特許第6985522号(P6985522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985522塗色評価画像の生成方法、生成プログラムおよび塗色評価画像生成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985522
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】塗色評価画像の生成方法、生成プログラムおよび塗色評価画像生成装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/46 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   G01J3/46 Z
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-541037(P2020-541037)
(86)(22)【出願日】2019年7月9日
(86)【国際出願番号】JP2019027102
(87)【国際公開番号】WO2020049860
(87)【国際公開日】20200312
【審査請求日】2020年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2018-165312(P2018-165312)
(32)【優先日】2018年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】増田 豊
(72)【発明者】
【氏名】小野 郁美
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−157771(JP,A)
【文献】 特開平10−10045(JP,A)
【文献】 特開2000−216977(JP,A)
【文献】 特開2016−161297(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0047127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 − G01J 3/52
G01N 21/55 − G01N 21/57
G06T 1/00
G06T 5/40
H04N 1/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装面を表示する塗装面画像から塗色評価画像を生成する方法であって、
複数の受光角度において測定したメタリック塗色の分光反射率から、観察角度範囲における所定角度ごとの前記メタリック塗色の分光反射率を算出する分光反射率算出工程と、
前記分光反射率に基づいて、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの測色値を算出する測色値算出工程と、
前記塗装面画像の濃淡レベルごとの画素数を計測し、前記濃淡レベルごとの前記画素数の比率を求めるヒストグラム生成工程と、
前記塗装面画像の前記濃淡レベルごとに、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの観察角度を対応付けるマッピング工程と、
前記観察角度範囲における前記所定角度ごとに算出した前記測色値を、前記観察角度の大小の順序で、かつ、前記観察角度に対応付けられた前記濃淡レベルごとの前記画素数の前記比率に応じた分量で、配色した前記塗色評価画像を生成する塗色評価画像生成工程と、を備えた
塗色評価画像の生成方法。
【請求項2】
前記マッピング工程は、
最も高い前記濃淡レベルが、前記観察角度範囲において最も小さい角度に対応付けられ、
最も低い前記濃淡レベルが、前記観察角度範囲において最も大きい角度に対応付けられる
請求項1に記載の塗色評価画像の生成方法。
【請求項3】
前記塗色評価画像生成工程は、二次元の前記塗色評価画像を生成し、
前記塗色評価画像は、前記測色値が、前記観察角度範囲の角度の大小の順序で、ラスタスキャン順に配置されている、
請求項1に記載の塗色評価画像の生成方法。
【請求項4】
コンピュータに塗装面を表示する塗装面画像から塗色評価画像を生成させるプログラムであって、
複数の受光角度において測定したメタリック塗色の分光反射率から、観察角度範囲における所定角度ごとの前記メタリック塗色の分光反射率を算出させる分光反射率算出工程と、
前記分光反射率に基づいて、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの測色値を算出する測色値算出工程と、
前記塗装面画像の濃淡レベルごとの画素数を計測し、前記濃淡レベルごとの前記画素数の比率を求めるヒストグラム生成工程と、
前記塗装面画像の前記濃淡レベルごとに、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの観察角度を対応付けるマッピング工程と、
前記観察角度範囲における前記所定角度ごとに算出した前記測色値を、前記観察角度の大小の順序で、かつ、前記観察角度に対応付けられた前記濃淡レベルごとの前記画素数の前記比率に応じた分量で、配色した前記塗色評価画像を生成する塗色評価画像生成工程と、を実行させる
塗色評価画像の生成プログラム。
【請求項5】
前記マッピング工程は、
最も高い前記濃淡レベルが、前記観察角度範囲において最も小さい角度に対応付けられ、
最も低い前記濃淡レベルが、前記観察角度範囲において最も大きい角度に対応付けられる、
請求項4に記載の塗色評価画像の生成プログラム。
【請求項6】
前記塗色評価画像生成工程は、二次元の前記塗色評価画像を生成し、
前記塗色評価画像は、前記測色値が、前記観察角度範囲の角度の大小の順序で、ラスタスキャン順に配置されている、
請求項4に記載の塗色評価画像の生成プログラム。
【請求項7】
塗装面を表示する塗装面画像から塗色評価画像を生成する装置であって、
複数の受光角度において測定したメタリック塗色の分光反射率から、観察角度範囲における所定角度ごとの前記メタリック塗色の分光反射率を算出する分光反射率算出部と、
前記分光反射率に基づいて、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの測色値を算出する測色値算出部と、
前記塗装面画像の濃淡レベルごとの画素数を計測し、前記濃淡レベルごとの前記画素数の比率を求めるヒストグラム生成部と、
前記塗装面画像の前記濃淡レベルごとに、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの観察角度を対応付けるマッピング部と、
前記観察角度範囲における前記所定角度ごとに算出した前記測色値を、前記観察角度の大小の順序で、かつ、前記観察角度に対応付けられた前記濃淡レベルごとの前記画素数の前記比率に応じた分量で、配色した前記塗色評価画像を生成する塗色評価画像生成部と、を備えた
塗色評価画像生成装置。
【請求項8】
前記マッピング部は、
最も高い前記濃淡レベルを、前記観察角度範囲において最も小さい角度に対応付け、
最も低い前記濃淡レベルを、前記観察角度範囲において最も大きい角度に対応付ける、
請求項7に記載の塗色評価画像生成装置。
【請求項9】
前記塗色評価画像生成部は、二次元の前記塗色評価画像を生成し、
前記塗色評価画像を、前記測色値が、前記観察角度範囲の角度の大小の順序で、ラスタスキャン順に配置する、
請求項7に記載の塗色評価画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗色評価画像の生成方法および生成プログラムに関するものである。本願は、2018年9月4日に、日本国に出願された特願2018−165312号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の工業製品に塗装する塗料の塗色、特に観察角度によって色の見え方が変化するメタリック塗色は、実際の工業製品に塗装する前に行う塗色評価が難しい。
【0003】
特許文献1に記載の塗色評価パネルの主面と副面とは異なる曲率を有する。そのため、塗色評価パネルにメタリック塗色を塗装することで、メタリック塗色のハイライトおよびシェードを含む塗色評価をより的確に行うことができる。
【0004】
工業製品の三次元CADの形状データがあれば、メタリック塗色が塗装された工業製品をコンピュータシミュレーションにより可視化することで塗色評価を行うことができる。しかしながら、工業製品の企画段階において工業製品の意匠評価を行う際など、三次元CADの形状データを入手できない場合が多い。
【0005】
一方、観察角度によって見え方が変化するメタリック塗色については、メタリック塗色が適用されている平面のパネルに対して、特定の角度から光を照射して、反射した光を複数の角度で受光して得られた分光反射率から、さまざまな受光角度における分光反射率を計算できることが知られている。
【0006】
特許文献2に記載のメタリック塗膜の光学的性質を決定する方法は、メタリック塗色のハイライトからシェードまでの幅広い角度の任意の分光反射率を予測することができる。
【0007】
特許文献3に記載のメタリック塗色の決定装置は、特許文献2の記載の上記方法を用いて求めた分光反射率から、デジタルパレットとして使用できるコンピュータシュミレーション画像であるColor Simulation画像(以降、「CS画像」という)を作成することができる。CS画像は、ハイライトからシェードまでの幅広い角度から観察したメタリック塗色のコンピュータシミュレーション画像を含んでいる。CS画像を用いれば、例えばデザイナーは、工業製品の企画段階において、観察角度に応じたメタリック塗色の塗色評価を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特許第6068238号公報
【特許文献2】日本国特許第3671088号公報
【特許文献3】日本国特許第4790164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、実際の工業製品の塗装面は製品ごとに三次元形状が異なっており、塗装面における陰影の変化は工業製品ごとに異なる。CS画像は塗装面における陰影の変化を考慮したものではないため、CS画像からは実際の工業製品の塗装面にメタリック塗色を塗装した場合の全体の印象を予測することは難しい。
【0010】
上記事情を踏まえ、本発明は、工業製品の塗装面にメタリック塗色を塗装した場合の全体の印象を予測することを容易とする塗色評価画像の生成方法および生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る塗色評価画像の生成方法は、工業製品やその模型等に適用された塗装面を表示する塗装面画像から塗色評価画像を生成する方法であって、複数の受光角度において測定したメタリック塗色の分光反射率から、観察角度範囲における所定角度ごとの前記メタリック塗色の分光反射率を算出する分光反射率算出工程と、前記分光反射率に基づいて、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの測色値を算出する測色値算出工程と、前記塗装面画像の濃淡レベルごとの画素数を計測し、前記濃淡レベルごとの前記画素数の比率を求めるヒストグラム生成工程と、前記塗装面画像の前記濃淡レベルごとに、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの観察角度を対応付けるマッピング工程と、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとに算出した前記測色値を、前記観察角度の大小の順序で、かつ、前記観察角度に対応付けられた前記濃淡レベルごとの前記画素数の前記比率に応じた分量で、配色した前記塗色評価画像を生成する塗色評価画像生成工程と、を備える。
【0012】
本発明の第二の態様によれば、第一の態様に係る塗色評価画像の生成方法では、前記マッピング工程において、最も高い前記濃淡レベルが、前記観察角度範囲において最も小さい角度に対応付けられ、最も低い前記濃淡レベルが、前記観察角度範囲において最も大きい角度に対応付けられてもよい。
【0013】
本発明の第三の態様によれば、第一の態様または第二の態様に係る塗色評価画像の生成方法では、前記塗色評価画像生成工程において、二次元の前記塗色評価画像を生成してもよく、前記塗色評価画像は、前記測色値が、前記観察角度範囲の角度の大小の順序で、ラスタスキャン順に配置されていてもよい。
【0014】
本発明の第四の態様に係る塗色評価画像の生成プログラムは、コンピュータに塗装面を表示する塗装面画像から塗色評価画像を生成させるプログラムであって、複数の受光角度において測定したメタリック塗色の分光反射率から、観察角度範囲における所定角度ごとの前記メタリック塗色の分光反射率を算出させる分光反射率算出工程と、前記分光反射率に基づいて、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの測色値を算出する測色値算出工程と、前記塗装面画像の濃淡レベルごとの画素数を計測し、前記濃淡レベルごとの前記画素数の比率を求めるヒストグラム生成工程と、前記塗装面画像の前記濃淡レベルごとに、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの観察角度を対応付けるマッピング工程と、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとに算出した前記測色値を、前記観察角度の大小の順序で、かつ、前記観察角度に対応付けられた前記濃淡レベルごとの前記画素数の前記比率に応じた分量で、配色した前記塗色評価画像を生成する塗色評価画像生成工程と、を実行させる。
【0015】
本発明の第五の態様によれば、第四の態様に係る塗色評価画像の生成プログラムでは、前記マッピング工程において、最も高い前記濃淡レベルが、前記観察角度範囲において最も小さい角度に対応付けられ、最も低い前記濃淡レベルが、前記観察角度範囲において最も大きい角度に対応付けられてもよい。
【0016】
本発明の第六の態様によれば、第四の態様または第五の態様に係る塗色評価画像の生成プログラムでは、前記塗色評価画像生成工程において、二次元の前記塗色評価画像を生成してもよく、前記塗色評価画像は、前記測色値が、前記観察角度範囲の角度の大小の順序で、ラスタスキャン順に配置されていてもよい。
【0017】
本発明の第七の態様に係る塗色評価画像生成装置は、塗装面を表示する塗装面画像から塗色評価画像を生成する装置であって、複数の受光角度において測定したメタリック塗色の分光反射率から、観察角度範囲における所定角度ごとの前記メタリック塗色の分光反射率を算出する分光反射率算出部と、前記分光反射率に基づいて、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの測色値を算出する測色値算出部と、前記塗装面画像の濃淡レベルごとの画素数を計測し、前記濃淡レベルごとの前記画素数の比率を求めるヒストグラム生成部と、前記塗装面画像の前記濃淡レベルごとに、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとの観察角度を対応付けるマッピング部と、前記観察角度範囲における前記所定角度ごとに算出した前記測色値を、前記観察角度の大小の順序で、かつ、前記観察角度に対応付けられた前記濃淡レベルごとの前記画素数の前記比率に応じた分量で、配色した前記塗色評価画像を生成する塗色評価画像生成部と、を備える。
【0018】
本発明の第八の態様によれば、第七の態様に係る塗色評価画像生成装置では、前記マッピング部は、最も高い前記濃淡レベルを、前記観察角度範囲において最も小さい角度に対応付け、最も低い前記濃淡レベルを、前記観察角度範囲において最も大きい角度に対応付けるものとしてもよい。
【0019】
本発明の第九の態様によれば、第七の態様または第八の態様に係る塗色評価画像生成装置では、前記塗色評価画像生成部は、二次元の前記塗色評価画像を生成し、前記塗色評価画像を、前記測色値が、前記観察角度範囲の角度の大小の順序で、ラスタスキャン順に配置するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の塗色評価画像の生成方法、生成プログラムおよび塗色評価画像生成装置によれば、工業製品の塗装面にメタリック塗色を塗装した場合の全体の印象を予測することを容易とする塗色評価画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る塗色評価画像の生成プログラムを実行する塗色評価画像生成装置の構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る塗色評価画像生成装置のコンピュータの構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る塗色評価画像生成装置のコンピュータの機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る塗色評価画像の生成方法の評価対象である自動車(セダン車)の二次元画像である。
図5図4から生成した塗装面画像である。
図6図5のヒストグラムである。
図7】本発明の一実施形態に係る塗色評価画像の生成方法の評価対象である自動車(SUV車)の二次元画像である。
図8図7から生成した塗装面画像である。
図9図8のヒストグラムである。
図10】本発明の一実施形態に係る塗色評価画像の生成方法のメタリック塗色の分光反射率の測定例である。
図11】本発明の一実施形態に係る塗色評価画像の生成方法の塗色評価画像生成工程における塗色評価画像生成の説明図である。
図12】塗色トヨタ・1D2・グレーM(シルバーメタリック)をメタリック塗色した場合のセダン車の塗色評価画像である。
図13】塗色トヨタ・4S3・ペールオレンジマイカM(ベージュメタリック)をメタリック塗色した場合のセダン車の塗色評価画像である。
図14】塗色トヨタ・1D2・グレーM(シルバーメタリック)をメタリック塗色した場合のSUV車の塗色評価画像である。
図15】塗色トヨタ・4S3・ペールオレンジマイカM(ベージュメタリック)をメタリック塗色した場合のSUV車の塗色評価画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について、図1から図15を参照して説明する。
本実施形態に係る塗色評価画像の生成方法は、工業製品やその模型等に適用された塗装面を表示する塗装面画像から塗色評価画像を生成する方法であって、例えば、プログラム実行可能なコンピュータで実行される塗色評価画像の生成プログラムによって実現される。
【0023】
図1は、塗色評価画像の生成プログラムを実行する塗色評価画像生成装置100の構成図である。塗色評価画像生成装置100は、画像入力部1と、プログラム実行可能なコンピュータ2と、LCDモニタ等の画像出力部3と、を備える。
【0024】
図2は、コンピュータ2の構成図である。
コンピュータ2は、プロセッサ20と、プログラムを読み込み可能なメモリ21と、プログラムおよびデータを記憶可能な記憶部22と、入出力制御部23と、を有するプログラム実行可能な処理装置である。コンピュータ2の機能は、コンピュータ2に提供されたプログラムをプロセッサ20が実行することにより実現される。
【0025】
図3は、コンピュータ2が塗色評価画像の生成プログラムを実行する場合におけるコンピュータ2の機能ブロック図である。機能ブロックは、分光反射率算出部51と、測色値算出部52と、ヒストグラム生成部53と、マッピング部54と、塗色評価画像生成部55と、とを有する。
【0026】
図4および図7は、本実施形態に係る塗色評価画像の生成方法を用いる対象である自動車の二次元画像(写真やイラスト等)である。以降の説明において、図4に示すセダン車の画像を「セダン車画像」、図7に示すSUV車の画像を「SUV車画像」と称す。セダン車画像およびSUV画像は、スキャナ等の画像入力部1を用いてコンピュータ2に入力される。
【0027】
図4に示すセダン車と図7に示すSUV車との塗装面の三次元形状は異なる。同じメタリック塗色を塗装面に塗装した場合であっても、塗装面における陰影の変化はセダン車とSUV車とで異なる。本実施形態に係る塗色評価画像の生成方法によれば、工業製品やその模型等に適用された塗装面を表示する塗装面画像(二次元画像)の陰影の変化に基づいて、例えば図4に示すセダン車および図7に示すSUV車の塗装面にメタリック塗色を塗装した場合の全体の印象を予測することができる。
【0028】
コンピュータ2に入力された、図4に示すセダン車画像および図7に示すSUV車画像に対して事前の画像処理が行われる。各画像から、実際の塗装面の画像部分だけを切り出した「塗装面画像」が生成される。図5は、セダン車画像から生成された塗装面画像60Aである。図8は、SUV車画像から生成された塗装面画像60Bである。
【0029】
本実施形態における塗装面画像60A及び塗装面画像60Bは、カラー画像であるセダン車画像とSUV画像を、8ビットのグレースケール画像に変換したものである。なお、塗装面画像はグレースケール画像に限られない。塗装面画像は、YUV信号のY成分やRGB信号のG成分等のように、任意のビット数で表された画像の輝度値に相当するもの(以降、「濃淡レベル」と称す)で構成された画像であればよい。
【0030】
塗装面画像の生成において、塗装面の陰影の変化が塗装面自体の三次元形状に基づいて変化していない部分、例えばサイドミラーの影が映っている部分は、塗装面画像に含めないことが望ましい。塗装面にメタリック塗色を塗装した場合における、塗装面の三次元形状に基づく塗装面における陰影の変化を正確に予測するためである。
【0031】
次に、本実施形態に係る塗色評価画像の生成方法について詳細に説明する。
本実施形態に係る塗色評価画像の生成方法は、分光反射率算出工程S1と、測色値算出工程S2と、ヒストグラム生成工程S3と、マッピング工程S4と、塗色評価画像生成工程S5と、を備えている。
【0032】
分光反射率算出部51は、例えば先行技術文献に挙げた特許文献2に記載のメタリック塗膜の光学的性質を決定する方法を用いて、複数の受光角度において測定したメタリック塗色の分光反射率から、観察角度範囲(0度〜75度)における所定角度ごとのメタリック塗色の分光反射率を算出する(分光反射率算出工程S1)。
【0033】
図10は、メタリック塗色の分光反射率の測定例である。
例えば、図10に示すように、入射角度:45度、受光角度(5角度):ハイライト15度、25度、フェース45度、シェード75度、110度の条件において、メタリック塗色の分光反射率を測定する。メタリック塗色は、例えば、自動車補修塗料の見本帳のオートカラー色票(関西ペイント)から選択する。選択したメタリック塗色の分光反射率は、例えばx−rite社の5角度分光光度計MA−68IIを用いて測定される。
【0034】
次に、分光反射率算出部51は、測定した5角度の分光反射率から、観察角度範囲(0度〜75度)における所定角度ごとのメタリック塗色の分光反射率を算出する。分光反射率算出部51は、任意の角度ごとのメタリック塗色の分光反射率を算出する式を導いてもよい。本実施形態における所定角度は約0.3度(観察角度範囲/濃淡レベル=75度/256=約0.3度)である。算出された分光反射率は対応する所定角度とともにコンピュータ2のメモリ21に記録される。
【0035】
測色値算出部52は、例えば先行技術文献に挙げた特許文献2に記載のメタリック塗膜の光学的性質を決定する方法を用いて、分光反射率算出部51が算出した分光反射率に基づいて、観察角度範囲(0度〜75度)における所定角度ごとの測色値(メタリック色)を算出する(測色値算出工程S2)。測色値算出部52は、任意の角度ごとの測色値を算出する式を導いてもよい。算出された測色値は対応する所定角度とともにコンピュータ2のメモリ21に記録される。
【0036】
ヒストグラム生成部53は、事前に用意された塗装面画像の濃淡レベルごとの画素数を計測し、濃淡レベルごとの画素数の比率を求める(ヒストグラム生成工程S3)。
【0037】
図6は、セダン車の塗装面画像60Aの濃淡レベルごとの画素数のヒストグラムである。図9は、SUV車の塗装面画像60Bの濃淡レベルごとの画素数のヒストグラムである。本実施形態における塗装面画像60A及び塗装面画像60Bは8ビットのグレースケール画像であるため、濃淡レベルは256段階[0〜255]となる。
図6および図9において、「h」で示される領域はハイライト(観察角度15度、25度)の領域を示しており、「f」で示される領域はフェース(観察角度45度)の領域を示しており、「s」で示される領域はシェード(観察角度75度、110度)の領域を示している。
【0038】
塗装面画像60A及び塗装面画像60Bの濃淡レベルごとの画素数のヒストグラムから濃淡レベルごとの画素数(計測画素数)が把握される。ヒストグラム生成部53は、計測画素数から、濃淡レベルが最大付近および最小付近(例えば、ほぼ黒色[0〜5]、ほぼ白色[254〜255])の画素の数を取り除いた「補正画素数」を作成する。濃淡レベルが最大付近および最小付近となる画素は、塗装面自体の三次元形状に基づいて生じた塗装面の陰影を表していない可能性が高いため、塗色評価画像の生成過程において削除されることが望ましいからである。例えば、図6および図9に示すように、横軸に示す濃淡レベルが最大付近において、画素数は極端に多くなっている。この画素を塗色評価画像の生成過程において削除することで、塗装面における陰影の変化をより正確に抽出したヒストグラムを作成することができる。さらに、横軸に示す濃淡レベルが最小付近における画素を取り除くことで、s(シェード)の領域からh(ハイライト)の領域における特徴をより正確に抽出したヒストグラムを作成することができる。
【0039】
次に、ヒストグラム生成部53は、補正画素数の総画素数に対する、濃淡レベル[0〜255]ごとの補正画素数の比率を求める。表1に、図5に示すセダン車の塗装面画像についての計測画素数、補正画素数および補正画素数に基づいて求めた比率を示す。算出された比率は対応する濃淡レベルとともにコンピュータ2のメモリ21に記録される。
【0040】
【表1】
【0041】
マッピング部54は、塗装面画像60A及び塗装面画像60Bの濃淡レベルごとに、観察角度範囲(0度〜75度)における所定角度ごとの観察角度を対応付ける(マッピング工程S4)。本実施形態においては、濃淡レベル255(白)がハイライト0度に対応付けられ、濃淡レベル0(黒)がシェード75度に対応付けられる。最も高い濃淡レベルが観察角度範囲において最も小さい角度に対応付けられ、濃淡レベルが段階的に低くなるにつれて段階的に大きい観察角度に対応付けられ、最も低い濃淡レベルが観察角度範囲において最も大きい角度に対応付けられる。
【0042】
表2には、線形補完により算出された濃淡レベル[0〜255]ごとに対応する観察角度を示す。
【0043】
【表2】
【0044】
塗色評価画像生成部55は、観察角度範囲(0度〜75度)における所定角度ごとに算出した測色値(メタリック色)を、観察角度の大小の順序で、かつ、観察角度に対応付けられた濃淡レベルごとの画素数の比率に応じた分量で、配色した塗色評価画像70を生成する(塗色評価画像生成工程S5)。
【0045】
本実施形態においては、塗色評価画像70は、横幅128画素、高さ200画素であり、画素総数は25600画素の二次元画像である。25600画素に表1に示す比率を乗じて、濃淡レベルごとの画素数(以降、「CSX画素数」という)を算出する。表3に算出したCSX画素数を示す。表3には、表1および表2に記載した計測画素数、補正画素数、補正画素数に基づいて求めた比率および濃淡レベル[0〜255]ごとに対応する観察角度を併せて記載している。
【0046】
【表3】
【0047】
図11は、塗色評価画像生成工程S5における塗色評価画像70生成の説明図である。
塗色評価画像生成部55は、塗色評価画像70に、所定角度ごとに算出した測色値を、観察角度の大小の順序で配置する。本実施形態では、二次元画像の左上の画素に観察角度0度の測色値が配色される。二次元画像の右下の画素に観察角度75度の測色値が配色される。二次元画像の左上から右下に向けて対応する観察角度が大きくなる。塗色評価画像生成部55は、二次元画像の右下から左上に向けて対応する観察角度が大きくなるように測色値を配色してもよい。すなわち、塗色評価画像生成部55が生成する二次元の塗色評価画像70は、二次元画像におけるラスタスキャン順(走査順)に、前記測色値が、前記観察角度範囲の角度の大小の順序で、配置されていればよい。
【0048】
所定角度ごとに算出した測色値を、観察角度の大小の順序で塗色評価画像70に配色する際、観察角度に対応付けられた濃淡レベルごとの画素数の比率に応じた分量(画素数)で測色値が配置される。観察角度範囲(0度〜75度)における所定角度ごとの測色値が、観察角度範囲の観察角度の大小の順序で均等に塗色評価画像70に配色されない。
【0049】
図11に示すように、二次元画像の左上から、角度0.6度の測色値を166画素分だけ配色する。ここで、角度0.0度および角度0.3度の測色値は、対応付けられた濃淡レベルである255および254の画像数の比率がゼロであるので、塗色評価画像70に配色されない。
【0050】
次に、角度0.9度の測色値を63画素分だけ配色する。角度75度までこの工程を繰り返して、25600画素すべてに対して配色することで、二次元の塗色評価画像70が完成する。完成された二次元の塗色評価画像70は、コンピュータ2の画像出力部3に表示される。
【0051】
図12は、塗色トヨタ・1D2・グレーM(シルバーメタリック)をメタリック塗色した場合のセダン車の塗色評価画像70Aである。
図13は、塗色トヨタ・4S3・ペールオレンジマイカM(ベージュメタリック)をメタリック塗色した場合のセダン車の塗色評価画像70Bである。
【0052】
図6に示すヒストグラムのh(ハイライト)の領域は、車体のプレスラインによる面が光っている領域に相当すると考えられる。この領域において画素数が多く、また、f(フェース)の領域と画素数の分布が不連続である。図12に示すセダン車の塗色評価画像70Aにおいて、h(ハイライト)の領域はベルト状の画像になっている。図13に示すセダン車の塗色評価画像70Bにおいても同様の傾向が見られる。ヒストグラムの陰影感を塗色評価画像70A及び塗色評価画像70Bはよく再現している。
【0053】
このベルト状の画像は金属感が強い塗色、つまりフリップフロップ値(FF値)が大きいほど目立つ。ここで、フリップフロップ値(FF値)は、受光角15度の分光反射率に基づいて計算したXYZ表色系における明度Y値(これを「Y15」とする)と、受光角45度の分光反射率に基づいて計算したXYZ表色系における明度Y値(これを「Y45」とする)と、から、下記計算式(1)により算出した値である。例えば、塗色トヨタ・1D2・グレーMのFF値は1.621である。
FF値=[2×(Y15−Y45)]/(Y15+Y45)‥‥(1)
実際の車を観察する場合、目視で1〜2秒の短時間で見た際(これを「一見視」と定義する)の車全体の印象色は、ハイライト色、中間色およびシェード色の強さとそれらの面積で決定されるといわれている。そのため、塗色評価画像は一見視による印象色をよく再現しているといえる。
【0054】
図14は、塗色トヨタ・1D2・グレーM(シルバーメタリック)をメタリック塗色した場合のSUV車の塗色評価画像70Cである。
図15は、塗色トヨタ・4S3・ペールオレンジマイカM(ベージュメタリック)をメタリック塗色した場合のSUV車の塗色評価画像70Dである。
【0055】
図14および図15に示す塗色評価画像70C及び塗色評価画像70Dには、図12および図13において見られたベルト状の画像は、h(ハイライト)の領域において観測できない。図9に示すヒストグラムのh(ハイライト)の領域における画像数が少ないためであると考えられる。
【0056】
本実施形態に係る塗色評価画像の生成方法および生成プログラムによれば、塗色評価画像は、観察角度範囲(0度〜75度)における所定角度ごとの測色値(メタリック色)が、観察角度範囲の観察角度の大小の順序で均等に配置されていない。塗色評価画像は、観察角度に対応付けられた濃淡レベルの画素比率が考慮されている。
すなわち、ある観察角度Aの測色値(メタリック色)は、対応する濃淡レベルの画素が、塗装面画像に多く含まれる場合、塗色評価画像に多く配置される。一方、ある観察角度Aの測色値(メタリック色)は、対応する濃淡レベルの画素が、塗装面画像に多く含まれない場合、塗色評価画像に多く配置されない。
そのため、三次元CADの形状データを用いずとも、塗装面画像の塗装面の陰影の変化から生成した塗色評価画像により、塗装面にメタリック塗色を塗装した場合の全体の印象を予測することができる。
【0057】
なお、塗色評価画像の生成プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録される。この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0059】
(変形例1)
例えば、上記実施形態では、観察角度範囲は0度〜75度であったが、観察角度範囲はこれに限定されない。観察角度範囲は、例えば0度〜90度であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、塗装面を備える工業製品の評価に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
100 塗色評価画像生成装置
1 画像入力部
2 コンピュータ
20 プロセッサ
21 メモリ
22 記憶部
23 入出力制御部
3 画像出力部
60A、60B 塗装面画像
70、70A、70B、70C、70D 塗色評価画像
S1 分光反射率算出工程
S2 測色値算出工程
S3 ヒストグラム生成工程
S4 マッピング工程
S5 塗色評価画像生成工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15