(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外部キャビティーが、前記分光的に最適化された太陽電池に取り付けられた1を超える帯域透過フィルターを含有し、前記帯域透過フィルターは異なる透過波長を有する、請求項2の非追尾型太陽エネルギーコレクター。
前記太陽放射コンセントレーターが、リフレクターもしくはそのアレイ、またはレンズもしくはそのアレイである、請求項1〜3いずれかの非追尾型太陽エネルギーコレクター。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明において、本願の様々な局面が記載される。説明目的で、本願の完全なる理解のために、特定の構成および詳細を記載する。しかしながら、本願は、ここに提示された特定の詳細なくても実施可能であることは当業者に明らかである。さらには、周知の特徴は、本願を曖昧にしないために、割愛または簡略化することがある。
【0017】
ここで用いる専門用語は、特別な具体例のみを説明するためのものであり、本発明を限定する意図はない。請求項で用いられる用語「含む・備える’’comprising’’」および「含む・備える’’comprises’’」は、その後に列記される手段に限定するものと解釈してはならず;それらは、他の要素や工程を排除しない。それらは、1以上の他の特徴、整数、工程または成分、またはそれらの群の存在および/または付加を排除しないが、言及されたように、記述した特徴、整数、工程および/または成分の存在を特定するものとして解釈される必要がある。かくして、表記「xおよびzを備えるデバイス」の範囲が、成分xおよびzのみからなるデバイスに限定されてはならない。また、表記「工程xおよびzを含む方法」の範囲がこれらの工程のみからなる方法に限定されてはならない。
【0018】
断りがない限り、ここで用いるとき、用語「約」は、当該分野における通常の許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差であると理解される。ひとつの具体例において、用語「約」は、それと共に用いられる数の報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%以内を意味する。例えば、用語「約」は、記述された値の10%,9%,8%,7%,6%,5%,4%,3%,2%,1%,0.5%,0.1%,0.05%,または0.01%以内であると直ちに理解することができる。他の具体例において、用語「約」は、例えば、用いられた実験技術に依存して、より高い変動許容度を意味し得る。特定の値の前記変動は、当業者に理解され、本発明の文脈内にある。実例として、「約1から約5」の数値範囲は、明示的に記載された約1から約5のみならず、個々の値および、当該記載された範囲内の小範囲をも包含する。かくして、この数値範囲には、2、3、および4ならびに、例えば1〜3、2〜4、および3〜5の小範囲、さらには、独立して、1、2、3、4、5、または6が含まれる。同じ原則が、最小値または最大値としてひとつの数値のみを記載する範囲に適用される。文脈から明らかに異なることがない限り、ここで提示される全ての数値は用語「約」によって修飾される。他の同様の用語、「実質的に」、「概略的に」、「まで」などは、値が絶対的なものではないように用語または値を修飾すると解釈されるべきである。そのような用語は、それらが当業者に理解されるように修飾する状況および用語によって定義される。これは、少なくとも、値を測定するために用いる所与の実験、技術または装置についての予期される実験誤差、測定誤差、および機械誤差を含む。
【0019】
ここで用いるとき、用語「および/または」は、関連して列記された1以上の項目のいかなる組合せも含む。特段の定めなければ、ここで用いる全ての用語(技術および科学用語を含む)は、この発明の属する分野の当業者が普通に理解するのと同じ意味を有している。以下のことがさらに理解されるであろう:普通に用いられる辞書に定義されたもののような用語は、明細書の文脈および関連技術におけるそれらの意味と一致する意味を有していると解釈されるべきであり、ここに明示的に定義されない限り、理想的または過剰に形式的な意味に解釈されるべきではない。周知の機能または構成は、簡潔さおよび/または明確さのために詳細には記載しない。
【0020】
ある要素が、他の要素に対して、「上に」、「付着し」、「接続し」、「連結し」、「接触し」等と言われるとき、他の要素に対して直接、上に、付着し、接続し、連結し、もしくは接触するか、または、介在する要素が存在してもよい、と理解される。対象的に、ある要素が、もう一つの要素に対して、「直接上に」、「直接付着し」、「直接接続し」、「直接連結し」、または「直接接触し」等と言われるとき、介在する要素は存在しない。もう一つの特徴に「隣接して」配置される構造または特徴への言及は、その隣接する特徴に重なるかその下に配置された部分を有するであろう。
【0021】
特段の定めなければ、ここで用いる全ての用語(技術および科学用語を含む)は、この発明の属する分野の当業者が普通に理解するのと同じ意味を有している。以下のことがさらに理解されるであろう:普通に用いられる辞書に定義されたもののような用語は、明細書の文脈および関連技術におけるそれらの意味と一致する意味を有していると解釈されるべきであり、ここに明示的に定義されない限り、理想的または過剰に形式的な意味に解釈されるべきではない。周知の機能または構成は、簡潔さおよび/または明確さのために詳細には記載しない。
【0022】
本願は、
図1に示す非追尾型太陽エネルギーコレクターに関し、
a)入射太陽放射線(2)を、平行化し、かつ、反応性リフレクター(3)の表面に沿って少なくとも一つの焦点に向かわせる、少なくとも一つの太陽放射コンセントレーター(1);
b)外部キャビティー(4)の上部に搭載され、太陽放射線(2)を前記部キャビティー(4)に入射させる反応性リフレクター(3)、
前記反応性リフレクター(3)は、強度閾値を超える太陽放射線(2)の前記少なくとも一つの焦点に瞬時に形成された少なくとも一つの透明ゾーン(5)を有し、
前記少なくとも一つの透明ゾーン(5)は、前記反応性リフレクター(3)の表面に沿って、太陽放射線(2)の前記少なくとも一つの焦点位置を追って常に移動し;および
c)太陽電池(6)を含有し、入射太陽放射線(2)を前記外部キャビティー(4)の壁上の前記太陽放射線(2)の内部散乱によって捕捉することができる外部キャビティー(4)、
前記外部キャビティー(4)内部の前記太陽放射線(2)の前記内部散乱は、太陽放射が前記太陽電池から散逸することを防止し、それによって太陽放射損失を最小限化することができる、
を備える。
【0023】
ひとつの具体例の非追尾型太陽エネルギーコレクターは、3つの異なる構成で実現できる。第1の「素朴な」構成が
図1に示される。この場合、太陽放射コンセントレーターは、入射太陽放射線(2)を、平行化し、かつ、反応性リフレクター(3)の表面に沿って焦点に向かわせるレンズ(1)である。「反応性リフレクター」は、ある強度閾値を超えると透明になるリフレクターと定義される。光学レンズ(1)は、例えば、軸屈折率分布レンズであり、それは太陽光線の完全な受動集中を与える。これは、高効率太陽光発電に動力を与える低コスト、小型、受動コンセントレーターアレイを創作することによって、高効率受動フラットパネルを可能にする。
【0024】
反応性リフレクター(3)は、外部キャビティー(4)の上部に搭載され、太陽光線の対応する焦点に瞬時に形成されたひとつの透明ゾーン(5)を有し、これらの太陽光線が前記外部キャビティー(4)に入るようにする。透明ゾーン(5)は、反応性リフレクター(3)の表面に沿って、太陽光線の焦点位置を追って常に移動することができる。透明ゾーン(5)のこの独特な運動の背後にある現象を、以下に詳細に説明する。
【0025】
外部キャビティー(4)は、太陽電池(6)を含有し、前記外部キャビティー(4)の壁上の前記太陽放射線の内部散乱プロセス(7)によって、入射した太陽光線を捕捉できる。前記外部キャビティー(4)内部の太陽光線の内部散乱は、太陽放射が前記太陽電池(6)から散逸することを防止し、それゆえ、太陽放射損失を最小限にする。
【0026】
図2は、ひとつの具体例の非追尾型太陽エネルギーコレクターの「フラットパネルマルチ−コンセントレーター」構成を示す。この構成は、太陽放射コンセントレーターとしてレンズレットアレイ(1)を含有する。「レンズレットアレイ」は、小レンズ(レンズレット)のアレイと定義することができ、各小レンズがアレイの分離不可能なパーツを構成し、アレイの他のレンズレットと同一平面にあり、通常、アレイの他のレンズレットと同一焦点距離を有する。太陽放射コンセントレーター(1)にはいくつかのレンズレットがあるので、反応性リフレクター(3)の表面に沿って平行化された太陽光線(2)によって形成された、いくつかの焦点がある。結果として、いくつかの透明ゾーン(5)が太陽光線の対応する焦点に瞬時に形成され、これらの太陽光線が前記外部キャビティー(4)に入射するようにする。反応性リフレクター(3)は太陽電池(6)を含有する外部キャビティー(4)の上部に搭載される。複数の透明ゾーン(5)は、反応性リフレクター(3)の表面に沿って、太陽光線の焦点位置を追って常に移動することができる。外部キャビティー(4)は、前記外部キャビティー(4)の壁上での前記太陽放射線の内部散乱プロセス(7)によって入射した太陽光線を捕捉することができる。前記外部キャビティー(4)内部の太陽光線の内部散乱は、太陽放射が前記太陽電池(6)から散逸することを防止して、それゆえ、太陽放射損失を最小限化する。
【0027】
図3を参照して、いわゆる「スペクトルスプリッティング」構成を示す。この特別の構成において、太陽放射線(2)は、レンズまたはそのアレイである太陽放射コンセントレーター(1)に入射する。太陽放射コンセントレーター(1)は、入射した太陽光線(2)を、平行化し、かつ、反応性リフレクター(3)の表面に沿って焦点に向かわせる。反応性リフレクター(3)は、外部キャビティー(4)の上部に搭載され、対応する太陽光線の焦点に瞬時に形成された少なくとも一つの透明ゾーン(5)を有し、それによって、これらの太陽光線が前記外部キャビティー(4)に入射するようにする。透明ゾーン(5)は、反応性リフレクター(3)の表面に沿って、太陽光線の焦点の位置を追って常に移動することができる。
【0028】
図3に示すスペクトルスプリッティング構成は、1を超える分光的に最適化された太陽電池(6)および、対応する分光的に最適化された太陽電池(6)に取り付けられた1を超える帯域透過フィルター(8)を含有する外部キャビティー(4)を有し、前記帯域透過フィルター(8)は異なる透過波長を有することを特徴とする。外部キャビティー(4)は、内部散乱プロセス(7)によって入射した太陽光線を捕捉し、太陽放射が前記太陽電池(6)から散逸することを防止し、それゆえ、太陽放射損失を最小限にすることができる。
【0029】
図4は、反応性リフレクターであって、
(a)水などの液体(43)中の金属コート、好ましくは、銀コートまたはアルミコートされたガラスマイクロ球体などの、高反射性マイクロ粒子(42)の懸濁物で充填された開口(41)を有する分離フィルター(または、スペーサーシート)(40)、および
(b)2枚の光学的に透明なスライド(44,45)、第1の光学的に透明なスライド(44)は前記反応性リフレクター用の固体サポートを形成する前記分離フィルター(40)の下部に取り付けられ、第2の光学的に透明なスライド(45)は前記開口(41)を覆う前記分離フィルター(40)の上部に取り付けられ、ここに、前記分離フィルター(40)は2枚の前記光学的に透明なスライド(44,45)の間に挟まれ、それによってサンドイッチ状構造を形成する、
を備える、ひとつの具体例の反応性リフレクターを概略的に示す。
【0030】
金属コート、好ましくは銀コートまたはアルミコートされたガラスマイクロ球体などの高反射性マイクロ粒子(42)は、1−100μm、好ましくは42−62μmの範囲の平均径を有することができる。分離フィルター(40)は、いかなる適当なポリマー、特に、約100μmの厚を有するプラスチック製フィルムであり得る。分離フィルター(40)内部の開口(41)は約5mmの直径を有することができ、前記非追尾型太陽エネルギーコレクターの有効口径を定める。2枚の光学的に透明なスライド(44,45)は、いかなる市販の顕微鏡スライドからも選ぶことができる。
【0031】
ひとつの具体例の反応性リフレクターを製造する方法は、以下の工程:
(i)前記分離フィルター(40)を前記反応性リフレクター用の固体サポートを形成する第1の光学的に透明なスライド(44)の上に置くこと;
(ii)浸漬液(43)中の高反射性マイクロ粒子の希釈懸濁液(42)を調製すること;
(iii)前記分離フィルター(40)の開口(41)を浸漬液(43)中の前記高反射性マイクロ粒子の希釈懸濁液(42)で充填して前記高反射性マイクロ粒子(42)の均一薄層を形成すること;および
(iv)第2の光学的に透明なスライド(45)を前記分離フィルター(40)上に置き、それによって、前記開口(41)を覆い、前記高反射性マイクロ粒子(42)を密封すること
を含む。
【0032】
本発明は、電磁波のエネルギーが水などの浸漬液(43)中の反射性マイクロ粒子(42)の運動に効率的に転換できることを見出した。これは、熱を他の形態のエネルギー、および、気泡の動力学挙動の猛威に転換するときの相転移の効率を利用することにより、達成される。提案するアプローチは、今までに達成されたものよりも6桁大きい等価力でマイクロ粒子(42)を推進することによって実証される。この場合、相転移の爆発的な性質とそれに続く拡張およびその後の気泡の完全な液化は50μsも続かない。それにもかかわらず、測定された気泡を公知のモデルと比較すると、球体の明らかな加速とは別に、プロセスはほぼ断熱的であり、すなわちエネルギーの消散が最小であることが示された。
【0033】
かくして、ひとつの具体例の反応性リフレクターは、上記アプローチが本願の主たる局面を構成することに基づき、半透明から透明に二元的に切り替えることができる。半透明から透明への二元スイッチングは、光では達成できなかった力を要求するコロイド物質の大規模再組織化によって達成される。提案したアプローチは、太陽エネルギーコレクションに限定されないが、概略、マイクロ流体、マイクロ−ヒートエンジンおよびポンプ、ならびマイクロ−マシーンに用いることもできる。
【0034】
本願は、ミクロンサイズの粒子の光活性化運動を実証し、高速カメラおよび気泡運動の公知モデルを用いて、発生する電磁エネルギーから機械エネルギーへの変換(EMMET)を分析する。
図5a−5bを参照して、そのようなイベントのローリングビデオキャプチャーからの2つの連続画像を示す。
図5aは、運動開始直前の水浸漬ビーズが光っている明部レーザースポットを示す。ビーズは、この場合、水に浸漬され、2枚の標準微視的カバースリップにキャップされた50−μm銀コートガラス球体である。サンプルは、撮像のため上部から白色光で照射し、405nmレーザーで下部から照射して、EMMETを変調する。この実験の詳細な説明については、実験セクションを参照すればよい。
【0035】
図5bは、マイクロ球体がそのサイズの10倍を超える距離移動した連続画像を示す。液体中には痕跡量の気泡も残存していないことに着目すべきである。有効力は、この場合、
【0036】
【数1】
で見積もることができ、マイクロ−ニュートンの範囲であり、式中、mΔxおよびΔt
は、移動した物体の質量継続時間(the mass duration)および移動(translation)である。この力は、同一レーザー強度を用いる放射圧ベースアプローチから予測されるものよりも一桁以上大きい。以下の段落0047に記載されるさらなる分析は、この力は、実際、今まで観測されたものの6桁以上大きいことを示す。さらに、レーザーは、0.4の低開口数を有する単純なX20対象レンズでここに焦点化し、光ピンセットは、しばしば、開口数が>1の油浸漬対象レンズを用いる。この単純比較は、マイクロ粒子の長距離強力光活性化運動として、提案するEMMETアプローチの大いなる可能性を示す。
【0037】
EMMETの開始時に行われるプロセスをよりよく把握するために、高速カメラを使用して毎秒500,000フレームの速度で一連の画像を取得した。
図6は、高速カメラを使用して毎秒500,000フレームの速度で得られた一組の連続画像であり、直径41−μmの銀コートガラスマイクロ球体における気泡の発生を2msの時間ステップで示している(AからR)。画像(A)は、気泡の形成前(気泡が初めて見える直前)のマイクロ球体を示し、画像(H)はその最大半径での気泡を示し、そして画像(R)は気泡が完全に消えた後の移動マイクロ球体を示す。撮像経路にロングパスフィルター(Thorlabs社FEL500)が配置されているため、405nmのレーザーのスポットは画像上では見えない。拡張する暗い縁は、気/液界面の進展を示し、実際は気泡である。画像(D)で現れ始める気泡中心の明るい領域は、気体がガラススライドに到達した場所を示している。これらの場合、気泡は球体よりも円盤状である。
【0038】
本発明者らは、上記したように分離フィルターで維持して、透明スライド間をより大きく離して、気泡がより球形になるか否かについても試験した。しかしながら、これらは、それほど鮮明ではないが同様の運動を示した。それゆえ、本願では示していないが、要求により提供可能である。次の2枚の画像(E)および(F)は、
図6が、気泡が拡張するとき、気泡はへこみを生じることを示す。このへこみは、この段階での進行が、依然として先行する気泡前線より遅れているマイクロ球体によって生じる。マイクロ球体は、最終的に、画像(H)から摂動し始める。画像(G)および(H)は、最大限の気泡を示し、そこから先、気泡はしぼみ始めるが、マイクロ球体は、その元来のコースをたどり続ける。これは、画像(M)で鮮明に見られる様に、最終的に、幾分気泡ピンチオフの効果に似て、気泡のへこみが膨らむ[23]。
【0039】
最終的に、気泡およびマイクロ球体は、画像(P)に見られるように、分離する。そこから、マイクロ球体は水中を自由に動き、気泡は見えなくなり続け、完全に消失する。同一のイベントは2つとないが、同様のトレンドが、何百もの場面で異なる粒子径で観察された。
【0040】
図7aは、典型的なマイクロ球体運動および対応する気泡半径を示す。マイクロ球体位置は青色「o」マークで示され、気泡の半径は橙色「x」マークで示されている。文字は、
図6の各フレームに対応する。挿入図は、気泡が連続位置間の200μsで消滅した後の典型的なマイクロ球体の運動を描写する。
図7bは実際には
図7aと同一であるが、挿入図は、より大きな尺度のマイクロ球体進行、すなわち、移動時間に対する、典型的な球体が初期位置から移動した距離(白抜きマル)および対応する気泡半径(バツ)を示す。約12μsより短い移動時間では、気泡およびマイクロ球体は、実際には、識別できない。30−45μsから、マイクロ球体の進行が完全停止まで著しく失速する。
図7aおよび7bの白抜きマルは、実際は、マイクロ球体の中心の位置を示し、これは、
図6に示される(A)−(R)画像に対応する。しかしながら、この時間スケールは、先に示したものよりも拡張している。
図7aおよび7bにおいてバツで示される有効気泡半径は、式:
【0041】
【数2】
により、気泡の観察表面から得られた。この選択により、気泡変形の効果が軽減され、かくして、下記する公知の分析モデルとのよりよい比較が可能となる。
【0042】
いくつかの気が付いたことがある。まず、気泡発生から12μsの転換点までの拡張段階は、26μsまでの気泡の収縮段階と鏡像関係にある。気泡がエネルギーを周囲に散逸しないので、慣性制御された気泡運動力学が勝っていることを明確に表している。公知の散逸メカニズムは、この場合、気体と液体との間の質量移動[24]、気泡内および気泡壁を通り周囲への熱移動[25]、水の粘度ならびに衝撃波の放出[26]である。最初の2つは、ここでは影響がないと予測される。なぜならば、蒸発の典型的な時間スケールは秒[24]であり、熱拡散率の特徴的な時間
【0043】
【数3】
は、およそ40μs(蒸気の熱拡散計数を
【0045】
【数5】
とした場合)であり、本発明の気泡の典型的な脈動よりも長いからである。水の粘度ならびに衝撃波の放出による散逸は、気泡の観測された運動を通して予測できない。なぜならば、
図7aおよび7bに見られるように、5m・s
−1を超えないからである。急速現象である、激しい蒸発または凝縮は、しかしながら、ありがちな衝撃波の放出とともに、脈動の非常に早期の最終段階でのみであるが、予想でき、後で説明する。
【0046】
本件において、マイクロ球体と気泡との間の相互作用を考慮すべきである。このメカニズムの手がかりは、約24μsで見ることができるマイクロ球体の突然の減速により与えられる。
図6は、その時間までに、マイクロ球体は気泡の範疇を越えて著しく摂動されることを示す。これは、減速が、おそらくマイクロ球体と周囲の水塊との摩擦によって生じることを示唆する。その時間前、マイクロ球体−水摩擦は最小限である。なぜならば、マイクロ球体は気泡内に内没し、それゆえ、先行する気泡前線の近くで水塊と一緒に移動しているからである。同様に、気泡の減速は、28μsあたりで見られる。これは、しかしながら、
図6の画像(N)−(R)に見られる気泡の大きな変形の人為的影響であるか、または、マイクロ球体摩擦の効果というよりも、早期段階の凝縮の徴候であろう。
図7bの挿入物は、マイクロ球体がその初期位置から280μm移動した後、完全停止に至るまでの、水中でのマイクロ球体進行をより大きなスケールで示す。
【0047】
上記した現象および本発明の保護見解を越えたプロセスにおけるよりよい見識を得るために、得られた実験結果を球形気泡の分析モデルと比較することができる。各EMMET事象の特定の人為的影響を軽減するために、同一のマイクロ球体で55試験を記録し、より大きな実測気泡半径での8試験を代表的な組として選択した。この実験の詳細な説明については、実験セクションを参照すればよい。
【0048】
図8は、時間とともに、有効気泡半径の進展を示す。青色「x」マークは、実測における標準偏差を示すエラーバー付きで平均気泡半径を示す。実測した平均気泡半径はバツ(標準偏差エラーバー付き)で示され、実線は慣性制御された球形気泡の予測される運動力学を示す。このトレンドは、周知のレイリー・プレセット方程式 (Rayleigh−Plesset equation)[25,27,28]:
【0049】
【数6】
(式中、R(t)は瞬間的気泡半径であり、P∞は気泡から遠く離れた液体の圧力であり、ρは水の密度であり、オーバードットは時間偏微分を意味する。)の形態で、球形気泡の運動力学についての分析モデルと比較する。気泡の慣性挙動は、この場合、気泡内部に捕捉された蒸気のポリトロープモデル(a polytropic model):
【0050】
【数7】
(式中、P
0およびR
0は、それぞれ、初期圧力および気泡半径であり、γは蒸気断熱定数である。)を採用することによって保存される[25,28]。最終的に、表面張力による圧力はヤングの式:
【0051】
【数8】
(式中、Sは表面張力計数である。)で与えられる。
【0052】
式(1)は、式(2)および(3)を用いて、数値積分されて、
図8に示される実線を生成できる。初期圧力は、水の臨界点、すなわち、P
0=22.064MPaに選び、断熱気泡動力学は、γ=1.33と仮定して保証した。また、密度および表面張力は、ρ=1000kg/m
3およびS=0.07kg/s
2と仮定した。周囲圧力P∞=44kPa、および初期半径R
i=6.45μmをフィッティングパラメータとした。前記モデルの実測データとの一致は驚くほど良く、大部分、気泡は、球体というよりも円板状であり、さらには、その表面に付着した球体を有するということが想定される。良好な一致は、しかしながら、2D気泡に対するレイリー・プレセットモデルが、右辺の様々な単項式の前因子まで式(1)に近似しているという事実[29]に支持されているのかもしれない。
【0053】
図8は、良好な一致を越えて、拡張の初期段階、さらには、収縮の後期段階にて存在する偏差を示し、それは、非常に早期および最終段階に出現する非断熱プロセスを指し示す。これらのプロセスの持続時間の度数は、圧力平衡時間
【0055】
【数10】
の気泡および蒸気中の音速C
gおよそ477.5m/sに対しておよそ0.1μsである。明らかに、そのような短時間スケールは、現在の検出限界以下である。第1は、これらの非断熱プロセスにおいて、気泡が最初に形成されると蒸発が必ず発生することである。第2は、最終的に溶かした収縮である。これらは、衝撃波も放出し、EMMET事象の開始に伴うかすかに聞こえる「クリック」音によって仮説が支持される。
【0056】
上記実測と分析モデルとの比較に基づき、以下の一連のイベントがEMMET事象の開始の間に起こることが提案される。まず、球体の表面が、レーザーからの光を吸収することによって加熱される。この加熱は、付近の水の膜が過熱されるまで温度を上昇させる。この段階の持続時間は、低レーザー出力で数秒から、100−mWの全出力で数ミリ秒まで変化する。これらの時間スケールは、本願の実験セクションで代表される加熱プロセスの有限シミュレーションによって確認される。飽和液体のフィラメントは、次いで、相転移して、高圧蒸気になる。モデルの良好な一致は、この段階の条件が水の臨界点に近く、非常に小さなスケールのみでは、幾分、水蒸気爆発[30]に似た状況である。この事象の持続時間は、おそらく、圧力平衡時間に近く、本件の場合、0.1μsである。この時間は、2μsでもマイクロ球体の位置が大きく変化しないことを示す
図6の画像(A)〜(B)に見られるように、マイクロ球体に大きな運動を与えるには短過ぎる。断熱モデルの気泡運動力学からの後の不一致は、この初期の段階は非常に非断熱的であることを示す。
【0057】
気泡が拡張するとき、蒸気が冷却し、式(2)で与えられるように、ふたつの間の断熱関係が達成されるまで、圧力が低下する。これは、気泡が最初に観察された段階でもある。この段階のマイクロ球体は、先行する気泡前線に運ばれる。
図6および
図7a〜bの双方を通して見られる気泡の一定減速は、この時間で、内部蒸気圧PVが、周囲の合成圧力および表面張力、それぞれ、P∞およびPSを下回るまで低下することを示す。
【0058】
いくつかの点で、気泡の慣性はなくなり、気泡は収縮し始めるが、依然として、断熱様式である。気泡は、しかしながら、完全な球体ではなく、そのほとんどが、三相接触線を介してマイクロ球体および、それを取り巻く気体/液体界面を後退させ[22]、一定速度で、外側に動き続ける。この反対トレンドのため、気泡は、著しく変形し、マイクロ球体は、完全分離が達成されるまで、減速する。マイクロ球体は、今や、水中で自由に移動し、気泡は、液相に戻る収縮の最終非断熱段階にある。
図7aからbにおいて、44μs後にマイクロ球体が経験する小さな加速は、気泡マイクロ球体相互作用は、気泡が見えなくなった後でさえも終わっていないことを示し、それは、衝撃波により生じるのであろう。この最終加速は、典型的な発生であって、今回の実験で分析された特定のEMMET事象に特異的なことではないことに言及することが大事である。
【0059】
提案されたEMMETアプローチは放射圧−ベースのアプローチ(主に、光活性化される)とはいくつか明らかな類似点を共有するが、根本的に起源が異なるので、いくつかの基本的な差異が優位となる。運動量移動に基づけば、放射圧は瞬時であり、光源の強度と線形関係にある。EMMETプロセスは、一方、事象の連鎖(電磁エネルギー→マイクロ粒子内の熱→水への熱伝導→水における相変化→急速気泡運動力学→マイクロ粒子の運動エネルギー)を含み、それは、瞬時でも、線形でもない。光源のいくつかの臨界強度を下記する。例えば、マイクロ球体上ヒートスポットからその周囲への熱の除去速度は、水における相変化の発生を防止するのに十分であり、それゆえ、EMMETが発生するのを防止する。その臨界強度以上では、EMETは確かであるが、加熱時間は、熱を同じ粒子から離すだけでも、変化する。十分高いレーザー強度、本件では、約100mWについては、しかしながら、EMMET開始はほとんど即座であり、数ミリ秒だけの典型的な加熱時間である。
【0060】
上記した明らかな相違にも関わらず、EMMETプロセスに対する等価力、マイクロ球体を特定時間に所定の速度にまで駆動するのにかかる時間を割り振ることによって、ふたつを比較する。
図7a〜bにおいて、開始して約40μs後、マイクロ球体が、速度V=0.75m/sにて水中で自由に移動していることが明らかである。マイクロ球体が、ほぼ全体がガラス製(密度2.5gr/cm
3)であり、その直径が40μmであることを考慮すると、その質量は、M=84x10
−12kgと算出される。その運動のその段階でのビーズの直線運動は、それゆえ、P=MxV=63x10
−12kg・m・s
−1である。典型的な時間スケールΔt=40μsを考慮する
【0061】
【数11】
という平均値定理から、有効力
【0062】
【数12】
は、およそ1.6x10
−6Nと算出される。この数値を考慮すれば、放射圧力は、今や、同一のマイクロ球体に作用する同一の光源から見積もることができる。
【0063】
EMMETプロセスは、波長λ=405nmの100−mW出力レーザービームで開始される。各フォトンは、約5x10
−19ジュールのエネルギー
【0064】
【数13】
を持っているので、フォトンは、R=2x10
17s
−1の速度に到達してしまう。各フォトンの運動量は、p=1.6x10
−27kg・m・s
−1なので、このビームが伝えることができる最大力は、
【0065】
【数14】
である。これは、EMMETが、実用上、放射圧の理論限界よりも4桁大きな力を発揮できたことを示す。この理論限界は、実際、上限であることに言及する。レーザーフォーカシングおよび球形状のマイクロ球体を考慮して、勾配および散乱力はなお小さい。光ピンセットは、例えば、同様の条件で、ピコニュートン範囲の力を伝える[16]。それゆえ、運動量からエネルギー移動へのパラダイム変化が、今日までのものよりも6桁まで大きな力でマイクロサイズ対称物を操作するために光を用いることができるようになったことは明らかである。
【0066】
かくして、ひとつの具体例の非追尾型太陽エネルギーコレクターは、上で説明したEMMET現象を利用する反射性リアクターにより、半透明から透明への二元光スイッチングの能力を有する。上記したように、ひとつの具体例の反応性リフレクターは、マイクロ粒子の高密度の懸濁液が形成されるまで、マイクロ粒子を、水で満たされた開口に充填することによって、形成される。この高密度の懸濁液は、各マイクロ粒子の反射/吸収特性により、効率的に透過を妨げる。粒子の濃密懸濁液が、マイクロ粒子の反射/吸収特性により、光の透過を妨げるときの状況を
図9に描写する。光がマイクロ粒子の層上に集光されると、高強度光路からマイクロ粒子を排除するEMMETが発生して、
図9bに概略的に示すように、光透過性が増大する。
【0067】
図9cは、10の標準化透過測定(透過率対様々なレーザー強度)の平均を示す。40−60mWの間のジャンプは、レーザーの臨界強度範囲を示し、そこを越えると、反応性リフレクターが、焦点で透明になることを示す。元来非透明層を形成しているマイクロ粒子が、推進され、移動するレーザービーム周りに再構成される能力は、今まで示されたことがない。この現象は、太陽エネルギー変換用途のみならず、マイクロ流体チップにおけるプロセスの制御、マイクロロボットの設計、ならびに、治療、診断および医療イン・ビボタスクの実行においても、関心がもたれる。
【0068】
現にある放射圧または熱泳動ベースのアプローチは、数ピコ−ニュートンを超えない比較的小さな力を生じる。本発明者らは、光エネルギーを水に浸漬されたミクロンサイズの物体の運動エネルギーに直接転換する方法を見出した。そのアプローチは、熱を輸送し、他の形態のエネルギーに転換する際の効率的な相転移および、ミクロンサイズの物体がメートル/秒の先例のない高速、またはマイクロ−ニュートンの等価力でそれらに作用するように駆り立てることができる気泡動力学の猛威を基礎とする。これらの性能指数は双方とも、今まで得られたものよりも6桁も大きい。
【0069】
さらに、提案したアプローチは、気泡が最初に出現してから数十マイクロ秒後には、気泡の痕跡も残らない点で、可逆的である。今回の実験は、気泡収縮の初期および最終段階での数マイクロ秒を除き、そのプロセスは断熱的であり、すなわち、それは最小限のエネルギー散逸で起こる。
【0070】
記載され、特許請求された装置および方法が提供する機会は、その透明表面に当たる光の強度に依存して半透明であることから透明になる二元変換を経験する無秩序光デバイスの実現により実証されている。本件における運動の指向性は、およそ50μmの金属コートガラスマイクロ球体の形態の大きな対称な対象物の各表面に光を集光することによって達成されたことに言及することが重要である。しかしながら、本発明は、太陽エネルギー転換装置および方法に限定されず、例えば、医療デバイスおよび手順、マイクロ流体、ロボティクスおよび軍事用途などにおける、光を用いた粒子の移動を要求するいかなる他の装置および方法に用いることができることも言及すべきである。
【0071】
本願の特定の特徴がここで例示され記載されてきたが、多くの修飾、置換、変更、および等価物が、当業者には明らかである。それゆえ、添付される特許請求の範囲は、本願の真の概念に収まるそのような全ての修飾および変更も包含することを意図すると理解されるべきである。
【実施例】
【0072】
実験設定およびサンプル調製
図10は、実験設定のシステムを概略的に示す。405−nmダイオードレーザー(L)からの照射は、45°ミラー(M)および対称レンズNewport社M−20x0.4NA(O1)によってサンプル上に集光する。サンプルからの透過光は、撮像および透過力測定のために、第2の対称レンズLeica社Achro4/0.1(O2)によって収集する。2つの10:90および50:50ビームスプリッター、それぞれ、BS1およびBS2を用いて、透過光を出力計(PM)に向け、撮画像ビデオカメラ(C)の背面サンプル照射のために、イルミネーター(IL)からの光をサンプルに向ける。撮像は、このカメラ(C)で行う。ロングパスフィルター(LP)を用いて、望ましくないレーザー光がカメラに到達することを妨げる。
【0073】
様々なカメラを実験全体で用いた。例えば、
図6の画像は、米国Vison Research社からの高速カメラPhantom v1211で取得した。ロングパスフィルターThorlabs社FEL0500(LP)は、望ましくないレーザー光がそれらのカメラに到達することを妨げた。サンプルは、拡大概略も図面に表しているが、米国Cospheric社からの200nm薄層で被覆されたガラスマイクロ球体、製品番号SLGMS−AG−2.5 43−62μmで構成される。調べた典型的なマイクロ球体(マイクロ粒子)の直径は、40μmから60μmの間で変化する。
【0074】
マイクロ球体は、乾燥粉末で入手するが、後で、蒸留水に浸して、2枚のガラスカバースライドの間に配置した。例えば、
図7の結果をもたらす実験において、スライドを分離することが必要であれば、90μmプラスチック分離フィルター(スペーサーシート)を2枚の透明ガラススライド間に挿入した。高速ビデオ測定に関して、各フレームは128x32ピクセルからなり、1.8μs(各フレーム間2μs)の露出で毎秒500,000フレームの速度を可能とする。
図6に示す画像は、球体運動のより明瞭な視界のため、スライド間の分離フィルターなしに取得したが、その代わり、幾分抑圧されている。
【0075】
気泡半径およびマイクロ球体位置
図7a〜bは気泡半径および球体の位置を示す。これらは、所望の特性を、最初の18フレームを
図6に示す連続画像に配分することによって得た。
図11は、気泡が最初に検出されてからの様々な時間間隔での気泡半径およびマイクロ球体位置を示す
図6の拡大版である。緑色の十字は球体の初期位置を示し、球体のその後の運動や、収縮し、その後消失する気泡の変位の参照として機能とする。中心に十字がある黄色のマルは、様々な時間間隔での球体の位置を示す。最終的に、気泡は、中心が白十字で示される白マルでハイライトされている。マイクロ球体は、プロセスの間、著しく移動(進行)しているが、気泡は、反対方向にほんのわずかに移動するだけであることは興味深い。
【0076】
気泡拡張の統計
個々の事象間の変動は、球形気泡の運動力学について、結果とレイリー・プレセットモデルとの有用な比較を容易にすることを困難にする。これらの変動は、マイクロ球体の不完全性と合わさって、関与する相転移の爆発特性に由来する。設定は、何回も何回も繰り返して正確な位置で所与のマイクロ球体を励起することを可能としないので、同一のマイクロ球体が繰り返して励起されず、サブセットの結果は、類似するEMMET事象に対応するように選択された。ここで、「類似」とは、所与のマイクロ球体上の正確に同一の位置に集光されたレーザーを有することである。
【0077】
図12は、同一のマイクロ球体に対して行われた53試験についての最大気泡半径のヒストグラムを示す。気泡半径は、90から100μmの気泡半径を中心とする正規分布に近似するようである。いずれの2つの事象も似ていないが、同一の位置にレーザーを集光することは、互いにかなり類似する気泡をもたらすと仮定することが可能である。それゆえ、最も可能性のある結果を、
図8に示す分析のため、代表的なサブセットの事象として選ぶ。これらは、96.2から98.6μmの間の最大半径を達成する8つの気泡である。
図8中のエラーバーは、このサブセット内の変動を示す。サブセットの定義は、最大気泡半径での小変動を規定し、最後のデータポイントの小変動についての理由は予測できず、その由来は不明のままである。
【0078】
加熱期間の持続時間および温度分布の刺激
高速カメラも用いて、最大レーザーパワーの100mWにて加熱時間を測定した。測定は、Ximea社MQ003MG−CMカメラを用いる一連のフレームをキャプチャーすることにより行い、マイクロ球体が動き始めるまで、レーザーでマイクロ球体を加熱し続けた。レーザーは、米国Thorlabs社からの機械式シャッターSHB05をきっかけとした。画像は、毎秒1318および2398フレームの速度でキャプチャーした。得られた典型的な加熱時間は、この場合、3ミリ秒であり、それは、COMSOL社Multiphysicsツールでのレーザー加熱によるビーズおよびその周辺の温度の有限要素シミュレーションでも確認した。
【0079】
シミュレーションのため、200nm銀で被覆された40μmガラス球体を考慮した。405−nmレーザーは、100mW出力で、反応性リフレクターの下部からマイクロ球体を加熱した。ビームウエストは20μmであり、そのビームは、マイクロ球体の垂直軸の10nm右に集光した。
図13は、200nm銀で被覆された50−mmガラスマイクロ球体およびその周囲の断面に沿った、3ミリ秒の加熱後の温度分布のシミュレーションを示す。熱は、球体の対称軸の10mm右側を中心とする20mmウエストを持つ100mW光線の光吸収によって供給される。熱源に近い水塊は650Kで臨界温度に達し、上記の加熱期間の測定と一致したことは注目に値する。また、シミュレーションは、その時間までに、マイクロ球体周囲に均等に分布しないことを示している。これは、レーザーがマイクロ球体を加熱しているときは気泡が常に現れるという観察と一致する。
【0080】
等価力の算定
図5は、毎秒25フレームの速度にて通常カメラでキャプチャーしたEMMET事象を示す。マイクロ球体が包囲し、移動の持続時間の上限値を有する距離が分かれば、力の下限値は、下式
【0081】
【数15】
(式中、ΔxおよびΔtは、距離および運動の持続時間であり、
【0082】
【数16】
はマイクロ球体の質量である。)から得られる。また、マイクロ球体の密度および半径は、それぞれ、ρおよびrで与えられる。
【0083】
本件において、マイクロ球体に対して、距離r=20nmはほぼガラスで専有されるので、ρ=2500kg/m
3である。
図5から、ビームは0.04秒以下でおよそ400μmの距離移動し、それゆえ、この場合、力の下限値は21ピコニュートンである。
【0084】
参考文献