特許第6985437号(P6985437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985437
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/42 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   B24B5/42
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-19689(P2020-19689)
(22)【出願日】2020年2月7日
(65)【公開番号】特開2021-122913(P2021-122913A)
(43)【公開日】2021年8月30日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033042
【氏名又は名称】ダイハツディーゼル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】中塚 泰輔
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5715122(JP,B2)
【文献】 特開2009−082994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクピンの外周面を研磨する研磨装置であって、
上記クランクピンの軸方向となる長手方向に延在するベースと、
上記ベースの下側に取り付けられ、上記ベースの長手方向に沿って延在する平坦な研磨面を有する研磨部と、
上記研磨部の長手方向に対して直交する方向かつ上記研磨面に平行な方向に上記研磨部が往復振動するように上記ベースを駆動する駆動部と、
上記ベースにおいて上記研磨部が振動する方向の一方の側に上記研磨部と間隔をあけて設けられ、上記研磨部の長手方向に沿って延在する第1ガイド部と、
上記ベースにおいて上記研磨部が振動する方向の他方の側に上記研磨部と間隔をあけて設けられ、上記研磨部の長手方向に沿って延在する第2ガイド部と
を備え、
上記研磨部の長手方向が上記クランクピンの軸方向と一致するように上記研磨部の上記研磨面が上記クランクピンの外周面に接する状態で、上記第1ガイド部と上記第2ガイド部の夫々が、上記クランクピンの外周面に沿って上記ベースを上記クランクピンの周方向に案内する案内面を有することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
請求項1に記載の研磨装置において、
上記研磨部の長手方向の両側において、上記研磨部の端部よりも外側に所定の間隔をあけて上記ベースの端部が位置することを特徴とする研磨装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の研磨装置において、
上記ベースの両端部に設けられ、上記クランクピンの両端に連結されたクランクアームの側面に沿って上記ベースを案内するローラを備えることを特徴とする研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼル機関やガス機関などのレシプロ機関においては、燃焼室での爆発力をクランク軸の回転力に変えているが、特に連接棒の大端部からクランクピン軸受とクランクピンとを介してクランク軸に力が伝達される。
【0003】
ここで、連接棒の大端部とクランクピンとの間にクランクピン軸受となるクランクピンメタルが取り付けられている。そのクランクピンメタルの内周面の中央部に、周方向に沿って環状の油溝が形成されている。
【0004】
上記クランク軸の回転に伴って発生するクランクピンの慣性力によって、クランクピンメタルの油溝がクランクピンに転写されて段付き摩耗が生じる。このような段付き摩耗をカムウェアといい、カムウェアが成長して段差が大きくなると、油膜が切れてクランクピン軸受が損傷する原因となる。
【0005】
従来の稼働中におけるレシプロ機関の定期メンテナンスにおいて、クランクピンにカムウェアが発生している場合、特に大型機関の場合にはクランク軸をレシプロ機関に組み入れた状態のままで、クランクピンの段部をヤスリ等で研磨して修正していた。
【0006】
しかしながら、クランクピンの研磨作業は、不要な箇所に傷を付けないよう練度が必要な上、作業に時間もかかる。
【0007】
このようなクランクピンの外周面を研磨する研磨装置として、研磨材が貼り付けられた円盤を回転させることにより被研磨面を研磨する研磨用サンダーを用いることが考えられる(例えば、実開昭60−109750号公報(特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭60−109750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記研磨用サンダーでは、平坦な被研磨面に対して研磨材が貼り付けられた円盤を平行に当接させるためのガイド体を備えているが、クランクピン外周の円筒面に対しては位置決めができず、正確な研磨が容易でないという問題がある。
【0010】
そこで、この発明の課題は、クランクピンの外周面の研磨作業が容易にできる研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の一態様に係る研磨装置は、
クランクピンの外周面を研磨する研磨装置であって、
上記クランクピンの軸方向となる長手方向に延在するベースと、
上記ベースの下側に取り付けられ、上記ベースの長手方向に沿って延在する平坦な研磨面を有する研磨部と、
上記研磨部の長手方向に対して直交する方向かつ上記研磨面に平行な方向に上記研磨部が往復振動するように上記ベースを駆動する駆動部と、
上記ベースにおいて上記研磨部が振動する方向の一方の側に上記研磨部と間隔をあけて設けられ、上記研磨部の長手方向に沿って延在する第1ガイド部と、
上記ベースにおいて上記研磨部が振動する方向の他方の側に上記研磨部と間隔をあけて設けられ、上記研磨部の長手方向に沿って延在する第2ガイド部と
を備え、
上記研磨部の長手方向が上記クランクピンの軸方向と一致するように上記研磨部の上記研磨面が上記クランクピンの外周面に接する状態で、上記第1ガイド部と上記第2ガイド部の夫々が、上記クランクピンの外周面に沿って上記ベースを上記クランクピンの周方向に案内する案内面を有することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、ベースにおいて研磨部が振動する方向の両側に研磨部と間隔をあけて、研磨部の長手方向に沿って延在する第1,第2ガイド部が設けられているので、第1,第2ガイド部の案内面によりクランクピン外周の円筒面に対してベースの位置決めができることにより研磨装置本体を安定させることができ、クランクピンの外周面の研磨作業を容易に行うことができる。
【0013】
また、一実施形態の研磨装置では、
上記研磨部の長手方向の両側において、上記研磨部の端部よりも外側に所定の間隔をあけて上記ベースの端部が位置する。
【0014】
上記実施形態によれば、研磨部の長手方向の両側において、研磨部の端部よりも外側に所定の間隔をあけてベースの端部が位置することによって、クランクピンの両端に連結されたクランクアーム近傍に設けられたフィレットが研磨部により削られることがないようにできる。
【0015】
また、一実施形態の研磨装置では、
上記ベースの両端部に設けられ、上記クランクピンの両端に連結されたクランクアームの側面に沿って上記ベースを案内するローラを備える。
【0016】
上記実施形態によれば、クランクピンの回りを周方向に沿って研磨装置本体を移動させるとき、ベースの両端部に設けられたローラにより、クランクピンの両端に連結されたクランクアームの側面に沿ってベースを案内するので、研磨装置本体を安定させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上より明らかなように、この発明によれば、クランクピンの外周面の研磨作業が容易にできる研磨装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施の一形態の研磨装置によりクランクピンの外周面が研磨されるディーゼルエンジンの側面図である。
図2】上記ディーゼルエンジンのクランク軸の要部の側面図である。
図3】上記研磨装置の正面図である。
図4】上記研磨装置の上面図である。
図5】上記研磨装置の側面図である。
図6】上記クランクピンの外周面を研磨する研磨装置を示す正面図である。
図7】上記クランクピンの外周面を研磨する研磨装置を示す上面図である。
図8】上記クランクピンの外周面を研磨する研磨装置を示す側面図である。
図9】クランクピンの外周面を研磨する研磨装置の動きを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の研磨装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。尚、図面において、同一の参照番号は、同一部分または相当部分を表わすものである。また、長さ、幅、厚さ、深さ等の図面上の寸法は、図面の明瞭化と簡略化のために実際の尺度から適宜変更されており、実際の相対寸法を表してはいない。
【0020】
図1はこの発明の実施の一形態の研磨装置1(図3図5に示す)によりクランクピン111の外周面が研磨されるディーゼルエンジン100の側面図である。ディーゼルエンジン100は、レシプロ機関の一例である。
【0021】
ディーゼルエンジン100は、シリンダ101と、ピストン102と、ピストン102に上端部が連結された連結棒103と、連結棒103の下端部に連結されたクランクピン111を有するクランク軸110とを有する。クランクピン111の両端にクランクアーム112が連結されている。
【0022】
図2は、図1に示すディーゼルエンジン100のクランク軸110の要部の側面図である。図2に示すように、クランクピン111は、連結棒103の下端部に設けられた貫通穴103aに回転自在に挿通されている。クランクピン111と連結棒103との間には、円筒状のクランクピンメタル104(軸受)が配置されている。このクランクピンメタル104の内周面には周方向に油溝(図示せず)が設けられている。
【0023】
図3は、研磨装置1の正面図を示し、図4は、研磨装置1の上面図を示し、図5は、研磨装置1の側面図を示している。
【0024】
研磨装置1は、図3図5に示すように、サンダー本体10と、サンダー本体10が取り付けられた長方形の板状のベース20と、ベース20に取り付けられた研磨部30と、ベース20に設けられた第1ガイド部40と、ベース20に設けられた第2ガイド部50とを備える。ベース20は、クランクピン111の軸方向となる長手方向に延在する。
【0025】
サンダー本体10は、駆動部11と、駆動部11により振動する振動部12とを有する。
【0026】
ベース20は、サンダー本体10の振動部12の下端に、ボルトB1により締結されて固定された連結部材21と、連結部材21の下面側がボルトB2により締結されて固定された上面視が長方形の板状部材22とを有する。板状部材22の下面に長手方向に延在するように、互いに平行にかつ間隔をあけて凸部22aおよび凸部22bが設けられている。この凸部22aと凸部22bとの間に、上面視が長方形の板状の研磨部30がボルトB5により両側から締め付けられて固定されている。研磨部30は、砥石(例えば粒度#150程度)であり、長方形状の平坦な研磨面30aを有する。研磨部30の研磨面30aは、板状部材22の凸部22a,22bの下面よりも下方に突出している。凸部22a,22bは、板状部材22と一体に形成されている。
【0027】
また、ベース20は、板状部材22の長手方向の両側の端部にボルトB4により締結されて固定されたローラ用取付部材23,24と、ローラ用取付部材23に回転可能に取り付けられた3つのローラ25と、ローラ用取付部材24に回転可能に取り付けられた3つのローラ26とを有する。ローラ用取付部材23,24は、上方に向かって延び板状部材22の長手方向の外側に屈曲している。ローラ用取付部材23側の3つのローラ25は、板状部材22の短手方向に平行に間隔をあけて配列されている。同様に、ローラ用取付部材24側の3つのローラ26は、板状部材22の短手方向に平行に間隔をあけて配列されている。
【0028】
この実施形態では、ローラ用取付部材23,24をボルトB4により板状部材22に固定しているが、ローラ用取付部材23,24と板状部材22とを一体に形成してもよい。
【0029】
サンダー本体10の駆動部11は、振動部12と連結部材21を介して、研磨部30の長手方向に対して直交する方向(図3では紙面に対して垂直な方向)かつ研磨面30aに平行な方向に研磨部30が往復振動するようにベース20を駆動する。
【0030】
第1ガイド部40は、ベース20において研磨部30が振動する方向の一方の側に研磨部30と間隔をあけて設けられ、研磨部30の長手方向に沿って延在する。また、第2ガイド部50は、ベース20において研磨部30が振動する方向の他方の側に研磨部30と間隔をあけて設けられ、研磨部30の長手方向に沿って延在する。ベース20の下側に第1ガイド部40および第2ガイド部50がボルトB3により締結されて固定されている。
【0031】
図3に示すように、研磨部30の長手方向の両側において、研磨部30の端部よりも外側に所定の間隔Lをあけてベース20の端部が位置する。ここで、ベース20の端部は、板状部材22の長手方向の外側のローラ25,26の最外縁である。
【0032】
図6は、クランクピン111の外周面を研磨する研磨装置1の正面図を示し、図7は、クランクピン111の外周面を研磨する研磨装置1の上面図を示し、図8は、クランクピン111の外周面を研磨する研磨装置1の側面図である。
【0033】
図6図8に示すように、研磨装置1は、クランクピン111の外周面を研磨するとき、クランクアーム112間のクランクピン111の外周に配置される。図6では、第1ガイド部40と第2ガイド部50とを省略している。
【0034】
ここで、サンダー本体10の駆動部11によりベース20と共に研磨部30を往復振動させことによって、図6に示すように、クランクピン111の外周面のうち、クランクアーム112に隣接するフィレット113近傍の環状領域S1,S2と共に、環状領域S1,S2との間の中央領域S3および凹領域111a,111bを研磨して、クランクピン111の外周面が凹領域111a,111bの底部と同じ径になるようにする。
【0035】
また、図8に示すように、第1ガイド部40の案内面40aと第2ガイド部50の案内面50aは、互いに鈍角をなしている。
【0036】
研磨部30の長手方向がクランクピン111の軸方向と一致するように研磨部30の研磨面30aがクランクピン111の外周面に接する状態で、第1ガイド部40の下側の案内面40aおよび第2ガイド部50の下側の案内面50aが、クランクピン111の外周面に沿ってベース20を案内する。
【0037】
第1ガイド部40の案内面40aと第2ガイド部50の案内面50aの互いになす角度や大きさを適宜設定することにより、直径が若干異なるような複数種類のクランクピンの研磨に対応することができる。また、第1ガイド部40と第2ガイド部50とをベース20に着脱可能に取り付けていることにより、研磨対象のクランクピンの直径に応じた第1,第2ガイド部に交換することが可能になる。
【0038】
図9に示すように、研磨装置1をクランクピン111の周方向に移動させてカムウェアを研磨する。図9では、クランクピン111の外周面の周方向においてカムウェアの最も段差が大きい位置を0degとして、±90degの領域にカムウェアが発生している。なお、ディーゼルエンジン100の構成などに応じて、例えば、クランクピン111の外周面の周方向においてカムウェアの最も段差が大きい位置を0degとして、±60degの領域内にカムウェアが発生した場合、その領域内で研磨するようにしてもよい。
【0039】
ディーゼルエンジン100のメンテナンス時、クランク軸110をディーゼルエンジン100に組み入れた状態のままで、クランクピン111の外周面におけるカムウェアの段差の程度を測定して、その測定結果に基づいて、クランクピン111の段差をなくすように、研磨装置1によりクランクピン111の外周面の研磨作業を行う。
【0040】
第1ガイド部40の案内面40aと第2ガイド部50の案内面50aによって、上記研磨作業中に、クランクピン111の外周面においてクランクピン111の周方向に間隔をあけた2つの位置でクランクピン111の外周面に沿ってベース20が案内される。
【0041】
上記構成の研磨装置1によれば、ベース20において研磨部30が振動する方向の両側に研磨部30と間隔をあけて第1,第2ガイド部40,50が設けられているので、クランクピン111外周の円筒面に対してベース20の位置決めができることにより研磨装置1を安定させることができ、クランクピン111の外周面の研磨作業を容易に行うことができる。
【0042】
また、上記研磨部30の長手方向の両側において、研磨部30の端部よりも外側に所定の間隔Lをあけてベース20の端部が位置することによって、クランクピン111の両端に連結されたクランクアーム112近傍に設けられたフィレット113が研磨部30により削られることがないようにできる。
【0043】
また、上記クランクピン111の回りを周方向に沿って研磨装置1を移動させるとき、ベース20の両端部に設けられたローラ25,26により、クランクピン111の両端に連結されたクランクアーム112の側面に沿ってベース20を案内するので、研磨装置1を安定させることができる。
【0044】
上記実施形態では、ディーゼルエンジン100のクランクピン111の外周面を研磨する研磨装置1について説明したが、研磨対象はディーゼルエンジンのクランクピンに限らず、ガスエンジンなどの他の構成のレシプロ機関のクランクピンを研磨する研磨装置にこの発明を適用してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、第1ガイド部40の案内面40aおよび第2ガイド部50の案内面50aは、互いに鈍角をなす平面としたが、円筒面や湾曲面であってもよい。
【0046】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…研磨装置
10…サンダー本体
11…駆動部
12…振動部
20…ベース
21…連結部材
22…板状部材
22a,22b…凸部
30…研磨部
30a…研磨面
40…第1ガイド部
50…第2ガイド部
100…ディーゼルエンジン
101…シリンダ
102…ピストン
103…連結棒
104…クランクピンメタル
110…クランク軸
111…クランクピン
112…クランクアーム
113…フィレット
S1,S2…環状領域
S3…中央領域
B,1B2,B3,B4,B5…ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9