特許第6985410号(P6985410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マクセル株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000011
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000012
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000013
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000014
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000015
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000016
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000017
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000018
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000019
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000020
  • 特許6985410-撮像レンズ系及び撮像装置 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985410
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】撮像レンズ系及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20211213BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   G02B13/04 D
   G02B13/18
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-552351(P2019-552351)
(86)(22)【出願日】2018年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2018041345
(87)【国際公開番号】WO2019093377
(87)【国際公開日】20190516
【審査請求日】2020年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-217376(P2017-217376)
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】牧野 由多可
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆
【審査官】 岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−133599(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/121550(WO,A1)
【文献】 特開2014−164287(JP,A)
【文献】 特開2004−258132(JP,A)
【文献】 特開2001−042218(JP,A)
【文献】 特開昭62−173415(JP,A)
【文献】 特開2005−258467(JP,A)
【文献】 特開2005−284153(JP,A)
【文献】 特開平03−131809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、少なくとも第1レンズ、第2レンズ及び第3レンズで構成される第1レンズ群と、開口絞りと、2枚以上で構成される正の合成パワーを持った第2レンズ群を有し、
前記第1レンズの像側は凹面であり、
前記第1レンズと前記第2レンズの合成焦点距離は負であり、
前記第3レンズは正のパワーを有するレンズであり、
前記第1レンズの入射側面は非球面を有し、
前記第1レンズの入射側面の有効半径の範囲内に変曲点を有し、
前記第1レンズは、前記第1レンズ群の中で最も物体側にあり、
次の条件式(1)、(2)、(3)を満たす撮像レンズ系。
0.31≦L1H/L1R≦0.65 (1)
0.12≦L1SAG/L1R (2)
L1N≧1.75 (3)
L1H:前記第1レンズの入射側面の光軸垂直方向における光軸から変曲点までの距離
L1R:前記第1レンズの入射側面の有効半径
L1SAG:前記第1レンズの入射側面の変曲点位置におけるサグ量
L1N:前記第1レンズのd線における屈折率nd
【請求項2】
画角80度以上の広角レンズである請求項に記載の撮像レンズ系。
【請求項3】
前記第1レンズは物体側に凸形状の凹メニスカスレンズである請求項1又は2に記載の撮像レンズ系。
【請求項4】
前記第1レンズのアッベ数をL1Vとした時、次の条件式(4)を満たす請求項1からのいずれかに記載の撮像レンズ系。
L1V≧38 (4)
【請求項5】
前記第2レンズ群には貼り合せレンズを1組以上有する請求項1からのいずれかに記載の撮像レンズ系。
【請求項6】
前記第2レンズ群の最も像側にあるレンズは、物体側に凹形状を有する非球面レンズである請求項1からのいずれかに記載の撮像レンズ系。
【請求項7】
前記第2レンズ群の最も物体側にあるレンズは正のパワーを有する請求項1からのいずれかに記載の撮像レンズ系。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の撮像レンズ系と、
前記撮像レンズ系の結像位置に配置された撮像素子と、を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像レンズ系及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
広い範囲の画像を確保するため水平100度の画角を達成しようと、焦点距離が短くなり、撮影する物体が小さくなり、撮影する物体を大きくしようとすると焦点距離を長くする必要があった。
【0003】
例えば、特許文献1では、物体側から像側に向かって順に配置された、負のパワーを有する第1レンズ、正のパワーを有する第2レンズ、負のパワーを有する第3レンズ、負のパワーを有する第4レンズおよび正のパワーを有する第5レンズからなり、第1レンズに凹形状を備える負のパワーのレンズを配置し、第2レンズに凸形状を備える正のパワーを有するレンズを配置した、広角レンズが記載されている。
【0004】
近年、車に搭載される広角レンズの用途は、ビューからセンシングへと変化してきている。センシングでは画像解析に必要な解像度が必要になるため、メガピクセル対応の高解像度の画像が求められている。また、広い画角も求められている。
【0005】
このように、車載用の撮像装置では、進行方向の遠方を高解像度で撮像すること及び広角で近傍を撮像することが求められている。
【0006】
また、特許文献2には、少なくとも3つのレンズ群からなり、物体側から順に、後面が物体側に凸の負の屈折力を有する第1レンズ群と、前面が物体側に凸で正の屈折力を有する第2レンズ群と、その後方に第3レンズ群とを有し、各レンズ群1〜3の間隔を変えることによって変倍させるレンズ系であって、少なくとも第2レンズ群と第3レンズ群を移動させ、所定条件式を満足する変倍レンズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−178624号公報
【特許文献2】特開2004−226691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像することと、広角で近傍を撮像することの、両方の要求を満足するには、広角レンズと望遠レンズの2本のレンズを使用することが一般的である。また、特許文献2では、第2レンズ群と第3レンズ群を移動させることにより変倍させるものであるので、遠距離で撮像と、広角で撮像を、同時に行うことができなかった。
また焦点距離については画角を広くするためには焦点距離を小さくする。画角を狭くするには焦点距離を長くしなければならない。遠い物体を大きく写す場合は焦点距離を長くして望遠の効果を得る必要があるが、広い範囲が撮影できない。画角を広くしようとすることは焦点距離を短くすることであるがこの場合遠い物体を大きくすることが出来ないと、相反する条件を満足できなかった。
【0009】
このように、1本の撮像レンズ系で、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ広角で近傍を撮像することが実現できていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態の撮像レンズ系は、物体側から順に、少なくとも第1レンズ、第2レンズ及び第3レンズで構成される第1レンズ群と、開口絞りと、2枚以上で構成される正の合成パワーを持った第2レンズ群を有し、前記第1レンズの像側は凹面であり、前記第1レンズと前記第2レンズの合成焦点距離は負であり、前記第3レンズは正のパワーを有するレンズであり、前記第1レンズの物体側は非球面を有し、前記第1レンズの入射側面(物体側)が変曲点を有するようにした。
【0011】
一実施形態の撮像レンズ系によれば、第1レンズの入射側面(物体側)が変曲点を有することにより、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ広角で近傍を撮像することができる。
【0012】
好ましくは、一実施形態の撮像レンズ系は、前記第1レンズは、前記第1レンズ群の中で最も物体側にあり、次の条件式(1)及び(2)を満たすようにしてもよい。
0.31≦L1H/L1R≦0.65 (1)
0.12≦L1SAG/L1R (2)
L1H:光軸垂直方向における光軸から変曲点までの距離
L1R:L1入射側面の有効半径
L1SAG:L1入射側面の変曲点位置におけるサグ量
【0013】
上記これらの式を満たすことにより、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像する領域と、広角で近傍を撮像する領域とをバランス良く確保することができる。
【0014】
好ましくは、一実施形態の撮像レンズ系は、前記第1レンズのd線における屈折率ndをL1Nとした時、次の条件式(3)を満たすようにしてもよい。
L1N≧1.75 (3)
【0015】
一実施形態の撮像レンズ系によれば、上記式を満たすことにより、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ広角で近傍を撮像するために十分な屈折力を得ることができる。
【0016】
好ましくは、一実施形態の撮像レンズ系は、画角80度以上の広角レンズであるようにしてもよい。
【0017】
好ましくは、一実施形態の撮像レンズ系は、前記第1レンズは物体側に凸形状の凹メニスカスレンズであるようにしてもよい。
【0018】
好ましくは、一実施形態の撮像レンズ系は、前記第1レンズのアッベ数をL1Vとした時、次の条件式(4)を満たすようにしてもよい。
L1V≧38 (4)
【0019】
好ましくは、一実施形態の撮像レンズ系は、前記第2レンズ群には貼り合せレンズを1組以上有するようにしてもよい。
【0020】
一実施形態の撮像レンズ系によれば、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ広角で近傍を撮像するために十分な色収差補正を行うことができる。
【0021】
好ましくは、一実施形態の撮像レンズ系は、前記第2レンズ群の最も像側にあるレンズは、物体側に凹形状を有する非球面レンズであるようにしてもよい。
【0022】
好ましくは、一実施形態の撮像レンズ系は、前記第2レンズ群の最も物体側にあるレンズは正のパワーを有するようにしてもよい。
【0023】
一実施形態の撮像レンズ系によれば、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ広角で近傍を撮像することができる。
【0024】
好ましくは、一実施形態の撮像レンズ系は、前記第2レンズ群は接合レンズを有するようにしてもよい。
【0025】
一実施形態の撮像装置は、物体側から順に、少なくとも第1レンズ、第2レンズ及び第3レンズで構成される第1レンズ群と、開口絞りと、2枚以上で構成される正の合成パワーを持った第2レンズ群と、を有し、前記第1レンズの像側は凹面であり、前記第1レンズと前記第2レンズの合成焦点距離は負であり、前記第3レンズは正のパワーを有するレンズであり、前記第1レンズの物体側は非球面を有するようにした。
【0026】
一実施形態の撮像装置によれば、記これらの式を満たすことにより、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像する領域と、広角で近傍を撮像する領域とをバランス良く確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の撮像レンズ系及び撮像装置によれば、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ広角で近傍を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1に係る撮像レンズ系の断面図である。
図2】実施例1の撮像レンズ系における縦収差図、像面湾曲図、歪曲収差図である。
図3】レンズの入射側面における変曲点及びサグ量を説明するための模式図である。
図4】実施例1の撮像レンズ系の第1レンズL1の物体側レンズ面における、中心光軸からの距離とサグ量の微分値の関係を示すグラフである。
図5】実施例2に係る撮像レンズ系の断面図である。
図6】実施例2の撮像レンズ系における縦収差図、像面湾曲図、歪曲収差図である。
図7】実施例2の撮像レンズ系の第1レンズL1の物体側レンズ面における、中心光軸からの距離とサグ量の微分値の関係を示すグラフである。
図8】実施例3に係る撮像レンズ系の断面図である。
図9】実施例3の撮像レンズ系における縦収差図、像面湾曲図、歪曲収差図である。
図10】実施例3の撮像レンズ系の第1レンズL1の物体側レンズ面における、中心光軸からの距離とサグ量の微分値の関係を示すグラフである。
図11】実施例4に係る撮像装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
(実施例1:撮像レンズ系)
図1は、実施例1に係る撮像レンズ系の断面図である。図1において、撮像レンズ系11は、物体側から順に、第1レンズL1と、第2レンズL2と、第3レンズL3と、絞りSTOPと、第4レンズL4と、第5レンズL5と、第6レンズL6と、第7レンズL7と、を有する。そして、撮像レンズ系11は、物体側から順に、1枚以上で構成される第1レンズ群(第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、)と、開口絞りと、2枚以上で構成される正の合成パワーを持った第2レンズ群(第4レンズL4、第5レンズL5)を有する撮像レンズ系を構成する。そして、第1レンズの像側は凹面であり、第1レンズと第2レンズの合成焦点距離は負であり、第3レンズは正のパワーを有するレンズであり、第1レンズの物体側は非球面を有する。
また、撮像レンズ系11は、IRカットフィルタ12を備えてもよい。また、IMGは結像面を示す。
【0030】
次に各構成について説明する。
第1レンズL1は、負のパワーを有する非球面レンズである。第1レンズL1の物体側レンズ面S1は、物体側に凸形状の曲面部分を有している。第1レンズL1の像側レンズ面S2は物体側に凹形状の曲面部分を有している。また、第1レンズL1は、物体側に凸形状の曲面部分を有する凹メニスカスレンズであることが望ましい。
【0031】
第2レンズL2は、正のパワーを有するレンズである。第2レンズL2の物体側レンズ面S3は、物体側に凸形状の曲面部分を有する。また、第2レンズL2の像側レンズ面S4は物体側に凹形状の曲面部分を有している。
【0032】
第3レンズL3は、正のパワーを有する非球面レンズである。第3レンズL3の物体側レンズ面S5は像側に凹形状の曲面部分を有する。また、第3レンズL3の像側レンズ面S6は像側に凸形状の曲面部分を有している。
【0033】
絞りSTOPは、通過する光の量を調整する。例えば、絞りSTOPは、孔を有する板形状のものが好適である。図1に示すように、絞りSTOPは、光軸Z方向において、第3レンズL3の像側レンズ面S6と重なる位置であってもよい。
【0034】
第4レンズL4は、正のパワーを有するレンズである。第4レンズL4の物体側レンズ面S8は物体側に凸形状の曲面部分を有している。また、第4レンズL4の像側レンズ面S9は像側に凸形状の曲面部分を有している。
【0035】
第5レンズL5は、負のパワーを有するレンズである。第5レンズL5の物体側レンズ面は、第4レンズL4の像側レンズ面S9に対応する形状を有し、像側に凹形状の曲面部分を有している。また、第5レンズL5の像側レンズ面S10は物体側に凹形状の曲面部分を有している。第4レンズL4の像側レンズ面と第5レンズL5の物体側レンズ面は、紫外線硬化型接着剤により接合されており、第4レンズL4と第5レンズL5で接合レンズを形成する。
【0036】
第6レンズL6は、正のパワーを有する非球面レンズである。第6レンズL6の物体側レンズ面S11は物体側に凸形状の曲面部分を有している。また、第6レンズL6の像側レンズ面S12は像側に凸形状の曲面部分を有している。
【0037】
第7レンズL7は、負のパワーを有する非球面レンズである。第7レンズL7の物体側レンズ面S13は像側に凹形状の曲面部分を有している。また、第7レンズL7の像側レンズ面S14は物体側に凹形状の曲面部分を有している。
IRカットフィルタ12は、赤外光をカットするフィルタである。
【0038】
以下、撮像レンズ系11の特性データについて述べる。
まず、表1に、撮像レンズ系11の各レンズ面のレンズデータを示す。表1に、撮像レンズ系11の各レンズ面のレンズデータを示す。表1では、レンズデータとして、各面の曲率半径、面間隔、屈折率、及びアッベ数を提示している。「*印」がついた面は、非球面であることを示している。
【表1】
【0039】
第1面S1、第2面S2、第5面S5、第6面S6、第11面S11、第12面S12、第13面S13、第14面S14は16次の偶数次非球面であり、各面のサグ量Sagは次式で表される。なお、サグ量とは、光軸Zからの高さがhで光軸Zと平行な直線がレンズ面と交わった点と、レンズ面と光軸Zとの交点である面頂点を通る光軸Zに垂直な平面との間の、光軸Zに平行な方向の距離のことである。
Sag(h)=(h/R)/{1+√(1−(1+k)×h/R)}
+A3×h+A4×h+A5×h+A6×h+A8×h
+A10×h10+A12×h12+A14×h14+A16×h16
【0040】
ただし、
h:光軸からの垂直方向高さ
Sag(h):非球面の頂点における接平面から高さhにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)
R:レンズ面の曲率半径
k:コーニック係数(円錐係数)
An:n次の非球面係数
である。
【0041】
表2に、実施例1の撮像レンズ系11において、非球面とされたレンズ面の非球面形状を規定するための非球面係数を示す。表2において、例えば「−6.522528E−03」は、「−6.522528×10−3」を意味する。
【表2】
【0042】
図2は、実施例1の撮像レンズ系における縦収差図、像面湾曲図、歪曲収差図である。図2に示すように、実施例1の撮像レンズ系11では、半画角が60°、F値が1.8である。図2の縦収差図では、横軸は、横軸は光線が光軸Zと交わる位置を示し、縦軸は瞳径での高さを示す。図2の縦収差図では、波長587nm、486nm、656nmの光線によるシミュレーション結果を示している。
【0043】
図2の像面湾曲図では、横軸は光軸Z方向の距離を示し、縦軸は像高(画角)を示す。また、図2の像面湾曲図において、Sagはサジタル面における像面湾曲を示し、Tanはタンジェンシャル面における像面湾曲を示す。図2の像面湾曲図に示すように、本実施例の撮像レンズ系11によれば、像面湾曲が良好に補正されている。従って、撮像レンズ系11が高解像度となる。
【0044】
図2の歪曲収差図において、横軸は像の歪み量(%)を示し、縦軸は像高(画角)を示す。図2の像面湾曲図、歪曲収差図では、波長587nmの光線によるシミュレーション結果を示している。一般に、画角を広くとれるようにすると、画角が大きくなるにつれて、像の歪み量が大きくなってしまう。また、像の歪み量を小さくしようとすると、画角を大きくとることができない。図2の歪曲収差図に示すように、実施例1の撮像レンズ系では、画角を広くとることができ、かつ像の歪み量の増加を抑えることができる。具体的には図2の歪曲収差図に示すように、半画角10度では、像の歪み量が非常に少なく、半画角60度でも、像の歪み量の増加が抑えられている。
【0045】
次に、表3に、実施例1の撮像レンズ系11の特性値を計算した結果を示す。撮像レンズ系11において、レンズ系全体の焦点距離をf、第1レンズL1の焦点距離をf、第2レンズL2の焦点距離をf、第3レンズL3の焦点距離をf、第4レンズL4の焦点距離をf、第5レンズL5の焦点距離をf、第6レンズL6の焦点距離をf、第7レンズL7の焦点距離をf、としたときのこれらの特性値(第1レンズL1と第2レンズL2の合成焦点距離f12、第4レンズL4と第5レンズL5の合成焦点距離f45、)、f12/f及びf12/fを表3に示す。各種の焦点距離は、587nmの波長の光線を用いて計算した。
【表3】
【0046】
また、実施例1の撮像レンズ系は、第1レンズ群の中で1番物体側にある第1レンズL1の入射側面が非球面であり、変曲点を有しており、次の条件式を満たす。
0.31≦L1H/L1R≦0.65
L1H:光軸垂直方向における光軸から変曲点までの距離
L1R:L1入射側面の有効半径
L1SAG:L1入射側面の変曲点位置におけるサグ量
なお、「L1入射側面の有効半径」の定義は、「使用するセンサの対角頂点に入射する光線の第1レンズ物体側面における最大高さ」である。
【0047】
ここで、L1H、L1R及びL1SAGは、図3に示すレンズのパラメータである。図3は、レンズの入射側面における変曲点及びサグ量を説明するための模式図である。図3に示すように、光軸に対して垂直な方向での光軸から変曲点までの距離がL1Hである。また、レンズの物体側面の有効半径がL1Rである。そして、レンズの物体側面の変曲点位置におけるサグ量がL1SAGである。
【0048】
図4は、実施例1の撮像レンズ系の第1レンズL1の物体側レンズ面における、中心光軸からの距離とサグ量の微分値の関係を示すグラフである。図4において、横軸は中心光軸からの垂直方向の距離を示し、縦軸はサグ量を距離で微分した値を示す。
【0049】
図4に示す実施例1の撮像レンズ系において第1レンズL1は、有効半径が4.22mm、変曲点の位置が1.73mmである。したがって、変曲点の位置を有効半径で正規化した値は0.410であり、上記式を満たしている。
【0050】
また、実施例1の撮像レンズ系は、次の条件式を満たす。
0.12≦L1SAG/L1R
【0051】
このように、実施例1の撮像レンズ系によれば、第1レンズの入射側面(物体側)が変曲点を有することにより、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ広角で近傍を撮像することができる。また、上記これらの式を満たすことにより、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像する領域と、広角で近傍を撮像する領域とをバランス良く確保することができる。すなわち、実施例1の撮像レンズ系を自動車に搭載した場合、自動車の移動速度に対応する進行方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ自動車の移動方向に対して垂直(または垂直に近いの角度)から歩行速度で自動車に近づく歩行者を、撮像の周縁側で検出可能できるように、広い画角で近傍を撮像することができる。
【0052】
例えば、光軸から狭い角度(例えば6度以内)の光軸中心の領域では、高解像度で撮像することができ、且つ周縁側では画角80度以上の広角で撮像することができる。
【0053】
また、実施例1の撮像レンズ系は、第1レンズのnd(屈折率)をd線における屈折率L1Nとした時、次の条件式を満たすことが望ましい。
L1N≧1.75
【0054】
上記式を満たすことにより、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ広角で近傍を撮像するために十分な屈折力を得ることができる。
【0055】
また、実施例1の撮像レンズ系は、第1レンズL1のアッベ数をL1Vとした時、次の条件式を満たすことが望ましい。
L1V≧38
【0056】
また、実施例1の撮像レンズ系は、第2レンズ群に貼り合せレンズを1組以上有することが望ましい。例えば、実施例1の撮像レンズ系は、第4レンズL4と第5レンズL5が1組の貼り合せレンズを構成している。この構成により、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ広角で近傍を撮像するために十分な色収差補正を行うことができる。
【0057】
また、実施例1の撮像レンズ系は、第2レンズ群の最も像側にあるレンズは、物体側に凹形状を有する非球面レンズであることが望ましい。
【0058】
また、実施例1の撮像レンズ系は、第2レンズ群の最も物体側にあるレンズは正のパワーを有することが望ましい。
【0059】
このように実施例1の撮像レンズ系によれば、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像し、且つ広角で近傍を撮像することができる。
【0060】
(実施例2:撮像レンズ系)
図5は、実施例2に係る撮像レンズ系の断面図である。図5、6、7は、実施例1の図1、2、4にそれぞれ対応した図であり、図が示す内容も実施例1と同様なので図の説明は省略する。また、表4〜表6の示す内容及び表の構成は、表1〜表3と同様なので、表の説明についても省略する。
【0061】
以下、撮像レンズ系11の特性データについて述べる。
まず、表4に、撮像レンズ系11の各レンズ面のレンズデータを示す。
【表4】
【0062】
表5に、実施例2の撮像レンズ系11において、非球面とされたレンズ面の非球面形状を規定するための非球面係数を示す。
【表5】
【0063】
図6は、実施例2の撮像レンズ系における縦収差図、像面湾曲図、歪曲収差図である。図6に示すように、実施例2の撮像レンズ系11では、半画角が55°、F値が1.8である。
【0064】
次に、表6に、実施例2の撮像レンズ系11の特性値を計算した結果を示す。
【表6】
【0065】
また、実施例2の撮像レンズ系は、第1レンズ群の中で1番物体側にある第1レンズL1の入射側面が非球面であり、変曲点を有しており、次の条件式を満たす。
0.31≦L1H/L1R≦0.65
L1H:光軸垂直方向における光軸から変曲点までの距離
L1R:L1入射側面の有効半径
L1SAG:L1入射側面の変曲点位置におけるサグ量
【0066】
図7は、実施例2の撮像レンズ系の第1レンズL1の物体側レンズ面における、中心光軸からの距離とサグ量の微分値の関係を示すグラフである。図7において、横軸は中心光軸からの垂直方向の距離を示し、縦軸はサグ量を距離で微分した値を示す。
【0067】
図7に示す実施例2の撮像レンズ系において第1レンズL1は、有効半径が4.43mm、変曲点の位置が1.53mmである。したがって、変曲点の位置を有効半径で正規化した値は0.345であり、上記式を満たしている。
【0068】
また、実施例2の撮像レンズ系は、次の条件式を満たす。
0.12≦L1SAG/L1R
【0069】
上記これらの式を満たすことにより、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像する領域と、広角で近傍を撮像する領域とをバランス良く確保することができる。
【0070】
(実施例3:撮像レンズ系)
図8は、実施例3に係る撮像レンズ系の断面図である。図8において、撮像レンズ系11は、物体側から順に、第1レンズL1と、第2レンズL2と、絞りSTOPと、第3レンズL3と、第4レンズL4と、第5レンズL5と、第6レンズL6と、第7レンズL7と、を有する。そして、撮像レンズ系11は、物体側から順に、1枚以上で構成される第1レンズ群(第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、)と、開口絞りと、2枚以上で構成される正の合成パワーを持った第2レンズ群(第5レンズL5、第6レンズL6)を有する撮像レンズ系を構成する。そして、第1レンズの像側は凹面であり、第1レンズと第2レンズの合成焦点距離は負であり、第3レンズは正のパワーを有するレンズであり、第1レンズの物体側は非球面を有する。
また、撮像レンズ系11は、IRカットフィルタ12を備えてもよい。また、IMGは結像面を示す。
【0071】
次に各構成について説明する。
第1レンズL1は、負のパワーを有する非球面レンズである。第1レンズL1の物体側レンズ面S1は、物体側に凸形状の曲面部分を有している。第1レンズL1の像側レンズ面S2は物体側に凹形状の曲面部分を有している。また、第1レンズL1は、物体側に凸形状の曲面部分を有する凹メニスカスレンズであることが望ましい。
【0072】
第2レンズL2は、負のパワーを有する非球面レンズである。第2レンズL2の物体側レンズ面S3は、像側に凹形状の曲面部分を有する。また、第2レンズL2の像側レンズ面S4は物体側に凹形状の曲面部分を有している。
【0073】
絞りSTOPは、通過する光の量を調整する。例えば、絞りSTOPは、孔を有する板形状のものが好適である。
【0074】
第3レンズL3は、正のパワーを有する非球面レンズである。第3レンズL3の物体側レンズ面S6は物体側に凸形状の曲面部分を有する。また、第3レンズL3の像側レンズ面S7は像側に凸形状の曲面部分を有している。
【0075】
第4レンズL4は、正のパワーを有する非球面レンズである。第4レンズL4の物体側レンズ面S8は物体側に凸形状の曲面部分を有している。また、第4レンズL4の像側レンズ面S9は像側に凸形状の曲面部分を有している。
【0076】
第5レンズL5は、負のパワーを有する非球面レンズである。第5レンズL5の物体側レンズ面S10は、像側に凹形状の曲面部分を有している。また、第5レンズL5の像側レンズ面S11は物体側に凹形状の曲面部分を有している。
【0077】
第6レンズL6は、正のパワーを有する非球面レンズである。第6レンズL6の物体側レンズ面は、第5レンズL5の像側レンズ面S11に対応する形状を有し、物体側に凸形状の曲面部分を有している。また、第6レンズL6の像側レンズ面S12は像側に凸形状の曲面部分を有している。第5レンズL5の像側レンズ面と第6レンズL6の物体側レンズ面は、紫外線硬化型接着剤により接合されており、第5レンズL5と第6レンズL6で接合レンズを形成する。
【0078】
第7レンズL7は、正のパワーを有する非球面レンズである。第7レンズL7の物体側レンズ面S13は像側に凹形状の曲面部分を有している。また、第7レンズL7の像側レンズ面S14は像側に凸形状の曲面部分を有している。
IRカットフィルタ12は、赤外光をカットするフィルタである。
【0079】
以下、撮像レンズ系11の特性データについて述べる。
まず、表7に、撮像レンズ系11の各レンズ面のレンズデータを示す。表7に、撮像レンズ系11の各レンズ面のレンズデータを示す。表7では、レンズデータとして、各面の曲率半径、面間隔、屈折率、及びアッベ数を提示している。「*印」がついた面は、非球面であることを示している。
【表7】
【0080】
第1面S1、第2面S2、第5面S5、第6面S6、第11面S11、第12面S12、第13面S13、第14面S14は16次の偶数次非球面であり、各面のサグ量Sagは実施例1で示した式で表される。
【0081】
表8に、実施例3の撮像レンズ系11において、非球面とされたレンズ面の非球面形状を規定するための非球面係数を示す。表8において、例えば「−6.522528E−03」は、「−6.522528×10−3」を意味する。
【表8】
【0082】
図9は、実施例3の撮像レンズ系における縦収差図、像面湾曲図、歪曲収差図である。図9に示すように、実施例3の撮像レンズ系11では、半画角が60°、F値が1.8である。図9の縦収差図では、横軸は、横軸は光線が光軸Zと交わる位置を示し、縦軸は瞳径での高さを示す。図9の縦収差図では、波長587nm、486nm、656nmの光線によるシミュレーション結果を示している。
【0083】
図9の像面湾曲図では、横軸は光軸Z方向の距離を示し、縦軸は像高(画角)を示す。また、図9の像面湾曲図において、Sagはサジタル面における像面湾曲を示し、Tanはタンジェンシャル面における像面湾曲を示す。図9の像面湾曲図に示すように、本実施例の撮像レンズ系11によれば、像面湾曲が良好に補正されている。従って、撮像レンズ系11が高解像度となる。
【0084】
図9の歪曲収差図において、横軸は像の歪み量(%)を示し、縦軸は像高(画角)を示す。図9の像面湾曲図、歪曲収差図では、波長587nmの光線によるシミュレーション結果を示している。
【0085】
次に、表9に、実施例3の撮像レンズ系11の特性値を計算した結果を示す。撮像レンズ系11において、レンズ系全体の焦点距離をf、第1レンズL1の焦点距離をf、第2レンズL2の焦点距離をf、第3レンズL3の焦点距離をf、第4レンズL4の焦点距離をf、第5レンズL5の焦点距離をf、第6レンズL6の焦点距離をf、第7レンズL7の焦点距離をf、としたときのこれらの特性値(第1レンズL1と第2レンズL2の合成焦点距離f12、第5レンズL5と第6レンズL6の合成焦点距離f56)、f12/f及びf12/fを表9に示す。各種の焦点距離は、587nmの波長の光線を用いて計算した。
【表9】
【0086】
また、実施例3の撮像レンズ系は、第1レンズ群の中で1番物体側にある第1レンズL1の入射側面が非球面であり、変曲点を有しており、次の条件式を満たす。
0.31≦L1H/L1R≦0.65
L1H:光軸垂直方向における光軸から変曲点までの距離
L1R:L1入射側面の有効半径
L1SAG:L1入射側面の変曲点位置におけるサグ量
【0087】
図10は、実施例3の撮像レンズ系の第1レンズL1の物体側レンズ面における、中心光軸からの距離とサグ量の微分値の関係を示すグラフである。図10において、横軸は中心光軸からの垂直方向の距離を示し、縦軸はサグ量を距離で微分した値を示す。
【0088】
図10に示す実施例3の撮像レンズ系において第1レンズL1は、有効半径が4.48mm、変曲点の位置が2.76mmである。したがって、変曲点の位置を有効半径で正規化した値は0.616であり、上記式を満たしている。
【0089】
また、実施例3の撮像レンズ系は、次の条件式を満たす。
0.12≦L1SAG/L1R
【0090】
上記これらの式を満たすことにより、光軸中心方向の遠距離を高解像度で撮像する領域と、広角で近傍を撮像する領域とをバランス良く確保することができる。
【0091】
(実施例4:撮像装置への適用例)
図11は、実施例4に係る撮像装置の断面図である。撮像装置20は、撮像レンズ系11と、撮像素子21と、を備える。撮像レンズ系11と、撮像素子21と、は筐体(不図示)に収容されている。撮像レンズ系11は、上述の実施の形態1に記載された撮像レンズ系11である。
【0092】
撮像素子21は、受光した光を電気信号に変換する素子であり、例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサが用いられる。撮像素子21は、撮像レンズ系11の結像位置に配置されている。なお、水平画角とは、撮像素子21の水平方向に対応する画角である。
【0093】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施例4は、実施の形態2または3に適用してもよい。
この出願は、2017年11月10日に出願された日本出願特願2017−217376を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0094】
11 撮像レンズ系
12 カットフィルタ
20 撮像装置
21 撮像素子
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7 レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11