特許第6985417号(P6985417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985417
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】表面処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 7/00 20060101AFI20211213BHJP
   C23G 5/00 20060101ALI20211213BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20211213BHJP
【FI】
   B08B7/00
   C23G5/00
   !H01L21/304 645C
   !H01L21/304 643B
   !H01L21/304 645D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-561079(P2019-561079)
(86)(22)【出願日】2018年12月17日
(86)【国際出願番号】JP2018046396
(87)【国際公開番号】WO2019124321
(87)【国際公開日】20190627
【審査請求日】2020年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-241512(P2017-241512)
(32)【優先日】2017年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】饗場 広明
(72)【発明者】
【氏名】日野 守
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 政人
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−219429(JP,A)
【文献】 特開2011−099893(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/108307(WO,A1)
【文献】 特開2004−146837(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/055305(WO,A1)
【文献】 特開平5−106020(JP,A)
【文献】 特開平7−256260(JP,A)
【文献】 特開平10−256198(JP,A)
【文献】 特開2008−27657(JP,A)
【文献】 特開2011−187703(JP,A)
【文献】 米国特許第6350322(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00− 7/04
H01L21/304
C23G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
易酸化性の金属層を含む被処理基板の表面を親水化処理する表面処理方法であって、
前記易酸化性の金属層が、銅、アルミニウム、鉄、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含み、
ドライ処理部の一対の電極間に大気圧近傍下において放電を生成するとともに、還元性成分を含有する還元性ガス状流体を、前記電極間に導入してプラズマ化により活性化させて、前記一対の電極間から吹き出して、前記被処理基板に接触させ、
その後、被処理基板をウェット洗浄部へ移送し、
前記ウェット洗浄部において前記被処理基板を洗浄液にてウェット洗浄し、
前記洗浄液の一部が、霧状になって雰囲気中に浮遊して、前記ウェット洗浄部に入る前の前記被処理基板に付着することを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
前記還元性成分が、過酸化水素(H)、一酸化炭素(CO)、及び水素酸素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項3】
易酸化性の金属層を含む被処理基板の表面を親水化処理する表面処理装置であって、
前記易酸化性の金属層が、銅、アルミニウム、鉄、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含み、
一対の電極を有し、これら電極間に大気圧近傍下において放電を生成するとともに、還元性成分を含有する還元性ガス状流体を、前記電極間に導入してプラズマ化により活性化させて、前記電極間から吹き出して、前記被処理基板に接触させるドライ処理部と、
前記接触後の被処理基板を洗浄液にて洗浄するウェット洗浄部と
を備え
霧状になって雰囲気中に浮遊した前記洗浄液の一部が、前記ウェット洗浄部に入る前の前記被処理基板に付着するように、前記ドライ処理部及び前記ウェット洗浄部が配置されていることを特徴とする表面処理装置。
【請求項4】
前記還元性成分が、過酸化水素(H)、一酸化炭素(CO)、及び水素酸素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3に記載の表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易酸化性の金属層を含む被処理基板の表面を処理する方法及び装置に関し、特にドライ処理及びウェット洗浄を含む表面処理方法及び表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TFT(thin film transistor)等の半導体製造工程においては、例えば基板の表面にCu等の金属層を形成後、洗浄したうえで、レジストを設けて、前記金属層をフォトエッチングすることによって電極パターンを形成する(特許文献1等参照)。
前記洗浄方法としては、ドライ洗浄とウェット洗浄がある。洗浄によって接触角を小さくして親水性を高め、レジストを被膜しやすくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−87719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者等の知見によれば、基板の親水性を高めるために、例えばN及びOを含有する酸化性プロセスガスをプラズマやエキシマUVなどの活性化手段によって活性化させて基板に接触させることによってドライ洗浄した後、水でウェット洗浄すると、金属層の表面に散点状ないしは斑点状の溶解ダメージが形成されることがある。特に、Cu等の易酸化性の金属層の場合、ダメージを受け易い。ダメージを受けた金属層から電極パターンを形成すると配線不良が起きる。
本発明は、かかる事情に鑑み、易酸化性の金属層が形成された基板表面をドライ処理後、ウェット洗浄する際、金属層がダメージを受けるのを抑制又は防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、発明者は鋭意研究考察を行なった。
前記酸化性プロセスガスの活性化によって例えば硝酸その他の酸化性の腐食性成分が生成され、これが被処理基板に付着ないしは吸着するものと推察される。一方、被処理基板をウェット洗浄工程へ移行させる際、ウェット洗浄部近くの雰囲気中を浮遊する霧状の水が被処理基板に付着する。このため、被処理基板の表面の金属層上に硝酸水溶液などの腐食性水溶液が出来、該水溶液に金属層の銅が溶け出すことで前記ダメージが形成されるものと考えられる。
【0006】
本発明は、かかる考察に基づいてなされたものであり、本発明方法は、易酸化性の金属層を含む被処理基板の表面を処理する方法であって、
還元性成分を含有する還元性ガス状流体を前記被処理基板に接触させ、かつ前記接触と前後して前記還元性ガス状流体を活性化させ、
その後、被処理基板を洗浄液にて洗浄することを特徴とする。
【0007】
前記表面処理によって、被処理基板の接触角が小さくなって親水性が高まり、レジスト等との密着性を向上できる。加えて、前記還元性ガス状流体に還元性成分を含有させることによって、活性化時に酸化性の腐食性成分が生成されるのが回避される。或いは生成されたとしても還元性成分の還元作用によって酸化性ないしは腐食性を緩和される。そうすることで、ウェット洗浄移行時に被処理基板の表面に腐食性溶液が形成されるのが防止又は抑制される。この結果、易酸化性の金属層がダメージを受けるのを防止又は抑制できる。
前記還元性ガス状流体を活性化させた後、前記被処理基板に接触させてもよい。
前記還元性ガス状流体を前記被処理基板に接触させた後、活性化させてもよい。
前記還元性ガス状流体の前記被処理基板への接触と活性化を同時に行なってもよい。
【0008】
プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理またはマイクロ波照射処理によって前記活性化を行なうことが好ましい。
プラズマ処理では、プラズマによって還元性ガス状流体を活性化させる。一対の電極間に放電を生成することによって前記活性化を行なうことが好ましい。前記希釈成分が放電生成ガスを兼ねることが好ましい。
コロナ放電処理では、コロナ放電によって還元性ガス状流体を活性化させる。紫外線照射処理では、紫外線照射によって還元性ガス状流体を活性化させる。マイクロ波照射処理では、マイクロ波照射によって還元性ガス状流体を活性化させる。
【0009】
前記還元性成分は、還元作用を奏する単体又は化合物であり、前記活性化によって還元作用が発現する単体又は化合物であってもよい。かかる還元性成分としては、水素(H)、硫化水素(HS)、過酸化水素(H)、一酸化炭素(CO)、水素酸素含有化合物などが挙げられる。前記還元性ガス状流体が、複数種の還元性成分を含有していてもよい。水素酸素含有化合物は、水素原子(H)及び酸素原子(O)を含有する化合物であり、エタノール、メタノール、イソプロパノールその他の低級アルコールや水が挙げられる。
【0010】
還元性ガス状流体は、還元性成分と希釈ガスとの混合流体であってもよい。希釈ガスとしては、窒素(N)、希ガスその他の不活性ガスが挙げられ、経済性等の観点からは窒素がより好ましい。例えば還元性ガス状流体中の還元性成分COの含有率は、100ppm〜5%程度(体積含有率)が好ましい。
還元性ガス状流体は、ガスの他、ミスト状であってもよい。
ガス状態(気相)の還元性ガス状流体が被処理基板に接触後、被処理基板上で凝縮して液相になってもよい。還元性ガス状流体の凝縮点が、被処理基板の温度より低温であってもよい。
還元性ガス状流体が、複数種の還元性成分を含んでいてもよい。例えば還元性ガス状流体がエタノール等の低級アルコールと水の混合物であってもよい。
【0011】
前記還元性ガス状流体が前記接触によって前記被処理基板に定着可能であってもよい。酸化性ガス状流体を活性化させて、前記還元性ガス状流体の定着後の被処理基板に接触させることにしてもよい。前記定着の態様としては、凝縮、付着、吸着など挙げられる。前記酸化性ガス状流体としては、窒素と酸素の混合ガス、CDAなど挙げられる。活性化された酸化性ガス状流体が被処理基板に接触されることによって、被処理基板上の還元性ガス状流体が間接的に活性化エネルギーを付与される。これによって、金属層の腐食を確実に防止でき、かつ洗浄効果を高めることができる。
【0012】
還元性ガス状流体を活性化させて被処理基板に接触させた後で 酸化性ガス状流体を活性化させて被処理基板に接触させてよい。逆に酸化性ガス状流体を活性化させて被処理基板に接触させた後、還元性ガス状流体を活性化させて被処理基板に接触させてもよい。
更に還元性ガス状流体自体が酸化性成分を含有していてもよい。酸化性成分は、酸化作用を奏するものであればよく、或いは酸素原子を含有するものであればよく、CDA(クリーンドライエア)、酸素(O)、オゾン(O)、亜酸化窒素(NO)等が挙げられ、好ましくはCDAないしは酸素(O)である。
【0013】
前記ウェット洗浄工程における洗浄液は、水であることが好ましい。前記洗浄液は、アルコールであってもよい。
【0014】
本発明装置は、易酸化性の金属層を含む被処理基板の表面を処理する装置であって、
還元性成分を含有する還元性ガス状流体を前記被処理基板に接触させ、かつ前記接触と前後して前記還元性ガス状流体を活性化させるドライ処理部と、
前記接触後の被処理基板を洗浄液にて洗浄するウェット洗浄部と
を備えたことを特徴とする。
【0015】
前記ドライ処理部が、一対の電極を有し、これら電極間に放電を生成することによって前記活性化を行なうことが好ましい。これによって、歩留まりを向上させることができる。放電形式は、大気圧近傍下における誘電体バリア放電であることが好ましい。
大気圧近傍とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10〜10.664×10Paが好ましく、9.331×10〜10.397×10Paがより好ましい。
前記活性化手段としては、プラズマ生成手段のほか、コロナ放電によってガスを活性化させるコロナ放電手段、紫外線を照射してガスを活性化させる紫外線照射手段、マイクロ波を照射してガスを活性化させるマイクロ波照射手段などが挙げられる。
【0016】
前記易酸化性の金属層が、銅、アルミニウム、鉄、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。前記易酸化性の金属は、イオン化傾向が銅(Cu)と同等ないしは銅よりもイオン化傾向が高い金属を含む。
前記易酸化性の金属は、易酸化性に加えて高導電性であることが好ましい。
前記易酸化性の金属層は、銅(Cu)によって構成されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、易酸化性の金属層が形成された基板表面をドライ処理後、ウェット洗浄する際、金属層がダメージを受けるのを抑制又は防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る表面処理装置の概略構成を示す解説図である。
図2図2(a)〜図2(e)は、被処理基板に対する表面処理工程を順次示す解説断面図である。
図3図3は、比較例の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
<被処理基板90>
図2(a)に示すように、本実施形態における被処理基板90は、例えばフラットパネルディスプレイ等の半導体装置になるべきガラス基板である。
なお、被処理基板は、ガラス基板90に限られず、シリコンウェハや樹脂フィルムなどでもよい。
【0020】
ガラス基板には、例えばTFTの電極(図2(e)参照)となるべき金属層91が形成されている。金属層91は、金属基層92と、易酸化性金属層93を含む複層構造になっている。金属基層92は、例えばチタン(Ti)によって構成されている。易酸化性金属層93は、易酸化性を有し、更に好ましくは高導電性を有する金属によって構成されている。好ましくは、易酸化性金属層93は、銅(Cu)によって構成されている。
なお、易酸化性金属層93は、銅(Cu)に限られず、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)などによって構成されていてもよい。金属層91が、銅(Cu)等の易酸化性金属層93だけからなる単層構造であってもよい。
【0021】
<表面処理装置1>
図1に示すように、本実施形態の表面処理装置1は、ドライ処理部10と、ウェット洗浄部20を備えている。
<ドライ処理部10>
ドライ処理部10は、プラズマヘッド11(プラズマ生成手段、活性化手段)と、搬送手段18を含む。プラズマヘッド11には一対の電極12が設けられている。一対の電極12は、互いに平行に対向することによって平行平板電極を構成している。これら電極12どうし間に大気圧近傍の放電空間となる電極間空間15が形成されている。一方の電極には高周波電源13が接続され、他方の電極は電気的に接地されている。少なくとも1つの電極には固体誘電体層(図示省略)が設けられている。
【0022】
電極間空間15の上流端には、プロセスガス源14(還元性ガス状流体源)が連なっている。
プラズマヘッド11の底部には吹出部16が設けられている。電極間空間15の下流端が吹出部16に連なっている。
搬送手段18は、ローラコンベアでもよく、移動ステージでもよい。
【0023】
<プロセスガス(還元性ガス状流体)>
プロセスガス源14のプロセスガス(還元性ガス状流体)は、希釈ガスと還元性ガス(還元性成分)を含む混合ガスである。希釈ガスとしては窒素(N)が用いられている。希釈ガスは、放電生成ガスを兼ねる。還元性ガスとしては例えば一酸化炭素(CO)が用いられている。
なお、プロセスガスには、更にCDA(クリーンドライエア)などの酸化性ガスが含まれていてもよい。
【0024】
<ウェット洗浄部20>
図1に示すように、ウェット洗浄部20は洗浄ノズル21を含む。洗浄ノズル21には多数の噴射孔22が形成されている。洗浄ノズル21に洗浄液供給路23が連なっている。洗浄液29としては水が用いられている。
【0025】
被処理基板90は、次のようにして表面処理される。
<活性化工程>
図1に示すように、プロセスガス源14からプロセスガスがプラズマヘッド11の電極間空間15に導入される。かつ、電源13から電極12に例えばパルス波状の高周波電力が供給される。これによって、電極間空間15内に大気圧近傍のグロー放電が形成され、電極間空間15が放電空間となる。該放電空間15においてプロセスガスがプラズマ化(活性化)される。
以下、プラズマ化されたプロセスガスをプラズマガス19と称す。
プラズマガス19には、窒素プラズマ、窒素ラジカルその他の窒素系活性種や、一酸化炭素プラズマ、一酸化炭素ラジカルその他の還元性活性種が含まれている。
更にプラズマガス19にはCDAの分解反応等による硝酸系の酸化性の腐食性物質が含まれていてもよい。
【0026】
<ドライ処理工程>
前記プラズマガス19が吹出部16から吹き出され、被処理基板90と接触される。これによって、被処理基板90の表面すなわち易酸化性金属層93の表面がドライ処理される。更には、一酸化炭素プラズマなどによって易酸化性金属層93の対水接触角を向上できると考えられる。
【0027】
前記ドライ処理時において、プラズマガス19に酸化性腐食性物質が含まれていた場合には、該酸化性腐食性物質が易酸化性金属層93に付着ないしは吸着され得る。一方、易酸化性金属層93には、一酸化炭素プラズマ、一酸化炭素ラジカル等の還元性活性種も接触される。該還元性活性種が前記酸化性腐食性物質と接触されると、酸化性腐食性物質の還元反応が起きる。したがって、酸化性腐食性物質が易酸化性金属層93に付着ないしは吸着されたとしても、還元させて除去できる。
【0028】
併行して、搬送手段18によって被処理基板90を搬送することで、被処理基板90の全面をドライ処理する。
なお、被処理基板90が位置固定される一方、プラズマヘッド11が移動されるようになっていてもよい。
【0029】
<移送工程>
その後、図1の白抜き矢印線aに示すように、前記ドライ処理後の被処理基板90をウェット洗浄部20へ送る。
ウェット洗浄部20の近くの雰囲気中には、ウェット洗浄部20からの細かい霧状の水が浮遊していることがある。そうすると、被処理基板90の移送の際、易酸化性金属層93の表面に前記霧状の水が付着する。
一方、前述したように、ドライ処理工程において、プラズマガス19に酸化性腐食性物質が含まれていたとしても、その酸化性腐食性物質を還元させておくことで、易酸化性金属層93上の前記付着水が腐食性水溶液になるのを回避できる。したがって、易酸化性金属層93の銅が腐食性水溶液中に溶け出すことはない。この結果、易酸化性金属層93に散点状ないしは斑状のダメージが形成されるのを防止又は抑制できる。
【0030】
<ウェット洗浄工程>
図1に示すように、ウェット洗浄部20においては、噴射孔22から水29(洗浄液)が噴射される。これによって、被処理基板90を水洗できる。
なお、仮にウェット洗浄部20への導入時における易酸化性金属層93上に前記酸化性腐食性物質が残留していたとしても、該酸化性腐食性物質の量と比べると洗浄水29が十分に多量であるため、生成される腐食性水溶液の濃度は極めて薄い。したがって、易酸化性金属層93からの銅の溶出は殆ど起きない。
【0031】
<電極パターン形成>
その後、図2(b)に示すように、易酸化性金属層93上にレジスト94を積層する。前記ドライ処理工程及びウェット処理工程によって被処理基板90の接触角が小さくなり、親水性が高まめられることで、レジスト94との密着性を向上できる。
次いで、図2(c)に示すように、レジスト94を露光、現像することで、レジストパターン94aを形成する。
次いで、図2(d)に示すように、エッチングによって、レジストパターン94aに応じた電極パターン91aを形成する。
次いで、図2(e)に示すように、レジスト94を除去する。
前記洗浄工程において易酸化性金属層93がダメージを受けていないために、良好な電極パタ−ンを得ることができ、配線不良を抑制又は防止できる。
ドライ処理を大気圧プラズマによって行うことで、歩留まり高めることができる。
【0032】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、プロセスガスには酸素(O)などの酸化性ガスが必ずしも含まれていなくてもよい。
プロセスガス中の希釈ガスは、窒素に限られず、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)などの希釈ガスを用いてもよい。
還元性ガスは、一酸化炭素(CO)に限られず、水素(H)、硫化水素(HS)、過酸化水素(H)、水素酸素含有化合物(メタノール、エタノールその他の低級アルコール、水など)を用いてもよい。
還元性溶剤(液)をバブリングしてN等のキャリアガス中に気化させることで、プロセスガスを生成してもよい。
【0033】
還元性ガス状流体として例えばエタノール等の低級アルコールと水の混合流体を用いてもよい。前記混合流体などの還元性ガス状流体をガス又はミスト状にして、被処理基板90に接触させて被処理基板90の表面に付着又は吸着させる。好ましくは前記還元性ガス状流体をガス状態で被処理基板90に接触させて、被処理基板90上で凝縮させる。これによって、前記還元性ガス状流体が被処理基板90に定着される。続いて、例えば窒素及び酸素を含む酸化性ガスをプラズマやUV照射によって活性化させて、前記還元性ガス状流体が定着された被処理基板90に接触させることにしてもよい。これによって、被処理基板90の表面上において、活性化された酸化性ガスによる洗浄反応が起きるとともに、還元性ガス状流体による酸化性ガスの還元反応が起きる。この結果、金属層の腐食を確実に防止でき、かつ洗浄効果を高めることができる。
【0034】
プラズマヘッド11の電極構造は適宜改変できる。
一対の平行平板電極が上下に対向されていてもよい。下側の電極(好ましくは接地電極)に1又は複数の吹出孔が形成され、該吹出孔からプラズマガスが下方へ吹き出されるようになっていてもよい。
或いは、一対の電極が、軸線を水平にした円柱状電極と、これを囲む凹円筒面電極から構成されていてもよい。凹円筒面電極の周方向の下端部が開口され、該開口からプラズマガスが下方へ吹き出されるようになっていてもよい。
活性化手段は、プラズマ生成手段に限られず、コロナ放電手段や紫外線照射手段やマイクロ波照射手段であってもよい。
【実施例1】
【0035】
実施例を説明する。本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
図1に示す装置1と実質的に同じ構成の装置を用い、ドライ処理及びウェット洗浄を行なった。
被処理基板90として、下記のサイズのガラス基板を用いた。
幅(図1の紙面直交方向の寸法): 50mm
長さ(図1の左右方向の寸法) : 50mm
厚み : 0.7mm
易酸化性金属層93は、Cuとした。
被処理基板90ひいては易酸化性金属層93の表面の洗浄前の対水接触角は、110°であった。
ドライ処理部10におけるプラズマ照射条件は以下の通りであった。
供給電力: 0.8kW
周波数: 40Hz
電極12の幅(図1の紙面直交方向の寸法): 19mm
電極間ギャップ: 1mm
吹出部16から基板90までの距離(ワーキングディスタンス): 3mm
プラズマヘッド11に対して被処理基板90を相対移動(スキャン)させた。処理回数(片道移動の回数)は1回であった。
プロセスガスの組成は表1の(1)〜(4)通りであった。還元性ガスとしては一酸化炭素(CO)、過酸化水素(H)、メタノール(CHOH)を用いた((1)〜(4))。(4)においては、バブリングによって窒素(N)にメタノール(CHOH)を添加した。
ウェット洗浄部20における洗浄液29は水であった。
【0036】
<評価>
ドライ処理及びウェット洗浄後の被処理基板を目視観察し、基板表面の易酸化性金属層のダメージの有無を調べた。
表1に示すように、プロセスガスに還元性ガスを含有させることによって、易酸化性金属層がダメージを受けるのを抑制又は防止できることが確認された。
また、ドライ処理及びウェット洗浄後の基板表面の対水接触角は、表1の通りであり、洗浄前よりも親水性が高まり、レジスト94の密着性が良好になった。
【0037】
<比較例>
図3の写真に示す通り、プロセスガスに還元性ガスが含有されていない場合(表1の(5)比較例)には、基板表面の易酸化性金属層に散点状ないしは斑状の溶解痕(ダメージ)が形成された。
【0038】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えばフラットパネルディスプレイの製造に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 表面処理装置
10 ドライ処理部
11 プラズマヘッド(プラズマ生成手段、活性化手段)
12 電極
13 電源
14 プロセスガス源(還元性ガス状流体源)
15 電極間空間(放電空間)
16 吹出部
18 搬送手段
19 プラズマガス(活性化された還元性ガス状流体)
20 ウェット洗浄部
21 洗浄ノズル
22 噴射孔
23 洗浄液供給路
29 水(洗浄液)
90 ガラス基板(被処理基板)
91 金属層
91a 電極パターン
92 金属基層
93 易酸化性金属層
94 フォトレジスト
94a レジストパターン
図1
図2
図3