(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示す方法は温度測定にサーモグラフィーカメラを用いる。このため、溶接の進行に伴って生じるヒューム、スパッタによって鋼材の表面が汚れることで、温度計測の精度が低下する課題がある。
特許文献2に示す方法は、マグネットにより鋼材に取付けられた温度計測装置を、作業員が手作業により操作するものである。当該発明は溶接の自動化について示唆されていない。更に、溶接の進行に伴って鋼材の温度が上昇すると、マグネットの吸着力が減少して温度計測装置が落下するおそれがある。
特許文献3に示す方法は、コイルの弾性を用いることから、鋼材表面から垂直方向に支持構造が存在する。このため温度センサ全体が分厚くなる。このため、溶接作業時に他の構成要素(例えば、溶接トーチやケーブル)に干渉するおそれがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、安定して高精度に鋼材の表面温度を測定できる温度計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る温度計測装置は、溶接ロボットが溶接する鋼材の温度を計測する温度計測装置であって、前記鋼材と接触する温度センサと、前記温度センサが一方の端に取り付けられた延伸部材と、を備え、前記溶接ロボットは、前記鋼材に配置されたガイドレールの上を移動することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、鋼材と接触する温度センサと、温度センサが一方の端に取り付けられた延伸部材と、を備えている。鋼材と温度センサを接触させることで、接触させない場合と比較してより正確な表面温度を計測することができる。
また、温度センサは延伸部材の一方の端に取付けられ、延伸部材によって押し付けられることで鋼材と接触する。ここで、鋼材と温度センサとの接触に磁石や接着剤を用いた場合、鋼材の温度上昇によって温度計側センサの表面への吸着力が変化することがある。これに対し、温度センサを延伸部材によって押し付けることで、鋼材の温度上昇の影響を受けることなく、安定して温度センサを鋼材に接触させることができる。よって、より正確に鋼材の表面温度を計測することに寄与することができる。
また、コイルの弾性によって鋼材表面に温度センサを取付ける場合と比較して、鋼材表面から垂直方向への厚さを少なくすることができる。よって、溶接ロボットの稼働範囲に干渉することを防ぐことができる。
【0008】
また、前記溶接ロボットは、ケーブルが接続されており、前記延伸部材の他方の端は、前記ガイドレールと前記鋼材との間に配置されていてもよい。
【0009】
この発明によれば、延伸部材の他方の端は、溶接ロボットが移動するガイドレールと鋼材との間に配置されている。このことによって、例えば、延伸部材が溶接ロボットに接続されたケーブル等と干渉することを防ぐことができる。よって、ケーブルと延伸部材とが絡まることを防ぎ、溶接作業を安全かつ効率的に行うことができる。
【0010】
また、前記温度センサからの信号を伝えるための信号線を更に備え、前記信号線は、前記延伸部材の面のうち、前記鋼材を溶接する際の前記溶接ロボットに対向する面とは反対側の面に設けられていてもよい。
【0011】
この発明によれば、信号線は、延伸部材の面のうち、鋼材を溶接する際の溶接ロボットに対向する面とは反対側の面に設けられている。これにより、温度センサに接続された信号線と溶接ロボットに接続されたケーブルを絡みにくくすることができる。更に、溶接の際に発生するスパッタの影響を信号線が受けにくくすることができる。
【0012】
また、前記延伸部材は、前記鋼材に沿うように配置されていてもよい。
【0013】
この発明によれば、延伸部材は、鋼材に沿うように配置されている。つまり、延伸部材は、一方の端から他方の端まで鋼材から離れることなく配置されている。これにより、溶接作業中の溶接ロボットと延伸部材とが干渉することを防ぐことができる。また、溶接ロボットにケーブルが接続されている場合には、延伸部材とケーブルとを更に絡みにくくすることができる。
【0014】
また、前記延伸部材の他方の端は、コの字状に形成されており、前記延伸部材は、前記延伸部材の他方の端が、前記ガイドレールに設けられた挿入部に挿入されることで、前記ガイドレールに固定されてもよい。
【0015】
この発明によれば、延伸部材は、延伸部材の他方の端が、ガイドレールに設けられた挿入部に挿入されることで、ガイドレールに固定される。これにより、延伸部材の脱着を容易にすることで、ガイドレールに延伸部材を取り外しする際に、延伸部材とケーブルとが絡み難くすることができる。
また、ガイドレールに挿入部が複数設けられている場合は、作業時において最も好適な場所を選択して延伸部材を取付けることができる。
【0016】
また、前記延伸部材は、弾性体であり、前記延伸部材は、前記温度センサが前記鋼材に接触するよう、前記温度センサを付勢してもよい。
【0017】
この発明によれば、延伸部材は、弾性体であり、温度センサが鋼材に接触するよう、温度センサを付勢する。つまり、温度センサは、延伸部材の有する弾性によって押し付けられる。このことによって、温度センサを延伸部材の弾性によってより確実に押し付けることができる。よって、より安定して温度センサを鋼材に接触させることができる。また、その弾性により、延伸部材とケーブルとが絡み難くなり得る。
【0018】
また、前記延伸部材は、前記鋼材と垂直な方向に前記温度センサを付勢してもよい。
【0019】
この発明によれば、延伸部材は、鋼材の長手方向と垂直な方向に温度センサを付勢する。これにより、より正確に鋼材の温度を測定することができる。
【0020】
また、本発明に係る溶接システムは、鋼材を溶接するための溶接ロボットと、前記溶接ロボットが移動するガイドレールと、前記溶接ロボットにより溶接される鋼材と接触する温度センサと、前記温度センサが一方の端に設けられた延伸部材と、を備える。
【0021】
この発明によれば、鋼材を溶接するための溶接ロボットと、溶接ロボットが移動するガイドレールと、溶接ロボットにより溶接される鋼材と接触する温度センサと、温度センサが一方の端に設けられた延伸部材と、を備える。つまり、鋼材と接触する温度センサが、延伸部材の一方の端に設けられている。鋼材の温度測定に接触式の温度センサを用いることで、鋼材の正確な表面温度を計測することができる。また、温度センサが延伸部材によって支持されていることで、例えば、温度センサが鋼材に対して磁石や接着剤を用いて接触させた場合と比較して、鋼材の温度上昇の影響を受けることを防ぐことができる。よって、安定して温度センサを鋼材に接触させることができる。
【0022】
また、本発明に係る溶接システムの取付け方法は、鋼材にガイドレールを取り付ける取付けステップと、前記取付けステップで取り付けられたガイドレールに溶接ロボットを設置する設置ステップと、前記溶接ロボットが溶接する前記鋼材に温度センサを接触させる接触ステップと、を備える。
【0023】
この発明によれば、鋼材にガイドレールを取り付ける取付けステップと、取付けステップで取り付けられたガイドレールに溶接ロボットを設置する設置ステップと、溶接ロボットが溶接する鋼材に温度センサを接触させる接触ステップと、を備える。つまり、溶接ロボットをガイドレールに設置してから、温度センサを鋼材に接触させる。先に溶接ロボットを設置してから温度センサを設置することで、溶接ロボットの稼働範囲を確保してから、安全に温度センサを設置することができる。
【0024】
また、前記温度センサが一方の端に設けられた延伸部材の他方の端を、前記取付けステップで取り付けられた前記ガイドレールと前記鋼材との間に配置する配置ステップを更に備えてもよい。
【0025】
この発明によれば、温度センサが一方の端に設けられた延伸部材の他方の端を、取付けステップで取り付けられたガイドレールと鋼材との間に配置する配置ステップを更に備える。つまり、温度センサが鋼材に接触するとき、延伸部材によって支持された状態となる。これにより、安定して高精度に鋼材の表面温度を測定でき、かつ、溶接ロボットと温度センサ及び延伸部材との干渉を防ぎ、安全に溶接作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、安定して高精度に鋼材の表面温度を測定できる温度計測装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る温度計測装置30及び溶接システム100を説明する。
図1に示すように、溶接システム100は、溶接ロボット10と、移動部20と、温度計測装置30と、を備える。
図2に示すように、溶接システム100は、例えば、建築現場において鋼管柱200(鋼材)の端部同士を溶接するために用いられる。本実施形態において、鋼管柱200は四角柱状である。また、鋼管柱200の四角柱状の一片は300mm〜800mm程度のものである。溶接システム100は、溶接対象の鋼管柱200の周囲を、移動部20に沿って溶接ロボット10が移動しながら溶接する(詳細は後述する)。
【0029】
溶接ロボット10は、鋼管柱200を溶接する。
図3に示すように、溶接ロボット10は、本体部11と、スライド部12と、支持部13と、溶接トーチ14と、溶接トーチ用ケーブル15と、ワイヤ送給機16と、ロボット制御盤17と、溶接ロボット用ケーブル18と、を備える。
本体部11は、溶接ロボット10の基台となる部位である。本体部11には不図示のサーボモータが内蔵されている。これにより、ガイドレール21(後述する)を溶接ロボット10が移動する。
スライド部12は、溶接ロボット10における、ガイドレール21に取付けられる部位である。溶接ロボット10は、スライド部12がガイドレール21の上を摺動することで、鋼管柱200の周方向に移動する。
支持部13は、本体部11と溶接トーチ14(後述する)との間に設けられ、溶接トーチ14を支持している。支持部13は、溶接トーチ14を把持するのみであってもよいし、例えば、溶接トーチ14の向き及び角度を変更できる機構を有していてもよい。より詳細には、支持部13は、駆動源を備え、制御盤からの制御信号に従ってこれら向き及び角度を変更できる機構を有していても良い。
【0030】
溶接トーチ14は、鋼管柱200同士を溶接する部位である。溶接トーチ14による溶接は、アーク溶接が好適に用いられる。溶接トーチ14の先端部から鋼管柱200の開先210へ向けて放電することで、鋼管柱200同士を溶接する。ここで、開先210とは、鋼管柱200の端部同士の間にある空間である。
図4に示すように、開先210は、一方の鋼管柱200の端部を傾斜状に削ることで形成される。
溶接ロボット10を設置する際は、溶接トーチ14の先端を溶接される鋼管柱200の開先210に合わせるようにして設置する。
【0031】
溶接トーチ用ケーブル15は、溶接トーチ14に接続されたケーブルである。溶接トーチ用ケーブル15は、溶接トーチ14に電圧を付加するための電線と、溶接用のガス及び溶接ワイヤを溶接部に供給する供給線と、を備える。
図3に示すように、溶接トーチ用ケーブル15の一方の端は溶接トーチ14に接続されている。また、他方の端はワイヤ送給機16に接続されている。
【0032】
ワイヤ送給機16は、溶接トーチ14に、アーク溶接に必要な部材及び電圧を供給する。ワイヤ送給機16は、アーク溶接に用いる電圧を付加する溶接電源と、溶接トーチ14にガスを供給するガスボンベと、溶接トーチ14に溶接ワイヤを供給するワイヤ送給装置と、を備える。ガスボンベは、例えば、ワイヤ供給装置に接続されている。これにより、ガス及び溶接ワイヤは、ともに供給線を介して溶接トーチ14に供給される。
溶接トーチ用ケーブル15の他方の端において、供給線はワイヤ送給機16のワイヤ供給装置に、電線は溶接電源に接続されている。なお、本実施形態において、ワイヤ送給機16は、公知のものが好適に用いられる。
【0033】
ロボット制御盤17は、溶接ロボット10の動作を制御する。ロボット制御盤17は、特に、本体部11におけるサーボモータの回転や、溶接トーチ14への電流負荷の指示等を担う。ロボット制御盤17は、溶接ロボット用ケーブル18を介して、本体部11に接続されている。
溶接ロボット用ケーブル18は、本体部11と、ロボット制御盤17とを接続する。溶接ロボット用ケーブル18には、公知のケーブルが好適に用いられる。
また、
図3に示すように、溶接トーチ用ケーブル15及び溶接ロボット用ケーブル18は、溶接システム100による溶接作業時は、ケーブルハンガーHにかけられている。これにより、溶接作業時に溶接ロボット10と干渉することを防ぐ。
【0034】
移動部20は、溶接ロボット10が移動する部位である。本実施形態において、移動部20は、鋼管柱200の周囲に備えられる。移動部20は、ガイドレール21と、取付部22と、固定金具23(挿入部)と、を備える。
ガイドレール21は、溶接ロボット10のスライド部12と接触する部位である。溶接ロボット10のスライド部12がガイドレール21の上を摺動することで、溶接ロボット10はガイドレール21の上を移動する。ガイドレール21は鋼管柱200の周方向に沿って設けられる。また、ガイドレール21は、取付部22によって鋼管柱200に取付けられる。つまり、本実施形態において、ガイドレール21は、鋼管柱200の周方向に環状に設けられている。
【0035】
なお、
図3に示すように、ガイドレール21には、ケーブルハンガーHが設けられる。ケーブルハンガーHは、断面L字状の部材により形成され、溶接トーチ用ケーブル15及び溶接ロボット用ケーブル18を掛けるために用いられる。これにより、溶接作業時に溶接ロボット10と溶接トーチ用ケーブル15及び溶接ロボット用ケーブル18とが干渉あるいは絡むことを防ぐ役割を有する。
【0036】
取付部22は、ガイドレール21を鋼管柱200に固定する部位である。ガイドレール21と取付部22とは、例えば、溶接されていてもよいし、一体に成形されていてもよい。取付部22と鋼管柱200とは、例えば、ボルト固定が好適に用いられる。
固定金具23は、ガイドレール21に設けられた金具で、延伸部材32(後述する)を取付けるために用いられる。固定金具23は、鋼管柱200の長手方向(ガイドレール21の幅方向)に平行に中心軸を有する穴形状である。固定金具23は、ガイドレール21に一体に成形されていてもよいし、別部材を溶接等によって取付けてもよい。
【0037】
固定金具23は、鋼管柱200に取付けられたガイドレール21において、少なくとも1箇所設けられる。あるいは、間隔をあけて複数設けられていてもよい。本実施形態において、固定金具23は、環状に設けられたガイドレール21の内周面において、四角柱状の鋼管柱200の各辺の中央に対応する部位に、計4か所設けられている。
【0038】
温度計測装置30は、溶接作業時において鋼管柱200の表面温度を計測する。ここで、溶接ロボット10によって鋼管柱200を溶接するとき、鋼管柱200の表面温度が高いと、溶接金属及び鋼管柱200の組織が粗大化することから溶接部の強度と靭性が低下し、溶接部の品質に悪影響となることがある。そのため、溶接開始前において、温度計測装置30によって計測された鋼管中の表面温度が規定(例えば、360℃)以上である場合、溶接作業を開始できる温度となるまで待機する必要がある。温度計測装置30は、上述の要件に対応するために、鋼管柱200の表面温度を計測する役割を有する。
【0039】
温度計測装置30は、温度センサ31と、延伸部材32と、信号線33と、を備える。
温度センサ31は、鋼管柱200に接触することで、鋼管柱200の温度を計測する部位である。つまり、本実施形態における温度センサ31は、接触式である。接触式である温度センサ31は種々のものが用いられるが、例えば、熱電対等が好適に用いられる。また、温度センサ31は、鋼管柱200の表面において、鋼管柱200の端部同士の接触部から開先210が設けられた方に向けて、開先210から鋼管柱200の長手方向に10mm程度離れた位置に接触させることが好ましい。
【0040】
図4に示すように、延伸部材32は、温度センサ31を支持する部材である。延伸部材32は、長尺状の部材であり、温度センサ31は延伸部材32の一方の端に取付けられる。延伸部材32の材質は種々の材質を適用可能であるが、弾性を有する金属が好適に用いられる。また、延伸部材32は、板状の部材を適宜折り曲げることで形成する方法が好適に用いられる。本実施形態において、延伸部材32は、弾性体であるステンレス板を折り曲げ加工することで形成される。
【0041】
図4に示すように、延伸部材32の一方の端に取付けられた温度センサ31は、延伸部材32によって、鋼管柱200に接した状態で支持される。ここで、本実施形態において、延伸部材32は弾性体である。これにより、延伸部材32は、温度センサ31が鋼管柱200に接触するよう、鋼管柱200の表面と垂直な方向に温度センサ31を付勢する。すなわち、温度センサ31は、延伸部材32の有する弾性によって鋼管柱200に押し付けられる。このように、延伸部材32は、安定して温度センサ31を鋼管柱200に接触させることで、温度センサ31による温度測定の精度を確保する役割を有する。
【0042】
次に、延伸部材32の他方の端はガイドレール21の固定金具23に取付けられる。ここで、
図5に示すように、延伸部材32の他方の端は、コの字状に折り曲げられている。また、延伸部材32は、固定金具23に対して下記のように取り付けられる。すなわち、コの字状の開口部によって、固定金具23を挟むように固定される。具体的には、延伸部材32のコの字状における、前記コの字状を展開したときのより他方の端の側になる部位を固定金具23の有する穴に挿入し、より一方の端側の部位を固定金具23の外側に位置するように設けられる。これにより、延伸部材32が、延伸部材32の有する弾性力によって、延伸部材32のコの字状が固定金具23を挟むようにして固定される。
【0043】
このように、延伸部材32は、他方の端がガイドレール21の固定金具23に取付けられ、一方の端に取付けられた温度センサ31を、鋼管柱200に押し付けるように接触させる。また、本実施形態において、延伸部材32は、一方の端から他方の端までの間は直線状に形成される。つまり、延伸部材32は、鋼管柱200の表面に沿うように配置されている。
また、固定金具23は、環状に設けられたガイドレール21の内周面に設けられている。つまり、延伸部材32の他方の端(或いは、延伸部材32の一方の端と他方の端との中間よりもこの他方の端の側)は、ガイドレール21と鋼管柱200との間に配置されている。なお、溶接ロボット10が移動した場合或いは溶接トーチ14の向き及び角度が変更された場合でも、延伸部材32は、固定されており、その位置は変わらない。
【0044】
信号線33は、温度センサ31と不図示の制御盤あるいは分電盤とを接続する電線である。これにより、鋼管柱200の表面温度の情報を、信号として溶接ロボット10の制御盤に伝達する。
図4に示すように、信号線33は、延伸部材32の面のうち、鋼管柱200を溶接する際の溶接ロボット10に対向する面とは反対側の面に設けられている。つまり、信号線33は、溶接トーチ14の先端に直面することを防ぐように、延伸部材32によって覆われている。これにより、溶接トーチ14の先端から発生するスパッタ等が、信号線33に直接当たることを防ぐ。
【0045】
また、
図4に示すように、信号線33は、ガイドレール21と鋼管柱200との間を通過する。その後、信号線33は、ケーブルハンガーHの上端に沿って配置された後、溶接ロボット用ケーブル18と合流し、ロボット制御盤17へ接続される。あるいは、信号線33と溶接ロボット用ケーブル18との間を不図示の延長ケーブルによって接続し、前記延長ケーブルをケーブルハンガーHの上端に沿って配置してもよい。これにより、溶接ロボット10の移動範囲と信号線33とが干渉することを防ぐ。
信号線33の種類は種々のものが用いられるが、用途に応じて適宜選択される。例えば、耐熱性を有する被覆ケーブルであってもよいし、一般的な導線であってもよい。
【0046】
次に、
図2及び
図3を用いて、鋼管柱200の溶接における溶接システム100の取付け方法について説明する。なお、ガイドレール21及び溶接ロボット10は、力学的に溶接ロボット10を安定させるため、上側にガイドレール21を設け、下側に本体部11及び溶接トーチ14が位置するように設けることが好ましい。本実施形態において、溶接システム100の取付けは、建築物の柱として用いられる鋼管柱200を、上下に設置して溶接するものとして説明する。また、
図3に示すように、溶接前の鋼管柱200は、あらかじめ建て入れ治具300によって保持されているものとして説明する。さらに、溶接システム100の各ケーブルは、溶接トーチ用ケーブル15、溶接ロボット用ケーブル18、信号線33、及び不図示の延長ケーブルのいずれであるのか判別された後、以下に説明するよう、配置されるものとする。
【0047】
<取付けステップ>
鋼管柱200にガイドレール21を取り付ける工程である。すなわち、鋼管柱200に、ガイドレール21の取付部22をボルト等により固定する。このとき、溶接ロボット10の溶接トーチ14の先端が、鋼管柱200の開先210の位置に合うように調整の上、ガイドレール21を鋼管柱200に取付ける。
【0048】
<設置ステップ>
取付けステップで鋼管柱200に取り付けられたガイドレール21に、溶接ロボット10を設置する工程である。すなわち、溶接ロボット10のスライド部12を、ガイドレール21に設置する工程である。これにより、溶接ロボット10は、鋼管柱200の周方向に移動可能となる。
ここで、
図3に示すように、溶接ロボット10とロボット制御盤17とは、溶接ロボット用ケーブル18で接続される。そして、この設置の前後で、溶接ロボット用ケーブル18を、断面L字状であり且つガイドレール21に設けられたケーブルハンガーHに設けられたフックFに掛けても良い。
また、
図3に示すように、溶接トーチ14と溶接ワイヤを送り出すワイヤ送給機16とは、溶接トーチ用ケーブル15で接続される。そして、溶接トーチ14は、この設置ステップの後、溶接ロボット10の本体部11に取り付けられても良く、後述する接触ステップの後に、溶接ロボット10の本体部11に取り付けられても良い。さらに、この取り付けの前後で、溶接トーチ用ケーブル15を、ケーブルハンガーHに設けられたフックFに掛けても良い。
【0049】
<接触ステップ>
溶接ロボット10が溶接する鋼管柱200に温度センサ31を接触させる工程である。すなわち、一方の端に温度センサ31が取付けられた延伸部材32を、ガイドレール21の固定金具23に取付ける工程である。このとき、温度センサ31の鋼管柱200への接触位置が、鋼管柱200の端部同士の接触部から開先210が設けられた方(本実施形態においては上側)に向けて、開先210から鋼管柱200の長手方向に10mm離れた位置となるよう調整する。また、延伸部材32の取付け位置を、施工現場における各条件によって適宜選択の上取り付けることが好ましい。
なお、延伸部材32をガイドレール21に取り付ける際は、延伸部材32を鉛直方向上方からガイドレール21と鋼管柱200との間に挿入して取り付けても良いし、延伸部材32を鉛直方向下方からガイドレール21と鋼管柱200との間に挿入して取り付けても良い。
ここで、信号線33は不図示の延長ケーブルを介して、ロボット制御盤17に接続される(より詳細には、一方の端に温度計測センサが接続された信号線33の他方の端には、延長ケーブルが接続され、接続された延長ケーブルが溶接ロボット用ケーブル18と合流し、ロボット制御盤17に接続される)。さらに、この延長ケーブルは、ガイドレール21及びケーブルハンガーHに沿うよう配置(固定)される。
よって、このように延伸部材32を鉛直方向下方から取り付ける際は、この取り付けの後に、鉛直方向上方から延長ケーブルを信号線33に接続しても良い。例えば、この取り付けの前に、又は、この取り付けの後であり且つこの接続の前後に、延長ケーブルをこのように配置しても良い。
あるいは、このように延伸部材32を鉛直方向上方から取り付ける際は、延長ケーブルを信号線33に接続した後に延伸部材32を取り付けても良い。例えば、この取り付けの前であり且つこの接続の前後に、又は、この取り付けの後に、延長ケーブルをこのように配置しても良い。
上述の工程によって各構成部品を鋼管柱200に組付けることで、溶接システム100とし、溶接作業を実施する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る溶接システム100によれば、鋼管柱200と接触する温度センサ31と、温度センサ31が一方の端に取り付けられた棒状の延伸部材32と、を備えている。鋼管柱200と温度センサ31を接触させることで、接触させない場合と比較してより正確な表面温度を計測することができる。
また、温度センサ31は延伸部材32の一方の端に取付けられ、延伸部材32によって押し付けられることで鋼管柱200と接触する。ここで、鋼管柱200と温度センサ31との接触に磁石や接着剤を用いた場合、鋼管柱200の温度上昇によって温度計側センサの表面への吸着力が変化することがある。これに対し、温度センサ31を延伸部材32によって押し付けることで、鋼管柱200の温度上昇の影響を受けることなく、安定して温度センサ31を鋼管柱200に接触させることができる。よって、より正確に鋼管柱200の表面温度を計測することに寄与することができる。
また、コイルの弾性によって鋼管柱200表面に温度センサ31を取付ける場合と比較して、鋼管柱200表面から垂直方向への厚さを少なくすることができる。よって、溶接ロボット10の稼働範囲に干渉することを防ぐことができる。
【0051】
また、延伸部材32の他方の端は、溶接ロボット10が移動するガイドレール21と鋼管柱200との間に配置されている。このことによって、例えば、延伸部材32が溶接ロボット10に接続されたケーブル等と干渉することを防ぐことができる。よって、ケーブルと延伸部材32とが絡まることを防ぎ、溶接作業を安全かつ効率的に行うことができる。
【0052】
また、信号線33は、延伸部材32の面のうち、鋼管柱200を溶接する際の溶接ロボット10に対向する面とは反対側の面に設けられている。これにより、温度センサ31に接続された信号線33と溶接ロボット10に接続されたケーブルを絡みにくくすることができる。更に、溶接の際に発生するスパッタの影響を信号線33が受けにくくすることができる。
【0053】
また、延伸部材32は、鋼管柱200に沿うように配置されている。つまり、延伸部材32は、一方の端から他方の端まで鋼管柱200から離れることなく配置されている。これにより、溶接作業中の溶接ロボット10と延伸部材32とが干渉することを防ぐことができる。また、溶接ロボット10にケーブルが接続されている場合には、延伸部材32とケーブルとを更に絡みにくくすることができる。
【0054】
また、延伸部材32は、延伸部材32の他方の端が、ガイドレール21に設けられた挿入部に挿入されることで、ガイドレール21に固定される。これにより、延伸部材32の脱着を容易にすることで、ガイドレール21に延伸部材32を取り外しする際に、延伸部材32とケーブルとが絡み難くすることができる。
また、ガイドレール21に挿入部が複数設けられている場合は、作業時において最も好適な場所を選択して延伸部材32を取付けることができる。
【0055】
また、延伸部材32は、弾性体であり、温度センサ31が鋼管柱200に接触するよう、温度センサ31を付勢する。つまり、温度センサ31は、延伸部材32の有する弾性によって押し付けられる。このことによって、温度センサ31を延伸部材32の弾性によってより確実に押し付けることができる。よって、より安定して温度センサ31を鋼管柱200に接触させることができる。さらに、その弾性により、延伸部材32と溶接トーチ用ケーブル15とが絡み難くなり得る。
【0056】
また、延伸部材32は、鋼管柱200の長手方向と垂直な方向に温度センサ31を付勢する。これにより、より正確に鋼管柱200の温度を測定することができる。
【0057】
また、鋼管柱200を溶接するための溶接ロボット10と、溶接ロボット10が移動するガイドレール21と、溶接ロボット10により溶接される鋼管柱200と接触する温度センサ31と、温度センサ31が一方の端に設けられた延伸部材32と、を備える。つまり、鋼管柱200と接触する温度センサ31が、延伸部材32の一方の端に設けられている。鋼管柱200の温度測定に接触式の温度センサ31を用いることで、鋼管柱200の正確な表面温度を計測することができる。また、温度センサ31が延伸部材32によって支持されていることで、例えば、温度センサ31が鋼管柱200に対して磁石や接着剤を用いて接触させた場合と比較して、鋼管柱200の温度上昇の影響を受けることを防ぐことができる。よって、安定して温度センサ31を鋼管柱200に接触させることができる。
【0058】
また、鋼管柱200にガイドレール21を取り付ける取付けステップと、取付けステップで取り付けられたガイドレール21に溶接ロボット10を設置する設置ステップと、溶接ロボット10が溶接する鋼管柱200に温度センサ31を接触させる接触ステップと、を備える。つまり、溶接ロボット10をガイドレール21に設置してから、温度センサ31を鋼管柱200に接触させる。先に溶接ロボット10を設置してから温度センサ31を設置することで、溶接ロボット10の稼働範囲を確保してから、安全に温度センサ31を設置することができる。
【0059】
また、温度センサ31が一方の端に設けられた延伸部材32の他方の端を、取付けステップで取り付けられたガイドレール21と鋼管柱200との間に配置する配置ステップを更に備える。つまり、温度センサ31が鋼管柱200に接触するとき、延伸部材32によって支持された状態となる。これにより、安定して高精度に鋼管柱200の表面温度を測定でき、かつ、溶接ロボット10と温度センサ31及び延伸部材32との干渉を防ぎ、安全に溶接作業を行うことができる。
【0060】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態においては鋼管柱200の溶接を例として説明したが、その他鋼材であってもよい。
また、作業ミス等を防止するため、鋼管柱200の溶接を開始する前に、鋼管柱200の表面温度が規定の温度以下となるまで溶接作業を開始できないように、溶接ロボット10を制御してもよい。
また、鋼管柱200と溶接トーチ14の先端との位置合わせは、上述のようにガイドレール21の取付け位置を調整することに加え、本体部11とスライド部12との間に別途スライド機構を設けて、微調整が行えるようにしてもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【解決手段】溶接ロボット10が溶接する鋼材の温度を計測する温度計測装置30であって、前記鋼材と接触する温度センサ31と、前記温度センサ31が一方の端に取り付けられた延伸部材32と、を備え、前記溶接ロボット10は、前記鋼材に配置されたガイドレール21の上を移動することを特徴とする。