【実施例】
【0090】
以下に、本発明を参考例及び実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
医薬溶液の調製
本発明の効果を確認する試験において、以下の液体製剤を医薬溶液として使用した。
・抗体製剤A:240 mg/mLのモノクローナル抗体および添加剤および界面活性剤を含む水溶液。粘度50 cP。表面張力46.8 mN/m。イオン強度2.88 mS/cm。1.081 g/cm
3.
・抗体製剤B:180 mg/mLのモノクローナル抗体および添加剤および界面活性剤を含む水溶液。粘度8 cP。表面張力45.4 mN/m。イオン強度7.58 mS/cm。密度1.058 g/cm
3。
・抗体製剤C:150mg/mLのモノクローナル抗体および添加剤および界面活性剤を含む水溶液。粘度6cP。表面張力48.0 mN/m。イオン強度4.09 mS/cm。密度1.061 g/cm
3。
・抗体製剤D:120 mg/mLのモノクローナル抗体および添加剤および界面活性剤を含む水溶液。粘度4cP。表面張力49.6 mN/m。イオン強度4.42 mS/cm。密度1.051 g/cm
3。
・抗体製剤E:241 mg/mLのモノクローナル抗体および添加剤を含む水溶液。粘度62 cP。表面張力63.7 mN/m。イオン強度3.36 mS/cm。密度1.093 g/cm
3。
・製剤F:添加剤および界面活性剤を含む水溶液。粘度1cP。表面張力 42.8 mN/m。イオン強度5.64 mS/cm。密度1.019 g/cm
3。
【0092】
充填ノズルの調製
アクリル樹脂(Acryl)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)を材料として充填ノズルを作成した。アクリル樹脂の充填ノズルは、3Dプリンター(HD3500MAX, Xtreme High Definition Mode;3D systems社製)を使用して、VisiJet(登録商標) M3を用いて造形した。PPの充填ノズルは、Combitip Advanced(登録商標)0.1mL(Eppendorf製)を加工し65mmの長さを有する形で用いた。先端形状の加工には、充填口部の内形および流路の長さが所定のサイズとなるようにるドリルで削った。ドリルには、φ2.2mmのハイス鋼ドリル(MITSUBISHI MATERIALS製)を用いた。加工後のサイズは定規で確認した。
【0093】
COC(TOPAS(登録商標)、6013M−07、ポリプラスチックス)の樹脂を、押出成形によりa=1.6mm、b=3.2mmとなるよう加工して65mmのチューブを得た。先端形状の加工には、充填口部の内形および流路の長さが所定のサイズとなるようにるドリルで削った。ドリルには、φ2.5mmのハイス鋼ドリル(藤原産業株式会社製)を用いた。加工後のサイズは定規で確認した。
【0094】
COPの充填ノズルは、COP(ゼオネックス(登録商標)480R、日本ゼオン)の樹脂を材料として、金型を使用して成形した。加工後のサイズは、ノギスおよび定規で確認した。
【0095】
本実施例の試験においては、以下の充填ノズルを使用した。
(シクロオレフィンコポリマー製)
coc_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定、
coc_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=4mm、e=65mm,f=90°。
【0096】
(ポリプロピレン製)
pp_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定、
pp_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.2mm,d=3mm、e=65mm,f=90°。
【0097】
(アクリル樹脂製製)
ac_1:a=1.5mm,b=2.5mm,e=75mm,内径は一定、
ac_2:a=1.5mm,b=3.1mm,c=2.1mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_3:a=1.0mm,b=2.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_4:a=2.0mm,b=3.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_5:a=3.0mm,b=4.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_6:a=5.0mm,b=6.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_7:a=1.0mm,b=2.6mm,c=1.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_8:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_9:a=3.0mm,b=4.6mm,c=3.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_10:a=5.0mm,b=6.6mm,c=5.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°。
ac_11:a=1.5mm,b=2.7mm,c=1.7mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_12:a=1.5mm,b=3.5mm,c=2.5mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_13:a=1.5mm,b=4.5mm,c=3.5mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_14:a=2.0mm,b=3.2mm,c=2.2mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_15:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_16:a=2.0mm,b=5.0mm,c=4.0mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_17:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=1mm,e=75mm,f=135°、
ac_18:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=2mm,e=75mm,f=135°、
ac_19:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=4mm,e=75mm,f=135°、
ac_20:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=5mm,e=75mm,f=135°、
ac_21:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=7mm,e=75mm,f=135°、
ac_22:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=10mm,e=75mm,f=135°、
ac_23:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=45°、
ac_24:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=90°、
ac_25:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=150°、
ac_26:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=170°。
【0098】
(ステンレス製)
sus_1:a=1.8mm,b=2.0mm,e=163mm,内径は一定。
【0099】
(PEEK製)
peek_1:a=1.6mm,b=2.0mm,e=120mm,内径は一定。
【0100】
(シクロオレフィンポリマー製)
cop_1:a=1.5mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=3.5mm、e=120mm,f=90°。 作成した充填ノズルの各材質の水接触角は静滴法(θ/2法)により測定した。充填ノズルの外側の固体表面上に1μLの超純水を滴下し、形成した液滴のなす角度、接触角θを液滴のサイズから測定した。液を滴下して0.2分後の液滴を撮影した。解析は、撮影した画像の液滴のサイズから、液滴の材質固体表面における直径2rと液滴高さhの距離を測定し、θ=2arctan(h/r)により水接触角θを解析した。本測定で利用した充填ノズルの外側の固体表面と内側(管路や充填口付近)の固体表面の状態は同等である。
図7は、COCの充填ノズル(coc_1:a=1.5mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定)の外表面を用いて水接触角を測定した例である。水接触角は、3箇所測定した結果の平均値と標準偏差値を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
充填に使用した器具
充填ポンプA:ペリスタルティック式、サックバック機能付。Watson-Marlow社製。
充填ポンプB:ペリスタルティック式、サックバック機能付。Flexicon社製。
充填チューブ:ポンプ駆動部:内径1.6mm外径6.4mmシリコンチューブおよび内径1.6mm、外径3.2mmのFEPチューブ、およびコネクターで構成される約3mのチューブ。
【0103】
液面高さの測定方法
充填ノズル(充填口部)の下端と充填ノズル内部に滞留する溶液の下端液面(気液界面)の距離を定規で測定し、液面高さとした。充填ノズル内に液面が存在している場合を正の値とし、充填ノズル下端からから溶液が露出している場合は負の値とした(
図8)。液面高さは、充填後に充填ノズル内に滞留する溶液の下端液面(気液界面)の位置が落ち着いた時に測定し、滞留する溶液(液滴)に液面が複数存在する場合には充填ノズル下端に最も近い液面からの距離を測定した(
図9(c))。
【0104】
充填ノズルの詰まり
医薬溶液を充填時に、充填ノズル(充填口部)の下端を目視で観察し、充填ノズルの詰まりの有無を判定した。正常な充填において、医薬溶液は充填ノズルの長手方向にまっすぐに吐出される(
図10)。詰まりの例として、医薬溶液を充填する際の医薬溶液の飛散、医薬溶液の充填速度低下、充填精度低下、医薬溶液の吐出方向の変化、医薬溶液の乾燥による固形物の形成、付着、堆積、もしくは落下、または当該固形物によるノズル吐出口の閉塞が挙げられる。ノズル吐出口の閉塞より医薬溶液が吐出できないなどの状態があり、このような正常な充填と異なる状態が観察された時に充填ノズルの詰まりとして判定した(
図11)。
【0105】
[試験例1]
HEPAフィルターを使用した風速約0.5m/sの換気条件下のクリーンブース内にて試験を行った。充填ポンプAを用いて抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、および抗体製剤D(それぞれ約1.2mL)を容器に充填した後、所定の液面高さとなった状態の充填ノズルをそのまま2時間静置して充填ノズルの詰まりの発生状況を確認した(N=3)。充填時にはサックバックを行った。液面高さは、サックバック後、静置前に測定し、2時間後に充填ノズルの詰まりの有無を再度充填を行うことにより目視で観察して判定した。充填ノズルは、ポリプロピレン材質で内径が上端から下端まで一定の充填ノズル(pp_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,充填口部なし)を用いた。
【0106】
結果を
図12に示す。120mg/mL以上の抗体を含む医薬溶液において、液面高さが1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満のとき、充填口付近に滞留する医薬溶液が乾燥し、充填ノズルの詰まりが発生した。一方、液面高さが3mm以上のとき、充填ノズルの詰まりは発生しなかった。液面高さを3mm以上にすることにより充填ノズルの詰まりを防ぐことができることが確認された。
【0107】
[試験例2]
充填ノズルの材質とノズル内部での溶液滞留位置の関係について以下の試験を行った。
シクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズルの内部での溶液滞留位置について以下の試験を行った。
図13は、充填ポンプBを用いて抗体製剤A(約1.2mL(1.111mL〜1.260mL))を容器に充填するときの、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離を測定し、3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を確認した。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。充填ノズルは、アクリル材質で内径(a=1.5mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル(ac_1)、ポリプロピレン材質で内径(a=1.6mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル(pp_1)、シクロオレフィンコポリマー材質で内径(a=1.6mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル(coc_1)を用いた。
【0108】
結果を
図13に示す。充填ノズルの材質をシクロオレフィンコポリマーとした場合に、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さが3mm以上となる割合が高かった。
【0109】
[試験例3]
上記の試験例2において、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離である液面高さ(mm)の平均値(N=100)を
図14のグラフに示す。充填ノズルの材質をシクロオレフィンコポリマーにすることにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを高い位置で保持できることが確認された。
【0110】
[試験例4]
充填ノズルの形状とノズル内部での溶液滞留位置の関係について以下の試験を行った。
充填ポンプBを用いて医薬溶液(約1.2mL(1.106mL〜1.260mL))を容器に充填するときの、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離を測定し、3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を確認した。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。充填ノズルは、充填ノズルac_1(アクリル材質で内径(a=1.5mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル)、充填ノズルpp_1(ポリプロピレン材質で内径(a=1.6mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル)、充填ノズルcoc_1(シクロオレフィンコポリマーの樹脂を用いた充填ノズル)、充填ノズルac_2(アクリル材質で充填口流路内径c=2.1mmで流路長さd=3mmの充填ノズル)、充填ノズルcoc_2(シクロオレフィンコポリマー材質で充填口流路内径c=2.5mmで流路長さd=4mmの充填ノズル)、充填ノズルpp_2(ポリプロピレン材質で充填口流路内径c=2.2mmで、流路長さd=3mmの充填ノズル)を用いた。
【0111】
結果を
図15に示す。充填ノズルの充填口流路内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上に保持できる割合を高くできることが確認された。また、充填ノズルのすべての材料において、具体的には水接触角が58°以上となる材料を使用して充填ノズルの充填口流路内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上に保持できる割合を高くできることが確認された。
【0112】
[試験例5]
上記試験例4において、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離である液面高さ(mm)の平均値(N=100)を
図16のグラフに示す。充填ノズルの充填口流路内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さをより高い位置で保持できることが確認された。また、充填ノズルのすべての材料において、具体的には水接触角が58°以上となる材料を使用して充填ノズルの充填口流路内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さをより高い位置で保持できることが確認された。
【0113】
[試験例6]
充填ノズル:pp_1およびcoc_2を用いて、抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、および抗体製剤D(それぞれ約1.2mL(1.160〜1.223mL))を、充填ポンプBを用いて容器に充填するときの、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離(mm)を測定した。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。
【0114】
結果を
図17に示す。充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を確認した。全ての抗体製剤において、充填ノズルの先端形状の内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上に保持できる割合を高くできることが確認された。
【0115】
[試験例7]
充填ポンプBを用いて抗体製剤A(約1.2mL(1.084〜1.293mL))を充填する際の充填ノズル内部に滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離の液面高さ(mm)を測定した(N=100)。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。使用した充填ノズルはアクリル樹脂製であり、形状は以下の通りである。
対照の充填ノズル
ac_3:a=1.0mm,b=2.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_1:a=1.5mm,b=2.5mm,e=75mm,内径は一定、
ac_4:a=2.0mm,b=3.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_5:a=3.0mm,b=4.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_6:a=5.0mm,b=6.0mm,e=75mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有する充填ノズル
ac_7:a=1.0mm,b=2.6mm,c=1.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_2:a=1.5mm,b=3.1mm,c=2.1mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_8:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_9:a=3.0mm,b=4.6mm,c=3.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_10:a=5.0mm,b=6.6mm,c=5.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°。
【0116】
図18はその充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を示すグラフである。同一の内径を有する充填ノズルとの比較において、充填ノズルの先端形状の内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上で保持できる割合を高くできることが確認された。
【0117】
[試験例8]
試験例7と同様の試験をアクリル樹脂製の以下の形状を有する充填ノズルを用いて行った。
対照の充填ノズル
ac_1:a=1.5mm,b=2.5mm,e=75mm,内径は一定、
ac_4:a=2.0mm,b=3.0mm,e=75mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有する充填ノズル
ac_11:a=1.5mm,b=2.7mm,c=1.7mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_2:a=1.5mm,b=3.1mm,c=2.1mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_12:a=1.5mm,b=3.5mm,c=2.5mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_13:a=1.5mm,b=4.5mm,c=3.5mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_14:a=2.0mm,b=3.2mm,c=2.2mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_15:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_16:a=2.0mm,b=5.0mm,c=4.0mm,d=3mm,e=75mm,f=135°。
【0118】
図19はその充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満になったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を示すグラフである。充填ノズルの充填口部の内径cを0.2〜2mm拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができることが確認された。また、ノズル本体の管路と充填口部の流路との間に傾斜部を有する場合であっても、充填ノズルの先端形状の内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができることが確認された。充填口の末端の内径に対する充填口の充填ノズル長手方向長さの比がd/c=0.7〜1.8の範囲で、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができるという本発明の効果が確認された。
【0119】
[試験例9]
試験例7と同様の試験をアクリル樹脂製の以下の形状を有する充填ノズルを用いて行った。
対照の充填ノズル
ac_4:a=2.0mm,b=3.0mm,e=75mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有する充填ノズル
ac_17:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=1mm,e=75mm,f=135°、
ac_18:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=2mm,e=75mm,f=135°、
ac_8:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_19:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=4mm,e=75mm,f=135°、
ac_20:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=5mm,e=75mm,f=135°、
ac_21:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=7mm,e=75mm,f=135°、
ac_22:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=10mm,e=75mm,f=135°。
【0120】
図20はその充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を示すグラフである。充填口部流路長さが1〜10mmの範囲で、望ましくは2〜7mmの範囲で、より望ましくは3〜7mmの範囲で、さらにより望ましくは3〜5mmの範囲で、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができるという本発明の効果が確認された。充填口の末端の内径に対する充填口の充填ノズル長手方向長さの比がd/c=0.4〜3.9の範囲で、望ましくはd/c=0.7〜2.7の範囲で、より望ましくはd/c=1.1〜2.7の範囲で、さらにより望ましくはd/c=1.1〜2.0の範囲で、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができるという本発明の効果が確認された。
【0121】
[試験例10]
試験例7と同様の試験をアクリル樹脂製の以下の形状を有する充填ノズルを用いて行った。
対照の充填ノズル
ac_4:a=2.0mm,b=3.0mm,e=75mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有する充填ノズル
ac_23:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=45°、
ac_24:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=90°、
ac_8:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_25:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=150°、
ac_26:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=170°。
【0122】
図21はその充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満になったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を示すグラフである。傾斜部の内面と充填口部流路内面のなす角(f)が、約90°であってもよく、90°以上であってもよく、90°未満であってもよく、角度fは45〜170°、より具体的には90〜135°の範囲で、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができるという本発明の効果が確認された。
【0123】
[試験例11]
充填ノズルと医薬溶液の乾燥により生じる充填ノズルの詰まりの関係について以下の試験を行った。
図22は、充填ポンプAを用いて抗体製剤Aを約1.2mL容器に充填するとき、風速約0.5m/sのHEPAフィルター換気条件下でそのまま2時間静置した後の充填ノズルの詰まりの発生する確率(N=5)を示すグラフである。充填ノズルには、以下の形状を有する充填ノズルを用いて行った。
対照の充填ノズル
sus_1:a=1.8mm,b=2.0mm,e=163mm、内径は一定、
peek_1:a=1.6mm,b=2.0mm,e=120mm、内径は一定、
pp_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有するか、シクロオレフィンコポリマー製の充填ノズル
coc_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定、
pp_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.2mm,d=3mm、e=65mm,f=90°、
coc_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=4mm、e=65mm,f=90°。
【0124】
充填ノズルの材料にシクロオレフィンコポリマーを使用することにより、充填ノズルの詰まりの発生する確率を下げることができるという本発明の効果が確認された。また、充填ノズルは、すべての材質において、具体的には水接触角が58°以上、より具体的には80〜100°となる材料で成形される充填ノズルの先端形状内径cを拡張することにより、充填ノズルの詰まりの発生する確率を下げることができるという本発明の効果が確認された。
【0125】
[試験例12]
充填ノズル:cop_1を用いて、抗体製剤A(約1.2mL)を、充填ポンプBを用いて容器に充填するときの、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の様子を
図24に示す。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。充填後に充填ノズル内に滞留する溶液の下端液面(気液界面)の位置が落ち着いた時の滞留する溶液(液滴)の液面高さは、充填口部下端よりも高い位置に滞留することが確認された(
図24(c))。
【0126】
[試験例13]
充填ノズル:pp_1、coc_2およびcop_1を用いて、抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、および抗体製剤D(それぞれ約1.2mL(1.160〜1.223mL))を、充填ポンプBを用いて容器に充填するときの、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離(mm)を測定した。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。
【0127】
結果を
図25に示す。充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を確認した。全ての抗体製剤において、充填ノズルの先端形状の内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上に保持できる割合を高くできることが確認された。また、充填ノズル:cop_1を用いて、抗体製剤E、および製剤F(それぞれ約1.2mL(1.167〜1.258mL))を、充填ポンプBを用いて容器に充填するとき、全ての製剤において、充填ノズルの先端形状の内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上に保持できる割合を抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、および抗体製剤Dとと同様に高くできることが確認された。
【0128】
[試験例14]
充填ノズルと医薬溶液の乾燥により生じる充填ノズルの詰まりの関係について以下の試験を行った。
図26は、充填ポンプAを用いて抗体製剤Aを約1.2mL容器に充填するとき、風速約0.5m/sのHEPAフィルター換気条件下でそのまま2時間静置した後の充填ノズルの詰まりの発生する確率(N=5)を示すグラフである。充填ノズルには、以下の形状を有する充填ノズルを用いて行った。
対照の充填ノズル
sus_1:a=1.8mm,b=2.0mm,e=163mm、内径は一定、
peek_1:a=1.6mm,b=2.0mm,e=120mm、内径は一定、
pp_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有するか、シクロオレフィンコポリマー製の充填ノズル
coc_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定、
pp_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.2mm,d=3mm、e=65mm,f=90°、
coc_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=4mm、e=65mm,f=90°、
cop_1:a=1.5mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=3.5mm、e=120mm,f=90°。
【0129】
充填ノズルの材料にシクロオレフィンコポリマーまたはシクロオレフィンポリマーを使用することにより、充填ノズルの詰まりの発生する確率を下げることができるという本発明の効果が確認された。また、充填ノズルは、すべての材質において、具体的には水接触角が58°以上、より具体的には80〜100°となる材料で成形される充填ノズルの先端形状内径cを拡張することにより、充填ノズルの詰まりの発生する確率を下げることができるという本発明の効果が確認された。