【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、発明者は鋭意研究考察を行なった。
前記酸化性プロセスガスの活性化によって例えば硝酸その他の酸化性の腐食性成分が生成され、これが被処理基板に付着ないしは吸着するものと推察される。一方、被処理基板をウェット洗浄工程へ移行させる際、ウェット洗浄部近くの雰囲気中を浮遊する霧状の水が被処理基板に付着する。このため、被処理基板の表面の金属層上に硝酸水溶液などの腐食性水溶液が出来、該水溶液に金属層の銅が溶け出すことで前記ダメージが形成されるものと考えられる。
【0006】
本発明は、かかる考察に基づいてなされたものであり、本発明方法は、易酸化性の金属層を含む被処理基板の表面を処理する方法であって、
還元性成分を含有する還元性ガス状流体を前記被処理基板に接触させ、かつ前記接触と前後して前記還元性ガス状流体を活性化させ、
その後、被処理基板を洗浄液にて洗浄することを特徴とする。
【0007】
前記表面処理によって、被処理基板の接触角が小さくなって親水性が高まり、レジスト等との密着性を向上できる。加えて、前記還元性ガス状流体に還元性成分を含有させることによって、活性化時に酸化性の腐食性成分が生成されるのが回避される。或いは生成されたとしても還元性成分の還元作用によって酸化性ないしは腐食性を緩和される。そうすることで、ウェット洗浄移行時に被処理基板の表面に腐食性溶液が形成されるのが防止又は抑制される。この結果、易酸化性の金属層がダメージを受けるのを防止又は抑制できる。
前記還元性ガス状流体を活性化させた後、前記被処理基板に接触させてもよい。
前記還元性ガス状流体を前記被処理基板に接触させた後、活性化させてもよい。
前記還元性ガス状流体の前記被処理基板への接触と活性化を同時に行なってもよい。
【0008】
プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理またはマイクロ波照射処理によって前記活性化を行なうことが好ましい。
プラズマ処理では、プラズマによって還元性ガス状流体を活性化させる。一対の電極間に放電を生成することによって前記活性化を行なうことが好ましい。前記希釈成分が放電生成ガスを兼ねることが好ましい。
コロナ放電処理では、コロナ放電によって還元性ガス状流体を活性化させる。紫外線照射処理では、紫外線照射によって還元性ガス状流体を活性化させる。マイクロ波照射処理では、マイクロ波照射によって還元性ガス状流体を活性化させる。
【0009】
前記還元性成分は、還元作用を奏する単体又は化合物であり、前記活性化によって還元作用が発現する単体又は化合物であってもよい。かかる還元性成分としては、水素(H
2)、硫化水素(H
2S)、過酸化水素(H
2O
2)、一酸化炭素(CO)、水素酸素含有化合物などが挙げられる。前記還元性ガス状流体が、複数種の還元性成分を含有していてもよい。水素酸素含有化合物は、水素原子(H)及び酸素原子(O)を含有する化合物であり、エタノール、メタノール、イソプロパノールその他の低級アルコールや水が挙げられる。
【0010】
還元性ガス状流体は、還元性成分と希釈ガスとの混合流体であってもよい。希釈ガスとしては、窒素(N
2)、希ガスその他の不活性ガスが挙げられ、経済性等の観点からは窒素がより好ましい。例えば還元性ガス状流体中の還元性成分COの含有率は、100ppm〜5%程度(体積含有率)が好ましい。
還元性ガス状流体は、ガスの他、ミスト状であってもよい。
ガス状態(気相)の還元性ガス状流体が被処理基板に接触後、被処理基板上で凝縮して液相になってもよい。還元性ガス状流体の凝縮点が、被処理基板の温度より低温であってもよい。
還元性ガス状流体が、複数種の還元性成分を含んでいてもよい。例えば還元性ガス状流体がエタノール等の低級アルコールと水の混合物であってもよい。
【0011】
前記還元性ガス状流体が前記接触によって前記被処理基板に定着可能であってもよい。酸化性ガス状流体を活性化させて、前記還元性ガス状流体の定着後の被処理基板に接触させることにしてもよい。前記定着の態様としては、凝縮、付着、吸着など挙げられる。前記酸化性ガス状流体としては、窒素と酸素の混合ガス、CDAなど挙げられる。活性化された酸化性ガス状流体が被処理基板に接触されることによって、被処理基板上の還元性ガス状流体が間接的に活性化エネルギーを付与される。これによって、金属層の腐食を確実に防止でき、かつ洗浄効果を高めることができる。
【0012】
還元性ガス状流体を活性化させて被処理基板に接触させた後で 酸化性ガス状流体を活性化させて被処理基板に接触させてよい。逆に酸化性ガス状流体を活性化させて被処理基板に接触させた後、還元性ガス状流体を活性化させて被処理基板に接触させてもよい。
更に還元性ガス状流体自体が酸化性成分を含有していてもよい。酸化性成分は、酸化作用を奏するものであればよく、或いは酸素原子を含有するものであればよく、CDA(クリーンドライエア)、酸素(O
2)、オゾン(O
3)、亜酸化窒素(N
2O)等が挙げられ、好ましくはCDAないしは酸素(O
2)である。
【0013】
前記ウェット洗浄工程における洗浄液は、水であることが好ましい。前記洗浄液は、アルコールであってもよい。
【0014】
本発明装置は、易酸化性の金属層を含む被処理基板の表面を処理する装置であって、
還元性成分を含有する還元性ガス状流体を前記被処理基板に接触させ、かつ前記接触と前後して前記還元性ガス状流体を活性化させるドライ処理部と、
前記接触後の被処理基板を洗浄液にて洗浄するウェット洗浄部と
を備えたことを特徴とする。
【0015】
前記ドライ処理部が、一対の電極を有し、これら電極間に放電を生成することによって前記活性化を行なうことが好ましい。これによって、歩留まりを向上させることができる。放電形式は、大気圧近傍下における誘電体バリア放電であることが好ましい。
大気圧近傍とは、1.013×10
4〜50.663×10
4Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10
4〜10.664×10
4Paが好ましく、9.331×10
4〜10.397×10
4Paがより好ましい。
前記活性化手段としては、プラズマ生成手段のほか、コロナ放電によってガスを活性化させるコロナ放電手段、紫外線を照射してガスを活性化させる紫外線照射手段、マイクロ波を照射してガスを活性化させるマイクロ波照射手段などが挙げられる。
【0016】
前記易酸化性の金属層が、銅、アルミニウム、鉄、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。前記易酸化性の金属は、イオン化傾向が銅(Cu)と同等ないしは銅よりもイオン化傾向が高い金属を含む。
前記易酸化性の金属は、易酸化性に加えて高導電性であることが好ましい。
前記易酸化性の金属層は、銅(Cu)によって構成されていることがより好ましい。