作業者の目視によって目標色と一致することが確認されるまで、配合データを繰り返し修正して、修正色を目標色に近付けるようにする。なお、配合データ修正部103は、後述する塗装条件に係る情報を取得して、取得した情報にさらに基づき、出力された配合データを修正してもよい。
【0042】
配合データ出力部104は、配合データを塗料配合データ提供装置10から出力する。本実施形態において、配合データ出力部104は、候補色出力部1041と、修正色出力部1042を有する。候補色出力部1041は、配合データ検索部102で検索された近似色の配合データ、又は、配合データ修正部103のCCMで生成された配合を最初の候補色として出力する。上述の通り、候補色は1又は複数とすることができる。候補色出力部1041は、例えば、候補色が複数ある場合、所定の条件によって順序を変更して配合データを出力するようにしてもよい。修正色出力部1042は、配合データ修正部103で修正された配合データを出力する。配合データ出力部104が配合データを出力する出力先は、例えば、表示装置23、プリンタ25、計量装置28等である。作業者は、出力された配合データに基づき原色を配合して塗料を作成し、塗板に対して試験的に塗布する。
【0043】
差異判定部105は、目標色測色データ取得部1011で取得された目標色測色データと、候補色測色データ取得部1012で取得された候補色測色データの差異が所定の範囲以上であるか否かを判定する。また、差異判定部105は、目標色測色データと、修正色測色データ取得部1013で取得された修正色測色データの差異が所定の範囲以上であるか否かを判定する。測色データの差異は、例えば、同じ受光角度の分光反射率を直接比較することにより判定する。また、分光反射率からL*a*b*表色系による色差ΔE*abを計算して判定してもよい。観察角度によって色の見え方が変化する塗色の場合は、複数の観察角度におけるΔE*abを計算して判定する。なお、色差の数値については、CIE1976色差式(ΔE*ab)に限定されない。これらの測色データの差異は、塗装に係る条件(塗装条件)によって発生する。塗装条件とは、例えば、上述した装置の型式、ノズルの型式、加圧空気圧、ノズルを動作させるアクチュエータの情報等の装置の仕様である。また、塗装条件とは、塗装ブースの温湿度等の環境条件であってもよい。また、塗装条件には、作業者のヒューマンエラーを含む場合がある。作業者のヒューマンエラーとしては、例えば、配合すべき原色塗料の間違え、原色塗料の分量の間違え、又は希釈剤の分量の間違え等がある。また、ヒューマンエラーとして、ノズルの動作間違い等の塗料の塗装方法を間違えも含まれる。差異判定部105は、目標色測色データと候補色測色データの差異において複数の閾値を予め用意しておき、閾値毎に塗装に係るエラーの発生を判定する。差異判定部105が判定できるエラーの例は
図4を用いて後述する。差異判定部105は、判定結果をアラート報知部106に出力する。
【0044】
アラート報知部106は、差異判定部105において判定された判定内容を作業者に報知する。例えば、アラート報知部106は判定結果を表示装置23にテキスト表示する。
また、アラート報知部106は、判定結果をスピーカ24から音声で出力する。また、アラート報知部106は判定結果をプリンタ25に印字データとして出力する。
【0045】
配合データ記憶部107は、上述の通り、測色データと配合データを対応付けて記憶している。配合データ記憶部107は、不揮発性RAMやハードディスクによって実現することができる。
【0046】
なお、以上の説明においては、塗料配合データ提供装置10が有する、測色データ取得部101、配合データ検索部102、配合データ修正部103、配合データ出力部104、差異判定部105、アラート報知部106及び配合データ記憶部107の各機能は、ソフトウェアソフトウェアによって実現される場合を説明した。しかし、塗料配合データ提供装置10が有する上記1つ以上の機能は、ハードウェアによって実現されてもよい。また、塗料配合データ提供装置10が有する上記各機能は、1つの機能を複数の機能に分割して実施してもよい。また、塗料配合データ提供装置10が有する上記各機能は、2つ以上の機能を1つの機能に集約して実施してもよい。例えば、上記の実施形態では、測色データ取得部101が、目標色測色データ取得部1011、候補色測色データ取得部1012及び修正色測色データ取得部1013を有する場合を説明したが、測色データ取得部101は、目標色測色データ取得部1011、候補色測色データ取得部1012及び修正色測色データ取得部1013の機能を全て有してもよい。
【0047】
次に、
図2を用いて、塗料配合データ提供装置10の配合データ検索処理を説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る塗料配合データ提供装置10の配合データ検索処理の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図2及び
図3における処理は、
図1で説明した塗料配合データ提供装置10の各機能によって実行されるが、以下の説明では塗料配合データ提供装置10が実行する場合を説明する。
【0048】
図2において、塗料配合データ提供装置10は、目標色の測色データが取得されたか否かを判断する(ステップS11)。目標色とは、配合データに基づき作成される塗料における目標となる塗装色であり、例えば、修理対象の車両の塗装色である。塗料配合データ提供装置10は、作業者が車両の塗装を光学センサ21で測定することにより目標色の測色データを取得することができる。目標色の測色データが取得されていないと判断した場合(ステップS11:NO)、塗料配合データ提供装置10は、ステップS11の処理を繰り返し、測色データの取得を待機する。
【0049】
一方、目標色の測色データが取得されたと判断した場合(ステップS11:YES)、塗料配合データ提供装置10は、取得した測色データに基づき、予め記憶されている測色データと対応付けられた近似色の配合データを検索する(CCS)(ステップS12)。
【0050】
ステップS12の処理を実行した後、塗料配合データ提供装置10は、取得した測色データと検索した近似色との差異を算出する(ステップS13)、測色データの差異の算出は、所定の測定条件における測色データに基づき行う。例えば、塗料配合データ提供装置10は、光学センサ21で測定された同じ波長の同じ反射角度における分光反射率の差異を算出する。
【0051】
ステップS13の処理を実行した後、塗料配合データ提供装置10は、算出された測色データとの差異が予め設定された設定値(所定値)以上であるか否かを判断する(ステップS14)。差異が予め設定された設定値以上であるか否かの判断は、例えば、所定の波長における所定の反射角度における分光反射率の差異が所定値以上であるか否かで判断する。
【0052】
差異が予め設定された設定値以上であると判断した場合(ステップS14:YES)、塗料配合データ提供装置10は、ステップS11の処理で取得した測色データとステップS12の処理で検索した近似色との差異に基づき、近似色を基点として配合データを微調色修正した配合データを生成する(ステップS15)。配合データの微調色修正は、原色塗料の配合割合を変更することにより行う。塗料配合データ提供装置10は、微調色修正した配合データを初回の配合データとする。一方、差異が予め設定された設定値未満であると判断した場合(ステップS14:NO)、ステップS15の処理はスキップされて、塗料配合データ提供装置10は、ステップS11の処理で検索された近似色を初回の配合データとする。なお、候補色(近似色)の配合データ又は微調色修正する配合データは、作業者に選択可能に提示されてもよい。例えば、候補色の配合データの中には作業者が所有していない原色塗料を使用する配合が含まれている場合がある。塗料配合データ提供装置10は、複数の配合データの検索結果を提示することにより、作業者に最適な配合データの選択を可能にする。
【0053】
ステップS15の処理を実行後、又は差異が予め設定された設定値未満であると判断した場合(ステップS14:NO)、塗料配合データ提供装置10は、初回の配合データを記録する(ステップS16)。記録された配合データは、
図3で説明する配合データの修正処理における基点のデータとなる。ステップS16の処理を実行した後、塗料配合データ提供装置10は、初回の候補色の配合データを出力する(ステップS17)。なお、測色データの取得から配合データの出力までの処理は、例えば、トランザクションとして一体不可分に処理されてもよい。また、ステップS11からステップS17の処理は
図3で説明する処理と連続して実行するようにしてもよい。ステップS17の処理を実行した後、塗料配合データ提供装置10は、
図2に示すフローチャートの処理を終了する。
【0054】
作業者は、
図2で説明した処理において出力された初回の配合データに基づき塗料を配合し、配合した塗料によって塗板を塗装する。塗板の塗装は、先ず、配合した着色塗料を塗装して、次にクリヤー塗料を塗装して、さらに乾燥させることにより行われる。塗装した塗板は、作業者の目視によって目標色である車両の塗装と比較され、目視による色の一致が確認されたときにはその配合データに基づき車両を塗装する塗料を配合する。
【0055】
一方、作業者は、目視によって塗板と車両の塗装の一致が確認できないときには、次の
図3で説明する配合データ修正処理を実施する。
【0056】
次に、
図3を用いて、塗料配合データ提供装置10の配合データ修正処理を説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る塗料配合データ提供装置の配合データ修正処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【0057】
図3において、塗料配合データ提供装置10は、
図2に示すステップS17の処理において出力された候補色の配合データに基づき作業者によって塗装された塗板の測色データ(候補色測色データ)が取得されたか否かを判断する(ステップS21)。すなわち、
図3に示すフローチャートで説明する配合データ修正処理は、
図2に示す配合データ検索処理の後に実施される。塗料配合データ提供装置10は、作業者が塗板の塗装を光学センサ21で測定することにより塗板の測色データを取得することができる。塗板の測色データが取得されていないと判断した場合(ステップS21:NO)、塗料配合データ提供装置10は、ステップS21の処理を繰り返し、測色データの取得を待機する。
【0058】
一方、塗板の測色データが取得されたと判断した場合(ステップS21:YES)、塗料配合データ提供装置10は、取得した目標色測色データと候補色測色データとの差異を算出する(ステップS22)。測色データの差異の算出は、
図2に示すステップS13の処理と同様である。
【0059】
ステップS22の処理を実行した後、塗料配合データ提供装置10は、算出された測色データとの差異が予め設定された設定値以上であるか否かを判断する(ステップS23)。ステップS23の処理における判断は、
図2に示すステップS14の処理における判断と同様である。但し、ステップS23の処理においては、差異が予め設定された設定値以上であるか否かを判断することにより、塗装に係る明らかな不具合(例えば、原色塗料の配合を間違えたり、希釈剤の分量を間違えたり、又は塗装の方法が悪かったりする作業者のミス等)を検出することが可能となる。なお、塗装に係る不具合は、塗色系等の塗料の種類によって異なる。ステップS23の処理において判断する塗装に係る不具合は、塗色系等の違いによってそれぞれ判断基準が異なる。なお、塗装に係る不具合の詳細は、
図4を用いて後述する。
【0060】
差異が予め設定された設定値以上ではないと判断した場合(ステップS23:NO)、塗料配合データ提供装置10は、ステップS21の処理で取得して候補色測色データと、
図2に示すステップS11の処理で取得した目標色測色データとの差異に基づき、ステップS13の処理で記録した候補色として出力された配合データ、又は後述するステップS25の処理で記録された配合データを修正(補正)する(ステップS24)。配合データの修正は、原色塗料の配合割合を変更することにより行う。配合データの修正は、原料塗料以外の添加剤の配合割合を変更することにより行ってもよい。なお、修正した配合データは、配合データ記憶部107に登録してもよい。修正データを登録していくことにより、配合データ記憶部107に登録された配合データの数を追加することができるので、次回に近似した目標色を検索するときの検索精度を向上させることが可能となる。
【0061】
ステップS24の処理を実行した後、塗料配合データ提供装置10は、補正結果を記録する(ステップS25)。補正結果とは、例えば、修正された新たな配合データ、修正前の配合データと修正された配合データの差分等である。ステップS25の処理は、ステップS24の処理において配合データが修正される度に実行される。すなわち、最終的に選択された配合データが記録される。これにより最終的に選択された配合データは、次回のCCSの検索対象として利用することが可能となる。
【0062】
ステップS25の処理を実行した後、塗料配合データ提供装置10は、修正した配合データを出力する(ステップS26)。作業者は、出力された配合データに基づき再度塗料を作成して塗板に塗装して、目視によって車両の塗装との一致を確認する。
【0063】
一方、ステップS23の処理において、差異が予め設定された設定値以上であると判断した場合(ステップS23:YES)、塗料配合データ提供装置10は、
図1に示すアラート報知部106によってアラート内容を作業者に報知する(ステップS27)。報知するアラートの詳細は
図4を用いて後述する。
【0064】
ステップS26の処理で出力された配合データに基づき作成された塗料で塗装された塗板と車両の塗装の一致が確認されたときには、作業者は、修正された配合データに基づき作成された塗料で車両の塗装を行う。
【0065】
一方、目視によって塗板と車両の塗装との一致が確認できない場合、ステップS21〜ステップS27の処理が繰り返されるため、測色データの差異を徐々に収束させることが可能となる。
【0066】
以上、
図3及び
図4で説明した処理によって、配合データの精度を向上させて目標色にすることが容易になるため、配合データの算出から塗板の作成までの繰り返し回数を減らして作業効率を向上させることが可能となる。
【0067】
次に、
図4を用いて、
図3に示すステップS23及びステップS27の処理において、
図1に示すアラート報知部106が報知するアラート内容を説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る塗料配合データ提供装置10から報知されるアラートの一例を示す図である。
【0068】
図4は、アラートを報知する際に参照される報知情報テーブルを示している。報知情報テーブルはアラート報知部106に含まれている。報知情報テーブルは、「塗色系」、「塗料」、「閾値」、「要因」、及び「アラート内容」の項目を有している。
【0069】
「塗色系」の項目には、シルバーメタリック、グレーメタリック、3コートパール等の塗色の系統が含まれる。塗装においては、塗色系によって発生する不具合が異なる。
図3に示すステップS23の処理においては、塗色系毎に設定値を設けて塗装に係る不具合を判断する。なお、塗色系は、例えば、測色データを取得する前に表示装置23に表示された塗色系の一覧から入力装置22により一の塗色系を選択するようにしてもよい。
【0070】
「塗料」の項目は、水性と共通に分類される。例えば、水性塗料は水性独自の不具合が発生する。「塗料」の項目においても「塗色系」の項目と同様に選択可能としてもよい。
【0071】
「閾値」の項目は、測色データの閾値が設定される、
図4は、「A」、「B」、「C」等の表示によって詳細を省略しているが、例えば、波長、反射角度及び分光反射率の組み合わせにおける閾値を設定してもよい。また、温湿度等、塗装環境の閾値を設定してもよい。
【0072】
「要因」は、塗装の不具合が発生する要因が記載されている。「要因」の項目は、「アラート内容」の項目と同様に作業者に報知するようにしてもよい。
【0073】
「アラート内容」の項目は、塗装の不具合に対する対策である。「アラート内容」の項目は、例えば、表示装置23やプリンタ25から出力されて作業者に対して不具合に対する対処法を報知する。
【0074】
例えば、塗料の塗色系がカラークリヤである場合、作業者は、車両の塗装を光学センサで測定する前に、塗料配合データ提供装置10に対して、塗色系としてカラークリヤを選択する。塗料配合データ提供装置10は、塗板の測色データを取得したときに、カラークリヤの閾値である、「L」、「M」及び「N」を判断する。例えば、閾値Lに該当する場合、塗料配合データ提供装置10は、「要因」の項目から塗装の不具合が膜厚が薄いことが要因であると判断し、「塗装回数を1回増やしてください」とのアラートメッセージを表示する。作業者は、塗装の不具合の原因が配合データの不具合であるのか塗装作業による不具合なのかを切り分けて判断することができるので、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0075】
以上、本発明の実施形態に係る塗料配合データ提供装置は、配合データ記憶部と、着色力記憶部と、測色データ取得部と、配合データ検索部と、配合データ修正部と、配合データ出力部とを備えることにより、調色精度と作業効率とを向上させることができる。
【0076】
なお、本実施形態で説明した装置を構成する機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、本実施形態の上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0077】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0078】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。