(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乗物用シートの構成として、乗員の身体中、骨盤が位置する部分を支持するための骨盤支持部材を備えている構成が考えられる。この骨盤支持部材は、腰掛け形であり、シートバックに設けられている部分(以下、シートバック側支持部)と、シートクッションに設けられている部分(以下、シートクッション側支持部)と、を有する。
【0005】
そして、上記の骨盤支持部材を有する乗物用シートでは、乗員の骨盤状態を修正する等の目的から骨盤支持部材を部分的若しくは全体的に動かせるようになっているのが望ましい。つまり、骨盤支持部材の状態や位置等を適切に調整し得る乗物用シートが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、骨盤支持部材の状態等を調整することが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートバック及びシートクッションを備えた着座部と、乗員の身体中、骨盤が位置する部分を支持するために前記着座部に設けられた骨盤支持部材と、該骨盤支持部材を動かすために設けられた可動機構と、を有し、前記骨盤支持部材は、前記シートバックに設けられ、乗員の背部の後方に位置するシートバック側支持部と、前記シートクッションに設けられ、乗員の臀部の下方に位置するシートクッション側支持部と、前記シートバック側支持部と前記シートクッション側支持部とを連結している連結部と、を備え、前記可動機構は、前記シートバック側支持部、前記シートクッション側支持部及び前記連結部のうちの少なくとも一つの、前記骨盤が位置する部分に対する位置が変化するように前記骨盤支持部材を動かすことにより解決される。
【0008】
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、骨盤支持部材と、骨盤支持部材を動かす可動機構とが設けられている。そして、可動機構は、骨盤支持部材を動かすことで、骨盤支持部材が備えるシートバック側支持部、シートクッション側支持部及び連結部のうちの少なくとも一つを乗員の身体中、骨盤が位置する部分に対して移動させる。これにより、骨盤支持部材の状態や位置等を調整することが可能となる。
【0009】
また、上記の構成において、前記シートバック側支持部は、前記乗物用シートに乗員が着座している状態で該乗員と同じ側に位置する支持面を有し、前記シートバック側支持部及び前記シートクッション側支持部のうちの一方に対する他方の傾き具合を検出して該傾き具合に応じた信号を出力するセンサが設けられ、該センサは、前記乗物用シートの幅方向における前記支持面の中央領域に取り付けられているとよい。
上記の構成では、乗物用シートの幅方向においてセンサがシートバック側支持部の支持面の中央領域に取り付けられている。シートバック側支持部の支持面の中央領域は、通常、乗員の身体中、棘突起の腰部湾曲部と対向する位置にある。このような位置にセンサが取り付けられていれば、センサが乗員の背に当たり難くなる。したがって、乗員は、センサとの接触による異物感を感じ難くなる。
【0010】
また、上記の構成において、前記シートバック側支持部は、前記乗物用シートに乗員が着座している状態で該乗員と同じ側に位置する支持面を有し、前記シートバック側支持部の前記支持面には、該支持面の一部分に形成された窪み領域であって該窪み領域の周辺領域よりも窪んだ位置にある窪み領域が設けられ、前記シートバック側支持部及び前記シートクッション側支持部のうちの一方に対する他方の傾き具合を検出して該傾き具合に応じた信号を出力するセンサが設けられ、該センサは、前記窪み領域に取り付けられているとよい。
上記の構成では、シートバック側支持部の支持面に、周辺領域よりも窪んだ位置(すなわち、後方位置)にある窪み領域が設けられている。そして、窪み領域にセンサが取り付けられている。つまり、センサは、支持面のうち、乗員の背からより離れた領域に取り付けられているので、乗員の背に当たり難くなっている。この結果、乗員は、センサとの接触による異物感を感じ難くなる。
【0011】
また、上記の構成において、前記シートバック側支持部は、前記乗物用シートの幅方向において一端側に位置する第1シートバック側支持部と、他端側に位置する第2シートバック側支持部と、に分かれており、前記シートクッション側支持部は、前記幅方向において一端側に位置する第1シートクッション側支持部と、他端側に位置する第2シートクッション側支持部と、に分かれており、前記可動機構は、前記第1シートバック側支持部及び前記第2シートバック側支持部の各々を個別に移動させるように動作することが可能であり、且つ、前記第1シートクッション側支持部及び前記第2シートクッション側支持部の各々を個別に移動させるように動作することが可能であるとよい。
上記の構成では、シートバック側支持部の、乗物用シートの幅方向における一端側の部分(第1シートバック側支持部)及び他端側の部分(第2シートバック側支持部)の各々を個別に動かすことが可能となる。同様に、上記の構成では、シートクッション側支持部の、乗物用シートの幅方向における一端側の部分(第1シートクッション側支持部)及び他端側の部分(第2シートクッション側支持部)の各々を個別に動かすことが可能となる。
【0012】
また、上記の構成において、前記シートバック側支持部及び前記シートクッション側支持部は、それぞれ、前記乗物用シートに乗員が着座している状態で該乗員と同じ側に位置する支持面を有し、前記シートバック側支持部の前記支持面は、前記乗物用シートの幅方向における前記支持面の端に向かうにつれて前方に位置するように湾曲しており、前記シートクッション側支持部の前記支持面は、前記幅方向における前記支持面の端に向かうにつれて上方に位置するように湾曲しているとよい。
上記の構成では、シートバック側支持部及びシートクッション側支持部の各々の支持面が弓形に湾曲している。これにより、骨盤支持部材は、乗員の身体中、骨盤が位置する部分を包み込むようになる。この結果、骨盤支持部材の機能をより適切に発揮させることが可能となる。
【0013】
また、上記の構成において、前記可動機構は、前記連結部を基点として前記シートバック側支持部及び前記シートクッション側支持部のうちの少なくとも一方が前記乗物用シートの幅方向に沿う軸を中心に回動するように前記骨盤支持部材を動かし、前記乗物用シートの幅方向における前記連結部の長さは、前記幅方向における前記シートバック側支持部の長さよりも短く、且つ、前記幅方向における前記シートクッション側支持部の長さよりも短いとよい。
上記の構成では、可動機構の動作により、骨盤支持部材の屈曲度合いが変わるように骨盤支持部材が動く(変形する)。ここで、シートバック側支持部及びシートクッション側支持部を連結する連結部は、上記2つの支持部よりも幅狭となっている。これにより、骨盤支持部材は、骨盤支持部材の屈曲度合いが変わるように容易に動くことが可能となる。
【0014】
また、上記の構成において、前記シートバック側支持部及び前記シートクッション側支持部は、それぞれ、前記乗物用シートに乗員が着座している状態で該乗員と同じ側に位置する支持面を有し、前記可動機構は、前記連結部を基点として前記シートバック側支持部及び前記シートクッション側支持部のうちの少なくとも一つが前記乗物用シートの幅方向に沿う軸を中心に回動するように前記骨盤支持部材を動かす第1可動機構と、前記シートバック側支持部及び前記シートクッション側支持部の少なくとも一つの前記支持面の、前記幅方向における端領域が前記幅方向の内側に向かうように前記骨盤支持部材を動かす第2可動機構と、を備えるとよい。
上記の構成では、第1可動機構の他に第2可動機構が設けられている。第2可動機構は、シートバック側支持部及びシートクッション側支持部の少なくとも一方の支持面の、乗物用シートの幅方向における端領域が幅方向内側に向かうように動作する。このような動作により、骨盤支持部材は、乗員の身体(特に、骨盤が位置する部分)を包み込むように動く(変形する)ことが可能となる。
【0015】
また、上記の構成において、前記シートバックには、乗員に後方荷重が作用した際に乗員の背に押圧されることで後方に変位するように弾性変形する受圧部材が設けられ、前記可動機構は、前記受圧部材に固定されており、前記シートバック側支持部は、前記可動機構に取り付けられており、前記可動機構及び前記シートバック側支持部は、乗員に後方荷重が作用した際に前記受圧部材と一体的に後方へ移動するとよい。
上記の構成では、シートバック側支持部が可動機構を介して受圧部材に取り付けられている。そして、乗員に後方荷重が作用した際には、可動機構及びシートバック側支持部が受圧部材と一体的に後方へ移動する。このような構成であれば、シートバック側支持部及び可動機構が受圧部材の後方変位を妨げないことになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の乗物用シートによれば、骨盤支持部材の状態や位置等を調整することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、乗物用シートの幅方向においてセンサをシートバック側支持部の支持面の中央領域に取り付けることで、乗員がセンサとの接触による異物感を感じ難くなる。
また、本発明の乗物用シートによれば、シートバック側支持部の支持面に設けられた窪み領域にセンサが取り付けられることで、乗員がセンサとの接触による異物感を感じ難くなる。
また、本発明の乗物用シートによれば、乗物用シートの幅方向においてシートバック側支持部の一端側にある第1シートバック側支持部と他端側にある第2シートバック側支持部とを、それぞれ個別に動かすことが可能となる。同様に、乗物用シートの幅方向においてシートクッション側支持部の一端側にある第1シートクッション側支持部と他端側にある第2シートクッション側支持部とを、それぞれ個別に動かすことが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、骨盤支持部材は、乗員の身体中、骨盤が位置する部分を包み込むように支持することが可能である。この結果、骨盤支持部材の骨盤支持機能がより適切に発揮さされる。
また、本発明の乗物用シートによれば、骨盤支持部材は、その屈曲度合いが変わるように容易に動くことが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第2可動機構により、シートバック側支持部及びシートクッション側支持部の少なくとも一方の支持面の、乗物用シートの幅方向における端領域が幅方向内側に向かって移動する。これにより、骨盤支持部材は、乗員の身体(特に、骨盤が位置する部分)を包み込むように動く(変形する)ことが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、乗員に後方荷重が作用した際に、シートバック側支持部及び可動機構が受圧部材の後方変位を妨げないようにすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る乗物用シートについて図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0019】
また、以下では、車両に搭載されるシート(車両用シート)を、本実施形態に係る乗物用シートの一例として挙げて説明することとする。ただし、本発明は、車両用シート以外の乗物用シート、例えば、船舶や航空機に搭載されるシートにも適用され得る。
【0020】
なお、以下の説明において、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
【0021】
また、以下に説明するシート各部の形状や位置、姿勢については、特に断る場合を除き、車両用シートが通常状態(車両用シートの初期状態であって、シート各部が初期位置にある状態)にあるときの内容となっている。
【0022】
また、以下では、車両用シートの各部と乗員の身体との間の位置関係を説明するにあたり、標準的な体型の乗員を例に挙げて説明することとする。なお、「標準的な体型」とは、SAE(Society of Automotive Engineers)規格に則って作成された成人男性を模した人体ダミーの体型に相当する。
【0023】
<<本実施形態に係る車両用シートの基本構成及び機能>>
先ず、本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)について、その基本構成及び機能について説明する。車両用シートSは、車両の運転席、助手席若しくは後部座席として利用される。また、車両用シートSは、車両の乗員が着座する着座部Shを有する。この着座部Shは、基本構成の面で通常の車両用シートSの着座部と共通している。
【0024】
具体的に説明すると、着座部Shは、
図1に示すようにシートバックS1、シートクッションS2及びヘッドレストS3を有する。シートバックS1及びシートクッションS2は、それぞれ、内部にフレームを有し、当該フレームにパッドPを支持させた後にパッドPの表面を表皮で覆うことで構成されている。なお、シートバックS1及びシートクッションS2を構成する表皮としては、後述する骨盤支持部材1の動きを考慮して、伸縮性に富む表皮が望ましい。
【0025】
また、
図3に示すように、シートバックS1のフレーム(シートバックフレームF)には、受圧部材FPが取り付けられている。この受圧部材FPは、弾性バネFP1と、弾性バネFP1に支持されている樹脂プレートFP2と、によって構成されている。弾性バネFP1は、シートバックフレームFの両側端に設けられたサイドフレームFSの間に架設されている。樹脂プレートFP2は、シート幅方向においてシートバックフレームFの中央部に配置され、弾性バネFP1に掛け止めされて弾性バネFP1に支持されている。また、樹脂プレートFP2は、車両用シートSに着座している乗員の背から後方に向かって作用する荷重(後方荷重)を受け止めるのに十分な幅及び高さを有する。
【0026】
そして、受圧部材FPは、例えば車両後突等が発生して乗員から後方荷重が作用した際に後方に変位するように弾性変形する。具体的に説明すると、乗員の背が樹脂プレートFP2を後方に押圧することで、樹脂プレートFP2を支持する弾性バネFP1が後方に向かって撓むように弾性変形し、これに伴って樹脂プレートFP2も後方に変位する。
【0027】
なお、本実施形態では、弾性バネFP1と樹脂プレートFP2とによって構成された受圧部材FPについて説明したが、これに限定されるものではなく、受圧部材FPが弾性バネFP1のみによって構成されてもよい。
【0028】
また、本実施形態に係る車両用シートSは、着座部Sh内に骨盤支持部材1を備えている。この骨盤支持部材1は、
図2に示すように腰掛け形の部材であり、シートバックS1の下方部分からシートクッションS2の後方部分に亘って展開するように設けられている。つまり、骨盤支持部材1の一部分(具体的には、後述のシートバック側支持部10及び連結部30)は、シートバックS1内に設けられ、残りの部分(具体的には、後述のシートクッション側支持部20)は、シートクッションS2内に設けられている。
【0029】
なお、シートバックS1及びシートクッションS2を構成するパッドPのうち、骨盤支持部材1が配置される部分については、刳り貫かれて骨盤支持部材1を設置するスペースが確保されている。かかるスペースに骨盤支持部材1が設置された後、シートバックS1及びシートクッションS2を構成する表皮によってパッドPが骨盤支持部材1ごと覆われる。
【0030】
そして、腰掛け形の骨盤支持部材1は、乗員が車両用シートS(厳密には着座部Sh)に着座している間、
図1に示すように乗員の身体中、骨盤が位置する部分(以下、骨盤部位)を支持するようになる。また、骨盤支持部材1の各部は、可動であり、当該各部が動くことで骨盤支持部材1の状態(厳密には骨盤支持部材1の形状)や配置位置を変えることが可能である。
【0031】
具体的に説明すると、シートバックS1及びシートクッションS2において、骨盤支持部材1の裏側(乗員を支持する側とは反対側)には、
図4に示すようにランバーサポート2、3、4、5が配置されている。このランバーサポート2、3、4、5は、骨盤支持部材を動かすために設けられた可動機構であり、膨縮自在な空気袋によって構成されている。各ランバーサポート2、3、4、5は、膨張することで骨盤支持部材1を裏側から押圧し、骨盤支持部材1において押圧された部分がランバーサポート2、3、4、5の押圧方向に沿って動く。つまり、骨盤支持部材1において押圧された部分の、骨盤部位に対する位置が変化する。反対に、ランバーサポート2、3、4、5が収縮することで、骨盤支持部材1のうち、それまでランバーサポート2、3、4、5に押圧されていた部分は押圧力から開放され、元の位置に戻るようになる。
【0032】
以上のように骨盤支持部材1においてランバーサポート2、3、4、5に押圧された部分の、骨盤部位に対する位置が変化することで、骨盤支持部材1の状態や配置位置が変化する。このように骨盤支持部材1の状態や配置位置が変化すると、これに伴って骨盤支持部材1による骨盤部位の支持状態(換言すると、骨盤部位の拘束状態)が変化する。
【0033】
以上のように本実施形態では、骨盤支持部材1を動かすことで骨盤部位の支持状態を調整することが可能である。すなわち、車両用シートSは、着座者である乗員の骨盤部位の支持状態を調整する機能を具備している。そして、車両用シートSでは、このような機能を利用することで、乗員の骨盤(厳密には、骨盤角度)を矯正したり、乗員の着座姿勢を補正したり、あるいは、骨盤部位に位置する筋肉(厳密には、インナーマッスル)に負荷を与えて当該筋肉を鍛えたりすることが可能である。
【0034】
<<骨盤支持部材の構成>>
次に、骨盤支持部材1の構成について詳しく説明する。骨盤支持部材1は、腰掛け形であり、側面視で略L字状をなしている。骨盤支持部材1は、
図5及び
図6に示すように、シートバック側支持部10と、シートクッション側支持部20と、連結部30とを有する。
【0035】
シートバック側支持部10は、骨盤支持部材1の上端部分をなし、骨盤支持部材1が着座部Shに取り付けられた状態ではシートバックS1に設けられ、また、車両用シートSに乗員が着座している間には乗員の背部の後方に位置する。シートバック側支持部10の形状について説明すると、シートバック側支持部10は、
図5に示すように、正面視で幅広な台形形状をなしており、シート幅方向における骨盤支持部材1の中央を境にして左右対称な形状となっている。また、シートバック側支持部10は、
図7に示すように、シート幅方向の端に向かうにつれて前方に位置するように弓形に湾曲している。
【0036】
また、
図5に示すように、シート幅方向におけるシートバック側支持部10の中央部には、シートバック側支持部10の上端から下方に向かって延びた逆三角形状の切り欠き11が形成されている。この切り欠き11が形成されていることにより、シートバック側支持部10は、シート幅方向の一端側に位置する部分(
図5中、左側半分の部分であり、以下、第1シートバック側支持部12)と、シート幅方向の他端側に位置する部分(
図5中、右側半分の部分であり、以下、第2シートバック側支持部13)とに分かれている。第1シートバック側支持部12及び第2シートバック側支持部13は、切り欠き11を隔てて互いに離間しているため、独立して動くことが可能である。すなわち、本実施形態では、第1シートバック側支持部12及び第2シートバック側支持部13の各々を個別に移動させることが可能である。
【0037】
シートクッション側支持部20は、骨盤支持部材1の下端部分をなし、骨盤支持部材1が着座部Shに取り付けられた状態ではシートクッションS2に設けられ、また、車両用シートSに乗員が着座している間には乗員の臀部の下方に位置する。シートクッション側支持部20の形状について説明すると、シートクッション側支持部20は、
図6に示すように、シートバック側支持部10に比して若干幅広となっており、シート幅方向における骨盤支持部材1の中央を境にして左右対称な形状となっている。
【0038】
また、
図6に示すように、シート幅方向におけるシートクッション側支持部20の中央部には、シートクッション側支持部20の前端から後方に向かって延びた逆三角形状の切り欠き21が形成されている。この切り欠き21が形成されていることにより、シートクッション側支持部20は、シート幅方向の一端側に位置する部分(
図6中、右側半分の部分であり、以下、第1シートクッション側支持部22)と、シート幅方向の他端側に位置する部分(
図6中、左側半分の部分であり、以下、第2シートクッション側支持部23)とに分かれている。第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23は、切り欠き21を隔てて互いに離間しているため、独立して動くことが可能である。すなわち、本実施形態では、第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23の各々を個別に移動させることが可能である。
【0039】
また、
図8に示すように、第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23は、それぞれ、シート幅方向の端に向かうにつれて上方に位置するように弓形に湾曲している。
【0040】
連結部30は、シートバック側支持部10の直下位置に配置され、シートバック側支持部10の下端とシートクッション側支持部20の後端とを連結している。なお、連結部30は、骨盤支持部材1が着座部Shに取り付けられた状態ではシートバックS1に設けられ、また、車両用シートSに乗員が着座している間には乗員の背部の後方に位置する。
【0041】
連結部30の形状について説明すると、連結部30は、
図5に示すように、正面視で逆さ等脚台形状をなしており、下方に向かうにつれて幅狭となっている。また、連結部30の横幅(シート幅方向における長さ)は、シートバック側支持部10の横幅よりも短く、且つ、シートクッション側支持部20の横幅よりも短くなっている。すなわち、骨盤支持部材1は、連結部30の箇所にてシート幅方向内側に幾分括れた形状をなしている。
【0042】
また、連結部30は、シート幅方向における骨盤支持部材1の中央を境にして左右対称な形状となっており、シート幅方向の端に向かうにつれて前方に位置するように弓形に湾曲している。
【0043】
骨盤支持部材1の各部の構成について更に詳しく説明すると、
図5乃至
図8に示すように、シートバック側支持部10、シートクッション側支持部20及び連結部30の各々は、プレート材からなるベース部1xと、ベース部1xの表面に貼り付けられたクッションマット1yとによって構成されている。
【0044】
また、シートバック側支持部10、シートクッション側支持部20及び連結部30の各々のベース部1xは、共通のプレート材によって構成され、一体化している。また、ベース部1xを構成するプレート材の材質は、適度な可撓性を有している。このため、骨盤支持部材1に荷重を付与すると、その箇所が荷重付与方向に沿って移動するように骨盤支持部材1が撓む(弾性変形する)ようになる。
【0045】
したがって、シートバック側支持部10を前方に向かって押すと、シートバック側支持部10がシートクッション側支持部20に向かって倒れ、結果として、骨盤支持部材1の屈曲度合いが大きくなる。同様に、シートクッション側支持部20を上方に向かって押すと、シートクッション側支持部20がシートバック側支持部10に向かって起き上がり、結果として、骨盤支持部材1の屈曲度合いが大きくなる。ここで、「屈曲度合い」とは、シートクッション側支持部20に対するシートバック側支持部10の傾き度合いを意味し、「屈曲度合いが大きくなる」とは、シートバック側支持部10がシートクッション側支持部20により近付くことを意味する。
【0046】
なお、骨盤支持部材1の屈曲度合いが変化するようにシートバック側支持部10及びシートクッション側支持部20のうちの一方が他方に向かって移動するとき、連結部30の下端が基点となる。すなわち、シートバック側支持部10及びシートクッション側支持部20の各々は、連結部30の下端を基点としてシート幅方向に沿う軸を中心に回動することが可能である。
【0047】
クッションマット1yは、ベース部1xの表面のうち、車両用シートSに乗員が着座している状態で当該乗員と同じ側の面に貼り付けられており、乗員の骨盤部位と適切にフィットするような形状に成形されている。なお、本実施形態において、クッションマット1yは、
図5及び
図6に示すように複数のピースに分かれており、各ピースは、互いに離間した位置に設置されている。
【0048】
ところで、シートバック側支持部10、シートクッション側支持部20及び連結部30は、
図7及び
図8に示すように、それぞれ、乗員を支持する支持面1aを有する。この支持面1aは、車両用シートSに乗員が着座している状態で当該乗員と同じ側に位置する面であり、具体的には、クッションマット1yが貼り付けられている側の面である。分かり易く説明すると、シートバック側支持部10及び連結部30の表面のうち、より前側に位置する面が支持面1aに該当する。シートクッション側支持部20の表面のうち、より上側に位置する面が支持面1aに該当する。
【0049】
また、各支持面1aは、乗員の骨盤部位にフィットするように湾曲している。具体的に説明すると、
図7に示すように、シートバック側支持部10の支持面1aは、当該支持面1aのシート幅方向の端に向かうにつれて前方に位置するように弓形に湾曲している。同様に、連結部30の支持面1aは、当該支持面1aのシート幅方向の端に向かうにつれて前方に位置するように弓形に湾曲している。また、シートクッション側支持部20の支持面1aは、シート幅方向の一端側に位置する領域(つまり、第1シートクッション側支持部22の支持面1a)と、他端側に位置する領域(つまり、第2シートクッション側支持部23の支持面1a)とに分かれている。そして、各領域は、
図8に示すように、シート幅方向の端に向かうにつれて上方に位置するように弓形に湾曲している。
【0050】
また、各支持面1aは、
図7及び
図8に示すように、隆起領域1bと窪み領域1cとによって構成されている。隆起領域1bは、支持面1a中、クッションマット1yが貼り付けられることでクッションマット1yの厚み分だけ周辺領域(具体的には、窪み領域1c)よりも隆起している領域である。窪み領域1cは、支持面1a中、ベース部1xの表面が露出する部分(支持面1aの一部分に相当)に形成され、その周辺領域(具体的には、隆起領域1b)よりも窪んだ位置にある。
【0051】
なお、シートバック側支持部10の支持面1aのうち、シート幅方向の中央領域は、
図5及び
図7に示すように窪み領域1cとなっている。
【0052】
<<骨盤支持部材の調整機器について>>
次に、骨盤支持部材1を動かして骨盤部位の支持状態を調整するために設けられた機器について説明する。車両用シートSには、
図9に示すように、ランバーサポート2、3、4、5、エア供給源であるポンプ6、及びエア調整バルブ7が骨盤支持部材1を動かすための機器として設けられている。また、
図9に示すように、ポンプ6及びエア調整バルブ7を制御するコントローラとしてのECU(Electronic Control Unit)60が車両内に設置されている。さらに、車両用シートS内の所定箇所には、角度センサ8とエア圧センサ9とが設置されている。以下、各機器について説明する。
【0053】
ランバーサポート2、3、4、5は、骨盤支持部材1の裏側に配置され、ポンプ6から供給されるエアが内部に封入されることで膨張して骨盤支持部材1を押圧する。これにより、シートバック側支持部10及びシートクッション側支持部20のうちの少なくとも一方が動き、その部分(動いた部分)の骨盤部位に対する位置が変化するようになる。
【0054】
本実施形態では、4種類のランバーサポート2、3、4、5が設けられている。各ランバーサポート2、3、4、5について説明すると、第一のランバーサポート(以下、シートバック側ランバーサポート2)は、第1可動機構に相当し、シートバックS1においてシートバック側支持部10の後方位置に配置されている。このシートバック側ランバーサポート2は、シートバック側支持部10を後方から押圧することで、連結部30を基点としてシートバック側支持部10がシート幅方向に沿う軸を中心に回動するようにシートバック側支持部10を動かす。
【0055】
具体的に説明すると、シートバック側ランバーサポート2は、
図10Aに示すように、膨張時には側方視で略扇状に展開し、上端に向かうほど展開量(膨張量)が大きくなるように膨張する。また、シートバック側ランバーサポート2の上端部は、シートバック側支持部10の後面の上端部と対向する。このため、シートバック側ランバーサポート2が略扇状に展開するように膨張すると、シートバック側支持部10の上端部がシートバック側ランバーサポート2によって前方に押圧されるようになる。この結果、
図10Aに示すように、シートバック側支持部10は、連結部30を基点としてシート幅方向に沿う軸(図中、記号Mにて表記)を中心に前方へ回動する(前傾する)ようになる。
【0056】
ちなみに、シートバック側ランバーサポート2は、前述した受圧部材FPの樹脂プレートFP2の前側表面にビス等で固定されている。また、シートバック側支持部10は、その後面の上方部分にてシートバック側ランバーサポート2に取り付けられている。つまり、シートバック側支持部10は、シートバック側ランバーサポート2を介して受圧部材FPに固定されている。これにより、車両後突等によって車両用シートSに着座している乗員から受圧部材FPへ後方荷重が作用し、これに伴って受圧部材FPが後方に変位するように弾性変形する際には、
図13に示すように、シートバック側ランバーサポート2及びシートバック側支持部10が受圧部材FPと一体的に後方へ移動するようになる。
【0057】
第二のランバーサポート(以下、シートクッション側ランバーサポート3)は、第1可動機構に相当し、シートクッションS2においてシートクッション側支持部20の下方位置に配置されている。このシートクッション側ランバーサポート3は、シートクッション側支持部20を下方から押圧することで、連結部30を基点としてシートクッション側支持部20がシート幅方向に沿う軸を中心に回動するようにシートクッション側支持部20を動かす。
【0058】
具体的に説明すると、シートクッション側ランバーサポート3は、
図10Bに示すように、膨張時には側方視で略扇状に展開し、前端に向かうほど展開量(膨張量)が大きくなるように膨張する。また、シートクッション側ランバーサポート3の前端部は、シートクッション側支持部20の下面の前端部の直下に位置する。このため、シートクッション側ランバーサポート3が略扇状に展開するように膨張すると、シートクッション側支持部20の前端部がシートクッション側ランバーサポート3によって上方に押圧されるようになる。この結果、
図10Bに示すように、シートクッション側支持部20は、連結部30を基点としてシート幅方向に沿う軸(図中、記号Mにて表記)を中心に上方へ回動する(起き上がる)ようになる。
【0059】
なお、
図10A及び
図10Bに示すように、シートクッション側支持部20の下方位置には矩形状の支持プレート40が配置されている。この支持プレート40は、比較的大きなサイズであるので、シートクッション側支持部20を比較的広範囲に支持している。そして、支持プレート40の下にシートクッション側ランバーサポート3が配置されている。したがって、シートクッション側ランバーサポート3は、支持プレート40を介してシートクッション側支持部20を押圧することになる。このようにシートクッション側ランバーサポート3が支持プレート40を介してシートクッション側支持部20を押圧することで、シートクッション側支持部20を効率よく動かすことが可能となる。
【0060】
以上のように、本実施形態では、シートバック側ランバーサポート2又はシートクッション側ランバーサポート3の膨張量を変えることで、骨盤支持部材1の屈曲度合いを調整することが可能である。
【0061】
さらに、シートバック側ランバーサポート2及びシートクッション側ランバーサポート3については、それぞれの膨張量を同時に調整することも可能である。例えば、一方のランバーサポートをある膨張量だけ膨張させて、他方のランバーサポートを同じ量だけ収縮させるような調整も可能である。このように各ランバーサポートを膨縮させれば、
図11A及び
図11Bに示すように、屈曲度合いを変えずに骨盤支持部材1全体を動かすことが可能となる。具体的には、シートクッション側支持部20の下方位置に設けられた回動支点(図中、記号Nにて表記)を中心にして、前後方向及び上下方向に骨盤支持部材1全体を回動させる。
【0062】
以上のように、本実施形態では、シートバック側ランバーサポート2及びシートクッション側ランバーサポート3の各々の膨張量を同時に変えることで、車両用シートSにおける骨盤支持部材1の配置位置を調整することが可能である。
【0063】
第三のランバーサポート(以下、上側サイドランバーサポート4)は、第2可動機構に相当し、シートバックS1においてシートバック側支持部10の側端部(シート幅方向の端部)の後方位置に配置されている。また、本実施形態では、上側サイドランバーサポート4がシート幅方向において互いに離れた状態で左右一対設けられている。そして、各上側サイドランバーサポート4は、シートバック側支持部10の側端部を後方から押圧することで、弓形のシートバック側支持部10の湾曲度合いが増加するようにシートバック側支持部10を動かす。
【0064】
具体的に説明すると、上側サイドランバーサポート4は、
図12Aに示すように、膨張時には上方視で略三角形状に展開し、シート幅方向外側に向かうほど展開量(膨張量)が大きくなるように膨張する。また、上側サイドランバーサポート4のシート幅方向外側の端部は、シートバック側支持部10の後面の側端領域と対向する。このため、上側サイドランバーサポート4が略三角形状に展開するように膨張すると、シートバック側支持部10の側端部がシート幅方向内側に向かうように押圧される。この結果、
図12Aに示すように、シートバック側支持部10は、より撓み、その湾曲度合いが増加するようになる。換言すると、シートバック側支持部10の支持面1aの、シート幅方向における端領域がシート幅方向内側に向かうようになる。
【0065】
なお、前述したように、シートバック側支持部10は、切り欠き11を隔てて第1シートバック側支持部12及び第2シートバック側支持部13に分かれており、第1シートバック側支持部12及び第2シートバック側支持部13の各々は、個別に動くことが可能である。また、第1シートバック側支持部12及び第2シートバック側支持部13の各々に対して上側サイドランバーサポート4が一台ずつ設けられている。このため、各上側サイドランバーサポート4の動作によって、第1シートバック側支持部12及び第2シートバック側支持部13の各々を個別に移動させるように動作することが可能である。より具体的に説明すると、各上側サイドランバーサポート4は、第1シートバック側支持部12及び第2シートバック側支持部13のうち、より近くにある方の側端部を後方から押圧し、当該側端部をシート幅方向内側に向けて移動させる。
【0066】
第四のランバーサポート(以下、下側サイドランバーサポート5)は、第2可動機構に相当し、シートクッションS2においてシートクッション側支持部20の側端部(シート幅方向の端部)の下方位置に配置されている。また、本実施形態では、下側サイドランバーサポート5がシート幅方向において互いに離れた状態で左右一対設けられている。そして、各下側サイドランバーサポート5は、シートクッション側支持部20の側端部を下方から押圧することで、弓形のシートクッション側支持部20の湾曲度合いが増加するようにシートクッション側支持部20を動かす。
【0067】
具体的に説明すると、下側サイドランバーサポート5は、
図12Bに示すように、膨張時には正面視で略三角形状に展開し、シート幅方向外側に向かうほど展開量(膨張量)が大きくなるように膨張する。また、下側サイドランバーサポート5のシート幅方向外側の端部は、シートクッション側支持部20の下面の側端領域と対向する。このため、下側サイドランバーサポート5が略三角形状に展開するように膨張すると、シートクッション側支持部20の側端部がシート幅方向内側に向かうように押圧される。この結果、
図12Bに示すように、シートクッション側支持部20は、より撓み、その湾曲度合いが増加するようになる。換言すると、シートクッション側支持部20の支持面1aの、シート幅方向における端領域がシート幅方向内側に向かうようになる。
【0068】
なお、前述したように、シートクッション側支持部20は、切り欠き21を隔てて第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23に分かれており、第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23の各々は、個別に動くことが可能である。また、第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23の各々に対して下側サイドランバーサポート5が一台ずつ設けられている。このため、各下側サイドランバーサポート5の動作によって、第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23の各々を個別に移動させるように動作することが可能である。より具体的に説明すると、各下側サイドランバーサポート5は、第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23のうち、より近くにある方の側端部を下方から押圧することで、当該側端部をシート幅方向内側に向けて移動させる。
【0069】
骨盤支持部材1の調整機器のうち、ランバーサポート以外の機器について説明すると、ポンプ6及びエア調整バルブ7は、ランバーサポートの膨張量を調整するために動作する機器である。ポンプ6は、エアの吸引及び供給が可能なポンプにより構成され、各ランバーサポート2、3、4、5に対してエアを供給したり、各ランバーサポート2、3、4、5内のエアを吸引したりする。エア調整バルブ7は、各ランバーサポート2、3、4、5におけるエア圧を調整するために開閉し、ランバーサポート別に設けられている。これにより、各ランバーサポート2、3、4、5を個別に調整することが可能である。なお、通常状態において各ランバーサポート2、3、4、5は、その内部に若干のエアが封入されており、やや膨張した状態にある。
【0070】
ちなみに、ポンプ6及びエア調整バルブ7は、車両用シートSの内部(例えば、シートバックS1の内部)に配置されてもよく、あるいは、車両用シートSの外側(例えば、車体に設けられた機器収容スペース)に配置されてもよい。
【0071】
また、ポンプ6のオンオフ、及びエア調整バルブ7の開度は、ECU60によって制御される。より詳しく説明すると、
図9に図示の操作スイッチ61が乗員によって操作されると、これをトリガーとして、ECU60がポンプ6及びエア調整バルブ7を制御する。そして、ECU60による制御が行われることで、操作スイッチ61おける操作内容に応じて各ランバーサポートの膨張量が変化する。また、これに伴って、骨盤支持部材1の屈曲度合いや位置(配置位置)、あるいはシートバック側支持部10やシートクッション側支持部20の湾曲度合いが調整されるようになる。
【0072】
また、ECU60がポンプ6及びエア調整バルブ7を調整するに際して、角度センサ8及びエア圧センサ9による計測が実施される。角度センサ8は、シートバック側支持部10及びシートクッション側支持部20のうちの一方に対する他方の傾き具合、すなわち傾斜角度を検出して当該傾斜角度に応じた信号を出力するセンサである。この角度センサ8は、非接触方式で傾斜角度を検出することが可能な公知のセンサからなる。
【0073】
エア圧センサ9は、各ランバーサポート2、3、4、5の内部におけるエア圧を検出して当該エア圧に応じた信号を出力する。このエア圧センサ9は、ランバーサポートのエア圧を検出することが可能な公知のセンサからなり、ランバーサポート別に設けられている。なお、エア圧センサ9が検出するエア圧は、ランバーサポートの膨張量に応じて変化すると共に、乗員が車両用シートSに着座した際に掛かる着座圧に応じて変化する。
【0074】
角度センサ8及びエア圧センサ9の各々からの出力信号は、ECU60に伝送される。そして、ECU60は、受信した信号を解析し、その解析結果と操作スイッチ61における操作内容に応じてポンプ6及びエア調整バルブ7を制御する。
【0075】
本実施形態において、角度センサ8は、骨盤支持部材1の所定位置に取り付けられている。より詳しく説明すると、シートバック側支持部10及びシートクッション側支持部20のそれぞれに角度センサ8が1台ずつ取り付けられている。
【0076】
具体的に説明すると、シートバック側支持部10には、シートクッション側支持部20に対するシートバック側支持部10の傾斜角度をセンシングする角度センサ8が設けられている。この角度センサ8の取り付け箇所について説明すると、
図5等に示すように、シートバック側支持部10に設けられた角度センサ8は、シートバック側支持部10の支持面1aに取り付けられ、詳しくは、シート幅方向における支持面1aの中央領域に取り付けられている。ここで、支持面1aの中央領域は、乗員が車両用シートSに着座している状態では当該乗員の身体中、棘突起の腰部湾曲部(背部の中でやや前方に向かって湾曲した部分)と対向する位置にある。このような位置に角度センサ8が取り付けられているので、角度センサ8が乗員の背に当たり難くなり、角度センサ8との接触に起因する異物感を乗員に与え難くすることが可能となる。
【0077】
また、シートバック側支持部10の支持面1aの中央領域について更に説明すると、
図5及び
図7に示すように、角度センサ8が取り付けられる部分を含め、当該中央領域の大部分が窪み領域1cとなっている。つまり、角度センサ8は、シートバック側支持部10の支持面1aのうち、より後方に窪んだ領域に取り付けられている。これにより、角度センサ8は、乗員の背により一層当たり難くなり、この結果、角度センサ8との接触に起因する異物感をより与え難くすることが可能となる。
【0078】
一方で、シートクッション側支持部20には、シートバック側支持部10に対するシートクッション側支持部20の傾斜角度をセンシングする角度センサ8が設けられている。この角度センサ8は、シート幅方向におけるシートクッション側支持部20の中央部(例えば、シートクッション側支持部20の裏面中、シート幅方向の中央領域)に取り付けられている。
【0079】
<<骨盤支持部材の屈曲度合い調整に関する変形例について>>
以上までに説明してきた実施形態では、骨盤支持部材1の屈曲度合いを調整するための機構として2つのランバーサポート(具体的にはシートバック側ランバーサポート2及びシートクッション側ランバーサポート3)を用いることとした。より具体的に説明すると、上述の実施形態では、シートバック側支持部10及びシートクッション側支持部20のそれぞれに対してランバーサポート(厳密には、屈曲度合いを変更するためのランバーサポート)が1台ずつ設けられている。つまり、上述の実施形態では、シートバック側ランバーサポート2がシートバック側支持部10を押圧すると、シートバック側支持部10全体が一体的に前方に移動するようになる。同様に、シートクッション側ランバーサポート3がシートクッション側支持部20を押圧すると、シートクッション側支持部20全体が一体的に上方に移動するようになる。
【0080】
ところで、シートバック側支持部10及びシートクッション側支持部20の各々は、切り欠き11、21を隔てて並んだ2つの部分からなり、それぞれの部分が個別に移動可能となっている。この点を踏まえると、本発明の変形例として、第1シートバック側支持部12及び第2シートバック側支持部13の各々の後方位置に1台ずつシートバック側ランバーサポート2を配置したケース(以下、第一変形例)が考えられる。同様に、第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23の各々の下方位置に1台ずつシートクッション側ランバーサポート3を配置したケース(以下、第二変形例)が考えられる。
【0081】
第一変形例では、第1シートバック側支持部12及び第2シートバック側支持部13のそれぞれに対してシートバック側ランバーサポート2が1台ずつ設けられている。そして、各シートバック側ランバーサポート2は、個別に動かすことができる。この結果、
図14に示すように、第1シートバック側支持部12及び第2シートバック側支持部13の各々を独立して動かし、より厳密には連結部30を基点としてシート幅方向に沿う軸を中心に回動させることが可能となる。
【0082】
第二変形例では、第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23のそれぞれに対してシートクッション側ランバーサポート3が1台ずつ設けられている。そして、各シートクッション側ランバーサポート3は、個別に動かすことができる。この結果、
図15に示すように、第1シートクッション側支持部22及び第2シートクッション側支持部23の各々を独立して動かし、より厳密には連結部30を基点としてシート幅方向に沿う軸を中心に回動させることが可能となる。
【0083】
<<その他の実施形態>>
以上までに本発明の一実施例として、骨盤支持部材1を搭載した車両用シートSの構成について説明してきた。ただし、本発明の実施例については、上記の構成に限定されるものではなく、他の構成も考えられ得る。
【0084】
具体的に説明すると、上記の実施形態では、可動機構として、エアの流出入によって膨縮自在なランバーサポート(空気袋)を利用することとした。しかし、これに限定されるものではなく、他の可動機構(具体的には、ワイヤの牽引によって骨盤支持部材1の各部を動かす機構、あるいは進退自在なロッドを用いて骨盤支持部材1の各部を動かす機構)を利用してもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、骨盤支持部材1を動かす際にシートバック側支持部10やシートクッション側支持部20を直接押圧して動かすこととした。しかし、これに限定されるものではなく、骨盤支持部材1中の連結部30を動かすことで、シートバック側支持部10及びシートクッション側支持部20を間接的に動かしてもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、骨盤支持部材1を動かす際に、シートバック側支持部10やシートクッション側支持部20をシート幅方向に沿う軸を中心に回動させることとした。しかし、シートバック側支持部10やシートクッション側支持部20を動かす際の方向については特に限定されるものではなく、シートバック側支持部10やシートクッション側支持部20を前後方向又は上下方向に直進させてもよい。