(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中心軸に沿った方向に見て、前記第2シンニング部の曲率半径は、前記外側切刃の外側端部と、前記中心軸との間の距離の2倍の5%以上30%以下である、請求項1に記載のドリル。
前記中心軸に沿った方向に見て、前記第1シンニング部と前記第1直線との距離は、0.001mm以上1.0mm以下である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のドリル。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示の目的は、穴位置度を向上可能なドリルを提供することである。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、穴位置度を向上可能なドリルを提供することができる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施形態を、列挙して説明する。
【0010】
(1)本開示に係るドリル100は、中心軸Xの周りを回転するドリル100であって、すくい面1と、逃げ面2と、シンニング面3とを備えている。逃げ面2は、すくい面1に連なる。シンニング面3は、すくい面1および逃げ面2の各々に連なる。すくい面1と逃げ面2との稜線は、外側切刃40を含む。シンニング面3と逃げ面2との稜線は、外側切刃40に連なる第1シンニング部31と、第1シンニング部31に連なる第2シンニング部32とを含む。中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31は直線状であり、かつ第2シンニング部32は湾曲している。中心軸Xに沿った方向に見て、中心軸Xを通りかつ第1シンニング部31に平行な直線を第1直線A1とし、かつ第1直線A1に対して垂直な直線を第2直線A2とした場合、第1シンニング部31と、第1シンニング部31と第2シンニング部32との境界とは、第1直線A1に対して回転方向後方に位置し、かつ第2直線A2に対して回転方向前方に位置している。
【0011】
(2)上記(1)に係るドリル100によれば、中心軸Xに沿った方向に見て、第2シンニング部32の曲率半径は、外側切刃40の外側端部43と、中心軸Xとの間の距離の2倍の5%以上30%以下であってもよい。
【0012】
(3)上記(1)または(2)に係るドリル100によれば、ドリル100は、すくい面1および逃げ面2の各々に連なる外周面5と、外周面5、逃げ面2およびシンニング面3の各々に連なるヒール面4とをさらに備えていてもよい。外周面5には、外側切刃40に連なる第1マージン51と、第1マージン51から回転方向後方に離間している第2マージン52とが設けられていてもよい。中心軸Xに沿った方向に見て、ヒール面4と逃げ面2の境界線6は、直線状であってもよい。
【0013】
(4)上記(3)に係るドリル100によれば、境界線6から離間した位置において、クーラント孔7が設けられていてもよい。
【0014】
(5)上記(3)に係るドリル100によれば、境界線6を分断するように、クーラント孔7が設けられていてもよい。
【0015】
(6)上記(1)または(2)に係るドリル100によれば、ドリル100は、すくい面1および逃げ面2の各々に連なる外周面5と、外周面5、逃げ面2およびシンニング面3の各々に連なるヒール面4とをさらに備えていてもよい。外周面5には、外側切刃40に連なる第1マージン51と、第1マージン51から回転方向後方に離間している第2マージン52とが設けられていてもよい。中心軸Xに沿った方向に見て、ヒール面4と逃げ面2の境界線6は、曲線状であってもよい。
【0016】
(7)上記(6)に係るドリル100によれば、境界線6から離間した位置において、クーラント孔7が設けられていてもよい。
【0017】
(8)上記(6)に係るドリル100によれば、境界線6を分断するように、クーラント孔7が設けられていてもよい。
【0018】
(9)上記(1)から(8)のいずれかに係るドリル100によれば、中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31と第1直線A1との距離は、0.001mm以上1.0mm以下であってもよい。
【0019】
(10)本開示に係るドリル100は、中心軸Xの周りを回転するドリル100であって、すくい面1と、逃げ面2と、シンニング面3とを備えている。逃げ面2は、すくい面1に連なる。シンニング面3は、すくい面1および逃げ面2の各々に連なる。すくい面1と逃げ面2との稜線は、外側切刃40を含む。シンニング面3と逃げ面2との稜線は、外側切刃40に連なる第1シンニング部31と、第1シンニング部31に連なる第2シンニング部32とを含む。中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31は直線状であり、かつ第2シンニング部32は湾曲している。中心軸Xに沿った方向に見て、中心軸Xを通りかつ第1シンニング部31に平行な直線を第1直線A1とし、かつ第1直線A1に対して垂直な直線を第2直線A2とした場合、第1シンニング部31と、第1シンニング部31と第2シンニング部32との境界とは、第1直線A1に対して回転方向後方に位置し、かつ第2直線A2に対して回転方向前方に位置している。中心軸Xに沿った方向に見て、第2シンニング部32の曲率半径は、外側切刃40の外側端部43と、中心軸Xとの間の距離の2倍の5%以上30%以下である。中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31と第1直線A1との距離は、0.001mm以上1.0mm以下である。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0021】
(第1実施形態)
まず、本開示の第1実施形態に係るドリル100の構成について説明する。
【0022】
図1は、第1実施形態に係るドリル100の構成を示す平面模式図である。
図1に示されるように、第1実施形態に係るドリル100は、前端101と、後端102と、すくい面1と、逃げ面2と、外周面5と、フルート14と、シャンク13とを有している。ドリル100は、中心軸Xの周りを回転可能である。ドリル100の前端101は、被削材に対向する部分である。ドリル100の後端102は、ドリル100を回転させる工具に対向する部分である。シャンク13は、ドリル100を回転させる工具に取り付けられる部分である。中心軸Xに沿った方向において、後端102は、前端101の反対側に位置している。中心軸Xは、前端101と後端102とを通っている。中心軸Xに沿った方向は、軸方向である。軸方向に対して垂直な方向が径方向である。本明細書においては、前端101から後端102に向かう方向を軸方向の後方と称する。反対に、後端102から前端101に向かう方向を軸方向の前方と称する。
【0023】
図2は、第1実施形態に係るドリル100の前端101付近の構成を示す斜視模式図である。
図2に示されるように、逃げ面2は、すくい面1に連なっている。すくい面1と逃げ面2との稜線は、外側切刃40を含んでいる。シンニング面3は、すくい面1および逃げ面2の各々に連なっている。径方向において、シンニング面3は、すくい面1に対して中心軸X側に位置している。シンニング面3は、チゼル15に連なっている。すくい面1は、第1すくい面部11と、第2すくい面部12とを有している。第1すくい面部11は、第2すくい面部12に連なっている。径方向において、第1すくい面部11は、第2すくい面部12に対して中心軸X側に位置している。外周面5は、すくい面1および逃げ面2の各々に連なっている。第2すくい面部12は、たとえば戻し面である。第2すくい面部12は、第1すくい面部11に対して回転方向後方に傾斜していてもよい。
【0024】
シンニング面3と逃げ面2との稜線は、第1シンニング部31と、第2シンニング部32とを有している。第1シンニング部31は、切れ刃として機能する。第1シンニング部31は、外側切刃40に連なっている。径方向において、第1シンニング部31は、外側切刃40に対して中心軸X側に位置している。第2シンニング部32は、第1シンニング部31に連なっている。径方向において、第2シンニング部32は、第1シンニング部31に対して中心軸X側に位置している。第1シンニング部31は、第2シンニング部32と外側切刃40との間に位置している。第2シンニング部32の少なくとも一部は、切れ刃として機能してもよい。
【0025】
図3は、第1実施形態に係るドリル100の構成を示す正面模式図である。
図3においては、前端101から後端102に向かう方向に沿って見た、ドリル100の正面が示されている。
図3に示されるように、外側切刃40、第1シンニング部31および第2シンニング部32の各々は、中心軸Xに対して回転対称の位置に一対設けられている。別の観点から言えば、第1実施形態に係るドリル100は2枚刃を有している。外側切刃40は、第1切刃41と、第2切刃42と、外側端部43とを有している。第1切刃41は、第1シンニング部31に連なっている。第2切刃42は、第1切刃41に連なっている。第2切刃42は、第1切刃41に対して外周側に位置している。第2切刃42は、外側端部43を構成する。外側端部43は、外側切刃40において最も外周側に位置している。第1切刃41は、第1シンニング部31と第2切刃42との間に位置している。
【0026】
図3に示されるように、正面視において、第1切刃41は、円弧状であってもよい。第1切刃41は、回転方向後方に凹んでいてもよい。正面視において、第2切刃42は、直線状であってもよいし、円弧状であってもよい。逃げ面2は、第1逃げ面部21と、第2逃げ面部22とを有していてもよい。第1逃げ面部21は、外側切刃40、第1シンニング部31および第2シンニング部32の各々に連なっている。第2逃げ面部22は、第1逃げ面部21に連なっている。第2逃げ面部22は、第1逃げ面部21に対して回転方向後方に位置している。第2逃げ面部22は、第1逃げ面部21に対して傾斜していてもよい。
【0027】
図2および
図3に示されるように、ドリル100は、ヒール面4を有していてもよい。ヒール面4は、たとえば逃げ面2およびシンニング面3の各々に連なっている。ヒール面4は、外周面5に連なっていてもよい。ヒール面4は、逃げ面2に対して回転方向後方に位置している。ヒール面4は、第2逃げ面部22に連なっている。ドリル100の回転方向において、第2逃げ面部22は、第1逃げ面部21とヒール面4との間に位置している。
【0028】
図3に示されるように、外周面5には、第1マージン51と、第2マージン52とが設けられていてもよい。第1マージン51は、外側切刃40に連なっている。第2マージン52は、第1マージン51から離間している。第2マージン52は、第1マージン51に対して回転方向後方に位置している。第1マージン51は、たとえば第1逃げ面部21に連なっている。第2マージン52は、たとえば第2逃げ面部22に連なっている。第2マージン52は、ヒール面4に連なっていてもよい。
【0029】
図3に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、ヒール面4と逃げ面2の境界線6は、曲線状であってもよい。ドリル100には、クーラント孔7が設けられていてもよい。クーラント孔7は、逃げ面2とヒール面4との境界線6を分断するように設けられていてもよい。境界線6は、第1ヒール部61と、第2ヒール部62とを有している。第1ヒール部61は、第2シンニング部32に連なっている。第2ヒール部62は、外周面5に連なっている。第2ヒール部62は、第1ヒール部61から離間している。クーラント孔7は、第1ヒール部61と第2ヒール部62との間に設けられている。
【0030】
図4は、
図3の領域IVの拡大正面模式図である。
図4に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31は直線状であり、かつ第2シンニング部32は湾曲している。径方向において、第2シンニング部32は、中心軸X側に凹となるように湾曲している。第2シンニング部32は、たとえば円弧状である。第2シンニング部32は、チゼル15に連なっている。第2シンニング部32の曲率半径Rは、外側切刃40の外側端部43と中心軸Xとの間の距離の2倍の5%以上30%以下であってもよい。外側切刃40の外側端部43と中心軸Xとの間の距離の2倍は、ドリル100の切刃の直径に対応する。第2シンニング部32の曲率半径Rの下限は、特に限定されないが、たとえば外側切刃40の外側端部43と中心軸Xとの間の距離の2倍の10%以上であってもよいし、15%以上であってもよい。第2シンニング部32の曲率半径Rの上限は、特に限定されないが、たとえば外側切刃40の外側端部43と中心軸Xとの間の距離の2倍の25%以下であってもよいし、20%以下であってもよい。
【0031】
図4に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、中心軸Xを通りかつ第1シンニング部31に平行な直線は第1直線A1であり、かつ第1直線A1に対して垂直な直線は第2直線A2である。中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31は、第1直線A1に対して回転方向後方に位置しており、かつ第2直線A2に対して回転方向前方に位置している。中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31と第2シンニング部32との境界(第1境界33)は、第1直線A1に対して回転方向後方に位置し、かつ第2直線A2に対して回転方向前方に位置している。
【0032】
図4において、第1直線A1よりも上側であり、かつ第2直線A2よりも右側の領域は、第1領域S1である。第1直線A1よりも下側であり、かつ第2直線A2よりも右側の領域は、第2領域S2である。第1直線A1よりも上側であり、かつ第2直線A2よりも左側の領域は、第3領域S3である。第1直線A1よりも下側であり、かつ第2直線A2よりも左側の領域は、第4領域S4である。第1シンニング部31は、第2領域S2に位置している。第1シンニング部31と第2シンニング部32との境界(第1境界33)は、第2領域S2に位置している。逃げ面2とヒール面4との境界線6と、第2シンニング部32との境界(第2境界34)は、第3領域S3に位置している。
【0033】
図4に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、第2シンニング部32は、第1直線A1および第2直線A2の各々に交差していてもよい。具体的には、第1領域S1と第2領域S2との境界線と交差し、かつ第1領域S1と第3領域S3との境界線と交差していてもよい。第2シンニング部32は、第1領域S1と第2領域S2と第3領域S3とに位置している。別の観点から言えば、第2シンニング部32は、第1領域S1に位置する第2部分72と、第2領域S2に位置する第1部分71と、第3領域S3に位置する第3部分73とを有している。
【0034】
第1部分71は、第1シンニング部31および第2部分72の各々に連なっている。第1部分71は、第1シンニング部31と第2部分72との間に位置している。第2部分72は、第1部分71および第3部分73の各々に連なっている。第2部分72は、第1部分71と第3部分73との間に位置している。第3部分73は、第2部分72および境界線6の各々に連なっている。第3部分73は、第2部分72と境界線6との間に位置している。第2部分72は、チゼル15に連なっている。
【0035】
図4に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31と第1直線A1との距離Dは、たとえば0.001mm以上1.0mm以下である。第1シンニング部31と第1直線A1との距離Dの下限は、特に限定されないが、たとえば0.15mm以上であってもよいし、0.2mm以上であってもよい。第1シンニング部31と第1直線A1との距離Dの上限は、特に限定されないが、たとえば0.95mm以下であってもよいし、0.9mm以下であってもよい。第1シンニング部31と第1直線A1との距離Dとは、第1直線A1に垂直な方向における第1シンニング部31と第1直線A1との距離である。
【0036】
図5は、
図1の領域Vの拡大平面模式図である。
図5に示されるように、クーラント孔7の一部は、第2逃げ面部22に開口し、クーラント孔7の残部は、ヒール面4に開口している。別の観点から言えば、クーラント孔7は、第2逃げ面部22からヒール面4にかけて設けられている。
図5に示されるように、中心軸Xに対して垂直な方向に見て、外側切刃40は、第1シンニング部31に対して後端102側に位置している。中心軸Xに対して垂直な方向に見て、第2切刃42部は、第1切刃41部に対して後端102側に位置している。中心軸Xに対して垂直な方向に見て、境界線6は、第2シンニング部32に対して後端102側に位置している。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係るドリル100の構成について説明する。第2実施形態に係るドリル100は、境界線6から離間した位置においてクーラント孔7が設けられている点において、第1実施形態に係るドリル100と異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係るドリル100と同様である。以下、第1実施形態に係るドリル100と異なる構成を中心に説明する。
【0038】
図6は、第2実施形態に係るドリル100の構成を示す正面模式図である。
図6に示される正面模式図は、第1実施形態に係るドリル100の
図3に対応している。
図7は、第2実施形態に係るドリル100の構成を示す拡大平面模式図である。
図7に示される拡大平面模式図は、第1実施形態に係るドリル100の
図5に対応している。
【0039】
図6および
図7に示されるように、クーラント孔7は、境界線6から離間した位置において。具体的には、クーラント孔7は、逃げ面2に設けられている。クーラント孔7は、第2逃げ面部22に設けられていてもよいし、第1逃げ面部21に設けられていてもよいし、第1逃げ面部21と第2逃げ面部22との境界に設けられていてもよい。クーラント孔7は、ヒール面4から離間している。
図6に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、クーラント孔7の形状は略楕円形であってもよい。
図7に示されるように、クーラント孔7は逃げ面2にのみ開口しており、ヒール面4には開口していない。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態に係るドリル100の構成について説明する。第3実施形態に係るドリル100は、ヒール面4と逃げ面2の境界線6が直線状である点において、第1実施形態に係るドリル100と異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係るドリル100と同様である。以下、第1実施形態に係るドリル100と異なる構成を中心に説明する。
【0041】
図8は、第3実施形態に係るドリル100の構成を示す正面模式図である。
図8に示される正面模式図は、第1実施形態に係るドリル100の
図3に対応している。
図9は、第3実施形態に係るドリル100の構成を示す拡大平面模式図である。
図9に示される拡大平面模式図は、第1実施形態に係るドリル100の
図5に対応している。
【0042】
図8に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、ヒール面4と逃げ面2の境界線6は、直線状であってもよい。
図9に示されるように、クーラント孔7は、第2逃げ面部22からヒール面4にわたって設けられている。クーラント孔7は、境界線6を分断している。境界線6は、第1ヒール部61と、第2ヒール部62とを有している。
図8に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、第1ヒール部61および第2ヒール部62の各々は、直線状である。中心軸Xに沿った方向に見て、第2ヒール部62の長さは、第1ヒール部61の長さよりも長くてもよい。
【0043】
(第4実施形態)
次に、本開示の第4実施形態に係るドリル100の構成について説明する。第4実施形態に係るドリル100は、ヒール面4と逃げ面2の境界線6が直線状でありかつ境界線6から離間した位置においてクーラント孔7が設けられている点において、第1実施形態に係るドリル100と異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係るドリル100と同様である。以下、第1実施形態に係るドリル100と異なる構成を中心に説明する。
【0044】
図10は、第4実施形態に係るドリル100の構成を示す正面模式図である。
図10に示される正面模式図は、第1実施形態に係るドリル100の
図3に対応している。
図11は、第4実施形態に係るドリル100の構成を示す拡大平面模式図である。
図11に示される拡大平面模式図は、第1実施形態に係るドリル100の
図5に対応している。
【0045】
図10に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、ヒール面4と逃げ面2の境界線6は、直線状であってもよい。クーラント孔7は、境界線6から離間した位置において設けられている。具体的には、クーラント孔7は、逃げ面2に設けられている。クーラント孔7は、第2逃げ面部22に設けられていてもよいし、第1逃げ面部21に設けられていてもよいし、第1逃げ面部21と第2逃げ面部22との境界に設けられていてもよい。クーラント孔7は、ヒール面4から離間している。
図10に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、クーラント孔7の形状は略楕円形であってもよい。
図11に示されるように、クーラント孔7は逃げ面2にのみ開口しており、ヒール面4には開口していない。
【0046】
次に、上記実施形態に係るドリル100の作用効果について説明する。
図12は、比較例に係るドリル200の構成を示す正面模式図である。
図12に示されるように、比較例に係るドリル200は、第1シンニング部31と、第2シンニング部32とを有している。中心軸Xに沿った方向に見て、中心軸Xを通りかつ第1シンニング部31に平行な直線は第1直線A1であり、かつ第1直線A1に対して垂直な直線は第2直線A2である。
図12に示されるように、中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31は、第1直線A1に対して回転方向前方に位置している。
【0047】
一方、上記実施形態に係るドリル100においては、中心軸Xに沿った方向に見て、中心軸Xを通りかつ第1シンニング部31に平行な直線を第1直線A1とし、かつ第1直線A1に対して垂直な直線を第2直線A2とした場合、第1シンニング部31と、第1シンニング部31と第2シンニング部32との境界とは、第1直線A1に対して回転方向後方に位置している(
図4参照)。
【0048】
図13は、第1実施形態に係るドリル100および比較例に係るドリル200の構成を比較するための回転投影模式図である。
図13において、第1実施形態に係るドリル100は実線で示されており、比較例に係るドリル200は破線で示されている。
図13に示されるように、第1実施形態に係るドリル100のチゼル15付近の幅は、比較例に係るドリル200のチゼル15付近の幅よりも小さくなっている。比較例に係るドリル200と比較して、第1実施形態に係るドリル100は、ドリル100の前端部分を尖らせることができる。そのため、比較例に係るドリル200と比較して、第1実施形態に係るドリル100は、穴あけ加工において被削材に対する食い付き性能を向上することができる。結果として、穴位置度を向上することができる。
【0049】
また第1シンニング部31および外側切刃40の各々が回転方向後方に凹となる曲線形状を有している場合、第1シンニング部31および外側切刃40の境界付近が尖る。この場合、第1シンニング部31で切削された切屑と、外側切刃40で切削された切屑とは、分断されて別々に発生する。その結果、それぞれの切屑の長さが長くなり、切屑排出性が悪化する。
【0050】
一方、上記実施形態に係るドリル100によれば、中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31は直線状である。第1シンニング部31および外側切刃40の各々が回転方向後方に凹の曲線形状を有している場合と比較して、第1シンニング部31および外側切刃40の境界部の尖りの程度は小さくなる。この場合、第1シンニング部31で切削された切屑と外側切刃40で切削された切屑とは一体となる。その結果、切屑の長さが長くなることを抑制することができるため、切屑排出性が向上する。
【0051】
さらに上記実施形態に係るドリル100によれば、中心軸Xに沿った方向に見て、第2シンニング部32の曲率半径は、外側切刃40の外側端部43と、中心軸Xとの間の距離の2倍の5%以上30%以下であってもよい。第2シンニング部32の曲率半径を、外側切刃40の外側端部43と中心軸Xとの間の距離の2倍の5%以上とすることにより、第2シンニング部32の長さが短くなり過ぎることを抑制することができる。結果として、切削抵抗が増加することを抑制することができる。第2シンニング部32の曲率半径を、外側切刃40の外側端部43と中心軸Xとの間の距離の2倍の30%以下とすることにより、第2シンニング部32近傍の肉厚が薄くなりすぎることを抑制することができる。結果として、ドリル100の強度が低下することを抑制することができる。
【0052】
さらに上記実施形態に係るドリル100によれば、外周面5には、外側切刃40に連なる第1マージン51と、第1マージン51から回転方向後方に離間している第2マージン52とが設けられていてもよい。中心軸Xに沿った方向に見て、ヒール面4と逃げ面2の境界線6は、直線状であってもよい。ヒール面4と逃げ面2の境界線6が曲線状である場合と比較して、ヒール面4と逃げ面2の境界線6が直線状である場合は、曲線加工を行う必要がないため、ヒール面4の加工が容易になる。
【0053】
さらに上記実施形態に係るドリル100によれば、外周面5には、外側切刃40に連なる第1マージン51と、第1マージン51から回転方向後方に離間している第2マージン52とが設けられていてもよい。中心軸Xに沿った方向に見て、ヒール面4と逃げ面2の境界線6は、曲線状であってもよい。ヒール面4と逃げ面2の境界線6が直線状である場合と比較して、ヒール面4と逃げ面2の境界線6が曲線状である場合は、第2マージン52の幅を大きくすることができる。そのため、穴あけ加工において、加工の初期段階から第2マージン52によるガイド性能を発揮することができる。
【0054】
さらに上記実施形態に係るドリル100によれば、中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31と第1直線A1との距離は、0.001mm以上1.0mm以下であってもよい。第1シンニング部31と第1直線A1との距離を0.001mm以上とすることにより、穴あけ加工において被削材に対する食い付き性能をさらに向上することができる。第1シンニング部31と第1直線A1との距離を1.0mm以下とすることにより、第1シンニング部31の長さが短くなりすぎることを抑制することができる。
【実施例】
【0055】
(サンプル準備)
まず、サンプル1のドリル200およびサンプル2のドリル100を準備した。サンプル1のドリル200は、比較例である。サンプル1のドリル200の構成は、
図12に示されている。サンプル1のドリル200においては、中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31は、第1直線A1に対して回転方向前方に位置している。サンプル2のドリル100は、実施例である。サンプル2のドリル100の構成は、
図3に示されている。サンプル2のドリル100においては、中心軸Xに沿った方向に見て、第1シンニング部31は、第1直線A1に対して回転方向後方に位置している。
【0056】
(評価条件)
次に、サンプル1のドリル200およびサンプル2のドリル100を用いて被削材に対する穴あけ加工を行った。被削材は、日本工業規格(JIS)H5302:2006の規定によるAl−Si−Cu系ダイカスト材料であるADC12とした。設備は、立型マシニングセンタ(FANUC株式会社製ROBODRILL α−T14iF
La)とした。回転速度は、80m/分および180m/分とした。送り量は、0.6mm/回転および1.2mm/回転とした。穴の深さは、30mmとした。内部給油が用いられた。
【0057】
(評価結果)
図14は、サンプル1のドリル200およびサンプル2のドリル100の穴位置度を示す図である。
図14において、3つの同心円の中心は、理論的に正確な位置にある点である。穴位置度は、理論的に正確な位置を中心とし、実際に形成された穴の中心位置を通る幾何学円の直径である。
図14において、黒丸で示されている点は、実際に形成された穴の中心位置である。黒丸の位置と、同心円の中心との距離が大きい程、穴位置度は大きくなる。穴位置度は、小さいことが望ましい。
【0058】
図14に示されるように、同じ回転速度および同じ送り量の条件で比較した場合、サンプル2のドリル100の穴位置度は、サンプル1のドリル200の穴位置度より小さかった。つまり、サンプル1のドリル200と比較して、サンプル2のドリル100は、穴位置度を向上可能であることが確かめられた。
【0059】
図15は、サンプル1のドリル200およびサンプル2のドリル100の切削抵抗を示す図である。
図15において、横軸は時間であり、縦軸は切削抵抗である。実線および破線の各々は、スラスト方向に対して垂直な水平方向の切削抵抗を示している。実線は、第1方向の切削抵抗を示している。破線は、第2方向の切削抵抗を示している。第1方向は、第2方向に対して直交している。
【0060】
図15に示されるように、同じ回転速度および同じ送り量の条件で比較した場合、サンプル2のドリル100の切削抵抗は、サンプル1のドリル200の切削抵抗より小さかった。つまり、サンプル1のドリル200と比較して、サンプル2のドリル100は、切削抵抗を低減可能であることが確かめられた。
【0061】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
ドリルは、中心軸の周りを回転するドリルであって、すくい面と、逃げ面と、シンニング面とを有している。逃げ面は、すくい面に連なる。シンニング面は、すくい面および逃げ面の各々に連なる。すくい面と逃げ面との稜線は、外側切刃を含む。シンニング面と逃げ面との稜線は、外側切刃に連なる第1シンニング部と、第1シンニング部に連なる第2シンニング部とを含む。中心軸に沿った方向に見て、第1シンニング部は直線状であり、かつ第2シンニング部は湾曲している。中心軸に沿った方向に見て、中心軸を通りかつ第1シンニング部に平行な直線を第1直線とし、かつ第1直線に対して垂直な直線を第2直線とした場合、第1シンニング部と、第1シンニング部と第2シンニング部との境界とは、第1直線に対して回転方向後方に位置し、かつ第2直線に対して回転方向前方に位置している。