(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985303
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ミクロフィブリル化フィルム
(51)【国際特許分類】
D21H 11/18 20060101AFI20211213BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20211213BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20211213BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20211213BHJP
D21H 17/42 20060101ALI20211213BHJP
D21H 27/10 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
D21H11/18
B32B27/10
B65D65/02 Z
B65D65/40 D
D21H17/42
D21H27/10
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-567185(P2018-567185)
(86)(22)【出願日】2017年6月20日
(65)【公表番号】特表2019-520490(P2019-520490A)
(43)【公表日】2019年7月18日
(86)【国際出願番号】IB2017053642
(87)【国際公開番号】WO2017221137
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2020年5月20日
(31)【優先権主張番号】1650900-2
(32)【優先日】2016年6月22日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク、カイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン、イスト
(72)【発明者】
【氏名】サウッコネン、エサ
【審査官】
川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−041489(JP,A)
【文献】
特表2011−530021(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/192634(WO,A1)
【文献】
特開2009−203561(JP,A)
【文献】
特開2016−000526(JP,A)
【文献】
特表2018−517074(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/147295(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第103025956(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0080156(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/18
B32B 27/10
B65D 65/02
B65D 65/40
D21H 17/42
D21H 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状酸素バリアフィルムを製造する方法であって、
i.少なくとも50重量%の量の、第1のミクロフィブリル化セルロース(MFC)、
ii.少なくとも5重量%の量の、>0.8mmの加重繊維長を有する強化繊維、
iii.形成助剤を含む懸濁液、
を提供する工程であって、ここで全てのパーセンテージが前記懸濁液の総固形分に基づいて計算されている工程、
前記懸濁液を混合して混合物を形成する工程、
前記混合物から繊維状ウェブを形成する工程、
前記繊維状ウェブを脱水及び/又は乾燥して、40g/m2未満の坪量、0.45g0.5/m未満の比形成数、及び、ASTM D 3985−05に準拠して50%の相対湿度で測定するときの50%相対湿度での24時間あたり100ml/m2未満の酸素透過率(OTR)値を有するフィルムを形成する工程、
を含み、
前記形成助剤は、アニオン性高分子電解質及び第1のMFCよりも高いSR値を有する第2のより微細なMFCからなる群から選択される、
上記方法。
【請求項2】
第1のMFCが、少なくとも85、好ましくは少なくとも90のSR値を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
MFCが、軟材繊維、好ましくはマツ繊維から形成されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
強化繊維が、50未満、好ましくは40未満のSR値を示す、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
強化繊維が硬材クラフト繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
形成助剤及び前記強化繊維を第1のMFCと混合する前に、前記形成助剤を前記強化繊維に加える、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
形成助剤が、前記第1のMFCへ、その形成時に添加される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
強化繊維が、前記懸濁液に添加される前に機械的に処理されている、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
強化繊維が、前記懸濁液に添加される前に化学処理されている、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
強化繊維が未乾燥繊維である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
形成助剤がAPAMであり、このAPAMが、ウェブ1メトリックトンあたり0.1〜5kg、好ましくは0.1〜1kgの範囲内のウェブ中のAPAM含有量を生じる量で懸濁液中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記形成助剤が第2のより微細なMFCであり、この第2のより微細なMFCが、ウェブ1メトリックトンあたり20〜100kg、好ましくは30〜80kgの範囲内のウェブ中の第2のより微細なMFC含有量を生じる量で懸濁液中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第2のより微細なMFCが、前記第1のMFCよりも高いSR値及び/又は粘度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1のMFCが4000cP未満の粘度を有し、前記第2のMFCが4000cP超の粘度を有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
第2のより微細なMFCの繊維が、前記第1のMFCよりも小さい加重平均長を有する、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
懸濁液混合物を多孔質ワイヤ上に適用することによってウェブを形成する工程、前記ウェブを脱水する工程、前記ウェブを乾燥する工程、及び前記ウェブをカレンダー加工して前記フィルムを形成する工程をさらに含む、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
形成されたフィルム上にポリマー層、好ましくはポリエチレン層を適用する工程をさらに含む、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
少なくとも50重量%の量の第1のミクロフィブリル化セルロース(MFC)、
少なくとも5重量%の量の0.8mmを超える長さを有する強化繊維、
形成助剤
を含む、第1の層を少なくとも含む繊維ベース酸素バリアフィルムであって、
前記フィルムが、40g/m2未満の坪量、0.45g0.5/m未満の比形成数、及びASTM D 3985−05に準拠して50%の相対湿度で測定するときの50%相対湿度での24時間あたり100ml/m2未満の酸素透過率(OTR)値を示し、
前記形成助剤は、アニオン性高分子電解質及び第1のMFCよりも高いSR値を有する第2のより微細なMFCからなる群から選択される、
上記酸素バリアフィルム。
【請求項19】
ポリオレフィン、好ましくはポリエチレンを含む第2の層をさらに含む、請求18に記載の繊維ベース酸素バリアフィルム。
【請求項20】
食品又は液体包装用途における請求項18又は19に記載のフィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ベース酸素バリアフィルムの製造方法に関する。本発明は、その方法によって製造されたフィルム及びその使用を範囲とする。
【背景技術】
【0002】
酸素に敏感な製品を遮蔽し、それによってそれらの貯蔵寿命を延ばすために有効なガスバリア及び/又は芳香バリア、特に酸素バリアが包装産業において必要とされる。これらには、特に多くの食品が含まれるが、それだけでなく医薬品や電子産業も含まれる。酸素バリア性を有する既知の包装材料は、通常多層コーティング構造の一部として、1層又は数層の酸素バリアポリマーで被覆された1つ又は複数のポリマーフィルム又は繊維紙又は厚紙からなっていてよい。
【0003】
より最近では、脱フィブリル化されたセルロース系繊維が、例えば水に懸濁され、再組織化され、そして一緒に再結合することで、実質的に連続状の良好なガスバリア性を与えるフィルムを形成する、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)フィルムが報告されている。
【0004】
欧州特許出願公開EP2554589A1には、水性セルロースナノファイバー分散液を紙又はポリマー基材上にコーティングし、乾燥し、そして最後にナノファイバーフィルムシートとして剥離するというフィルムの調製が記載されている。しかしながら、この方法は容易に拡張することができず、それは基材−MFC接着性に対して鋭敏であるかもしれず、そしてフィルム表面の特性にバラツキが生じるという危険性がある。
【0005】
米国特許出願公開US2012298319Aは、MFCを含む供給材料(furnish:ファーニッシュ)を多孔質基材上に直接適用することでMFCを脱水及び濾過することを可能にすることによるMFCフィルムの製造方法を教示している。しかし、より微細なMFCからフィルムを形成する場合、脱水及び走行性(runnability)に関連した諸問題が生じる可能性がある。
【0006】
MFCから製造されたフィルムは極めて良好な酸素バリア性を有することが示されている。しかしながら、低い坪量及び厚みのMFCフィルムを形成するとき、フィルムは湿潤ウェブの形成、加工又は取扱い中に容易に破損することがある。さらにMFCは比較的高価な繊維源である。したがって、MFCフィルムの特性をさらに改善することが依然として望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高い酸素バリア性を示し、取り扱い容易であり、より高速で製造するのが容易であり、転化が容易であり、より費用効率の高い原料を使用する、薄いMFCフィルムの製造を可能にすることが、本開示の目的である。
【0008】
この目的及び更なる利点は、添付の特許請求の範囲の独立請求項に規定された方法、フィルム及びそれらの使用によって全体的又は部分的に達成される。諸々の実施形態は、添付の特許請求の範囲の従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、以下が提供される:
フィルムを製造する方法であって、
少なくとも50重量%の量の、第1のミクロフィブリル化セルロース(MFC)、少なくとも5重量%の量の強化繊維(ここで全てのパーセンテージが前記懸濁液の総固形分に基づいて計算されている)、及び形成助剤を含む懸濁液を提供する工程、
前記懸濁液を混合して混合物を形成する工程、
前記混合物から繊維状ウェブを形成する工程、
前記繊維状ウェブを脱水して、40g/m
2未満の坪量、0.45g
0.5/m未満の比形成数、及び、ASTM D 3985−05に準拠して50%の相対湿度で測定するときの24時間あたり100ml/m
2未満、好ましくは24時間あたり50ml/m
2未満の酸素透過率(OTR)値を有するフィルムを形成する工程を含む、上記方法。
【0010】
好ましくは>0.8mmの加重繊維長(weighted average length)を有する強化繊維を、例えば、前記懸濁液の総固形分に基づいて計算して5〜25重量%、10〜25重量%、又は最も好ましくは10〜15重量%の量で、懸濁液に加えてよい。
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、強化繊維を含み、かつ優れたOTR値を示すと共に取り扱いが容易なMFCフィルム提供することが可能であることを見出した。MFC、強化繊維及び形成助剤を含む懸濁液の混合は、フィルム形成の改良につながり、0.45g
0.5/m未満の比形成数を生じ、ひいてはフィルムに大きな酸素バリア性を与える。さらに、強化繊維の存在により、フィルムの取り扱いが容易になり、排水性及び走行性が改良されそしてフィルムの強度特性が改良される。本発明の方法は、繊維の分散性を高め、MFC又は強化繊維のフロックの形成(このようなフロックはフィルムの特性、特には酸素バリア性に悪影響を有し得る)を妨げる。上記フィルムの形成は、他の手段、例えば、懸濁液のpH、温度及び塩濃度を最適化することによって、ならびに/又は形成されたウェブの超音波アシスト脱水の使用によって、又は当業者に周知の他の手段を用いることによって、更に増進することができる。
【0012】
一実施形態によれば、第1のMFCは、少なくとも85、好ましくは少なくとも90のショッパー・リーグラー(Schopper−Riegler:SR)値を有していてよい。前記第1のMFCは、好ましくは、軟材(針葉樹材)繊維、好ましくはマツ繊維から形成されていている。軟材繊維からのこのような高度に精製されたMFCは、優れた酸素(バリア)特性を生じる。
【0013】
強化繊維は、60未満、好ましくは40未満のSR値を示し得る。好ましくは、前記強化繊維は、硬材(広葉樹材)クラフト繊維である。強化繊維として硬材繊維を使用すると、フィルムの形成が改善される。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、これは、硬材繊維がより多量のヘミセルロースを含み、したがってMFCフィルムマトリックス中により容易に分散され得、さらにフィルム形成時により容易に崩壊し得るためであろう。
【0014】
一実施形態では、形成助剤は、強化繊維が第1のMFCと混合される前に強化繊維に添加される。
【0015】
別の実施形態では、形成助剤は、その形成時に第1のMFCに添加することができる。この実施形態では、形成助剤、例えばAPAMを、セルロース繊維を含むスラリーに添加してもよく、その時に繊維及び形成助剤を含むスラリーを機械的処理にかけることでミクロフィブリル化セルロース及び形成助剤を含む組成物が形成される。その後、前記組成物を強化繊維と混合することができる。
【0016】
一実施形態によれば、強化繊維は、懸濁液に添加する前に機械的に処理済みである。強化繊維の機械的処理、例えば、精製を行うことによって、崩壊挙動を高め、そして形成されたフィルムの剪断強度及び引裂抵抗を改善する。代替的には、強化繊維は、懸濁液に添加される前に化学的に処理済みである。
【0017】
好ましくは、強化繊維は、未乾燥繊維である。そのような繊維は、さらに一層容易に崩壊し、これによりフィルム形成がさらに改善される。未乾燥繊維は、未だ乾燥されていない繊維、すなわち非角質化繊維(non−hornified fibers)である。セルロースパルプを製造するための従来の技術は、湿潤状態(例えば、50〜70重量%の水を含有する)でセルロース繊維を生成する様々な水性化学処理を包含する。本発明で使用される強化繊維は、セルロースパルプ製造後に乾燥されたことが全くない繊維であることが好ましい。このような未乾燥繊維は、通常、非角質化繊維であり、乾燥され再湿潤された繊維と比較して、膨潤してより接近しやすい状態にある。
【0018】
形成助剤は、アニオン性高分子電解質、第1のMFCよりも高いSR値を有する第2のより微細なMFC、変性デンプン、ガム状天然ポリマー又はそれらの合成等価物、ポリエチレンオキシド、メタホスフェート、及び、未変性又は変性PVAからなる群から選択されてよい。アニオン性高分子電解質は、アニオン性ポリアクリルアミド(APAM)及び/又はポリアクリル酸の水溶性塩、例えばポリアクリレート(例えば、ナトリウム又はアンモニウムポリアクリレート)を含み得る。ガム状ポリマーは、例えば、グアーガム、ガラクトマンナン、ローカストビーンガム又は脱アセチル化カラヤガムであってよい。変性デンプンは、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、好ましくはアニオン性CMCであってよい。PVAは、好ましくはアニオン性PVAである。
【0019】
一実施形態によれば、APAMが形成助剤として選択される。APAMは、ウェブ1メトリックトンあたり0.1〜5kg、好ましくは0.1〜1kgの範囲内(例えば0.5kg)であるウェブ中の前記APAMの含有量を生じる量で、懸濁液に添加することができる。
【0020】
別の実施形態では、形成助剤は、第二のより微細なMFCである。この第二のより微細なMFCは、ウェブ1メトリックトンあたり20〜100kg、好ましくは30〜80kgの範囲内(例えば50kg)であるウェブ中の前記第2のMFCの含有量を生じさせる量で、懸濁液中に存在してもよい。第2のより微細なMFCは、別々の工程で懸濁液に添加されてもよく、又は第1のMFCと予備混合されてもよく、すなわち懸濁液に添加されたMFCは二峰性粒度分布を有してもよい。第2のより微細なMFCは、前記第1のMFCよりも高いSR値及び/又は粘度を有し得る。好ましくは、第1のMFCは、4000cP未満の粘度を有し、そして前記第2のMFCは4000cP超の粘度を有する。
【0021】
前記のより微細なMFC中の繊維は、さらに、又は代わりに、前記第1のMFCよりも小さい加重平均長を有していてもよい。
【0022】
本発明の方法は、さらに、懸濁液混合物を多孔質ワイヤ上に適用(塗布)することによってウェブを形成する工程、ウェブを脱水する工程、ウェブを乾燥する工程、及び好ましくはウェブをカレンダー加工してフィルムを形成する工程を含んでいてよい。脱水され乾燥されたフィルムをカレンダー加工することにより、さらに繊維の崩壊が改善される。
【0023】
一実施形態では、好ましくはポリオレフィン又は生分解性ポリマーを含むポリマー層が、脱水及び/又は乾燥されたフィルム上に適用される。ポリオレフィンは、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンであってよい。生分解性ポリマーは、例えば、ポリ乳酸(PLA)又はポリブチレンサクシネート(PBS)であってよい。ポリマーは、脱水され乾燥されたフィルム上に押出コーティングされてよい。MFC及びより少量のより長い強化繊維を含むフィルムであって、例えばポリエチレンでポリマーコーティングされたフィルムは、並外れて良好なバリア性を生じ、これは、23℃、50%RHにおいて24時間当たり10ml/m
2未満、さらには5ml/m
2未満のOTR値を示すことが、実証されている。特により長い繊維が硬材、例えば、カバノキ、ユーカリ又はヤマナラシに由来するとき、顕著に良好な結果が実証されている。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、以下が提供される:
少なくとも50重量%の量の第1のミクロフィブリル化セルロース(MFC)、
少なくとも5重量%の量の0.8mmを超える長さを有する強化繊維、
形成助剤
を含む、繊維ベース酸素バリアフィルムであって、
前記フィルムが、40g/m
2未満の坪量、0.45g
0.5/m未満の比形成数(specific formation number)、及びASTM D 3985−05に準拠して23℃、50%の相対湿度で測定するときの24時間あたり100ml/m
2未満、好ましくは24時間あたり50ml/m
2未満、又はさらに24時間あたり25ml/m
2未満の酸素透過率(OTR)値を示す、上記繊維ベース酸素バリアフィルム。
【0025】
第3の態様によれば、本発明は、以下を開示する:
繊維ベース酸素バリアフィルムであって、
少なくとも50重量%の量のミクロフィブリル化セルロース(MFC)、
少なくとも5重量%の量の0.8mmを超える長さを有する強化繊維、好ましくは硬材繊維からの強化繊維、及び
形成助剤を含む第1の層、ならびに
ポリオレフィン、好ましくはポリエチレンを含む第2の層を含み、
前記フィルムが、40g/m
2未満の坪量、及び23℃、50%の相対湿度での24時間あたり10ml/m
2未満、好ましくは23℃、50%の相対湿度での24時間あたり5ml/m
2未満の酸素透過率(OTR)値を示す、上記繊維ベース酸素バリアフィルム。
【0026】
第2及び第3の態様によるフィルムは、第1の態様に関する諸実施形態に現れる構成によってさらに特徴付けられる。
【0027】
第4の態様において、本発明は、食品又は液体包装用途における上記のフィルムの使用に関する。本発明の可撓性フィルムは、酸素に敏感な製品の包装材料において、例えば食品や液体製品の包装において特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[詳細な説明]
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、本特許出願の文脈においては、100nm未満の少なくとも1つの寸法を有するナノスケールのセルロース粒子繊維又はフィブリルを意味するものとする。MFCは、部分的又は全体的にフィブリル化されたセルロース又はリグノセルロース繊維を含む。遊離されたフィブリルは、100nm未満の直径を有するが、実際のフィブリル直径又は粒子サイズ分布及び/又はアスペクト比(長さ/幅)は供給源及び製造方法に依存する。最小のフィブリルは、基本フィブリル(elementary fibril)と呼ばれ、約2〜4nmの直径を有する(例えば、以下を参照:Chinga-Carrasco, G., Cellulose fibres, nanofibrils and microfibrils,: The morphological sequence of MFC components from a plant physiology and fibre technology point of view(セルロース繊維、ナノフィブリル及びミクロフィブリル:植物の生理機能及び繊維技術の観点からのMFC成分の形態学的シーケンス), Nanoscale research letters 2011, 6:417)。一方、ミクロフィブリルとしても定義される基本フィブリルの凝集形態(Fengel, D., Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides(細胞壁多糖類の超微細構造挙動), Tappi J., March 1970, Vol 53, No.3参照)が、例えば拡張精製プロセス又は圧力降下崩壊プロセスを使用することによってMFCを製造する際に得られる主生成物であることは、一般的に知られている。供給源及び製造方法に応じて、フィブリルの長さは、約1から10マイクロメートル超まで変化し得る。粗いMFCグレードは、かなりの割合のフィブリル化繊維、すなわち、仮道管(tracheid)から突起を有するフィブリル(セルロース繊維)を含んでおり、ある程度の量の仮道管から遊離したフィブリル(セルロース繊維)を伴うかもしれない。
【0029】
セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースミクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル凝集体及びセルロースミクロフィブリル凝集体など、MFCについての種々の頭字語がある。MFCはまた、大きな表面積又は水中に分散したときに低固形分(1〜5重量%)でゲル状材料を形成するその能力などの様々な物理的又は物理化学的特性によっても特徴付けることができる。
【0030】
セルロース繊維は、形成されたMFCの最終比表面積が、凍結乾燥材料についてBET法で測定するとき、約1〜約300m
2/g、例えば1〜200m
2/g、より好ましくは50〜200m
2/gとなる程度にフィブリル化されていることが好ましい。
【0031】
シングルパス又はマルチパス精製、予備加水分解とそれに続く精製、高せん断崩壊、又はフィブリル遊離など、MFCを製造するための様々な方法が存在する。MFC製造をエネルギー効率的かつ持続可能なものにするために、通常、1つ又はいくつかの前処理工程が必要とされる。したがって、供給されるパルプのセルロース繊維は、例えばヘミセルロース又はリグニンの量を減らすために、酵素的又は化学的に前処理されていてもよい。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学的に変性されてもよく、その場合セルロース分子は、元のセルロースに見られる以外の(又はそれより多くの)官能基を含む。そのような基には、とりわけ、カルボキシメチル(CMC)、アルデヒド及び/もしくはカルボキシル基(N−オキシル媒介酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、又は第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が含まれる。上述の方法のうちの1つにおいて変性又は酸化した後に、繊維をMFC又はナノフィブリルサイズすなわちNFCにまで崩壊させることはより容易である。
【0032】
ナノフィブリルセルロースは、一部にヘミセルロースを含んでもよいが、その量は植物源によって異なる。前処理された繊維、例えば、加水分解され、予備膨潤され、又は酸化されたセルロース原料の機械的崩壊は、精製機、粉砕機、ホモジナイザー(均一化機)、コロイド化機、摩擦粉砕機、超音波処理機、ミクロ流動化機、マクロ流動化機等の流動化機、又は流動化タイプのホモジナイザーなどの適切な装置で行われる。MFCの製造方法に応じて、製品はまた、微粉、又はナノ結晶セルロース、又は例えば木質繊維や製紙工程に存在するその他の化学物質を含有するかもしれない。製品はまた、効率的にフィブリル化されていないミクロンサイズの繊維粒子を様々な量で含み得る。
【0033】
MFCは、木質セルロース繊維から、すなわち硬材繊維又は軟材繊維の両方から製造される。MFCはまた、微生物源、農業系の繊維、例えば麦藁パルプ、竹、バガス、又は他の非木材繊維源から製造することもできる。MFCは、バージン繊維からのパルプ、例えば、機械的、化学的及び/又は熱機械的パルプを含めたパルプから製造するのが好ましい。MFCはまた、破れた紙(broke)や再生紙からも製造できる。
【0034】
MFCの上記の定義は、これに限定されないが、結晶性領域と非晶性領域の両方を有する複数の基本フィブリルを含み、5〜30nmの幅を伴う通常50超の高いアスペクト比を有するセルロースナノフィブリル材料を定義する、セルロースナノフィブリル(CMF)について新たに提案されたTAPPI標準W13021を包含する。
【0035】
本願の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明において使用される酸素透過率(OTR)は、23℃、50%RHにおいて24時間で(ASTM D 3985−05)に従って測定される。
【0036】
本明細書で使用される「形成助剤」という用語は、「分散剤」(“dispersant”又は“dispersion agent”)と称されることがあり、これは、粒子/繊維を互いから分離しそして凝集を防ぐために懸濁液に加えられる物質又はポリマーである。
【0037】
本明細書で使用されるショッパー−リーグラー値(SR)は、EN ISO 5267−1に定義されている標準方法を使用することによって得ることができる。
【0038】
比形成数(specific formation number)は、標準SCAN−P 92:09に従ったAmbertec Beta Formation装置を使用して測定される。比形成数の値は、形成数(formation)をフィルムの坪量の平方根によって除算することによって計算される。
【0039】
本明細書で使用される粘度は、ブルックフィールドレオメーターを用いて、100rpmの回転速度、スピンドルベーン(spindle vane)−73、温度20℃、コンシステンシー1.5%にて、CNF(セルロースナノファイバー)のVTTブルックフィールド標準に従って測定される。
【0040】
本発明を実施するために、MFCフィルムは、好ましくは、MFC懸濁液をワイヤ上に提供し、そしてウェブを脱水しフィルムを形成することによって、製紙機又は板紙製造機中で、又は湿式製造方法に従って形成される。
【0041】
懸濁液のMFC含有量は、懸濁液の固形分重量を基準にして50重量%超、又は70重量%超、又は80重量%超であってよい。好ましくは、MFC含有量は、懸濁液の固形分重量を基準にして50〜95重量%の範囲である。一実施形態では、懸濁液のミクロフィブリル化セルロース含有量は、70〜95重量%の範囲内、70〜90重量%の範囲内、又は75〜90重量%の範囲内であってよい。本発明によれば、懸濁液は、前記懸濁液の総固形分に対して計算して、少なくとも5重量%、又は5〜25重量%の範囲内、10〜25重量%の範囲内、又は最も好ましくは10〜15重量%の範囲内の量の繊維をさらに含む。懸濁液はさらに形成助剤を含む。
【0042】
懸濁液はまた、充填剤、顔料、湿潤強度化学物質、乾燥強度化学物質、保持化学物質、架橋剤、軟化剤もしくは可塑剤、接着プライマー、湿潤剤、殺生物剤、光学染料、蛍光増白剤、消泡剤、疎水化剤、例えばAKD、ASA、ワックス、樹脂などの、少量の他のプロセス添加剤又は機能性添加剤を含んでもよい。サイズプレス(size press)を用いて、形成されたウェブにさらなる添加剤を加えることもできる。
【0043】
本発明によれば、MFC、強化繊維及び形成助剤を含む懸濁液を、ウェブとして形成する前に混合する。この混合は、フィブリル化機又は精製機の中で行うことができる。驚くべきことに、当該フィルムが0.45g
0.5/m未満、好ましくは0.4g
0.5/m未満、又はさらに0.3g
0.5/m未満の比形成数を示すようにフィルムを形成することによって、優れた酸素バリア性と強度特性が得られることが分かった。本発明に従って形成されたフィルムは、さらに他のガス、グリース、鉱油及び/又は芳香に対するバリアとして機能することができる。
【0044】
懸濁液は、0.1〜1.0重量%のコンシステンシーでワイヤ上に適用されてよい。湿潤ウェブをワイヤ上に置いた後、それを脱水してフィルムを形成する。
【0045】
一実施形態によれば、シングルワイヤ又はツインワイヤシステム、摩擦のない脱水、メンブレンアシスト脱水、真空又は超音波アシスト脱水などを伴う既知の技術を用いることによって、ワイヤ上での脱水を行うことができる。ワイヤセクションの後、シュー・プレス(shoe press)、熱風、輻射乾燥、対流乾燥などを含む機械的プレスによって、湿潤ウェブをさらに脱水及び乾燥する。このフィルムはまた、ソフトニップ又はハードニップ(又は様々な組み合わせ)カレンダーなどによって乾燥又は平滑化することもできる。
【0046】
あるいは、MFCフィルムは、5〜25重量%のコンシステンシーで、上記の混合MFC懸濁液をポリマー基材上に流延してコーティングフィルムを形成し、続いて乾燥し、最後に基材から剥がすことによりフィルムを分離することによって作製できる。
【0047】
好ましくは、ここに記載された方法によって形成されたMFCフィルムは、10〜40g/m
2、より好ましくは20〜30g/m
2の坪量、及び50μm未満又は40μm未満、好ましくは20〜40μmの範囲の厚みを有する。
【0048】
上記のフィルムは、それ自体、食品又は液体を包装するために有用である。
【0049】
あるいは、このフィルムは、多層ラミネート中のMFCフィルム層として使用されてもよい。この実施形態では、フィルムは、化学パルプ又は木材パルプから形成された繊維質の紙、板紙又は厚紙の上に適用される。好ましくは、繊維質基材は、130〜250g/m
2、好ましくは200〜250g/m
2の重量の板紙、又は40〜130g/m
2の紙である。ラミネートは、さらにポリマー層、例えばポリエチレン層、又はさらなるバリア層を含んでいてよい。そのようなラミネートは、例えば食品や液体のヒートシール可能な包装のために有用である。
【実施例】
【0050】
例1
この試験の目的は、MFCウェブの脱水及び走行性ならびに得られた製品の特性、特にバリア性に対して、長繊維及び改善された形成(形成助剤の添加及び混合による)が及ぼす影響を明らかにすることであった。MFCに加えて、湿潤末端デンプン(4kg/t)、ガラクトマンナン(1kg/t)、シリカ(5kg/t)、及び湿潤強度化学物質(5kg/t)を含む保持システムを使用した。さらに、疎水性サイジング剤AKD(1.5kg/t)を湿潤末端内に適用した。試験点P11_1を、繊維源として100%MFCを含有する基準とした。
【0051】
【表1】
【0052】
試験点P11_2及びP11_3では、それぞれ、15重量%及び30重量%の硬材繊維をパルパー中でMFCと混合し、続いてこの繊維及びMFCと共に繊維化剤(fiberizer)と混合した。試験点P11_5では、パルパー中で15重量%の軟材繊維をMFCと混合し、続いてこの繊維及びMFCと共に繊維化剤と混合した。試験点P20_5において、パルパーに50kg/tの微細MFCを添加して15重量%の硬材繊維を混合し、このMFC、微細MFC及び硬材繊維をさらに繊維化剤と混合した。試験点P20_6において、高分子量(Mw)A−PAMをパルパーに添加し、続いてこの高分子量A−PAM及びMFCを繊維化剤と混合した。表1に試験点の要約を示す。
【0053】
【表2】
【0054】
15重量%の硬材繊維をMFCフィルムに添加すると(P11_2)、15重量%の軟材繊維(P11_5)を添加した場合と比較して、改善されたバリア性(OTR、cc/m
2*日として測定)が得られた。15重量%の硬材繊維と共に50kg/tの微細MFCを添加すると(P20_5)、MFCフィルム中のこれらの長繊維の分散は、フィルムのより低い比形成数値及びより高い密度によって示されるように改善された。同時に、MFCフィルム(P20_5)の酸素バリア性は、微細MFCを添加せずに15重量%の硬材繊維を用いた試験点(P11_2)と比較して改善された。パルパーへの高MwのA−PAMの添加及びこれに続く高MwのA−PAM及びMFCの繊維化剤との混合(P20_6)では、分散助剤を添加しない試験点(P11_1)と比較して、MFCフィルムの比形成数及びOTRが改善された。表2に、試験点の結果の要約を示す。
【0055】
例2
15〜50重量%の硬材繊維を含有するMFCフィルム(P11_1〜P11_4)及び15重量%の軟材繊維を含有するMFCフィルム(P11_5)を、25g/m
2のLDPE又は25g/m
2のHDPE/LDPE共押出によりPE押出コーティングした。
【0056】
PEコーティングMFCフィルムの酸素透過率(OTR)を23℃及び50%相対湿度(RH)条件下で測定した。MFCフィルムへの15重量%の硬材繊維の添加(P11_2)の結果に基づいて、LDPE又はHDPE/LDPEコーティングされたPEコーティングフィルムのOTRは、繊維源として100%のMFCを有するPEコーティングフィルム(P11_1)とほぼ同じレベルである。さらに、硬材繊維を30重量%添加したとき(P11_3)、LDPE又はHDPE/LDPEコーティング後、MFCフィルムに軟材繊維を15重量%添加した場合(P11_5)と比較して、OTR値はより良好である。PEコーティングフィルムの結果を表1に要約する。
【0057】
【表3】