(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985384
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】弱毒変異型ジカウイルスを含むワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/40 20060101AFI20211213BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20211213BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20211213BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20211213BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20211213BHJP
C07K 14/18 20060101ALI20211213BHJP
C12N 7/04 20060101ALI20211213BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20211213BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20211213BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20211213BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20211213BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
C12N15/40ZNA
A61P31/14
A61P37/04
A61K39/12
A61K35/76
C07K14/18
C12N7/04
C12N7/01
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【請求項の数】13
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-520486(P2019-520486)
(86)(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公表番号】特表2019-520090(P2019-520090A)
(43)【公表日】2019年7月18日
(86)【国際出願番号】EP2017065462
(87)【国際公開番号】WO2017220748
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2020年3月25日
(31)【優先権主張番号】16305764.9
(32)【優先日】2016年6月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】518454438
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ラ・レユニオン・サン・ドニ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LA REUNION SAINT DENIS
(73)【特許権者】
【識別番号】511227015
【氏名又は名称】アンスティテュ・ドゥ・ルシェルシュ・プール・ル・デヴェロップマン
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT DE RECHERCHE POUR LE DEVELOPPEMENT
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デプレ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ガデア,ジル
(72)【発明者】
【氏名】マヴィンギ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラナイケン,ヴィルトリス
【審査官】
中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】
特表2019−520058(JP,A)
【文献】
Antivir Chem Chemother, 2015, vol. 24, no. 3-4, pp. 118-126
【文献】
ACS Infect Dis, 2016 Mar 3, vol. 2, no. 3, pp. 170-172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 1/00− 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2を有するアミノ酸配列からなるタンパク質Eを含む、弱毒変異型ジカウイルス。
【請求項2】
流行株の構造タンパク質C及びprM並びに流行株の非構造タンパク質を含む、請求項1記載の弱毒変異型ジカウイルス。
【請求項3】
流行株の構造タンパク質C及びprM並びに土着株の非構造タンパク質を含む、請求項1記載の弱毒変異型ジカウイルス。
【請求項4】
配列番号5によって示されるアミノ酸配列からなるポリタンパク質をコードしているゲノム配列によって特徴付けられる、請求項1記載の弱毒変異型ジカウイルス。
【請求項5】
配列番号6によって示されるゲノム配列によって特徴付けられる、請求項1記載の弱毒変異型ジカウイルス。
【請求項6】
請求項1記載の弱毒変異型ジカウイルスをコードしている単離された核酸分子。
【請求項7】
配列番号6によって示される核酸配列を含む、請求項6記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
請求項6記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項9】
請求項1記載の弱毒変異型ジカウイルスを含むワクチン組成物。
【請求項10】
ある量の請求項1記載の弱毒生ジカウイルス又はある量の請求項1記載の不活化弱毒ジカウイルスを含む、請求項9記載のワクチン組成物。
【請求項11】
治療有効量の請求項9記載のワクチン組成物を含む、被験者におけるジカウイルスに対する免疫応答を惹起するための医薬組成物。
【請求項12】
ワクチン組成物が妊婦に投与される、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
ワクチン組成物が出産可能な年齢の女性に投与される、請求項11記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、弱毒変異型ジカウイルスを含むワクチン組成物に関する。
【0002】
発明の背景:
ジカウイルスは、黄熱病を監視していたネットワークを通して1947年にウガンダでサルにおいて初めて同定された蚊媒介性のフラビウイルスである。それは後に1952年にウガンダ及びタンザニア連合共和国においてヒトにおいて同定された。ジカウイルス疾患の流行は、アフリカ、アメリカ、アジア、及び太平洋において記録されている。1960年代から1980年代まで、ヒトへの感染は、アフリカ及びアジアにわたって見られ、典型的には軽度な病気を伴っていた。ジカ感染によって引き起こされた疾患の最初の大流行は、2007年にヤップ島(ミクロネシア連邦)から報告された。2015年7月にブラジルは、ジカウイルス感染とギランバレー症候群との間の関連を報告した。2015年10月にブラジルは、ジカウイルス感染と小頭症との間の関連を報告した。ジカウイルスは主に、熱帯地域において感染したヤブカ属の蚊、主にネッタイシマカの咬傷を通して人々に伝染する。ヤブカ属の蚊は通常は日中にかみつき、ピークは早朝及び午後遅く/夕方である。ジカウイルスを伝染するこの蚊は、チクングニア熱及び黄熱病を伝染するのと同じ蚊である。ジカウイルスの性行為感染も起こり得る。輸血などの他の感染様式も調査されている。ジカウイルス疾患は通常軽度であり、特別な処置を全く必要としない。ジカウイルスで病気になったヒトは、沢山休養をとり、十分な水分を飲み、一般的な医薬品で疼痛及び発熱を処置するべきである。症状が悪化した場合には、治療及び診察を受けるべきである。現在、利用可能なワクチンは全くない。WHOの専門家は、妊婦及び出産可能な年齢の女性に使用するのに安全である、弱毒ワクチン及び他の生ではないワクチンを開発することが優先事項であると示唆している。
【0003】
発明の要約:
本発明は、弱毒変異型ジカウイルスを含むワクチン組成物に関する。特に、本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0004】
発明の詳細な説明:
本発明は、特に妊婦にワクチン接種するのに安全であるという利点を提供する弱毒変異型ジカウイルスに関する。特に、本発明者らは、ギランバレー症候群の原因となる自己抗体の生成を妨げるであろう、流行株のEタンパク質上のN−グリコシル化部位を消失させる、非常に特異的な位置に突然変異を導入した。さらに本発明者らは、高力価のウイルスを産生する能力に影響を及ぼすことなく、細胞変性作用の劇的な減少をもたらす、ウイルスの追加の突然変異を作製した。
【0005】
したがって、本発明の第一の目的は、152位、156位、又は158位の少なくとも1つのアミノ酸残基が突然変異している、流行株のタンパク質Eを含む弱毒変異型ジカウイルスに関する。
【0006】
本明細書において使用する「弱毒化」という用語は当技術分野におけるその一般的な意味を有し、特により病原性を低減させたウイルスを指す。特に本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、非病原性である。本明細書において使用する「非病原性」という用語は本明細書において、非病原性であること、又は病気、特にギランバレー症候群を誘発することができないことを意味する。
【0007】
本明細書において使用する「ジカウイルス」という用語は当技術分野におけるその一般的な意味を有する。ジカウイルスは、5’NCR及び3’NCRとして知られる領域にフランキングしている2つの非コード領域を有する、10794塩基長のプラス鎖の一本鎖RNA分子である。ジカウイルスのオープンリーディングフレームはポリタンパク質をコードし、これは続いて切断されてキャプシド(C)、前駆体膜(prM)、エンベロープ(E)及び非構造タンパク質(NS)となる。Eタンパク質は、ビリオン表面の大半を構成し、宿主細胞との結合及び膜融合などの複製の局面に関与する。NS1、NS3及びNS5は、大型で高度に保存されたタンパク質であるが、NS2A、NS2B、NS4A及びNS4Bタンパク質は、小型で疎水性のタンパク質である。3’NCRに位置するのは、翻訳、RNAのパッケージング、環状化、ゲノム安定化、及び認識において役割を果たし得る428ヌクレオチドである。3’NCRはループ構造を形成し、5’NCRはメチル化ヌクレオチドキャップ又はゲノムに連結したタンパク質を介した翻訳を可能とする。
【0008】
「流行株」という用語は、流行性感染の原因となるジカ株を指す。特に、流行株は、配列番号1によって示されるアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一率を有するタンパク質Eを有することによって特徴付けられる。いくつかの実施態様では、ジカ流行株は、ジカ株BeH819015(Genbank番号KU365778)を指す。
【0009】
したがって、いくつかの実施態様では、本発明は、152位、156位又は158位の少なくとも1つのアミノ酸残基が突然変異している、配列番号1に対して少なくとも98%の同一率を有するアミノ酸配列からなるタンパク質Eを含む弱毒変異型ジカウイルスに関する。
【0010】
本発明によると、第二のアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一率を有する第一のアミノ酸配列とは、第一の配列が、第二のアミノ酸配列に対して98;99又は100%の同一率を有することを意味する。配列同一率は頻繁には、同一率(又は類似率又は相同率)に関して測定され;比率が高くなればなるほど、2つの配列はより類似している。比較のための配列のアラインメント法は当技術分野において周知である。様々なプログラム及びアラインメントアルゴリズムが、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math., 2:482, 1981; Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol., 48:443, 1970; Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:2444, 1988; Higgins and Sharp, Gene, 73:237-244, 1988; Higgins and Sharp, CABIOS, 5:151-153, 1989; Corpet et al. Nuc. Acids Res., 16:10881-10890, 1988; Huang et al., Comp. Appls Biosci., 8:155-165, 1992;及びPearson et al., Meth. Mol. Biol., 24:307-31, 1994に記載されている。Altschul et al., Nat. Genet., 6:119-129, 1994は、配列アラインメント法及び相同性計算の詳細な考察を提示している。例えば、アラインメントツールのALIGN(Myers and Miller, CABIOS 4:11-17, 1989)又はLFASTA(Pearson and Lipman, 1988)を使用して、配列比較を行ない得る(Internet Program(登録商標)1996、W. R. Pearson及びバージニア大学、fasta20u63、バージョン2.0u63、発売日1996年12月)。ALIGNは完全な配列を互いに比較し、一方、LFASTAは局所的に類似した領域を比較する。これらのアラインメントツール及びそれらのそれぞれの指導書は、例えば、インターネット上のNCSAウェブサイトにおいて入手可能である。あるいは、約30アミノ酸より大きなアミノ酸配列の比較のために、Blast2配列関数を、デフォールトパラメーター(ギャップ存在コストは11、及び1残基あたりのギャップコストは1)に設定されたデフォールトBLOSUM62マトリックスを用いて使用することができる。短いペプチド(約30アミノ酸より短い)をアラインさせる場合、アラインメントは、Blast2配列関数を使用して、デフォールトパラメーター(オープンギャップ9、エクステンションギャップ1のペナルティ)に設定されたPAM30マトリックスを使用して実施されるべきである。BLAST配列比較システムは、例えば、NCBIウェブサイトから入手可能である;Altschul et al., J. Mol. Biol., 215:403-410, 1990; Gish. & States, Nature Genet., 3:266-272, 1993; Madden et al. Meth. Enzymol., 266:131-141, 1996; Altschul et al., Nucleic Acids Res., 25:3389-3402, 1997;及びZhang & Madden, Genome Res., 7:649-656, 1997も参照されたい。
【0011】
本明細書において使用する突然変異という用語は当技術分野におけるその一般的な意味を有し、置換、欠失、又は挿入を指す。「置換」という用語は、特定の位置における特定のアミノ酸残基が除去され、別のアミノ酸残基が同位置に挿入されることを意味する。「欠失」という用語は、特定のアミノ酸残基が除去されることを意味する。「挿入」という用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、特定のアミノ酸残基の前又は後に挿入され、より具体的には1つ以上、好ましくは1つ又は数個のアミノ酸残基を、特定のアミノ酸残基のカルボキシル基又はアミノ基に結合させることを意味する。
【0012】
いくつかの実施態様では、152位、156位、又は158位のアミノ酸残基が置換されている。いくつかの実施態様では、152位のイソロイシン残基(I)がトレオニン残基(T)によって置換されている。いくつかの実施態様では、156位のトレオニン残基(T)がイソロイシン残基(I)によって置換されている。いくつかの実施態様では、ヒスチジン残基(H)がチロシン残基(Y)によって置換されている。
【0013】
いくつかの実施態様では、タンパク質Eは、2つの突然変異を含む。いくつかの実施態様では、該タンパク質は、152位のイソロイシン残基(I)がトレオニン残基(T)によって置換され、156位のトレオニン残基(T)がイソロイシン残基(I)によって置換されている、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、タンパク質Eは3つの突然変異を含む。いくつかの実施態様では、タンパク質Eは、152位のイソロイシン残基(I)がトレオニン残基(T)によって置換され、156位のトレオニン残基(T)がイソロイシン残基(I)によって置換され、ヒスチジン残基(H)がチロシン残基(Y)によって置換されている、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、タンパク質Eは、配列番号2によって示されるアミノ酸配列からなる。
【0014】
いくつかの実施態様では、本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、流行株の構造タンパク質C及びprMを含む。
【0015】
いくつかの実施態様では、本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、流行株の非構造タンパク質を含む。
【0016】
いくつかの実施態様では、本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、流行株の構造タンパク質C及びprM、並びに流行株の非構造タンパク質を含む。いくつかの実施態様では、本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、配列番号3によって示されるアミノ酸配列からなるポリタンパク質をコードしているゲノム配列によって特徴付けられる。いくつかの実施態様では、本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、配列番号4によって示されるゲノム配列によって特徴付けられる。
【0017】
いくつかの実施態様では、本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、土着株の非構造タンパク質を含む。本明細書において使用する「土着株」という用語は、アフリカを起源とするジカ株を指す。いくつかの実施態様では、本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、ジカ株MR766−NIID
*(Genbank番号LC002520)の非構造タンパク質を含む。
【0018】
いくつかの実施態様では、本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、流行株の構造タンパク質C及びprM、並びにジカ株MR766−NIID
*(Genbank番号LC002520)の非構造タンパク質を含む。いくつかの実施態様では、本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、配列番号5によって示されるアミノ酸配列からなるポリタンパク質をコードしているゲノム配列によって特徴付けられる。いくつかの実施態様では、本発明の弱毒変異型ジカウイルスは、配列番号6によって示されるゲノム配列によって特徴付けられる。
【0019】
本発明のさらなる目的は、本発明の弱毒変異型ジカウイルスをコードしている単離された核酸分子に関する。
【0020】
いくつかの実施態様では、本発明の単離された核酸分子は、本発明の変異型タンパク質Eをコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施態様では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号7によって示される核酸配列を含む。いくつかの実施態様では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号4によって示される核酸配列を含む。いくつかの実施態様では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号6によって示される核酸配列を含む。
【0021】
本発明の単離された核酸分子は、組換えDNA技術による本発明の弱毒変異型ジカウイルスの生成に特に適している。典型的には、本発明の単離された核酸分子を標準的なタンパク質発現ベクターにクローニングし、これを使用して適切な宿主細胞に感染させる。次いで、宿主細胞を培養し、これにより所望のウイルスを発現させ、これを所望の程度まで精製し、適切なワクチン製品へと製剤化することができる。
【0022】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸分子を含む宿主細胞に関する。宿主細胞は典型的には、ウイルスを増殖させるのに適した細胞株である。適切な細胞株としては、哺乳動物細胞、例えばVero細胞、AGMK細胞、BHK−21細胞、COS−1細胞、又はCOS−7細胞、MDCK細胞、CV−1細胞、LLC−MK2細胞、初代細胞株、例えば胎仔アカゲザル肺(FRhL−2)細胞、BSC−1細胞、及びMRC−5細胞、又はヒト二倍体線維芽細胞、並びに、トリ細胞、ニワトリ又はアヒル胚由来細胞株、例えばAGE1細胞、及び初代ニワトリ胚線維芽細胞、及び蚊細胞株、例えばC6/36が挙げられる。培養液に、細胞の増殖を支持することのできる培地を供給する。宿主細胞を、所望のウイルス力価に到達するまで、培養液中で数日間維持する。場合により、細胞を、連続灌流系において維持し、これからウイルスを数日間又はそれ以上にわたり断続的に又は連続的に得ることができる。非連続培養条件下では、感染から3〜7日間後までに少なくとも約10
6〜10
7のPFU/mlのウイルス力価が望ましい。ウイルスを回収するために、ウイルスを、低速遠心分離をはじめとする当技術分野において公知である一般的な方法によって、又はろ過によって収集する。該ウイルス(群)を濃縮するための方法は、当業者の技能範囲内であり、これには例えば、超ろ過、又はポリエチレングリコール(PEG)を用いての沈降が含まれる。ウイルスの精製法は当業者には公知であり、典型的には、連続的な若しくは多段階のスクロース勾配、サイズ排除カラム、イオン交換カラム、吸着カラム若しくはアフィニティカラムを使用したカラムクロマトグラフィーによる精製、又はポリマー中で二相系若しくは多相系に分配することによる精製、及びその任意の組合せが含まれる。ウイルス陽性画分をアッセイするための方法としては、プラークアッセイ、赤血球凝集(HA)アッセイ、及び/又は抗原アッセイ、例えばイムノアッセイが挙げられる。
【0023】
いくつかの実施態様では、本発明の収集された弱毒変異型ジカウイルスを不活化させている。本明細書において使用する「不活化」という用語は、例えばインビトロで複製させ、その後、もはや複製することができないように化学的手段又は物理的手段を使用して死滅させたウイルスを包含する。例えば、弱毒生ウイルスは、ホルムアルデヒド、β−プロピオラクトン(BPL)、若しくは過酸化水素などの化学物質を使用して、又は紫外線照射を使用して、又は、2つ以上の不活化工程の組合せ(これは同じであっても異なっていてもよく、例えばホルムアルデヒドとBPL、ホルムアルデヒドとUV照射、BPLとUV照射、過酸化水素とBPL、過酸化水素とUV照射などの任意の組合せ)を使用することによって不活化させることができる。
【0024】
本発明のさらなる目的は、本発明の弱毒ジカウイルスを含むワクチン組成物に関する。
【0025】
本明細書において使用する「ワクチン組成物」という用語は、ジカウイルスなどの病原体に対する特異的な免疫応答を惹起することのできる、ヒトへの投与に適した組成物である。
【0026】
本発明のワクチン組成物は、ある量の本発明の弱毒生ジカウイルス又はある量の本発明の不活化弱毒ジカウイルスを含む。
【0027】
本発明のワクチン組成物はまた、免疫応答を惹起又は増強することのできる1つ以上の追加の成分、例えば賦形剤、担体及び/又はアジュバントを含んでいてもよい。「アジュバント」は、物質の非存在下における抗原の投与と比較して、抗原特異的免疫応答の発生を増強する該物質である。一般的なアジュバントとしては、抗原を吸着させている鉱物(又は鉱物の塩、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウム)の懸濁液を含む、アルミニウム含有アジュバントが挙げられる。本開示の内容では、アジュバントは、アルミニウム(ミョウバン)非含有アジュバントであり、これはこのようなアルミニウム塩が全く存在しない下で製剤化される。ミョウバン非含有アジュバントとしては、油性及び水性エマルション、例えば油中水滴型エマルション、及び水中油滴型エマルション(及びその変種、例えばダブルエマルション及び可逆性エマルション)、リポサッカリド、リポポリサッカリド、免疫刺激性核酸(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)、リポソーム、Toll様受容体アゴニスト(特に、TLR2、TLR4、TLR7/8、及びTLR9アゴニスト)、並びにこのような成分の様々な組合せが挙げられる。薬学的に許容される担体及び賦形剤は周知であり、当業者によって選択され得る。例えば、担体又は賦形剤は好ましくは緩衝液を含み得る。場合により、担体又は賦形剤はまた、溶解度及び/又は安定性を安定化させる少なくとも1つの成分を含有している。可溶化剤/安定化剤の例としては、洗浄剤、例えば、ラウロイルサルコシン及び/又はモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが挙げられる。代替的な可溶化剤/安定化剤としては、アルギニン、及びガラス形成ポリオール(例えばスクロース、トレハロースなど)が挙げられる。数多くの薬学的に許容される担体及び/又は薬学的に許容される賦形剤が当技術分野において公知であり、例えば、E. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 5th Edition(1975)に記載されている。したがって、選択された投与経路による被験者への送達に適した製剤を作製するのに適した賦形剤及び担体は当業者によって選択され得る。適切な賦形剤としては、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール、トレハロース、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、L−プロリン、非界面活性剤型スルホベタイン、グアニジン塩酸塩、尿素、トリメチルアミンオキシド、KCl、Ca2+、Mg2+、Mn2+、Zn2+、及び他の二価陽イオンに関連した塩、ジチオトレイトール、ジチオエリトロール、及びβ−メルカプトエタノールが挙げられるがこれらに限定されない。他の賦形剤は、洗浄剤(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリトンX−00、NP−40、エンピジェン(Empigen)BB、オクチルグルコシド、ラウロイルマルトシド、ツイッタージェント(Zwittergent)3−08、ツイッタージェント3−0、ツイッタージェント3−2、ツイッタージェント3−4、ツイッタージェント3−6、CHAPS、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムを含む)であり得る。ヒト被験者への投与用を含む、ワクチン組成物の調製は一般的には、Pharmaceutical Biotechnology, Vol. 61 Vaccine Design-the subunit and adjuvant approach、Powell and Newman編、Plenum Press, 1995、New Trends and Developments in Vaccines、Voller et al.編, University Park Press, Baltimore, Md., U.S.A. 1978に記載されている。リポソーム内への封入は、例えば、Fullertonによって、米国特許第4,235,877号に記載されている。巨大分子へのタンパク質の抱合は、例えば、Likhiteによって米国特許第4,372,945号に、及びArmor et al.によって米国特許第4,474,757号に開示されている。典型的には、ワクチン組成物の各用量における抗原の量は、典型的な被験者において有意な有害な副作用を及ぼすことなく免疫防御応答を誘導する量として選択される。この内容での免疫防御は必ずしも、感染からの完全な防御を意味せず;症状又は疾患、特に、ウイルスに関連した重度の疾患からの防御を意味する。抗原の量は、どの具体的な免疫源が使用されるかに応じて変更され得る。一般的には、ヒトへの各用量は、0.05〜100μgの不活化ウイルス、例えば約0.1μg(例えば0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5μg)〜約50μg、例えば約0.5μg〜約30μg、例えば約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、又は約25μgの不活化ジカウイルスの各株を含むであろうことが予想される。典型的には、ワクチン組成物は、液剤又は懸濁剤のいずれかとしての注射液として調製され;注射前に液体中液剤又は液体中懸濁剤とするのに適した固形剤が調製されてもよい。
【0028】
本発明のさらなる目的は、治療有効量の本発明のワクチン組成物を被験者に投与する工程を含む、被験者においてジカウイルスに対する免疫応答を惹起するための方法に関する。
【0029】
いくつかの実施態様では、本発明のワクチン組成物は、成人又は乳児に投与される。いくつかの実施態様では、本発明のワクチン組成物は、妊婦に投与される。いくつかの実施態様では、本発明のワクチン組成物は、出産可能な年齢の女性に投与される。いくつかの実施態様では、被験者は、事前にジカウイルスに曝されていた。
【0030】
いくつかの実施態様では、本発明のワクチン組成物は、ジカウイルス感染及び/又はジカウイルスにより誘発された疾患の予防、寛解、若しくは治療に特に適している。
【0031】
ワクチン組成物は、様々な経路によって投与され得、最も一般的には、ワクチン組成物は、筋肉内、皮下、又は皮内投与経路によって送達される。一般的には、ワクチン組成物は、中和抗体の生成及び防御に有効な用量で、皮下、皮内、又は筋肉内に投与され得る。ワクチンは、投与製剤に適合した方法で、予防的及び/又は治療的に有効な量で投与される。投与される予定の量は、一般的には1用量あたり0.05〜100μgの範囲内であるが、これは処置される予定の被験者、被験者の免疫系が抗体を合成する能力、及び所望の防御度に依存する。投与される予定のワクチンの正確な量は施行者の判断に依存し得、各被験者に特有であり得る。
【0032】
ワクチン組成物は、1回の投薬の計画で、又は好ましくは複数回の投薬の計画で投与され得、ワクチン接種の初回クールは、1〜10回の分割用量、続いて免疫応答を維持及び又は強化するのに必要とされるその後の時間間隔(例えば2回目の用量については1〜4カ月目)で投与される他の用量、並びに必要であれば数か月又は数年後にその後の用量(群)を用いるものであり得る。投薬計画はまた少なくとも部分的には、被験者の必要性によって決定され、施行者の判断に依存するだろう。適切な免疫化計画の例としては、1回目の用量、続いて初回の免疫化の7日後から6カ月後までに2回目の用量、及び1か月後から2年後までに任意選択の3回目の用量、又は、防御免疫を付与すると予想されるウイルス中和抗体の力価を惹起するのに十分な他の計画が挙げられる。ワクチン組成物を用いてのジカウイルスに対する防御免疫の発生は妥当には、1〜3回の接種からなる初回の免疫化クールの後に期待され得る。これらは、満足のいく防御免疫レベルを維持するために設計された間隔(例えば2年間毎)におけるブースターによって補充され得る。
【0033】
本発明はさらに、以下の図面及び実施例によって説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例及び図面はいずれにしても、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、ジカウイルスの様々なクローンを示す。
【
図2】
図2は、クローンZIKALIVaxの詳細を示す。
【
図3】ZIKVクローンA〜Fに感染させたVero細胞におけるEタンパク質のプロセシング。抗フラビウイルスEmAb 4G2を使用したZIKVに感染させたVero細胞に由来する細胞抽出物に対するイムノブロットアッセイ。(非還元条件下における4〜12%のSDS−PAGE)。
【
図4】ZIKVクローンA〜Fに72時間かけて感染させたVero細胞におけるCPE。
【
図5】ZIKVクローンA〜Fに感染させたVero細胞からのLDHの漏出。
【
図6】ZIKVクローンA〜Fに感染させたVero細胞への子孫ウイルスの感染。
【0035】
実施例:
ジカウイルスの様々なクローン(A〜F)を作製した(
図1)。クローンFは「ZIKALIVax」と命名され、
図2に詳述されている。
【0036】
152位、156位、及び158位に導入された突然変異は、Eタンパク質上のN−グリコシル化部位を消失させる(
図3)。
【0037】
様々なクローンの細胞変性作用を試験した。簡潔に言えば、Vero細胞を、1細胞あたり0.1PFUのMOIで様々なクローンに感染させ、細胞変性作用を、光学顕微鏡によって感染から72時間後に観察した。
図4に示されるように、ZIKALIVaxは、ウイルスの流行株及び土着株を用いて観察されたものとは対照的に細胞変性作用はない。結果は、LDH遊離アッセイで確認された。簡潔に言えば、Vero細胞を、1細胞あたり0.1PFUのMOIで様々なクローンに感染させ、細胞上清中のLDH活性を、比色測定LDH定量アッセイキットを使用して決定した。結果を
図5に示す。
【0038】
次いで、様々なクローンの生成を、プラーク形成アッセイで決定した。簡潔に言えば、Vero細胞(1×10
5個/ウェル)を48ウェル培養プレートに播種した。5%熱不活化FBSの補充された培養培地中でのウイルス試料の10倍連続希釈液を2通り調製し、0.1mLの各希釈液を細胞に加えた。プレートを37℃で2時間インキュベートした。0.8%カルボキシメチルセルロース(CMC)の補充された培養培地 0.1mlを各ウェルに加え、その後、37℃で4日間インキュベートした。CMCのオーバーレイを除去し、細胞をまず、3.7%PFAを用いて10分間かけて固定し、次いで20%エタノール中0.5%クリスタルバイオレットを用いて染色した。プラークを計数し、1mLあたりのプラーク形成単位(PFU/mL)として表現した。表1に示されるように、ZIKALIVaxの子孫の生成は、流行株ウイルス及び土着株ウイルスを用いて観察された生成と比較して、有意に増加している。
図6は、ZIKVクローンA〜Fに感染させたVero細胞における子孫ウイルスの感染を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
結論付けると、ZIKALIVaxは、細胞変性作用を伴うことなく非常に高いレベルで産生され得る。さらに、N−グリコシル化が存在しないことにより、ギランバレー症候群の原因となる自己抗体の生成が妨げられるだろう。したがって、このクローンは、弱毒ワクチンの生成のための非常に良い候補を示す。
【0041】
配列:
配列番号1 ZIKV株BeH819015(Genbankアクセス番号KU365778.1)由来のE糖タンパク質。
【化1】
【0042】
配列番号2 ZIKVBR15−MCの突然変異体[E−I152T、E−T156I、E−H158Y]のE配列
【化2】
【0043】
配列番号3 キメラZIKVBR15−MC突然変異体[E−I152T、E−T156I、E−H158Y]のポリタンパク質配列(3,423アミノ酸)
【化3】
【0044】
配列番号4 キメラZIKVBR15−MC突然変異体[E−I152T、E−T156I、E−H158Y]のゲノム配列(10,807ヌクレオチド)
【化4】
【0045】
配列番号5 キメラZIKALIVaxウイルスのポリタンパク質配列(10,807ヌクレオチド;3,423アミノ酸)
【化5】
【0046】
配列番号6 キメラZIKALIVaxウイルスのゲノム配列(10,807ヌクレオチド;3,423アミノ酸)
【化6】
【0047】
配列番号7 キメラZIKALIVaxウイルス由来のE遺伝子の配列(1512ヌクレオチド;504アミノ酸)
【化7】
【0048】
参考文献:
本出願全体を通して、様々な参考文献が、本発明が属する分野の最新技術を記載している。これらの参考文献の開示は、本開示への参照によって本明細書に組み入れられる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]