(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985302
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】軟質の使い捨て容器内で液体同士を混合するか、液体とガスとを混合するか、または液体と固形物とを混合するためのバイブロミキサ
(51)【国際特許分類】
B01F 11/00 20060101AFI20211213BHJP
B01F 15/00 20060101ALI20211213BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20211213BHJP
B01F 3/04 20060101ALN20211213BHJP
B01F 3/12 20060101ALN20211213BHJP
B01F 3/08 20060101ALN20211213BHJP
【FI】
B01F11/00 A
B01F15/00 C
C12M1/02 A
!B01F3/04 Z
!B01F3/12
!B01F3/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-565804(P2018-565804)
(86)(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公表番号】特表2019-521845(P2019-521845A)
(43)【公表日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】CH2017000055
(87)【国際公開番号】WO2017214739
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2020年3月5日
(31)【優先権主張番号】00776/16
(32)【優先日】2016年6月17日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】591063176
【氏名又は名称】デー エル エム ドクトル ミュラー アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】DRM Dr. Mueller AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン マーティン ヴェター
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ミュラー
【審査官】
中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02780444(US,A)
【文献】
実開昭60−164555(JP,U)
【文献】
国際公開第2008/144089(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101715363(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0027912(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0249033(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 3/04−15/00
C12M 1/02、06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動する駆動軸(2)を備えた、液体同士を混合するか、液体とガスとを混合するか、または液体と固形物とを混合するためのバイブロミキサであって、軟質のプラスチックから成る容器(6)と、下側の端部にミキサプレート(9)が配置された駆動軸(2)とを有しており、前記容器(6)は、支持容器(5)内で支持されていることが規定されており、前記容器(6)はその内部に、上側の領域では該容器(6)の壁と密に結合された内側チューブ(7)であって、前記ミキサプレート(9)に接続的に結合されて前記駆動軸(2)を取り囲む軟質の内側チューブ(7)を備えている、バイブロミキサにおいて、
前記バイブロミキサは、プラスチックまたは鋼から成る取外し可能な支持管(12)を有しており、前記内側チューブ(7)は、運転中、前記支持管(12)によって、振動する前記駆動軸(2)から保護されていることを特徴とする、バイブロミキサ。
【請求項2】
前記駆動軸(2)はその上側の部分において、解離可能なクランプ結合部(3)によって振動駆動装置(1)に結合されていることを特徴とする、請求項1記載のバイブロミキサ。
【請求項3】
前記容器(6)と前記内側チューブ(7)との間の結合部は、プラスチックから成るフランジ(8)を介して溶着、接着またはクランプされていることを特徴とする、請求項1記載のバイブロミキサ。
【請求項4】
前記内側チューブ(7)と、プラスチックから成る前記ミキサプレート(9)との間の結合部は、溶着、接着またはクランプされていることを特徴とする、請求項1記載のバイブロミキサ。
【請求項5】
前記駆動軸(2)は、プラスチックから成る前記ミキサプレート(9)を支持していて、該ミキサプレート(9)に解離可能に結合されていることを特徴とする、請求項1記載のバイブロミキサ。
【請求項6】
前記駆動軸(2)は、前記内側チューブ(7)および前記容器(6)の外側から工具または機構(13)を用いて前記ミキサプレート(9)に結合させられ、再び解離させられることを特徴とする、請求項5記載のバイブロミキサ。
【請求項7】
前記内側チューブ(7)および前記容器(6)の上側の端部が、前記フランジ(8)によって挟持装置(11)に解離可能に結合されていることを特徴とする、請求項3記載のバイブロミキサ。
【請求項8】
前記振動駆動装置(1)および前記駆動軸(2)は下方から据付け可能であり、内側チューブ(7)と駆動軸(2)とを備えた前記ミキサプレート(9)も同じく下方から鏡像的な配置形態で挟持可能であることを特徴とする、請求項2記載のバイブロミキサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体同士を混合するか、液体とガスとを混合するか、または液体と固形物とを混合するためのバイブロミキサ(Vibromischer)であって、軟質のプラスチックから成る容器と、下側の端部にミキサプレートが配置された駆動軸とから成っており、容器が、支持容器内に支持されている、バイブロミキサに関する。
【0002】
液体同士を混合するためのこのようなバイブロミキサは、スイス国特許発明第289065号明細書(CH 289065)に記載されている。駆動装置は、一般的に、空圧式または電磁式である。50〜60Hzの鉛直方向の振動が撹拌器に伝達される。一般的に、電源電流によって電磁石が作動させられる。この電磁石は交番磁界を鉛直方向で発生させ、ひいては、磁化可能な鋼製プレートを鉛直方向で吸引する。この運動時に、鋼製プレートに組み付けられたばねが圧縮される。磁界の交番時には、ばねに蓄えられたエネルギが、鋼製プレートを当初位置に押し戻す。鋼製プレートはN極磁界でもS極磁界でも吸引されるので、振動が交流の振動に比べて二倍になる。つまり、50Hzの交流が、混合機構の100Hzの振動を電磁石に発生させる。ミキサプレートに所定の角度で配置された複数の円錐部によって、短い混合時間で迅速な均質化を可能にする、軸方向の循環を伴う均一の混合フィールドが発生させられる。公知のバイブロミキサは、混合すべき媒体に対する全ての接触面が鋼またはこれに類するものから成っていて、ミキサが、たいてい、特殊鋼製容器内で運転されるという欠点を有している。これによって、1回の製品交換後に器具の効果的な洗浄および滅菌が必要となるかまたは不可能になってしまう。特にバイオ医薬品産業では、軟質のプラスチックから成る、いわゆる「使い捨て容器」に需要がある。なぜならば、この使い捨て容器は、手間のかかる洗浄を必要とせず、使用後に廃棄処分されるかもしくは再生利用され、ひいては、フレキシブルで迅速な製品交換を低い投資コストで可能にするからである。
【0003】
独国特許出願公開第102006022914号明細書(DE 102006022914)には、回転型の混合装置を備えた使い捨て混合リアクタが記載されている。この使い捨て混合リアクタの顕著な欠点は、回転シール要素に課せられる複雑な要求ならびに撹拌機構の大きな寸法である。このことは、特に製造コストならびに貯蔵・輸送コストに関する欠点を伴う。さらに、回転機構により発生させられる、高い剪断力と不均質な混合分布とを有する混合フィールドが、特にバイオ医薬品用途において欠点をもたらす。
【0004】
独国特許出願公開第102006018824号明細書(DE 102006018824)には、別のアプローチが示されている。同明細書では、付加的な撹拌機構なしで使い捨て容器全体を揺動しかつ旋回させることによって、容器内部で混合が実施される。しかしながら、まさに体積がより大きい場合に達成可能となる均質性および混合の質が、たいていの用途に対して十分であるとはいえない。
【0005】
欧州特許出願公開第0653960号明細書(EP 0653960)では、使い捨て容器の内部の底付近で磁気撹拌器によって混合を実施することが提案されている。同明細書でも、局所的にしか十分な混合の質を達成することができず、したがって、大きな容器容積には適用することができない。磁気撹拌器の更なる欠点は支承部の寿命である。さらに、廃棄処分または再生利用よりも前に手間をかけて取り出さなければならない非プラスチック材料が使い捨てシステムに存在している。
【0006】
独国実用新案第202008016498号明細書(DE 202008016498U)には、軟質の容器壁と、容器内室内の中空のミキサ軸とを備えた容器が記載されている。ミキサ軸は容器壁を通してガイドされていて、ミキサに連通接続されている。中空のミキサ軸は、外部から押入れ可能な流動性の媒体の供給路を備えて安定化可能に形成される。このことは、ミキサ軸の、容器内部に突出した部分が折畳み可能であり、容器を折り畳んで、小さな包装サイズにすることができる意味で、公知の容器の改善を可能にしている。ミキサからミキサプレート、最終的には、混合すべき媒体への混合エネルギの伝達の効率は、ミキサ軸の安定性に大幅に左右される。ミキサ軸を安定化させるためには、流動性の媒体の付加が必要となる。ガスの付加時に安定化チャンバを十分に形成するためには、安定化チャンバおよび/または安全弁に使用される材料の高い引張り強さを前提とした高い圧力が必要となる。安定化チャンバを形成するために流動性のかつ硬化可能な媒体を使用する際には、容器の使用後に、膨張した媒体の除去が制約されてのみ可能となり、再利用することができず、使い捨て容器と一緒に廃棄処分されなければならない。
【0007】
独国実用新案第202007005400号明細書(DE 202007005400U U1)には、軟質の容器壁を備えた容器が記載されている。この容器は、液状の媒体を十分に混合するために、支持容器内に使用される。側方の支持面は、混合工程をアシストする、側方の容器壁を成形する少なくとも1つのバッフルを有している。中実のプラスチックから成るミキサ軸は、容器の外側の混合駆動装置に結合されている。ミキサ軸の端部には、プラスチックから成る混合要素が配置されている。この混合要素は振動ミキサ要素であってもよい。しかしながら、同明細書では、ミキサ軸が混合要素にどのような形式で結合されているのか、また、この結合部が永久なものであるのか、それとも、容器の外側から係止可能かつ/または解離可能であるのかについての説明がなされていない。
【0008】
米国特許第8342737号明細書(US 8342737 B2)にも、軟質の使い捨て容器が記載されている。この使い捨て容器では、上側の容器壁を通して、安定した中空の駆動軸がガイドされていて、軟質の容器壁に密に結合されている。駆動軸は、容器の外側では振動駆動装置に結合されていて、容器の内側では、円錐形の複数の孔を有する少なくとも1つのミキサプレートに結合されている。ミキサ軸は、軟質の容器に解離不能に結合されていて、したがって、使用後に多大な手間をかけてのみ再び有効にすることができ、再度使用することができる。さらに、容器内での開放した中空管の使用は、容器の無菌封止を困難にしてしまう。
【0009】
本発明の課題は、前述した欠点を排除して、高い混合効率と混合の質とを有する、撹拌容器もしくは混合容器が使い捨て使用される簡略化されたバイブロミキサを有する装置を提供することである。これは、特に医薬品産業や生物学的な用途、例えばバイオリアクタ内での微生物による発酵法、培養といった生物学的な用途、また、一般的に高いプロセスフレキシビリティで高い混合効率と混合の質とに需要がある使用領域において薬品を準備する際に非常に有益な利点を有している。
【0010】
この課題は、本発明によれば、容器がその内部に、上側の領域では容器の壁と密にされた、ミキサプレートに接続的(schluessig)に結合されて駆動軸を取り囲む軟質の内側チューブを備えていることによって解決される。この配置形態によって、中実の駆動軸をミキサプレートに導入し、これに解離可能に結合し、別の使い捨て容器に対して再利用することが可能となる。駆動軸は、混合すべき媒体に接触しないので、駆動軸は、選択的に、中実のプラスチックから製造されていてもよいし、中実の鋼から製造されていてもよい。後者は、より良好な機械的な安定性によって、十分に大きな混合プロセス(Mischeintrag)を可能にする。プラスチックから成る膨張する中実の構成部材の節約によって、無菌の使い捨て容器がコンパクトに折畳み可能となり、貯蔵可能となり、製造の点で廉価となる。使い捨て容器は、媒体に接触する全ての接触面においてバイオ医薬品プロセスに対して相容性の軟質のプラスチックから成っていて、したがって、数多くの用途に対して使用可能となる。容器が支持容器内に支持されていると特に有利である。この支持容器は、使い捨て容器のより大きな容積にも所要の安定性を与える。容器が、軟質の内側チューブに結合されていて、上側の領域では容器の壁に密に結合されていて、下側の領域ではミキサプレートに接続的に結合されていると好適である。これは、ミキサの内側領域全体が気密封止されており、漏れが生じず、混合すべき媒体が汚染され得ないという利点を有している。また、内側の接触面全て、特にミキサプレートが、プロセス適合性で耐薬品性のプラスチックから成っていても有利であり、これによって、汚染を減少させることができる。駆動軸が、その上側の部分では、振動駆動装置に解離可能に結合されていて、下側の領域では、プラスチックから成るミキサプレートに解離可能に結合されていると有利である。これによって、使用後の軸の取外しが可能となり、したがって、使い捨て容器の迅速な交換ならびに廃棄処分体積および廃棄処分コストの低減が可能となる。また、支持容器に対する容器の固定も簡単に係止かつ解離することができる。このことも、使い捨て混合システムの、迅速で使用者にとって容易な取外しおよび交換をアシストする。プラスチック同士の間の全ての結合部は、密に溶着または接着されている。このことは、漏れおよび/または汚染のリスクを減少させる。運転中、内側チューブは、プラスチックまたは鋼から成る取外し可能な支持管を備えている。この支持管は内側チューブを、振動する駆動軸から保護している。このことは、軟質のプラスチックに過負荷がかけられることはあり得ないという利点を有している。
【0011】
別の構成では、振動駆動装置と駆動軸とを下方から据え付けることができ、ミキサプレートも同じく下方から挟持可能となる。このことは、軸長さが短縮され、したがって、側方の流れを軸によってより良好に受け止めることができ、負荷の低減によって、バイブロミキサの所要の駆動出力が減少させられるという利点を有している。本発明を図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】使い捨て容器を備えた本発明に係るバイブロミキサの縦断面図である。
【
図2】ミキサプレートに対する解離可能な結合部の詳細な縦断面図である。
【0013】
図1には、符号1で振動駆動装置が示してある。この振動駆動装置1には、公知の形式でクランプ結合部3を介して駆動軸2が結合されていて、該駆動軸2はセンタリング機構4によって支持容器5に取り付けられている。この取付け機構4(例えば鋼ばね、テンションコードまたはエラストマー製のダイヤフラムから成る)によって、支持容器4の長手方向軸線に沿った軸2のガイドが可能となる。長手方向軸線、即ち鉛直方向での振動運動は妨害されない。軟質のプラスチックから成る壁を備えた容器(使い捨て容器)6が、軟質のプラスチックから成る内側チューブ7に結合されていて、この場合、容器壁において、硬質のプラスチックから成るフランジ8によって内側チューブ7に密に結合されており、内側チューブ7は硬質のプラスチックから成るミキサプレート9に密に結合されている。容器6は、混合すべき媒体10で満たされていて、内側チューブ7を介して支持容器5によって支持され、形状保持され、この場合、上側の領域に設けられたフランジ8において挟持装置11によって支持容器5に解離可能に固定される。内側チューブ7を通して、プラスチックまたは金属から成る中空の支持管12が導入され、同じく挟持装置11に固定される。いま、駆動軸2も同様に支持管12内に導入することができ、解離可能な結合部13によってミキサプレート9に結合することができる。
【0014】
図2には、ミキサプレート9と駆動軸2との間の結合部が示してある。中空の駆動軸2と、突き体または引き体14(以下、プランジャと呼ぶ)と、複数のクランプ体15とから成る本発明による結合機構は、上方から内側チューブ7を通してミキサプレート9内に導入される。組込み時により大きな負荷が軟質のプラスチックにかかることは避けたいので、このことは、摩擦なしに行われることが望ましい。駆動軸2をミキサプレート9に固定するためには、クランプ体15が拡開され、ミキサプレート9の内側溝内に押圧される。このためには、内側チューブ7の外側から、最良の事例では、容器6の上側から中空の駆動軸2を通してクランプ体15を拡開して固定することを可能にする機構が使用される。クランプ体15の拡開はプランジャ14によって行われる。クランプ体15の係止および固定のために、2つの変化形態が規定されている:(A)プランジャ14が延長部を備えていて、この延長部が中空の駆動軸2を通してガイドされて、内側チューブ7の外側の上側の端部において、例えばねじ山または螺合部によって固定される。(B)プランジャ14が、中空の駆動軸2の内側の下側の領域にねじ山または螺合部を備えていて、内側チューブ7の上側から中空の駆動軸2を通して、取外し可能な工具(図示せず)を用いて係止される。両変化形態(AおよびB)では、プランジャ14を同一の形式で再び解離することもできる。クランプ体15と、ミキサプレート9の内側ジオメトリとの選択された角度によって、プランジャ14を緩めた後、結合部の妨害なしの解離が可能となる。内側チューブ7と、駆動軸2と、支持管12とに対して選択された長さ寸法は、支持管12とミキサプレート9との間に直接的な接触がないように選択されている。通常運転では、ミキサプレート9が、振動駆動装置1と結合された駆動軸2とにより駆動されて、2〜5mmの振幅で振動する。ただし、支持管12は支持容器5に固定されていて、アクティブな運動なしに保たれる。したがって、振動運動が、ミキサプレート9の近くの内側チューブ7によって吸収される。選択的には、内側チューブ7が、エラストマーから成る減衰材料16または発泡プラスチックによって支持されてよい。支持管12の機能は、内側チューブ7にかかる混合すべき媒体10の圧力を受け止め、軟質の内側チューブ7と駆動軸2との接触を阻止することにあり、減衰材料16の機能はミキサプレート9と支持管12との接触を阻止することにある。