特許第6985365号(P6985365)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985365特別な内側形状および外側形状を有する上部構造体支持体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985365
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】特別な内側形状および外側形状を有する上部構造体支持体
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   A61C8/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-502650(P2019-502650)
(86)(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公表番号】特表2019-520944(P2019-520944A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】DE2017000211
(87)【国際公開番号】WO2018014896
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2020年6月22日
(31)【優先権主張番号】102016008668.8
(32)【優先日】2016年7月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516016861
【氏名又は名称】ブルーノ シュピンドラー
【氏名又は名称原語表記】Bruno Spindler
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ シュピンドラー
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/007262(WO,A2)
【文献】 独国実用新案第202012102746(DE,U1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0246916(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0349250(US,A1)
【文献】 特表2015−508315(JP,A)
【文献】 特開2013−063316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラント体(10)と上部構造体との間の、補綴義歯(1)の一部としての上部構造体支持体(20)であって、
中空のインプラントポスト(23)と、中空のインプラントピン(50)と、これらの間に位置するインプラントフランジ(31)と、を備え、
−前記インプラントポスト(23)の空洞域(67)と前記インプラントピン(50)の空洞域(62)とは、前記上部構造体支持体(20)と前記インプラント体(10)とを結合するねじ(90)を貫通案内しかつ収容するように相互に移行しており、
−前記空洞域(67,62)は、それぞれ中心線(69,63)を有し、該中心線(69,63)は、互いに中央の空洞域(64)において交差しており、
−前記インプラントピン(50)の前記空洞域(62)には、前記インプラントフランジ(31)に向かって拡開するねじ頭部着座面(65)が続いており、
−前記空洞域(67)と前記ねじ頭部着座面(65)との間に前記中央の空洞域(64)が位置しており、前記中央の空洞域(64)は、湾曲した内空部であり、該内空部において、前記空洞域(67)と前記ねじ頭部着座面(65)は、角を成すことなく接線方向に相互に移行した状態で接続しており、
−少なくとも前記インプラントフランジ(31)の領域は、前記インプラントポスト(23)の方向に向けられた支持カバー面(37)を形成しており、該支持カバー面(37)の外縁(33)は、インプラントポスト側の前記空洞域(67)の前記中心線(69)が垂直に交差する基準平面(38)を形成しており、
−両方の前記中心線(69,63)は、前記基準平面(38)の下方で交差しているまたは交わっている、
上部構造体支持体(20)。
【請求項2】
前記支持カバー面(37)は、前記基準平面(38)内に位置しているか、または円錐台の円錐台側面(75,76)であり、記円錐台の面(77)が前記基準平面(38)を成していることを特徴とする、請求項1記載の上部構造体支持体。
【請求項3】
前記ねじ頭部着座面(65)は、円錐状、球面状または楕円体状に湾曲しているか、または別の形で、前記ねじ頭部着座面(65)の回転軸線を横切る、該ねじ頭部着座面(65)の横断面が、変化していることを特徴とする、請求項2記載の上部構造体支持体。
【請求項4】
前記ねじ頭部着座面(65)は、前記基準平面(38)の下方に配置されていることを特徴とする、請求項3記載の上部構造体支持体。
【請求項5】
前記基準平面(38)と前記中心線(69)との交点は、前記ねじ(90)が接触する接触面(73)の領域の上縁(74)に沿った開口面と前記中心線(63)との交点から、前記インプラントピン(50)の前記空洞域(62)の平均直径の少なくとも17パーセントである距離だけ離れて位置していることを特徴とする、請求項3記載の上部構造体支持体。
【請求項6】
前記中心線(59)、(69)により形成される前記上部構造体支持体(20)の縦断面の各片側の領域内に、インプラント円錐部(53)の平均直径の25パーセントよりも大きい直径を有する測定円(9)は収まらないことを特徴とする、請求項1記載の上部構造体支持体。
【請求項7】
前記上部構造体支持体(20)のそれぞれ異なる空洞域(67,65,64,62)は、角を成すことなく接線方向に相互に移行した状態で接続していることを特徴とする、請求項6記載の上部構造体支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラント体と上部構造体との間の、補綴義歯の一部としての上部構造体支持体であって、中空のインプラントポストと、中空のインプラントピンと、これらの間に位置するインプラントフランジと、を備える、上部構造体支持体に関する。
【0002】
インプラント歯科学において、とりわけ単一補綴義歯の製作の枠内で、補綴物を支持するエノッサル性インプラント体が使用されることが多い。この場合、ある種のねじプラグであるインプラント体は、人工的に患者の顎に形成された孔にねじ込まれる。ねじ込まれたインプラント体は、補綴物の完成状態で、上部構造体支持体を保持する。後者である上部構造体支持体は、特別なねじを用いてたとえば回動不能にインプラント体内にねじ止めされる。上部構造体支持体に、直接にまたは間接に、視認可能な歯冠を形成する上部構造体が、たとえば接着により被嵌される。
【0003】
独国実用新案第202012102746号明細書(DE 20 2012 102 746 U1)において、歯インプラント組立てシステムが公知であり、この歯インプラント組立てシステムでは、インプラント体、上部構造体支持体、接着体および人工冠が、人工義歯を形成している。
【0004】
本発明の根底を成す課題は、上部構造体支持体を改善して、インプラント体との確実で持続的なねじ結合が保証されているようにすることである。
【0005】
この課題は、請求項1に記載の特徴により解決される。それによると、インプラントポストの空洞域とインプラントピンの空洞域とは、上部構造体支持体とインプラント体とを結合するねじを貫通ガイドするかつ収容するように相互に移行している。これらの空洞域は、それぞれ中心線を有し、中心線は、相互に60°〜86°の角度を形成している。インプラントピンの空洞域は、インプラントフランジへ向いて拡開するねじ頭部着座面を有する。少なくともインプラントフランジの領域は、インプラントポストへ向けられた支持カバー面を形成しており、支持カバー面の外縁は、ポスト側の空洞域の中心線が垂直に交差する基準平面を形成している。インプラントポストの中心線とインプラントピンの中心線とは、基準平面の下方で交差しているまたは交わっている。
【0006】
上部構造体支持体は、インプラント体と上部構造体との間に配置されており、上部構造体支持体は、接着体および/または冠を支持する領域で、インプラントポストを有し、かつ歯肉およびインプラント体寄りの領域で、少なくとも1つのインプラントネックを有する。上部構造体支持体は、たとえば粉末射出成形法を用いて製造される素材から製作される。金属粉末として、ここではたとえばチタン合金Ti6Al4Vが用いられる。素材は、接着体および/または冠を支持する領域で、射出成形型により、完成形状に数理的に近似する形状を得る。素材は、歯肉およびインプラント体寄りの領域で、射出成形型により、素材ピンの形状を得る。素材ピンは、機械式かつ/または光学式の分離加工により、その完成形状を得る。その際、歯肉寄りのインプラントフランジが形成され、その歯肉寄りの面に、少なくとも部分的に所定の構造が加工される。
【0007】
上部構造体支持体は、インプラントポストを有し、そのインプラントポストの外側の構成は、真っ直ぐな円錐台に相当する。インプラントポストは、上部構造体支持体のインプラントフランジをベースとしていて、そこから垂直に突出している。インプラントフランジの外縁は、たとえば円形を有し、円形の中心点は、インプラントポストの中心線に対して同心に配向されている。このようにして個々のインプラントポストに、たとえば接着体および/または歯冠が被嵌可能である。接着体および/または歯冠は、たとえば回転対称の素材から製作されている。
【0008】
上部構造体支持体は、屈曲された連続する空洞部を有し、空洞部は、一方では内側に位置するねじ座を有し、他方では湾曲したねじ導入通路を有する。空洞部の下端の領域に設けられたねじ座は、インプラントフランジの軸方向の組付け接合部の下方に位置し、これにより上部構造体支持体をインプラント体上に固定するねじは、深い位置に安定した座を得る。ねじ頭部と上部構造体支持体との間に位置する組付け接合部の堅固で密に接触する域は、補綴義歯の組付け時に、インプラント体と上部構造体支持体との間に配置された組付け接合部の堅固で密に接触する域も位置決めされている高さに位置する。ねじ止め部のクランプ力は、前述の組付け接合域の領域で、とりわけ半径方向の、シール作用および安定性を促進する力成分を提供する。同時に、深く位置するねじ頭部の位置により、熱膨張に起因する負荷が最小限に抑えられている。というのも、ねじ頭部とインプラントねじ山の上側の領域との間のクランプ力導入の距離が極めて短くなっているからである。ねじのより深い着座は、上部構造体支持体の、骨により近い屈曲をも可能にし、これにより部分的に吸収された顎骨または小さな材料厚さを有する歯肉領域に対する補綴物の適合が簡単化される。
【0009】
本発明の別の詳細は、従属請求項および略示された実施の形態の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】補綴義歯の分解図である。
図2】補綴義歯の側面図である。
図3】補綴義歯の拡大縦断面図である。
図4】上部構造体支持体の斜視図である。
図5】支持カバー面が平坦な上部構造体支持体の縦断面図である。
図6】支持カバー面が上向きに隆起した、図5と同様の図である。
図7】支持カバー面が下向きに隆起した、図5と同様の図である。
【0011】
図1は、人工歯(1)の全ての部品を分解図の形で例示している。基台として、中空ねじ状のインプラント体(10)が用いられる。インプラント体(10)に、上部構造体支持体(20)が、たとえばその上に接着された接着体(100)と組み合わせて、特別な六角ねじ(90)を用いて回動不能にねじ止めされる。接着体(100)に、通常、人工歯冠(120)が被嵌されて接着される。
【0012】
インプラント体(10)は、図1図3によれば、場合によりセルフタッピングの、たとえば非メートル単位の雄ねじ山(11)を有する中空ねじである。雄ねじ山(11)は、たとえば3.53mmの直径の場合、8.42mmの長さを有する。インプラント体(10)は、多段の内空部(13)を有し、内空部(13)は、ここでは3つの区域に分けられている(図3参照)。第1の区域(14)は、インプラント体(10)のインプラント肩部(12)の領域に位置し、この第1の区域(14)は、たとえば内側円錐部(14)であり、内側円錐部(14)は、たとえば0.65mmの高さの場合、たとえば30°の頂角を有する(図3参照)。内側円錐部(14)は、第2の区域(15)の一部として、回り止めとして用いられる、たとえば六角穴の形状を有する構造部へ移行している。内側六角部(15)は、たとえば2.89mmの高さの場合、2.1mmの二面幅(互いに平行な2面間の距離)を有する。たとえば2重の六角穴または別の形状結合式のもしくは摩擦力結合式の回り止め幾何学形状部であってもよい内側六角部(15)に、場合により、ここでは図示されていない、インプラント体(10)内での上部構造体支持体(20)の調心を支援する円筒座が続いている。この場合、たとえば短い円筒座は、内側六角部(15)の二面幅に相当する直径を有する。
【0013】
第3の区域(17)は、ねじ山付き孔であり、このねじ山付き孔は、組付け時に、上部構造体支持体(20)を保持する六角ねじ(90)を受容する。たとえば2.9mmの長さのM1.6雌ねじ山(18)の端部の後方に、たとえば短い円筒の不完全ねじ部が存在する。
【0014】
たとえば7.67mmの長さの上部構造体支持体(20)は、主として、インプラント体(10)内に着座した状態で、人工歯冠(120)のための基台として用いられる。上部構造体支持体(20)は、インプラント体(10)寄りの領域(51)と、歯冠(120)または上部構造体を保持する領域(21)とを有する(図4および図5参照)。
【0015】
インプラント体(10)寄りの領域(51)は、中空のインプラントピン(50)である。このインプラントピン(50)は、たとえば0.94mmの長さの外側円錐部(53)を含むたとえば平均1.04mmの長さのインプラントネック(52)と、2.1mmの二面幅を有するたとえば1.5mmの長さの外側六角部(54)と、場合によっては設けられる短い円筒付加部とから成っている。後者である円筒付加部は、ここでは図示されていない。
【0016】
外側円錐部(53)および外側六角部(54)は、インプラント体(10)の内空部(13)に正確に着座している。インプラント体(10)の尖端部を指向する軸方向において、外側六角部(54)の端面および場合によっては存在する短い円筒付加部は、内空部(13)と接触することはない。
【0017】
インプラント円錐部(53)の上方に、たとえば皿状のインプラントフランジ(31)が続いており、インプラントフランジ(31)は、たとえば連続的に変化して、インプラントネック(52)から外方へ突出している(図4図7参照)。たとえば丸いインプラントフランジ(31)の下面(32)は、少なくとも部分的に、頂角が歯冠(120)へ向けて開いている円錐台の側面の形状を有する。頂角は、たとえば90°〜135°である。場合により、インプラントフランジ(31)の下面も、相互に突出する、部分的に真っ直ぐでない複数の円錐部から成っていてもよく、この場合、各々の円錐部は、中心線(29)に対して別の角度を形成している。円錐部の間の移行部は、場合により丸み付けられている。インプラントネック(52)の円錐部の一部の代わりに、自由曲面を用いてもよい。
【0018】
インプラントフランジ(31)の外縁(33)は、ここでは場合により変化する、中心線(29)に対する距離を有する。本実施の形態では、この距離は、一定である。この距離は、たとえば2.23mmである。この場合、この外縁(33)は、基準平面(38)または図6および図7に示す端面(77)の外側の境界である。この場合、外縁(33)は、本実施の形態では、中心線(29)の長手方向に高さがずらされていない。しかし他の実施の形態では、少なくとも部分的に高さがずらされていることが考えられる。その場合、高さのずれは、たとえば2mmまで実現可能である。
【0019】
インプラントフランジ(31)の上方で、インプラントポスト(23)の形態の上部構造体支持体(20)の領域(21)が延在している。
【0020】
たとえば4.03mmの高さの中空のインプラントポスト(23)は、ここでは六角形の真っ直ぐな錐台の形状を有する。錐台は、ここでは錐台の6つの長い錐体縁部を有し、その縁部の領域に、突部(26)が配置されている。突部(26)の、半径方向外向きに配向された外面(27)は、たとえば真っ直ぐな円錐台側面の形状をした仮想の包絡面(28)の部分面である。この場合、外面(27)は、理論上の錐体縁部上にまたはその下方もしくは上方に位置してよい。上方または下方の位置は、0.2mmまでであってよい。包絡面(28)の頂角は、通常、5°〜12°である。ここでは、頂角は、たとえば7.36°である。円錐台側面形状の包絡面(28)は、インプラントフランジ(31)からの距離が増加するにつれ先細りになっている。
【0021】
図4および図5では、インプラントポスト(23)は、たとえばインプラントフランジ(31)の付近に複数の突部(26)のうちの1つに、たとえば0.85mmの長さの回り止めウェブ(41)を有し、回り止めウェブ(41)は、仮想の円錐台側面形状の包絡面(28)を越えてたとえば0.25mm突出している。回り止めウェブ(41)の幅は、平均でたとえば0.58mmである。インプラントポスト(23)のこのような特別な形状により、支持されるべき接着体(100)のための、回動を防止する基台が得られる。
【0022】
上向きに、インプラントポスト(23)は、場合により載置面として用いられる上面(24)で終端している。上面(24)は、図5を参照すると、ここでは中心線(29)に対して垂直に向けられている。
【0023】
インプラントポスト(23)は、たとえばインプラントフランジ(31)へ向かう、丸み付けられた移行領域(34)を有する。移行領域(34)の周囲に、インプラントフランジ(31)は、図4および図5によれば、平面(38)を形成するフランジ上面(37)を有する。外縁(33)によって外側を画定される平面(38)を、中心線(29)が、たとえば中心で垂直に交差している。面積の大きなフランジ上面(37)は、とりわけ接着体(100)および/または歯冠(120)のための着座面を形成している。
【0024】
丸み付けられた移行領域(34)は、軸方向に中心線(29)に対して平行に0.2mmまで凹設されてもよいので、面状のフランジ上面(37)とインプラントポスト(23)との間にたとえば環状の溝(35)が形成される(図7参照)。
【0025】
追加的に、上部構造体支持体(20)は、少なくともインプラントフランジ(31)の上方に窒化チタン被覆を具備する。その層厚は、たとえば1μm〜4μmである。代替的に、そこに薄肉のセラミック被覆または共重合体被覆が塗布されていてもよい。
【0026】
図5によれば、上部構造体支持体(20)は、連続する空洞部(61)を有し、空洞部(61)は、中央の領域に、73°±13°の角度が形成された屈曲箇所を有する。完成加工された空洞部(61)は、3つの空洞域から成っている。下側の空洞域(62)は、インプラントピン(50)に属する。下側の空洞域(62)は、たとえば、たとえば1.81mmの長さの円筒形の孔であり、その直径は、たとえば1.73mmである。下側の空洞域(62)に、上向きに拡開している内側円錐部(65)が続いている。たとえば1.08mmの高さの内側円錐部は、たとえば30°の頂角を有する。内側円錐部(65)は、ねじ(90)の頭区分を載置するのに用いられ(図3)、基準平面(38)の下方に位置している。孔(62)と内側円錐部(65)とは、たとえばインプラントピン(50)の外壁の中心線(59)と重なる共通の中心線(63)を有する。
【0027】
図3によれば、この孔(62)を、補綴物が組み付けられた状態で、六角ねじ(90)の胴部(96)が貫通し、この場合、六角ねじ(90)の胴部(96)は、孔(62)の壁部に接触しない。
【0028】
インプラントポスト(23)内で延在する上側の空洞域(67)は、円筒形の孔であり、その直径は、たとえば3.7mmの長さの場合、2.42mmである。上側の空洞域(67)は、ねじ(90)を導入するとともに、ねじ(90)を締め付ける工具をガイドするのに用いられる。上側の空洞域(67)の中心線(69)は、たとえばインプラントポスト(23)の外壁の中心線(29)に対して同心に方向付けられている。孔(67)は、たとえばインプラントフランジ(31)の基準平面(38)の手前約0.33mmで終端している。
【0029】
両方の中心線(63)と(69)とは、本実施の形態では、中央の空洞域(64)において、上側の空洞域(67)と下側の空洞域(62)とを相互に結合する交点(71)で交差している。中央の空洞域(64)は、湾曲した内空部であり、この内空部において、孔(67)と内側円錐部(65)とは、たとえば角を成すことなく接線方向に滑らかに移行した状態で相互に接続している。この場合、交点(71)は、基準平面(38)の下方で所定の距離(72)を置いて位置している。ここでは、この距離は、たとえば0.22mmである。さらに、基準平面(38)と中心線(69)との交点は、ねじ頭部着座面(65)の上縁(66)に沿った開口面と中心線(63)との交点から、下側の空洞域(62)の平均直径の少なくとも17パーセントの長さの距離だけ離れて位置している。これら全てにより、上部構造体支持体(20)内に深く着座するねじ(90)が実現可能である。したがって、ねじ(90)は、上部構造体支持体(20)の下半部に位置している。
【0030】
図6および図7には、2つの上部構造体支持体(20)が示されており、上部構造体支持体(20)のインプラントフランジ(31)は、それぞれ平坦なフランジ上面の代わりに、円錐台側面形状の支持カバー面(75,76)を有する。図6によれば、円錐台側面(75)は、その円錐台側面(75)の仮想頂点がインプラントポスト(23)の領域に位置するように配向されている。頂角(78)は、図6によればたとえば150°である。この場合、図5の基準平面(38)は、円錐台側面(75)の底面若しくは大きな端面(77)により置き換えられている。端面(77)は、インプラントフランジ(31)の外縁(33)により形成される。
【0031】
図7によれば、インプラントフランジ(31)の円錐台側面形状の支持カバー面(76)は、下向きに突出しており、これにより円錐台側面の仮想頂点は、インプラントピン(50)の方向に向いている。ここでも、底面若しくは大きな端面(77)が、基準平面(38)を形成しており、基準平面(38)の下方に交点(71)が位置している。頂角(78)は、図7によればたとえば158°である。
【0032】
上部構造体支持体(20)は、広範囲にわたって壁厚さの変化が小さい狭幅で薄肉の構成部材である。平均以上の個々の材料集中は、構造上回避される。図5において、上部構造体支持体(20)は、両方の中心線(59)と(69)とにより形成される平面で縦断されている。この縦断面図においては、構成部材の外側輪郭および空洞輪郭により包囲される片側の領域内の最大の材料集中箇所に測定円(9)が収まっており、測定円(9)は、2箇所で断面外側輪郭に接していて、1箇所で断面内側輪郭に接している。この最大の測定円(9)は、下側の空洞域(62)の平均直径の25パーセントよりも小さい直径を有する。
【0033】
上部構造体支持体(20)上に、本実施の形態では、接着体(100)が接着されるまたはセメント固定される(図1図3参照)。接着体(100)は、歯補綴物内で上部構造体支持体(20)と人工歯冠(120)との間に配置された中空体である。接着体(100)により、とりわけ歯冠(120)の角度位置が、インプラントポスト(23)の角度位置に合わせて調整される。
【0034】
接着体(100)は、ほぼスリーブ状の、たとえばほぼ回転対称の構成を有する。接着体(100)の内壁(105)は、少なくとも部分的に、半径方向に、インプラントポスト(23)の包絡面(28)に適合されている。接着体(100)と上部構造体支持体(20)との間に配置された回り止め(41)が例外となっている。
【0035】
接着体(100)は、拡幅された、たとえば環状の縁領域(107)を有し、一方では縁領域(107)により、接着体(100)は、軸方向に上部構造体支持体(20)のフランジ上面(37)に支持されていて、他方では縁領域(107)により、接着体(100)は、それ自体が歯冠(120)のために少なくとも部分的に軸方向の支持部を提供する。
【0036】
支持作用を有する上部構造体支持体(20)と被嵌可能な接着体(100)との間の組付け遊びは、たとえば30μm〜50μmであるので、接着体(100)は、接着剤(113)を介して、上部構造体支持体(20)のインプラントポスト(23)上に大きな面積にわたって載置することが可能である。
【0037】
上部構造体支持体(20)上に回動不能に載置可能とするために、接着体(100)は、たとえば下側の領域で、接着体(100)のたとえば円錐の内空部(106)に、溝(108)を有し、溝(108)の側面に、上部構造体支持体(20)の回り止めウェブ(41)が支持される。接着体(100)は、その上面(102)の領域に、孔状の内空部(106)を有し、内空部(106)は、補綴物が組み付けられた状態で、インプラントポスト(23)の孔(67)の延長部を成している。内空部(106)に、ねじ(90)を締め付けた後で、場合により充填剤(8)を充填することが可能である。
【0038】
六角ねじ(90)は、3つの領域に、つまり頭部領域(91)と胴部領域(96)とねじ山領域(97)とに分けられている(図1図3参照)。第1の領域は、頭部領域(91)である。頭部領域(91)は、円錐形の頭部区分(92)と、その上に配置された工具保持部(94)とを含む。たとえば1.03mmの高さの頭部区分(92)は、ねじ山領域(97)の方向に先細りに延在する、たとえば30°の頂角を有する円錐台の形状を有する。円錐形の領域でもってねじ(90)が上部構造体支持体(20)に当接しており、この円錐形の領域は、たとえば0.83mmの最大長さを有する。円錐形の領域の最大の直径は、ここでは2.06mmである。
【0039】
頭部区分(92)は、外方へ隆起する円錐の頭部区分端面(93)で終端しており、その頂角は、たとえば160°である。頭部区分端面(93)上に、一体に成形された工具保持部(94)が載置されており、工具保持部(94)は、1.45mmの二面幅の玉状の外側六角部を成している。外側六角部は、相並んで位置する6つの接触側面を有し、接触側面は、それぞれ3つの面区分から成っている。上側の面区分(85)および下側の面区分(86)は、それぞれ工具保持部高さの0.4mmにわたって延在している。両方の面区分は、平坦であり、ねじ中心線(89)とそれぞれたとえば11.5°の角度を形成している。上側の面区分(85)の上端は、下側の面区分(86)の下端のように、ねじ中心線(89)へ向けて傾斜している。上下に配置された平坦な2つの面区分(85,86)の間に、それぞれ1つの、アーチ形の外方へ湾曲した面区分(87)が配置されている。面区分(87)の、ねじ中心線(89)に対して横向きの湾曲は、たとえば0.9mmの半径を有する。
【0040】
工具保持部(94)上に、ねじ(90)を締め付けるために、六角穴を有するレンチが装着可能である。上側の面区分(85)および下側の面区分(86)の特別な配置により、レンチは、トルク伝達に際してその長さ方向に沿って反力を受けない。レンチの前方の端面は、ねじ頭部(92)の円錐台側面状の頭部区分端面(93)上をわずかな摩擦で支障なく転動する。
【0041】
頭部区分(92)の円錐形の領域に、たとえば接線方向に第2の領域、つまり胴部領域(96)が続いている。伸びボルト状の胴部領域(96)は、回転対称のくびれ部から成っており、くびれ部は、ねじ中央領域において、頭部領域(91)の自由端部からたとえば3.5mm離れており、たとえば1.3mmのその最小の直径を有する。くびれ部の外側輪郭の平均的な湾曲は、図3によれば平均でたとえば4.44mmの半径を有する。
【0042】
第3の領域は、ねじ山領域(97)である。ねじ山領域(97)は、たとえば転造されたM1.6ねじ山を有し、その利用可能な長さは、たとえば2.6mmである。
【0043】
本実施の形態によれば、歯冠(120)は、接着体(100)上に載置されている。したがって歯冠(120)の内壁(125)は、接着体(100)の外壁(101)に適合されている。ここでも外壁(101)と内壁(125)との間に位置する遊びは、約30μm〜50μmである。接着体(100)および歯冠(120)は、その接着接合部(131)の縁(132)の領域が、1に近い10分の数ミリメートルで90±10°の角度で共通の補綴物外面(2)に至るように構成されている。その接着接合部(131)の縁の領域で、歯冠(120)の外面(121)と、接着体(100)の外面(101)とは、接線方向にまたは少なくともほぼ接線方向に相互に移行している。そこに屈曲部が設けられるべきである場合には、屈曲部が形成する角度は、180°よりも小さく175°よりも大きな角度の範囲内にある。
【0044】
したがって図3によれば、補綴物が完成した状態で、上部構造体支持体(20)は、インプラント円錐部(53)と回り止め異形部(54)とを用いて回動不能に、かつねじ(90)を用いてねじ止めされて、インプラント体(10)の円錐座(14)内に着座している。接触面(73)において、頭部区分(92)が円錐座(14)にねじクランプ力を導入する。この接触面(73)は、図3において破線で縁取られていて、破線の対角線で記入されている。
【0045】
インプラントネック(52)およびインプラントフランジ(31)の下面(32)は、通常、ここでは図示されていない歯肉に当接している。インプラントフランジ(31)上に、接着体(100)と人工歯冠(120)との組合せが、接着された状態で載置されている。
【0046】
本文献において、平面に垂直にたとえば中心線が交差していることが本文の複数の箇所で言及されている。この場合、±2°の角度差は依然として垂直に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0047】
1 補綴の義歯
2 補綴物外面
8 セメント、接着剤、充填剤
9 測定円
10 インプラント体
11 雄ねじ山
12 インプラント肩部
13 段状の内空部
14 内側円錐部、第1の区域、円錐部、円錐座
15 内側六角部、第2の区域、対応異形部
17 ねじ山付き孔、第3の区域
18 雌ねじ山
19 (10)の中心線
20 上部構造体支持体、ハイブリッドアバットメントの一部
21 歯冠寄りの領域
23 インプラントポスト
24 上面、載置面
26 突部
27 外面、半径方向
28 包絡面
29 (23)の中心線
31 インプラントフランジ
32 下面、歯肉寄りの面
33 縁
34 移行領域、丸み付け部
35 溝
37 フランジ上面、支持カバー面
38 平面、基準平面
41 回り止めウェブ、回り止め
50 インプラントピン
51 領域、インプラント体寄り
52 インプラントネック
53 インプラント円錐部、外側円錐部
54 回り止め異形部、外側六角部
59 (50)の中心線
61 空洞部、屈曲された;ねじ導入内空部
62 下側の空洞域;円筒形の孔
63 (62)の中心線
64 中央の空洞域
65 ねじ頭部着座面、内側円錐部、空洞域
66 (65)の上縁
67 上側の空洞域;円筒形の孔
69 (67)の中心線
71 交点
72 (38)と(71)との間の距離
73 (65)と(92)との間の接触面
74 縁;(73)の上縁
75 円錐台側面、上向きに隆起した支持カバー面
76 円錐台側面、下向きに隆起した支持カバー面
77 (75)または(76)の大きい方の端面
78 (75)または(76)の頂角
85,86 (94)の平坦な面区分
87 (94)の湾曲した面区分
89 ねじ中心線
90 六角ねじ、ねじ
91 頭部領域
92 頭部区分、円錐形のねじ頭部
93 頭部区分端面
94 工具保持部;玉状の外側六角部
96 胴部領域、くびれ部、胴部
97 ねじ山領域、ねじ山
100 接着体、ハイブリッドアバットメントの一部
101 外壁、外面
102 上面
105 内壁、内面
106 円錐台側面形状の内空部
107 縁領域
108 溝
111 (23)と(100)との間の接着接合部
113 接着剤
120 人工の歯冠、上部構造体
121 外壁、外面
125 内壁、内面
131 (100)と(120)との間の接着接合部
132 接着剤接合縁
133 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7