(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985462
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】レンズモジュールおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20211213BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20211213BHJP
【FI】
G02B7/02 Z
G02B7/02 B
G02B7/02 D
G03B30/00
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-111015(P2020-111015)
(22)【出願日】2020年6月28日
(65)【公開番号】特開2021-9370(P2021-9370A)
(43)【公開日】2021年1月28日
【審査請求日】2020年6月28日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/093636
(32)【優先日】2019年6月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519312957
【氏名又は名称】エーエーシー オプティックス ソリューションズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ ▲凌▼▲雲▼
【審査官】
登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第208044170(CN,U)
【文献】
特開2005−249994(JP,A)
【文献】
特開2017−037137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズモジュールであって、
鏡筒と、レンズ群と、押えリングとを含み、
前記鏡筒には、光通過孔と、前記光通過孔に連通する収容キャビティとが開設されており、前記レンズ群および前記押えリングは、前記光通過孔から前記収容キャビティに向かう方向に順に前記収容キャビティ内に設けられ、
前記レンズ群は、前記光通過孔の中心線方向に積層される少なくとも2枚のレンズを含み、前記レンズは、光学部と、前記光学部を取り囲んで設けられる延在部とを含み、前記延在部は、前記鏡筒に当接して係合する接続面を含み、前記押えリングに隣接する前記レンズの前記接続面と前記鏡筒との間には、漏れ隙間が設けられており、
前記押えリングは、前記光通過孔の中心線と平行な方向において対向設置される上環面および下環面、並びに、前記上環面の外環縁と前記下環面の外環縁とに接続される外壁面を含み、前記外壁面は、前記鏡筒の内壁に当接し、前記上環面は、前記レンズ群に当接し、前記上環面には、排気溝が開設されており、前記排気溝は、前記漏れ隙間に連通し、前記排気溝は、前記上環面の外環縁から前記上環面の内環縁まで貫通し、
前記排気溝の延在方向は、前記光通過孔の径方向と平行であり、
前記光学部は、対向設置される物体側面および像側面を含み、前記延在部は、対向設置される第1延在面および第2延在面をさらに含み、前記第1延在面は、前記物体側面から、前記レンズ群の光軸から離れる方向へ延在し、前記第2延在面は、前記像側面から、前記光軸から離れる方向へ延在し、前記接続面は、前記第1延在面と前記第2延在面を接続し、
前記上環面は、複数の前記第2延在面のうち前記光通過孔から最も離れる前記第2延在面に当接することを特徴とするレンズモジュール。
【請求項2】
前記排気溝は、複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項3】
複数の前記排気溝は、前記光通過孔の中心線の周りに前記上環面に均等に分布していることを特徴とする請求項2に記載のレンズモジュール。
【請求項4】
前記押えリングは、内壁面をさらに含み、前記内壁面は、互いに接続される第1環面および第2環面を含み、前記第1環面は、前記上環面の内環縁に接続され、前記第2環面は、前記下環面の内環縁に接続され、前記第1環面と前記第2環面とは、互いに鋭角をなすことを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項5】
各前記接続面には、ゲート溝が開設されており、前記漏れ隙間は、前記ゲート溝を含むことを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項6】
前記レンズモジュールは、遮光板をさらに含み、前記遮光板は、隣接する2つの前記レンズの間に位置し、それぞれ2つの前記レンズに当接して係合することを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項7】
前記遮光板は、さらに、前記鏡筒に当接して係合する、ことを特徴とする請求項6に記載のレンズモジュール。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載のレンズモジュールを含むことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学技術分野に関し、特にレンズモジュールおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
光学結像技術の成熟に伴い、カメラ、ビデオカメラ、望遠鏡などの様々な結像製品も多くの家庭に普及しており、レンズモジュールの設計は、常にそのような製品のメーカにとって重要な考慮事項である。現在、レンズモジュールは、一般的に、鏡筒と、レンズ群と、押えリングと、を含むが、押えリングは、通常、レンズ群に当接してレンズ群を鏡筒の収容キャビティ内に押圧する。
【0003】
しかしながら、構造上の制約により、従来の押えリング、レンズおよび鏡筒は、通常、密閉された気体環境を形成するように囲い込み、すなわち、鏡筒内部の空気は、大気と連通できず、レンズ内部の放熱が困難になり、温度および湿度が高くなってしまい、レンズモジュールの全体性能に影響を与える。
【0004】
そこで、上記技術課題を解決するために、新たなレンズモジュールを提供することが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、現在のレンズモジュールの鏡筒内部の放熱が困難であるという技術課題を解決るためのレンズモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術手段は、下記の通りである。
【0007】
レンズモジュールであって、
鏡筒と、レンズ群と、押えリングとを含み、
前記鏡筒には、光通過孔と、前記光通過孔に連通する収容キャビティとが開設されており、前記レンズ群および前記押えリングは、前記光通過孔から前記収容キャビティに向かう方向に順に前記収容キャビティ内に設けられ、
前記レンズ群は、前記光通過孔の中心線方向に積層される少なくとも2枚のレンズを含み、前記レンズは、光学部と、前記光学部を取り囲んで設けられる延在部とを含み、前記延在部は、前記鏡筒に当接して係合する接続面を含み、前記押えリングに隣接する前記レンズの前記接続面と前記鏡筒との間には、漏れ隙間が設けられており、
前記押えリングは、前記光通過孔の中心線と平行な方向において対向設置される上環面および下環面、並びに、前記上環面の外環縁と前記下環面の外環縁とに接続される外壁面を含み、前記外壁面は、前記鏡筒の内壁に当接し、前記上環面は、前記レンズ群に当接し、前記上環面には、排気溝が開設されており、前記排気溝は、前記漏れ隙間に連通
し、前記排気溝は、前記上環面の外環縁から前記上環面の内環縁まで貫通し、
前記排気溝の延在方向は、前記光通過孔の径方向と平行であり、
前記光学部は、対向設置される物体側面および像側面を含み、前記延在部は、対向設置される第1延在面および第2延在面をさらに含み、前記第1延在面は、前記物体側面から、前記レンズ群の光軸から離れる方向へ延在し、前記第2延在面は、前記像側面から、前記光軸から離れる方向へ延在し、前記接続面は、前記第1延在面と前記第2延在面を接続し、
前記上環面は、複数の前記第2延在面のうち前記光通過孔から最も離れる前記第2延在面に当接するレンズモジュールを提供する。
【0008】
好ましくは、前記排気溝は、複数設けられている。
【0009】
好ましくは、複数の前記排気溝は、前記光通過孔の中心線の周りに前記上環面に均等に分布している。
【0011】
好ましくは、前記押えリングは、内壁面をさらに含み、前記内壁面は、互いに接続される第1環面および第2環面を含み、前記第1環面は、前記上環面の内環縁に接続され、前記第2環面は、前記下環面の内環縁に接続され、前記第1環面と前記第2環面とは、互いに鋭角をなす。
【0013】
好ましくは、各前記接続面には、ゲート溝が開設されており、前記漏れ隙間は、前記ゲート溝を含む。
【0014】
好ましくは、前記レンズモジュールは、遮光板をさらに含み、前記遮光板は、隣接する2つの前記レンズの間に位置し、それぞれ2つの前記レンズに当接して係合する。
【0015】
好ましくは、前記遮光板は、さらに、前記鏡筒に当接して係合する。
【0016】
本発明は、上記レンズモジュールを含む電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、下記の有利な作用効果を有する。押えリングの外壁面に排気溝が開設され、漏れ隙間を当該排気溝を介して外部空間と効果的に連通可能にさせることにより、漏れ隙間は外部空間と気体交換することができ、レンズモジュールの放熱に寄与し、鏡筒内の温度および湿度をより信頼性高く且つ制御可能にし、さらにレンズモジュールの全体性能および使用寿命を向上させる。また、漏れ隙間が大気と連通するため、押えリングの取り付け過程において、漏れ隙間における気体圧力と大気圧力との圧差による影響を受けず、組み立て過程をより便利にし、さらに押えリングと鏡筒との係合精度を最適化し、レンズモジュールのバックフォーカスの安定性を保証する。
【0018】
本発明に係る電子機器は、上記レンズモジュールを採用しているため、レンズモジュールの全ての有益な効果を有する。ここではその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るレンズモジュールの断面構造の模式図である。
【
図2】
図1におけるレンズモジュールの爆発構造の模式図である。
【
図3】本発明に係るレンズモジュールに用いられる押えリングの構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面および実施形態を参照しながら本発明をさらに説明する。
【0021】
図1乃至
図3を参照すると、本発明は、鏡筒100と、押えリング300と、レンズ群200と、を含むレンズモジュール10を提供する。鏡筒100には、光通過孔110と、当該光通過孔110に連通する収容キャビティ120とが開設されており、レンズ群200と押えリング300とは、光通過孔110から収容キャビティ120に向かう方向に順に収容キャビティ120内に設けられている。
【0022】
図1を参照すると、レンズ群200は、複数のレンズを含み、各レンズは、光通過孔110の中心線OO’の延在方向に互いに積層されて設けられ、上記押えリング300は、当該光通過孔110から最も離れる1つのレンズに当接する。具体的には、本実施例では、
図1および
図2を再び参照すると、レンズ群200は、3つのレンズを含み、説明の便宜上、ここでそれらをそれぞれ第1レンズ210、第2レンズ220および第3レンズ230と呼び、これら第1レンズ210、第2レンズ220および第3レンズ230は、この順に、光通過孔110から収容キャビティ120に向かう方向に配列され、押えリング300は、当該第3レンズ230に当接する。
【0023】
具体的には、各レンズはいずれも、光学部と、光学部を取り囲んで設けられる延在部とを含み、ここで、第3レンズ230を例とする。
【0024】
第3レンズ230は、光学部231および延在部232を含み、光学部231は、光軸を有し、かつ、光軸が与光通過孔110の中心線OO'と重なり、光学部231は、対向設置される物体側面2311と像側面2312を含み、延在部232は、接続面2323と、対向して設けられ且つ互いに平行な第1延在面2321および第2延在面2322とを含み、第1延在面2321は、物体側面2311から、光軸から離れる方向へ延在し、第2延在面2322は、像側面2312から、光軸から離れる方向へ延在し、接続面2323は、第1延在面2321と第2延在面2322を接続し、鏡筒100の、収容キャビティ120を形成すように囲い込む内壁に当接して係合する。上記押えリング300は、第3レンズ230の第2延在面2322に当接する。
【0025】
さらに、第3レンズ230の接続面2323と鏡筒100との間には、漏れ隙間(図示せず)が設けられている。
【0026】
図2および
図3を参照すると、押えリング300は、上環面310、下環面320および外壁面330を含み、上環面310と下環面320は、中心線OO’に平行な方向において対向設置され、かつ、上環面310は、第3レンズ230の第2延在面に当接して係合し、外壁面330は、当該上環面310の外環縁と下環面320の外環縁とに接続されると共に、収容キャビティ120を形成すように囲い込む鏡筒100の内壁に当接して係合する。特に、上環面310には、排気溝350が開設されており、当該排気溝350は、上記漏れ隙間および外部空間に連通する。
【0027】
このように、押えリング300の外壁面330に排気溝350に開設され、漏れ隙間を当該排気溝350を介して外部空間と効果的に連通可能にさせることにより、漏れ隙間は外部空間と気体交換することができ、レンズモジュール10の放熱に寄与し、鏡筒100内の温度および湿度をより信頼性高く且つ制御可能にし、さらにレンズモジュール10の全体性能および使用寿命を向上させる。また、漏れ隙間が大気と連通するため、押えリング300の取り付け過程において、漏れ隙間における気体圧力と大気圧力との圧差による影響を受けず、組み立て過程をより便利にし、さらに押えリング300と鏡筒100の係合精度を最適化し、レンズモジュール10のバックフォーカスの安定性を保証する。
【0028】
漏れ隙間は、各レンズ間の隙間に連通し、かつ、各レンズと鏡筒100との間に存在する隙間と連通することができるため、レンズモジュール10の放熱性能をより効果的に最適化することができること、が理解されるべきである。
【0029】
なお、当該排気溝350の追加により、押えリング300の構造が従来の構造よりもさらに簡素化され、押えリング300の加工難度が低減するので、本発明に係るレンズモジュール10は、さらに、構造が簡素化され、コストが低減され、押えリング300の成形難度が改善されるという技術効果を有する。
【0030】
当然ながら、本発明の他の実施例では、当該レンズの数は、実際の必要に応じて増減してもよいが、ここでは特に限定されない。また、上記各レンズの光学部231および延在部232の具体的な形状は、同様であってもよいし、異なってもよく、実際の必要に応じて決定すべきである。
【0031】
一実施例では、
図3を参照すると、当該押えリング300は、内壁面340をさらに含み、当該内壁面340は、上環面310の内環縁と下環面320の内環縁を接続する。具体的には、当該内壁面340は、互いに接続される第1環面341と第2環面342を含み、第1環面341は、上環面310の内環縁に接続され、第2環面342は、下環面320の内環縁に接続され、かつ、第1環面341と第2環面342とは、互いに鋭角をなす。当然ながら、当該内壁面340の具体的な形状およびサイズは、レンズ群200の構造に適合できるように規定され、ここでは特に限定されない。
【0032】
一実施例では、排気溝350は、複数設けられている。このように、漏れ隙間と外部空間の気体交換速度を増加することができ、放熱効果の向上に寄与し、鏡筒100内の温度および湿度の信頼性を向上させ、押えリング300と鏡筒100との装着精度をさらに改善する。
【0033】
一実施例では、排気溝350は、4つ設けられている。
【0034】
一実施例では、複数の排気溝350は、光通過孔110の中心線OO'の周りに環面310に均等に分布している。このように、漏れ隙間の各箇所での気圧分布をより均等にすることができ、鏡筒100の放熱性能をさらに改善し、押えリング300と鏡筒100との装着精度を効果的に改善することができる。また、複数の排気溝350が光通過孔110の中心線OO'の周りに均等に分布する構造に必要な成形型の構造が簡単であり、押えリング300の成形コストを低減することができる。
【0035】
一実施例では、
図3を参照すると、排気溝350の延在方向は、光通過孔110の半径方向に平行である。
【0036】
一実施例では、各レンズの接続面2323には、いずれもゲート溝(図示せず)が設けられており、当該漏れ隙間は、当該ゲート溝を含む。すなわち、ゲート溝は、漏れ隙間であってもよいし、漏れ隙間の一部であってもよく、排気溝は、ゲート溝と気体交換することができる。
【0037】
一実施例では、
図1および
図2を参照すると、レンズモジュール10は、遮光板500をさらに含み、当該遮光板500は、隣接する2つのレンズの間に位置し、それぞれ2つのレンズの延在部232に当接して係合する。当該遮光板500の追加により、各レンズの延在部232で屈折又は反射された光による迷光を効果的に低減し、レンズモジュール10の結像性能を最適化することができる。
【0038】
一実施例では、
図1を参照すると、当該遮光板500は、さらに、鏡筒100の、当該収容キャビティ120を形成すように囲い込む内壁に当接する。このように、レンズモジュール10の全体構造をより強固にすることができる。
【0039】
本発明に係る電子機器は、上記レンズモジュール10を含むため、上記レンズモジュール10が有する全ての有益な効果を備える。ここではその説明を省略する。
【0040】
上述したのは、本発明の実施形態に過ぎない。ここで、注意すべきことは、当業者であれば、本発明の創造的発想から逸脱しない限り、改良をなすことも可能であり、これらの改良が何れも本発明の保護範囲に含まれる。