特許第6985463号(P6985463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985463
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20211213BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20211213BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
   H04N5/74 Z
【請求項の数】17
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2020-111150(P2020-111150)
(22)【出願日】2020年6月29日
(62)【分割の表示】特願2018-525950(P2018-525950)の分割
【原出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2020-170184(P2020-170184A)
(43)【公開日】2020年10月15日
【審査請求日】2020年6月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-134902(P2016-134902)
(32)【優先日】2016年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三沢 昭央
(72)【発明者】
【氏名】下田 望
(72)【発明者】
【氏名】金子 一臣
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6726742(JP,B2)
【文献】 特開2006−091104(JP,A)
【文献】 特開2016−075760(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0048020(US,A1)
【文献】 特開2005−202145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
車両に関する情報を取得する車両情報取得部を搭載した車体と、
放熱手段を備えた光源および表示素子を有し、前記車両に関する情報を用いて前記表示素子に映像表示して映像投射光を生成して出射する映像表示装置と、
前記映像表示装置から出射された前記映像投射光を前記車両のウィンドシールドまたはコンバイナで反射させることで虚像を前記車両の前方に表示する虚像光学系と、
前記車体に搭載され、前記映像表示装置および前記虚像光学系を搭載した筐体と、
を有し、
前記虚像光学系は、ミラーと補正レンズとを含み、
前記ミラーは、凹面ミラーであり、前記ウィンドシールドまたは前記コンバイナの下側に対応する領域の曲率半径が、前記ウィンドシールドまたは前記コンバイナの上側に対応する領域の曲率半径より小さくなるよう構成され、
前記補正レンズは、前記筐体内において、前記映像表示装置と前記ミラーとの間に配置され、運転者の視点位置に対応して得られる前記虚像の歪みを補正するよう構成され、光軸方向の厚さが変化するよう構成され、少なくとも一方の面が凹面で構成されている、車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記補正レンズの表面に反射防止膜が設けられた、車両。
【請求項3】
請求項1に記載の車両において、
前記映像表示装置と前記ミラーとの間に、前記補正レンズが複数枚設けられた、車両。
【請求項4】
請求項1に記載の車両において、
前記筺体は、前記映像表示装置から出射して前記ミラーへ向かう映像光の光路の底面に沿って形成された底面部と、当該底面部とは異なる傾斜角度を有し、かつ、前記ミラーで反射された反射光の光路の底面に沿って形成された中間底面部とを含んで構成されている、車両。
【請求項5】
請求項4に記載の車両において、
前記筺体は、さらに、前記底面の両側端部から立ち上がる第1側面部と、前記中間底面部の端部から立ち上がる第2側面部とを含んで構成されている、車両。
【請求項6】
請求項1に記載の車両において、
前記筺体は、前記ミラーを内部に収納した外装ケースと、当該外装ケースの上部に一体に組み立てられ、前記ミラーで反射された反射光を透過する部材を備えた外装蓋部とを含んで構成されている、車両。
【請求項7】
請求項5に記載の車両において、
前記筺体を構成する前記第1側面部、前記中間底面部、前記第2側面部は、前記映像光の有効光路領域の最外周から1mm以上でかつ15mm未満の範囲の距離で外側に離隔されて形成されている、車両。
【請求項8】
請求項1に記載の車両において、
前記映像表示装置は、前記筐体の外周部の一部において、少なくとも前記光源の放熱手段が当該筐体の外周に位置するよう取り付けられている、車両。
【請求項9】
請求項8に記載の車両において、
前記放熱手段は、ヒートシンクである、車両。
【請求項10】
請求項9に記載の車両において、
前記放熱手段は、さらに、前記光源の発熱を前記ヒートシンクに伝達するヒートパイプを含んでいる、車両。
【請求項11】
請求項1に記載の車両において、
前記筐体の一部には前記映像表示装置の前記表示素子の発光面に対応した開口部が形成されており、前記映像表示装置は、前記筐体の当該開口部を介して取り付けられている、車両。
【請求項12】
請求項1に記載の車両において、
前記ミラーは、当該ミラーを駆動するミラー駆動部を備えており、当該ミラー駆動部は、前記筐体の外周に位置するように取り付けられている、車両。
【請求項13】
請求項1に記載の車両において、
さらに、前記映像表示装置を構成する前記光源および前記表示素子を含む各部の動作を制御するための制御部実装され基板が、前記筐体の外周の一部に取り付けられている、車両。
【請求項14】
請求項1に記載の車両において、
前記映像表示装置は、前記ミラーの光軸に対して傾斜して配置されている、車両。
【請求項15】
請求項1に記載の車両において、
3次元的なねじれの関係にある前記ミラーと前記補正レンズが、単一の保持部材または外装ケースに保持されている、車両。
【請求項16】
請求項1に記載の車両において、
前記ミラーは、保持部材または外装ケースに保持されており、角度調整機構を持ち、
記角度調整機構によって前記ミラーの角度を調整し、前記ウィンドシールドまたは前記コンバイナに投射する位置を調整し、前記運転者が見る虚像の位置を上下方向に調整可能とする、車両。
【請求項17】
請求項1に記載の車両において、
前記補正レンズの垂直方向の断面形状の平均曲率半径と、水平方向の断面形状の平均曲率半径とで異なる値とした、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置の技術に関し、特に、透明なガラス板等に画像を投影するヘッドアップディスプレイ装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両において、通常は、車速やエンジン回転数等の情報は、ダッシュボード内の計器盤(インパネ)に表示される。また、カーナビゲーション等の画面は、ダッシュボードに組み込まれもしくはダッシュボード上に設置されたディスプレイに表示される。運転者がこれらの情報を視認する場合に視線を大きく移動させることが必要となることから、視線の移動量を低減させる技術として、車速等の情報やカーナビゲーションに係る指示等の情報をフロントガラス(ウィンドシールド)等に投射して表示するヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、以下では「HUD」と記載する場合がある)装置が知られている。
【0003】
HUDに関連する技術として、例えば、特開2015−194707号公報(特許文献1)には、画像を表示するデバイスと、表示デバイスに表示された画像を投射する投射光学系とを備え、観察者の視点領域全域で画面歪みを小さくするとともに小型化を実現する表示装置が記載されている。ここでは、投射光学系は、表示デバイスから観察者の光路の順に、第1ミラーと第2ミラーを有する。そして、第1ミラーにおける画像長軸方向の入射角と、第1ミラーにおける画像短軸方向の入射角、および表示デバイスの画像表示面と第1ミラーとの間隔と、観察者によって視認される虚像の水平方向の幅との関係が、所定の関係性を満たすように構成することで、HUD装置の小型化を実現する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−194707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような従来技術では、装置の構成を小型化することが可能であるとされるが、小型化にも制約がある。すなわち、特許文献1に記載された技術では、観察者と表示デバイスの間に2枚のミラーを配置する必要がある。このとき、第1ミラーでの反射光束が第2ミラーで遮られないようにするためにはミラーの配置の自由度は制限される。すなわち、2枚のミラーを近接配置するには制約があり、ある程度離間させて配置する必要が生じるため、その分が装置構成の小型化、特に、筐体を含む装置全体の容量の低減の支障となる。
【0006】
そこで本発明の目的は、装置のさらなる小型化を実現するヘッドアップディスプレイ装置を提供することにある。
【0007】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0009】
本発明の代表的な実施例によるヘッドアップディスプレイ装置は、車両のウィンドシールドまたはコンバイナに映像を投射することで、運転者に対して前記映像にかかる虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、放熱手段を備えた光源および表示素子を有し、前記表示素子に前記映像を形成する映像表示装置と、前記映像表示装置から出射された光を前記ウィンドシールドに投射することで前記虚像を前記車両の前方に表示する虚像光学系と、前記映像表示装置からの映像光の有効光路領域の形状に沿って形成された壁面を含んで形成された筐体とを有する。前記虚像光学系は、凹面ミラーと光学素子とを含み、前記光学素子は、前記筐体内において、前記映像表示装置と前記凹面ミラーとの間に配置され、前記映像表示装置は、前記筐体の外周の一部に取り付けられている。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0011】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、ヘッドアップディスプレイ装置のさらなる小型化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1のヘッドアップディスプレイ装置の動作概念の例について概要を示した図である。
図2】(a)、(b)は、本発明の実施例1のヘッドアップディスプレイ装置の実装形態の例について概要を示した図である。
図3】本発明の実施例1のヘッドアップディスプレイ装置の光線説明図である。
図4】(a)〜(c)は、本発明の実施例1であるヘッドアップディスプレイ装置における筐体を構成する外装蓋部と外装ケースの形成方法について説明する図である。
図5】上記筐体を構成する外装蓋部と外装ケースの形成方法について説明する図である。
図6】(a)〜(c)は、本発明の実施例1のヘッドアップディスプレイ装置における外装ケースを含む筐体全体を示す下面、側面、背面図である。
図7】本発明の実施例1における映像表示装置の実装形態の例について概要を示した図である。
図8】本発明の実施例1における導光体の実装形態の例について概要を示した図である。
図9】(a)〜(b)は、本発明の実施例1におけるミラー駆動部の実装形態の具体的な例を示した図である。
図10】上記ミラー駆動部の動作原理を説明する図である。
図11】(a)〜(b)は、本発明の実施例1におけるLED光源と、その放熱用の部材であるヒートシンクの実装形態の具体的な例を示した図である。
図12】上記ヒートシンクの動作原理を説明する図である。
図13】本発明の実施例1であるヘッドアップディスプレイ装置の全体の構成例について概要を示した機能ブロック図である。
図14】本発明の実施例1におけるにおける車両情報の取得に係るハードウェア構成の例について概要を示した図である。
図15】本発明の実施例1における構成例について詳細を示した機能ブロック図である。
図16】(a)〜(c)は、本発明の実施例1における虚像を表示する光学系の構成例と装置の小型化について概要を示した図である。
図17】本発明の実施例1における歪み補正レンズによる歪みおよび収差の補正の例について概要を示した図である。
図18】本発明の実施例1における初期動作の例について概要を示したフローチャートである。
図19】本発明の実施例1における通常動作の例について概要を示したフローチャートである。
図20】本発明の実施例1における明るさレベル調整処理の例について概要を示したフローチャートである。
図21】(a)〜(b)は、本発明の実施例2であるヘッドアップディスプレイ装置の実装形態の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。また、以下に示す各実施例では、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置が自動車等の車両に設置される場合を例として説明するが、電車や航空機等の他の乗り物にも適用可能である。また、乗り物以外の用途に用いるHUD装置にも適用可能である。
【0014】
(実施例1)
<概要>
図1は、本発明の実施例1のヘッドアップディスプレイ装置の動作概念の例について概要を示した図である。本実施例のHUD装置1では、筐体50内(もしくは後述するように筐体50に対して着脱可能な箇所)に配置された映像表示装置30によって表示された映像を、凹面ミラー41により反射させて、車両2のウィンドシールド3に投射する。
【0015】
ここで、被投射部材はウィンドシールド3に限られず、映像が投射される部材であれば、コンバイナなど他の部材とすることができる。また、映像表示装置30は、例えば、バックライトを有するプロジェクタやLCD(Liquid Crystal Display)等により構成される。自発光型のVFD(Vacuum Fluorescent Display)等であってもよい。投射装置によりスクリーンに映像を表示するものであってもよい。このようなスクリーンとしては、例えば、マイクロレンズを2次元状に配置したマイクロレンズアレイにより構成してもよい。
【0016】
凹面ミラー41は、例えば、自由曲面ミラーや光軸非対称の形状を有するミラー等により構成される。より具体的には、凹面ミラー41の形状は、虚像の歪みを低減するために、例えば、その上部の領域(すなわち、ここで反射した光線はウィンドシールド3の下方で反射するため、相対的に運転者5の視点との距離が短くなる)では、拡大率が大きくなるように相対的に曲率半径を小さくする。一方、凹面ミラー41の下部の領域(すなわち、ここで反射した光線はウィンドシールド3の上方で反射するため、相対的に運転者5の視点との距離が長くなる)では、拡大率が小さくなるように相対的に曲率半径を大きくする。映像表示装置30を凹面ミラー41の光軸に対して傾斜させて配置することで、上記のような像倍率の違いを補正して、発生する歪みそのものを低減するようにしてもよい。
【0017】
運転者5は、ウィンドシールド3に投射された映像を見ることで、透明のウィンドシールド3を通してその前方に虚像として上記映像を視認する。凹面ミラー41の角度を調整することで、映像をウィンドシールド3に投射する位置を調整することにより、運転者5が見る虚像の表示位置を上下方向に調整可能としてもよい。なお、虚像として表示する内容は特に限定されず、例えば、車両情報やナビゲーション情報、図示しないカメラ映像(監視カメラやアラウンドビュアー等)で撮影した前方の風景の映像などを適宜表示することができる。
【0018】
運転者5が視認する虚像の大きさを実用的なレベルに大きくするには、凹面ミラー41から虚像までの距離を大きくする必要があり、結果として、HUD装置1の寸法が大きくならざるを得なかった。また、映像が投射されるウィンドシールド3は運転者5から見て通常前後に傾斜して配置されているため、虚像の上部と下部で像倍率を整合させることが困難であった。
【0019】
これに対し、上述した特許文献1に記載されたような従来技術では、凹面ミラー41に加えて、運転者5と表示デバイス(本実施例では映像表示装置30)の間に光路折り返しミラーを設け、像倍率が部分的に異なる領域での光路差を小さくしている。これにより、凹面ミラー41から虚像までの距離を確保しつつ、像倍率の部分的な変化(像の歪み)の軽減と装置の容積の低減を可能とするとされている。
【0020】
一方で、凹面ミラー41と光路折り返しミラーの2枚のミラーを必要とすることで、ミラーの配置の自由度は制限され、2枚のミラーをある程度離間させて配置する必要が生じることから、装置の小型化の支障となっている。また、運転者5が視認する虚像において発生する収差の補正については、特許文献1においてもその必要性や具体的な手段等について一切記載も考慮もされていない。
【0021】
これに対し、本実施例のHUD装置1では、装置のさらなる小型化を実現するため、図1に示すように、虚像を形成するためのミラーを凹面ミラー41のみの1枚の構成とする。さらに、運転者5と映像表示装置30との間に、透過型の光学素子として、例えば、少なくとも一方の面が凹面(負屈折力を有する)の歪み補正レンズ43を配置する。これにより、HUD装置1の大型化や複雑化を抑制しつつ、運転者5が視認する虚像の歪みと収差を実用上問題のないレベルまで軽減して視認性を向上させることを可能とする。すなわち、歪み補正レンズ43によって凹面ミラー41への光線の出射方向を制御することで、凹面ミラー41の形状と合わせて歪曲収差の補正を行う。
【0022】
また、収差補正能力をさらに高めるために、歪み補正レンズ43を複数枚設けてもよい。もしくは、歪み補正レンズ43に代えて曲面ミラーを配置して、光路の折り返しと同時に凹面ミラー41への光線の入射位置を制御することで、歪曲収差を低減するようにしてもよい。このように、収差補正能力をさらに向上させるたに最適設計された光学素子を凹面ミラー41と映像表示装置30の間に設けても、本発明の技術的思想または範囲を逸脱するものではないことは言うまでもない。
【0023】
さらに、歪み補正レンズ43等からなる光学素子の光軸方向の厚さを変化させることで、本来の収差補正の他に、凹面ミラー41と映像表示装置30の光学的な距離を変えて、虚像の表示位置を遠方から近方まで連続的に変化させる構成とすることも可能である。
【0024】
一方、HUD装置1の画質を低下させる要因として、映像表示装置30から凹面ミラー41に向かって出射された映像光が、途中に配置された歪み補正レンズ43の表面で反射して映像表示装置30に戻り、再度反射して本来の映像光に重畳されてしまうことが知られている。このため、本実施例では、例えば、歪み補正レンズ43の表面に反射防止膜を成膜して反射を抑える。またさらに、歪み補正レンズ43における映像光の入射面と出射面の少なくともいずれか一方について、歪み補正レンズ面の形状を、映像表示装置30に戻る反射光がその一部分に極端に集中しないように設計することが好ましい。また、映像表示装置30において、上記のような歪み補正レンズ43からの反射光を吸収するための偏光板を配置することでも画質の低下を軽減することができる。
【0025】
<HUD装置の実装形態>
図2は、本発明の一実施の形態であるヘッドアップディスプレイ装置の実装形態の例について概要を示した図である。図2(a)は、HUD装置1の筐体50を中心とした外観の例を示した斜視図である。また、図2(b)は、図2(a)に示したHUD装置1を各部品に分解した状態を示した斜視図である。
【0026】
図2(b)に示すように、HUD装置1の光学部品保持外装ケース55は、光学部品保持部材としての機能も兼ねた部材であり、その内部に凹面ミラー41および歪み補正レンズ43を収納し、さらに外装蓋部51により上部が覆われる構成を有する。これらの光学部品保持外装ケース54および外装蓋部51の各部材は、図1に示したHUD装置1における筐体50を構成する。そして、光学部品保持外装ケース55の開口部には映像表示装置30が装着される。
【0027】
外装蓋部51は、映像光をウィンドシールド3に向かって出射するための開口部を有し、当該開口部は防眩板52(グレアトラップ)によって覆われている。
【0028】
光学部品保持外装ケース55は、図1に示したHUD装置1における凹面ミラー41および歪み補正レンズ43を保持する機能を兼ねた部材であり、詳細は後述するが、本実施例では、当該部材は光学部品を保持することから、高耐熱、高剛性、高寸法精度の特性を有する材料により形成する。
【0029】
<筐体または外装ケースと外装蓋部>
ここで、上述したHUD装置1では、映像表示装置30から出射された映像光について着目すると、当該光は光源から射出した後、歪み補正レンズ43を介して凹面ミラー41に向かい、当該凹面ミラー41で反射される。さらに、外装蓋部51に形成された開口部に取り付けられた防眩板52(グレアトラップ)を通って装置の外部へ、すなわち、ウィンドシールド3に向かって出射する。このとき、映像光は、図3にも示すように、特に、映像表示装置30の表示素子(例えば、LCDパネル)33から出射して凹面ミラー41に向かう光路を通過するが、歪み補正レンズ43の働きにより、その断面積を増大させ、または、拡大させながら、光路内を進む。その後も、凹面ミラー41上で反射されてその光路の断面を変化させながら、防眩板52(グレアトラップ)を通ってウィンドシールド3に向かう。なお、このような光路の途中に障害物が存在する場合には、HUD装置1により投射される映像の一部または全部が欠落してしまうことから、HUD装置の内部においては、かかる有効光線(たとえば、最大光量に対し50%以上など所定の光量以上の光線)が通過する光路(以後、有効光路領域とも言う)を確保することが重要となる。しかしながら、構成部品などを内部に収納し、かつ、この有効光路を確保するに十分な一般的な矩形の筐体を考えると、装置全体の外形寸法が不要に大きくなってしまい、容積の低減を実現することができない。
【0030】
そこで、本実施例のHUD装置1では、上記図2、さらには、以下の図4図6を参照しながら詳細に説明するように、上述した筐体50、特に、その光学部品保持外装ケース55を以下のように構成する。なお、この光学部品保持外装ケース55は、光学部品保持部材と外装ケースとを物理的・機能的に一体としたものである。すなわち、外装ケースとしての機能を有する光学部品保持外装ケース55に、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43をそれぞれ直接保持する構成としている。
【0031】
図4(a)〜(c)は、光源となる映像表示装置30の表示素子(LCDパネル)33から出射して歪み補正レンズ43によって拡大されて凹面ミラー41に投射される光線の光路(有効光路領域)を示している。なお、図4(a)は、その斜視図、図4(b)は側面図、そして、図4(c)は上面図である。また、図5は、上記の凹面ミラー41によって反射され、防眩板52(グレアトラップ)を通って筐体50の外部へ射出する光線の光路(有効光路領域)を示している。
【0032】
そこで、本実施例では、図4において破線で示すように、光学部品保持外装ケース55は、凹面ミラー41と共に有効光路領域の外部を覆うように形成する。より具体的には、光学部品保持外装ケース55は、歪み補正レンズ43から凹面ミラー41に至る有効光路領域の外部を覆うように、略扇形の形状を有する底面部55bと、当該底面部の両側端部から上方に向かって垂直に立ち上がる側面部55sとを含む形状を有する。そして、凹面ミラー41によって反射される光線の光路を妨げないように、凹面ミラー41によって反射された光線の光路の外部を覆うように、図5に破線で示した形状をも有する。すなわち、底面部55bに対して傾斜した(凹面ミラー41によって反射された光線領域の下面に沿った)中間底面部55mbを有し、さらに、この中間底面部55mbから垂直に立ち上がり、上部側面部55usと、外装蓋部51の側面部51sとが、凹面ミラー41によって反射された光線の光路の側面に沿う形状となっている。換言すれば、この上部側面部55usと外装蓋部51の側面部51sは同面となるように形成されている。さらに換言すれば、上述した筐体50を構成する外装蓋部51と光学部品保持外装ケース55は、図4および図5において破線で示した形状を組み合わせたような二段の形状となっている。なお、これら外装蓋部51と光学部品保持外装ケース55は、本例では、例えば、嵌合によって一体に組み立てられる。
【0033】
また、有効光路領域から上記底面部や側面部までの隙間は、有効光路領域から1mm以上でかつ15mm未満の範囲で設定することが好ましい。なお、この隙間は、光路全体で均一であることが好ましいが、しかしながら、一部の部位での隙間が他の部位での隙間とは異なって不均一であってもよい。すなわち、筐体50を構成する外装蓋部51と外装ケース55の底面部や側面部は、それらが投射される映像に影響を及ぼさない範囲で設定されることが重要である。
【0034】
図6(a)〜(c)は、HUD装置1の外装ケースを含む筐体全体を示しており、図6(a)は、その上面図、図6(b)は、その側面図、そして、図6(c)は、背面図であり、これらの図からも明らかなように、上述のように形成された底面部55b、側面部55s、中間底面部55mb、上部側面部55usからなる筐体50によれば、映像光の有効光線は、HUD装置1内において遮られることなく、ウィンドシールド3に所定の角度で入射することが可能となる。
【0035】
そして、後述する制御部等が実装されるメイン基板70や、凹面ミラー41の傾斜角度を変化させるためのモータ等からなるミラー駆動部42等の他の部品は、光学部品保持外装ケース55を含む筐体50の外周面に、取り付け/取り外しすることができるように、例えば、ネジ等の固定手段により着脱可能に取り付けられる。なお、本実施例では、凹面ミラー41が、光学部品保持部材53によりこの光学部品保持外装ケース55の内部に取り付けられると共に、この外装ケース55の一部には、映像表示装置30を装着するための開口部等が形成されている。これにより、当該外装ケース55の外周面に容易に取り付け/取り外しすることができるように、ネジ等の着脱機構により固定される。
【0036】
また、メイン基板70は光学部品保持外装ケース55の底壁の外周面に、さらに、モータ等により構成されるミラー駆動部も、外装ケース55の底の外周面の一部に、やはり、ネジ等の着脱機構により固定されている。なお、必要な各部が取り付けられたHUD装置1は、その後、車室内のダッシュボードの内部において、ウィンドシールド(フロントガラス)3に対して所定の角度となる位置に固定して取り付けられる。また、その他の必要な部品についても、光学部品保持外装ケース55や外装蓋部51を含む筐体50の外周面に取り付けてもよい。
【0037】
本実施例では、映像表示装置30はモジュール化され、上述した光学部品保持外装ケース55の外側に、ネジ等により一体的に取り付け/取り外しが可能なように構成されている。これにより、例えば、HUD装置1自体を取り外したり分解したりすることなく、映像表示装置30のみを交換できるように構成することも可能となり、壊れやすい部材である映像表示装置30の交換性を大きく向上させることができる。また、映像表示装置30を、HUD装置1の筐体50の外部に取り付ける構成とすることで、外部への放熱性を向上させ、熱による故障や劣化の低減という効果も得ることができる。
【0038】
また、上述した光学部品保持外装ケース55や外装蓋部51によれば、その内部に形成される有効光線の光路である有効光路領域の密閉性を向上することができる。これにより、従来の構造のように折り返しミラーや凹面ミラーなどの光学部品の表面に空気中の塵埃等が付着しにくくなり、高い光学性能を長期間維持することが可能となる。また、必要な各部を外装ケース54の外側に取り付ける構成にすることで、HUD装置1の全体の容積をより小型化することが可能となり、ダッシュボード内部への取り付け作業、さらには、故障した部品の交換などの作業も容易になる。
【0039】
加えて、例えば、以下に図21(b)に示すように、個別の光学部品保持部材53の両端部において凹面ミラー41と歪み補正レンズ43をそれぞれ保持する場合、光学部品保持部材53の側面から見た形状は、概ね凹形状(もしくはコの字型)となる。例えば、図21(b)に示すような光学部品保持部材53において側面を壁状とすると、光学部品保持部材53は凹面ミラー41と歪み補正レンズ43の保持だけではなく、これらを収納する外装ケースとしての機能も持つ状態、すなわち、本実施例1の光学部品保持外装ケース55となる。光学部品保持外装ケース55とすることで、HUD装置1をより小型化することが可能となる。
【0040】
さらに、本実施例では、上述したように、光路折り返しミラーを用いないダイレクト光学系の構成をとっている。したがって、例えば、光路折り返しミラーにコールドミラー(赤外線を透過して可視光のみ反射するミラー)を用いることで、筐体50の内部の温度上昇を抑制するというような従来技術で行われていた手法をとることができない。そこで、例えば、赤外線をカット・反射する断熱フィルム等の光学部材を、防眩板52の上(映像光の出射面側)や歪み補正レンズ43の前方(映像光の出射面側)または映像表示装置30(LCDパネル)の前方(映像光の出射面側)に設けるようにしてもよい。温度上昇を抑制する他の手段としては、例えば、入射面に垂直なS波を通し、入射面に平行なP波を通さない偏光板を用いることも可能である。偏光板を配置する位置は、歪み補正レンズ43の前方(映像光の出射面側)でもよい。また、歪み補正レンズ43の前に偏光板を配置することで、太陽から入射する光(太陽光)がレンズに反射して運転者の眼に戻ることを軽減できる。
【0041】
図7は、映像表示装置30の実装例について概要を示した図である。ここでは、モジュール化された映像表示装置30を各部品に分解した状態を斜視図により示している。映像表示装置30は、LCDパネル等の表示素子33が、フレキシブルケーブル34を介してメイン基板70から入力された映像信号に基づいて、バックライトからの光を変調することで映像を表示する。表示された映像は、図2における光学部品保持外装ケース55の開口部を通して虚像光学系(本実施例では、図2における歪み補正レンズ43および凹面ミラー41)に出力され、運転者5が視認可能な虚像が生成される。
【0042】
バックライトにおける光源素子には、例えば、固体光源として比較的安価で信頼性の高いLED(Light Emitting Diode)光源31aを用いる。LED光源31aは、高出力化するために面発光型とする。図7の例ではLED基板として実装している。この場合、例えば、後述するような技術的な工夫を用いて発散光の利用効率を向上させる。
【0043】
LEDの入力電力に対する発光効率は、発光色によっても異なるが、20〜30%程度であり、残りはほとんどが熱に変換される。このため、LED光源31aを取り付けるフレーム35には、熱伝導率の高い部材(例えば、アルミニウム等の金属部材)からなる放熱用のフィン(ヒートシンク31b)を設けて熱を外部に放散させる。これにより、LED光源31aの発光効率そのものを向上させる効果を得ることができる。特に、現在市場に出回っている赤色を発光色とするLEDは、ジャンクション温度が高くなると発光効率が大幅に低下し、同時に映像の色度も変化する。したがって、LED光源31aの温度低減を優先させるため、ヒートシンク31bにおける放熱フィンの面積を大きくして冷却効率を高めた構成とするのが望ましい。
【0044】
LED光源31aからの発散光を効率よく表示素子33に導くため、図7の例では、導光体32bを用いている。この場合、塵などの付着を防止するため、例えば、外装部材36a、36bによって導光体32bや表示素子33等の全体を覆い、映像表示装置30としてモジュール化するのが望ましい。
【0045】
また、図7の例では、LED光源31aからの発散光を取り込んで平行光とするため、コリメートレンズ等からなる複数のライトファネル32aを設けている。各ライトファネル32aにおいてLED光源31aからの発散光を取り込む開口部は、例えば、平面とした上でLED光源31aとの間に媒質を挿入して光学的に接続する、もしくは、凸面形状として集光作用を持たせる。これにより、発散光を可能な限り平行光として、ライトファネル32aの界面に入射する光の入射角を小さくする。その結果、ライトファネル32aを通過後、さらに発散角を小さくすることができるため、導光体32bで反射した後に表示素子33に向かう光源光の制御が容易となる。
【0046】
さらにLED光源31aからの発散光の利用効率を向上させるため、ライトファネル32aと導光体32bの接合部分においてPBS(Polarizing Beam Splitter)を用いて偏光変換を行い、所望の偏光方向に変換する。これにより、表示素子33への入射光の効率を向上させることができる。このように光源光の偏光方向を揃えた場合には、さらに導光体32bの素材として複屈折が少ない材料を用いるのが望ましい。これにより、偏波の方向が回転して表示素子33を通過する場合において、例えば、黒表示時に色付き等の問題が発生するのを抑制することができる。
【0047】
このように、発散角が低減されたLED光源31aからの光束は、導光体32bにより制御され、導光体32bの斜面(図7の例では外装部材36a側の面)に設けられた全反射面において反射する。そして、導光体32bにおいて当該全反射面に対向する面(出射面)と表示素子33との間に配置された拡散板32c(ディフューザー)により拡散された後、表示素子33(LCDパネル)に入射する。なお、図7の例では、導光体32bと表示素子33との間に拡散板32cを配置することでLED光源31aからの光束を発散させているが、このような構成に限られない。拡散板32cの配置に代えて、例えば、導光体32bの出射面に微細な凹凸形状を設けて拡散効果を持たせることでも同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、既述のように、上述した映像表示装置30は、光学部品保持外装ケース55や外装蓋部51を含む筺体50の外周部においてネジ等により一体的に取り付けられる構成となっていることから、LED光源31aの放熱用のフィンを構成するヒートシンク31bは、外装ケース55の外部の空気に容易に接触することができ、これにより熱を外部に効率よく放散させることが可能となる。また、ヒートシンク31bを筺体50の外部に配置することにより、筺体50の一部に冷却用空気の流通開口部を形成する必要がなく、そのため、内部の防塵性を向上すると共に、内部での結露を防止することにより、高い光学性能を長期間維持することが可能となる。
【0049】
図8は、導光体32bの実装形態の例について概要を示した図である。ここでは、導光体32bおよびライトファネル32aを含む部分についての断面形状を模式的に示している。ライトファネル32aにより発散角が低減された光束(図中の矢印)は、接合部32dを経由して導光体32bの入射面32b_1に入射する。このとき、入射面の断面形状の効果により、垂直方向(図8における上下方向)の発散角が制御され、導光体32b内を効率よく伝播する。
【0050】
入射面32b_1から入射した光源光は、対向面32b_2に設けられた全反射プリズムによって全反射して出射面32b_3に向かう。全反射プリズムは、入射面32b_1の近傍(図中の「B部」)と、出射面32b_3の近傍(図中の「A部」)でその形状(拡大図参照)がそれぞれ異なる。すなわち、それぞれの面に入射する光束の発散角に応じて階段状に分割されて形成されており、これにより対向面32b_2における全反射の角度を制御している。一方、出射面32b_3から出射して後段の表示素子33へ入射する光束について、出射面32b_3内での光量分布が均一となるよう、対向面32b_2における上記の分割の寸法を変数として、分割された光束の反射後の到達位置とエネルギー量を制御する。
【0051】
図9は、凹面ミラー41の傾斜角度を変化させるためのミラー駆動部42の実装例について概要を示した図である。ここでは、ミラー駆動部は、図9(a)にも示すように、ケース421内に、少なくとも、電動モータ422、ワームギア423、当該モータの出力軸とワームギアの間に組み合わせた複数の歯車424を備えている。このミラー駆動部42は、図9(b)にも示すように、筺体50の外周部、より具体的には、上述した光学部品保持外装ケース55の下端部において、そのワームギア423が、一部の切欠き部を介して、凹面ミラー41の下端部に形成されたワームホイル411と噛み合うように取り付けられる。
【0052】
上述したミラー駆動部42の構成によれば、図10にも示すように、電動モータ422の回転が、複数の歯車424を介して所望の駆動力に変換されてワームギア423に伝達され、さらに、凹面ミラーの下端部に形成されたワームホイル424により、凹面ミラー41を、回転軸を中心に回転しながら前後方向に移動して(図の矢印を参照)、凹面ミラー41を所望の傾斜角度に調整することができる。なお、この図では、複数の歯車424は、図示を容易にするため間隔をもって示されているが、実際には、これらは噛み合っていることは、当業者であれば当然であろう。
【0053】
図11は、LED光源31aと、その放熱用の部材であるフィンを構成するヒートシンク31bの実装例について概要を示した図である。ここで、図11(a)では、ヒートシンク31bを発熱部品であるLED光源31aの長辺に沿って一体に取り付けた構成を、他方、図11(b)では、ヒートシンク31bをLED光源31aの両側の短辺に取り付けた例を示している。このように、LED光源31aの放熱用のフィンの取り付け位置を適宜設定可能な構成とすることによれば、特に、本実施例のように、ヒートシンク31bの筺体50への取り付け位置を、適宜、装置全体の寸法(容積)を最小にするのに好適な配置する場所に設定することが可能となり、装置の小型化と共に、設計の自由度を向上することが可能となるという利点を奏する。
【0054】
なお、ヒートシンク31bと発熱部品であるLED光源31aとの間が離れる場合には、図12も示すように、熱の伝達部材である、所謂、ヒートパイプ31hをそれらの間に設けることが好ましい。これによれば、LED光源31aの熱がヒートシンク31bへ伝達されることから(図中の矢印を参照)、効率的な放熱を実現することが可能となる。
【0055】
<HUD装置の機能的構成>
図13は、本発明の実施例1のヘッドアップディスプレイ装置の全体の構成例について概要を示した機能ブロック図である。車両2に搭載されたHUD装置1は、例えば、車両情報取得部10、制御部20、映像表示装置30、凹面ミラー41、ミラー駆動部42、およびスピーカ60等の各部からなる。なお、図13の例では、車両2の形状を乗用車のように表示しているが、特にこれに限られず、車両一般に適宜適用することができる。
【0056】
車両情報取得部10は、車両2の各部に設置された後述するような各種のセンサ等の情報取得デバイスからなり、車両2で生じた各種イベントを検知したり、所定の間隔で走行状況に係る各種パラメータの値を検知・取得したりすることで車両情報4を取得して出力する。車両情報4には、図示するように、例えば、車両2の速度情報やギア情報、ハンドル操舵角情報、ランプ点灯情報、外光情報、距離情報、赤外線情報、エンジンON/OFF情報、カメラ映像情報(車内/車外)、加速度ジャイロ情報、GPS(Global Positioning System)情報、ナビゲーション情報、車車間通信情報、および路車間通信情報等が含まれ得る。
【0057】
制御部20は、HUD装置1の動作を制御する機能を有し、例えば、CPU(Central Processing Unit)とこれにより実行されるソフトウェアにより実装される。マイコンやFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実装されていてもよい。制御部20は、図1にも示したように、車両情報取得部10から取得した車両情報4等に基づいて、虚像として表示する映像を映像表示装置30を駆動して形成し、これを凹面ミラー41によって反射させることでウィンドシールド3に投射する。
【0058】
映像表示装置30は、上述したように、例えば、プロジェクタやLCDを含んで構成されるモジュール化されたデバイスであり、制御部20からの指示に基づいて虚像を表示するための映像を形成してこれを投射したり表示したりする。ミラー駆動部42は、制御部20からの指示に基づいて凹面ミラー41の角度を調整し、虚像の表示領域の位置を上下方向に調整する。スピーカ60は、HUD装置1に係る音声出力を行う。例えば、ナビゲーションシステムの音声案内や運転者5に警告等を通知する際の音声出力等を行うことができる。
【0059】
図14は、本実施例のヘッドアップディスプレイ装置における車両情報4の取得に係るハードウェア構成の例について概要を示した図である。ここでは主に車両情報取得部10および制御部20の一部のハードウェア構成について示す。車両情報4の取得は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)21の制御の下、ECU21に接続された各種のセンサ等の情報取得デバイスにより行われる。
【0060】
これらの情報取得デバイスとして、例えば、車速センサ101、シフトポジションセンサ102、ハンドル操舵角センサ103、ヘッドライトセンサ104、照度センサ105、色度センサ106、測距センサ107、赤外線センサ108、エンジン始動センサ109、加速度センサ110、ジャイロセンサ111、温度センサ112、路車間通信用無線受信機113、車車間通信用無線受信機114、カメラ(車内)115、カメラ(車外)116、GPS受信機117、およびVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム、登録商標(以下同様))受信機118等の各デバイスを有する。必ずしもこれら全てのデバイスを備えている必要はなく、また、他の種類のデバイスを備えていてもよい。備えているデバイスによって取得できる車両情報4を適宜用いることができる。
【0061】
車速センサ101は、車両2の速度情報を取得する。シフトポジションセンサ102は、車両2の現在のギア情報を取得する。ハンドル操舵角センサ103は、ハンドル操舵角情報を取得する。ヘッドライトセンサ104は、ヘッドライトのON/OFFに係るランプ点灯情報を取得する。照度センサ105および色度センサ106は、外光情報を取得する。測距センサ107は、車両2と外部の物体との間の距離情報を取得する。赤外線センサ108は、車両2の近距離における物体の有無や距離等に係る赤外線情報を取得する。エンジン始動センサ109は、エンジンON/OFF情報を検知する。
【0062】
加速度センサ110およびジャイロセンサ111は、車両2の姿勢や挙動の情報として、加速度や角速度からなる加速度ジャイロ情報を取得する。温度センサ112は車内外の温度情報を取得する。路車間通信用無線受信機113および車車間通信用無線受信機114は、それぞれ、車両2と道路や標識、信号等との間の路車間通信により受信した路車間通信情報、および車両2と周辺の他の車両との間の車車間通信により受信した車車間通信情報を取得する。
【0063】
カメラ(車内)115およびカメラ(車外)116は、それぞれ、車内および車外の状況の動画像を撮影してカメラ映像情報(車内/車外)を取得する。カメラ(車内)115では、例えば、運転者5の姿勢や、眼の位置、動き等を撮影する。得られた動画像を解析することにより、例えば、運転者5の疲労状況や視線の位置等を把握することが可能である。また、カメラ(車外)116では、車両2の前方や後方等の周囲の状況を撮影する。得られた動画像を解析することにより、例えば、周辺の他の車両や人等の移動物の有無、建物や地形、路面状況(雨や積雪、凍結、凹凸等)等を把握することが可能である。
【0064】
GPS受信機117およびVICS受信機118は、それぞれ、GPS信号を受信して得られるGPS情報およびVICS信号を受信して得られるVICS情報を取得する。これらの情報を取得して利用するカーナビゲーションシステムの一部として実装されていてもよい。
【0065】
図15は、本実施例のヘッドアップディスプレイ装置の構成例について詳細を示した機能ブロック図である。図15の例では、映像表示装置30がプロジェクタである場合を示しており、映像表示装置30は、例えば、光源31、照明光学系32、および表示素子33等の各部を有する。
【0066】
光源31は、投射用の照明光を発生してバックライトを構成する部材であり、例えば、高圧水銀ランプやキセノンランプ、LED光源、レーザー光源等を用いることができる。製品寿命が長い固体光源を採用するのが望ましい。例えば、周囲の温度変化に対する光出力の変化が少ないLED光源に対して、光の発散角を低減する光学手段を設けたPBSを用いて偏光変換を行うのが望ましい。本実施例では、図5に示したように、LED光源31aおよびヒートシンク31bにより光源31を構成している。光源31は、後述する表示素子33に対する光の入射方向が、凹面ミラー41の入射瞳に効率よく入射するように配置もしくは制御される。
【0067】
照明光学系32は、光源31で発生した照明光を集光し、より均一化して表示素子33に照射する光学系である。本実施例では、図7に示したように、ライトファネル32a、導光体32b、および拡散板32cにより照明光学系32を構成している。
【0068】
表示素子33は、投射する映像を生成する素子であり、例えば、透過型液晶パネル、反射型液晶パネル、DMD(Digital Micromirror Device)(登録商標)パネル等を用いることができる。表示素子33の光入射面(すなわち、光源31および照明光学系32側)と光出射面(すなわち、図1における歪み補正レンズ43および凹面ミラー41側)には、それぞれ偏光板を配置して映像光のコントラスト比を高めるのが望ましい。光入射面に設ける偏光板には、偏光度が高いヨウ素系のものを用いることで高いコントラスト比を得ることができる。一方、光出射面に設ける偏光板には、染料系のものを用いることで外光が入射した場合や環境温度が高い場合でも高い信頼性を得ることができる。
【0069】
表示素子33としてLCDパネルを用いる場合、特に、運転者5が偏光サングラスを着用している場合には、特定の偏波が遮蔽されて映像が見えなくなるという不具合が発生し得る。これを防ぐために、LCDパネルの光出射面に配置した偏光板のさらに前方(すなわち、歪み補正レンズ43および凹面ミラー41側)にλ/4板を配置して、特定の偏光方向に揃った映像光を円偏光に変換するのが望ましい。
【0070】
制御部20は、より詳細には、ECU21、音声出力部22、不揮発性メモリ23、メモリ24、光源調整部25、歪み補正部26、表示素子駆動部27、およびミラー調整部28等の各部を有する。
【0071】
ECU21は、図15に示したように、車両情報取得部10を介して車両情報4を取得するとともに、取得した情報を必要に応じて不揮発性メモリ23やメモリ24に記録、格納したり読み出したりする。不揮発性メモリ23には、各種制御のための設定値やパラメータ等の設定情報が格納されていてもよい。また、ECU21は、専用のプログラムを実行させる等により、HUD装置1として表示する虚像に係る映像データを生成する。音声出力部22は、必要に応じてスピーカ60を介して音声情報を出力する。光源調整部25は、映像表示装置30の光源31の発光量を調整する。光源31が複数ある場合にはそれぞれ個別に制御するようにしてもよい。
【0072】
歪み補正部26は、ECU21が生成した映像について、映像表示装置30によって車両2のウィンドシールド3に投射した場合に生じる歪みを画像処理により補正する。この歪みには、例えば、ウィンドシールド3の曲率によって生じる映像の歪みや、映像表示装置30のモジュールを取り付けた際の微小な位置ズレに伴って生じる歪み等が含まれ得る。表示素子駆動部27は、歪み補正部26による補正後の映像データに応じた駆動信号を表示素子33に対して送り、投射する映像を生成させる。ミラー調整部28は、虚像の表示領域自体の位置を調整する必要がある場合に、ミラー駆動部42を介して凹面ミラー41の角度を変更し、虚像の表示領域を上下に移動させる。
【0073】
<虚像光学系の構成>
図16は、HUD装置1における虚像を表示する光学系の構成例と装置の小型化について概要を示した図である。図16(a)は、HUD装置1における虚像光学系の基本構成の概要を示した図であり、HUD装置1の垂直断面の形状を模式的に示している。ここでは、説明の簡略化のために、収差および歪曲収差補正用の歪み補正レンズ43の図示は省略している。また、凹面ミラー41は簡易的に平面ミラーとして表示している。
【0074】
そして、図16の例では、映像表示装置30の表示素子33としてLCDパネルを用い、さらにバックライトである光源31と、凹面ミラー41を配置した構成を基本構成として、これらが筐体50に収納されている状態を示している。基本構成の各要素は、表示素子33に表示された映像が凹面ミラー41によって反射されて虚像として視認されるような位置に配置されている。また、表示素子33の画面上端、中央、および下端の映像から発生した映像光を、それぞれ映像光R1、R2、およびR3として点線の矢印で示している。ここで、図示するように、各映像光がそれぞれ凹面ミラー41で反射した際に、表示素子33に干渉して映像光が遮られないように各要素を配置することが設計上の制約となる。
【0075】
図16(a)〜(c)は、上記の設計制約を考慮した上で、凹面ミラー41と表示素子33のそれぞれの中央の水平方向の距離Zをパラメータとして変化させた状態をそれぞれ示している。図16(a)から図16(c)に向かって、図示するように距離ZがZ1からZ3へと徐々に小さくなる構成を示しており、これに伴って凹面ミラー41の水平面からの角度もα1からα3へと徐々に大きくなっている。同様に、凹面ミラー41の垂直方向の寸法も徐々に大きくなっている。
【0076】
距離Zのパラメータを変化させると、HUD装置1(より具体的には筐体50)の高さと奥行きが変化し、これに伴って容積も変化する。すなわち、距離Zを小さくすると、図16(c)に示すように、HUD装置1の高さがやや高くなる一方で、奥行きを大きく低減することができる。結果として、上述した筺体50を構成する外装ケース54や外装蓋部51の構成による容積の低減と共に、距離Zが小さくなるように構成することで、HUD装置1(筐体50)の容積をより小さくして小型化することができる。
【0077】
一方、例えば、図16(c)に示すように距離Zを小さくする(距離Z3)と、表示素子33の上端から凹面ミラー41の上端までの距離(映像光R1に対応)と、表示素子33の下端から凹面ミラー41の下端までの距離(映像光R3に対応)との差分は大きくなる。すなわち、距離Zを小さくすると、HUD装置1の容積は小さくすることができるが、凹面ミラー41において発生する虚像の歪みや収差は大きくなってしまう。これに対して、少なくとも、表示素子33等の配置位置を、映像光(特に映像光R3)に干渉しない範囲で図16(c)に示した矢印図形の方向に移動させ、表示素子33と凹面ミラー41との距離が可能な限り均一になるように配置するのが望ましい。加えて、光源31と表示素子33は、凹面ミラー41の高さ寸法の内部に収まるように配置することで、筺体50の高さ方向の寸法を不要に増加させることなく、装置の小型化に好適であろう。
【0078】
さらに本実施例では、上述したように、表示素子33と凹面ミラー41との間に、虚像の歪みと虚像で発生する収差を補正するための歪み補正レンズ43を配置することで歪みと収差の補正を行う。
【0079】
図17は、歪み補正レンズ43による歪みおよび収差の補正の例について概要を示した図である。図示するように、凹面ミラー41の光軸上の点Oに対して、焦点F(焦点距離f)の内側に表示素子33(物点)を配置することで、凹面ミラー41による虚像(図中では矢印図形で表記)を得ることができる。なお、図中では説明の便宜上、凹面ミラー41を同じ正の屈折力を持つ凸レンズとみなし、物点と凸レンズ(図中では説明の便宜上、凹面ミラー41として表記)および発生する虚像の関係を示している。
【0080】
本実施例では、上述したように、凹面ミラー41で発生する歪みと収差を低減するために歪み補正レンズ43を配置する。本実施例では、この光学素子は透過型の光学レンズとするが、レンズに限らず凹面ミラーであってもよい。歪み補正レンズ43は、
(1)表示素子33からの映像光がテレセントリックな光束として歪み補正レンズ43の反射面へ入射する場合は、歪み補正レンズ43(光学レンズもしくは凹面ミラー)の屈折力はほぼゼロとなる
(2)表示素子33からの映像光が発散して歪み補正レンズ43に入射する場合には、歪み補正レンズ43は正の屈折力を持つ
(3)表示素子33からの映像光が集光して歪み補正レンズ43に入射する場合には、歪み補正レンズ43は負の屈折力を持つ
ようにして、凹面ミラー41に入射する光束の方向(角度と位置)を制御する。これにより、凹面ミラー41で発生する虚像の歪曲収差を補正する。さらに、歪み補正レンズ43が透過型の光学レンズにより構成されている場合は、光入射面(表示素子33側)と、光出射面(凹面ミラー41側)の相互作用により、虚像に発生する結像性能に関する収差を補正する。
【0081】
このとき、表示素子33から凹面ミラー41までの距離aと、凹面ミラー41から虚像までの距離bは、上述したように、ウィンドシールド3の傾斜や曲率により、虚像の上端部と下端部とで異なることになる。これにより、運転者5が視認する虚像の像倍率は、上端部と下端部とで異なるものとなる。
【0082】
これに対し、本実施例では、表示素子33を凹面ミラー41の光軸に対して図17に示すように傾ける(直行していない、すなわち、レンズにより光軸が持ち上げられる)ことで、虚像上端部の像倍率M’=b’/a’と、虚像下端部の像倍率M=b/aとを略一致させる。これにより、ウィンドシールド3の傾斜等による歪曲収差を低減させる。
【0083】
そして、本実施例ではさらに、歪み補正レンズ43の垂直方向の断面形状の平均曲率半径と、水平方向の断面形状の平均曲率半径とを異なる値とする。これにより、ウィンドシールド3の垂直方向の曲率半径と水平方向の曲率半径との相違により生じる光路差によって発生する歪曲収差と、虚像の結像性能を低下させる収差を補正する。ウィンドシールド3に直接映像光を反射させて虚像を得るHUD装置1においては、ウィンドシールド3の垂直方向の曲率半径と水平方向の曲率半径との相違により生じる光路差によって発生する収差の補正が、虚像の結像性能確保において最も重要となる。
【0084】
具体的には、歪み補正レンズ43の形状として自由曲面形状を用いることで、上述したようなウィンドシールド3の曲率半径の違いによる虚像の結像性能低下を低減させる。従来の光学設計では、光軸からの距離rの関数としてレンズ面やミラー面の形状を定義する非球面形状が用いられてきた。非球面形状は、以下の式のように表される。
【0085】
【数1】
【0086】
これに対し、本実施例では、光軸からの絶対座標(x,y)の関数として面の形状を定義することが可能な自由曲面形状を用いる。自由曲面形状は、以下の式のように表される。
【0087】
【数2】
【0088】
このように、歪み補正レンズ43を用い、その断面形状や配置位置を制御することで、凹面ミラー41で発生する虚像の歪みと収差を補正することができる。しかし、そのためには、凹面ミラー41および歪み補正レンズ43という光学部材について、高い位置決め精度が確保されていることが前提となる。
【0089】
この点、例えば、図2(b)に示したHUD装置1の構成において、筐体50を構成する外装蓋部51や光学部品保持外装ケース55等の各部材を、耐熱性や剛性、寸法精度が高くない材料を用いて形成した場合には問題が生じ得る。例えば、HUD装置1の製造時や車両2への取り付け時の加工精度や作業精度、使用中の熱による膨張や変形等の影響により、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43との位置関係に設計からのズレが生じ得る。その結果、歪み補正レンズ43を用いることによる歪みや収差の補正の精度も低下することになる。
【0090】
そこで本実施例では、図2(b)に示したHUD装置1の構成において、少なくとも、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43を保持する光学部品保持外装ケース55を、高耐熱、高剛性、高寸法精度という特性を有する材料により形成する。具体的には、例えば、BMC(Bulk Molding Compound)等の不飽和ポリエステル樹脂や、ガラスフィラー入りのポリカーボネート等を用いる。特に、BMCは、熱硬化性を有し、金型による複雑な成形も可能であることから、本実施例ではBMCを用いるものとする。
【0091】
上記のような材料により形成された光学部品保持外装ケース55によって凹面ミラー41と歪み補正レンズ43を保持することにより、車両2における高温や振動等の過酷な使用環境下においても、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43との間の位置関係を高精度で維持することができる。なお、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43との相対的な位置関係は、3次元的に複雑なねじれの関係にあるため、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43のみで一体として構成して保持することは困難である。したがって、本実施例では、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43とを一緒に光学部品保持外装ケース55により保持する構成とする。
【0092】
そして、この光学部品保持外装ケース55は、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43との間の位置関係が上記のような3次元的なねじれの関係にあっても、これを高い精度で実現および維持することを可能とする。すなわち、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43を、高耐熱、高剛性、高寸法精度という特性を有する材料で形成された単一の介在部品である光学保持部材53で保持することで、相対的な位置関係を高精度で維持することを実現する。そして、本実施例では、このような特性を有する光学部品保持外装ケース55を、樹脂金型成形で単一の部品として成形することが可能となるように、その形状についても最適化がされている。
【0093】
また、本実施例では、上述したように、映像表示装置30をモジュール化して着脱が容易となるように構成している。これにより、映像表示装置30の装着の際に微小な位置ズレが生じる可能性があるが、このズレは、例えば、図15に示した制御部20の歪み補正部26における画像処理等により補正・調整を行うことが可能なものである。
【0094】
<HUD装置の処理内容>
図18は、本実施例のヘッドアップディスプレイ装置の初期動作の例について概要を示したフローチャートである。停止中の車両2においてイグニッションスイッチがONされることでHUD装置1の電源がONされると(S01)、HUD装置1は、制御部20からの指示に基づいて、まず、車両情報取得部10により車両情報を取得する(S02)。そして、制御部20は、車両情報4のうち、照度センサ105や色度センサ106等により取得した外光情報に基づいて好適な明るさレベルを算出し(S03)、光源調整部25により光源31の発光量を制御して、算出した明るさレベルとなるように設定する(S04)。例えば、外光が明るい場合には明るさレベルを高くし、暗い場合には明るさレベルを低く設定する。
【0095】
その後、ECU21により、虚像として表示する映像(例えば、初期画像)を決定、生成し(S05)、生成した映像に対して歪み補正部26により歪みを補正する処理を実施した後(S06)、表示素子駆動部27により表示素子33を駆動・制御して、投射する映像を形成させる(S07)。これにより、映像がウィンドシールド3に投射され、運転者5は虚像を視認することができるようになる。
【0096】
HUD装置1全体で、上述した一連の初期動作も含む各部の起動・始動が完了すると、HUD−ON信号が出力されるが、制御部20ではこの信号を受けたか否かを判定する(S08)。受けていなければ、さらにHUD−ON信号を一定時間待ち受け(S09)、ステップS08でHUD−ON信号を受けたと判定されるまで、HUD−ON信号の待ち受け処理(S09)を繰り返す。ステップS08でHUD−ON信号を受けたと判定された場合は、後述するHUD装置1の通常動作を開始し(S10)、一連の初期動作を終了する。
【0097】
図19は、本実施例のヘッドアップディスプレイ装置の通常動作の例について概要を示したフローチャートである。通常動作においても、基本的な処理の流れは上述の図18に示した初期動作と概ね同様である。まず、HUD装置1は、制御部20からの指示に基づいて、車両情報取得部10により車両情報を取得する(S21)。そして、制御部20は、車両情報4のうち、照度センサ105や色度センサ106等により取得した外光情報に基づいて明るさレベル調整処理を行う(S22)。
【0098】
図20は、本実施例のヘッドアップディスプレイ装置の明るさレベル調整処理の例について概要を示したフローチャートである。明るさレベル調整処理を開始すると、まず、取得した外光情報に基づいて好適な明るさレベルを算出する(S221)。そして、現状設定されている明るさレベルと比較することにより、明るさレベルの変更の要否を判定する(S222)。変更が不要である場合にはそのまま明るさレベル調整処理を終了する。一方、変更が必要である場合には、光源調整部25により光源31の発光量を制御して、変更後の明るさレベルとなるように設定し(S223)、明るさレベル調整処理を終了する。なお、ステップS222において、ステップS221で算出した好適な明るさレベルと、現状設定されている明るさレベルとの間に差分がある場合でも、差分が所定の閾値以上である場合にのみ明るさレベルの変更が必要であると判定するようにしてもよい。
【0099】
図19に戻り、その後、ECU21により、ステップS21で取得した最新の車両情報4に基づいて、虚像として表示する映像を現状のものから必要に応じて変更し、変更後の映像を決定、生成する(S23)。なお、車両情報4に基づいて表示内容を変更するパターンは、取得した車両情報4の内容やそれらの組み合わせ等に応じて多数のものがあり得る。例えば、速度情報が変化したことにより、常時表示されている速度表示の数値を変更する場合や、ナビゲーション情報に基づいて案内の矢印図形を表示/消去したり、矢印の形状や表示位置等を変更したりする場合等、様々なパターンがあり得る。
【0100】
その後、本実施例では、車両2の走行状況に応じて視認性や表示内容の適切性等を維持するための調整・補正処理を行う。まず、虚像の表示領域自体の位置を調整する必要がある場合に、ミラー駆動部42を介して凹面ミラー41の角度を変更し、虚像の表示領域を上下に移動させるミラー調整処理を行う(S24)。その後さらに、車両2の振動に対して表示領域内における映像の表示位置を補正する振動補正処理を行う(S25)。その後、調整・補正した映像に対して歪み補正部26により歪みを補正する処理を実施した後(S26)、表示素子駆動部27により表示素子33を駆動・制御して投射する映像を形成させる(S27)。
【0101】
上述した一連の通常動作を実行している際に、車両2の停止等に伴って電源OFF等がなされると、HUD装置1に対してHUD−OFF信号が出力されるが、制御部20ではこの信号を受けたか否かを判定する(S28)。HUD−OFF信号を受けていなければ、ステップS21に戻って、HUD−OFF信号を受けるまで一連の通常動作を繰り返す。HUD−OFF信号を受けたと判定された場合は、一連の通常動作を終了する。
【0102】
以上に説明したように、本発明の実施例1のHUD装置1によれば、虚像光学系において光路折り返しミラーを用いずに凹面ミラー41のみのダイレクト光学系とする。そして、凹面ミラー41で発生する虚像の歪みと収差を補正するため、凹面ミラー41と表示素子33との間に歪み補正レンズ43を配置する。さらには、映像光の有効光路領域の最外周を形成する面に沿って形成した外装ケース54や外装蓋部51を含めたHUD装置1の筺体50として、その全体の容積の縮小を図る。このような構成をとることにより、HUD装置1のさらなる小型化を可能とする。
【0103】
そして、本実施例ではさらに、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43を、高耐熱、高剛性、高寸法精度の材料により形成された光学部品保持外装ケース55によって保持する。これにより、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43との間の位置関係を高精度に維持することができる。また、光源31や照明光学系32、表示素子33(LCDパネル等)を映像表示装置30としてモジュール化し、筺体50の外周の一部に着脱可能な構成とする。これにより、故障等しやすい映像表示装置30の交換性能を向上させるとともに、放熱性も向上させることができる。
【0104】
(実施例2)
上述した実施例1では、図2(b)に示すように、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43を光学部品保持外装ケース55によって保持し、これらを、当該外装ケース54および外装蓋部51からなる筺体50の内部に収納する構成をとっている。このとき、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43の位置関係を高精度に維持するため、少なくとも光学部品保外装ケース55については、BMC等の高耐熱、高剛性、高寸法精度の材料によって形成することは上述したとおりである。
【0105】
ところで、実施例2のHUD装置1では、外装ケース54と共に、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43の光学部品を保持する部材として、上記外装ケースとは異なる個別の部材に、すなわち、光学部品保持部材53を備えている。
【0106】
図21は、実施例2のヘッドアップディスプレイ装置概要を示した図である。ここでは、上述の実施例1に示した構成と同様のHUD装置1において、外装ケース54とは異なる光学部品保持部材53に対して、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43をそれぞれ直接保持する構成としている。そして、光学部品保持部材53は、図2(b)における光学部品保持外装ケース55と同様に、BMC等の高耐熱、高剛性、高寸法精度という特性を有する材料によって形成する。
【0107】
これにより、凹面ミラー41と歪み補正レンズ43の位置関係を高精度に維持する等、実施例1のHUD装置1の構成により得られる効果と同様の効果を奏することができる。
【0108】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、透明なガラス板等に画像を投影するヘッドアップディスプレイ装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1…HUD装置、2…車両、3…ウィンドシールド、4…車両情報、5…運転者、
10…車両情報取得部、
20…制御部、21…ECU、22…音声出力部、23…不揮発性メモリ、24…メモリ、25…光源調整部、26…歪み補正部、27…表示素子駆動部、28…ミラー調整部、
30…映像表示装置、31…光源、31a…LED光源、31b…ヒートシンク、32…照明光学系、32a…ライトファネル、32b…導光体、32b_1…入射面、33…表示素子、33b_2…対向面、32b_3…出射面、32c…拡散板、32d…接合部、33…表示素子、34…フレキシブルケーブル、35…フレーム、36a、36b…外装部材、
41…凹面ミラー、42…ミラー駆動部、43…歪み補正レンズ、
50…筐体、51…外装蓋部、51s…側面部、52…防眩板、53…光学部品保持部材、54…外装ケース、55…光学部品保持外装ケース、55b…底面部、55s…側面部、55mb…中間底面部、55us…上部側面部、
60…スピーカ、
70…メイン基板、
101…車速センサ、102…シフトポジションセンサ、103…ハンドル操舵角センサ、104…ヘッドライトセンサ、105…照度センサ、106…色度センサ、107…測距センサ、108…赤外線センサ、109…エンジン始動センサ、110…加速度センサ、111…ジャイロセンサ、112…温度センサ、113…路車間通信用無線受信機、114…車車間通信用無線受信機、115…カメラ(車内)、116…カメラ(車外)、117…GPS受信機、118…VICS受信機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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