(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985363
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ポリ(メタ)アクリルイミドフォーム粒子を含むポリマーコンパウンド
(51)【国際特許分類】
C08J 9/32 20060101AFI20211213BHJP
C08L 33/24 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
C08J9/32CEY
C08L33/24
【請求項の数】9
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-502132(P2019-502132)
(86)(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公表番号】特表2019-510869(P2019-510869A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】CN2017078572
(87)【国際公開番号】WO2017167197
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2020年2月21日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/077893
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518347543
【氏名又は名称】エボニック スペシャルティ ケミカルズ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Evonik Specialty Chemicals (Shanghai) Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リカルド ルイス ヴィレマン
(72)【発明者】
【氏名】チアンウェン コン
(72)【発明者】
【氏名】ジアンミン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジシェン ワン
(72)【発明者】
【氏名】チュンフェン ルー
(72)【発明者】
【氏名】ジンビン リー
(72)【発明者】
【氏名】デニス ホライン
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ベッカー
【審査官】
芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−149173(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/122229(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/082509(WO,A1)
【文献】
特表2016−540085(JP,A)
【文献】
特開2010−264707(JP,A)
【文献】
特開昭49−032966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
B29C 44/00−44/60,67/20
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 400℃未満の温度で溶融加工可能な熱可塑性樹脂と、
(2) 400℃未満の温度で粒子状の形態を保持するポリ(メタ)アクリルイミド(P(M)I)フォーム粒子
とを含むポリマーコンパウンドであって、
前記ポリマーコンパウンドの総質量に対して、
前記熱可塑性樹脂が30〜70%を構成し、
前記P(M)Iフォーム粒子が30〜70%を構成し、且つ
前記P(M)Iフォーム粒子が、0.5〜5mmの範囲の粒径及び100〜150kg/m3のかさ密度を有する、
前記ポリマーコンパウンド。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステルおよび任意の上記のセグメントを含有するコポリマー、並びにそれらのブレンドから選択される、請求項1に記載のポリマーコンパウンド。
【請求項3】
前記ポリアミドが、脂肪族ポリアミドから選択される、請求項2に記載のポリマーコンパウンド。
【請求項4】
前記脂肪族ポリアミドが、PA6、PA11、PA12、PA46、PA66、PA10、PA610、PA612、PA1010、PA1012およびそれらのブレンドからなる群から選択される、請求項3に記載のポリマーコンパウンド。
【請求項5】
前記P(M)Iフォーム粒子が、
(1) 粒子状の形態ではないP(M)Iフォームを造粒すること、または
(2) P(M)Iポリマー粒子を発泡させること
によって得られるものである、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリマーコンパウンド。
【請求項6】
前記P(M)Iフォーム粒子が、ポリメタクリルイミド(PMI)フォーム粒子である、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマーコンパウンド。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は約250℃未満の温度で溶融加工可能であり、且つ/または
前記P(M)Iフォーム粒子は250℃未満の温度で粒子状の形態を保持する、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のポリマーコンパウンド。
【請求項8】
前記P(M)Iフォーム粒子と前記熱可塑性樹脂の溶融物とを、物理的に混合する段階を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマーコンパウンドの製造方法。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマーコンパウンドの軽量の構造物中での使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(メタ)アクリルイミド(P(M)I)フォーム粒子、特にポリメタクリルイミド(PMI)フォーム粒子を含む、ポリマーコンパウンドに関する。
【0002】
背景技術
ポリ(メタ)アクリルイミドフォーム、例えばポリメタクリルイミドフォーム、例えばEvonik Resource Efficiency GMBHによって商品名Rohacell(登録商標)として市販されているものは、その軽量且つ高い機械的性能ゆえに、航空宇宙、自動車、スポーツおよび医療機器の産業等において、軽量の設計のために複合材中で広く使用されている。
【0003】
過去において、P(M)Iフォームはブロックの形状で供給されていたが、それは複雑な3Dの幾何学的形状を有する部品の加工にはあまり適合せず、長いサイクル時間、低い精度、および材料の廃棄をもたらすことがあった。
【0004】
国際公開第2013/056947号(WO2013/056947)は、部分的に上記の課題を解決するP(M)Iフォームのモールド成型方法を記載しており、そこでは、(予備発泡された)P(M)Iポリマー粒子がモールド内で、ポリアミドまたはポリ(メタ)アクリレートであり得る接着剤で補助されて発泡される。接着剤の用量はP(M)Iポリマー粒子の20%まで、例えば、P(M)Iポリマー粒子と接着剤との総質量に対して16.7%までであってよい。しかしながら、この方法は、未だに長いサイクル時間をもたらす。
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明者らは、P(M)Iフォーム粒子が、熱可塑性樹脂と共にポリマーコンパウンドを形成する可能性を探索し、本発明を成し遂げた。
【0006】
発明の概要
本発明は、
(1) 400℃未満の温度で溶融加工可能な熱可塑性樹脂と、
(2) 400℃未満の温度で粒子状の形態を保持するポリ(メタ)アクリルイミドフォーム粒子
とを含むポリマーコンパウンドであって、前記ポリマーコンパウンドの総質量に対して、
前記熱可塑性樹脂が20〜99%を構成し、且つ
前記P(M)Iフォーム粒子が1〜80%を構成する、
前記ポリマーコンパウンドを提供する。
【0007】
意外なことに、本発明のポリマーコンパウンドは、軽量であること以外に、個々の成分よりも良好な圧縮強さおよび/または曲げ強さを達成することが判明した。
【0008】
本発明はさらに、本発明のポリマーコンパウンドの製造方法であって、ポリ(メタ)アクリルイミドフォーム粒子と熱可塑性樹脂の溶融物とを物理的に混合する段階を含む前記方法を提供する。
【0009】
本発明はさらに、軽量の構造物における本発明のポリマーコンパウンドの使用を提供する。
【0010】
発明の詳細な説明
前記熱可塑性樹脂は、400℃未満の温度で溶融加工可能である限り、限定されない。溶融加工可能とは、そのポリマーを、示された温度で実質的にポリマーの劣化なく加工できるという、通常の意味で用いられる。
【0011】
前記熱可塑性樹脂の例は、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステルおよび任意の上記のセグメントを含有するコポリマー、並びにそれらのブレンドを含む。
【0012】
好ましくは、前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、より好ましくはPA6、PA11、PA12、PA46、PA66、PA10、PA610、PA612、PA1010、PA1012およびそれらのブレンドから選択される。
【0013】
本発明において使用されるP(M)Iフォーム粒子は、粒子状の形態ではないP(M)Iフォームを造粒することによって得ることができる。
【0014】
P(M)Iフォームは硬質フォームとも称され、特別な頑健性を特徴とする。前記P(M)Iフォームは通常、a) キャストポリマーの製造、およびb) 前記キャストポリマーの発泡という2段階の工程で製造される。先行技術によれば、それらは次に切断または鋸で切られて、所望の形状がもたらされる。
【0015】
P(M)Iフォームの製造は、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリロニトリルとを、好ましくは2:3〜3:2のモル比で、主成分として含むモノマー混合物の製造で開始する。他のコモノマーを使用することもでき、例はアクリル酸またはメタクリル酸、スチレン、マレイン酸およびイタコン酸のエステル、およびそれらの無水物、およびビニルピロリドンである。しかしながら、ここでコモノマーの割合は30質量%を上回るべきではない。少量の架橋モノマーを使用することもでき、一例はアリルアクリレートである。しかしながら、その量は好ましくは最大で0.05質量%〜2.0質量%であるべきである。
【0016】
共重合混合物はさらに、約150〜250℃の温度で分解または蒸発して気相を形成する膨張剤を含む。重合はこの温度未満で生じるので、前記キャストポリマーは潜在的な膨張剤を含む。重合は有利には2つのガラスプレートの間のブロックモールド内で生じる。
【0017】
前記キャストポリマーを次に、第二の段階において適切な温度で発泡させる。そのようなP(M)Iフォームの製造は、原理的に当業者に公知であり、例えば欧州特許出願公開第1444293号明細書(EP1444293)、欧州特許出願公開第1678244号明細書(EP1678244)または国際公開第2011/138060(WO2011/138060)号内で調べることができる。
【0018】
本発明において使用されるP(M)Iフォーム粒子は、P(M)Iポリマー粒子の発泡によって得ることもできる。
【0019】
前記P(M)Iポリマー粒子を、例えばカッティングミル中でキャストポリマーを粉砕することによって得ることができる。その粉砕物を次に適切な温度で発泡させて、P(M)Iフォーム粒子を製造する。
【0020】
好ましくは、本発明内で使用されるP(M)Iフォーム粒子はP(M)Iポリマー粒子の発泡によって得られ、その際、P(M)Iフォームの造粒によって得られたP(M)Iフォーム粒子と比較して、フォームの独立気泡は破壊されていない。
【0021】
好ましくは、前記P(M)Iフォーム粒子は0.1〜30mm、より好ましくは0.5〜10mmの範囲の粒径を有する。
【0022】
好ましくは、前記P(M)Iフォーム粒子は25〜220kg/m
3、より好ましくは50〜150kg/m
3のかさ密度を有する。
【0023】
本発明の1つの好ましい実施態様において、前記P(M)Iフォーム粒子はポリメタクリルイミド(PMI)フォーム粒子である。
【0024】
Evonik Resource Efficiency GMBHから市販されているRohacell(登録商標)PMIポリマーおよび/またはフォームを特に言及できる。
【0025】
本発明のポリマーコンパウンド中での熱可塑性樹脂とP(M)Iフォーム粒子との比は限定されない。
【0026】
ポリマーコンパウンドの総質量に対して、前記熱可塑性樹脂は20〜95%、好ましくは20〜80%、より好ましくは30〜70%を構成でき、且つ前記P(M)Iフォーム粒子は5〜80%、好ましくは20〜80%、より好ましくは30〜70%を構成できる。しかし、ポリマーコンパウンドの総質量に対して、前記熱可塑性樹脂が1〜99%を構成し、且つ前記P(M)Iフォーム粒子が1〜99%を構成することもできる。
【0027】
本発明の1つの好ましい実施態様において、前記熱可塑性樹脂は250℃未満の温度で溶融加工可能であり、且つ/または前記P(M)Iフォーム粒子は250℃未満の温度で粒子状の形態を保持する。
【0028】
本発明のポリマーコンパウンドは、所望の効果または性能に依存して、添加剤、例えば炭酸カルシウム、カラスビーズ、酸化亜鉛、および繊維強化材、例えばセラミック繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラス繊維およびカーボン繊維を含むことができる。
【0029】
本発明のポリマーコンパウンドは一般に、原理的に任意の種類の軽量の構造物のために適しており、且つ、特に、例えば自動車産業における車体の製造または内装のクラッディング、鉄道車両の製造または造船における内装部品のための量産において、航空宇宙産業において、医療技術において、スポーツ用品の生産において、家具の製造において、または風力タービンの設計において使用できる。
【実施例】
【0030】
実施例内で使用されたPMIフォーム粒子は、商品名ROHACELL(登録商標)Triple FとしてEvonik Resource Efficiency GMBHから市販されているPMIポリマー粒子から製造された。前記PMIポリマー粒子は、完全に重合されたコポリマーシート(予備発泡されていない)から、造粒機で補助して製造された。実施例内で使用された粒子の粒径の範囲は、篩別して微細分を保持した後に、1.0mm未満であった。PMIポリマー粒子のかさ密度は約600〜700kg/m
3であった。
【0031】
前記PMIポリマー粒子を、温度200〜240℃で30〜60分間、オーブン内で発泡させた。得られたPMIフォーム粒子は、かさ密度100〜150kg/m
3および粒径0.5〜5mmを有していた。
【0032】
前記PMIフォーム粒子を、PA12(Evonik Resource Efficiency GMBHのVestamid(登録商標)L1600)およびPA12エラストマー(Evonik Resource Efficiency GMBHのVestamid(登録商標)E30、ポリエーテルブロックPA12)の溶融物とそれぞれ混合して、2つの50:50(質量)のコンパウンドを製造し、それらを厚さ5mmのプレートに成型した。
【0033】
前記プレートを、圧縮強さ(ISO844)および曲げ強さ(ISO178)並びに密度について試験した。結果を以下の表に示す。
【表1】
【0034】
*Rohacell(登録商標) 200 WF PMI硬質フォーム(Evonik Resource Efficiency GMBHから市販)は、市販のRohacellシリーズのPMIフォームの中では圧縮強さおよび曲げ強さが比較的高いので、参照用材料として選択された。
【0035】
Vestamid L1600およびVestamid E30の両方について、25%を上回る質量の低減が達成されることが理解できる。また、実施例のポリマーコンパウンドは、個々の原料よりも高い圧縮強さおよび/または曲げ強さを達成する。