特許第6985307号(P6985307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985307ワークの後処理方法、加工システムおよび管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985307
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ワークの後処理方法、加工システムおよび管理システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20211213BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
   B23Q11/00 P
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-8495(P2019-8495)
(22)【出願日】2019年1月22日
(65)【公開番号】特開2020-21447(P2020-21447A)
(43)【公開日】2020年2月6日
【審査請求日】2019年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2018-136663(P2018-136663)
(32)【優先日】2018年7月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】菅原 宏文
【審査官】 山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−040342(JP,A)
【文献】 特開平10−118884(JP,A)
【文献】 特開2018−097723(JP,A)
【文献】 特開平06−045310(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/139743(WO,A1)
【文献】 特開2000−072221(JP,A)
【文献】 特開平08−267328(JP,A)
【文献】 特開2000−135652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの加工装置と、該加工装置によって加工されたワークに後処理としてエアブローを行う後処理装置と、を備えるシステムにおいて実行されるワークの後処理方法であって、
前記加工装置によって加工されたワークを前記加工装置から前記後処理装置へロボットによって搬送し、
前記加工装置における前記ワークの加工後の状況に関する情報を当該ワークを加工した前記加工装置から取得し、前記ワークの加工後の状況に関する情報が、前記ワークの加工終了から前記ロボットによって前記ワークが前記加工装置から取り出されるまでの経過時間であるか、または、前記加工装置におけるエアブロー時間であり、
前記経過時間または前記加工装置におけるエアブロー時間が長い程、前記後処理のエアブロー時間が短くなるように、前記後処理装置による前記ワークの前記後処理のエアブロー時間を前記ワークの加工後の状況に関する情報に基づいて前記加工装置毎にまたは前記ワーク毎に制御装置によって決定し、
決定された前記後処理のエアブロー時間だけ前記後処理装置によって前記ワークに後処理を行うワークの後処理方法。
【請求項2】
前記ワークの加工後の状況に関する情報が、前記経過時間であり、
前記後処理のエアブロー時間が、下式から算出される請求項に記載のワークの後処理方法。
A=B−C×D
ただし、
Aは、前記エアブロー時間、
Bは、最大エアブロー時間、
Cは、切削液減少係数、
Dは、前記経過時間
である。
【請求項3】
ワークを加工する少なくとも1つの加工装置と、
該加工装置によって加工された前記ワークに後処理としてエアブローを行う後処理装置と、
前記加工装置から前記後処理装置へ前記加工されたワークを搬送するロボットと、
前記後処理装置および前記ロボットを制御する制御装置とを備え、
該制御装置が、
前記加工装置におけるワークの加工後の状況に関する情報を当該ワークを加工した前記加工装置から取得し、前記ワークの加工後の状況に関する情報が、前記ワークの加工終了から前記ロボットによって前記ワークが前記加工装置から取り出されるまでの経過時間であるか、または、前記加工装置におけるエアブロー時間であり、
前記経過時間または前記加工装置におけるエアブロー時間が長い程、前記後処理のエアブロー時間が短くなるように、前記ワークの前記後処理のエアブロー時間を前記ワークの加工後の状況に関する情報に基づいて前記加工装置毎にまたは前記ワーク毎に決定し、
決定された前記後処理のエアブロー時間だけ前記ワークの後処理を前記後処理装置および前記ロボットに実行させる加工システム。
【請求項4】
前記制御装置が、前記ワークの加工後の状況に関する情報と、前記後処理装置によって実行された前記後処理のエアブロー時間と、前記後処理後の前記ワークの状態とに基づき、前記ワークの後処理のエアブロー時間を最適化するための学習を行う学習部を備える、請求項に記載の加工システム。
【請求項5】
前記制御装置が、前記学習の結果を出力する出力部をさらに備える、請求項に記載の加工システム。
【請求項6】
前記制御装置が、前記学習の結果を他の加工システムの制御装置に出力するように構成され、前記他の加工システムの制御装置から学習の結果を受信するように構成されている、請求項または請求項に記載の加工システム。
【請求項7】
前記制御装置が、前記学習の結果を上位制御システムに出力するように構成され、前記上位制御システムから学習の結果を受信するように構成されている、請求項または請求項に記載の加工システム。
【請求項8】
請求項に記載の複数の加工システムと、
該複数の加工システムの各々の前記制御装置と通信可能な上位制御システムと、を備え、
少なくとも1つの前記加工システムの制御装置が、
前記ワークの加工後の状況に関する情報と、前記後処理後の前記ワークの状態とに基づき、前記ワークの後処理のエアブロー時間を最適化するための学習を行う学習部と、
前記学習の結果を出力する出力部と、を備え
前記上位制御システムが、前記少なくとも1つの加工システムの制御装置から受信する前記学習の結果を蓄積する、管理システム。
【請求項9】
前記上位制御システムは、前記学習の結果を用いて前記上位制御システムにおいて行われた学習の結果を、各前記制御装置に送信するように構成されている、請求項に記載の管理システム。
【請求項10】
前記上位制御システムは、前記学習の結果、または、前記学習の結果を用いて前記上位制御システムにおいて行われた学習の結果を、学習機能を持たない制御装置に送信するように構成されている、請求項または請求項に記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの後処理方法、加工システムおよび管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工装置によるワークの加工後、ワークにはエアブロー等の後処理が行われる(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5175971号公報
【特許文献2】特開2012−213838号公報
【特許文献3】特開2004−057862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工装置からワークを取り出した後に該ワークに後処理を行う場合、後処理に必要な時間はワークの状態に応じて異なる。
例えば、加工終了から取り出しまで加工装置におけるワークが待機する時間が長い程、ワークから切削液が流れ落ちることにより、取り出されたワークに残る切削液の量は少なくなる。あるいは、加工装置におけるエアブロー時間が長い程、取り出されたワークに残る切削液の量は少なくなる。このように、ワークに残っている切削液の量が少ない場合、加工装置の外で必要なエアブローの時間は短くて済む。
【0005】
特許文献1〜3では、加工装置から取り出されたワークの状態を考慮していないため、必要以上に長い時間、ワークにエアブローを行う場合がある。このような過剰な後処理の処理時間は、作業効率の低下およびサイクルタイムの増加を招く。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、加工装置によって加工されたワークの後処理の処理時間を最適化し、作業効率を向上しサイクルタイムを短縮することができるワークの後処理方法、加工システムおよび管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、少なくとも1つの加工装置と、該加工装置によって加工されたワークに後処理としてエアブローを行う後処理装置と、を備えるシステムにおいて実行されるワークの後処理方法であって、前記加工装置によって加工されたワークを前記加工装置から前記後処理装置へロボットによって搬送し、前記加工装置における前記ワークの加工後の状況に関する情報を当該ワークを加工した前記加工装置から取得し、前記ワークの加工後の状況に関する情報が、前記ワークの加工終了から前記ロボットによって前記ワークが前記加工装置から取り出されるまでの経過時間であるか、または、前記加工装置におけるエアブロー時間であり、前記経過時間または前記加工装置におけるエアブロー時間が長い程、前記後処理のエアブロー時間が短くなるように、前記後処理装置による前記ワークの前記後処理のエアブロー時間を前記ワークの加工後の状況に関する情報に基づいて前記加工装置毎にまたは前記ワーク毎に制御装置によって決定し、決定された前記後処理のエアブロー時間だけ前記後処理装置によって前記ワークに後処理を行うワークの後処理方法である。
【0008】
加工装置による加工の終了後、ワークはロボットによって加工装置から後処理装置へ搬送され、後処理装置によって後処理が施される。後処理の最適な処理時間は、加工装置から取り出されたワークの状態に応じて異なる。本態様によれば、加工装置におけるワークの加工後の状況に関する情報に基づいて、ワークの状態に対して最適な後処理の処理時間が制御装置によって決定される。これにより、作業効率を向上しサイクルタイムを短縮することができる。
【0009】
上記態様においては、前記後処理が、エアブローであり、前記ワークの加工後の状況に関する情報が、前記ワークの加工終了から、前記ロボットによって前記ワークが前記加工装置から取り出されるまでの経過時間であり、前記経過時間が長い程、エアブロー時間を短くしてもよい。例えば、前記エアブロー時間が、下式から算出されてもよい。
A=B−C×D
ただし、Aは、前記エアブロー時間、Bは、最大エアブロー時間、Cは、切削液減少係数、Dは、前記経過時間である。
【0010】
加工終了から取り出しまでの加工装置における経過時間が長い程、ワークに付着した切削液がワークから流れ落ちることによりワークに残る切削液の量は少なくなり、ワークに残る切削液を吹き飛ばすために必要なエアブロー時間は短くなる。上記構成によれば、加工装置における加工後の経過時間に基づいて、最適なエアブロー時間を決定することができる。
【0011】
本発明の他の態様は、ワークを加工する少なくとも1つの加工装置と、該加工装置によって加工された前記ワークに後処理としてエアブローを行う後処理装置と、前記加工装置から前記後処理装置へ前記加工されたワークを搬送するロボットと、前記後処理装置および前記ロボットを制御する制御装置とを備え、該制御装置が、前記加工装置におけるワークの加工後の状況に関する情報を当該ワークを加工した前記加工装置から取得し、前記ワークの加工後の状況に関する情報が、前記ワークの加工終了から前記ロボットによって前記ワークが前記加工装置から取り出されるまでの経過時間であるか、または、前記加工装置におけるエアブロー時間であり、前記経過時間または前記加工装置におけるエアブロー時間が長い程、前記後処理のエアブロー時間が短くなるように、前記ワークの前記後処理のエアブロー時間を前記ワークの加工後の状況に関する情報に基づいて前記加工装置毎にまたは前記ワーク毎に決定し、決定された前記後処理のエアブロー時間だけ前記ワークの後処理を前記後処理装置および前記ロボットに実行させる加工システムである。
【0012】
本発明の他の態様は、上記記載の複数の加工システムと、該複数の加工システムの各々の前記制御装置と通信可能な上位制御システムと、を備え、少なくとも1つの前記加工システムの制御装置が、前記ワークの加工後の状況に関する情報と、前記後処理後の前記ワークの状態とに基づき、前記ワークの後処理のエアブロー時間を最適化するための学習を行う学習部と、前記学習の結果を出力する出力部と、を備え前記上位制御システムが、前記少なくとも1つの加工システムの制御装置から受信する前記学習の結果を蓄積する、管理システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加工装置によって加工されたワークの後処理の処理時間を最適化し、作業効率を向上しサイクルタイムを短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る加工システムの全体構成を示す平面概略図である。
図2図1の加工システムの変形例の全体構成を示す平面概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係るワークの後処理方法を示すフローチャートである。
図4図1の加工システムの制御装置の変形例の構成図である。
図5図4の制御装置と他の制御装置との接続例を示す図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る管理システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態に係る加工システム10およびワークの後処理方法について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る加工システム10は、図1に示されるように、複数台の加工装置1と、エアブロー装置(後処理装置)2と、ロボット3と、制御装置4とを備えている。複数台の加工装置1およびエアブロー装置2は、レール5沿いに配列されている。
【0016】
ロボット3は、例えば、6軸多関節ロボットであり、ワークWを把持するハンドを有する。ロボット3は、レール5に沿って移動し、各加工装置1へのワークWの供給および各加工装置1からのワークWの取り出しを行う。また、ロボット3は、加工装置1から取り出した加工後のワークWをエアブロー装置2へ搬送する。
【0017】
ロボット3は、図2に示されるように、水平方向に旋回することによってワークWを加工装置1からエアブロー装置2へ搬送してもよい。図2の加工システム10において、複数台の加工装置1およびエアブロー装置2は、ロボット3の周囲に配列されている。図1および図2において、各加工装置1が、ワークWにエアブローを行うエアブロー装置を備えていてもよい。
【0018】
加工装置1は、ワークWを切削する工作機械である。加工装置1は、テーブル6上に固定されたワークWを、ドリルまたはエンドミルのような工具によって加工する。工具による加工中、ワークWには切削液が供給される。加工装置1は、工具によるワークWの加工が終了してからロボット3によってワークWが取り出されるまでの経過時間Tを計測する。経過時間Tの計測は、例えば、加工装置1の制御部(図示略)によって行われる。
【0019】
エアブロー装置2は、ロボット3によって把持されたワークWに向かってエアを噴出する。エアによって、ワークWに付着した切削液が吹き飛ばされる。
【0020】
制御装置4は、複数台の加工装置1、エアブロー装置2およびロボット3と接続されている。制御装置4は、プロセッサを有する制御部と、不揮発性ストレージ、ROM、RAM等を有する記憶部とを備える。記憶部には、エアブロー装置2およびロボット3を制御する制御プログラムが記憶されている。制御部は、プログラムに従ってエアブロー装置2およびロボット3に制御信号を送信する。エアブロー装置2およびロボット3は、制御装置4からの制御信号に従って動作する。
制御装置4は、加工システム10全体を管理および制御するセル制御装置であってもよい。セル制御装置は、加工装置1、エアブロー装置2およびロボット3とインターネットを経由して接続されていてもよい。
【0021】
ロボット3がその制御装置によって制御され、各加工装置1がその制御装置によって制御されてもよい。この場合、ロボット3の制御装置は、ロボット制御プログラムに従ってロボット3を制御し、各加工装置1の制御装置は、加工装置制御プログラムに従って加工装置1およびエアブロー装置2を制御する。
ロボット3の制御装置および各加工装置1の制御装置は、制御に関する情報および検出情報等を制御装置4に送信する。制御装置4が有する情報は、ロボット3の制御装置および加工装置1の制御装置に送信される。制御装置4からロボット3の制御装置および各加工装置1の制御装置に信号が送信され、当該信号に従って各制御装置によるロボット3または加工装置1の制御が行われてもよい。
【0022】
制御装置4は、加工装置1へのワークWの供給および加工装置1からのワークWを取り出しをロボット3に実行させる。ワークWの供給および取り出しは、例えば、加工装置1から制御装置4に向けて発信される要求信号に応答して実行される。
制御装置4は、加工装置1からのワークWの取り出し後、ロボット3をエアブロー装置2の前へ移動させる。また、制御装置4は、ワークWを取り出した加工装置1から経過時間Tを取得する。制御装置4は、エアブロー装置2によるエアブロー時間(処理時間)Aを、経過時間Tが長いほどエアブロー時間Aが短くなるように、決定する。
次に、制御装置4は、エアブロー装置2およびロボット3を制御し、ロボット3に把持されたワークWへのエアブローをエアブロー時間Aだけ実行させる。
【0023】
例えば、制御装置4は、下式からエアブロー時間Aを算出する。
A=B−C×D
ここで、Bは、所定の最大エアブロー時間である。Cは、切削液減少係数である。Dは、経過時間Tである。ワークWに付着した切削液は、自然と流れ落ちることによって徐々に減少する。係数Cは、単位時間当たりの切削液の減少量に基づいて設定される。
【0024】
次に、加工システム10の作用について説明する。
制御装置4は、ロボット3に加工装置1へのワークWの供給を実行させる。次に、加工装置1によるワークWの加工が開始する。
加工終了後、制御装置4は、ロボット3に加工装置1からのワークWの取り出しを実行させ(ステップS1)、ワークWを把持したロボット3を加工装置1の前からエアブロー装置2の前へ移動させる(ステップS2)。また、制御装置4は、加工装置1から経過時間Tを取得し(ステップS3)、経過時間Tに基づいてエアブロー時間Aを決定する(ステップS4)。
次に、制御装置4は、エアブロー装置2によるワークWへのエアブローをエアブロー時間Aだけエアブロー装置2およびロボット3に実行させる(ステップS5)。
【0025】
加工終了から取り出しまで加工装置1におけるワークWが待機する経過時間Tは、ワークW毎にまたは加工装置1毎に異なる。例えば、加工条件または加工内容が異なることにより、ワークW毎にまたは加工装置1毎に加工時間が異なり、その結果、経過時間Tにばらつきが生じる。あるいは、ロボット3の作業状況に応じて、加工が終了してからロボット3がワークWを取り出しに向かうまでの時間にばらつきが生じる。経過時間Tが長い程、ワークWが加工装置1から取り出された時点でワークWに付着している切削液の量は少なくなる。
【0026】
本実施形態によれば、加工終了から取り出しまでワークWが加工装置1において待機する経過時間Tが長い程、エアブロー時間Aが短くなるように、経過時間Tに基づいてエアブロー時間Aが決定される。これにより、ワークWに付着している切削液の量が少ない場合には、エアブロー時間Aが短縮される。このように、加工装置1から取り出されたワークWの状態に応じてエアブロー時間Aを最適化することによって必要以上に長い時間エアブローが行われることを防止し、作業効率の向上およびサイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0027】
本実施形態においては、加工装置1におけるワークWの加工後の状況に関する情報として、加工終了から取り出しまでの経過時間Tを取得することとしたが、これに代えて、またはこれに加えて、加工装置1におけるエアブロー時間を取得してもよい。
【0028】
エアブロー機能を有する加工装置1の場合、工具による加工に続いて、加工装置1においてワークWにエアブローが行われる。加工装置1におけるエアブロー時間が長い程、加工装置1から取り出された時点でワークWに付着している切削液は少ない。制御装置4は、加工装置1におけるエアブロー時間を加工装置1から取得し、加工装置1内のエアブロー時間が長い程、エアブロー時間Aが短くなるように、エアブロー時間Aを決定する。これにより、ワークWの状態に応じてエアブロー時間Aを最適化することができる。
【0029】
加工装置1の内外での2段階のエアブローは、ワークWの形状が複雑である場合に特に有効である。例えば、筒状のワークWまたはネジ穴のような細長い穴が形成されているワークWの場合、加工装置1におけるエアブローによって、ワークWの内側の切削液を吹き飛ばすことは難しい。したがって、ワークWの形状に応じて設計された専用のエアブロー装置2が必要となる。加工装置1におけるエアブローによってワークWの外面の切削液を吹き飛ばし、続いて、加工装置1外でのエアブロー装置2によるエアブローによってワークWの内側の切削液を吹き飛ばすことによって、切削液をより確実にワークWから除去することができる。
【0030】
本実施形態においては、加工装置1が工作機械であることとしたが、これに代えて、他の種類の加工装置であってもよい。加工装置1がワークWに行う加工の内容に応じて、加工後に必要な後処理の内容も異なる。したがって、加工システム10は、エアブロー装置2に代えて、他の後処理装置を備えていてもよい。
【0031】
例えば、加工装置1が、加硫成形型内で材料を加熱加工することによってゴム製品のワークWを成形する成形装置であり、後処理装置が、型から取り出されたワークWのバリ取りを行うバリ取り装置であってもよい。
バリ取りは、一般的に、ワークWの温度が高い程、容易である。制御装置4は、加工装置1におけるワークWの加工後の状況に関する情報として、型が開いてからの経過時間、または、加工装置1において型からワークWが取り出されてからの経過時間等を取得する。経過時間が長い程、ワークWの温度は低下する。制御装置4は、経過時間が短い程、バリ取りの処理時間が短くなるように、バリ取りの処理時間を決定する。制御装置4は、経過時間に代えてワークWの温度の情報を加工装置1から取得し、ワークWの温度が高い程、バリ取りの処理時間が短くなるように、処理時間を決定してもよい。
これにより、ワークWの状態に応じてバリ取りの処理時間を最適化し、作業効率の向上およびサイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0032】
前記実施形態において、制御装置4が、ワークWの加工後の状況に関する情報と、後処理装置によって実行された後処理の処理時間と、後処理後のワークWの状態とに基づき、ワークWの後処理の処理時間を最適化するための学習を行う学習機能を有していてもよい。例えば、図4に示されるように、制御装置4の記憶部41に学習プログラム(学習部)4aが格納されており、制御装置4の制御部42が学習プログラム4aに基づき学習を行ってもよい。
【0033】
例えば、学習において、制御部42は、ワークWの加工後の状況に関する情報と、ワークの後処理時間と、を相互に対応付けたテーブルまたは式を作成し、作成されたテーブルまたは式を記憶部41に格納する。制御部42は、記憶部41に格納されたテーブルまたは式に基づき、ワークWの加工後の状況に関する情報とワークWの後処理時間との関係と、後処理後のワークWの状態との対比を行い、ワークWの加工後の各状況に対して最適な後処理の処理時間を得る。後処理後のワークWの状態は、例えば、エアブロー後に行われる検査工程において検査装置または作業者によって判断され、判断結果が制御装置4に入力され記憶部41に格納される。
【0034】
例えば、後処理が、加工されたワークWのエアブローである場合、待機時間Tと、エアブロー時間Aと、を対応付けたテーブルまたは式が作成される。そして、待機時間Tとエアブロー時間Aとの関係と、エアブロー後のワークWの切削液の有無と、が対比され、切削液を完全に吹き飛ばすために必要最小限のエアブロー時間Aが各待機時間Tに対して得られる。
【0035】
図5に示されるように、学習機能を有する制御装置4が、他の加工システム10の制御装置4に接続され、学習の結果を他の制御装置4に提供してもよい。学習の結果は、前記テーブルまたは式と、後処理後のワークWの状態と、を含む。この場合、制御装置4は、無線または有線の送受信部(出力部)43を備え、記憶部41に記憶されている学習の結果を他の制御装置4に送受信部43によって送信する。他の制御装置4は、受信した学習の結果を、後処理の処理時間を最適化する学習に用いてもよい。他の制御装置4が学習機能を有しない場合、制御装置4は、学習の結果として後処理の最適な処理時間を、他の制御装置4に提供してもよい。さらに、制御装置4は、他の制御装置4から学習の結果を受信し、受信した学習の結果を、後処理の処理時間を最適化する学習に用いてもよい。
【0036】
図6に示されるように、制御装置4が、管理システム100のエッジ装置であってもよい。管理システム100は、複数の加工システム10と、複数の加工システム10の各々の制御装置4と通信可能に接続される上位制御システム20と、を備える。上位制御システム20の例は、生産管理システム、出荷管理システム、ロボット用管理システム、部門管理システム等であり得る。上位制御システム20は、プロセッサ等を有する制御部と、表示装置と、不揮発性ストレージ、ROM、RAM等を有する記憶部と、キーボード、タッチパネル、操作盤等である入力装置等を備える。上位制御システム20は、クラウドサーバであってもよい。
【0037】
管理システム100に含まれる各制御装置4は、学習機能を有していてもよく、学習機能を有していなくてもよい。上位制御システム20は、複数の制御装置4から後処理の処理時間の最適化の学習に必要な学習用データを受信し、受信した学習用データを記憶部に蓄積し、蓄積された学習用データを集約する。学習用データは、ワークWの加工後の状況に関する情報と、ワークWの後処理時間と、後処理後のワークWの状態とが相互に対応付けられたデータを含む。学習機能を有する制御装置4の場合、学習の結果が学習用データとなる。
【0038】
上位制御システム20は、集約された学習用データを、学習機能を有する制御装置4に送信し、制御装置4が、上位制御システム20からの集約された学習用データを後処理の処理時間の学習に用いてもよい。
あるいは、上位制御システム20は、集約された学習用データを用いて、後処理の処理時間を最適化する学習を行い、得られた後処理の最適な処理時間を各制御装置4に送信してもよい。これにより、上位制御システム20から提供された後処理の最適な処理時間を用いて、制御装置4が学習機能を有しない加工システム10においても後処理の処理時間の最適化を実現することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 加工装置
2 エアブロー装置(後処理装置)
3 ロボット
4 制御装置
41 記憶部
42 制御部
4a 学習プログラム(学習部)
43 送受信部(出力部)
10 加工システム
20 上位制御システム
100 管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6