特許第6985590号(P6985590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シンフォニアテクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6985590-魚卵処理装置 図000002
  • 特許6985590-魚卵処理装置 図000003
  • 特許6985590-魚卵処理装置 図000004
  • 特許6985590-魚卵処理装置 図000005
  • 特許6985590-魚卵処理装置 図000006
  • 特許6985590-魚卵処理装置 図000007
  • 特許6985590-魚卵処理装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985590
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】魚卵処理装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20211213BHJP
   A01K 61/10 20170101ALI20211213BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   A01K61/10
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-134435(P2017-134435)
(22)【出願日】2017年7月10日
(65)【公開番号】特開2019-13197(P2019-13197A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】中西 章
(72)【発明者】
【氏名】山中 悠司
(72)【発明者】
【氏名】中井 沙織
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0178646(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/067554(WO,A1)
【文献】 特開2012−085571(JP,A)
【文献】 特開2005−027626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−1/42
A01K 61/00−61/17
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取された魚卵を加工する加工用水槽と、
前記加工用水槽内に位置付けられた前記魚卵に所定の物質を注入する加工装置と、
を具備する魚卵処理装置であって、
前記加工用水槽が、加工前の魚卵を収容すべく幅寸法を前記魚卵が一列に並ぶ寸法に設定された加工前領域と、所定の加工処理が施された魚卵を収容するための加工後領域とを有し
前記加工前領域に、その周縁に所定ピッチで形成された前記魚卵を収容し得る収容凹部を有する歯車状の整列盤が配置され、
前記収容凹部は、その内部に収容された前記魚卵の全体が前記整列盤の厚さ方向外側から視認可能な形状であるとともに、
前記加工前領域は、前記収容凹部に収容された前記魚卵を側方から視認可能に透明な材料により形成されることを特徴とする魚卵処理装置。
【請求項2】
前記加工装置が、魚卵を載置し得る載置部と、この載置部に載置された魚卵に所定の物質を所定のタイミングで導入し得る管状をなす導入管とを有し
前記載置部が、前記整列盤の周縁に形成された前記魚卵を収容し得る収容凹部である請求項1記載の魚卵処理装置。
【請求項3】
前記収容凹部に収容された前記魚卵を側方から撮像した撮像画像に基づいて、前記加工装置により所定の加工がされ得なかった魚卵が視認された場合に、その魚卵を回収するための排出部を有している請求項2記載の魚卵処理装置。
【請求項4】
採取された魚卵を加工する加工用水槽と、
前記加工用水槽内に位置付けられた前記魚卵に所定の物質を注入する加工装置と、
魚卵を1つずつ収容する収容凹部を周囲に設けた歯車状の整列盤と、
を具備する魚卵処理装置であって、
前記加工用水槽が、加工前の魚卵を収容すべく幅寸法を前記魚卵が一列に並ぶ寸法に設定された加工前領域と、所定の加工処理が施された魚卵を収容するための加工後領域とを有し、
前記整列盤を魚卵を1つずつ所定の加工位置に順次搬送するように動作させる駆動部と、前記加工装置によって魚卵に所定の加工処理が施されたかを視認する魚卵視認部と、前記魚卵視認部によって所定の加工処理が施され得なかったと視認された魚卵を回収する排出部と、を制御する制御装置を有していることを特徴とする魚卵処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に魚卵に所定の処理を施すための魚卵処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
受精卵に遺伝子を注入することにより組換えタンパク質などの目的物質を遺伝子工学技術を用いて生産する技術分野において、ゼブラフィッシュなど小型魚卵の利用が有益であることは公知である。例えば、前記ゼブラフィッシュを利用して目的物質を得ようとする場合、直径が0.9mm〜1.3mmという球状の受精卵への精密な遺伝子溶液(ベクター)の注入が必要であるが、受精卵にダメージを与えにくいように、先端が数〜十数μmの直径の極細な針を用いて、受精卵の卵膜を貫通して胚の内部に針先を差し込み、遺伝子溶液を注入するマイクロインジェクション技術が知られている。この分野では、手作業や手動操作で手ぶれを防ぐマニュピレータなどを用いてのマイクロインジェクション作業が一般的な方法となっているが、実用的な目的物質の量の取得のために必要なる数量の受精卵を処理することは困難であり、注入作業も精度と安定性が限られたものとなっている、そこで、下記先行技術にあるような自動化を目指す試みが種々おこなわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5647005号公報
【特許文献2】特許5823112号公報
【特許文献3】特許5787432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、魚卵においては卵膜と胚は比重が異なるため、卵膜に対する胚の位置は重力により鉛直下方に偏心する。従来からのプレート等に卵を配列させてインジェクションする方式においては、魚卵の上方、下方からの視認では針の刺さり深さや刺さりの状態遺伝子注入の様子を適切に観察して遺伝子注入針の差込深さを決めたうえで、遺伝子注入することが難しい。また、魚卵の搬送方向の前後や側方から、魚卵の搬送手段を実現する構成物の影響を避けて遺伝子注入針の差込深さ撮像やセンシングすることが難しい。また、針の刺さりの状態や遺伝子注入液の挿入の様子の把握についても同様である。
【0005】
更にマイクロインジェクションを実施できる極細な遺伝子注入針は、コンタミネーション防止のため使い捨ての態様を適用しているが、針の長さやアタッチメントの構造は、単純に針をアタッチメントに取り付けただけでは魚卵への針刺し深さ精度に影響のない精度レベルでは製作されていないことが多く、それぞれ長さが違いばらついている。そのため、複数本の針先位置を数十μm程度のエリアに精密位置決めした上で、装置側へ取付けアライメントや各種部品累積公差などを考慮した設計およびセット手順を構築する必要があるため、煩雑な手順の従前段取り調整が必要となり、特定の熟練オペレータであっても作業が難しく時間を要する。
【0006】
また、上述の受精卵は、例えば約30分毎といったように、頻繁に細胞分裂が進むため、迅速に遺伝子を導入し目的の受精卵を得るためには、受精卵の処理を効率がより高い状態で行うことが目的とされる。すなわち、上記特許文献に挙げた従来の技術は、所定の容器の使用等に処理の速度が拘束されてしまうという、所謂バッチ処理を想定してなされた技術であるため、受精卵が加工に適した状態で常に処理が行えるというものではない。また勿論、処理後の受精卵を効率良く回収するということも重要な要素であり、上記特許文献よりも効率良く受精卵を回収する技術も求められているのが現状である。
【0007】
具体的には、受精卵の処理を高い効率にて行えるよう、受精卵に所定の処理を行い得るように、より高い効率にて搬送し、処理後の受精卵を高い効率にて回収することが肝要となる。
【0008】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、主たる目的は、上記受精卵に、より高い効率にて所定の処理を行うことができる魚卵処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以上のような問題点を鑑み、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明の魚卵処理装置は、採取された魚卵を加工する加工用水槽と、前記加工用水槽内に位置付けられた前記魚卵に所定の物質を注入する加工装置と、を具備する魚卵処理装置であって、前記加工用水槽が、加工前の魚卵を収容すべく幅寸法を前記魚卵が一列に並ぶ寸法に設定された加工前領域と、所定の加工処理が施された魚卵を収容するための加工後領域とを有し、前記加工前領域に、その周縁に所定ピッチで形成された前記魚卵を収容し得る収容凹部を有する歯車状の整列盤が配置され、前記収容凹部は、その内部に収容された前記魚卵の全体が前記整列盤の厚さ方向外側から視認可能な形状であるとともに、前記加工前領域は、前記収容凹部に収容された前記魚卵を側方から視認可能に透明な材料により形成されることを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、所定の種をなす魚から採取し得た受精卵に、より高い効率にて所定の処理を行うことができる魚卵処理装置を提供することができる。
【0012】
より確実に魚卵に対し所定の処理を行い得る構成として、前記加工装置が、魚卵を載置し得る載置部と、この載置部に載置された魚卵に所定の物質を所定のタイミングで導入し得る管状をなす導入管とを有し、前記載置部が、前記整列盤の周縁に形成された前記魚卵を収容し得る収容凹部であることが望ましい。これにより、魚卵に対し効率の高い処理を行い得る。
【0013】
前記収容凹部に収容された前記魚卵を側方から撮像した撮像画像に基づいて、前記加工装置により所定の加工がされ得なかった魚卵が視認された場合に、その魚卵を回収するための排出部を有していることが望ましい。これにより、加工された魚卵を高い精度で得ることができるとともに、排出部を経た魚卵を回収すれば、加工し得た魚卵を外部へ漏出する事態を有効に回避することができる。
【0014】
魚卵への処理を作業者によってより確実に行い得るようにするためには、加工用水槽を介して魚卵を、側方から視認可能な加工前領域を有しているものとすることが好ましい。換言すれば、加工前領域を構成する部材を透明に構成するという手法が挙げられる。
【0015】
加えて、処理後の魚卵を効率良く回収し得るようにするためには、所定の加工処理が施された魚卵を回収するための回収槽を有するものとすることが望ましい。これにより、回収槽を引き上げるだけで簡単に魚卵を回収することができる。
【0016】
更に、回収する処理後の魚卵の品質をより向上させるようにするためには、採取された魚卵を加工する加工用水槽と、前記加工用水槽内に位置付けられた前記魚卵に所定の物質を注入する加工装置と、魚卵を1つずつ収容する収容凹部を周囲に設けた歯車状の整列盤と、を具備する魚卵処理装置であって、前記加工用水槽が、加工前の魚卵を収容すべく幅寸法を前記魚卵が一列に並ぶ寸法に設定された加工前領域と、所定の加工処理が施された魚卵を収容するための加工後領域とを有し、前記整列盤を魚卵を1つずつ所定の加工位置に順次搬送するように動作させる駆動部と、前記加工装置によって魚卵に所定の加工処理が施されたかを視認する魚卵視認部と、前記魚卵視認部によって所定の加工処理が施され得なかったと視認された魚卵を回収する排出部と、を制御する制御装置を有していることを特徴とする。これにより、加工された魚卵を高い精度で得ることができるとともに、排出部を経た魚卵を回収すれば、加工し得た魚卵を外部へ漏出する事態を有効に回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明した本発明によれば、受精卵に、より高い効率にて所定の処理を行うことができる魚卵処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る機能ブロック図。
図2】同実施形態に係る全体の構成説明図。
図3】同実施形態に係る採卵搬送部を示す模式的な構成説明図。
図4】同実施形態に係る不要物分離部を示す模式的な構成説明図。
図5】同実施形態に係る遺伝子注入部及び加工用水槽を示す模式的な構成説明図。
図6図5に係る模式的な平面図。
図7】同実施形態に係る作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態に係る卵処理システム或いは魚卵処理装置の一例である遺伝子注入装置1は、飼育水槽Bから採取される魚卵eである受精卵に対し、速やかに所定の遺伝子を導入するためのものである。そして所定の遺伝子が注入された魚卵eはその後、細胞分裂が繰り返されるとともに導入された遺伝子の塩基配列に由来するタンパク質が合成される。そして当該タンパク質はしかるべきタイミングにて採取、抽出、精製され、例えば創薬の研究や量産に利用される。
【0021】
遺伝子注入装置1は、図1及び図2に示すように、飼育水槽Bに連続する採卵搬送部2と、搬送された魚卵eを飼育水w並びに排泄物や残餌といった不要物bg、sgに対して分離する不要物分離部3と、不要物bg、sgから分離された魚卵eを主に振動によって搬送する振動搬送部4と、振動搬送部4により搬送された魚卵eを所定の状態に整列させながら搬送する整列搬送部6と、整列搬送部6により搬送されている魚卵eに所定の遺伝子を注入する遺伝子注入部5と、所定の遺伝子が注入された魚卵eを効率良く採取するための選別回収部7とを有している。また本実施形態では、魚卵eに所定の加工を施すための加工装置である遺伝子注入部5並びに整列搬送部6、そして回収装置たる選別回収部7は、平面視概略T字状をなした加工用水槽8に配される。
【0022】
また本実施形態では、魚卵eの一例として直径1mm程度の略球形状をなすゼブラフィッシュの卵を利用している。なお魚は脊椎動物であるために遺伝子導入により創薬に利用し得る態様のタンパク質を得やすく、特にゼブラフィッシュは飼育水槽Bから効率良く受精卵である魚卵eを得やすい種として知られている。
【0023】
以下、遺伝子注入装置1の各部の構成について説明していく。
【0024】
採卵搬送部2は、図2及び図3に示すように、例えば複数並列され且つ上下方向に多段に配置された飼育水槽Bから効率良く魚卵eを採取すべくスロープ状に構成された水樋状の通路である。この採卵搬送部2は、飼育水槽Bからは魚卵eのみならず、魚を飼育していた飼育水wも同時に搬送され、一度タンクTへ収容された後ポンプPにより上昇させられ、不要物分離部3へと案内され、具体的には魚卵e並びに飼育水wが上方から落下され落下エネルギーが付与された状態で不要物分離部3へ案内される。タンクTは、集配した魚卵e並びに飼育水wの一時的なクッション槽としての働きをなすとともに、図示例では内部で例えば螺旋状の水流が発生することにより、滞りなくポンプPにより給水することができる。また具体的な態様として、タンクT内の下限水位検出により、ポンプPのから送りでの破損・減耗を防止するとともに、上限水位検出により、オーバーフロー検出を行う。オーバーフローが実際に起こった場合には、図示しない飼育水槽Bへの配管を介して飼育水wを移動させる。なお、飼育水槽Bを十分高い位置にレイアウトでき、当該飼育水槽Bから魚卵eの不要物分離部3への自由落下が可能な場合は、タンクT並びにポンプPを省略してもよい。
【0025】
不要物分離部3は、図4に具体的に示すように、魚卵eを通過させ魚卵eよりも大きな不要物bgを採取し排除するための第一の網装置31と、振動搬送部4に支持されつつ魚卵eが通過し得ない網目を有する第二の網装置32と、この第二の網装置32にある魚卵eに対し浄水cwを噴射する浄水噴射手段33とを有している。本実施形態では第二の網装置32を通過若しくは第二の網装置32への衝突で破砕した飼育水wは、例えば魚卵eよりも小さく第二の網装置32を通過した小さな不要物sgに対し更に分離され、飼育水槽Bへ再び導入される構成を適用している。また本実施形態では浄水噴射手段33は、振動搬送部4により魚卵eが搬送される方向に沿って浄水cwを魚卵eに噴射することにより、魚卵eの搬送をより速やかに行うためのものである。すなわち本実施形態では、第二の網装置32を通過し、細菌、微生物等が混入している可能性がある飼育水wを加工用水槽8に配された加工装置には導入させない構成が適用されている。ここで、本実施形態における浄水cwとは、蒸留水や水道水のみならず上記飼育水wよりも汚れが少ない水のことである。
【0026】
振動搬送部4は、第二の網装置32に所定の振動を与えることにより、魚卵eを加工用水槽8へと案内するためのものである。振動搬送部4によって振動が加えられた魚卵eは、加工用水槽8へ向けて速やか且つ効率良く搬送され投入される。
【0027】
ここで図5及び図6に示すように、本実施形態では遺伝子注入部5、整列搬送部6及び選別回収部7は加工用水槽8に設けられている。具体的には、遺伝子注入部5は加工用水槽8の上方に、整列搬送部6及び選別回収部7は加工用水槽8の内部に配されている。また図2及び図5に示すように、加工用水槽8の上端近傍まで水が満たされた状態となっている。
【0028】
加工用水槽8は、採取された魚卵eを加工するためのものであり、魚卵eに所定の物質を注入する加工装置である遺伝子注入部5及び整列搬送部6を設けてなるものである。具体的に説明すると、加工用水槽8は、加工前の魚卵eを収容すべく内部の厚み寸法を魚卵eが複数個並列し得ない寸法に設定された加工前領域81と、所定の加工処理が施された魚卵eを収容するための加工後領域82とを有する。詳細には加工用水槽8は、内部の厚み寸法を魚卵eが複数個並列し得ない寸法に設定された加工前領域81加工後領域82が連続した平面視概略T字状の形状をなす。また本実施形態では、少なくとも加工前領域81内を視認可能とすべく、少なくとも加工前領域81を透明な材料により構成している。
【0029】
整列搬送部6は、加工前領域81に導入された魚卵eを遺伝子注入部5により処理が行い易い状態とすべく整列されるためのものである。整列搬送部6は、円盤形状をなし周囲に所定ピッチにて形成された複数の収容凹部たる凹部63を等間隔に設けた円盤体たる整列盤61と、この整列盤61に向かって浄水cwを噴射するための整列用ポンプ62とを有している。この整列用ポンプ62による浄水cwにより、加工前領域81に導入された魚卵eがスムーズに整列盤61へ案内され、凹部63内に位置決めされる。この整列盤61が、魚卵eを載置し得る載置部に相当する。そして本実施形態では図6に示すように、整列盤61はモータドライバDを介してACサーボモータMが駆動されることにより精密に回転制御が行われている。上記モータドライバDは、制御装置Eにより制御されている。
【0030】
遺伝子注入部5は、整列搬送部6によって搬送される魚卵eに所定の遺伝子を注入するためのものであり、魚卵eに直接遺伝子を注入する概略針状をなすキャピラリ51と、このキャピラリ51に所定量の遺伝子を供給するためのシリンジポンプ52と、これらキャピラリ51並びにシリンジポンプ52の上下方向の位置決めを行うポジショナ53とを有している。そして上記キャピラリ51が、魚卵eに所定の物質を所定のタイミングで導入し得る管状をなす導入管に相当する。
【0031】
そして本実施形態では、整列搬送部6から加工後領域82へ亘って遺伝子が注入された魚卵eを効率良く回収するための選別回収部7を有している。
【0032】
選別回収部7は、加工後の魚卵eを回収する回収装置或いは回収槽に相当する。この選別回収部7は、加工後領域82に収容された回収槽たる回収容器71と、加工前領域81における加工後領域82近傍に設けられ整列盤61へ向けて浄水cwを噴射する回収用ポンプ72と、加工装置を構成する遺伝子注入部5に正確に遺伝子を導入され得なかった魚卵eを加工用水槽8外へ排出するための排出部73と、加工用水槽8内において整列盤61の下半分を覆うように設けられ魚卵eを加工前領域81から加工後領域82へと案内するためのガイド75とを有している。そして本実施形態に係る回収容器71は、加工前領域81に臨む部分にスリット74を設けることにより、加工前領域81から移動した魚卵eを効率良く回収容器71内へ導入することができる。また本実施形態では、ガイド75の一部を回収容器71に入り込ませる形状とすることで、魚卵eを効率良く回収容器71へ案内せしめている。
【0033】
ここで本実施形態では図5図6及び図7に示すように、加工用水槽8へ導入された魚卵eがより高い効率にて加工が行われるような構成を適用している。すなわち加工用水槽8における加工前領域81に導入された魚卵eは整列用ポンプ62から噴射される浄水cwによりスムーズに凹部63へ案内される。そして凹部63へ収容された魚卵eは整列盤61の回転によりキャピラリ51の直下まで順序が異なること無く移動する。ここで加工前領域81の厚みは魚卵eが二つ以上並び得ない幅に設定され、且つ加工前領域81は透明な部材により構成されている。すなわちキャピラリ51直下まで案内された魚卵eは必ず一つずつ明確に視認された状態となる。そしてキャピラリ51は個々の魚卵eに対し、図6に図示されたカメラCにて内部の胚の位置が明確に視認され得る状態で配されるため、カメラC並びに遺伝子注入装置5が精密に制御されながら、当該胚へ正確に遺伝子を注入することができる。このとき、整列盤61が概略円形状に構成され、凹部63が等間隔に配置されているため、制御装置Eによりキャピラリ51直下に正確に凹部63が位置付けられるようになっている。ここで、もし遺伝子が正確に注入し得なかったことがカメラCにて視認できた場合、整列盤61を所定角度回転させた箇所に設けられた排出部73を通過させ別途回収することができる。これにより、組換えが起こった可能性がある卵が外部へ不要に漏れ出すことが回避されている。併せて、加工後領域82には高い割合で正確に遺伝子が注入された魚卵eが案内される。また更に、キャピラリ51により遺伝子が注入された魚卵eは回収用ポンプ72から噴射される浄水cwにより確実に凹部63から離間させられる。そしてこれら魚卵eはスムーズに加工後領域82へ案内され、スリット74を通過して回収容器71に収容されることとなる。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る魚卵処理装置たる遺伝子注入装置1は、採取された魚卵eを加工する加工用水槽8と加工用水槽8内に位置付けられた前記魚卵eに所定の物質を注入する加工装置とを具備する遺伝子注入装置1であって、前記加工用水槽8が、加工前の魚卵eを収容すべく幅寸法を前記魚卵eが複数個並列し得ず一列に並ぶ寸法に設定された加工前領域81と、所定の加工処理が施された魚卵eを収容するための加工後領域82とを有していることを特徴とする。
【0035】
斯かる構成により、所定の種の魚から採取し得た受精卵に、より高い効率にて所定の処理を行うことができる遺伝子注入装置1が実現されている。
【0036】
より確実に魚卵eに対し所定の処理を行い得る構成として本実施形態では、加工装置が、魚卵eを載置し得る載置部たる整列搬送部6と、この整列搬送部6に載置された魚卵eに所定の物質を所定のタイミングで導入し得る管状をなす導入管たるキャピラリ51とを有している構成を適用している。
【0037】
また、より高い効率にて魚卵eを処理し得るようにするために本実施形態では、整列搬送部6を、円盤状をなす円盤体たる整列盤61と、この整列盤61の周縁に所定ピッチで形成された魚卵eを収容し得る凹部63とを有する構成としている。
【0038】
そして、魚卵eへの処理を作業者によってより確実に行い得るようにするために本実施形態では、加工用水槽8を、側方から視認可能な加工前領域81を構成すべく、具体的には、加工前領域81を構成する部材を透明に構成している。これにより、魚卵eへのキャピラリ51の差込深さや、凹部63に対する魚卵eへの収容具合、多くの場合予め着色されている注入用の遺伝子の注入位置やその分布も、側面からわかりやすくカメラCによる撮像ができる。更に例えば、画像処理手段等を別途用いることにより、これら一連の処理を完全自動化とし易いようになっている。魚卵eへのキャピラリ51の相対位置を適切に調整できるため、キャピラリ51の誤操作による損傷を有効に回避し得るのみならず、正確なキャピラリ51の操作に起因する注入した遺伝子由来の目的物質の生産効率を有効に向上させ得るシステムの構築に寄与している。
【0039】
加えて、処理後の魚卵eを効率良く回収し得るようにするために本実施形態では、所定の加工処理が施された魚卵eを回収するための回収槽たる回収容器71を設けている。
【0040】
更に、回収する処理後の魚卵eの品質をより向上させるようにするために本実施形態では、加工装置により所定の加工がされ得なかった魚卵eを排出するための排出部73を設けている。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限られるものではない。上記実施形態では魚卵に対し遺伝子を導入するための態様を開示したが勿論、魚卵に対して、遺伝子に限らず、ヒトがん細胞などの細胞や、薬、薬候補物質、毒性物質などの化学物質や、調味料、着色料などの食品添加物といった、別異の物質を注入する態様であることを妨げない。また上記実施形態では魚卵としてゼブラフィッシュの卵を適用したが勿論、別の魚類の卵を用いてもよい。また個々の構成要素の具体的な配置は加工用水槽内の具体的な水の流れといった詳細な態様やその他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・遺伝子注入装置
2・・・採卵搬送部
3・・・不要物分離部
4・・・振動搬送部
5・・・遺伝子注入部
6・・・整列搬送部
7・・・選別回収部
8・・・加工用水槽
B・・・飼育水槽
e・・・魚卵
cw・・・浄水
w・・・飼育水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7