(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する土木工事用削孔ケーシングでは、ノズルに取り付けられた逆止弁の弁体であるボールと座面との間に土砂や骨材等が詰まると除去が困難なため、ネジ口金Sを取り外す必要がある。ネジ口金Sの取外しには、掘削作業全体を長時間停止させなければならないので、作業効率が低下する。
また、コンクリートを噴出する噴出孔O
4はストレート形状であるため、直進方向、即ち深度方向に集中的にコンクリートが供給されて径方向、即ち外周方向には供給されにくい。このため、コンクリートを供給後に、長時間にわたって撹拌作業を行わなければならない。
さらに、弁体がボールなので、骨材等によってノズル内の径方向に押し付けられてバネから外れてしまう。係る状態でボールとノズル内周面との間に詰まるとシール性能が低下する。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、シール性に優れた杭構築装置用の逆止弁付きノズル、それを用いた逆止弁付き杭構築装置、及び、杭構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(
1)本発明の少なくとも一実施形態に係る逆止弁付き杭構築装置は、
杭孔内に流体を供給するための流路を有する杭構築装置と、
前記杭構築装置に対し前記流路を開閉可能に取り付けられた逆止弁付きノズルと、を備える逆止弁付き杭構築装置において、
前記逆止弁付きノズルは、
前記流体の供給方向にて下流側に向けられた環状の弁座と、
前記弁座に対し接離可能なシール縁を有する弁体と、
前記弁体に接続された一端部を有し、前記弁体から前記流体の供給方向にて上流側に向けて延在する弁棒と、
前記流体の供給方向にて前記弁座よりも上流側に設けられ、前記弁棒を前記弁棒の軸線方向に摺動自在に支持する支持部と、
前記弁棒の他端側に取り付けられたばね座部と、
前記支持部と前記ばね座部との間に配置され、前記弁体を前記弁座に向けて付勢するコイルばねと、を備え、
閉弁時に前記弁体は前記弁座に対して線接触
し、
前記杭構築装置はビット付きケーシングであり、
前記ビット付きケーシングは、
円筒形状のケーシングと、
前記ケーシングの一端に取り付けられたビットと、
前記ケーシングの外周面上に配置され、前記流路を構成するパイプと、
を備える。
【0010】
上記構成(
1)によれば、弁体は弁座に線接触するので、土砂や骨材等を挟み込む可能性が少ない。また、土砂や骨材等を挟み込んだ場合にも、コイルばねの力が弁体の外周部分、即ち線接触部分に集中するため、土砂や骨材等を砕いて除去することができる。このため、良好なシール性を維持することができる。
また、万が一、土砂や骨材等を挟み込んでも、弁座が下流側に向けられており、弁座と弁体が露出しているため、土砂や骨材等を短時間で容易に除去することができる。
さらに、弁棒が支持部によって摺動自在に支持されていることにより弁棒は直進性に優れており、ノズルの径方向に傾く事を抑制できる。このため、弁座からの弁体のリフト量が弁体の周方向にて均一になり、開弁時に弁体と弁座の隙間からコンクリート等を外周方向に均等に供給することができる。したがって、杭孔内に供給されたコンクリート等を撹拌する場合、撹拌の作業時間を従来よりも大幅に短縮することができる。
【0011】
そして上記構成(
1)によれば、掘削した土砂がビット付きケーシングの流路内へ浸入するのを防止することができるとともに、掘削液、安定液又はセメントミルク等の流体を、逆流を防止しながら流路を通じて杭孔内に供給することができる。
【0012】
(
2)幾つかの実施形態では、上記構成(
1)において、
前記杭構築装置は掘削ドリルであり、
前記掘削ドリルは前記流路が形成された胴部と、
前記胴部と一体に設けられた翼部と、
前記翼部と一体に設けられたビットと、
を備える。
上記構成(
2)によれば、掘削した土砂が掘削ドリルの流路内へ浸入するのを防止することができるとともに、掘削液、安定液又はセメントミルク等の流体を、逆流を防止しながら流路を通じて杭孔内に供給することができる。
【0013】
(
3)幾つかの実施形態では、上記構成(
1)において、
前記杭構築装置は、前記流路を構成するトレミー管である。
上記構成(
3)によれば、杭孔に貯まった水がトレミー管の流路内へ浸入するのを防止することができるとともに、逆流を防止しながら流路を通じてコンクリートを杭孔内に供給することができる。
【0014】
(
4)本発明の少なくとも一実施形態に係る杭構築方法は、
杭孔内に流体を供給するための流路を有する杭構築装置と、
前記杭構築装置に対し前記流路を開閉可能に取り付けられた逆止弁付きノズルと、を備える逆止弁付き杭構築装置を用いた杭構築方法において、
前記流路及び前記逆止弁付きノズルを通じて、前記杭孔内に流体を供給する流体供給工程を備え、
前記逆止弁付きノズルは、
前記流体の供給方向にて下流側に向けられた環状の弁座と、
前記弁座に対し接離可能なシール縁を有する弁体と、
前記弁体に接続された一端部を有し、前記弁体から前記流体の供給方向にて上流側に向けて延在する弁棒と、
前記流体の供給方向にて前記弁座よりも上流側に設けられ、前記弁棒を前記弁棒の軸線方向に摺動自在に支持する支持部と、
前記弁棒の他端側に取り付けられたばね座部と、
前記支持部と前記ばね座部との間に配置され、前記弁体を前記弁座に向けて付勢するコイルばねと、を備え、
前記逆止弁付きノズルの閉弁時に前記弁体は前記弁座に対して線接触
し、
前記杭構築装置はビット付きケーシングであり、
前記流体供給工程において、前記流体として掘削液、安定液又はセメントミルクを供給する。
【0015】
上記構成(
4)によれば、弁体は弁座に線接触するので、土砂や骨材等を挟み込む可能性が少ない。また、土砂や骨材等を挟み込んだ場合にも、コイルばねの力が弁体の外周部分、即ち線接触部分に集中するため、土砂や骨材等を砕いて除去することができる。このため、良好なシール性を維持することができる。
また、万が一、土砂や骨材等を挟み込んでも、弁座が下流側に向けられており、弁座と弁体が露出しているため、土砂や骨材等を短時間で容易に除去することができる。
さらに、弁棒が支持部によって摺動自在に支持されていることにより弁棒は直進性に優れており、ノズルの径方向に傾く事を抑制できる。このため、弁座からの弁体のリフト量が弁体の周方向にて均一になり、開弁時に弁体と弁座の隙間からコンクリート等を外周方向に均等に供給することができる。したがって、杭孔内に供給されたコンクリートを撹拌する場合、撹拌の作業時間を従来よりも大幅に短縮することができる。
【0016】
そして上記構成(
4)によれば、掘削した土砂がビット付きケーシングの流路内へ浸入するのを防止することができるとともに、掘削液、安定液又はセメントミルク等の流体を、逆流を防止しながら流路を通じて杭孔内に供給することができる。
【0017】
(
5)幾つかの実施形態では、上記構成(
4)において、
前記杭構築装置は掘削ドリルであり、
前記流体供給工程において、前記流体として掘削液、安定液又はセメントミルクを供給する。
上記構成(
5)によれば、掘削した土砂が掘削ドリルの流路内へ浸入するのを防止することができるとともに、掘削液、安定液又はセメントミルク等の流体を、逆流を防止しながら流路を通じて杭孔内に供給することができる。
【0018】
(
6)幾つかの実施形態では、上記構成(
4)において、
前記杭構築装置はトレミー管であり、
前記流体供給工程において、前記流体としてコンクリートを供給する、
上記構成(
6)によれば、杭孔に貯まった水がトレミー管の流路内へ浸入するのを防止することができるとともに、逆流を防止しながら流路を通じてコンクリートを杭孔内に供給することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、シール性に優れた杭構築装置用の逆止弁付きノズル、それを用いた逆止弁付き杭構築装置、及び、杭構築方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る逆止弁付き杭構築装置としての、逆止弁付きノズル10が適用されたビット付きケーシング1を概略的に示す側面図である。
ビット付きケーシング1は、円筒形状の本体部3と、本体部3の下端に取り付けられた複数のビット5と、本体部3の外周面に固定されたパイプ7と、パイプ7の下端に取り付けられた逆止弁付きノズル10とを備えている。
パイプ7は、本体部3の軸線方向に延び、流体の流路を構成している。逆止弁付きノズル10は、パイプ7を通じて供給された流体を杭孔内に吐出可能である。流体としては、例えば、掘削液としての水をあげることができるが、ベンドナイトを含む安定液であってもよい。また、流体はセメントミルク等であってもよい。
【0023】
図2は、逆止弁付きノズル10の概略的な側面図である。
図3は、逆止弁付きノズル10の閉弁時の概略的な縦断面図である。
図4は、逆止弁付きノズル10の開弁時の概略的な縦断面図である。
図5は、逆止弁付きノズル10の概略的な上面図である。
図6は、逆止弁付きノズル10の概略的な下面図である。
【0024】
図2〜
図6に示したように、逆止弁付きノズル10は、弁ケーシング12と、弁座14と、弁体16と、弁棒18と、支持部20と、ばね座部22と、コイルばね24とを備えている。
弁ケーシング12は中空の筒形状を有し、弁ケーシング12の先端部12aは六角柱形状の外形を有している。弁ケーシング12の基端部12bは、円筒形状の外形を有しており、外周面にねじ山が形成されている。基端部12bのねじ山は、パイプ7の下端に設けられたねじ山と螺合可能であり、ねじ山を介して、逆止弁付きノズル10はパイプ7に取り付け可能である。なお、弁ケーシング12の先端部12aが六角柱形状の外形を有しているので、スパナ等の工具を用いて、逆止弁付きノズル10の取り付け又は取り外しを容易に行うことができる。
【0025】
弁ケーシング12の先端部12aには、弁ケーシング12の軸線方向に延在する弁孔26が形成されている。そして、弁孔26の出口側を囲むように、先端部12aに弁座14が形成されている。弁座14は、環状をなし、流体の供給方向にて下流側、つまり弁ケーシング12の外側に向けられている。
【0026】
弁体16は、弁ケーシング12の軸線方向にて弁座14に対し接離可能なシール縁28を有している。例えば、弁体16は中央部が肉厚に形成された円盤形状を有し、シール縁28を構成する円形の外周縁を有している。
弁棒18は、弁ケーシング12の軸線方向に延在しており、弁棒18の一端は弁体16の径方向中心に接続されている。弁棒18は、弁体16から流体の供給方向にて上流側に向かって延在している。例えば、弁棒18の一端部は弁体16に螺合された後に溶接により固定されている。
【0027】
支持部20は、流体の供給方向にて弁座14よりも上流側に設けられ、弁棒18を弁棒18の軸線方向に摺動自在に支持している。本実施形態では、支持部18は、支持フレーム20aと支持スリーブ20bによって構成されている。
支持フレーム20aは、弁ケーシング12に対して固定されている。支持フレーム20aは、弁ケーシング12の軸線方向と直交する方向に延在する横断部30を有している。弁ケーシング12の軸線方向でみたときの横断部30の面積は、可及的に小さくなるように設定され、流体の流れをなるべく妨げないようになっている。例えば、支持フレーム20aはコの字形状の断面形状を有し、弁孔26を跨ぐように、弁ケーシング12内にて弁孔26の周りに存する先端部12aの上流面に一体になるように設けられている。例えば、支持フレーム20aと弁ケーシング12の先端部12aは金属材料を切削して一体に形成されている。このように支持フレーム20aと弁ケーシング12の先端部12aは一体に形成されているため、支持フレーム20aに作用する力を弁ケーシング12の先端部12aに全て伝達することができるので支持フレーム20aの強度が向上する。なお、支持フレーム20aと先端部12aを別体としてそれぞれ形成し、これらを溶接等にて接続してもよい。
【0028】
また、横断部30には、弁棒18によって貫通される貫通孔32が形成され、貫通孔32に支持スリーブ20bが挿入されている。支持スリーブ20bは、一端に鍔を有する鍔付きの円筒形状を有し、横断部30の上流側に支持スリーブ20bの鍔が位置し、支持スリーブ20bの筒部が貫通孔32を貫通して下流側に向かって延びている。支持スリーブ20bは、支持フレーム20aによって弁ケーシング12と同軸に保持され、支持スリーブ20bに弁棒18が摺動自在に挿通されている。かくして、支持フレーム20a及び支持スリーブ20bによって、弁棒18は、弁ケーシング12と同軸に配置され、弁棒18の軸線方向、あるいは弁ケーシング12の軸線方向に摺動自在に支持されている。
【0029】
ばね座部22は、弁棒18の他端側に取り付けられ、弁ケーシング12の軸線方向にて弁座14に対し横断部30よりも遠くに位置している。例えば、ばね座部22は円環形状を有し、弁棒18によって貫通されている。弁棒18の他端側にはねじ山が設けられ、ナット34が螺合されている。ナット34はばね座部22の抜け止めを構成している。
コイルばね24は、圧縮コイルばねであり、支持スリーブ20bの鍔とばね座部22との間に配置されている。コイルばね24は、支持部20によって支持されながら、ばね座部22、ナット34及び弁棒18を介して、弁体16を弁座14に向けて付勢している。
【0030】
従って、パイプ7を通じて供給される流体の圧力が低いとき、弁体16のシール縁28は弁座14に接触しており、逆止弁付きノズル10によって流路は閉じられる。一方、供給される流体の圧力が高くなると、弁体16のシール縁28が弁座14から離れ、弁孔26を通じて流体が吐出される。
【0031】
ここで、弁体16のシール縁28及び弁座14は、閉弁時に相互に線接触可能な形状を有する。
上記構成によれば、弁体16は弁座14に線接触するので、土砂や骨材等を挟み込む可能性が少ない。また、土砂や骨材等を挟み込んだ場合にも、コイルばね24の力が弁体16の外周部分、即ち線接触するシール縁28に集中するため、土砂や骨材等を砕いて除去することができる。このため、良好なシール性を維持することができる。
また、万が一、土砂や骨材等を挟み込んでも、弁座14が下流側に向けられており、弁座14と弁体16が露出しているため、土砂や骨材等を短時間で容易に除去することができる。
さらに、弁棒18が支持部20によって摺動自在に支持されていることにより弁棒18は直進性に優れており、逆止弁付きノズル10の径方向(弁ケーシング12の径方向)に傾く事を抑制できる。このため、弁座14からの弁体16のリフト量が弁体16の周方向にて均一になり、開弁時に弁体16と弁座14の隙間からコンクリート等を弁座14の外周方向に均等に供給することができる。したがって、杭孔内に供給されたコンクリート等を撹拌する場合、撹拌の作業時間を従来よりも大幅に短縮することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、
図3及び
図4に示したように、弁座14は下流に向けて拡開するテーパ面によって構成されている。すなわち、弁座14は雌テーパ面によって構成されている。弁体16のシール縁28の直径は、弁座14の雌テーパ面の最小径よりも大きく、弁座14の雌テーパ面の最大径よりも小さい。
【0033】
上記構成の逆止弁付きノズル10によれば、弁座14がテーパ面によって構成されているので、開弁時に弁体16と弁座14の隙間からコンクリート等を弁座14の外周方向により多く供給することができる。
また上記構成の逆止弁付きノズル10が適用されたビット付きケーシング1によれば、掘削した土砂がパイプ7によって構成される流路内へ浸入することを逆止弁付きノズル10によって防止することができるとともに、掘削液、安定液又はセメントミルク等の流体を、逆流を防止しながら流路を通じて杭孔内に供給することができる。
【0034】
図7は、本発明の他の一実施形態に係る逆止弁付き杭構築装置として、逆止弁付きノズル50が適用された掘削ドリル40を概略的に示す側面図である。なお、以下の実施形態の説明では、先に説明した構成と同一又は類似の構成については、同一の名称及び/又は符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0035】
掘削ドリル40は、円筒形状の胴部42と、胴部42と一体に設けられた翼部44と、翼部44と一体に設けられたビット46とを備えている。胴部42の内部には、胴部42を軸線方向に貫通する貫通孔48が設けられている。貫通孔48は流体を供給するための流路を構成しており、流路を通じて杭孔内に流体を供給可能である。流体としては、掘削液としての水、ベンドナイトを含む安定液、又は、セメントミルク等をあげることができる。
そして、胴部42の下端部に、流路を開閉可能な逆止弁付きノズル50が取り付けられている。
【0036】
図8は、掘削ドリル40に適用された逆止弁付きノズル50の閉弁時の概略的な縦断面図である。
図9は、
図8の逆止弁付きノズル50の開弁時の概略的な縦断面図である。
図10は、
図8の逆止弁付きノズル50の概略的な上面図である。
図11は、
図8の逆止弁付きノズル50の概略的な下面図である。
【0037】
図8〜
図11に示したように、逆止弁付きノズル50は、仕切板52と、弁座54と、弁体56と、弁棒18と、支持部20と、ばね座部22と、コイルばね24とを備えている。
【0038】
仕切板52は、環板形状を有し、流路の出口を絞るように、例えばボルトによって胴部42に取り付けられている。仕切板52は、胴部42とともに弁ハウジングを構成している。仕切板52の中央孔は弁孔58として機能する。
仕切板52の外面には、弁孔58を囲むように円筒形状の囲繞壁64が同軸且つ一体に設けられ、囲繞壁64の下流側の内周面は雌テーパ面形状の弁座54を構成している。
弁体56は、弁孔58よりも大径の円盤形状を有し、弁体56の内面の外周部はシール縁60を構成している。弁体56のシール縁60及び弁座54は、相互に線接触可能な形状を有している。
【0039】
上記構成によれば、弁体56は弁座54に線接触するので、土砂や骨材等を挟み込む可能性が少ない。また、土砂や骨材等を挟み込んだ場合にも、コイルばね24の力が弁体56の外周部分、即ち線接触するシール縁60に集中するため、土砂や骨材等を砕いて除去することができる。このため、良好なシール性を維持することができる。
また、万が一、土砂や骨材等を挟み込んでも、弁座54が下流側に向けられており、弁座54と弁体56が露出しているため、土砂や骨材等を短時間で容易に除去することができる。
さらに、弁棒18が支持部20によって摺動自在に支持されていることにより弁棒18は直進性に優れており、逆止弁付きノズル50の径方向(弁ハウジングの径方向)に傾く事を抑制できる。このため、弁座54からの弁体56のリフト量が弁体56の周方向にて均一になり、開弁時に弁体56と弁座54の隙間からコンクリート等を弁座54の外周方向に均等に供給することができる。したがって、杭孔内に供給されたコンクリート等を撹拌する場合、撹拌の作業時間を従来よりも大幅に短縮することができる。
また、上記構成の逆止弁付きノズル50が適用された掘削ドリル40によれば、掘削した土砂が掘削ドリル40の流路内へ浸入することを防止することができるとともに、逆流を防止しながら流路を通じて掘削液、安定液又はセメントミルク等の流体を杭孔内に供給することができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、胴部42の下端面には、貫通孔48及び仕切板52よりも大径の円柱形状の凹所62が形成されている。凹所62は貫通孔48と同軸に形成され、凹所62の底面の中央に貫通孔48が開口している。そして、凹所62の深さは、開弁状態でも弁体56が凹所62内に収まるように設定されている。
上記構成によれば、弁体56が胴部42の下端面よりも下方に突出することがないので、弁体56が損傷することを防止することができる。
【0041】
図12は、本発明の他の一実施形態に係る逆止弁付き杭構築装置として、逆止弁付きノズル50が適用されたトレミー管70を概略的に示す側面図である。
図13は、トレミー管70に適用された逆止弁付きノズル50の閉弁時の概略的な縦断面図である。
【0042】
図12及び
図13に示したように、トレミー管70は、それ自体がコンクリート等の流体の流路を構成している。トレミー管70は、例えば一端にフランジ部72を有し、フランジ部72に逆止弁付きノズル50がボルトによって固定される。
上記構成の逆止弁付きノズル50が適用されたトレミー管70によれば、杭孔に貯まった水がトレミー管70の流路内へ浸入するのを防止することができるとともに、逆流を防止しながら流路を通じてコンクリートを杭孔内に供給することができる。
【0043】
図14は、本発明の他の一実施形態に係る逆止弁付きノズル80の閉弁時の概略的な縦断面図である。
逆止弁付きノズル80は、支持部82が平坦な板形状の横断部84によって構成され、横断部84の両端が弁ケーシング12に固定されている点において、逆止弁付きノズル10と異なっている。
逆止弁付きノズル80においても、逆止弁付きノズル50と同様、良好なシール性が確保される。
【0044】
図15は、本発明の他の一実施形態に係る逆止弁付きノズル90の閉弁時の概略的な縦断面図である。
逆止弁付きノズル90は、円筒形状のカバー92によって、弁棒18の他端側及びコイルばね24が覆われている点において、逆止弁付きノズル50と異なっている。カバー92は、例えば支持部20に固定されている。
逆止弁付きノズル90においても、逆止弁付きノズル50と同様、良好なシール性が確保される。
また、逆止弁付きノズル90においては、カバー92によってコイルばね24が覆われているので、コイルばね24の隙間に骨材等が詰まることが防止される。この結果、逆止弁付きノズル90は、流体の性状にかかわらずに安定して動作可能である。
【0045】
以下、本発明の一実施形態として、上述した逆止弁付き杭構築装置を用いた杭構築方法について説明する。
杭構築方法は、杭構築装置の流路及び逆止弁付きノズル10,50,80,90を通じて杭孔内に流体を供給する流体供給工程を備えている。
上記構成によれば、弁体16,56は弁座14,54に線接触するので、土砂や骨材等を挟み込む可能性が少ない。また、土砂や骨材等を挟み込んだ場合にも、コイルばね24の力が弁体16,56の外周部分、即ち線接触するシール縁28,60に集中するため、土砂や骨材等を砕いて除去することができる。このため、良好なシール性を維持することができる。
また、万が一、土砂や骨材等を挟み込んでも、弁座14,54が下流側に向けられており、弁座14,54と弁体16,56が露出しているため、土砂や骨材等を短時間で容易に除去することができる。
さらに、弁棒18が支持部20によって摺動自在に支持されていることにより弁棒18は直進性に優れており、逆止弁付きノズル10,50,80,90の径方向(弁ケーシング12や弁ハウジングの径方向)に傾く事を抑制できる。このため、弁座14,54からの弁体16,56のリフト量が弁体16,56の周方向にて均一になり、開弁時に弁体16,56と弁座14,54の隙間からコンクリート等を弁座14,54の外周方向に均等に供給することができる。したがって、杭孔内に供給されたコンクリート等を撹拌する場合、撹拌の作業時間を従来よりも大幅に短縮することができる。
なお、杭構築方法は、場所打ち杭の構築のみならず、既製杭を用いた基礎杭の構築にも適用可能である。
【0046】
幾つかの実施形態では、杭構築装置はビット付きケーシング1であり、流体供給工程において供給される流体は掘削液、安定液又はセメントミルクである。
上記構成によれば、掘削した土砂がビット付きケーシング1の流路内へ浸入するのを防止することができるとともに、掘削液、安定液又はセメントミルク等の流体を、逆流を防止しながら流路を通じて杭孔内に供給することができる。
なお、掘削液又は安定液は、ビット付きケーシング1によって杭孔を掘削している間に供給され、セメントミルクは、杭孔内に沈設される既製杭の周囲に根固め部又は杭周部を形成する際に供給される。
【0047】
幾つかの実施形態では、杭構築装置は掘削ドリル40であり、流体供給工程において供給される流体は、掘削液、安定液又はセメントミルクである。
上記構成によれば、掘削した土砂が掘削ドリル40の流路内へ浸入するのを防止することができるとともに、掘削液、安定液又はセメントミルク等の流体を、逆流を防止しながら流路を通じて杭孔内に供給することができる。
なお、掘削液又は安定液は、掘削ドリル40によって杭孔を掘削している間に供給され、セメントミルクは、杭孔内に沈設される既製杭の周囲に根固め部又は杭周部を形成する際に供給される。
【0048】
幾つかの実施形態では、杭構築装置はトレミー管70であり、流体供給工程において供給される流体はコンクリートである。
上記構成によれば、杭孔に貯まった水がトレミー管70の流路内へ浸入するのを防止することができるとともに、逆流を防止しながら流路を通じてコンクリートを杭孔内に供給することができる。
【0049】
最後に、本発明は上述した幾つかの実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、逆止弁付きノズル10,50,80,90のコイルばね24は圧縮コイルばねであったが、配置を変更することにより、引っ張りコイルばねを用いることも可能である。