(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のノニオン系界面活性剤のHLBの値が15.0〜18.0であり、前記第2のノニオン系界面活性剤のHLBの値が10.0〜15.0であり、当該第1のノニオン系界面活性剤および当該第2のノニオン系界面活性剤のHLBの値の差が1.0〜5.0であることを特徴とする請求項1に記載のクラッキングエアゾール組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のクラッキングエアゾール組成物は、液化石油ガス、消泡性オイル、低級アルコール、二酸化炭素および乳化剤を特定の割合で含有すると共に、水および乳化助剤を含有し、エアゾール用バルブを備えた耐圧容器よりなるエアゾール容器内に充填されてエアゾール製品とされるものである。
また、本発明のクラッキングエアゾール組成物においては、液化石油ガスおよび二酸化炭素が噴射剤として気相を構成するだけでなく、液化石油ガスの一部および二酸化炭素の一部が、水、消泡性オイル、低級アルコール、乳化剤および乳化助剤を含有する原液と共に液相を構成する。そして、吐出物において、液化石油ガスおよび二酸化炭素の作用によって破泡音が生じるものである。具体的に説明すると、本発明のクラッキングエアゾール組成物は、流動性吐出物を形成するものであり、その流動性吐出物において、二酸化炭素と液化石油ガスとが気化することにより、徐々に発泡が生じ、その発泡によって形成された泡沫が自発的に破泡することに伴ってパチパチという破泡音が生じるものである。すなわち、クラッキング特性(形成された泡沫がパチパチという破泡音を伴って破泡する特性)を有するものである。
【0013】
そして、本発明のクラッキングエアゾール組成物は、液化石油ガスの割合が20.0〜55.0質量%、消泡性オイルの割合が0.5〜12.0質量%、低級アルコールの割合が5.0〜30.0質量%、二酸化炭素の割合が0.1〜3.5質量%、および、乳化剤の割合が0.02〜1.2質量%であることを特徴とするものである。また、本発明のクラッキングエアゾール組成物においては、乳化剤が、HLBの値(Hydrophile−Lipophile Balance:親水親油バランス)が異なる2種のノニオン系界面活性剤よりなり、当該2種のノニオン系界面活性剤の質量比が1:10〜10:1のものであることも特徴である。
【0014】
本発明のクラッキングエアゾール組成物においては、液化石油ガス、消泡性オイル、低級アルコール、二酸化炭素および乳化剤の割合は、各々、他の構成成分との関係から、使用用途などに応じ、前述の範囲内において、適宜に定められる。
具体的には、例えば、液化石油ガスの割合が比較的大きい場合には、乳化剤の割合が比較的大きいことが好ましく、また低級アルコールの割合が比較的小さいことが好ましい。また、このような場合においては、乳化助剤の割合が大きいことが好ましい。
低級アルコールの割合が比較的大きい場合には、乳化剤の割合が比較的大きいことが好ましい。
乳化剤の割合が比較的大きい場合には、低級アルコールの割合が比較的大きいことが好ましい。また、乳化剤の割合は、乳化助剤の割合が小さい場合には、比較的大きいことが好ましい。
消泡性オイルの割合が比較的大きい場合には、乳化剤および乳化助剤の割合が比較的大きいことが好ましい。
【0015】
以下、本発明のクラッキングエアゾール組成物を構成する成分について説明する。
【0016】
本発明のクラッキングエアゾール組成物において、液相は、低級アルコールおよび消泡性オイルに溶解された液化石油ガスの一部を含有する油性相、および、二酸化炭素の一部が溶解された水を含有する水性相よりなるものである。そして、液相は、油性相よりなる分散粒子が、水性相よりなる分散媒中に、乳化剤および乳化助剤の作用により均一に分散した状態とされている水中油型(O/W型)エマルションよりなる。
【0017】
〔水〕
必須成分である水としては、精製水が用いられる。
【0018】
水の割合は、クラッキングエアゾール組成物を構成すべき他の成分の割合に応じ、クラッキングエアゾール組成物の使用用途などを考慮して適宜に定められる。
【0019】
〔消泡性オイル〕
必須成分である消泡性オイルは、流動性吐出物において徐々に形成された泡沫を、自発的に破泡させる作用を有するものである。
この消泡性オイルは、液化石油ガスに対する相溶性を有するものである。
【0020】
消泡性オイルは、消泡性および人体に対する安全性の観点から、シリコーンオイルおよび脂肪酸エステルオイルよりなる群から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0021】
消泡性オイルとして用いられるシリコーンオイルの具体例としては、例えばジメチコン、シクロペンタシロキサン、トリシロキサンおよびカプリリルメチコンなどが挙げられる。これらのうちでは、シクロペンタシロキサンが好ましい。
また、消泡性オイルとして用いられる脂肪酸エステルオイルの具体例としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、リノール酸エチル、サリチル酸ブチルオクチル、エチルヘキサン酸セチルおよびオリーブ脂肪酸エチル(オレイン酸エチル)等の脂肪酸の1価アルコールエステル、トリエチルヘキサノイン、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンおよびトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等の多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらのうちでは、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルおよびエチルヘキサン酸セチルが好ましい。
本発明のクラッキングエアゾール組成物において、消泡性オイルとしては、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピルが好ましく、特にミリスチン酸イソプロピルが好ましい。
【0022】
また、消泡性オイルとしては、脂肪酸エステルオイル以外のエステルオイル、流動パラフィン等の炭化水素油、オリーブオイル等の植物油を用いることもできる。
ここに、脂肪酸エステルオイル以外のエステルオイルとしては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピルおよびセバシン酸ジエチル等の多塩基酸エステルなどが挙げられる。
【0023】
消泡性オイルの割合は、クラッキングエアゾール組成物全体において、0.5〜12.0質量%とされ、好ましくは0.5〜6.0質量%である。
【0024】
消泡性オイルの割合が過大である場合には、良好な乳化状態および乳化安定性が得られなくなるおそれがある。
一方、消泡性オイルの割合が過小である場合には、吐出物が泡沫状となってクラッキング特性が得られなくなるおそれがある。
【0025】
〔低級アルコール〕
必須成分である低級アルコールは、主として液化石油ガスの溶媒として機能すると共に、消泡作用および凝固点降下作用を発現するものである。ここに、低級アルコールが凝固点降下作用を有するものであることによれば、液化石油ガスの気化熱に起因する吐出物のシャーベット化を抑制することができる。また、低級アルコールは、特にクラッキングエアゾール組成物を人体に適用した場合においては、適用箇所における清涼作用および非残留感作用を発現させるものである。
【0026】
低級アルコールとしては、例えばエタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールなどの炭素数1〜5のアルコールが挙げられる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうちでは、液化石油ガスの溶解性およびクラッキング特性が確実に得られることから、エタノールが好ましい。また、低級アルコールとしてエタノールを用いることによれば、クラッキングエアゾール組成物を人体用として用いる場合において、清涼性および非残留感性などの観点から良好な使用感が得られる。
【0027】
低級アルコールの割合は、クラッキングエアゾール組成物全体において、5.0〜30.0質量%とされ、好ましくは10.0〜25.0質量%である。
【0028】
低級アルコールの割合が過大である場合には、乳化状態を得ることができなくなるおそれがある。また、流動性吐出物において発泡が生じにくくなるおそれがある。
一方、低級アルコールの割合が過小である場合には、低級アルコールによる十分な凝固点降下作用が得られなくなることに起因して流動性吐出物を得ることができなくなるおそれがある。具体的に説明すると、吐出物において水が凍結することに起因して当該吐出物がシャーベット状になるおそれがある。また、液化石油ガスを、原液に十分に溶解することができず、それに起因して良好な乳化状態を得ることができなくなるおそれがある。特に、人体用として皮膚表面に適用した際には適用箇所においてベタツキ感が生じることに起因して良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
【0029】
〔乳化剤〕
必須成分である乳化剤は、油性相よりなる分散粒子を、水性相よりなる分散媒中に分散させる作用を有するものである。
【0030】
乳化剤は、HLBの値が異なる2種のノニオン系界面活性剤によって構成されている。
この乳化剤において、2種のノニオン系界面活性剤の質量比は、1:10〜10:1であることが好ましく、さらに好ましくは1:5〜5:1である。
【0031】
本発明のクラッキングエアゾール組成物においては、乳化剤としてHLBの値が異なる2種のノニオン系界面活性剤を組み合わせて用いることにより、消泡性オイルおよび二酸化炭素の存在下において、当該乳化剤による乳化作用が十分に発揮されることから、良好な乳化状態を得ることができる。また、2種のノニオン系界面活性剤の質量比が上記の範囲内にあることにより、組成物において良好な乳化安定性を得ることができる。
【0032】
そして、乳化剤を構成する2種のノニオン系界面活性剤は、HLBの値が15.0〜18.0である第1のノニオン系界面活性剤と、HLBの値が10.0〜15.0である第2のノニオン系界面活性剤とよりなることが好ましく、かつ、第1のノニオン系界面活性剤のHLBの値と第2のノニオン系界面活性剤のHLBの値との差が1.0〜5.0であることが好ましい。
【0033】
2種のノニオン系界面活性剤として、特定のHLBの値を有し、かつ互いのHLBの値の差が特定の範囲内にあるものを組み合わせて用いることにより、より一層優れた乳化作用が得られる。そのため、より一層優れた、乳化容易性および乳化安定性が得られると共に、より優れたクラッキング特性を得ることができる。特に、人体に適用する場合においては、乳化剤の使用量を少量とすることができるため、ベタツキ感の発生が抑制され、よって良好な使用感を得ることができる。
而して、第1のノニオン系界面活性剤のHLBの値と第2のノニオン系界面活性剤のHLBの値との差が過大である場合および過小である場合には、いずれの場合においても、良好な乳化状態および乳化安定性が得られなくなるおそれがある。
【0034】
第1のノニオン系界面活性剤の具体例としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(HLBの値:16.7)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(HLBの値:15.6)およびポリオキシエチレン(20)ヤシ油脂肪酸ソルビタン(HLBの値:16.9)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(25)オクチルドデシルエーテル(HLBの値:15.7)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(6)ソルビット(HLBの値:15.5)等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(40)ラノリンアルコール(HLBの値:17.0)等のポリオキシエチレンラノリンアルコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(HLBの値:16.5)等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20)フィトステロール(HLBの値:15.5)等のポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(10)リン酸ナトリウム(HLBの値:17.0)等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸などが挙げられる。
【0035】
第2のノニオン系界面活性剤の具体例としては、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(85)ソルビタン(HLBの値:11.0)およびトリステアリン酸ポリオキシエチレン(65)ソルビタン(HLBの値:10.5)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット(HLBの値:14.0)等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(HLBの値:13.5)およびポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(HLBの値:14.5)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル(HLBの値:10.5〜13.3)、ポリオキシエチレン(40)硬化シマシ油(HLBの値:12.5)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノミリスチン酸デカグリセリル(HLBの値:14.5)等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(10)ラノリン(HLBの値:12.0)等のポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテルリン酸ナトリウム(HLBの値:12.5)およびポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム(HLBの値:13.0)等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩、モノラウリン酸ポリエチレン(10)グリコール(HLBの値:12.5)等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(15)グリセリル(HLBの値:13.5)等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(10)フィトステロール(HLBの値:12.5)等のポリオキシエチレンステロールなどが挙げられる。
【0036】
第1のノニオン系界面活性剤と第2のノニオン系界面活性剤との好ましい組み合わせとしては、第1のノニオン系界面活性剤がポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタンおよびモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビットよりなる群から選ばれる1種または2種以上であり、第2のノニオン系界面活性剤がテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油よりなる群から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
具体的には、第1のノニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)ヤシ油脂肪酸ソルビタンを用い、第2のノニオン系界面活性剤としてテトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビットを用いること、または、第1のノニオン系界面活性剤としてモノラウリン酸ポリオキシエチレン(6)ソルビットを用い、第2のノニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油を用いることが好ましい。
【0037】
また、第1のノニオン系界面活性剤および第2のノニオン系界面活性剤においては、前述したように、質量比、具体的には、第1のノニオン系界面活性剤のクラッキングエアゾール組成物における割合と第2のノニオン系界面活性剤のクラッキングエアゾール組成物における割合との比率(第1のノニオン系界面活性剤:第2のノニオン系界面活性剤)が、1:10〜10:1であることが好ましく、さらに好ましくは1:5〜5:1であり、特に好ましくは1:2〜2:1である。
【0038】
乳化剤の割合は、クラッキングエアゾール組成物全体において、0.02〜1.2質量%とされ、好ましくは0.20〜0.80質量%である。
【0039】
乳化剤の割合が過大である場合には、吐出物が泡沫状となってクラッキング特性が得られなくなるおそれがある。特に、人体用として皮膚表面に適用した際には、適用箇所において、ベタツキ感が生じたり、皮膚刺激が強くなったりすることに起因して良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
一方、乳化剤の割合が過小である場合には、乳化状態を得ることができなくなるおそれがある。
【0040】
〔乳化助剤〕
必須成分である乳化助剤は、粉末よりなり、液相中に分散した状態で存在し、油性相よりなる分散粒子を、水性相よりなる分散媒中に分散させやすくする作用、および分散状態の安定性、すなわち乳化安定性を向上させる作用を有するものである。
この乳化助剤を構成する粉末の材質としては、例えばシリカ、タルク、アルミナ、ゼオライト、ポリアミド(ナイロン)などが挙げられる。
本発明のクラッキングエアゾール組成物における乳化助剤を構成する粉末の材質としては、シリカが好ましい。
【0041】
乳化助剤を構成する粉末の平均粒径は1〜30μmであることが好ましい。
乳化助剤を構成する粉末の平均粒径が過大である場合には、特に人体用として皮膚表面に適用した際には適用箇所においてざらつき感が生じるおそれがある。
一方、乳化助剤を構成する粉末の平均粒径が過小である場合には、特に人体用として皮膚表面に適用した際には人体に対して悪影響を及ぼすおそれがある。
【0042】
乳化助剤の割合は、クラッキングエアゾール組成物全体において、0.4〜0.8質量%であることが好ましい。
【0043】
乳化助剤の割合が過大である場合には、エアゾール用バルブに詰まりが生じやすくなり、また特に人体用として皮膚表面に適用した際には適用箇所においてざらつき感が生じることに起因して良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
一方、乳化助剤の割合が過小である場合には、乳化容易性が得られなくなるおそれがある。具体的には、クラッキングエアゾール組成物において良好な乳化状態を得るために長時間にわたる振盪が必要となるおそれがある。
【0044】
〔液化石油ガス〕
必須成分である液化石油ガスは、一部が原液に溶解されることによって液相を構成していると共に、他の一部によって、二酸化炭素(具体的には、二酸化炭素の一部)と共に噴射剤として気相を構成している。
【0045】
液化石油ガスの具体例としては、例えばプロパン、n−ブタン、iso−ブタンおよびそれらの混合物を挙げることができる。また、液化石油ガスには、n−ペンタン、iso−ペンタンが含有されていてもよい。
【0046】
液化石油ガスの割合は、クラッキングエアゾール組成物全体において、20.0〜55.0質量%とされ、好ましくは25.0〜55.0質量%である。
【0047】
液化石油ガスの割合が過小である場合には、吐出物が泡沫状となったり、吐出物において形成された泡沫がシュワシュワという音をたてて自発的に破泡するものの、パチパチという破泡音は得られなかったりすることにより、十分なクラッキング特性を得ることができなくなるおそれがある。
【0048】
〔二酸化炭素〕
必須成分である二酸化炭素は、水に対する溶解性を有するものであることから、一部が原液に溶解されることによって液相を構成していると共に、他の一部によって、液化石油ガス(具体的には、液化石油ガスの一部)と共に噴射剤として気相を構成している。
【0049】
二酸化炭素の割合は、クラッキングエアゾール組成物全体において、0.1〜3.5質量%とされ、好ましくは0.8〜2.2質量%である。
【0050】
二酸化炭素の割合が過大である場合には、エアゾール容器の製品内圧が過大になることに起因して、十分な安全性が得られなくなるおそれがある。
一方、二酸化炭素の割合が過小である場合には、十分なクラッキング特性を得ることができなくなるおそれがある。また、特に低温環境下において、良好な吐出状態を得ることができなくなるおそれがある。
【0051】
ここに、本発明のクラッキングエアゾール組成物において、エアゾール容器の製品内圧は、温度35℃において、0.8MPa以下であることが好ましく、0.3〜0.7MPaであることがさらに好ましい。
製品内圧が過大である場合には、噴射剤(具体的には、液化石油ガスおよび二酸化炭素)の充填圧力が過剰に大きくなることに起因して十分な安全性を得ることができなくなるおそれがある。
而して、エアゾール容器の温度35℃における製品内圧が0.3〜0.7MPaであることによれば、エアゾール製品に必要とされる十分な安全性が得られると共に、十分なクラッキング特性を得ることができる。
【0052】
〔任意成分〕
本発明のクラッキングエアゾール組成物には、必須成分(具体的には、水、消泡性オイル、低級アルコール、乳化剤、乳化助剤、液化石油ガスおよび二酸化炭素)の他、必要に応じて任意成分が含有されていてもよい。その具体例としては、例えば増粘剤、保湿剤、殺菌・防腐剤、皮膚保護剤(アミノ酸)、ビタミン類、各種抽出液、消臭・防臭剤、清涼剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、害虫忌避成分、香料、およびその他が挙げられる。
任意成分を構成する増粘剤としては、セルロース系高分子およびガム質などの水溶性高分子が用いられる。
増粘剤を構成するセルロース系高分子としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ニトロセルロースおよび結晶セルロースなどが挙げられる。
増粘剤を構成するガム質としては、例えばキサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジュランガムおよびローカストビーンガムなどが挙げられる。
本発明のクラッキングエアゾール組成物における増粘剤としては、1種の水溶性高分子を単独で用いることもでき、また、2種以上の水溶性高分子を組み合わせて用いることもできる。
【0053】
増粘剤の割合は、クラッキングエアゾール組成物全体において、0.04〜1.0質量%であることが好ましい。
増粘剤の割合が過大である場合には、クラッキングエアゾール組成物(原液)の粘度が過大となり、それに起因して油性相よりなる分散粒子を、水性相よりなる分散媒中に十分に分散させることができなくなるため、クラッキングエアゾール組成物において良好な乳化状態を得ることができなくなるおそれがある。また、良好な吐出状態を得ることができなくなるおそれがある。具体的には、吐出自体を行うことができなくなるおそれ、あるいは所期の量の吐出物を得ることができなくなるおそれがある。さらに、特に人体への適用に際してベタツキ感が生じ、良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
一方、増粘剤の割合が過小である場合には、クラッキングエアゾール組成物(原液)の粘度が過小となり、それに起因して、クラッキングエアゾール組成物において良好な乳化状態を得ることができなくなり、吐出物においてクラッキング特性を得ることができなくなるおそれがある。
【0054】
また、任意成分を構成する保湿剤としては、例えばプロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、乳酸ナトリウム、ケラチン、カゼイン、レシチンおよび尿素などが挙げられる。
任意成分を構成する殺菌・防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジンおよび塩化クロルヘキシンなどが挙げられる。
任意成分を構成する皮膚保護剤(アミノ酸)としては、例えばグリシン、アラニン、ステロイシン、ロイシン、セリン、トリプトファン、シスチン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸およびアルギニンなどが挙げられる。
任意成分を構成するビタミン類としては、例えばレチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、ビタミンD
2 、パントテン酸およびビオチンなどが挙げられる。
任意成分を構成する各種抽出液としては、例えばシャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキスおよびシルク抽出液などが挙げられる。
任意成分を構成する消臭・防臭剤としては、例えばラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、安息香酸メチルおよびフェニル酢酸メチルなどが挙げられる。
任意成分を構成する清涼剤としては、例えばl−メントールおよびカンフルなどが挙げられる。
【0055】
以上のような必須成分および任意成分により構成されるクラッキングエアゾール組成物においては、温度20℃における原液の粘度が50〜1000mPa・sであることが好ましく、80〜300mPa・sであることがさらに好ましい。
【0056】
原液の粘度が過大である場合には、良好な吐出状態を得ることができなくなるおそれがある。具体的には、吐出自体を行うことができなくなるおそれ、あるいは所期の量の吐出物を得ることができなくなるおそれがある。また、特に人体への適用に際してベタツキ感が生じ、良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
一方、原液の粘度が過小である場合には、良好な乳化状態が得られず、また十分なクラッキング特性を得ることができなくなるおそれがある。
【0057】
このような構成の本発明のクラッキングエアゾール組成物は、必須成分(具体的には、水、消泡性オイル、低級アルコール、乳化剤、乳化助剤、液化石油ガスおよび二酸化炭素)、および必要に応じて含有される任意成分をエアゾール容器内に充填して振盪することにより製造することができる。
【0058】
このような本発明のクラッキングエアゾール組成物においては、消泡性オイルおよび二酸化炭素が特定の割合で含有されていると共に、低級アルコール、乳化剤および液化石油ガスが特定の割合で含有されている。そして、乳化剤として、HLBの値が異なる2種のノニオン系界面活性剤が特定の質量比で組み合わされて用いられていることから、消泡性オイルおよび二酸化炭素が含有されていても、乳化剤による乳化作用が十分に発揮されるため、良好な乳化状態が得られる。そのため、液化石油ガスの割合が小さくても、流動性吐出物が得られ、その流動性吐出物において、二酸化炭素と液化石油ガスとが気化することにより、徐々に発泡が生じ、その発泡によって形成された泡沫が自発的に破泡することに伴って破泡音(パチパチ音)が生じる。
従って、本発明のクラッキングエアゾール組成物においては、液化石油ガスの割合が小さくても、流動性吐出物において、十分なクラッキング特性が得られる。具体的には、流動性吐出物において形成された泡沫が、パチパチと音をたてて自発的に破泡する。
その結果、本発明のクラッキングエアゾール組成物においては、液化石油ガスの割合を小さくすることによって、原液の量を相対的に多量にすることができるため、当該クラッキング組成物をエアゾール容器内に充填したエアゾール製品の使用可能回数を多くすることができる。また、圧力の温度依存性が極めて小さい二酸化炭素を用いて圧力(蒸気圧)の温度依存性が大きい液化石油ガスの割合を小さくすることにより、吐出状態の温度依存性が低下することから、使用環境によらずに安定な性状の流動性吐出物が得られる。具体的には、低温環境下においても、良好な吐出状態を得ることができる。また、本発明のクラッキング組成物に係るエアゾール製品においては、可燃性の液化石油ガスの割合が小さいことから、爆発性や引火性が低下するため、使用環境によらずに高い安全性が得られる。
また、本発明のクラッキングエアゾール組成物においては、特に人体に適用する場合には、クラッキング特性によって爽快感が得られるため、良好な使用感が得られる。
ここに、液化石油ガスと二酸化炭素とを含有するクラッキングエアゾール組成物において、消泡性オイルを配合し、乳化剤としてHLBの値が異なる2種のノニオン系界面活性剤を特定の質量比で用いると共に、当該消泡性オイル、低級アルコール、当該乳化剤、液化石油ガスおよび二酸化炭素を特定の割合で用いることにより、液化石油ガスの割合を小さくできることは、発明者らが実験を重ねた結果によって明らかとなった事項である。
【0059】
また、本発明のクラッキングエアゾール組成物は、例えば人体用あるいはその他の様々な用途に用いることができるが、消泡性オイルによる保湿作用が得られると共に、二酸化炭素による血行促進効果などが期待されるため、特に人体用として好適に用いることができる。
具体的には、ボティーローション剤、スキンケア剤、育毛剤、マッサージング剤、ヘアスタイリング剤、ヘアトリートメント剤、シャンプー剤、コンディショナー剤、忌避剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤などとして用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0061】
〔実施例1〜16および比較例1〜4〕
先ず、表1および表2に示す組成物材料を用意し、液化石油ガスおよび二酸化炭素以外の組成物材料を当該表1および表2に示す割合で混合することにより、原液を調製した。得られた原液の20℃における粘度を測定した。結果を表1および表2に示す。
次いで、得られた原液と、液化石油ガス(0.15MPa)および二酸化炭素とを、表1および表2に示す割合でエアゾール用バルブを備えたガラス製の透明耐圧容器よりなるエアゾール容器内に、内容物の質量が40gとなるように充填し、評価用エアゾール製品を作製した。
得られた複数の評価用エアゾール製品においては、温度35℃における製品内圧が0.3〜0.7MPaの範囲内であった。
【0062】
ここに、実施例1〜実施例13および比較例1〜比較例4において、2種のノニオン系界面活性剤の質量比(ノニオン系界面活性剤(1):ノニオン系界面活性剤(2))は1.9:1であり、第1のノニオン系界面活性剤としてのノニオン系界面活性剤(1)と第2のノニオン系界面活性剤としてのノニオン系界面活性剤(2)とのHLBの値の差は2.9である。
また、実施例14においては、2種のノニオン系界面活性剤の質量比(ノニオン系界面活性剤(3):ノニオン系界面活性剤(4))は1.9:1であり、第1のノニオン系界面活性剤としてのノニオン系界面活性剤(3)と第2のノニオン系界面活性剤としてのノニオン系界面活性剤(4)とのHLBの値の差は3である。
また、実施例15においては、2種のノニオン系界面活性剤の質量比(ノニオン系界面活性剤(1):ノニオン系界面活性剤(2))は1:1.1であり、実施例16においては、2種のノニオン系界面活性剤の質量比(ノニオン系界面活性剤(1):ノニオン系界面活性剤(2))は1:1.9である。
【0063】
得られた評価用エアゾール製品について、各々、下記の評価を行った。結果を表1および表2に示す。
【0064】
<エマルション形成性:乳化容易性>
得られた評価用エアゾール製品を室温(25℃)の温度条件(以下、「室温条件」ともいう。)下において、60回/分の振盪条件によって振盪し、エマルションが形成されるまでに要する振盪回数を確認することにより、エマルション形成性(乳化容易性)を評価した。
【0065】
<エマルション再形成性:乳化安定性>
得られた評価用エアゾール製品を室温条件下において振盪してエマルションを形成した後、室温条件下に1日静置した。その後、室温条件下において、60回/分の振盪条件によって振盪し、エマルションが形成されるまでに要する振盪回数を確認することにより、エマルション再形成性(乳化安定性)を評価した。
【0066】
<破泡性:クラッキング特性>
得られた評価用エアゾール製品を室温条件下において60回/分の振盪条件によって3分間にわたって振盪した後に1時間静置した。その後、室温条件下において、60回/分の振盪条件によって10秒間にわたって振盪した後、内容物1gを吐出させ、形成される吐出物の性状を確認し、流動性吐出物中において徐々に発泡が生じ、その発泡によって形成された泡沫のすべてがパチパチと音をたてて自発的に破泡する場合を極めて良好なクラッキング特性があるとして「A」、流動性吐出物中において徐々に発泡が生じることによって形成された泡沫の大部分がパチパチと音をたてて自発的に破泡する場合を良好なクラッキング特性が得られるとして「B」、流動性吐出物中において徐々に発泡が生じることによって形成された泡沫の一部分がパチパチと音をたてて自発的に破泡する場合をクラッキング特性が得られるとして「C」、吐出物においてパチパチ音が生じない場合をクラッキング特性がないとして「D」と評価する評価基準によって破泡性(クラッキング特性)を評価した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1および表2において、ノニオン系界面活性剤(1)とは、ポリオキシエチレン(20)ヤシ油脂肪酸ソルビタン(HLBの値:16.9)であり、ノニオン系界面活性剤(2)とは、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット(HLBの値:14.0)であり、ノニオン系界面活性剤(3)とは、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(6)ソルビット(HLBの値:15.5)であり、ノニオン系界面活性剤(4)とは、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油(HLBの値:12.5)である。
また、表2において、比較例3に係るエアゾール組成物は、エマルションを形成することができず、乳化状態を得ることができないものであったことから、エマルション形成性、エマルション再形成性および破泡性を評価することができなかった。
【0070】
以上の結果から、本発明に係る実施例1〜実施例16のエアゾール組成物によれば、二酸化炭素と液化石油ガスとを含有する場合において、液化石油ガスの割合が小さくても、良好な乳化容易性および乳化安定性が得られると共に、流動性吐出物において、破泡音が生じることが確認された。