【文献】
Niyati Khetarpal et al.,Dengue-specific subviral nanoparticles: design, creation and characterization,J. Nanobiotechnology ,2013年,Vol.11, Article number 15
【文献】
Himani Bisht et al.,Recombinant dengue virus type 2 envelope/hepatitis B surface antigen hybrid protein expressed in Pichia pastoris can function as a bivalent immunogen,Journal of Biotechnology,2002年,Vol.99, Issue 2,pp.97-110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
4つのデングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4のそれぞれに対するDENV血清型特異的中和抗体を生成する、請求項8、9および10のいずれか一項に記載のワクチン。
4つのデングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4のそれぞれに対する中和抗体力価の誘導において使用するための請求項8、9および10のいずれか一項に記載のワクチン。
【背景技術】
【0002】
4種類の抗原的に別個のデングウイルス(DENV)により引き起こされるデング疾患
は、世界の150を超える国において、特にインドのような非常に流行している国におい
て、重大な健康上の懸念である。この疾患は、この10年間、増加の一途を辿っており、
有効なワクチンまたは抗ウイルス療法がないため、世界規模の公衆衛生学的な脅威となっ
てきた。デング疾患は、特に大流行中は医療システムにとって世界規模の難題であり、媒
介動物の駆除のために毎年数百万ドルが費やされている。費用効率が高い、効率的で安全
なワクチンがあれば、デングウイルスが蔓延国に課す負担を解決し得る。疾患の拡大を制
限するための予防的なワクチンを開発するための過去30年間にわたる集中的な取り組み
にもかかわらず、市場に認可されたワクチンは未だに存在しない。世界中の研究グループ
/会社が、デングウイルスの全血清型に対する有効な四価ワクチンを開発するために努力
を重ねている。以前の開発ワクチンの殆どが生、弱毒化キメラウイルスに基づくものであ
り、これらのうち一部は現在臨床治験中である。しかし、ウイルス干渉などの制限ゆえに
、研究の焦点は、特にデングウイルスの外被(E)タンパク質のドメインIIIを使用し
たサブユニットワクチンに移ってきている。このドメインを利用する多くの特許/刊行物
も報告されている。
【0003】
生フラビウイルスに基づくデングワクチンが第III相臨床試験に入っているものの、
ウイルス干渉ゆえの問題が報告されている。ウイルス干渉は、おそらく4種類のワクチン
ウイルス株の複製能および免疫原性の相違ゆえに生じる。
【0004】
非複製サブユニットワクチンは、生ウイルスワクチンと関連するウイルス干渉のリスク
を克服する可能性を有する[Swaminathan,Khanna,N.(2009)
,Dengue:Recent advances in biology and c
urrent status of translational research,
Current Mol.Med.9:152−173]。組み換えDNAおよびタンパ
ク質に基づくサブユニットワクチンを使用したいくつかのアプローチが研究されている。
このような組み換えサブユニットワクチンの殆どは、主要外被(E)タンパク質に焦点を
当てている。多くの証拠から、Eタンパク質のワクチン特性の多くがドメインIII(E
DIII)と関連していることがさらに示されている。
【0005】
DENV外被ドメインIII(EDIII)は、宿主細胞受容体の認識および中和抗体
の作製に関与することが示されている[Swaminathan,Khanna,N.(
2009).Dengue:Recent advances in biology
and current status of translational rese
arch,Current Mol.Med.9:152−173;Guzman,M.
G Hermida,L.,Bernardo,L,Ramirez,R.,Guill
en,G.(2010).Domain II of the envelope pr
otein as a dengue vaccine target]。さらに、ED
IIIは、交差反応性抗体を誘導するための本来備わっている可能性がごく僅かしかない
ことが報告されている[Simmons,M.,Nelson,W.M.,Wu,S.J
.,Hayes,C.G.(1998).Evaluation of the pro
tective efficacy of a recombinant dengue
envelope B domain fusion protein agains
t dengue 2 virus infection in mice;Am.J.
Trop.Med.Hyg.58:655−662;Simmons,M.,Murph
y,G.S.,Hayes,C.G.(2001).Short report:ant
i−body responses of mice immunized with
a tetravalent dengue recombinant protein
subunit vaccine,Am.J.Trop.Med.Hyg.65:15
9−161]。これらの性状により、EDIIIは優れたワクチン候補となる。四価タン
パク質の形態の潜在的なデングワクチン抗原としてのEDIIIの有効性は、発明者らに
より既に裏付けられている[Etemad,B.,Batra,G,Raut,R.,D
ahiya,S.,Khanam,S.,Swaminathan,S.,Khanna
,N.(2008)]。
【0006】
デングウイルスの外被(E)タンパク質のドメインIIIを開拓する多くの特許/刊行
物、すなわち
Suzarte,E.,Gil,L,Valdes,I.,Marcos,E.,La
zo,L.,Izquierdo,A.,...& Hermida,L.(2015)
,International immunologyが報告されており、dxv011
は、デングウイルスからの4個の凝集したドメインIIIキャプシドタンパク質を組み合
わせた新規の四価処方物が、マウスおよびサルにおいて機能的免疫反応を誘導することを
開示する。この参考文献は、2つの異なるウイルス領域、外被タンパク質のドメインII
Iおよびキャプシドタンパク質に基づく、デングウイルスに対するワクチン候補を教示し
、ここではこのDIIICタンパク質の四価処方物が使用された。デング−2ウイルスか
らの新規キメラタンパク質(ドメインIII−キャプシド(DIIIC−2))は、オリ
ゴデオキシヌクレオチドを組み込む凝集体として提示される場合、抗ウイルスおよび中和
抗体、細胞性免疫反応を誘導し、マウスおよびサルに対する顕著な防御を付与した。残り
のコンストラクトが既に得られ、的確に特性評価された。これらの証拠に基づき、本研究
は、一価および四価処方物としての、各血清型のキメラタンパク質DIIICのマウスで
の免疫反応を評価することを目的とした。本発明者らは、処方物テトラDIIICを形成
する混合物での抗原競合なしで、液性および細胞介在性免疫に関して各タンパク質の免疫
原性を明らかにした。したがって、マウス脳炎モデルにおける限定的ウイルス負荷により
測定されるように、顕著な防御が可能になった。非ヒト霊長類における四価処方物の評価
も行った。この動物モデルにおいて、使用される免疫付与経路にかかわらず、この処方物
が、中和抗体およびIFN−γ分泌および細胞傷害能を伴うメモリー細胞介在性の免疫反
応を誘導したことが明らかになった。DIIICタンパク質の四価処方物は、デングウイ
ルスに対する有望なワクチン候補を構成する。
【0007】
Zuest,R,Valdes,I.,Skibinski,D.,Lin,Y.,T
oh,Y.X.,Chan,K.,...& Fink,K.(2015),Vacci
ne 33(12),1474−1482は、デングウイルスに対する免疫を付与するた
めの、デング血清型1〜4(テトラDIIIC)のEドメインIIIおよびキャプシドタ
ンパク質からなる組み換え融合タンパク質の四価処方物の免疫原性を開示する。キャプシ
ドタンパク質がT細胞エピトープを含有する一方で、EドメインIIIは、効率的な中和
抗体に対するエピトープである。BおよびT細胞エピトープを組み合わせることに加えて
、テトラDIIICは、その凝集体型および2成分アジュバントゆえに非常に免疫原性が
高い。一価DIIIC処方物を評価する先行研究後、マウスにおけるテトラDIIICの
T細胞および抗体反応の質および幅に取り組んだ。テトラDIIICは、全4種類のDE
NV血清型に対してTh1型反応を誘導し、デング特異的な抗体は主にIgG1およびI
gG2aおよび中和であり、一方で中和抗体の誘導はIFNシグナル伝達に依存した。重
要なこととして、DIIICワクチンアプローチのTh1およびIgG1/IgG2aプ
ロファイルは効率的な天然の抗デング反応と同様である。
【0008】
Izquierdo,A.,Garcia,A.,Lazo,L.,Gil,L.,M
arcos,E.,Alvarez,M.,およびGuzman,M.G.(2014)
,Archives of Virology,159(10),2597−2604は
、ドメインIII−P64kおよびドメインIII−キャプシドタンパク質の混合物を含
有する四価デングワクチンがマウスにおいて防御反応を誘導することを開示する。この参
考文献は、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningiti
dis)からのP64kタンパク質に融合されたデングウイルス(1、3および4型)外
被タンパク質のドメインIIIおよび2型デングウイルス(D2)のドメインIIIを含
有するワクチン候補が免疫原性であることが分かったことを教示する。ナイセリア・メニ
ンギティディス(Neisseria meningitidis)からのP64kタン
パク質に融合されたデングウイルス外被タンパク質のドメインIIIおよびこの血清型の
キャプシドタンパク質に融合された2型(D2)デングウイルスのドメインIIIを含有
する組み換え融合タンパク質は免疫原性であり、この四価処方物で免疫付与したマウスに
おいて、致死的曝露に対するマウスでの付与された防御性を評価した。
【0009】
デング熱に対して最も有効なアプローチと考えられる弱毒生ワクチン(LAV)は、こ
の期待を裏切った。最先端のLAV候補の有効性試験からの最新データから、30%の全
体的な有効性が示され、DENV−2については有効性がなかった。これにより、デング
ワクチンを開発するための代替的なアプローチの本格的な探索が必要になった。VLPに
基づくデング四価ワクチン候補、「DSV
4」は、開発されるDENVの4種類の血清型
に対応する全4種類のEDIIIを提示するHBsAgに基づくVLPである。
【0010】
最初に、インド国特許第261749号明細書で開示されるように、ペンタグリシンリ
ンカーを通じて互いに連結される、デングウイルスの全4種類の血清型、デング−1、2
、3および4のドメインIIIを含む単一のキメラポリペプチドである、四価ドメインI
IIタンパク質(rTDIII)が、E.コリ(E.coli)での発現についてコドン
最適化された。
【0011】
別のインド国特許出願第1259/DEL/2007号明細書は、デングウイルスの4
種類の血清型、DEN−1、DEN−2、DEN−3およびDEN−4のそれぞれに対し
て防御免疫反応を誘発する分泌性シグナルペプチドがあるかまたはない、組み換え外被ド
メイン−IIIに基づく四価タンパク質を開示しているが、このタンパク質は、真核発現
系での発現に対してコドン最適化されたポリヌクレオチド配列によりコードされる。
【0012】
B型肝炎表面抗原(HBsAg)が外来エピトープの提示および表示のためのプラット
フォームとなる能力は、マラリアワクチン候補RTS,Sの成功によってよく例証される
。EDIII−Tの免疫原性を向上させるために、発明者らは、HBsAgがその表示に
対してよく働き得るか否かを調べた。したがって、HBsAgとの融合物において、およ
びP.パストリス(P.pastoris)ベクターにおけるHBsAgの4個の発現カ
セットの基礎環境で、EDIII−Tをクローニングした(
図1A)。このDSV
4の設
計は、RTS,Sと同様であり(対応特許:国際公開第9310152号パンフレット、
メキシコ国特許第9206574号明細書、欧州特許第0614465号明細書など)、
これはHBsAg VLP上でマラリアエピトープを提示する。
【0013】
本発明の新規性は、HBsAgを伴う、ベクターにおけるHBsAgの4個の発現カセ
ットの基礎環境におけるEDIII−Tのコンストラクトにある。したがって、このED
III−TおよびHBsAgの設計(「DSV
4」と呼ばれる。)は新規とみなされ得る
。本発明の発明性は、提示のためおよびVLPになるように組み立てるための同時発現H
BsAgタンパク質のためのプラットフォームとして働くことにより発現タンパク質の免
疫原性を向上させるためのHBsAgとのEDIII−Tの融合にある。DSV
4ウイル
ス様粒子(VLP)を形成させるために、HBsAgとの融合において、単一組み換え四
価ドメイン(EDIII−T)をクローニングし、HBsAgと同時発現させる。サブユ
ニット四価ワクチンDSV
4は、DENV血清型特異的な中和抗体を生成させ、デング熱
の4種類の血清型のそれぞれに対して有効である。
【0014】
本発明は、既存の提案されているワクチンを上回る次の長所を有する/有すると予想さ
れる。
【0015】
現在第3相試験下のSanofi弱毒生ワクチンは、全4種類の血清型に対する均衡の
とれた中和抗体を誘発するために、12カ月の長期間の投与スケジュールにわたり3回の
免疫付与を必要とし(0、6および12)、一方でGlaxo Smith Kline
(第1相試験中)は、28日あけて2回投与するタイプの投与スケジュールを目指してお
り、武田薬品工業(第2相試験完了)では僅か3か月あけて2回投与するという免疫付与
計画である。したがって、予備データにより、本発明のワクチンの免疫付与スケジュール
は、試験中のSanofiのワクチンよりも短くなろう。さらに、本発明のワクチンは、
単一組み換えタンパク質として全4種類のDENV血清型のEDIII−TおよびHBs
Agを含み、一方で、Sanofiの弱毒生ウイルスワクチンを含む治験中の他の全ての
ワクチン候補は、4種類の血清型に対応する4種類の候補の混合物である。
【0016】
さらに、HBsAgとの組み換えEDIII−Tの融合の結果、VLPの形成および組
み換え免疫原性タンパク質およびB型肝炎表面抗原の同時発現が起こるだけでなく、デン
グ熱とともにB型肝炎に対する防御/免疫付与を提供し得る。これは、二重ワクチンの開
発につながり得、デング熱ならびにB型肝炎の全ての血清型に対する同時免疫付与がもた
らされる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、デングウイルスの全4種類の血清型−DENV−1、DENV−2、DEN
V−3およびDENV−4血清型に対するデングサブユニットワクチンを提供する。サブ
ユニットワクチンは、四価EDIII−TおよびHBsAgを含む組み換えタンパク質を
含む。本発明はまた、DENVの全4種類の血清型に対するデング疾患の予防のためのV
LPに基づく四価ワクチン候補を含むサブユニットワクチンにも関する。
【0035】
ある態様において、本発明は、HBsAgのN末端にインフレームで連結されるデング
ウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4のEDI
IIドメインを含む組み換えタンパク質をコードする核酸配列を提供する。デングウイル
ス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4のEDIIIド
メインのそれぞれをコードするヌクレオチド配列は、あらゆる順序でHBsAgのN末端
と連結され得る。
【0036】
好ましくは、本核酸配列は、それぞれ配列番号1、2、3および4のアミノ酸配列を有
するデングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−
4のそれぞれのEDIIIドメインをコードする。好ましくは、デングウイルス血清型D
ENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4のEDIIIドメインのそ
れぞれをコードする核酸配列は、それぞれ配列番号5、6、7および8である。
【0037】
好ましくは、本核酸配列は、配列番号9のアミノ酸配列を有するHBsAgをコードす
る。好ましくは、HBsAgをコードする核酸配列は配列番号10である。
【0038】
ある実施形態において、核酸配列は、配列番号10のN末端とインフレームで連結され
る配列番号5、6、7および8のヌクレオチド配列のそれぞれを含む。ヌクレオチド配列
、配列番号5、6、7および8は、あらゆる順序で配列番号10のN末端と連結され得る
。
【0039】
好ましくは、本核酸配列は、デングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DE
NV−3およびDENV−4のEDIIIドメインのそれぞれを連結するリンカーをコー
ドする。好ましくは、この核酸は、可動性リンカー、最も好ましくはヘキサグリシンリン
カーをコードする。好ましくは、本核酸配列は、HBsAgのN末端にデングウイルス血
清型DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4のEDIIIドメイ
ンを連結するリンカーをコードする。好ましくは、この核酸は、可動性リンカー、最も好
ましくはヘキサグリシンリンカーをコードする。
【0040】
好ましくは、本核酸配列は、配列番号11のアミノ酸配列を有する組み換えポリペプチ
ドをコードする。好ましくは、組み換えポリペプチドをコード核酸配列は、配列番号12
の核酸配列である。
【0041】
ある実施形態において、本核酸配列は、酵母での発現に対して、好ましくはP.パスト
リス(P.pastoris)での発現に対して最適化されたコドンである。ある実施形
態において、本核酸は発現ベクターである。
【0042】
ある態様において、本発明は、本発明の核酸を用いて形質転換または遺伝子移入され、
HBsAgを発現する宿主細胞に関する。ある実施形態において、宿主細胞は、HBsA
gをコードする核酸配列を用いて形質転換されるかまたは遺伝子移入される。好ましくは
、宿主細胞は、HBsAgを発現する1、2、3、4個またはそれ以上の核酸配列を用い
て形質転換されるかまたは遺伝子移入される。ある実施形態において、宿主細胞は酵母で
ある。最も好ましくは、宿主細胞はP.パストリス(P.pastoris)である。
【0043】
ある態様において、本発明は、HBsAgのN末端に連結されるデングウイルス血清型
DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4のそれぞれのEDIII
ドメインを含む組み換えポリペプチドを提供する。デングウイルス血清型DENV−1、
DENV−2、DENV−3およびDENV−4のEDIIIドメインのそれぞれをコー
ドするアミノ酸配列は、あらゆる順序でHBsAgのN末端と連結され得る。好ましくは
、デングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4
のEDIIIドメインは、連続してN末端からC末端に、配列DENV−1、DENV−
3、DENV−4およびDENV−2で融合される。
【0044】
好ましくは、デングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3および
DENV−4のそれぞれのEDIIIドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1、
2、3および4である。好ましくは、HBsAgのN末端は、配列番号9のポリペプチド
配列を有する。好ましくは、組み換えポリペプチドは、配列番号9のN末端に連結される
アミノ酸配列、配列番号1、2、3および4のそれぞれを含む。アミノ酸配列、配列番号
1、2、3および4は、あらゆる順序で配列番号9のN末端と連結され得る。好ましくは
、組み換えポリペプチドは、連続的にN末端からC末端に、配列、配列番号1、配列番号
3、配列番号4および配列番号2で、アミノ酸配列、配列番号1、2、3および4を含む
。
【0045】
好ましくは、デングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3および
DENV−4のそれぞれのEDIIIドメインは、リンカーにより、好ましくは可動性リ
ンカー、最も好ましくはヘキサグリシンリンカーにより連結される。好ましくは、EDI
IIドメインは、リンカーにより、好ましくは可動性リンカー、最も好ましくはヘキサグ
リシンリンカーによりHBsAgのN末端に連結される。
【0046】
ある態様において、組み換えポリペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。
【0047】
本発明の形質転換または遺伝子移入宿主細胞は、HBsAgおよび本発明の組み換えポ
リペプチドの両方を合成する。発明者らは、これらの2つのポリペプチドが自発的に共集
合してバイオナノ粒子となることを示した。ある態様において、本発明は、HBsAgお
よび本発明の本発明の組み換えポリペプチドを含むバイオナノ粒子を含む。
【0048】
ある態様において、本発明は、適切な条件下で本発明の宿主細胞を培養し、発現された
組み換えタンパク質またはバイオナノ粒子を回収することを含む、組み換えタンパク質ま
たはバイオナノ粒子を調製する方法を提供する。
【0049】
ある態様において、本発明は、本発明の組み換えポリペプチドまたはバイオナノ粒子を
含むワクチンに関する。好ましくは、本ワクチンは、医薬的に許容可能な担体または適切
な希釈剤中で本発明の組み換えポリペプチドまたはバイオナノ粒子を含む。
【0050】
ある態様において、本発明は、本発明の組み換えタンパク質、バイオナノ粒子またはワ
クチンを対象に投与することを含む、デングウイルスを処置または予防する方法を提供す
る。ある実施形態において、デングウイルスは、血清型DENV−1、DENV−2、D
ENV−3またはDENV−4である。
【0051】
図1Aで示されるような可動性グリシルリンカーを通じて一緒に連結された全4種類の
EDIIIを含有するように設計された、四価EDIIIに基づく分子、EDIII−T
が開発された。ピキア・パストリス(Pichia pastoris)においてEDI
II−Tを発現させ、精製し、マウスにおいて免疫原性であることが分かった。EDII
I−T分子の構築は、インド国特許第261749号明細書で提供される。
【0052】
B型肝炎ウイルスの表面抗原(HBsAg)が外来エピトープの提示および表示のため
のプラットフォームとなる能力は、国際公開第93/10152号パンフレットで、マラ
リアワクチン候補RTS,Sの成功によりよく例証される。
【0053】
本発明は、HBsAgが、EDIII−Tの免疫原性を向上させるために働き得るか否
かの可能性を探る。したがって、
図1Aで示されるように、HBsAgとの融合において
、およびP.パストリス(P.pastoris)ベクターにおけるHBsAgの4個の
発現カセットの基礎環境で、EDIII−Tをクローニングした。このEDIII−Tお
よびHBsAgの構造は「DSV
4」と呼ばれ、HBsAg VLP上でマラリアエピト
ープを提示する、国際公開第9310152号パンフレットのRTS,Sのものと同等で
ある。
【0054】
P.パストリス(P.pastoris)において電気穿孔法により組み換えプラスミ
ドを送り込み、クローンのメタノール誘導により、EDIII−T−HBsAgおよびH
BsAgタンパク質の同時発現についてコロニーをスクリーニングした。
図1Bで示され
るようにこの2種類のタンパク質を同時発現する陽性クローンのうち1個をさらなる実験
のために選択した。誘導バイオマスを溶解させ、膜に結合するタンパク質を抽出し、30
0kDa膜を通じた透析に供した。この段階は、2つの同時発現タンパク質が集合してD
SV
4 VLPになることを考慮して、大きいサイズのタンパク質の濃縮を可能にするよ
うに設計した。
図1Cで示されるように高純度でフェニル600M樹脂を通じて残余分を
精製した。
【0055】
図2Aで示されるようなゲルろ過、
図2Bで示されるようなCsCl超遠心および
図2
Cで示されるような電子顕微鏡を通じて、同時発現タンパク質が集合してVLPになる能
力を評価した。DSV
4のタンパク質構成要素の両方が
図2Aで示されるようにゲルろ過
中にボイド容量中で一緒に溶出され、
図2Bで示されるようにCsCl超遠心中に共遊走
したことが観察された。電子顕微鏡下で可視化した場合、これらは、
図2Cで示されるよ
うに、集合して25〜35nmのVLPとなることが観察された。
【0056】
サンドイッチELISA方式において特徴がよく分かっているmAbによる重大な意味
があるEDIIIエピトープの認識を通じて、DSV
4 VLPにおける全4種類のDE
NVのEDIIIの立体構造的な整合性(conformational integr
ity)を評価した。
【0057】
図3で示されるように、BALB/cマウスでの免疫付与によって、これらのVLPが
この4種類のDENV血清型に対して強い免疫反応を開始させる可能性を評価した。第0
、30および90日に6匹のBALB/cマウスの群において腹腔内に精製DSV
4 V
LPで免疫付与を行った(PBS中アルハイドロゲル/100μLとして20μg/50
0μg Al)。第100日に終了時血液(Terminal bleed)を採取し、
ELISAによってDSV
4に対する反応について分析した。陽性反応者からの血清をプ
ールし、全てのその5つの構成要素、すなわちEDIII−1、EDIII−2、EDI
II−3、EDIII−4およびHBsAgに対する抗体の反応について特性評価した(
図3B)。これらの全てに対して強い免疫反応が生じたことが観察された。抗デング反応
が4つのDENVを中和可能であったか否かを判定することは必須であった。したがって
、FACSに基づくアッセイを通じて、プールした血清をその中和能について評価し、実
際にDSV
4−抗血清は、全4種類のDENVを中和可能であったことが観察された(図
3C)。
図3Aは、DSV
4の設計および対応するEDIIIaa配列が得られた株を図
示する。
図3Cは、(指定される株の)4種類のDENVおよびDENV−3の2つのさ
らなる遺伝子型の株に対するDSV
4−抗血清の中和力価を説明する。中和アッセイで使
用されるDENV−2、−3および−4遺伝子型は、EDIII配列が得られた遺伝子型
とは異なり、これがDSV
4抗血清の中和の可能性に悪影響を与えなかったことが明らか
であり、このことから、生じた免疫反応の強度が高いことが示される。さらに、様々な遺
伝子型に対する全体的な反応も均衡がとれていると思われ、
図3Dで示されるように有望
なデングワクチンとしてDSV
4が候補に上がる。DSV4は、評価される様々なアジュ
バントを用いて同等な程度まで有効であると思われる(
図3D)。
【0058】
本発明を次の実施例に関して説明するが、これらの実施例は、本発明を単に説明し、明
らかにするために含まれる。これらの具体例は、何ら、本発明の範囲を制限するものとし
て解釈されるべきものではない。
【0059】
[実施例1]:組み換えVLPに基づくデング四価ワクチン候補の構築
図1Aで示されるように、HBsAgとの融合において、およびP.パストリス(P.
pastoris)ベクターにおけるHBsAgの4個の発現カセットの基礎環境で、E
DIII−Tをクローニングした。このEDIII−TおよびHBsAgの構造は「DS
V
4」と称するP.パストリス(P.pastoris)において電気穿孔法により組み
換えプラスミドを送り込み、クローンのメタノール誘導により、EDIII−T−HBs
AgおよびHBsAgタンパク質の同時発現についてコロニーをスクリーニングした。
【0060】
[実施例2]:デング四価ワクチン候補−DSV
4の特性評価
図1Bで示されるようにこの2種類のタンパク質を同時発現する陽性クローンのうち1
個をさらなる実験のために選択した。誘導バイオマスを溶解させ、膜に結合するタンパク
質を抽出し、300kDa膜を通じた透析に供した。この段階は、2つの同時発現タンパ
ク質が集合してDSV
4 VLPになることを考慮して、大きいサイズのタンパク質の濃
縮を可能にするように設計した。
図1Cで示されるように高純度でフェニル600M樹脂
を通じて残余分を精製した。
【0061】
[実施例3]:VLPの同定および特性評価
図2Aで示されるようなゲルろ過、
図2Bで示されるようなCsCl超遠心および
図2
Cで示されるような電子顕微鏡を通じて、同時発現タンパク質が集合してVLPになる能
力を評価した。DSV
4のタンパク質構成要素の両方が
図2Aで示されるようにゲルろ過
中にボイド容量中で一緒に溶出され、
図2Bで示されるようにCsCl超遠心中に共遊走
したことが観察された。電子顕微鏡下で可視化した場合、これらは、
図2Cで示されるよ
うに、集合して25〜35nmのVLPとなることが観察された。
【0062】
[実施例4]:mAbによるDSV
4 VLPにおける全4種類のDENVの立体構造
的な整合性(conformational integrity)の評価
サンドイッチELISA方式において、特徴がよく分かっているmAbによる重大な意
味があるEDIIIエピトープの認識を通じて、DSV
4 VLPにおける全4種類のD
ENVのEDIIIの立体構造的な整合性(conformational integ
rity)を評価した。デング特異的なmAbでマイクロタイターウェルをコーティング
し、DSV
4 VLPを添加した。ペルオキシダーゼ標識抗HBsAgヘプノスティカ(
Hepnostika)を通じて、結合したVLPが明らかになった。これらのmAbの
殆どは、強い中和免疫反応を生じさせるのに必須であると考えられる、EDIIIのA鎖
および外側隆線領域(lateral ridge region)に対するものであっ
た。21種類のデング熱mAb(EDIIIおよび非EDIII特異的なmAb)による
DSV
4のELISA反応性を表1で説明し、この結果から、全4種類のDENVのED
IIIエピトープがDSV
4 VLPにおいてインタクトであることが示される。
【表1】
【0063】
[実施例5]:精製DSV
4 VLPによるマウスの免疫付与
図3で示されるように、BALB/cマウスでの免疫付与によって、これらのVLPが
この4種類のDENV血清型に対して強い免疫反応を開始させる可能性を評価した。第0
、30および90日に6匹のBALB/cマウスの群において腹腔内に精製DSV
4VL
Pで免疫付与を行った(PBS中アルハイドロゲル/100μLとして20μg/500
μg Al)。第100日に終了時血液(Terminal bleed)を採取し、E
LISAによってDSV
4に対する反応について分析した。陽性反応者からの血清をプー
ルし、
図3Bで示されるように、全てのその5つの構成要素、すなわちEDIII−1、
EDIII−2、EDIII−3、EDIII−4およびHBsAgに対する抗体の存在
について特性評価し、
図3Dで示されるように、様々なアジュバントとともに生じたDS
V
4抗血清のさらなる遺伝子型中和幅を決定した。
【0064】
免疫反応
これらの5つの構成要素、すなわちEDIII−1、EDIII−2、EDIII−3
、EDIII−4およびHBsAgの全てに対して強い免疫反応が生じたことが観察され
た。抗デング反応が4つのDENVを中和可能であったか否かを判定することは必須であ
った。したがって、FACSに基づくアッセイを通じてその中和能についてプールした血
清を評価し、実際にDSV
4抗血清は、4種類のWHO参考株DENVおよびDENV−
3の2つのさらなる遺伝子型の株に対してDSV
4−抗血清の中和力価を説明する
図3C
で示されるように、全4種類のDENVを中和可能であったことが観察された。中和アッ
セイで使用されるDENV−2、−3および−4遺伝子型は、EDIII配列が得られた
遺伝子型とは異なり、これがDSV
4抗血清の中和の可能性に悪影響を与えなかったこと
が明らかであり、このことから、生じた免疫反応の強度が高いことが示される。さらに、
様々な血清型に対する全体的な反応も均衡がとれていると思われ、有望なデングワクチン
としてDSV
4が候補に挙がる。以下の表2は、血清型特異的な中和Abを誘発するED
III−3−MBPにおけるFNT枯渇後(post depletion)を説明する
。
【表2】
【0065】
本発明はまた、次の具体的な態様も含む:
態様1.四価EDIII−T分子およびB型肝炎ウイルスの表面抗原(HBsAg)を
含む組み換えVLPに基づくデング四価ワクチン候補。
【0066】
態様2.DSV
4と呼ばれる組み換えVLPに基づくデング四価ワクチン候補。
【0067】
態様3.四価EDIII分子がDENV−1、DENV−2、DENV−3およびDE
NV−4のEDIIIを含む、組み換えVLPに基づくデング四価ワクチン候補、DSV
4。
【0068】
態様4.DSV
4が、DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4
に対してDENV血清型特異的な中和抗体を生じさせる、本発明の態様2に記載されるよ
うな組み換えVLPに基づくデング四価ワクチン候補。
【0069】
態様5.請求項1に記載のような組み換えVLPに基づくデング四価ワクチン候補の作
製のための過程は、次の段階を含む:
i)HBsAgの4個の発現カセットを保有する組み換えコンストラクト中でのHBs
Agとの融合におけるEDIII−Tのクローニング、
ii)EDIII−T−HBsAgおよびHBsAgを同時発現するクローンを得るた
めの、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞への組み換えプラス
ミドの電気穿孔法。
【0070】
iii)EDIII−T−HBsAgおよびHBsAgタンパク質の同時発現に対する
スクリーニング、
iv)銀染色およびウエスタンブロッティングによりEDIII−T−HBsAgおよ
びHBsAgタンパク質の発現を分析すること、
v)誘導されるバイオマスの溶解、
vi)膜に結合するタンパク質の抽出および透析に供すること、
vii)DSV
4の精製。
【0071】
態様6.段階(iii)のスクリーニングがクローンのメタノール誘導により行われる
、態様5に記載のような過程。
【0072】
態様7.態様1に記載のような組み換えVLPに基づくデング四価ワクチン候補を含む
、デングサブユニットワクチン。
【0073】
態様8.デングウイルスのDENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV
−4血清型に対して活性がある、態様7に記載のようなデングサブユニットワクチン。
【0074】
態様9.腹腔内にまたは筋肉内に投与され得る、態様8に記載のようなデングサブユニ
ットワクチン。
【0075】
態様10.四価EDIII−T分子およびB型肝炎ウイルスの表面抗原(HBsAg)
を含むデングサブユニットワクチン候補としての使用のための組み換えVLPに基づくデ
ング四価ワクチン候補。
【0076】
本発明は更に次の具体的な態様も含む:
態様1.
HBsAgのN末端に連結されるデングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4のそれぞれのEDIIIドメインを含む、組み換えポリペプチド。
【0077】
態様2.
HBsAgのN末端に連結されるデングウイルス血清型DENV−1、DENV−2、DENV−3およびDENV−4のEDIIIドメインを含む組み換えタンパク質をコードする、核酸配列。
【0078】
態様3.
態様2に記載の核酸を用いて形質転換または遺伝子移入され、HBsAgを発現する、宿主細胞。
【0079】
態様4.
態様1に記載の組み換えポリペプチドを含む、バイオナノ粒子。
【0080】
態様5.
適切な条件下で態様4に記載の宿主細胞を培養する段階と、発現される組み換えタンパク質またはバイオナノ粒子を回収する段階とを含む、態様1に記載の組み換えポリペプチドを含むバイオナノ粒子を作製する方法。
【0081】
態様6.
態様1に記載の組み換えポリペプチドを含む、ワクチン。
【0082】
態様7.
態様4に記載のバイオナノ粒子を含む、ワクチン。
【0083】
態様8.
態様1に記載の組み換えポリペプチド、態様4に記載のバイオナノ粒子または態様6もしくは態様7に記載のワクチンを対象に投与する段階を含む、デングウイルスを処置または予防する方法。
【0084】
態様9.
デングウイルスを処置または予防することにおける使用のための、態様1に記載の組み換えポリペプチド、態様4に記載のバイオナノ粒子または態様6もしくは態様7に記載のワクチン。