特許第6985528号(P6985528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985528
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20211213BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20211213BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20211213BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20211213BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C01G53/00 A
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M4/131
   H01M4/62 Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-552160(P2020-552160)
(86)(22)【出願日】2018年12月18日
(65)【公表番号】特表2021-506729(P2021-506729A)
(43)【公表日】2021年2月22日
(86)【国際出願番号】GB2018053660
(87)【国際公開番号】WO2019122848
(87)【国際公開日】20190627
【審査請求日】2020年8月17日
(31)【優先権主張番号】1721172.3
(32)【優先日】2017年12月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ニコロ・グエッリーニ
(72)【発明者】
【氏名】クン・ルオ
(72)【発明者】
【氏名】ロン・ハオ
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/118659(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/087403(WO,A1)
【文献】 Zhonghua Lu et al.,Journal of The Electrochemical Society,2002年,Volume 149, Number 6,A778-A791
【文献】 Yong JoonPark et al.,Journal of Power Sources,2004年,Volume 129, Issue 2,pp.288-295,https://doi.org/10.1016/j.jpowsour.2003.11.024
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 53/00
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/131
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
Li(4/3−2x/3)NiMn(2/3−x/3)
の化合物であって、
が04である、化合物。
【請求項2】
前記化合物が、層状構造を有する正極材料である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記層状構造が、一般式として、
aLiMnO・(1−a)LiNi0.5Mn0.5で表され、
aが0.2である、請求項に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1からの何れか一項に記載の化合物を含む電極。
【請求項5】
前記電極が、電気活性添加剤及び/又は高分子バインダーを含む、請求項に記載の電極。
【請求項6】
前記電気活性添加剤が、カーボン又はカーボンブラックの少なくとも1つから選択される、請求項に記載の電極。
【請求項7】
前記高分子バインダーが、PVDF、PTFE、NaCMC又はアルギン酸ナトリウムのうちの少なくとも1つから選択される、請求項5又は6に記載の電極。
【請求項8】
請求項からの何れか一項に記載の正極、電解質、及び、負極を含む、電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連の電気活性カソード化合物に関する。より具体的には、本発明は、高容量のリチウムに富む一連のNM化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリチウムイオンバッテリーは、正極(カソード)を作成するために使用される材料の容量によって性能が制限される。ニッケルマンガンコバルト酸化物のブレンドを含むカソード材料のリチウムに富むブレンドは、安全性とエネルギー密度の間のトレードオフを与える。そのようなカソード材料内の遷移金属カチオンに電荷が蓄積されることが理解される。そのような大量の重遷移金属イオンの必要性を低減するアニオン(例えば、酸素)に電荷が蓄積される場合、カソード材料の容量、従ってエネルギー密度が大幅に増加する可能性があることが示唆されている。しかしながら、アニオン及びカチオンの両方のレドックス化学に依存して電荷を保存し、材料の安全性を損なうことなく、又は、材料を破壊する望ましくないレドックス反応を引き起こすことなく、充電/放電サイクルに耐えることができる材料を提供するという課題が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の態様では、本発明は、一般式:Li(4/3−2x/3)NiMn(2/3−x/3)の化合物を与え、ここで、xは、0.06より大きく、0.4以下の値を有する。
【0004】
過剰なリチウムの量を減らし、ニッケルの量を増やすことにより、容量が改善された化合物が得られることが分かった。上記で定義された特定の化合物は、ニッケルの酸化の程度及び格子内の酸化物イオンの酸化のために、容量の大幅な増加を示す。理論に縛られることを望まないが、特定の量のニッケル置換の存在が酸素レドックス活性を可能にし、それにより材料の電気化学的容量を改善することが理解される。
【0005】
さらに、本発明の化合物は、従来技術の遷移金属置換NMCリチウムリッチ材料と比較した場合、電気化学サイクル中に改善された安定性を示す。酸素分子の発生は、リチウムが遷移金属イオンの一部(Li1+x1−x、ここで、MはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu又はZnである)に交換された第3列のリチウムリッチ材料の遷移金属酸化物で遍在する。これらの材料は、一般に、それらの充電容量特性を改善するために酸素レドックスに依存する。均質な材料は、酸化物アニオンのレドックスが原因で、サイクル中に酸素分子が結晶構造から脱出するという問題を抱えることがある。同様に、これにより、材料の容量と有効寿命が減少する。しかしながら、本発明の材料は、多くのサイクルにわたって維持される改善された容量を有する。
【0006】
リチウムイオンの除去によって引き起こされる電荷不均衡が、酸素アニオンからの電子の除去によって平衡化されると、結果として生じる酸素アニオンは、不安定になり、望ましくないレドックス反応と、電荷サイクル中の分子状酸素ガスの発生をもたらす。理論に縛られることを望まないが、リチウム含有量に対する材料中の特定のニッケル含有量は、各酸素アニオンが依然として約3個のカチオンに結合されるように、格子内の不十分な結合を回避することが理解される。この問題の潜在的な解決策は、カソード層又はセルの一部をガス不透過性の膜でカプセル化することである。しかしながら、これは、セルに寄生質量を加え、それにより、結果として得られる電池のエネルギー密度を低下させる。しかしながら、本発明の化学的アプローチは、特定の量の遷移金属を使用して格子の構造を調整し、カソード材料又は結果として生じる電池セルに層を追加する必要なしに、材料からの酸素ガスの発生を低減する。
【0007】
実施例では、x(すなわち、ニッケル含有量)は、0.12以上である。xは、0.2以上であってもよい。材料の容量は、xが0.12以上の場合に大幅に向上し、xの値が0.2に等しい場合にさらに向上することが実証されている。さらに、xは、0.4以下であり得る。材料の容量は、この閾値の0.4を超えると予想されるレベルまで低下することが分かる。xが0.3であるとき、容量が改善されることが実証されている。より具体的には、xの値は、0.06より大きく、0.4以下であると言える。より具体的には、xの値は、0.12以上であり、0.4以下であると言える。この広い範囲の材料は、改善された容量を示す。この広い範囲内の改善された材料のさらなる例では、xの値は、0.06より大きく、0.12以下であり得る。
【0008】
さらなる例では、xの範囲は、0.2より大きくてもよい。化学量論的なニッケル含有量が0.2を超える材料は、充電/放電サイクル中に発生する分子状酸素ガスの量を低減するとともに、改善された充電容量を有するという驚くべき利点を有することが実証されている。より具体的には、この範囲は、xが0.2より大きく、0.4以下であると定義することができる。さらに具体的には、この範囲は、xが0.3以上であり、0.4以下であると定義することができる。特に、xの値は、0.3又は0.4である。
【0009】
化合物は、層状構造を有すると定義することができる。通常、層状構造は、エネルギー密度が最も高いことが示されている。層状の形態である場合、材料は、aが0.88未満であり得、aが0.2以上であり得るように、一般式aLiMnO・(1−a)LiNi0.5Mn0.5を使用してさらに規定され得る。より具体的には、aは、0.2以上であり、0.88未満である。さらに具体的には、aは、0.2以上であり、0.76以下である。具体的には、材料は、0.4LiMnO・0.6LiNi0.5Mn0.5であり得、又は、材料は、0.2LiMnO・0.8LiNi0.5Mn0.5であり得る。これらの特定の層状構造は、改善された容量と、充電/放電サイクル中に高度の安定性を示す。より具体的には、充電/放電サイクル中に層状材料から発生するガスの量が減少する。
【0010】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の化合物を含む電極を提供する。電極は、3つの部分を含み得る。第1は、前述の本発明の化合物である(60〜98%の様々な質量百分率で、ただし、典型的には、70、75、80、90及び95%で)。電極の第2の部分は、炭素などの電気活性添加剤、例えばスーパーP(RTM)やカーボンブラックなどで構成され、第1の部分を除いた残りの質量部分の60〜80%を含む。第3の部分は、通常、PVDF、PTFE、NaCMC、NaAlginate(アルギン酸ナトリウム)などの高分子バインダーである。場合によっては、追加の部分が含まれる可能性があり、全体の百分率が変化することがある。カソード材料の全体的な電気化学的性能は、電気活性添加剤を導入することによって改善でき、得られるカソードの構造特性は、カソード材料の凝集性及び特定の基板への材料の接着を改善する材料を追加することによっても改善できる。
【0011】
第3の態様では、本発明は、上記の説明による正極、電解質及び負極(アノード)を含む電気化学セルを提供する。
【0012】
本発明をより容易に理解できるようにするために、本発明の実施形態を、例として、添付の図面を参照してここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、図の下部及び上部にそれぞれ示されるC12/m及びR−3m対称格子の計算されたパターンと比較した、実施例1に従って合成された材料の粉末X線回折パターンを示す。
図2図2は、実施例1に従って合成された材料で収集されたLi MAS−NMRスペクトルを示す。スペクトルは、積み重ねられて表示され、下から上に向かってニッケルドーピングが増加する。
図3図3は、実施例1に従って合成された材料の第一サイクルの定電流負荷曲線を示す。
図4図4は、実施例1に従って合成された一連の材料のOEMS分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を以下の実施例を参照して説明する。
【0015】
(実施例1−ニッケル置換リチウムリッチ材料の合成)
ホルムアルデヒド−レゾルシノールゾルゲル合成ルートを使用して、一般式:Li(4/3−2x/3)NiMn(2/3−x/3)を有する材料を合成し、ここで、x=0、0.06、0.12、0.2、0.3及び0.4であり、0.01molの最終生成物を得るために、全ての試薬比を計算した。
【0016】
CHCOOLi・2HO(98.0%、Sigma Aldrich(RTM))、(CHCOO)Mn・4HO(>99.0%、Sigma Aldrich(RTM))、及び、(CHCOO)Ni・4HO(99.0%Sigma Aldrich(RTM))の化学量論量を、合成材料0.01molに対してリチウム5mol%に対応するCHCOOLi・2HO(99.0%、Sigma Aldrich(RTM))0.25mmolを含む水50mLに溶解した。同時に、0.1molのレゾルシノール(99.0%、Sigma Aldrich(RTM))を0.15molのホルムアルデヒド(36.5質量パーセント濃度の水溶液、Fluka(RTM))に溶解した。全ての試薬がそれぞれの溶媒に完全に溶解したら、2つの溶液を混合し、混合物を1時間激しく撹拌した。得られた溶液は、5%モル過剰のリチウムを含み、均一な白いゲルが形成されるまで、80℃の油浴で加熱された。
【0017】
最後にゲルを90℃で一晩乾燥させ、500℃で15時間、800℃で20時間熱処理した。
【0018】
(実施例2−ニッケル置換リチウムリッチ材料の構造分析と特性評価)
実施例1による材料は、2つの技術で試験された:粉末X線回折(PXRD)は、9kWのCu回転アノードを備えたリガク・スマートラボ(RTM)を利用して行われ、及び、MAS−NMRスペクトルは、Bruker Avance III 400WD磁石を使用して材料で収集した。
【0019】
図1は、右側のパネルに、図の下部と上部にそれぞれ示されているC12/m及びR−3m対称格子の計算パターンと比較された、合成された材料の粉末X線回折パターンを示す。左側には、C12/m及びR−3mの構造が報告される。C12/m対称の構造では、遷移金属層のリチウムの周囲に遷移金属秩序が存在することを観察できる。拡大図は、ニッケル含有量の増加に伴って失われる遷移金属層のカチオン配列に関連する反射の詳細を示す。
【0020】
全てのパターンは、R−3m空間群を有するLiTMOなどの最密充填層状構造と一致する主要なピークを示すように見える。図の拡大された切り抜きで強調表示されているR−3m空間群に割り当てることができない20〜30の2θ度の範囲で追加のピークが観察される。秩序(オーダー)は、Li(0.59Å)、Ni+2(0.69Å)、及び、Mn4+(0.83Å)間の原子半径と電荷密度の差に由来し、低ニッケルドープ酸化物の構造で最も強く現れる。LiMnOの端成分では、Li:Mnの2:1の比率で完全なハニカムを形成できるため、C12/m空間群にほぼ完全に適合する。
【0021】
材料にニッケルが置換されているため、長距離の層内秩序は次第に失われる。これは主に、電荷バランスを維持するために3Ni+2を1Mn+4と2Liに置き換えたことによるものである。Ni+2とLiは、Mn+4と比較して同様の原子半径を有するため、Ni+2は、優先的にリチウムサイトを占有する。ニッケルとマンガンのX線の微分散乱断面積は非常に近いため、X線によるイオンの秩序の解決が難しくなり、20〜30度の範囲のピークが失われる。不純物による余分なピークの存在は、観察されなかった。
【0022】
MAS−NMRスペクトルは、一連の材料全体のNMR活性同位体Liについて収集された。図2の正規化スペクトルは、構造内のリチウムイオンの2つのサイトに対応する、1550及び780ppmを中心とする2つの信号の存在を示す。1550ppmを中心とする共振は、遷移金属層内の[LiMn]および[LiMnNi]/[LiMnLi]構成に属するリチウムに起因する。一方、780ppmでの共振は、リチウム層のリチウムによるものである。
【0023】
化学シフト(すなわち、ピーク位置)は全ての材料で同じままであるが、ニッケル含有量が増加するにつれて、鋭さの漸進的な損失を観察できる。この結果は、2つの主要な現象を通じて説明できる:ニッケルが格子内でリチウムとマンガンに徐々に置き換えられるため、リチウムの新しい局所的な環境が生成される;及び/又は、ニッケル含有量が高い材料での積層欠陥の濃度が高い。どちらの場合も、長距離秩序が崩れ、NMR共鳴が徐々に広がる。
【0024】
(実施例3−ニッケル置換リチウムリッチ材料の電気化学分析)
実施例1による材料は、BioLogic VMP3及びMaccor 4600シリーズのポテンショスタットで実行される定電流サイクリングを通じて電気化学的に特徴付けられた。全てのサンプルは、金属リチウムに対してステンレス鋼のコインセルに組み立てられ、50mAg−1の電流レートで100サイクル、2から4.8V対Li/Liの間でサイクルされた。採用した電解質は、LP30(1;1質量パーセント濃度の比のEC;DMC中のLiPFの1M溶液)であった。
【0025】
図3は、実施例1による各材料の第1のサイクルの充電及びその後の放電中の電位曲線を示す。全てのサンプルは、4.5V対Li/Liを中心とする様々な長さの高電圧プラトーを示すが、充電開始時の傾斜領域の存在は、ニッケルのドーピング量とともに長さが徐々に増加する。この領域の拡大は、ニッケルのレドックス活性のみを考慮して抽出されるだろうリチウムの量(すなわち電荷)とよく一致しているように見える、Ni+2からNi+4へのニッケルの酸化に起因する可能性がある。従って、予想どおり、LiMnOは、プレプラトー領域を示さないが、一方で、x=0.3でドープされた酸化物Li(4/3−2x/3)NiMn(2/3−x/3)は、150mAhg−1を超えて示す。
【0026】
第1の放電中、どの材料も可逆的なプラトーの存在を示さず、これは、各サンプルの格子から/格子内へのリチウムイオンの抽出(充電)及び挿入(放電)中に続く熱力学的経路の違いを示す。
【0027】
実施例1による全ての材料について、第1のサイクルは、可逆的ではない高電位プラトーが存在するため、最も低いクーロン効率値を示す。クーロン効率は、第1のサイクルの値(約60〜70%)から、最初の5サイクル以内で98%を超える値まで急速に向上するように見える。ただし、この点では、LiMnO、及び、x=0.06であるLi(4/3−2x/3)NiMn(2/3−x/3)は、例外であり、効率の初期損失を示す。ニッケル置換がx=0.12となるように増加すると、電気化学的性能の大幅な改善が見られ、電荷蓄積メカニズムの性質に変化があることを示す。
【0028】
(実施例4−ニッケル置換リチウムリッチ材料の第1のサイクル中のガス発生)
実施例1による各材料の1つのペレットは、オペランド電気化学質量分析(OEMS:Operando Electrochemical Mass Spectrometry)測定を行うために特別に機械加工されたスウェージロック(RTM)試験セルに組み立てられた。OEMS実験に含まれる質量分析測定は、Thermo−Fisher四重極質量分析計で行われた。OEMSは、第1のサイクル中に観察された追加容量の原因についての洞察を得るために、一連の材料に対して実行された。
【0029】
図4(a)、(b)及び(c)は、それぞれx=0.2、0.3及び0.4でニッケルがドープされたLi(4/3−2x/3)NiMn(2/3−x/3)のOEMS分析を示す。各グラフは、各材料における、最初の2サイクルの間の定電流曲線(各グラフの一番上の線)、酸素トレース及び二酸化炭素トレースを示す。右のy軸は、電極電位を表し、左のy軸は、ガス放出率を、活物質1モルあたりの1分間あたりのガスのモル数で表し、どちらの軸もリチウム当量の関数として報告される。アルゴンは、フラックスレート0.7mL/minのキャリアガスとして使用され、電極は、全ての材料でLi/Liに対して2から4.8Vで15mAg−1の速度で金属リチウムに対してサイクルされた。採用した電解質は、炭酸プロピレン中のLiPFの1M溶液であった。
【0030】
COとOが全てのサンプルで検出された唯一のガス種であり、ドーパントニッケルの量が増えると、放出されるガスの量は徐々に少なくなるという明らかな傾向が図4から見られた。
【0031】
COは、全ての場合に最初に検出され、高電位のプラトー(Li/Liに対して約4.5V)の開始時にピークに達し、充電の終了まで徐々に減少する。
【0032】
ニッケル含有量の増加に伴ってCOの量は減少するが、除去されることはない。一方、分子状酸素は、本発明の材料の充電の終わりに向かってその最大に達するスパイク状の様式で放出されるように見える。x=0.4の高Ni置換の場合、Oがほぼ完全に抑制され、検出されたCOの量が大幅に減少することが示されている(図4(c))。この結果は、酸素損失プロセスを減らすことによって高電位で酸化物構造を安定化させる場合など、ニッケルが果たす重要な役割を示唆している。
図1
図2
図3
図4