特許第6985600号(P6985600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985600波形成形回路、半導体装置及びスイッチング電源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985600
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】波形成形回路、半導体装置及びスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20211213BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20211213BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H02M1/08 A
   H02M7/12 R
   H02M3/28 H
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-10147(P2018-10147)
(22)【出願日】2018年1月25日
(65)【公開番号】特開2019-129610(P2019-129610A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】特許業務法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 達哉
【審査官】 白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2018/0013413(US,A1)
【文献】 特許第6160762(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0124507(US,A1)
【文献】 特開2014−171276(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/157086(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/068755(WO,A1)
【文献】 特開2017−092890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00〜 1/44
H02M 3/00〜 3/44
H02M 7/00〜 7/40
H03K17/00〜17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に接続された第1の容量素子と第1の抵抗素子を有し、前記第1の容量素子の第1の端子及び前記第1の抵抗素子の第2の端子に正のパルス電圧が印加され、前記第1の容量素子の第3の端子及び前記第1の抵抗素子の第4の端子に電界効果トランジスタのゲート端子が電気的に接続される第1の並列回路と、
前記第3の端子及び前記第4の端子に第1のアノードが接続された第1のツェナーダイオードと、
並列に接続された第2の容量素子と第2の抵抗素子を有し、前記第2の容量素子の第5の端子及び前記第2の抵抗素子の第6の端子に前記第1のツェナーダイオードの第1のカソードが接続され、前記第2の容量素子の第7の端子及び前記第2の抵抗素子の第8の端子が基準電位となる第2の並列回路と、
を有する波形成形回路。
【請求項2】
前記第5の端子、前記第6の端子及び前記第1のカソードに一端が接続され、他端が前記基準電位となり、印加電圧の変化に対して、流れる電流が非線形に変化する非線形素子、をさらに有する請求項1に記載の波形成形回路。
【請求項3】
前記非線形素子は、前記印加電圧の増加とともに容量値の増加の傾きが増すキャパシタである、請求項2に記載の波形成形回路。
【請求項4】
前記非線形素子は、前記第5の端子、前記第6の端子及び前記第1のカソードに第2のカソードが接続され、第2のアノードが前記基準電位となる第2のツェナーダイオードである、請求項2に記載の波形成形回路。
【請求項5】
並列に接続された第1の容量素子と第1の抵抗素子を有し、前記第1の容量素子の第1の端子及び前記第1の抵抗素子の第2の端子に正のパルス電圧が印加され、前記第1の容量素子の第3の端子及び前記第1の抵抗素子の第4の端子に電界効果トランジスタのゲート端子が電気的に接続される第1の並列回路と、
第1のツェナーダイオードと、
並列に接続された第2の容量素子と第2の抵抗素子を有し、前記第2の容量素子の第5の端子及び前記第2の抵抗素子の第6の端子に前記第1のツェナーダイオードの第1のカソードが接続され、前記第2の容量素子の第7の端子及び前記第2の抵抗素子の第8の端子が基準電位となる第2の並列回路と、
前記第3の端子及び前記第4の端子と前記ゲート端子とを接続する第1の接続ラインと前記第1のツェナーダイオードのアノードとの間に、前記第1のツェナーダイオードの順方向と同一方向に接続される、1または複数の第2のツェナーダイオードと、
1または複数の前記第2のツェナーダイオードのそれぞれに並列に接続された第1のスイッチと、
アノードが基準電位に接続される第3のツェナーダイオードと、
前記第5の端子及び前記第6の端子と前記第1のツェナーダイオードのカソードとを接続する第2の接続ラインと前記第3のツェナーダイオードのカソードとの間に、前記第3のツェナーダイオードの順方向と同一方向に接続される、1または複数の第4のツェナーダイオードと、
1または複数の前記第4のツェナーダイオードのそれぞれに並列に接続された第2のスイッチと、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのオンオフを制御するスイッチ制御回路と、
を有る波形成形回路。
【請求項6】
ーマリーオフ型のGaN−HEMTの電界効果トランジスタと
並列に接続された第1の容量素子と第1の抵抗素子を有し、前記第1の容量素子の第1の端子及び前記第1の抵抗素子の第2の端子に正のパルス電圧が印加され、前記第1の容量素子の第3の端子及び前記第1の抵抗素子の第4の端子に前記電界効果トランジスタのゲート端子が電気的に接続される第1の並列回路と、前記第3の端子及び前記第4の端子に第1のアノードが接続された第1のツェナーダイオードと、並列に接続された第2の容量素子と第2の抵抗素子を有し、前記第2の容量素子の第5の端子及び前記第2の抵抗素子の第6の端子に前記第1のツェナーダイオードの第1のカソードが接続され、前記第2の容量素子の第7の端子及び前記第2の抵抗素子の第8の端子が基準電位となる第2の並列回路と、を備えた波形成形回路と、
を有する半導体装置
【請求項7】
電界効果トランジスタと、
並列に接続された第1の容量素子と第1の抵抗素子を有し、前記第1の容量素子の第1の端子及び前記第1の抵抗素子の第2の端子に正のパルス電圧が印加され、前記第1の容量素子の第3の端子及び前記第1の抵抗素子の第4の端子に前記電界効果トランジスタのゲート端子が電気的に接続される第1の並列回路と、前記第3の端子及び前記第4の端子に第1のアノードが接続されたツェナーダイオードと、並列に接続された第2の容量素子と第2の抵抗素子を有し、前記第2の容量素子の第5の端子及び前記第2の抵抗素子の第6の端子に前記ツェナーダイオードの第1のカソードが接続され、前記第2の容量素子の第7の端子及び前記第2の抵抗素子の第8の端子が基準電位となる第2の並列回路とを備えた波形成形回路と、
を有する半導体装置。
【請求項8】
スイッチング動作によりパルス状の交流信号を出力する電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタの前記スイッチング動作を制御する制御信号を出力する制御回路と、
並列に接続された第1の容量素子と第1の抵抗素子を有し、前記第1の容量素子の第1の端子及び前記第1の抵抗素子の第2の端子に前記制御信号が供給され、前記第1の容量素子の第3の端子及び前記第1の抵抗素子の第4の端子に前記電界効果トランジスタのゲート端子が電気的に接続される第1の並列回路と、前記第3の端子及び前記第4の端子に第1のアノードが接続されたツェナーダイオードと、並列に接続された第2の容量素子と第2の抵抗素子を有し、前記第2の容量素子の第5の端子及び前記第2の抵抗素子の第6の端子に前記ツェナーダイオードの第1のカソードが接続され、前記第2の容量素子の第7の端子及び前記第2の抵抗素子の第8の端子が基準電位となる第2の並列回路と、を備えた波形成形回路と、
を有するスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形成形回路、半導体装置及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置は、AC(Alternating Current)/DC(Direct Current)コンバータまたは、DC/DCコンバータとして用いられている。
従来、1次側回路部(AC/DCコンバータではAC電源から電力を受ける側の回路部)と、2次側回路部(AC/DCコンバータではDC電圧を出力する側の回路部)とを、トランスを用いて電気的に絶縁し磁気的に接続する絶縁型のスイッチング電源装置がある。
【0003】
絶縁型のスイッチング電源装置では、1次側または2次側の一方で電気的な短絡が生じた場合、その影響が他方へ伝わることを防止できる。たとえば、1次側回路部に落雷などにより過電圧が生じた場合でも、2次側回路部に接続されている機器を保護できる。
【0004】
また、絶縁型のスイッチング電源装置では、トランスの1次巻き線に接続されたスイッチング素子をオンまたはオフさせて、トランスに蓄えられる磁気エネルギーを変化させることでスイッチング動作が行われる。
【0005】
スイッチング素子には通常、トランジスタが使用され、制御回路により駆動される。制御回路は、所定のスイッチング周波数でトランジスタをオンまたはオフするための制御電圧(ゲート電圧)をトランジスタのゲート端子に出力する。近年では、制御回路として専用の制御IC(Integrated Circuit)が用いられることが多い。
【0006】
スイッチング素子に使用されるトランジスタとしては、FET(Field Effect Transistor)があり、FETには、たとえば、Si(シリコン)−MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)FETが広く使用されている。
【0007】
絶縁型のスイッチング電源装置の制御ICは、スイッチング素子としてSi−MOSFETの利用を前提としているものが多い。Si−MOSFETのゲートドライブ電圧は7Vから20Vであるため、制御ICもその範囲でのゲート電圧を出力する。
【0008】
一方、近年では、HEMT(High Electron Mobility Transistor)と呼ばれる高電子移動度トランジスタが開発されている。HEMTの代表的なものに、オン抵抗素子の小さい窒化ガリウム(GaN)の化合物半導体を用いたGaN−HEMT(High Electron Mobility Transistor)がある。また、ゲート電圧が所定レベルのときにドレイン電流が流れずオフ状態を維持するノーマリーオフ型のGaN−HEMTが広く用いられている。
【0009】
ノーマリーオフ型のGaN−HEMTは、ゲート電極の直下にp型AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)が採用されている。このため、GaN−HEMTのゲート駆動電圧は±4Vから5V程度であり、Si−MOSFETに比べてゲート耐圧が低く電圧範囲が狭い。また、ノーマリーオフ型のGaN−HEMTは、閾値電圧が1Vから2Vと小さいため、ゲート電圧が0Vオフ近傍ではターンオンしてしまう誤点弧が生じやすい。
【0010】
GaN−HEMTは、たとえば、高効率な電力変換の有望性から、スイッチング電源装置のスイッチング素子としての適用が検討されている。
なお、GaNをスイッチング素子に用いたスイッチング電源装置において、正側の過電圧を抑制する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6160762号明細書
【特許文献2】国際公開第2013/157086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、たとえば、GaN−HEMTのゲート駆動電圧は、上記のような特性を有しているため、Si−MOSFETの使用を前提としている制御ICでGaN−HEMTを駆動させることは困難である。特にノーマリーオフ型のGaN−HEMTを確実にオフさせるためには負のゲート電圧を印加することが求められるが、負側の過電圧が生じてしまう可能性があった。なお、このような問題は、GaN−HEMTに限らず、閾値電圧が小さくなってきている他のFETにおいても生じる可能性がある。
【0013】
1つの側面では、本発明は、負側の過電圧の発生を抑制する波形成形回路、半導体装置及びスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの実施態様では、並列に接続された第1の容量素子と第1の抵抗素子を有し、前記第1の容量素子の第1の端子及び前記第1の抵抗素子の第2の端子に正のパルス電圧が印加され、前記第1の容量素子の第3の端子及び前記第1の抵抗素子の第4の端子に電界効果トランジスタのゲート端子が電気的に接続される第1の並列回路と、前記第3の端子及び前記第4の端子に第1のアノードが接続された第1のツェナーダイオードと、並列に接続された第2の容量素子と第2の抵抗素子を有し、前記第2の容量素子の第5の端子及び前記第2の抵抗素子の第6の端子に前記第1のツェナーダイオードの第1のカソードが接続され、前記第2の容量素子の第7の端子及び前記第2の抵抗素子の第8の端子が基準電位となる第2の並列回路と、を有する波形成形回路が提供される。
【0015】
また、1つの実施態様では、半導体装置が提供される。
さらに、1つの実施態様では、スイッチング電源装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
1つの側面では、負側の過電圧の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施の形態の波形成形回路の一例を示す図である。
図2】スイッチング電源装置の制御IC、電圧変換回路及びGaN−HEMTの接続形態の一例を示す図である。
図3】電圧変換回路の一例を示す図である(抵抗分割方式)。
図4】電圧変換回路の一例を示す図である(波形成形方式)。
図5】電圧変換回路の一例を示す図である(専用ドライバ)。
図6】第2の実施の形態の波形成形回路の一例を示す図である。
図7】波形成形回路の各素子の値の一例を示す図である。
図8】シミュレーション結果の一例を示す図である。
図9】第3の実施の形態の波形成形回路の一例を示す図である。
図10】波形成形回路の各素子の値の一例を示す図である。
図11】シミュレーション結果の一例を示す図である。
図12】スイッチング電源装置の一例を示す図である。
図13】PFC装置の一例を示す図である。
図14】サーバ用電源装置の一例を示す図である。
図15】波形成形回路の変形例を示す図である。
図16】スイッチングに基づくゲート電圧の制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の波形成形回路の一例を示す図である。波形成形回路10−1は、波形成形によりFETのゲート端子に負のゲート電圧を供給可能とする回路である。波形成形回路10−1は、並列回路11、並列回路12及びツェナーダイオード13を有する。並列回路11には、キャパシタ11aと、抵抗素子11bとが含まれ、並列回路12には、キャパシタ12aと、抵抗素子12bとが含まれる。
【0019】
各回路素子の接続関係において、キャパシタ11aと抵抗素子11bの一方の端子は、波形成形回路10−1の入力端子に接続される。キャパシタ11aと抵抗素子11bの他方の端子は、ツェナーダイオード13のアノードに接続されるとともに、波形成形回路10−1の出力端子を介して図示しないFETのゲート端子に電気的に接続される。キャパシタ11aと抵抗素子11bの他方の端子は、FETのゲート端子に直接接続されていなくてもよく、たとえば、抵抗などを介して接続されていてもよい。以下に説明する各実施の形態でも同様である。
【0020】
FETは、たとえば、前述したように閾値電圧が1Vから2Vと小さいノーマリーオフ型のGaN−HEMTである。ただ、FETは、ノーマリーオフ型のGaN−HEMTに限らず、Si−MOSFET、GaAs(ガリウム砒素)−MOSFETなどの化合物であってもよい。
【0021】
なお、波形成形回路11の出力端子はFETのゲート端子に直接接続していなくてもよく、抵抗素子、またはインダクタンス素子などを介して接続されていてもよい。
ツェナーダイオード13のカソードは、キャパシタ12aと抵抗素子12bの一方の端子に接続され、キャパシタ12aと抵抗素子12bの他方の端子は、基準電位である要素(以下GNDという)に接続される。
【0022】
ここで、正のパルス電圧である入力電圧Vinが入力端子に入力される場合、Vin>0のとき、並列回路11に電流が流れるとともに、ツェナーダイオード13の寄生容量によって、並列回路12に電荷が誘起される。また、ツェナーダイオード13の両端の電圧がフォワード電圧を越えたとき、並列回路12に電流が流れる。入力電圧Vinが0Vに下がると、並列回路12から入力端子側または出力端子側へ放出される電流はツェナーダイオード13によって遮断される。
【0023】
このときキャパシタ11a側に蓄積されていた電荷を補償するため、出力端子側から入力端子側へ電流が流れ、出力端子側の電圧が負に傾く。出力端子が負側の所定電圧より下がろうとすると、ツェナーダイオード13のツェナー電圧(降伏電圧ともいう)によって下限値が制限され、出力端子の負側の電圧が確定する。すなわち、ツェナーダイオード13のツェナー電圧が負側の定電圧となるので、ツェナー電圧より低下することがなく負側の過電圧が抑制されることになる。
【0024】
このように、波形成形回路10−1は、入力端子とGND間に、アノードがFETのゲート端子に接続されるツェナーダイオード13を介して2つの並列回路11、12が接続されている。これにより、負電圧がツェナーダイオード13のツェナー電圧で制限され、負側の過電圧を抑制することが可能になる。
【0025】
(比較例)
以下、第1の実施の形態の波形成形回路10−1に対する比較例として、負電圧を生成する電圧変換回路の例を示す。
【0026】
図2は、スイッチング電源装置の制御IC、電圧変換回路及びGaN−HEMTの接続形態の一例を示す図である。電圧変換回路20は、スイッチング電源装置の制御IC2aと、スイッチング素子であるノーマリーオフ型のGaN−HEMT2bとの間に位置する。電圧変換回路20は、制御IC2aから出力された制御電圧(最大20V)を所定の電圧に変換し、変換後の電圧をゲート電圧としてGaN−HEMT2bのゲート端子に印加する。
【0027】
図3は、電圧変換回路の一例を示す図である。電圧変換回路20aは、図2に示した電圧変換回路20を抵抗分割方式の回路とした場合である。電圧変換回路20aは、入力電圧Vinを抵抗分割によって所定の電圧Voutに変換して出力する。
【0028】
電圧変換回路20aは、抵抗素子21b、22bを含む。抵抗素子21bの一端には入力電圧Vinが印加される。抵抗素子21bの他端と抵抗素子22bの一端が接続され、抵抗素子22bの他端はGNDに接続される。また、抵抗素子21b、22bの接続点を通じて電圧Voutが出力される。
【0029】
電圧Voutの最大値は以下の式(1)で算出される。式(1)中、R1は抵抗素子21bの抵抗値であり、R2は抵抗素子22bの抵抗値である。
Vout=R2・Vin/(R1+R2) (1)
抵抗分割方式の電圧変換回路20aにおいて、たとえば、正のパルス電圧である入力電圧Vinが入力された場合、電圧Voutの波形なまりを抑制するには、抵抗素子21b、22bの抵抗値を小さく設定することになる。しかし、抵抗素子21b、22bの各抵抗値が小さくなるにつれて、抵抗素子21b、22bに流れる電流は大きくなるため、電力損失が増加することになる。
【0030】
また、電圧Voutの波形なまりは、出力負荷にも依存する(出力負荷の入力容量と、抵抗素子21b、22bの合成抵抗との時定数に応じて電圧Voutの波形なまりが変化する)。
【0031】
さらに、入力電圧Vinの変化に応じて出力電圧Voutも変化する。すなわち、入力電圧Vinが正側に増加すれば出力電圧Voutも正側に増加し、入力電圧Vinが負側に増加すれば出力電圧Voutも負側に増加する。このように、電圧変換回路20aでは、電圧Voutの正側及び負側の過電圧を制限することができないので、GaN−HEMT2bのような負荷を駆動することには適していない。
【0032】
図4は、電圧変換回路の一例を示す図である。電圧変換回路20bは、図2に示した電圧変換回路20を波形成形方式の回路とした場合である。電圧変換回路20bは、入力電圧Vinを波形成形によって所定の電圧Voutに変換して出力する。
【0033】
電圧変換回路20bは、並列回路21、22を有する。並列回路21は、キャパシタ21aと、抵抗素子21bを含み、並列回路22は、キャパシタ22aと、抵抗素子22bを含む。
【0034】
抵抗素子21bの一端は、キャパシタ21aの一端に接続され、入力電圧Vinが印加される。抵抗素子21bの他端は、キャパシタ21aの他端と、抵抗素子22bの一端と、キャパシタ22aの一端とに接続される。抵抗素子22bの他端は、キャパシタ22aの他端とGNDに接続される。また、並列回路21、22の接続点を通じて電圧Voutが出力される。
【0035】
波形成形方式の電圧変換回路20bにおいて、電圧Voutの出力最大値は、抵抗素子21b、22bの抵抗値およびキャパシタ21a、22aの容量に応じて調整することができる。また、電力損失を小さくするために抵抗素子21b、22bの抵抗値を大きくしても、抵抗素子21bとキャパシタ21aと、抵抗素子22bとキャパシタ22aとの関係に応じて波形を調整することができる。
【0036】
しかし、電圧変換回路20bにおいても、上記の電圧変換回路20aと同様に入力電圧Vinの変化に応じて出力電圧Voutも変化する。すなわち、入力電圧Vinが正側に増加すれば出力電圧Voutも正側に増加し、入力電圧Vinが負側に増加すれば出力電圧Voutも負側に増加する。このように、電圧変換回路20bでは、電圧Voutの正側及び負側の過電圧を制限することができないので、GaN−HEMT2bのような負荷を駆動することには適していない。
【0037】
図5は、電圧変換回路の一例を示す図である。電圧変換回路20cは、図2に示した電圧変換回路20に専用ドライバを使用した場合である。電圧変換回路20cは、専用ドライバによって、入力電圧Vinを所定の電圧Voutに変換して出力する。
【0038】
電圧変換回路20cは、専用ドライバとして減衰器23及び増幅器24を含む。増幅器24には、外部電源電圧(+VCC、−VCC)が印加される。また、専用ドライバを用いる電圧変換回路20cでは、入力電圧には制限があるため、減衰器23によって入力電圧Vinのレベルを一定レベルまで減衰させている。増幅器24は、減衰器23から出力される電圧を所定レベルまで増幅して出力する。
【0039】
専用ドライバを用いた電圧変換回路20cにおいて、電圧Voutの最小値及び最大値は外部電源によって設定できる。しかし、所定の電源電圧を出力させるためのプラス/マイナスの外部電源の回路を要することになり回路規模が増大することになる。また、電圧変換回路20cは、出力側負荷を駆動するために特化して製造された回路であるため一般的に高コストである。
【0040】
上述したように、電圧変換回路20a(図3の抵抗分割方式)や電圧変換回路20b(図4の波形成形方式)を、GaN−HEMT2bを駆動するために使用することは不向きであり、また電圧変換回路20c(図5の専用ドライバ)の使用は、回路規模が増大し高コストになる。
【0041】
上記のような電圧変換回路20a、20b、20cに対して、第1の実施の形態の波形成形回路10−1は、前述のように負側の過電圧を抑制できるとともに、専用ドライバが不要であるため、コストの増加を抑えられる。
【0042】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態の波形成形回路の一例を示す図である。図6において、図1に示した第1の実施の形態の波形成形回路10−1と同じ要素については同一符号が付されている。波形成形回路10−2は、波形成形回路10−1の各要素に加え、キャパシタ14を有する。ただし、このキャパシタ14は、印加電圧の変化に対して、流れる電流が非線形に変化する非線形素子の一例であり、印加電圧の増加とともに容量値の増加の傾きが増す非線形素子である。このようなキャパシタ14として、たとえば、PN接合ダイオード、MOSダイオード、ショットキーダイオードなどを用いることができる。
【0043】
キャパシタ14の一端は、ツェナーダイオード13のカソードと、抵抗素子12b及びキャパシタ12aの一方の端子に接続され、キャパシタ14の他端はGNDに接続される。
【0044】
このような波形成形回路10−2において、パルス状の電圧Vinが入力端子に入力される場合、Vin>0のとき、並列回路11に電流が流れるとともに、ツェナーダイオード13の寄生容量によって、並列回路12に電荷が誘起される。また、ツェナーダイオード13の両端の電圧がフォワード電圧を越えたとき、並列回路12に電流が流れる。そして、キャパシタ12aの両端の電圧が上昇すると、キャパシタ14の作用により、キャパシタ14に多くの電流が流れて、並列回路12にかかる電圧の上昇が止まる。つまり、並列回路12にかかる電圧が所定電圧以上にならないように制限され、Voutの正側の過電圧の発生が抑制される。
【0045】
Vinが0に下がったときの動作は、第1の実施の形態の波形成形回路10−1の動作と同じであり、Voutの負側の過電圧の発生が抑制される。
図7は、波形成形回路の各素子の値の一例を示す図である。キャパシタ11aの容量C1を4nF、抵抗素子11bの抵抗値R1を40kΩとし、キャパシタ12aの容量C2を1nF、抵抗素子12bの抵抗値R2を60kΩとする。また、ツェナーダイオード13のフォワード電圧Vfが0.4V、ツェナー電圧BVが−6.8Vであるとする。
【0046】
また、キャパシタ14の容量CNは、dQ/dVで算出される。Qは、キャパシタ14の蓄積電荷量であり、以下の式(2)で算出される。
Q=C0×b×ln(1+exp(−(V−a)/b))
+BV×ln(1+exp(1/b×a)) (2)
なお、式(2)中のC0、a、bの各パラメータ値は、a=3.5、b=0.1、C0=330E−6とする。
【0047】
図8は、シミュレーション結果の一例を示す図である。図8には、図7に示した回路素子の値でシミュレーションを実施したときのシミュレーション結果が示されている。
波形グラフg1aは入力電圧Vinの波形であり、横軸は時間(μs)、縦軸は入力Vinの電圧(V)である。波形グラフg1bは出力電圧Voutの波形であり、横軸は時間(μs)、縦軸は出力電圧Voutの電圧(V)である。
【0048】
正のパルス電圧である入力電圧Vinの正側ピーク値を10V、15V、20Vと増加させても、出力電圧Voutの波形は、正側電圧は4.0V近傍で制限されており、負側電圧は−3.2Vから−4.0Vの範囲内で制限されていることが分かる。さらに、出力電圧Voutの波形には、波形なまりが抑制されており、−4Vから+4Vの電圧範囲となっている。このように、出力電圧Voutの正側及び負側の過電圧が抑制され、たとえば、ゲート駆動電圧が±4Vから5V程度であるGaN−HEMTに好適な電圧範囲を実現できていることが分かる。
【0049】
(第3の実施の形態)
図9は、第3の実施の形態の波形成形回路の一例を示す図である。図9において、図1に示した第1の実施の形態の波形成形回路10−1と同じ要素については同一符号が付されている。波形成形回路10−3は、波形成形回路10−1の各要素に加え、印加電圧の変化に対して、流れる電流が非線形に変化する非線形素子の一例であるツェナーダイオード15を有する。
【0050】
ツェナーダイオード15のカソードは、キャパシタ12a及び抵抗素子12bの一端及びツェナーダイオード13のカソードに接続され、ツェナーダイオード15のアノードはGNDに接続される。
【0051】
このような波形成形回路10−3において、パルス状の電圧Vinが入力端子に入力される場合、Vin>0のとき、並列回路11に電流が流れるとともに、ツェナーダイオード13の寄生容量によって、並列回路12に電荷が誘起される。また、ツェナーダイオード13の両端の電圧がフォワード電圧を越えたとき、並列回路12に電流が流れる。そして、キャパシタ12aの両端の電圧が上昇し、ツェナーダイオード15の両端の電圧がツェナー電圧を下回ると、ツェナーダイオード15を介してGND側に電流が流れる。これにより、並列回路12にかかる電圧の上昇が止まる。つまり、並列回路12にかかる電圧が所定電圧以上にならないように制限され、Voutの正側の過電圧の発生が抑制される。
【0052】
Vinが0に下がったときの動作は、第1の実施の形態の波形成形回路10−1の動作と同じであり、Voutの負側の過電圧の発生が抑制される。
図10は、波形成形回路の各素子の値の一例を示す図である。キャパシタ11aの容量C1を4nF、抵抗素子11bの抵抗値R1を40kΩとし、キャパシタ12aの容量C2を1nF、抵抗素子12bの抵抗値R2を60kΩとする。また、ツェナーダイオード13のフォワード電圧Vfが0.4V、ツェナー電圧BVが−3.0Vであり、ツェナーダイオード15のフォワード電圧Vfが0.4V、ツェナー電圧BVが−3.5Vであるとする。
【0053】
図11は、シミュレーション結果の一例を示す図である。図11では、図10に示した回路素子の値でシミュレーションを実施したときのシミュレーション結果が示されている。
【0054】
波形グラフg2aは入力電圧Vinの波形であり、横軸は時間(μs)、縦軸は入力Vinの電圧(V)である。波形グラフg2bは出力電圧Voutの波形であり、横軸は時間(μs)、縦軸は出力電圧Voutの電圧(V)である。
【0055】
パルス状の入力電圧Vinの正側ピーク値を10V、15V、20Vと増加させても、出力電圧Voutの波形は、正側電圧は4.0V近傍で制限されており、負側電圧は−3.2Vから−4.0Vの範囲内で制限されていることが分かる。さらに、出力電圧Voutの波形には、波形なまりが抑制されており、−4Vから+4Vの電圧範囲となっている。このように、出力電圧Voutの正側及び負側の過電圧が抑制され、たとえば、ゲート駆動電圧が±4Vから5V程度であるGaN−HEMTに好適な電圧範囲を実現できていることが分かる。
【0056】
(波形成形回路の半導体装置への適用例)
以下、上記のような波形成形回路の半導体装置への適用例を示す。半導体装置の例として、以下では、スイッチング電源装置、PFC(Power Factor Correction:力率改善)装置、サーバ用電源装置を挙げる。
【0057】
図12は、スイッチング電源装置の一例を示す図である。上述の波形成形回路が適用された半導体装置の一例としてスイッチング電源装置30が示されている。スイッチング電源装置30は、ACアダプタとして利用可能である。
【0058】
スイッチング電源装置30の1次側回路部には、コモンモードフィルタ31b、ダイオードブリッジ31c、キャパシタ32、1次側制御IC33、波形成形回路34、トランジスタ35及び抵抗素子36が含まれる。
【0059】
また、スイッチング電源装置30は、1次側回路部と2次側回路部とを電気的に絶縁するとともに磁気的に結合するトランス37を有する。
2次側回路部には、キャパシタ41、42c、抵抗素子42b、42d、ダイオード42a、42e、トランジスタ43、波形成形回路44及び2次側制御IC45が含まれる。さらに、スイッチング電源装置30は、バイアス安定化回路46及びフォトカプラ47を有する。なお、トランジスタ35、43は、nチャネル型のMOSFETであり、たとえば、ノーマリーオフ型のGaN−HEMTである。
【0060】
コモンモードフィルタ31bは、交流電源31aに接続して交流電圧から高調波ノイズのフィルタリングを行う。ダイオードブリッジ31cは、ノイズ除去後の交流電圧を整流して整流信号を出力する。キャパシタ32は、ダイオードブリッジ31cが出力する整流信号を平滑化する。
【0061】
1次側制御IC33は、電源電圧が動作可能な電圧に達すると、トランジスタ35のスイッチング動作を制御するための制御電圧(制御信号)を出力する。また、1次側制御IC33は、VCC端子、GATE端子、IFB端子、FB端子及びGND端子を有する。
【0062】
VCC端子は、1次側制御IC33の電源電圧が印加される端子である。VCC端子には、キャパシタ32の一端、ダイオードブリッジ31cの出力端子及びトランス37の1次巻き線37aの一端が接続される。キャパシタ32の他端はGNDに接続される。
【0063】
GATE端子は、トランジスタ35をスイッチングするための制御電圧を出力する端子である。GATE端子は、波形成形回路34の入力端子に接続される。
IFB端子は、トランジスタ35のドレイン端子からソース端子へ流れる電流をフィードバック検出するための端子である。IFB端子は、トランジスタ35のソース端子及び抵抗素子36の一端に接続される。抵抗素子36の他端はGNDに接続される。なお、1次側制御IC33は、IFB端子に入力される電流が異常値であるときには、たとえば、GATE端子から出力される制御電圧を所定レベルにして、トランジスタ35のスイッチング動作を停止させる。
【0064】
FB端子は、フォトカプラ47から出力されるフィードバック電圧を受信する端子である。1次側制御IC33は、フィードバック電圧に基づいて、出力電圧が一定に保たれるように、デューティ比を適切な値に調整する。GND端子は、GNDに接続される。
【0065】
波形成形回路34は、1次側制御IC33から出力された制御電圧を受信すると、制御電圧をトランジスタ35に適した動作電圧範囲まで変換し、変換後の電圧信号をゲート電圧として出力する。波形成形回路34には、たとえば、上述の波形成形回路10−2または波形成形回路10−3が用いられる。
【0066】
トランジスタ35は、トランス37の1次巻き線37aに接続されたドレイン端子と、抵抗素子36を介してGNDに接続されたソース端子と、波形成形回路34から出力されるゲート電圧が印加されるゲート端子を有する。トランジスタ35は、波形成形回路34から供給されるゲート電圧に応じてオンまたはオフする。
【0067】
なお、トランジスタ35がノーマリーオフ型のGaN−HEMTの場合、波形成形回路34は、トランジスタ35をオンさせる場合には、トランジスタ35のゲート端子にオン電圧信号として正側電圧を印加する。また、トランジスタ35をオフさせる場合には、トランジスタ35のゲート端子にオフ電圧信号として負側電圧を印加する。
【0068】
トランス37は、1次巻き線37a、2次巻き線37b、コア37cを有する。図12では模式的に図示されているが、1次巻き線37a、2次巻き線37bは、コア37cに巻き付けられている。なお、各巻き線の一端の近傍に示されている黒丸は各巻き線の巻き始めの位置を示している。
【0069】
1次巻き線37aの一端は、ダイオードブリッジ31cの出力端子、キャパシタ32の一端及び1次側制御IC33のVCC端子に接続され、他端はトランジスタ35のドレイン端子に接続される。
【0070】
2次巻き線37bの一端は、キャパシタ41の一端と、スイッチング電源装置30の出力端子に接続される。キャパシタ41の他端はGNDに接続される。キャパシタ41は、出力電圧に生じるリップル電圧を低減するために設けられている。
【0071】
2次巻き線37bの他端は、ダイオード42aのアノード、抵抗素子42dの一端、トランジスタ43のドレイン端子及びダイオード42eのカソードに接続される。
トランジスタ43は、2次巻き線37bの一端に接続されたドレイン端子と、GNDに接続されたソース端子と、波形成形回路44から供給されるゲート電圧が印加されるゲート端子を有する。トランジスタ43は、ゲート電圧に基づいて、スイッチング動作を行う。
【0072】
2次側制御IC45は、トランジスタ43のドレイン電圧に基づいて、トランジスタ43のスイッチング動作を制御するための制御電圧を出力する。2次側制御IC45は、VCC端子、Drain端子、GATE端子及びGND端子を有する。
【0073】
VCC端子は、キャパシタ42cの一端と、抵抗素子42bの一端に接続される。キャパシタ42cの他端はGNDに接続され、抵抗素子42bの他端はダイオード42aのカソードに接続される。VCC端子には、ダイオード42a、抵抗素子42b、キャパシタ42cによって生成される電源電圧が印加され、2次側制御IC45は、その電源電圧によって動作する。
【0074】
Drain端子は、トランジスタ43のドレイン電圧を検出するために設けられた抵抗素子42dを介して、2次巻き線37bの一端と、トランジスタ43のドレイン端子に接続される。
【0075】
GATE端子には、波形成形回路44の入力端子が接続され、GATE端子から制御電圧が出力される。GND端子には、GNDが接続される。
波形成形回路44は、2次側制御IC45から出力された制御電圧を受信すると、制御電圧をトランジスタ43に適した動作電圧範囲まで変換し、変換後の電圧信号をゲート電圧として出力する。波形成形回路44には、たとえば、上述の波形成形回路10−2または波形成形回路10−3が用いられる。
【0076】
なお、トランジスタ43がノーマリーオフ型のGaN−HEMTの場合、波形成形回路44は、トランジスタ43をオンさせる場合には、トランジスタ43のゲート端子にオン電圧信号として正側電圧を印加する。また、トランジスタ43をオフさせる場合には、トランジスタ43のゲート端子にオフ電圧信号として負側電圧を印加する。
【0077】
なお、トランジスタ35、43に適した動作電圧範囲は一致していなくてもよい。その場合、波形成形回路34、44に用いられるツェナーダイオード13、キャパシタ14(またはツェナーダイオード15)として、トランジスタ35、43のそれぞれの動作電圧範囲に適したパラメータ(ツェナー電圧など)をもつものを適用すればよい。
【0078】
ダイオード42eは、トランジスタ43のスイッチング動作による同期整流が開始するまでの期間、整流を行う機能を有する。ダイオード42eのアノードは、トランジスタ43のソース端子及びGNDに接続され、カソードは、トランジスタ43のドレイン端子に接続される。
【0079】
ダイオード42a、抵抗素子42b及びキャパシタ42cは、2次側制御IC45を動作させるための直流電圧である電源電圧を生成する。
ダイオード42aのアノードは、2次巻き線37bの一端に接続され、カソードは、抵抗素子42bの一端に接続される。抵抗素子42bの他端は、キャパシタ42cの一端及び2次側制御IC45のVCC端子に接続される。
【0080】
バイアス安定化回路46は、出力電圧のバイアスの安定化を行ってフォトカプラ47の入力レベルに基づく信号を生成する。フォトカプラ47は、バイアス安定化回路46からの出力信号をスイッチング電源装置30の出力電圧(直流電圧)とその期待値との誤差を示す誤差信号として出力する。1次側制御IC33は、その誤差信号を出力電圧のフィードバック電圧として受けて、デューティ比を適切な値へ調整する。
【0081】
図13は、PFC装置の一例を示す図である。PFC装置50は、交流電源51aからの高調波の抑制を図って力率を改善する。PFC装置50は、コモンモードフィルタ51b、ダイオードブリッジ51c、補助電源52、制御IC53、波形成形回路54、トランジスタ55、キャパシタ56a、56b、インダクタ57、ダイオード58及び抵抗素子59a、59b、59cを有する。トランジスタ55は、NMOSトランジスタであり、たとえば、ノーマリーオフ型のGaN−HEMTである。
【0082】
各回路素子の接続関係において、コモンモードフィルタ51bの入力側には交流電源51aが接続され、出力側にはダイオードブリッジ51cの入力端子が接続される。ダイオードブリッジ51cの出力端子には、補助電源52のVCC端子、キャパシタ56aの一端及びインダクタ57の一端が接続される。キャパシタ56aの他端は、GNDに接続される。
【0083】
インダクタ57の他端は、トランジスタ55のドレイン端子と、ダイオード58のアノードに接続される。ダイオード58のカソードは、抵抗素子59bの一端と、キャパシタ56bの一端に接続され、キャパシタ56bの他端はGNDに接続される。
【0084】
補助電源52のDCout端子は、制御IC53のVCC端子に接続され、補助電源52のGND端子はGNDに接続される。制御IC53のGATE端子は、波形成形回路54の入力端子に接続される。波形成形回路54の出力端子は、トランジスタ55のゲート端子に接続される。
【0085】
制御IC53のIFB端子は、トランジスタ55のソース端子と、抵抗素子59aの一端に接続される。抵抗素子59aの他端はGNDに接続される。制御IC53のFB端子は、抵抗素子59bの他端と、抵抗素子59cの一端に接続される。抵抗素子59cの他端はGNDに接続される。
【0086】
ここで、コモンモードフィルタ51bは、交流電源51aからの交流電圧から高調波ノイズのフィルタリングを行う。ダイオードブリッジ51cは、ノイズ除去後の交流電圧を整流する。キャパシタ56aは、整流された入力電圧を平滑化する。インダクタ57は、昇圧インダクタであって、平滑化された電圧を所定値まで昇圧する。また、インダクタ57を通じて流れる信号は、ダイオード58へ流れ、ダイオード58は、インダクタ57から出力された信号を整流する。
【0087】
補助電源52は、VCC端子、DCout端子及びGND端子を有する。VCC端子は、ダイオードブリッジ51cの出力電圧が電源電圧として供給される端子である。DCout端子は、補助電源52によって生成された直流電圧を制御IC53へ出力する端子である。GND端子は、GNDに接続される。
【0088】
制御IC53は、VCC端子、GATE端子、IFB端子、FB端子及びGND端子を有する。VCC端子は、補助電源52のDCout端子から出力された直流電圧が電源電圧として供給される端子である。
【0089】
GATE端子は、トランジスタ55をスイッチングするための制御電圧を出力する端子である。IFB端子は、トランジスタ55のドレイン端子からソース端子へ流れる電流をフィードバック検出するための端子である。なお、制御IC53は、IFB端子に入力される電流が異常値であるときには、たとえば、GATE端子から出力される制御電圧を所定レベルにして、トランジスタ55のスイッチング動作を停止させる。
【0090】
FB端子は、抵抗素子59b、59cによって出力電圧が分圧されたフィードバック電圧を受信する端子である。制御IC53は、フィードバック電圧に基づいて、出力電圧が一定に保たれるように、デューティ比を適切な値に調整する。GND端子は、GNDに接続される。
【0091】
波形成形回路54は、制御IC53から出力された制御電圧を受信すると、制御電圧をトランジスタ55に適した動作電圧範囲まで変換し、変換後の電圧信号をゲート電圧として出力する。波形成形回路54には、たとえば、上述の波形成形回路10−2または波形成形回路10−3が用いられる。
【0092】
トランジスタ55は、波形成形回路54から出力されたゲート電圧に基づきスイッチング動作を行う。トランジスタ55がオフのときには、インダクタ57から出力された信号は、ダイオード58を流れてキャパシタ56bを充電する。トランジスタ55がオンのときには、インダクタ57から出力された信号は、抵抗素子59aを介してGNDに流れる。
【0093】
なお、トランジスタ55がノーマリーオフ型のGaN−HEMTの場合、波形成形回路54は、トランジスタ55をオンさせる場合には、トランジスタ55のゲート端子にオン電圧信号として正側電圧を印加する。また、トランジスタ55をオフさせる場合には、トランジスタ55のゲート端子にオフ電圧信号として負側電圧を印加する。
【0094】
図14は、サーバ用電源装置の一例を示す図である。サーバ用電源装置6は、PFC回路60及び絶縁型DC/DCコンバータ70、80を備える。絶縁型DC/DCコンバータ70と、絶縁型DC/DCコンバータ80は、バス(たとえば、12Vバス)6a、6bを介して接続される。
【0095】
PFC回路60は、ダイオード61a、61b、61c、61d、インダクタ62、トランジスタ63、ダイオード64及びキャパシタ65を含む。ダイオード61a、61b、61c、61dでダイオードブリッジが形成されている。また、トランジスタ63の駆動制御を行う回路として、波形成形回路66及びPFC制御IC67が配置される。
【0096】
絶縁型DC/DCコンバータ70は、トランス71、トランジスタ72a、72b及びキャパシタ75を含む。トランス71は、1次巻き線71aと2次巻き線71bを含む(コアの図示は省略)。また、トランジスタ72aの駆動制御を行う回路として、波形成形回路73a及び1次側制御IC74aが配置され、トランジスタ72bの駆動制御を行う回路として、波形成形回路73b及び2次側制御IC74bが配置される。
【0097】
絶縁型DC/DCコンバータ80は、トランス81、トランジスタ82a、82b及びキャパシタ85を含む。トランス81は、1次巻き線81aと2次巻き線81bを含む(コアの図示は省略)。また、トランジスタ82aの駆動制御を行う回路として、波形成形回路83a及び1次側制御IC84aが配置され、トランジスタ82bの駆動制御を行う回路として、波形成形回路83b及び2次側制御IC84bが配置される。
【0098】
トランジスタ63、72a、72b、82a、82bは、nチャネル型MOSFETであり、たとえば、ノーマリーオフ型のGaN−HEMTである。
各回路素子の接続関係において、交流電源61の一端は、ダイオード61aのアノードと、ダイオード61cのカソードに接続される。交流電源61の他端は、ダイオード61bのアノードと、ダイオード61dのカソードに接続される。
【0099】
ダイオード61aのカソードは、ダイオード61bのカソードと、インダクタ62の一端に接続される。インダクタ62の他端は、トランジスタ63のドレイン端子と、ダイオード64のアノードに接続される。ダイオード64のカソードは、キャパシタ65の一端と、トランス71の1次巻き線71aの一端に接続される。1次巻き線71aの他端は、トランジスタ72aのドレイン端子に接続される。
【0100】
ダイオード61cのアノードは、ダイオード61dのアノード、トランジスタ63のソース端子、キャパシタ65の他端及びトランジスタ72aのソース端子に接続される。
トランジスタ63のゲート端子は、波形成形回路66の出力端子に接続され、波形成形回路66の入力端子は、PFC制御IC67の出力端子に接続される。
【0101】
トランス71の2次巻き線71bの一端は、キャパシタ75の一端と、バス6bに接続される。2次巻き線71bの他端は、トランジスタ72bのドレイン端子に接続される。トランジスタ72bのソース端子は、キャパシタ75の他端と、バス6aに接続される。
【0102】
トランジスタ72aのゲート端子は、波形成形回路73aの出力端子に接続され、波形成形回路73aの入力端子は、1次側制御IC74aの出力端子に接続される。トランジスタ72bのゲート端子は、波形成形回路73bの出力端子に接続され、波形成形回路73bの入力端子は、2次側制御IC74bの出力端子に接続される。
【0103】
トランス81の1次巻き線81aの一端は、バス6bに接続され、1次巻き線81aの他端は、トランジスタ82aのドレイン端子に接続される。トランジスタ82aのソース端子は、バス6aに接続される。
【0104】
トランス81の2次巻き線81bの一端は、キャパシタ85の一端と、出力端子の一端に接続され、2次巻き線81bの他端は、トランジスタ82bのドレイン端子に接続される。トランジスタ82bのソース端子は、キャパシタ85の他端と、出力端子の他端に接続される。
【0105】
トランジスタ82aのゲート端子は、波形成形回路83aの出力端子に接続され、波形成形回路83aの入力端子は、1次側制御IC84aの出力端子に接続される。トランジスタ82bのゲート端子は、波形成形回路83bの出力端子に接続され、波形成形回路83bの入力端子は、2次側制御IC84bの出力端子に接続される。
【0106】
PFC回路60は、交流電源61からの高調波の抑制を図って力率を改善する。PFC制御IC67は、トランジスタ63をスイッチングするための制御電圧を出力する。波形成形回路66は、PFC制御IC67から出力された制御電圧を受信すると、制御電圧をトランジスタ63に適した動作電圧範囲まで変換し、変換後の電圧信号をゲート電圧として出力する。波形成形回路66には、たとえば、上述の波形成形回路10−2または波形成形回路10−3が用いられる。トランジスタ63は、波形成形回路66から供給されるゲート電圧に応じてオンまたはオフする。
【0107】
絶縁型DC/DCコンバータ70は、トランス71を用いて入力側と出力側との電気的絶縁を図って、PFC回路60から出力されるDC電圧を所定のDC電圧に変換する。1次側制御IC74aは、トランジスタ72aをスイッチングするための制御電圧を出力し、2次側制御IC74bは、トランジスタ72bをスイッチングするための制御電圧を出力する。
【0108】
波形成形回路73aは、1次側制御IC74aから出力された制御電圧を受信すると、制御電圧をトランジスタ72aに適した動作電圧範囲まで変換し、変換後の電圧信号をゲート電圧として出力する。波形成形回路73bは、2次側制御IC74bから出力された制御電圧を受信すると、制御電圧をトランジスタ72bに適した動作電圧範囲まで変換し、変換後の電圧信号をゲート電圧として出力する。
【0109】
波形成形回路73a、73bには、たとえば、上述の波形成形回路10−2または波形成形回路10−3が用いられる。トランジスタ72a、72bは、波形成形回路73a、73bからそれぞれ供給されるゲート電圧に応じてオンまたはオフする。
【0110】
絶縁型DC/DCコンバータ80は、トランス81を用いて入力側と出力側との電気的絶縁を図って、絶縁型DC/DCコンバータ70から出力されるDC電圧を、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサの所定の動作電圧に変換する。1次側制御IC84aは、トランジスタ82aをスイッチングするための制御電圧を出力し、2次側制御IC84bは、トランジスタ82bをスイッチングするための制御電圧を出力する。
【0111】
波形成形回路83aは、1次側制御IC84aから出力された制御電圧を受信すると、制御電圧をトランジスタ82aに適した動作電圧範囲まで変換し、変換後の電圧信号をゲート電圧として出力する。波形成形回路83bは、2次側制御IC84bから出力された制御電圧を受信すると、制御電圧をトランジスタ82bに適した動作電圧範囲まで変換し、変換後の電圧信号をゲート電圧として出力する。
【0112】
波形成形回路83a、83bには、たとえば、上述の波形成形回路10−2または波形成形回路10−3が用いられる。トランジスタ82a、82bは、波形成形回路83a、83bからそれぞれ供給されるゲート電圧に応じてオンまたはオフする。
【0113】
(変形例)
図15は、波形成形回路の変形例を示す図である。図15において、図9に示した第3の実施の形態の波形成形回路10−3と同じ要素については同一符号が付されている。
【0114】
波形成形回路10aは、ツェナーダイオード13に直列に接続されたツェナーダイオード13−1、13−2と、ツェナーダイオード13−1、13−2のそれぞれに並列に接続されたスイッチsw1、sw2を有する。また、波形成形回路10aは、ツェナーダイオード15に直列に接続されたツェナーダイオード15−1、15−2と、ツェナーダイオード15−1、15−2のそれぞれに並列に接続されたスイッチsw3、sw4を有する。さらに、波形成形回路10aは、スイッチsw1〜sw4のオンオフを制御するスイッチ制御回路16を有する。
【0115】
このような波形成形回路10aによれば、スイッチ制御回路16がスイッチsw1〜sw4のオンオフを制御することで、トランジスタ1aのゲート電圧の上限電圧(VH)と下限電圧(VL)を制御できる。
【0116】
なお、ツェナーダイオード13−1、13−2は、2つに限らず、1つまたは3つ以上であってもよい。ツェナーダイオード15−1、15−2に関しても同様である。
図16は、スイッチングに基づくゲート電圧の制御の一例を示す図である。なお、回路素子の具体的な値としては、キャパシタ11aの容量C1を1nF、抵抗素子11bの抵抗値R1を400kΩとし、キャパシタ12aの容量C2を100nF、抵抗素子12bの抵抗値R2を4kΩとする。また、ツェナーダイオード13、13−1、13−2のフォワード電圧Vfが0.5V、ツェナー電圧BVが−3.0Vであり、ツェナーダイオード15、15−1、15−2のフォワード電圧Vfが0.5V、ツェナー電圧BVが−3.0Vであるとする。
【0117】
テーブルT1は、ゲート電圧の上限電圧(VH)/下限電圧(VL)と、スイッチsw1〜sw4のオン/オフとの組合せの関係を示している。
たとえば、テーブルT1の欄L1において、スイッチ開閉パターンがsw1、sw2、sw3、sw4)=(オン、オン、オン、オン)の場合、上限電圧VHが3Vで下限電圧VLが−3Vのゲート電圧が波形成形回路10aにて生成されて、トランジスタ1aのゲート端子に印加される。
【0118】
また、テーブルT1の欄L2において、スイッチ開閉パターンがsw1、sw2、sw3、sw4)=(オン、オン、オン、オフ)の場合、上限電圧VHが6Vで下限電圧VLが−3Vのゲート電圧が波形成形回路10aにて生成されて、トランジスタ1aのゲート端子に印加される。
【0119】
このように、複数のツェナーダイオードを直列接続させてスイッチングによって所定のツェナーダイオードの導通状態を制御することにより、ゲート電圧を可変設定することができ、多様なゲート電圧定格に柔軟に対応することが可能になる。
【0120】
なお、図15の例では、ツェナーダイオード15、15−1、15−2を用いた例を示したが、図6に示したキャパシタ14と、キャパシタ14と同じ非線形素子であり、キャパシタ14に直列に接続された1または複数のキャパシタを用いてもよい。
【0121】
また、スイッチ制御回路16は、ゲート電圧のアンダーシュートを検出して、その検出結果に基づいて、ゲート電圧の範囲が、適切な範囲になるようにスイッチsw1〜sw4を制御してもよい。なお、アンダーシュートを検出する回路として、たとえば、特開2012−50300公報の第10図などに開示されている回路を用いることができる。
【0122】
以上、実施の形態に基づき、本発明の波形成形回路、半導体装置及びスイッチング電源装置の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0123】
10−1 波形成形回路
11、12 並列回路
11a、12a キャパシタ
11b、12b 抵抗素子
13 ツェナーダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16