(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985298
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】極低温冷却システム
(51)【国際特許分類】
G01Q 30/10 20100101AFI20211213BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
G01Q30/10
G02B6/32
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-562248(P2018-562248)
(86)(22)【出願日】2017年5月26日
(65)【公表番号】特表2019-522788(P2019-522788A)
(43)【公表日】2019年8月15日
(86)【国際出願番号】GB2017051503
(87)【国際公開番号】WO2017203278
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2020年2月7日
(31)【優先権主張番号】1609395.7
(32)【優先日】2016年5月27日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507329985
【氏名又は名称】オックスフォード インストルメンツ ナノテクノロジー ツールス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】パットン マーク
【審査官】
佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−349459(JP,A)
【文献】
特開2014−095861(JP,A)
【文献】
実開平05−079506(JP,U)
【文献】
特開2005−309028(JP,A)
【文献】
特開平05−312563(JP,A)
【文献】
特開2004−325783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00 −37/00 、
G01Q10/00 −90/00 、
G02B 6/26 − 6/27 、 6/30 − 6/34 、
6/42 − 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ホルダとの光通信を提供するための極低温冷却システムであって、
冷却装置、及び、前記冷却装置に着脱可能に取り付け可能な試料ホルダと、
第1開口及び第1コリメーターを備える第1光学部材であって、光が前記第1開口を通過可能であり、前記第1コリメーターは、前記光が前記第1開口から放射されたときに前記光を平行にするように位置決めされている、前記第1光学部材と、
第2開口及び第2コリメーターを備える第2光学部材であって、光が前記第2開口を通過可能であり、前記第2コリメーターは、前記光が前記第2開口から放射されたときに前記光を平行にするように位置決めされている、前記第2光学部材と、を備え、
前記第1光学部材は、前記冷却装置の端部の穴によって定められ、前記第2光学部材は、前記冷却装置に取り付けられたときに前記冷却装置の前記端部と隣接する前記試料ホルダの表面の穴によって定められ、
前記試料ホルダが前記冷却装置に取り付けられたときに、前記第1光学部材と前記第2光学部材との相対位置は、前記光が前記第1コリメーター及び前記第2コリメーターを介して前記第1及び第2開口の間を通過できるようにされており、前記第1コリメーターと前記第2コリメーターとの間に物理的な間隙があり、この間隙によって前記第1光学部材と前記第2光学部材との間の光通信を可能にしている、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記システムは、約10ケルビン(K)以下の温度に前記試料ホルダの試料を冷却するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、約4ケルビン(K)以下の温度に前記試料ホルダの試料を冷却するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは、約50ミリケルビン(mK)以下の温度に前記試料ホルダの試料を冷却するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2コリメーターは、前記第2開口に対して前記第2コリメーターの遠位側から受け入れる光を前記第2開口に向かって集束させるように構成される、請求項1〜4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1コリメーターは、前記第1開口に対して前記第1コリメーターの遠位側から受け入れる光を前記第1開口に向かって集束させるように構成される、請求項1〜5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1コリメーター及び/又は前記第2コリメーターは、レンズである、請求項5及び/又は請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
各レンズは、非球面レンズである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1開口及び前記第2開口の一つ又は各々は、光ファイバの端部である、請求項1〜8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
各光ファイバは、押し込み式コネクタ又はねじ込み式コネクタによってそれぞれの光学部材に接続される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記冷却装置は、前記試料ホルダを使用中に熱的に結合可能な、希釈冷凍機、予備冷却熱質量又は極低温チャンバである、請求項1〜10の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷却システム、特に極低温冷却システムの光接続に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温冷却システムは、試料を冷却することがしばしば必要とされる。試料中の原子振動を減らすことによって、原子間力顕微鏡法(AFM)又は走査プローブ顕微鏡法(SPM)などの一つ又はそれ以上の顕微鏡検査法の形態を用いて試料を分析することが可能になる。これは、所望の温度に試料を冷却し、分析中にその温度を維持するか又は温度上昇を遅らせる希釈冷凍機などの冷却装置の使用によって達成される。
【0003】
試料を冷却装置内に保持する必要性、これによって環境温度において冷却装置内に試料を配置するのを要求することを回避するため、試料を試料ホルダ内に保持することができる。このような試料ホルダは「サンプルパック」として知られ、冷却装置に着脱可能に取り付けられる。これにより、試料を収容する試料ホルダが置かれる環境に試料ホルダを導入する前に、その環境を冷却し、システムが冷たい間に試料ホルダを交換することが可能となる。
【0004】
試料の直接的な分析が通常要求されるので、分析装置は、試料ホルダ並びに試料内に保持される必要がある。これは、分析中に装置が必要とするすべてのものが、分析中に試料ホルダ内に保持されなければならないか、分析中に試料ホルダの外部から供給されなければならないことを意味する。例えば、ケーブルを介して試料ホルダ内の装置へ電力を供給することが知られている。
【0005】
試料ホルダを着脱可能にさせるために、冷却装置のコネクタと接続する試料ホルダのコネクタがある。これにより、例えば、対応する試料ホルダのコネクタに接続する冷却装置のコネクタに電力を提供して、試料ホルダの分析装置に給電することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷却装置と試料ホルダとの間に電力と他の電気的な接続を提供することは、比較的に簡単であるが、冷却装置と試料ホルダとの間に光を通すことを可能にする接続を提供する能力はかなり難しい。光の減衰を防ぎながら、試料ホルダの着脱可能な性質を維持する必要があるので、適切な光接続を容易に確立することはできない。
【0007】
光信号が分析によって生成される場合や試料の反応を刺激するために光が必要にされる場合など、冷却装置と試料との間に光を通す必要がある場合、光ファイバ(本願明細書では「ファイバ」ともいう)が一般的に使用される。しかしながら、光ファイバ用の商業的に利用可能なコネクタは、ねじ込み式コネクタであり、ねじ込み式コネクタは、着脱可能に取り付けられる試料ホルダと互換性がない。これは、特に、試料ホルダを冷却装置に取り付ける時に温度上昇を最小限に維持する場合において、ねじ込み式コネクタを試料ホルダに接続するための適当なアクセスがないためである。
【0008】
ねじ込み式コネクタの代替は、押し込み式コネクタである。しかしながら、これは、冷却装置と試料ホルダとの間を通過する光にとって、冷却装置及び試料ホルダのファイバの間を通過する時に光が減衰しないように、各々のファイバを位置決めしなければならないので、依然として不適当である。これは、使用中に光が伝達されるファイバの端部が、互いにかなり接近しており、信号強度を維持し、一方のファイバから放射された光が対向するファイバ内に進入しないことを回避するように互いの正確なアライメントを確保している場合にだけ達成される。
【0009】
温度サイクルにより、このような接続は、温度変化がファイバの端部のアライメント及び位置決めに影響を与えるため、作り出すのが困難である。これは、このような任意の押し込み式光接続を信頼できないようにし、接続が使用に伴って劣化する原因となる。したがって、冷却装置と試料ホルダとの間に光を通すために、温度サイクル及び繰り返し使用に耐えることができる信頼性のある光接続が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面によれば、試料ホルダとの光通信を提供するための極低温冷却システムであって、冷却装置、及び、冷却装置に着脱可能に取り付け可能な試料ホルダと、第1開口及び第1コリメーターを備える第1光学部材であって、光が第1開口を通過可能であり、第1コリメーターは、光が第1開口から放射されたときに光を平行にするように位置決めされている、第1光学部材と、第2開口及び第2コリメーターを備える第2光学部材であって、光が第2開口を通過可能であり、第2コリメーターは、光が第2開口から放射されたときに光を平行にするように位置決めされている、第2光学部材と、を備え、第1光学部材が冷却装置に取り付けられ、第2光学部材が試料ホルダに取り付けられ、試料ホルダが冷却装置に取り付けられたときに、第1光学部材と第2光学部材との相対位置は、光が第1コリメーター及び第2コリメーターを介して第1及び第2開口の間を通過できるようにされており、第1コリメーターと第2コリメーターとの間に物理的な間隙があり、この間隙によって第1光学部材と第2光学部材との間の光通信を可能にしている、ことを特徴とするシステムを備えている。
【0011】
概して、冷却装置と試料ホルダとの間のファイバがアライメントし近接した独立の光接続を提供する。これは、光学部材の構成によりアライメント及び近接の要件に対する制限がより小さくなるためである。対向する光ファイバの端部の正確な位置決めにより決定される光接続のアライメント及び近接の要件に代えて、要件は冷却装置と試料ホルダとの間の物理的接続の機械的制約及び公差で制限されるだけである。これは、冷却される前に室温で装着されるのではなく、基本動作温度で冷却装置に光接続を要する試料ホルダが装着可能になるため有益である。その光接続は、信頼性があり、繰り返し使用に耐え、試料ホルダ、冷却装置及び各々に接続される様々な構成要素の間で要求される接続を簡略化する。
【0012】
追加的に、2つのコリメーターは、冷却装置から試料ホルダ、試料ホルダから冷却装置への光伝達能力、即ち、双方向光伝達能力を備えている。これは、光が試料へ進むことを可能にすると共に、光が試料又は分析装置から放射され、記録及び/又は分析するために試料ホルダから出ることを可能にするため有益である。
【0013】
「開口」との用語は、光学的開口を意図しているのに注意すべきである。このような開口は、それを通じて光伝達を可能にする、即ち、開口は光伝達に適した開口である。これは、光が通過できる光伝達領域を備える開口によって達成される。これは、物体の開口の形状でなし得る。しかしながら、光が通過できる媒体の境界の少なくとも一部又は媒体自体によって、より一般的に提供される。
【0014】
極低温冷却システムを通過する光は、照明又はデータ伝達の目的のためであってもよい。これらの目的は、光データ信号(例えば、レーザーによって提供される)によって、又は光の連続的又はパルス流れによって実現される。光データ信号を使用することにより、情報を冷却装置と試料ホルダとの間で伝達させることが可能となり、光の流れにより、例えば、光を分析し、又は、光を試料で実行される分析の一部として使用することが可能となる。さらに、「光」という用語は、可視光だけでなく、紫外(UV)光及び赤外(IR)光を含むことを意図している。
【0015】
そのシステムは、70ケルビン以下のような極低温で作動されることが意図されているが、これを超える温度でも作動させることができる。しかしながら、代表的には、システムは、試料ホルダの試料を約10ケルビン(K)以下の温度に冷却するように構成されている。これにより、システムを量子ドットや量子コンピューティングの目的で使用させることが可能になる。
【0016】
好ましくは、システムは、試料ホルダの試料を約4K以下の温度に冷却するように構成されている。これにより、冷却装置を、冷却装置の動作を簡略化するヘリウムチャンバを備えたクリオスタットとすることが可能になる。
【0017】
また、好ましくは、システムは、試料ホルダの試料を約50ミリケルビン(mK)以下の温度に冷却するように構成されている。これにより、精密原子間顕微鏡法を試料ホルダ内に保持された試料に対して実施することが可能になる。冷却装置は、これより低い温度に冷却可能にしてもよい。代表的に、冷却装置は、約10mK以下の温度に冷却するように構成されている。
【0018】
第2コリメーターは、光を平行にするだけでよいが、代表的に、第2コリメーターは、第2開口に対して第2コリメーターの遠位側から受け入れる光を第2開口に向かって集束するように構成される。これにより、第1開口から第2開口へ伝達される光の改善された信号強度を提供し、第2開口で受け入れる光の信号対雑音の比を改善し、信号損失の可能性を低減することが提供される。追加的に、万が一各光学部材のコリメーターのミスアライメントがある場合、第2コリメーターは受け入れた光を第2開口に向かって集束し、それによって、例えミスアライメントがあっても、光接続を維持する。
【0019】
第2コリメーターと同様に、第1コリメーターは光を平行にするだけでよいし、代表的に、第1コリメーターは、第1開口に対して第1コリメーターの遠位側から受け入れる光を第1開口に向かって集束するように構成されている。第2コリメーターが光を集束する能力と同様に、これにより、第2開口から第1開口へ伝達される光の改善された信号強度を提供し、第1開口で受け入れる光の信号対雑音の比を改善し、信号損失の可能性を低減することが提供される。第2コリメーターと同様に、光学部材のミスアライメントを軽減する能力を備え、その結果、ミスアライメントがある場合、第1コリメーターによって受け入れた光は第1開口に向かって集束され、光接続を維持する。
【0020】
各コリメーターは、光を平行にする能力がある導波管又は任意の要素であってもよい。代表的に、第1コリメーター及び/又は第2コリメーターは、レンズである。これは、レンズである各コリメーターについて、光がその方向に沿って平行にされる方向と同方向のコリメーターの厚さが、最小限に保たれるため有益である。これは、それぞれの光学部材に要求される空間の量を減少させる。追加的に、これにより、所望のコリメーションを達成する簡単な構成要素を使用することが可能となり、それによってシステムの構成を簡略化する。
【0021】
各レンズは、「シンプル」レンズとしても知られている標準対称レンズにすることができる。しかしながら、代表的には、各レンズは非対称レンズである。これにより、シンプルレンズと比較して非点収差のような球面収差と光学収差が低減される。追加的に、これにより、単一レンズを各コリメーターに使用することが可能になり、レンズに要求される空間が減少される。
【0022】
各開口は、導波管又は光トランシーバ、光ソース又は光レシーバーの開放端であってもよい。代表的に、第1開口及び第2開口の一つ又は各々は、光ファイバの端部である。これにより、試料ホルダ及び/又は冷却装置を通る光の伝達において、より大きな柔軟性が提供される。これは、非ファイバ導波管又はミラーが、振動に対してより敏感であり、極低温冷却システムの他の構成要素に収容するのがより困難であるためである。
【0023】
各光ファイバは、恒久的でも一時的でも任意のコネクタによってそれぞれ光学部材に接続されればよい。代表的に、各光ファイバは、押し込み式コネクタ又はねじ込み式コネクタによって、それぞれ光学部材に接続される。これにより、各光ファイバと着脱可能なそれぞれの光学部材との間に簡単な接続を提供し、それによりファイバを取り外し、簡単に再び取り付け及び/交換することが可能になる。光学部材の他の構成要素によって、冷却装置から試料ホルダを取り外す時にそれらの接続を分離することは通常必要ないため、これらの接続の欠点の重大さが低減される。
【0024】
任意の適切な低温源を冷却装置に使用することができるが、代表的に、冷却装置は、使用中に試料ホルダを熱的に結合することができる希釈冷凍機、予備冷却熱質量または極低温チャンバである。これらにより、長時間にわたって動かされる信頼性のある冷却が提供される。パルスチューブ冷凍機(PTR)のような冷凍機も適切な冷却装置である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】冷却装置と試料ホルダとの間の第1例の光接続の断面図である。
【
図2】非装着形態における冷却装置及び試料ホルダの概略図である。
【
図3】冷却装置に装着した試料ホルダを備えた
図2の冷却装置及び試料ホルダの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
極低温冷却システムの例は、添付図面を参照して以下に詳細に説明される。
【0027】
ここで、取り付けられたときの試料ホルダと冷却装置との相対位置の説明と共に、極低温冷却システムの2つの例について説明する。極低温冷却システムが使用中に配置されるクライオスタットの簡単な説明も提供される。
【0028】
ここで、
図1を参照すると、第1例の極低温冷却システムは、1で概ね示されている。システムは、試料ホルダ40が着脱可能に取り付けられる冷却装置10を備える。
【0029】
冷却装置10は、第1光学部材12を備え、試料ホルダは、第2光学部材42を備える。各光学部材は、冷却装置の端部16、及び、冷却装置に取り付けられたときに冷却装置の端部に隣接する試料ホルダの表面46に、ブラインドボアであるそれぞれの穴14、44によって定められている。
図3にも示されているように、試料ホルダが冷却装置に取り付けられたとき、光学部材がほぼアライメントするように、試料ホルダの穴が冷却装置の穴と一列に並ぶ。
【0030】
第1光学部材12の穴14によって形成されているキャビティ内に、光ファイバ18の端部がある。光ファイバ先端部20(「光ファイバの端部」又は「ファイバ端部」ともいう)は、光を伝達させることが可能な開口を提供する。この例のシステムでは、開口を提供するファイバ先端部は、概して平坦である。別の例では、ファイバ先端部は、ドーム状にすることができる。ドーム状のファイバ先端部は、反射を減少させるが、システムが作動できる帯域幅を制限する。ドーム状のファイバ先端部が使用される場合、ファイバ先端部のレンズの効果は、システムの他の光学的特徴と共に注意深く検討される必要がある。
【0031】
ファイバ18は、冷却装置の設定中に接続されるねじ込み式コネクタ(図示せず)によって第1光学部材に固定される。これは特定試料の分析の準備において接続されることができ、又は、その代わりに操作又は出荷の前に冷却装置の初期設定中に接続されることもできる。
【0032】
第1光学部材12は、コリメーターも備える。コリメーターは、
図1に示されている例では、非球面レンズ22であり、約10ミリメートル(mm)以下の直径を有する。通常、これは約6mm〜7mmの直径である。
【0033】
非球面レンズ22は、光ファイバ先端部20から伝達される光を捕らえるように位置決めされ、ファイバ先端部から受け入れる光を平行にするように構成される。
図1の光線30によって示されるように、ファイバ先端部から伝達された光は発散する。この光は、レンズによって捕らえられて、平行にされる。
【0034】
このプロセスは逆にも機能し、レンズ22は、レンズの反対側から受け入れた光をファイバ先端部20へ集束するように構成されている。したがって、レンズの反対側(ファイバから「レンズの遠位側」ともいう)からファイバ先端部へ向けてレンズによって受け入れられた平行な光は、ファイバ先端部に向って集束される。光は、次いでファイバ内に進入し、先端部から離れるように伝達される。光の双方向の移動の能力は、
図1の光線30に示される矢印によって示されている。
【0035】
ファイバ先端部20とレンズ22は、共通の軸(図示せず)に沿ってほぼ一直線に並ぶように位置決めされている。レンズとファイバ先端部の分離が、アライメントを正確でなくほぼ正確であるように十分な許容誤差を与えるので、アライメントは正確である必要がない。ファイバ先端部から放射される光がレンズによって捕捉可能であり、レンズによって集束される光がファイバ先端部によって捕捉可能である限りにおいて、アライメントは十分である。これは、本例では、ファイバ先端部とレンズの最も近い点との間の約4mmから約5mmの間隙を有することによって達成される。この間隙は、レンズの動作距離及び有効焦点距離(「EFL」として知れらている)によって、決定される。
【0036】
使用中に、ファイバ先端部から放射された光が平行にされビームとなる。平行にされたビームは、次いで、試料ホルダの第2光学部材42内に入る。
【0037】
図1に示す例では、試料ホルダ40の第2光学部材42は、冷却装置10の第1光学部材12と同じような相対的な光学配置を有する。そうであるので、第2光学部材の詳細は、以下にさらに詳細に説明されるが、第2光学部材に入る光の平行なビームは、第2光学部材の非球面レンズに入射する。このレンズは、ファイバ先端部に向かって平行な光ビームを集束させ、ファイバ先端部に入射する光は、ファイバを経て試料ホルダ内に入ることができる。したがって、これは、冷却装置から試料ホルダへの光伝達の能力を与える。追加的に、
図1に示す例では、第2光学部材と第1光学部材の相対配置が同じであるため、そのプロセスも逆方向で同様に機能する。したがって、試料ホルダから冷却装置への光伝達の能力が提供される。
【0038】
より詳細には、
図1に示されるように、第2光学部材42は、光ファイバ48を備え、その端部が第2光学部材の穴44によって形成されるキャビティに配置される。再び、光ファイバは、光を通して伝達できる開口を提供する先端部50を備える。
【0039】
第1光学部材10の光ファイバ18と同様に、第2光学部材42のファイバ48は、ねじ込み式コネクタ(図示せず)によって、第2光学部材に固定される。これは、要すれば試料ホルダ40の準備中に接続され、又は、試料ホルダの製造中に接続される。
【0040】
また、第2光学部材42は、
図1に示される例では、非球面レンズ52によって提供されるコリメーターを備える。これは、第1光学部材12の非球面レンズ22と同一のレンズであるので、同一の直径を有する。
【0041】
第1光学部材12と同様に、第2光学部材42の非球形レンズ52は、第2光学部材内にファイバ先端部50から伝達された光が捕捉されるように位置決めされ、ファイバ先端部から受け入れた光を平行にするように構成されている。これは、
図1において光線30によって示され、光線はファーバ先端部50から伝達され、発散する。この光は、次いでレンズによって捕捉され、平行にされる。
【0042】
再び、レンズ52は、レンズの反対側から受け入れた光をファイバ先端部50へ向けて集束するように構成されているため、このプロセスは逆方向にも機能する。したがって、レンズの反対側(ファイバから「レンズの遠位側」ともいう)からファイバ先端部へ向けてレンズによって受け入れられた平行な光は、ファイバ先端部に向って集束される。この光は、ファイバ内に進入し、先端部から離れるように伝達される。したがって、これは、第1光学部材12で可能であるのと同様に、光の双方向の移動のための同じ能力を提供し、
図1において光線30で示された矢印によって示されている。
【0043】
第1光学部材12のファイバ先端部20及びレンズ22と同様に、第2光学部材42のファイバ先端部50及びレンズ52は、共通の軸(図示せず)に沿ってほぼ一直線に並ぶように位置決めされる。第1光学部材のファイバ先端部及びレンズがほぼアライメントされている上述と同じ理由で、第2光学部材のレンズとファイバ先端部との間が同じようにほぼアライメントされることが必要とされる。
【0044】
上述したように、
図1に示すように、試料ホルダ40が冷却装置10に取り付けられたとき、第1光学部材12のコリメーター22と第2光学部材42のコリメーター52との間を光が通過できる。これにより、冷却装置から試料ホルダへ、試料ホルダから冷却装置へ光が伝達することが可能になる。したがって、試料ホルダと冷却装置との間で双方向の光通信が可能になる。
【0045】
それぞれの遠位側からそれぞれのファイバ先端部20、40へ入射する光を集束させる各コリメーター22、52の能力により、2つの光学部材12、42間のアライメントは再びおおよそでよい。光が必要とされる目的のために足りる光信号強度のために必要なだけのアライメントで十分である。これは、一方のファイバから他方へ光を通過させながら、各コリメーターにより発生可能な平行な光ビームが不正確に重なり合うことを許容する。
【0046】
ここで
図2及び
図3を参照すると、これらの図は、それぞれ非装着形態と装着形態における冷却装置10及び試料ホルダ40を示している。これらの図は、第1例の冷却装置及び試料ホルダを示している。
【0047】
図2及び
図3の各々は、冷却装置10の第1光学部材12と試料ホルダ40の第2光学部材42を示している。上記した通り、各光学部材は穴14、44を備える。
図2で見ることができるように、各穴は、冷却装置の端部16及び試料ホルダの表面46にそれぞれ開口24、54を形成し、冷却装置に取り付けられたときに試料ホルダの表面46が冷却装置の端部に隣接する。
【0048】
図2及び
図3は、第1光学部材12に接続された光ファイバ18と第2光学部材42に接続された光ファイバ48を示している。これらのファイバの各々の反対の端部は示されていない。しかしながら、第1光学部材に接続された光ファイバは、外部光源及び/又は外部処理装置に接続され、第2光学部材に接続された光ファイバは、試料ホルダ内の試料及び/又は分析装置に接続される。各外部要素は、極低温冷却システムが使用中であるとき、室温である。
【0049】
図3に示すように、試料ホルダ40が冷却装置10に取り付けられたとき、第1光学部材12の穴14,第2光学部材42の穴44を提供する開口24,54が一直線に並ぶ。これより、各光学部材の光学要素(即ち、光ファイバ先端部とコリメーター)の間を光が通過できるように光学素子が配置されるので、冷却装置と試料ホルダとの間を光が通過することが可能になる。
【0050】
使用中に、冷却装置10に取り付けられたとき、試料ホルダ40はしっかりと冷却装置に接続される。また、試料ホルダに電力及び他の電気的信号(制御信号など)を供給し、信号を試料ホルダから冷却装置へ通すための押し込み式コネクタにより提供される他の接続(図示せず)もある。コネクタによって、全てのコネクタが一直線に並ぶときだけ、試料ホルダを冷却装置に適切に装着可能である。これが2つの光学部材12、42を一直線に並んでいない状態にする可能性を回避する。他のコネクタが設けられてない場合、光学部材が一直線に並んでいない状態となることを回避するため、他の形態のガイドを設けることができる。
【0051】
したがって、本例では、冷却装置と試料ホルダとの間に非接触の光接続が設けられている。これは、ファイバの正確なアライメントを必要とすることなく、2つの構成要素の間で光を伝達させることを可能にする。その理由は、1つの構成要素から又はこれを介して、光を放射、発散する関連のファイバの先端部に光を伝達することが可能であり、局所のコリメーターにより光を平行なビームにすることが可能であるからである。平行な光は、次いで、存在する場合、他の構成要素のコリメーターにより集束され、その構成要素のファイバ内に進入し、それによって、良好で信頼性のある光伝達のためにファイバを正確に一直線に並ばせるという要求が取り除かれる。
【0052】
上記例では、冷却装置は希釈冷凍機である。使用中に、これは、希釈冷凍機と配置環境を遮断して冷却するために使用されるクリオスタット(図示せず)内に配置されている。クリオスタットは、良く知られており、低温チャンバと、及び/又は、ターゲット領域に隔離と冷却を提供する放射線/蒸気シールドとの組み合わせを有している。この場合、希釈冷凍機の少なくとも一部が、ターゲット領域内に配置される。これは、試料ホルダが、希釈冷凍機に取り付けられているときに、配置される領域でもある。
【0053】
使用中に、冷却装置と試料との間の光通信が多くの用途に使用される。そのような用途が、監視される試料の原子上の走査プローブ顕微鏡法(SPM)チップの移動を可能にする。これは、外部光源から冷却装置を介して、冷却装置に取り付けられる試料ホルダの試料に伝達される光によって達成される。SPMチップを照らすように光が誘導され、SPMチップは伝達経路に沿って光を検出器へ戻すように反射する。反射された光は、チップが動くにつれて変調され、この変調は、試料表面の画像を形成することを可能にするように分析される。この用途は、
図1に示された例による極低温冷却システムで利用される。
【0054】
極低温冷却システムが使用される更なる用途は、特定の場所で照射される半導体などの試料である。この方法では、ある所定のエネルギーの光子を、試料の特定位置に向けることができる。光子はバルク材料を励起し、電気信号が生成され、これは電気的プローブによって試料ホルダから読み取ることができる。これは、半導体のヘテロ構造を評価するために使用可能であり、
図1に示す例に係る極低温冷却システムを利用する。別の用途として、電気信号が半導体に印加され、光子を放出させる。これらは、次いで、試料ホルダの光学部材を通って導かれ、光学部材のコリメーターから冷却装置の光学部材のコリメーターへ光子を伝達する。これは、次いで、光子をファイバに向けて導き、光子を、冷却装置内のファイバに伝達させ、前記光子の特性を決定するため分析用の外部室温位置に伝達させることを可能にする。