(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
第1実施形態に係る圧力センサは、
図2に示すように、エンジンのシリンダヘッドHに取り付けられて、圧力媒体としての燃焼室内の燃焼ガスの圧力を検出するものである。
【0026】
第1実施形態に係る圧力センサは、
図1ないし
図3、
図6に示すように、筒状のハウジングとしての外部ハウジング10及びサブハウジング20、ダイヤフラム30、保持板40、位置決め部材50、断熱部材60、圧力計測部材70、予荷重付与部材80、第1導電体としての第1リード線91、第2導電体としての第2リード線92、規制部材100、コネクタ110を備えている。
【0027】
圧力計測部材70は、ハウジングの先端側から軸線S方向に順次積層された、第1電極71、圧電素子72、及び第2電極73により構成されている。
予荷重付与部材80は、固定部材81、及び絶縁部材82により構成されている。
【0028】
外部ハウジング10は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて、
図1及び
図2に示すように、軸線S方向に伸長する円筒状に形成されている。
また、外部ハウジング10は、先端側に位置する円筒状の嵌合内周壁11、円環状の段差部12、円筒状の貫通路13、外周面に形成された雄ネジ部14、フランジ部15、末端に位置するコネクタ連結部16を備えている。
【0029】
サブハウジング20は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて、
図5ないし
図8に示すように、軸線S方向に伸長する円筒状に形成されている。
また、サブハウジング20は、嵌合内周壁11に嵌合される円筒状の外周壁21、軸線Sを中心とする円筒状の内周壁22、円環状の先端面23、円環状の奥側端面24を備えている。
そして、サブハウジング20は、ダイヤフラム30、保持板40、位置決め部材50、断熱部材60、圧力計測部材70、予荷重付与部材80、第1リード線91、及び第2リード線92が組み込まれた状態で、外部ハウジング10の内側に嵌め込まれて溶接等により固定されるようになっている。
【0030】
ダイヤフラム30は、析出硬化性を有するステンレス鋼等の金属材料を用いて形成され、
図6ないし
図8に示すように、可撓板状部31、可撓板状部31に連続して形成された突出部32を備えている。
可撓板状部31は、弾性変形可能な円板状に形成され、その外縁領域がサブハウジング20の先端面23に対して溶接等により固定される。
可撓板状部31には、燃焼ガスの圧力に応じた荷重が作用し、その荷重に応じて軸線S方向に弾性変形するようになっている。
すなわち、ダイヤフラム30は、ハウジングの一部をなすサブハウジング20の先端に固定されて、高温の圧力媒体に曝されるようになっている。
【0031】
突出部32は、可撓板状部31の軸線Sを中心とする中央領域からサブハウジング20の内側に向けて軸線S方向に伸長する円柱状に形成されている。
突出部32の外周面は、サブハウジング20の内周壁22と円環状の隙間をおいて配置されている。
そして、突出部32は、可撓板状部31が受けた力を、保持板40、断熱部材60及び第1電極71を介して、圧電素子72に伝達する役割をなす。
【0032】
保持板40は、
図7及び
図8に示すように、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料、機械的剛性の高い絶縁材料等を用いて、突出部32の外径よりも大きい外径をなす円板状に形成されている。
そして、保持板40は、ダイヤフラム30の突出部32と断熱部材60の間に挟持されて、位置決め部材50を可撓板状部31から離隔するように保持し、ダイヤフラム30の可撓板状部31と位置決め部材50の間に空間を画定する役割をなす。
【0033】
位置決め部材50は、絶縁性及び断熱性を有する絶縁材料を用いて、
図7及び
図8に示すように、軸線S方向に伸長する略円筒状に形成され、貫通孔51、嵌合凹部52、外周面53、第1リード線91及び第2リード線92を非接触にて通す二つの切り欠き溝54を備えている。
貫通孔51は、軸線Sを中心としかつ軸線S方向に伸長する円形孔として形成されている。
嵌合凹部52は、保持板40を受け入れるべく、軸線Sを中心とする円形凹部として形成されている。
外周面53は、サブハウジング20の内周壁22に嵌合されるべく、軸線Sを中心とする円筒面として形成されている。
二つの切り欠き溝54は、軸線S方向において同一の深さ寸法をなし、かつ、軸線S回りにおいて180度離れた点対称の位置に設けられている。
【0034】
そして、位置決め部材50は、突出部32に当接した保持板40により支持されかつサブハウジング20の内周壁22に嵌合されると共に、貫通孔51内において断熱部材60と、第1電極71、圧電素子72及び第2電極73からなる圧力計測部材70と、絶縁部材82とを積層した状態で、軸線S上に位置決めして保持する。
【0035】
断熱部材60は、絶縁性及び断熱性を有する絶縁材料を用いて、
図5、
図7及び
図8に示すように、突出部32及び第1電極71の外径と同等の外径をなす所定高さの円柱状に形成されている。
そして、断熱部材60は、サブハウジング20の内側において、ダイヤフラム30の突出部32に当接する保持板40と第1電極71の間に密接して配置される。
ここで、断熱部材60を形成する絶縁材料としては、熱容量が大きく、熱伝導率の小さいものが好ましい。熱伝導率は、例えば15W/m・K以下が好ましく、より好ましくは5W/m・K以下である。具体的な材料としては、例えば、石英ガラス、ステアタイト、ジルコニア、コージライト、フォルステライト、ムライト、イットリア等のセラミックス、又は、導電性材料に絶縁処理を施したものが挙げられる。
【0036】
すなわち、ダイヤフラム30が受けた圧力による荷重は、保持板40、断熱部材60及び第1電極71を介して圧電素子72に伝達され、一方、ダイヤフラム30から第1電極71への伝熱は、断熱部材60により抑制される。よって、第1電極71と隣接する圧電素子72に対する熱の影響が抑制され、センサ出力の基準点(零点)の変動を防止でき、所期のセンサ精度を得ることができる。
【0037】
圧力計測部材70は、圧力を検出するべく機能するものであり、
図5ないし
図8に示すように、サブハウジング20の内側において、先端側から軸線S方向に順次積層された、第1電極71、圧電素子72、及び第2電極73を備えている。
【0038】
第1電極71は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の導電性の金属材料を用いて、位置決め部材50の貫通孔51に嵌め込まれる外径をなす円柱又は円板状に形成されている。そして、第1電極71は、位置決め部材50の貫通孔51内において、一方の面が断熱部材60と密接し、他方の面が圧電素子72と密接するように配置される。
【0039】
圧電素子72は、位置決め部材50の貫通孔51に接触しない寸法をなす四角柱状に形成されている。そして、圧電素子72は、位置決め部材50の貫通孔51内において、一方の面が第1電極71と密接し、他方の面が第2電極73と密接するように配置される。
これにより、圧電素子72は、軸線S方向において受けた荷重による歪に基づいて電気信号を出力する。
尚、圧電素子72としては、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等によるセラミックス、水晶等が適用される。
【0040】
第2電極73は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の導電性の金属材料を用いて、位置決め部材50の貫通孔51に嵌め込まれる外径をなす円柱又は円板状に形成されている。そして、第2電極73は、位置決め部材50の貫通孔51内において、一方の面が圧電素子72と密接し、他方の面が絶縁部材82と密接するように配置される。
【0041】
予荷重付与部材80は、
図5ないし
図7に示すように、固定部材81及び絶縁部材82により構成され、ハウジングの一部をなすサブハウジング20の内側に配置されて、ダイヤフラム30に向けて圧力計測部材70を押圧して予荷重を付与し、圧力計測部材70に対してセンサとしての直線特性を与える役割をなす。
【0042】
固定部材81は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて、軸線Sを中心としかつ貫通孔51と同等以上の面積を占める中央領域において空洞や肉抜きが存在しない中実の略円柱状に形成され、中央領域から外れた外周領域において、2つの縦溝81aを備えている。
2つの縦溝81aは、それぞれ、第1リード線91及び第2リード線92を非接触にて通すべく、軸線S回りにおいて180度離れた点対称の位置にいて肉抜きされて形成されている。
【0043】
絶縁部材82は、電気的に絶縁性の高い絶縁材料を用いて、位置決め部材50の貫通孔51に嵌め込まれる外径をなす円柱又は円板状に形成されている。すなわち、絶縁部材82は、貫通孔51と同等の面積を占める全領域において空洞や肉抜きが存在しない中実形状に形成されている。
そして、絶縁部材82は、第2電極73と固定部材81との電気的絶縁を維持すると共に、圧電素子72に伝わった熱を固定部材81へ導いて放熱させるように機能する。
絶縁部材82の絶縁材料としては、熱容量が小さく、熱伝導率が大きいものが好ましい。具体的な材料としては、例えば、アルミナ、サファイア、窒化アルミニウム、炭化珪素等のセラミックス、又は、導電性材料に絶縁処理を施したものが挙げられる。
この実施形態において、断熱部材60、第1電極71、第2電極73、絶縁部材82は、略同一の外径寸法でかつ略同一の厚さ寸法に、すなわち、略同一形状に形成されている。尚、断熱部材60、第1電極71、第2電極73、絶縁部材82は、略同一形状に限るものではなく、要求される仕様に応じて、適宜異なる形状及び寸法に形成されてもよい。
【0044】
予荷重付与部材80の組み付けにおいては、
図7及び
図8に示すように、圧力計測部材70が位置決め部材50内に配置された状態で、絶縁部材82が第2電極72に当接するように貫通孔51に嵌め込まれる。そして、固定部材81が絶縁部材82に当接するように圧力計測部材70を軸線S方向のダイヤフラム30に向けて押し付けられ、予荷重が付与された状態で、固定部材81がサブハウジング20に溶接等により固定される。
このように、予荷重付与部材80で予荷重を付与することで、圧力計測部材70に対してセンサとしての直線特性を与えることができる。
【0045】
第1リード線91は、ニッケル等の溶接性の高い導線がフッ素系等の絶縁材料により覆われて、
図2及び
図7に示すように、軸線S方向に長尺に形成された細線である。
そして、第1リード線91は、一端部91aが圧力計測部材70の第1電極71に電気的に接続され、他端部91bがコネクタ110の第1端子112に電気的に接続され、外部コネクタを介して電気回路に対して電気的にグランド側(マイナス側)に接続される。
また、第1リード線91は、位置決め部材50の一方の切り欠き溝54及び固定部材81の一方の縦溝81aを非接触にて通過するように配設される。
さらに、第1リード線91は、一端部91aと他端部91bの間の領域でかつ予荷重付与部材80から外れた領域が規制部材100の第1嵌合孔101に嵌合されて挿通されている。
【0046】
第2リード線92は、ニッケル等の溶接性の高い導線がフッ素系等の絶縁材料により覆われて、
図2及び
図7に示すように、第1リード線91と同一の外径寸法で軸線S方向に長尺に形成された細線である。
そして、第2リード線92は、一端部92aが圧力計測部材70の第2電極73に電気的に接続され、他端部92bがコネクタ110の第2端子113に電気的に接続され、外部コネクタを介して電気回路に対して電気的に出力側(プラス側)に接続される。
また、第2リード線92は、位置決め部材50の他方の切り欠き溝54及び固定部材81の他方の縦溝81aを非接触にて通過するように配設される。
さらに、第2リード線92は、一端部92aと他端部92bの間の領域でかつ予荷重付与部材80から外れた領域が規制部材100の第2嵌合孔102に嵌合されて挿通されている。
【0047】
規制部材100は、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性に優れたゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な円柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材100は、
図2及び
図4に示すように、外部ハウジング10の貫通路13の軸線S方向の長さ寸法L1よりも僅かに短い長さ寸法L2で、外周嵌合面100a、第1嵌合孔101、第2嵌合孔102を備えている。
ここで、貫通孔13の長さ寸法L1は、
図2に示すように、外部ハウジング10内において、段差部12からコネクタ連結部16の凹部の底面までの軸線S方向における長さである。尚、規制部材100の長さ寸法L2は、貫通孔13の長さ寸法L1と同じでもよい。
【0048】
外周嵌合面100aは、外部ハウジング10の貫通孔13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される、外径寸法に形成されている。
第1嵌合孔101は、第1リード線91を密接して嵌合させて挿通させるべく、軸線S方向に伸長して貫通する。
第2嵌合孔102は、第2リード線92を密接して嵌合させて挿通させるべく、軸線S方向に伸長して貫通する。
ここで、第1嵌合孔101及び第2嵌合孔102は、軸線Sに平行であり、軸線Sを中心として点対称な位置に配置されて同一の形状に形成されているため、第2リード線92が第1嵌合孔101に嵌合され、第1リード線91が第2嵌合孔102に嵌合されてもよい。
【0049】
そして、規制部材100は、外部ハウジング10の貫通孔13に対して、外周嵌合面100aの外径を僅かに縮めるように弾性変形させつつ嵌合して固定されると共に、第1リード線91が第1嵌合孔101に隙間なく密接に嵌合して固定され、第2リード線92が第2嵌合孔102に隙間なく密接に嵌合して固定される。
このように、規制部材100が弾性変形可能な成型ゴムであるため、貫通孔13の内壁面が機械加工されていなくても、規制部材100を容易に嵌合させることができる。
【0050】
規制部材100を設けたことにより、エンジンの振動が圧力センサの外部ハウジング10に伝わっても、規制部材100により振動が減衰され、又、第1リード線91及び第2リード線92は、規制部材100により相対的な移動が規制されて両者の間隔が一定に維持される。
したがって、第1リード線91と第2リード線92との間の寄生容量の変化が防止される。その結果、寄生容量の変化に伴うノイズの発生を防止でき、高精度な出力信号を得ることができる。
【0051】
また、規制部材100は、サブハウジング20から軸線S方向の奥側に外れた領域、特に、予荷重付与部材80から外れた領域において、外部ハウジング10内に配置されているため、予荷重付与部材80により予め設定された予荷重に対して影響を及ぼすことなく、第1リード線91及び第2リード線92の相対的な移動のみを規制することができる。
【0052】
コネクタ110は、
図2に示すように、結合部111、第1端子112、第2端子113を備えている。
結合部111は、外部ハウジング10の末端に位置するコネクタ連結部16に結合される。
第1端子112は、結合部111に固定されると共に第1リード線91の他端部91bと電気的に接続され、又、外部コネクタの接続端子と電気的に接続される。
第2端子113は、絶縁部材を介して第1端子112に固定されると共に第2リード線92の他端部92bと電気的に接続され、又、外部コネクタの接続端子と電気的に接続される。
【0053】
次に、上記構成をなす圧力センサの組み立て作業について説明する。
作業に際して、外部ハウジング10、サブハウジング20、ダイヤフラム30、保持板40、位置決め部材50、断熱部材60、第1電極71、圧電素子72、第2電極73、固定部材81、絶縁部材82、第1リード線91、第2リード線92、規制部材100、及びコネクタ110が準備される。
【0054】
先ず、ダイヤフラム30が、サブハウジング20の先端面23に溶接等により固定される。
次に、保持板40及び位置決め部材50がサブハウジング20内に嵌め込まれる。続いて、位置決め部材50の内側に、断熱部材60、第1リード線91の一端部91aが接続された第1電極71、圧電素子72、第2リード線92の一端部92aが接続された第2電極73、及び絶縁部材82が、順次積層して嵌め込まれる。
尚、第1リード線91及び第2リード線92は、後の工程で、第1電極71及び第2電極73にそれぞれ接続されてもよい。
【0055】
その後、固定部材81が、絶縁部材82を押し付けるようにしてサブハウジング20内に嵌め込まれ、予荷重が付与された状態で、固定部材81がサブハウジング20に溶接等により固定される。これにより、
図6及び
図7に示すように、センサモジュールM1が形成される。尚、センサモジュールM1の組付け方法は、上記手順に限るものではない。
【0056】
続いて、センサモジュールM1が外部ハウジング10に組み込まれる。すなわち、第1リード線91及び第2リード線92が外部ハウジング10の貫通路13に通されると共に、サブハウジング20が外部ハウジング10の嵌合内周壁11に嵌め込まれて、奥側端面24が段差部12に当接させられる。
その後、サブハウジング20が、外部ハウジング10に対し溶接により固定される。
【0057】
続いて、規制部材100が、コネクタ連結部16の開口から外部ハウジング10の貫通路13内に押し込まれて、
図2及び
図9に示すように、外周嵌合面100aが貫通孔13に嵌合されると共に、第1リード線91が第1嵌合孔101に密接するように嵌合して挿通され、第2リード線92が第2嵌合孔102に密接するように嵌合して挿通される。
規制部材100の組み付けに際して、規制部材100が成型ゴムであるため、規制部材100を弾性変形させつつ押し込むことができ、組付け作業を円滑に行うことができる。
【0058】
続いて、第1リード線91の他端部91bが、第1端子112と結合し得る形態に屈曲され、又、第2リード線92の他端部92bが、第2端子113と結合し得る形態に屈曲される。
続いて、第1リード線91の他端部91bが第1端子112に電気的に接続され、第2リード線92の他端部92bが第2端子113に電気的に接続され、結合部101が外部ハウジング10のコネクタ連結部16に固定される。これにより、
図2に示すように、コネクタ110が外部ハウジング10の末端に固定される。以上により、圧力センサの組付けが完了する。
尚、上記組み付け手順は、一例であって、これに限定されるものではなく、その他の組付け手順を採用してもよい。
【0059】
上記第1実施形態に係る圧力センサによれば、ダイヤフラム30に伝達した熱は、断熱部材60により断熱されて、ダイヤフラム30から第1電極71及び圧電素子72への伝熱が抑制される。したがって、圧電素子72に対する熱の影響が抑制され、センサ出力の基準点(零点)の変動を防止でき、所期のセンサ精度を得ることができる。
【0060】
また、ハウジングは、外部ハウジング10と、外部ハウジング10の内側に嵌め込まれて固定されるサブハウジング20を含み、サブハウジング20には、ダイヤフラム30、保持板40、位置決め部材50、断熱部材60、圧力計測部材70、及び予荷重付与部材80が配置される。
これによれば、サブハウジング20に対して、ダイヤフラム30、保持板40、位置決め部材50、断熱部材60、圧力計測部材70、及び予荷重付与部材80を予め組み込んで、センサモジュールM1を形成することができる。
したがって、適用対象物に応じて取付け形状等が異なる場合は、外部ハウジング10のみを適用対象毎に設定して、センサモジュールM1を共用することができる。
【0061】
さらに、規制部材100により、軸線S方向において長尺な形状をなす第1リード線91及び第2リード線92の相対的な移動が規制されて両者の間隔が一定に維持される。
したがって、第1リード線91と第2リード線92との間の寄生容量の変化を防止できる。それ故に、寄生容量の変化に伴うノイズの発生を防止でき、高精度な出力信号を得ることができる。
また、規制部材100が成型ゴムであるため、組付け作業が容易になり、又、エンジンから外部ハウジング10を経て第1リード線91及び第2リード線92に伝わる振動を低減ないし防止ができ、所期の電気的な接続状態を維持することができる。
【0062】
図10ないし
図12は、第1実施形態に係る圧力センサに適用される規制部材の第1変形例を示すものである。
第1変形例に係る規制部材120は、前述同様のゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な円柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材120は、前述同様の長さ寸法L2で、外周嵌合面120a、第1嵌合溝111、第2嵌合溝122を備えている。
【0063】
外周嵌合面120aは、外部ハウジング10の貫通孔13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される外径寸法に形成されている。
第1嵌合溝121は、
図12に示すように、軸線Sに垂直な面において溝の底側が円形状でかつ開口側が円形状の部分の直径よりも幅狭い断面形状に形成されて、第1リード線91を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
第2嵌合溝122は、第1嵌合溝121と同様に、軸線Sに垂直な面において溝の底側が円形状でかつ開口側が円形状の部分の直径よりも幅狭い断面形状に形成されて、第2リード線92を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
ここで、第1嵌合溝121と第2嵌合溝122とは、軸線Sに平行であり、軸線Sを中心として点対称な位置に配置されて同一の形状に形成されているため、第2リード線92が第1嵌合溝121に嵌合され、第1リード線91が第2嵌合溝122に嵌合されてもよい。
【0064】
そして、規制部材120は、外部ハウジング10の貫通孔13に対して、外周嵌合面120aの外径を僅かに縮めるように弾性変形させつつ嵌合して固定されると共に、第1リード線91が第1嵌合溝121に密接するように嵌合して挿通され、第2リード線92が第2嵌合溝122に密接するように嵌合して挿通される。
このように、規制部材120が弾性変形可能な成型ゴムであるため、貫通孔13の内壁面が機械加工されていなくても、規制部材120を容易に嵌合させることができる。
また、第1嵌合溝121及び第2嵌合溝122は、孔形状に比べて弾性変形の自由度が高くなると共に接触面積が減るため、第1リード線91及び第2リード線92を嵌合させる際に、嵌合動作を円滑に行うことができ、組付け作業が容易になる。
【0065】
規制部材120を設けたことにより、エンジンの振動が圧力センサの外部ハウジング10に伝わっても、規制部材120により振動が減衰され、又、第1リード線91及び第2リード線92は、規制部材120により相対的な移動が規制されて両者の間隔が一定に維持される。
したがって、第1リード線91と第2リード線92との間の寄生容量の変化が防止される。その結果、寄生容量の変化に伴うノイズの発生を防止でき、高精度な出力信号を得ることができる。
【0066】
図13は、第1実施形態に係る圧力センサに適用される規制部材の第2変形例を示すものである。
第2変形例に係る規制部材130は、前述同様のゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な多段円柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材130は、前述同様の長さ寸法L2で、三つの外周嵌合面130a、二つの肉抜き部130b、第1嵌合溝131、第2嵌合溝132を備えている。
【0067】
三つの外周嵌合面130aは、軸線S方向に等間隔で離隔して配置され、外部ハウジング10の貫通孔13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される外径寸法に形成されている。
二つの肉抜き部130bは、軸線S方向に離隔すると共に三つの外周嵌合面130aの間に配置され、外周嵌合面130aよりも小さい外径の円柱状をなすように肉抜きして形成されている。
二つの肉抜き部130bは、規制部材130が外部ハウジング10の貫通孔13に嵌合された状態で、貫通孔13の内壁面と非接触となる領域である。
すなわち、規制部材130は、ハウジングの内壁面と部分的に接触するように形成されている。
【0068】
第1嵌合溝131は、嵌合溝131a及び嵌合溝131bにより画定され、第1リード線91を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
嵌合溝131aは、外周嵌合面130aの領域において、
図12に示す形態と同様に、軸線Sに垂直な面において溝の底側が円形状でかつ開口側が円形状の部分の直径よりも幅狭い断面形状に形成されている。
嵌合溝131bは、肉抜き部130bの領域において、嵌合溝131aに比べて、開口側の幅狭い領域がない断面形状に形成されている。
第2嵌合溝132は、嵌合溝132a及び嵌合溝132bにより画定され、第2リード線92を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
嵌合溝132aは、外周嵌合面130aの領域において、
図12に示す形態と同様に、軸線Sに垂直な面において溝の底側が円形状でかつ開口側が円形状の部分の直径よりも幅狭い断面形状に形成されている。
嵌合溝132bは、肉抜き部130bの領域において、嵌合溝132aに比べて、開口側の幅狭い領域がない断面形状に形成されている。
ここで、第1嵌合溝131と第2嵌合溝132とは、軸線Sに平行であり、軸線Sを中心として点対称な位置に配置されて同一の形状に形成されているため、第2リード線92が第1嵌合溝131に嵌合され、第1リード線91が第2嵌合溝132に嵌合されてもよい。
【0069】
第2変形例の規制部材130によれば、前述の規制部材120と同様の作用効果が得られる他に、規制部材130を外部ハウジング10に嵌合させる際に、肉抜き部130bが貫通孔13の内壁面と非接触となる部分の摩擦抵抗が減り、より円滑に嵌合させることができる。
【0070】
図14及び
図15は、第1実施形態に係る圧力センサに適用される規制部材の第3変形例を示すものである。
第3変形例に係る規制部材140は、前述同様のゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な多段円柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材140は、前述同様の長さ寸法L2で、三つの外周嵌合面140a、二つの肉抜き部140b、第1嵌合溝141、第2嵌合溝142を備えている。
【0071】
三つの外周嵌合面140aは、軸線S方向に等間隔で離隔して配置され、外部ハウジング10の貫通孔13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される外径寸法に形成されている。
二つの肉抜き部140bは、軸線S方向に離隔すると共に三つの外周嵌合面140aの間に配置され、外周嵌合面140aよりも小さい外径の円柱状をなすように肉抜きして形成されている。
二つの肉抜き部140bは、規制部材140が外部ハウジング10の貫通孔13に嵌合された状態で、貫通孔13の内壁面と非接触となる領域である。
すなわち、規制部材140は、ハウジングの内壁面と部分的に接触するように形成されている。
【0072】
第1嵌合溝141は、軸線S方向に離隔して配列された三つの嵌合溝141aにより画定され、第1リード線91を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
嵌合溝141aは、
図15に示すように、外周嵌合面140aの領域において、軸線Sに垂直な面において略半円の断面形状に形成されている。
第2嵌合溝142は、軸線S方向に離隔して配列された三つの嵌合溝142aにより画定され、第2リード線92を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
嵌合溝142aは、
図15に示すように、外周嵌合面140aの領域において、軸線Sに垂直な面において略半円の断面形状に形成されている。
ここで、第1嵌合溝141と第2嵌合溝142とは、軸線Sに平行であり、軸線Sを中心として点対称な位置に配置されて同一の形状に形成されているため、第2リード線92が第1嵌合溝141に嵌合され、第1リード線91が第2嵌合溝142に嵌合されてもよい。
【0073】
第3変形例の規制部材140によれば、前述の規制部材120と同様の作用効果が得られる他に、規制部材140を外部ハウジング10に嵌合させる際に、肉抜き部140bが貫通孔13の内壁面と非接触となる部分の摩擦抵抗が減り、より円滑に嵌合させることができる。
また、第1嵌合溝141及び第2嵌合溝142が略半円状の断面であり、第1リード線91が第1嵌合溝141と貫通孔13の内壁面に挟まれて固定され、第2リード線92が第2嵌合溝142と貫通孔13の内壁面に挟まれて固定されるため、規制部材140の嵌合動作をさらに円滑に行うことができる。
【0074】
図16は、第1実施形態に係る圧力センサに適用される規制部材の第4変形例を示すものである。
第4変形例に係る規制部材150は、前述同様のゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な多段円柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材150は、前述同様の長さ寸法L2で、複数の環状嵌合部150a、複数の肉抜き部150b、第1嵌合溝151、第2嵌合溝152を備えている。
【0075】
複数の環状嵌合部150aは、軸線S方向に等間隔で離隔して配置され、外部ハウジング10の貫通孔13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される外径寸法に形成されている。
複数の肉抜き部150bは、軸線S方向に等間隔で離隔すると共に複数の環状嵌合部150aの間に配置され、環状嵌合部150aよりも小さい外径の円柱状をなすように肉抜きして形成されている。
複数の肉抜き部150bは、規制部材150が外部ハウジング10の貫通孔13に嵌合された状態で、貫通孔13の内壁面と非接触となる領域である。
すなわち、規制部材150は、ハウジングの内壁面と部分的に接触するように形成されている。
【0076】
第1嵌合溝151は、軸線S方向に離隔して配列された複数の嵌合溝151aにより画定され、第1リード線91を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
嵌合溝151aは、環状嵌合部150aの領域において、
図12に示す形態と同様に、軸線Sに垂直な面において溝の底側が円形状でかつ開口側が円形状の部分の直径よりも幅狭い断面形状に形成されている。
第2嵌合溝152は、軸線S方向に離隔して配列された複数の嵌合溝152aにより画定され、第2リード線92を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
嵌合溝152aは、環状嵌合部150aの領域において、
図12に示す形態と同様に、軸線Sに垂直な面において溝の底側が円形状でかつ開口側が円形状の部分の直径よりも幅狭い断面形状に形成されている。
ここで、第1嵌合溝151と第2嵌合溝152とは、軸線Sに平行であり、軸線Sを中心として点対称な位置に配置されて同一の形状に形成されているため、第2リード線92が第1嵌合溝151に嵌合され、第1リード線91が第2嵌合溝152に嵌合されてもよい。
【0077】
第4変形例の規制部材150によれば、前述の規制部材120と同様の作用効果が得られる他に、規制部材150を外部ハウジング10に嵌合させる際に、肉抜き部150bが貫通孔13の内壁面と非接触となる部分の摩擦抵抗が減り、より円滑に嵌合させることができる。
【0078】
図17及び
図18は、第1実施形態に係る圧力センサに適用される規制部材の第5変形例を示すものである。
第5変形例に係る規制部材160は、前述同様のゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な略十字断面の柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材160は、前述同様の長さ寸法L2で、四つの外周嵌合面160a、四つの肉抜き部160b、第1嵌合溝161、第2嵌合溝162を備えている。
【0079】
四つの外周嵌合面160aは、円柱状の外周面の一部を画定するべく、軸線S回りに等間隔で離隔して配置され、外部ハウジング10の貫通孔13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される外径寸法に形成されている。
四つの肉抜き部160bは、軸線S回りに等間隔で離隔すると共に四つの外周嵌合面160aの間に配置され、中心角が約90度の扇状断面をなすと共に軸線S方向に伸長するように肉抜きして形成されている。
四つの肉抜き部160bは、規制部材160が外部ハウジング10の貫通孔13に嵌合された状態で、貫通孔13の内壁面と非接触となる領域である。
すなわち、規制部材160は、ハウジングの内壁面と部分的に接触するように形成されている。
【0080】
第1嵌合溝161は、
図18に示すように、外周嵌合面160aにおいて、軸線Sに垂直な面において溝の底側が円形状でかつ開口側が円形状の部分の直径よりも幅狭い断面形状に形成されて、第1リード線91を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
第2嵌合溝162は、第1嵌合溝161と同様に、外周嵌合面160aにおいて、軸線Sに垂直な面において溝の底側が円形状でかつ開口側が円形状の部分の直径よりも幅狭い断面形状に形成されて、第2リード線92を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
ここで、第1嵌合溝161と第2嵌合溝162とは、軸線Sに平行であり、軸線Sを中心として点対称な位置に配置されて同一の形状に形成されているため、第2リード線92が第1嵌合溝161に嵌合され、第1リード線91が第2嵌合溝162に嵌合されてもよい。
【0081】
第5変形例の規制部材160によれば、前述の規制部材120と同様の作用効果が得られる他に、規制部材160を外部ハウジング10に嵌合させる際に、肉抜き部160bが貫通孔13の内壁面と非接触となる部分の摩擦抵抗が減り、より円滑に嵌合させることができる。
【0082】
図19ないし
図26は、本発明に係る圧力センサの第2実施形態を示すものであり、前述の第1実施形態に係る圧力センサと同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態に係る圧力センサは、筒状のハウジングとしての外部ハウジング210及びサブハウジング20、ダイヤフラム30、位置決め部材250、断熱部材260、圧力計測部材270、予荷重付与部材280、第2導電体としてのリード線290、規制部材300、コネクタ310を備えている。
圧力計測部材270は、ハウジングの先端側から軸線S方向に順次積層された、第1電極71、圧電素子72、及び第2電極273により構成されている。
予荷重付与部材280は、固定部材281及び絶縁部材282により構成されている。
【0083】
外部ハウジング210は、第1導電体を兼ねるものであり、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて、軸線S方向に伸長する円筒状に形成され、先端側に位置する嵌合内周壁11、段差部12、貫通路13、雄ネジ部14、フランジ部15、末端に位置するコネクタ連結部216を備えている。
コネクタ連結部216は、コネクタ310を連結するように形成されている。
【0084】
位置決め部材250は、位置決め部材50と同様の絶縁性及び断熱性を有する絶縁材料を用いて、軸線S方向に伸長する略円筒状に形成され、軸線Sを中心とする円筒状の貫通孔51、円筒状の外周面53、ダイヤフラム30の可撓平板部31に接する環状の端面252を備えている。
【0085】
そして、位置決め部材250は、サブハウジング20の内周壁22に嵌合されると共に、貫通孔51内において、ダイヤフラム30の突出部32と、断熱部材260と、第1電極71、圧電素子72及び第2電極273からなる圧力計測部材270と、絶縁部材282とを積層した状態で、軸線S上に位置決めして保持する。
【0086】
また、位置決め部材250の熱伝導率は、断熱部材260の熱伝導率と同等で、絶縁部材282の熱伝導率よりも小さいことが好ましい。これにより、位置決め部材250を断熱部材としても機能させることができる。
さらに、位置決め部材250は、断熱部材260及び圧力計測部材270を囲繞するように形成されているため、ダイヤフラム30及びハウジングの壁部から圧電素子72に向かう伝熱をより効率良く抑制することができる。
【0087】
断熱部材260は、電導性を有しかつ断熱性を有するものであり、突出部32及び第1電極71の外径と同等の外径をなす所定高さの円柱状に形成されている。
ここで、断熱部材260としては、熱容量が大きく、熱伝導率の小さいものが好ましい。熱伝導率は、例えば15W/m・K以下が好ましく、より好ましくは5W/m・K以下である。具体的な材料としては、例えば、低熱伝導性材料により形成されたセラミックス等の部材の表面に導電性の薄膜を設けた導電被膜絶縁材料、又は、シリコン層及びゲルマニウム層を交互に並べた層状構造の断熱導電材料、その他の断熱導電材料等である。
【0088】
そして、断熱部材260は、サブハウジング20の内側において、ダイヤフラム30の突出部32と第1電極71の間に密接して配置される。
これにより、断熱部材260は、ダイヤフラム30を介して第1電極71を第1導電体としてのハウジング(外部ハウジング110及びサブハウジング20)と電気的に接続すると共に、ダイヤフラム30から第1電極71への伝熱を抑制するように機能する。
【0089】
圧力計測部材270は、圧力を検出するべく機能するものであり、サブハウジング20の内側において、先端側から軸線S方向に順次積層された、第1電極71、圧電素子72、及び第2電極273を備えている。
第1電極71は、位置決め部材250の貫通孔51内において、一方の面が断熱部材260と密接し、他方の面が圧電素子72と密接するように配置される。
そして、第1電極71は、断熱部材260、ダイヤフラム30、及び第1導電体を兼ねるハウジング(外部ハウジング110及びサブハウジング20)を介して、電気回路に対して電気的にグランド側(マイナス側)に接続される。
【0090】
第2電極273は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の導電性の金属材料を用いて、位置決め部材250の貫通孔51に嵌め込まれる外径をなす円柱又は円板状に形成され、一端面においてリード線290の一端部290aを接続する円筒状の接続部273aを備えている。
そして、第2電極273は、位置決め部材250の貫通孔51内において、一方の面が圧電素子72と密接し、他方の面が絶縁部材282と密接するように配置される。
【0091】
予荷重付与部材280は、固定部材281及び絶縁部材282により構成され、ハウジングの一部をなすサブハウジング20の内側に配置されて、ダイヤフラム30に向けて圧力計測部材270を押圧して予荷重を付与し、圧力計測部材270に対してセンサとしての直線特性を与える役割をなす。
【0092】
固定部材281は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて略円柱状に形成され、軸線Sを中心とする中央領域においてリード線290を非接触にて通す貫通孔281aを備えている。
絶縁部材282は、電気的に絶縁性の高い絶縁材料を用いて、位置決め部材250の貫通孔51に嵌め込まれる外径をなす円柱又は円板状に形成され、軸線Sを中心とする中央領域において第2電極273の接続部273a及びリード線290を通す貫通孔282aを備えている。
【0093】
絶縁部材282の絶縁材料としては、熱容量が小さく、熱伝導率が大きいものが好ましく、具体的な材料としては、例えば、アルミナ、サファイア、窒化アルミニウム、炭化珪素等のセラミックス、又は、導電性材料に絶縁処理を施したものが挙げられる。
また、絶縁部材282としては、断熱部材260の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有するもの、例えば30W/m・K以上のものが好ましい。また、絶縁部材282としては、断熱部材260よりも熱容量が小さいものが好ましい。これによれば、断熱部材260により圧電素子72に伝わる伝熱量をできるだけ抑える一方で、圧電素子72に伝わった熱は絶縁部材282を通して放熱を促進させることができる。
【0094】
リード線290は、
図20及び
図24に示すように、ニッケル等の溶接性の高い導線がフッ素系等の絶縁材料により覆われて軸線S方向に長尺に形成された細線である。
そして、リード線290は、一端部290aが圧力計測部材270の第2電極273に電気的に接続され、他端部290bがコネクタ310の端子312に電気的に接続され、外部コネクタを介して電気回路に対して電気的に出力側(プラス側)に接続される。
また、リード線290は、固定部材280の貫通孔281aを非接触にて通過するように配設される。
さらに、リード線290は、一端部290aと他端部290bの間の領域でかつ予荷重付与部材280から外れた領域が規制部材300の嵌合孔301に密接して嵌合されて挿通されている。
【0095】
規制部材300は、前述同様のゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な多段円柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材300は、
図20及び
図22に示すように、外部ハウジング210の貫通路13の軸線S方向における長さ寸法L3よりも短い長さ寸法L4で、三つの外周嵌合面300a、二つの肉抜き部300b、嵌合孔301を備えている。
ここで、貫通孔13の長さ寸法L3は、
図20に示すように、外部ハウジング10内において、段差部12からコネクタ連結部216に連結されたコネクタ310の端子312の内側端部までの軸線S方向における長さである。尚、規制部材300の長さ寸法L4は、貫通孔13の長さ寸法L3と同じでもよい。
【0096】
三つの外周嵌合面300aは、
図26に示すように、軸線S方向に等間隔で離隔して配置され、外部ハウジング210の貫通孔13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される外径寸法に形成されている。
二つの肉抜き部300bは、軸線S方向に離隔すると共に三つの外周嵌合面300aの間に配置され、外周嵌合面300aよりも小さい外径の円柱状をなすように肉抜きして形成されている。
二つの肉抜き部300bは、規制部材300が外部ハウジング210の貫通孔13に嵌合された状態で、貫通孔13の内壁面と非接触となる領域である。
すなわち、規制部材300は、ハウジングの内壁面と部分的に接触するように形成されている。
嵌合孔301は、軸線Sと同軸上に配置され、リード線290を密接して嵌合させて挿通させるべく、軸線S方向に伸長して貫通する。
【0097】
そして、規制部材300は、外部ハウジング210の貫通孔13に対して、外周嵌合面300aの外径を僅かに縮めるように弾性変形させつつ嵌合して固定されると共に、リード線290が嵌合孔301に隙間なく密接して嵌合して固定される。
このように、規制部材300が弾性変形可能な成型ゴムであるため、貫通孔13の内壁面が機械加工されていなくても、規制部材300を容易に嵌合させることができる。
【0098】
規制部材300を設けたことにより、エンジンの振動が圧力センサの外部ハウジング210に伝わっても、規制部材300により振動が減衰され、又、外部ハウジング210及びリード線290は、規制部材300により相対的な移動が規制されて両者の間隔が一定に維持される。
したがって、外部ハウジング210とリード線290との間の寄生容量の変化が防止される。その結果、寄生容量の変化に伴うノイズの発生を防止でき、高精度な出力信号を得ることができる。
【0099】
また、規制部材300は、サブハウジング20から軸線S方向の奥側に外れた領域、特に、予荷重付与部材280から外れた領域において、外部ハウジング210内に配置されているため、予荷重付与部材280により予め設定された予荷重に対して影響を及ぼすことなく、外部ハウジング210に対するリード線290の相対的な移動のみを規制することができる。
【0100】
コネクタ310は、
図20に示すように、結合部311、端子312を備えている。
結合部311は、外部ハウジング210の末端に位置するコネクタ連結部216に結合される。
端子312は、絶縁部材を介して結合部311に固定されると共にリード線290の他端部290bと電気的に接続され、又、外部コネクタの接続端子と電気的に接続される。
【0101】
次に、上記構成をなす圧力センサの組み立て作業について説明する。
作業に際して、外部ハウジング210、サブハウジング20、ダイヤフラム30、位置決め部材250、断熱部材260、第1電極71、圧電素子72、第2電極273、固定部材281、絶縁部材282、リード線290、規制部材300、及びコネクタ310が準備される。
【0102】
先ず、ダイヤフラム30が、サブハウジング20の先端面23に溶接等により固定される。
次に、位置決め部材250がサブハウジング20内に嵌め込まれる。続いて、位置決め部材250の内側に、断熱部材260、第1電極71、圧電素子72、リード線290の一端部290aが接続された第2電極273、及び絶縁部材282が順次積層して嵌め込まれる。尚、リード線290は、後の工程で、第2電極273に接続されてもよい。
【0103】
その後、固定部材281が、絶縁部材282を押し付けるようにしてサブハウジング20内に嵌め込まれ、予荷重が付与された状態で、固定部材281がサブハウジング20に溶接等により固定される。これにより、
図24及び
図25に示すように、センサモジュールM2が形成される。尚、センサモジュールM2の組付け方法は、上記手順に限るものではない。
【0104】
続いて、センサモジュールM2が外部ハウジング210に組み込まれる。すなわち、リード線290が外部ハウジング210の貫通路13に通されると共に、サブハウジング20が外部ハウジング210の嵌合内周壁11に嵌め込まれて、奥側端面24が段差部12に当接させられる。
その後、サブハウジング20が、外部ハウジング210に対し溶接により固定される。
【0105】
続いて、規制部材300が、コネクタ連結部216の開口から外部ハウジング210の貫通路13内に押し込まれて、
図20及び
図26に示すように、外周嵌合面300aが貫通孔13に嵌合されると共に、リード線290が嵌合孔301に密接するように嵌合して挿通される。
規制部材300の組み付けに際して、規制部材300が成型ゴムであるため、規制部材300を弾性変形させつつ押し込むことができ、組付け作業を円滑に行うことができる。
【0106】
続いて、リード線290の他端部290bが、端子312に電気的に接続され、結合部311が外部ハウジング210のコネクタ連結部216に固定される。これにより、
図20に示すように、コネクタ310が外部ハウジング210の末端に固定される。以上により、圧力センサの組付けが完了する。
尚、上記組み付け手順は、一例であって、これに限定されるものではなく、その他の組付け手順を採用してもよい。
【0107】
上記第2実施形態に係る圧力センサによれば、ダイヤフラム30に伝達した熱は、断熱部材260により断熱されて、ダイヤフラム30から第1電極71及び圧電素子72への伝熱が抑制される。したがって、圧電素子72に対する熱の影響が抑制され、センサ出力の基準点(零点)の変動を防止でき、所期のセンサ精度を得ることができる。
【0108】
また、ハウジングは、外部ハウジング210と、外部ハウジング210の内側に嵌め込まれて固定されるサブハウジング20を含み、サブハウジング20には、ダイヤフラム30、位置決め部材250、断熱部材260、圧力計測部材270、及び予荷重付与部材280が配置される。
これによれば、サブハウジング20に対して、ダイヤフラム30、位置決め部材250、断熱部材260、圧力計測部材270、及び予荷重付与部材280を予め組み込んで、センサモジュールM2を形成することができる。
したがって、適用対象物に応じて取付け形状等が異なる場合は、外部ハウジング210のみを適用対象毎に設定して、センサモジュールM2を共用することができる。
【0109】
さらに、規制部材300により、軸線S方向において長尺な形状をなす第1導電体を兼ねる外部ハウジング210及びリード線290の相対的な移動が規制されて両者の間隔が一定に維持される。
したがって、外部ハウジング210とリード線290との間の寄生容量の変化を防止できる。それ故に、寄生容量の変化に伴うノイズの発生を防止でき、高精度な出力信号を得ることができる。
また、規制部材300が成型ゴムであるため、組付け作業が容易になり、又、エンジンから外部ハウジング210を経てリード線290に伝わる振動を低減ないし防止ができ、所期の電気的な接続状態を維持することができる。
【0110】
図27は、第2実施形態に係る圧力センサに適用される規制部材の第1変形例を示すものである。
第1変形例に係る規制部材320は、前述同様のゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な多段円柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材320は、前述同様の長さ寸法L4で、複数の環状嵌合部320a、複数の肉抜き部320b、嵌合孔321を備えている。
【0111】
複数の環状嵌合部320aは、軸線S方向に等間隔で離隔して配置され、外部ハウジング210の貫通孔13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される外径寸法に形成されている。
複数の肉抜き部320bは、軸線S方向に等間隔で離隔すると共に複数の環状嵌合部320aの間に配置され、環状嵌合部320aよりも小さい外径の円柱状をなすように肉抜きして形成されている。
複数の肉抜き部320bは、規制部材320が外部ハウジング210の貫通孔13に嵌合された状態で、貫通孔13の内壁面と非接触となる領域である。
すなわち、規制部材320は、ハウジングの内壁面と部分的に接触するように形成されている。
嵌合孔321は、軸線Sと同軸上に配置され、リード線290を密接して嵌合させて挿通させるべく、軸線S方向に伸長して貫通する。
第1変形例の規制部材320によれば、前述の規制部材300と同様の作用効果が得られる。
【0112】
図28及び
図29は、第2実施形態に係る圧力センサに適用される規制部材の第2変形例を示すものである。
第2変形例に係る規制部材330は、前述同様のゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な略十字断面の柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材330は、前述同様の長さ寸法L4で、四つの外周嵌合面330a、四つの肉抜き部330b、嵌合孔331を備えている。
【0113】
四つの外周嵌合面330aは、円柱状の外周面の一部を画定するべく、軸線S回りに等間隔で離隔して配置され、外部ハウジング210の貫通孔13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される外径寸法に形成されている。
四つの肉抜き部330bは、
図29に示すように、軸線S回りに等間隔で離隔すると共に四つの外周嵌合面330aの間に配置され、中心角が約90度の扇状断面をなすと共に軸線S方向に伸長するように肉抜きして形成されている。
四つの肉抜き部330bは、規制部材330が外部ハウジング210の貫通孔13に嵌合された状態で、貫通孔13の内壁面と非接触となる領域である。
すなわち、規制部材330は、ハウジングの内壁面と部分的に接触するように形成されている。
嵌合孔331は、軸線Sと同軸上に配置され、リード線290を密接して嵌合させて挿通させるべく、軸線S方向に伸長して貫通する。
第2変形例の規制部材330によれば、前述の規制部材300,310と同様の作用効果が得られる。
【0114】
図30は、第2実施形態に係る圧力センサに適用される規制部材の第3変形例を示すものである。
第3変形例に係る規制部材340は、前述同様のゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な円柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材340は、前述同様の長さ寸法L4で、外周嵌合面340a、嵌合孔341を備えている。
外周嵌合面340aは、貫通路13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される外径寸法に形成されている。
嵌合孔341は、軸線Sと同軸上に配置され、リード線290を密接して嵌合させて挿通させるべく、軸線S方向に伸長して貫通する。
第3変形例の規制部材340によれば、より堅固にリード線290を固定して保持することができる。
【0115】
図31は、第2実施形態に係る圧力センサに適用される規制部材の第4変形例を示すものである。
第4変形例に係る規制部材350は、前述同様のゴム材料を用いて、金型等により、軸線S方向に長尺な多段円柱状をなす成型ゴムとして形成されている。
規制部材350は、前述同様の長さ寸法L4で、三つの外周嵌合面350a、二つの肉抜き部350b、嵌合溝351を備えている。
【0116】
三つの外周嵌合面350aは、軸線S方向に等間隔で離隔して配置され、外部ハウジング210の貫通孔13の内壁面に密接して嵌合される、ここでは圧入される外径寸法に形成されている。
二つの肉抜き部350bは、軸線S方向に離隔すると共に三つの外周嵌合面350aの間に配置され、外周嵌合面350aよりも小さい外径の円柱状をなすように肉抜きして形成されている。
二つの肉抜き部350bは、規制部材350が外部ハウジング210の貫通孔13に嵌合された状態で、貫通孔13の内壁面と非接触となる領域である。
すなわち、規制部材350は、ハウジングの内壁面と部分的に接触するように形成されている。
【0117】
嵌合溝351は、軸線S方向に離隔して配列された三つの嵌合溝351aにより画定され、リード線290を密接して嵌合させて挿通させるべく軸線S方向に伸長する。
嵌合溝351aは、外周嵌合面350aの領域において、
図15に示す場合と同様に、軸線Sに垂直な面において略半円の断面形状に形成されている。
【0118】
第4変形例の規制部材350によれば、前述の規制部材300,320,330と同様の作用効果が得られる。
また、嵌合溝351が略半円状の断面であり、リード線290が嵌合溝351と貫通孔13の内壁面に挟まれて固定されるため、規制部材350の嵌合動作をさらに円滑に行うことができる。
【0119】
上記第1及び第2実施形態において、規制部材100,120,130,140,150,160,300,320,330,340,350の長さ寸法L2,L4は、貫通孔13の長さ寸法L1,L3よりも僅かに短いものを示したが、これに限定されるものではなく、第1導電体(第1リード線91,外部ハウジング210)と第2導電体(第2リード線92,リード線290)との相対的な移動を規制できる限り、より短い寸法の規制部材を採用してもよい。
【0120】
上記第1及び第2実施形態においては、ダイヤフラムとして、可撓板状部31及び突出部32を一体的に備えたダイヤフラム30を示したが、これに限定されるものではなく、可撓板状部31と突出部32が別個に形成されて、可撓板状部31がダイヤフラムとして機能し、突出部32が力伝達部材として機能する構成を採用してもよい。
【0121】
上記第1及び第2実施形態においては、ハウジングとして、外部ハウジング10,210と、サブハウジング20を含む構成を示したが、これに限定されるものではなく、一つのハウジングを採用してもよい。
上記第1及び第2実施形態においては、断熱部材60,260を備えた圧力センサを示したが、これに限定されるものではなく、断熱部材60,260を廃止した構成であってもよい。
【0122】
上記第1実施形態においては、第1導電体として第1リード線91及び第2導電体として第2リード線92を示し、第2実施形態においては、第2導電体としてリード線290を示したが、これに限定されるものではなく、軸線S方向に長尺な導電体であれば、ピン状の導電体、その他の形態をなす導電体を採用してもよい。
上記第1及び第2実施形態においては、規制部材として、弾性材料である成型ゴムを採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、予荷重付与部材80,280の領域に流れ込まないようにして、流動性のある充填剤を充填して硬化させてもよい。
【0123】
上記第1実施形態においては、規制部材100,120,130,140,150,160が、外部ハウジング10の貫通孔13に密接に嵌合される構成を示したが、これに限定されるものではなく、第1リード線91と第2リード線92との相対的な移動を規制できる限り、貫通孔13の内壁面と非接触な状態で外部ハウジング10内に配置される規制部材を採用してもよい。
【0124】
以上述べたように、本発明の圧力センサは、寄生容量の変化を抑制ないし防止して、ノイズの発生を抑制ないし防止できるため、特に振動を伴うエンジンの燃焼室内の燃焼ガス等の圧力を検出する圧力センサとして適用できるのは勿論のこと、エンジン以外の振動する環境に配置される機器の圧力媒体の圧力を検出する圧力センサとしても有用である。