(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバー部に内部空間を形成すると、圧縮機から吐出される流体の脈動に起因して、内部空間で音響共鳴が生ずることがあった。内部空間の音響共鳴周波数が比較的低くなると、油分離器が加振されるという問題があった。
【0005】
本開示の目的は、カバー部の内部空間の音響共鳴に起因して油分離器が加振されることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、
圧縮機(10)の吐出側の開口部(11a)に取り付けられるカバー部(31)と、
前記カバー部(31)の内部に形成される吐出流路(38)と、
前記吐出流路(38)を流出した流体中から油を分離する油分離部(50)とを備え、
前記カバー部(31)の内部には、前記開口部(11a)に面する内部空間(36)を複数の空間(S)に仕切る隔壁部(37)が設けられる油分離器である。
【0007】
第1の態様では、隔壁部(37)がカバー部(31)の内部空間(36)を複数の空間(S)に仕切る。これにより、各空間(S)のサイズは、従来の1つの内部空間のサイズによりも小さくなる。この結果、各空間(S)における音響共鳴周波数を高くすることができ、油分離器の加振を抑制できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、
前記内部空間(36)は、第1方向に延びた形状であり、
前記隔壁部(37)は、前記第1方向に延びるとともに、該内部空間(36)を該第1方向に直交する第2方向に仕切る第1壁(37a,37b)を含む。
【0009】
仮にカバー部の内部に、第1方向に延びる1つの内部空間が形成される場合、油分離器は、第1方向に直交する第2方向に加振され易くなる。第2の態様の隔壁部(37)は、内部空間(36)を第2方向に仕切るため、複数の空間(S)の第2方向の間隔を狭くできる。これにより、第2方向の音響共鳴周波数を高くできるので、油分離器が第2方向に加振されることを抑制できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、
前記内部空間(36)は、前記第1方向である上下方向に延びた形状であり、
前記第1壁(37a,37b)は、前記上下方向に延びるとともに、前記内部空間(36)を前記第2方向である水平方向に仕切る。
【0011】
仮にカバー部の内部に、上下方向に延びる1つの内部空間が形成される場合、油分離器は、上下方向に直交する水平方向に加振され易くなる。第3の態様の隔壁部(37)は、内部空間(36)を水平方向に仕切るため、複数の空間(S)の水平方向の間隔を狭くできる。これにより、水平方向の音響共鳴周波数を高くできるので、油分離器が水平方向に加振されることを抑制できる。
【0012】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様において、
前記複数の空間(S)は、互いに形状が異なる少なくとも2つの空間(S)を含む。
【0013】
仮に複数の空間の少なくとも2つの空間の形状が同じである場合、これらの空間の共鳴モードが励起され、油分離器の加振力が増大してしまう。第4の態様では、少なくとも2つの空間(S)の形状が異なるための、これらの空間(S)の共鳴モードの励起を抑制できる。
【0014】
第5の態様は、第4の態様において、
前記互いに形状が異なる少なくとも2つの空間(S)は、互いに高さが異なる。
【0015】
第5の態様では、少なくとも2つの空間(S)の高さ方向における共鳴モードの励起を抑制できる。
【0016】
第6の態様は、第4または第5の態様において、前記互いに形状が異なる少なくとも2つの空間(S)は、互いに水平方向の幅が異なる。
【0017】
第6の態様では、少なくとも2つの空間(S)の幅方向における共鳴モードの励起を抑制できる。
【0018】
第7の態様は、第4〜第6のいずれか1つの態様において、
前記互いに形状が異なる少なくとも2つの空間(S)は、互いに水平方向の奥行きの長さが異なる。
【0019】
第7の態様では、少なくとも2つの空間(S)の奥行き方向における共鳴モードの励起を抑制できる。
【0020】
第8の態様は、第4〜第6のいずれか1つの態様において、
前記複数の空間(S)の全ては、互いに水平方向の奥行きの長さが等しい。
【0021】
第8の態様では、複数の空間(S)における奥行きの長さを等しくすることで、油分離器の構造を簡素化できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。
【0024】
《実施形態》
実施形態に係る圧縮機ユニット(U)は、圧縮機(10)と油分離器(30)とを有する。油分離器(30)は、圧縮機(10)に取り付けられる。圧縮機ユニット(U)は、冷凍装置の冷媒回路に接続される。冷媒回路には、冷媒が充填される。冷媒は、本開示の流体に対応する。冷媒回路は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。具体的には、圧縮機で圧縮された冷媒が、放熱器で放熱する。放熱した冷媒は、減圧部で減圧される。減圧部で減圧された冷媒は、蒸発器で蒸発する。蒸発器で蒸発した冷媒は、圧縮機に吸入される。冷媒中には、圧縮機(10)の摺動部を潤滑する潤滑油(以下、油という)が含まれる。
【0025】
〈圧縮機〉
圧縮機(10)は、冷媒を圧縮する。圧縮機(10)は、低圧のガス冷媒を吸入し、このガス冷媒を圧縮する。圧縮機(10)は、圧縮した後の高圧のガス冷媒を吐出する。
図1に示すように、圧縮機(10)は、スクリュー圧縮機である。圧縮機(10)は、1つのスクリューロータ(22)を有するシングルスクリュー型である。圧縮機(10)は、1つのゲートロータ(23)を有する1ゲート型である。圧縮機(10)は、ケーシング(11)、電動機(15)、駆動軸(18)、及び圧縮機構(20)を備えている。
【0026】
〈ケーシング〉
ケーシング(11)は、横長の筒状に形成される。ケーシング(11)の内部には、低圧室(L)と高圧室(H)とが形成される。低圧室(L)は、圧縮機構(20)に吸入される低圧のガス冷媒が流れる流路を構成する。高圧室(H)は、圧縮機構(20)から吐出された高圧のガス冷媒が流れる流路を構成する。
【0027】
ケーシング(11)の長手方向の一端には、吸入カバー(12)が取り付けられる。ケーシング(11)の長手方向の他端には、開口部(11a)が形成される。開口部(11a)は、ケーシング(11)のうち高圧室(H)が形成される高圧側に設けられる。開口部(11a)には、油分離器(30)のカバー部(31)が取り付けられる。ケーシング(11)内の底部には、油が貯留される油室(14)が形成される。
【0028】
〈電動機〉
電動機(15)は、ケーシング(11)に収容される。電動機(15)は、ステータ(16)とロータ(17)とを有する。ステータ(16)は、ケーシング(11)の内壁に固定される。ロータ(17)は、ステータ(16)の内部に配置される。ロータ(17)の内部には駆動軸(18)が固定される。
【0029】
〈駆動軸〉
駆動軸(18)は、電動機(15)と圧縮機構(20)とを連結する。駆動軸(18)は、ケーシング(11)の長手方向に沿って延びる。駆動軸(18)は、略水平方向に延びる。駆動軸(18)は、複数の軸受け(19)によって回転可能に支持される。軸受け(19)は、ベアリングフォルダ(図示省略)を介してケーシング(11)に固定される。
【0030】
〈圧縮機構〉
圧縮機構(20)は、1つのシリンダ部(21)と、1つのスクリューロータ(22)と、1つのゲートロータ(23)とを有する。
【0031】
シリンダ部(21)は、ケーシング(11)の内部に形成される。スクリューロータ(22)は、シリンダ部(21)の内側に配置される。スクリューロータ(22)は、駆動軸(18)に固定される。スクリューロータ(22)の外周面には、螺旋状の複数(本例では3つ)のスクリュー溝(24)が形成される。スクリューロータ(22)の歯先の外周面は、シリンダ部(21)に囲まれる。スクリューロータ(22)の軸方向の一端側は、低圧室(L)に面する。スクリューロータ(22)の軸方向の他端側は、高圧室(H)に面する。
【0032】
ゲートロータ(23)は、ゲートロータ室(25)に収容される。ゲートロータ(23)は、放射状に配置された複数のゲート(23a)を有する。ゲートロータ(23)のゲート(23a)は、シリンダ部(21)の一部を貫通し、スクリュー溝(24)と噛み合う。圧縮機構(20)には、吸入口と、圧縮室とが形成される。吸入口は、スクリュー溝(24)のうち低圧室(L)に開口する部分である。圧縮室は、シリンダ部(21)の内周面と、スクリュー溝(24)と、ゲート(23a)との間に形成される。圧縮機構(20)では、圧縮室で圧縮された冷媒が、吐出口を通じて高圧室(H)へ吐出される。
【0033】
圧縮機構(20)は、スライドバルブ機構(図示省略)を有する。スライドバルブ機構は、圧縮室と吐出ポートとを連通するタイミングを調節する。スライドバルブ機構は、駆動軸(18)の軸心方向に沿って前後に進退するスライド部材(スライドバルブ)を含む。スライド部材の一部は、高圧室(H)に位置する。
【0034】
〈油分離器〉
油分離器(30)について説明する。なお、以下の説明において、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」に関する語句は、原則として、
図2に示すカバー部(31)を正面から視た場合を基準とする。
【0035】
油分離器(30)は、遠心力により冷媒から油を分離する遠心分離式である。油分離器(30)は、圧縮機構(20)から吐出された冷媒中から油を分離する。油分離器(30)は、カバー部(31)と、筒状の油分離器本体(50)と、曲がり管(70)とを備える。
【0036】
〈カバー部〉
図1〜
図6を参照しながらカバー部(31)について説明する。
【0037】
カバー部(31)は、圧縮機(10)の吐出側の開口部(11a)に取り付けられる。カバー部(31)は、圧縮機(10)の高圧室(H)を塞ぐ。カバー部(31)の上下の高さは、左右の幅よりも大きい。カバー部(31)は、カバー本体(32)と、フランジ部(33)とを有する。カバー本体(32)は、前側が開放された中空状に形成される。フランジ部(33)は、カバー本体(32)の前端に設けられる。フランジ部(33)は、上下に縦長の枠状に形成される。フランジ部(33)は、締結部材を介してケーシング(11)の開口部(11a)に固定される。
【0038】
フランジ部(33)は、第1フランジ部(33a)と第2フランジ部(33b)とを含む。第1フランジ部(33a)は、フランジ部(33)の上部から中間部に亘って形成される。第2フランジ部(33b)は、フランジ部(33)の下部に形成される。第1フランジ部(33a)は、正面視において、逆U字状に形成される。厳密には、第1フランジ部(33a)は、正面視において、縦長の矩形部の下辺が切除された形状をしている。第2フランジ部(33b)は、正面視において、U字状に形成される。厳密には、第2フランジ部(33b)は、正面視において円弧状に形成される。
【0039】
カバー部(31)は、仕切壁(34)を有する。仕切壁(34)は、フランジ部(33)の下部に設けられる。仕切壁(34)は、第1フランジ部(33a)と第2フランジ部(33b)との境界部分に位置する。仕切壁(34)は、フランジ部(33)の左右の両端に亘るように水平方向に延びる。仕切壁(34)は、カバー部(31)の内部を油溜空間(35)と吐出空間(36)とに仕切っている。
【0040】
油溜空間(35)は、仕切壁(34)の下方に位置する。油溜空間(35)は、第2フランジ部(33b)の内側に位置する。
図1に示すように、油溜空間(35)は、ケーシング(11)内の油室(14)に対応する高さ位置にある。油溜空間(35)には、油分離器(30)で分離された油が溜まる。
【0041】
吐出空間(36)は、仕切壁(34)の上方に位置する。吐出空間(36)は、第1フランジ部(33a)の内側に位置する。吐出空間(36)は、ケーシング(11)内の高圧室(H)に対応する高さ位置にある。吐出空間(36)には、圧縮機構(20)で吐出された高圧のガス冷媒が流入する。吐出空間(36)は、本開示の内部空間に対応する。
【0042】
図2、
図3、及び
図6に示すように、吐出空間(36)は、隔壁部(37)によって、複数の空間に仕切られている。本実施形態のカバー部(31)には、3行×3列の合計9つの空間が形成される。これらの空間のうち、最も上側且つ最も左側の空間は、吐出流路(38)を構成している。吐出流路(38)は、曲がり管(70)に連通する。残りの8つの空間は、分割空間(S)に対応する。分割空間(S)は、本開示の空間に対応する。隔壁部(37)及び分割空間(S)の詳細は後述する。
【0043】
〈油分離器本体の概要〉
図2〜
図5を参照しながら油分離器本体(50)について説明する。
【0044】
油分離器本体(50)は、筒状に形成される。厳密には、油分離器本体(50)は、中空円筒状に形成される。油分離器本体(50)の内部には、冷媒中から油を遠心力によって分離するための分離空間(51)が形成される。分離空間(51)には、曲がり管(70)を流れた冷媒が流入する。油分離器本体(50)は、外筒(52)と蓋部材(60)とを有する。油分離器本体(50)は、本開示の油分離部に対応する。
【0045】
〈外筒〉
図2及び
図3に示すように、外筒(52)は、上側が下方した有底筒状に形成される。外筒(52)は、筒状の胴部(53)と、胴部(53)の下側に形成される底部(54)とを含む。厳密には、外筒(52)は、曲がり管(70)の外壁部(71)を有する。
【0046】
胴部(53)の前側部分は、カバー部(31)と一体に形成される。胴部(53)には、油流出孔(55)が形成される。油流出孔(55)は、胴部(53)の前側部分の下端に形成される。油流出孔(55)は、外筒(52)の底面と同じ高さ位置にある。油流出孔(55)は、分離空間(51)と油溜空間(35)とを連通する。分離空間(51)の油は、油流出孔(55)を通じて油溜空間(35)に流出する。
【0047】
底部(54)には、油戻し流路(56)が形成される。油戻し流路(56)は、油溜空間(35)の油を圧縮機(10)の所定の潤滑部など供給するための流路である。油戻し流路(56)は、第1流路(56a)、第2流路(56b)、及び第3流路(56c)を含む。油戻し流路(56)では、その上流側から下流側に向かって順に、第1流路(56a)、第2流路(56b)、及び第3流路(56c)が順に接続される。
【0048】
第1流路(56a)の流入端は、油溜空間(35)に開口する。第1流路(56a)の流出端は、第2流路(56b)に開口する。第2流路(56b)の外径は、第1流路(56a)及び第3流路(56c)の外径よりも大きい。第2流路(56b)には、油中の不純物を捕捉する捕捉部材(57)が設けられる。捕捉部材(57)は、例えば有底筒状のメッシュ部材で構成される。捕捉部材(57)の前側の開口端は、第3流路(56c)の流入口を囲んでいる。捕捉部材(57)により、不純物が捕捉された油が、第3流路(56c)を経由して所定の摺動部へ供給される。
【0049】
〈蓋部材〉
図2〜
図5に示すように、蓋部材(60)は、外筒(52)の上側の開放部に取り付けられる。蓋部材(60)は、上蓋(61)及び内筒(62)を有する。本実施形態の蓋部材(60)は、曲がり管(70)の内壁部(72)をさらに有する。内壁部(72)は、曲がり管(70)の一部を構成する。
【0050】
上蓋(61)は、略円板状に形成される。上蓋(61)は、締結部材を介して外筒(52)の上端に固定される。上蓋(61)の外縁の下面と、外筒(52)の上端面との間には、シール部材(図示省略)が設けられる。
【0051】
内筒(62)は、上下が開放する円筒状に形成される。内筒(62)は、上蓋(61)の中央部に設けられる。内筒(62)は、上蓋(61)から下方に向かって突出する。内筒(62)は、外筒(52)の上部に対応する高さ位置にある。言い換えると、内筒(62)は、外筒(52)の上側の略半分に対応する高さ位置にある。外筒(52)と内筒(62)との間には、円筒空間(63)が形成される。円筒空間(63)は、分離空間(51)の一部を構成する。円筒空間(63)では、特に冷媒の旋回流が形成され易い。
【0052】
内筒(62)の内部には、分離空間(51)と吐出管(図示省略)とを連通させる流出路(64)が形成される。吐出管は、冷媒回路に接続される。
【0053】
上蓋(61)、内筒(62)、及び外筒(52)の軸心は互いに略一致している。
図3は、これらの軸心を一点鎖線Lとして表している。
【0054】
〈曲がり管〉
図2〜
図5を参照しながら曲がり管(70)について説明する。曲がり管(70)は、油を含んだ高圧の冷媒を油分離器本体(50)に導入する。曲がり管(70)は、油分離器本体(50)の胴部(53)を周方向に囲むように配置される。曲がり管(70)は、その全体に亘って高さ位置が等しい。言い換えると、本実施形態の曲がり管(70)は、上下方向において傾斜していない。曲がり管(70)は、旋回流に沿った方向に湾曲する。
図5は、旋回流の方向を一点鎖線の矢印Rで表している。曲がり管(70)は、円筒空間(63)に対応する高さ位置にある。曲がり管(70)の内部には、曲がり管(70)に沿って湾曲する内部流路(70a)が形成される。
【0055】
図3及び
図5に示すように、曲がり管(70)は、外壁部(71)と内壁部(72)とを含む。
【0056】
外壁部(71)は、胴部(53)の周方向に沿うように延びる。外壁部(71)は、胴部(53)から該胴部(53)の径方向外方に膨出する。外壁部(71)のうち内部流路(70a)に面する内面は、A断面から視て、前側が開放された略U字状に形成される。ここで、A断面は、曲がり管(70)の管軸方向に直角な断面である。言い換えると、A断面は、
図2の紙面方向に直角な断面である。
【0057】
外壁部(71)と胴部(53)とは、一体に構成される。外壁部(71)は、胴部(53)の上部に一体に形成される。外筒(52)に蓋部材(60)が取り付けられていない状態では、外壁部(71)の内面が外筒(52)の内部に面する。
【0058】
内壁部(72)は、外壁部(71)に沿って延びる。内壁部(72)は、外壁部(71)の径方向内側の開放部分を閉塞する。内壁部(72)のうち内部流路(70a)に面する内面は、A断面視において、上下に延びる平面状に形成される。
【0059】
本実施形態では、外壁部(71)と内壁部(72)とは、別部材で構成される。内壁部(72)と上蓋(61)とは、一体に構成される。より詳細には、内壁部(72)と上蓋(61)と内筒(62)とが一体に構成される。内壁部(72)は、上蓋(61)の外縁寄りの部分から下方に延びる。
【0060】
図5に示すように、曲がり管(70)の流入端は、フランジ部(33)の吐出流路(38)に連通する。内壁部(72)には、流出口(73)が形成される。流出口(73)は、曲がり管(70)の流出端に対応する位置にある。流出口(73)は、本開示の穴に対応する。
【0061】
−油分離器の成型−
油分離器(30)は、主として第1部材と第2部材とで構成される。第1部材は、カバー部(31)、胴部(53)、底部(54)、及び外壁部(71)を含む。第1部材は、鋳型によって成型される鋳造物で構成される。第2部材は、上蓋(61)、内筒(62)、及び内壁部(72)を含む。第2部材は、鋳型によって成型される鋳造物で構成される。
【0062】
−圧縮機の運転動作−
図1を参照しながら圧縮機(10)の運転動作について説明する。
【0063】
電動機(15)が駆動軸(18)を駆動すると、スクリューロータ(22)が回転する。スクリューロータ(22)の回転に伴いゲートロータ(23)が回転する。その結果、圧縮機構(20)では、吸入行程、圧縮行程、及び吐出行程が順に繰り返し行われる。
【0064】
1)吸入行程
圧縮機構(20)では、低圧室(L)に連通するスクリュー溝(24)の容積が拡大する。このことに伴い低圧室(L)の低圧ガスが吸入口を通じてスクリュー溝(24)に吸入される。
【0065】
2)圧縮行程
スクリューロータ(22)がさらに回転すると、スクリュー溝(24)がゲートロータ(23)によって区画され、スクリュー溝(24)内に圧縮室が形成される。ゲートロータ(23)の回転に伴い圧縮室の容積が縮小することで、圧縮室の冷媒が圧縮される。
【0066】
3)吐出行程
スクリューロータ(22)がさらに回転すると、圧縮室が吐出口と連通する。圧縮室の冷媒は吐出口を通じて高圧室(H)に吐出される。
【0067】
以上の3つの行程が順に繰り返し行われることで、圧縮機構(20)から高圧室(H)へ冷媒が周期的に吐出される。
【0068】
−油分離器の作用−
図3及び
図5を参照しながら油分離器の作用について説明する。
【0069】
高圧室(H)に吐出された冷媒は、フランジ部(33)内の高圧空間(S)へ送られ、吐出流路(38)を通じて曲がり管(70)に流入する。曲がり管(70)は、胴部(53)を周方向に囲むように湾曲する。このため、内部流路(70a)を流れる冷媒中に含まれる油に遠心力が作用する。この結果、冷媒中から油が分離する。冷媒から分離した油は外壁部(71)の内面上に移動する。外壁部(71)の内面上では、分離された微細な油が凝集する。
【0070】
曲がり管(70)は、外筒(52)よりも径方向外方に位置する。このため、曲がり管(70)の内部流路(70a)では、分離空間(51)と比べて、油に作用する遠心力が大きくなる。これにより、曲がり管(70)では、油の分離効果を促進できる。
【0071】
曲がり管(70)を流出した冷媒及び油は、流出口(73)を通じて外筒(52)内の分離空間(51)に流入する。曲がり管(70)で凝集した油は、分離空間(51)の底に溜まる。冷媒中に残った微細な油は、分離空間(51)において、遠心力によって冷媒中から分離される。
【0072】
以上のようにして冷媒が分離された冷媒は、内筒(62)の流出路(64)を経由して吐出管に流出する。吐出管を流出した冷媒は、冷媒回路を流れ、冷凍サイクルに利用される。
【0073】
〈カバー部の詳細〉
図6を参照しながら、カバー部(31)の詳細について説明する。カバー本体(32)は、上壁(32a)と、第1側壁(32b)と、第2側壁(32c)と、第3側壁(32d)とを有する。第1側壁(32b)は、カバー本体(32)の右側の壁を構成する。第2側壁(32c)は、カバー本体(32)の左側の壁を構成する。第3側壁(32d)は、カバー本体(32)の後側の壁を構成する。第1側壁(32b)、第2側壁(32c)、及び第3側壁(32d)は、上下方向に延びている。上壁(32a)は、カバー本体(32)の上側の壁を構成する。上壁(32a)は、水平方向に延びている。
【0074】
第1側壁(32b)、第2側壁(32c)、第3側壁(32d)、上壁(32a)、及び仕切壁(34)の間には、吐出空間(36)が形成される。吐出空間(36)は、上下方向に延びている。上下方向は、本開示の第1方向に対応する。
【0075】
吐出空間(36)は、隔壁部(37)によって複数の分割空間(S)に区画される。隔壁部(37)は、第1縦壁(37a)、第2縦壁(37b)、第1横壁(37c)、第2横壁(37d)、第3横壁(37e)、第4横壁(37f)、第5横壁(37g)、第6横壁(37h)を含む。
【0076】
第1縦壁(37a)及び第2縦壁(37b)は、上下方向に延びている。第1縦壁(37a)及び第2縦壁(37b)は、吐出空間(36)を左右方向に仕切っている。左右方向は、第1方向に直交する本開示の第2方向に対応する。第1縦壁(37a)は、第2側壁(32c)よりも第1側壁(32b)に近い。第2縦壁(37b)は、第1側壁(32b)よりも第2側壁(32c)に近い。第1縦壁(37a)及び第2縦壁(37b)は、本開示の第1壁に対応する。
【0077】
第1横壁(37c)、第2横壁(37d)、第3横壁(37e)、第4横壁(37f)、第5横壁(37g)、及び第6横壁(37h)は、水平方向に延びている。第1横壁(37c)、第2横壁(37d)、第3横壁(37e)、第4横壁(37f)、第5横壁(37g)、及び第6横壁(37h)は、吐出空間(36)を上下方向に仕切っている。
【0078】
具体的には、第1側壁(32b)と第1縦壁(37a)の間には、第1横壁(37c)及び第2横壁(37d)が設けられる。第1横壁(37c)は、第2横壁(37d)よりも上方に位置する。第1縦壁(37a)と第2縦壁(37b)との間には、第3横壁(37e)及び第4横壁(37f)が設けられる。第3横壁(37e)は、第4横壁(37f)よりも上方に位置する。第2縦壁(37b)と第2側壁(32c)との間には、第5横壁(37g)及び第6横壁(37h)が設けられる。第5横壁(37g)は、第6横壁(37h)よりも上方に位置する。
【0079】
第1側壁(32b)と第1縦壁(37a)と上壁(32a)と第1横壁(37c)との間には、第1分割空間(S1)が形成される。第1側壁(32b)と第1縦壁(37a)と第1横壁(37c)と第2横壁(37d)との間には、第2分割空間(S2)が形成される。第1側壁(32b)と第1縦壁(37a)と第2横壁(37d)と仕切壁(34)との間には、第3分割空間(S3)が形成される。
【0080】
第1縦壁(37a)と第2縦壁(37b)と上壁(32a)と第3横壁(37e)との間には、第4分割空間(S4)が形成される。第1縦壁(37a)と第2縦壁(37b)と第3横壁(37e)と第4横壁(37f)との間には、第5分割空間(S5)が形成される。第1縦壁(37a)と第2縦壁(37b)と第4横壁(37f)と仕切壁(34)との間には、第6分割空間(S6)が形成される。
【0081】
第2縦壁(37b)と第2側壁(32c)と上壁(32a)と第5横壁(37g)との間には、上述した吐出流路(38)が形成される。第2縦壁(37b)と第2側壁(32c)と第5横壁(37g)と第6横壁(37h)との間には、第7分割空間(S7)が形成される。第2縦壁(37b)と第2側壁(32c)と第6横壁(37h)と仕切壁(34)との間には、第8分割空間(S8)が形成される。
【0082】
第7分割空間(S7)は、上述したスライド部材と、該スライド部材の進退方向に重なる。スライド部材の方向は、カバー部(31)の前後方向に対応する。このため、スライド部材が後方に移動すると、スライド部材の後部が第7分割空間(S7)の内部に位置する。よって、スライド部材とカバー部(31)とが干渉することがない。このように、吐出空間(36)は、圧縮機(10)の部品とカバー部(31)とが干渉することを抑制するための空間として機能する。第7分割空間(S)の内壁には、スライド部材の後端との干渉を抑制するための切り欠きを形成してもよい。
【0083】
なお、第1から第8までの分割空間(S1〜S8)は、便宜上、分割空間(S)と述べる場合もある。これらの分割空間(S)は、略直方体形状に形成される。
【0084】
−分割空間の寸法の例−
図6〜
図8を参照しながら各分割空間(S)の寸法関係について説明する。
【0085】
本実施形態では、複数(8つ)の分割空間(S)のうち全ての分割空間(S)の形状が異なる。具体的には、各分割空間(S)は、
図7に示す高さH、幅W、及び奥行き長さDが、
図8に示すように設定される。ここで、高さHは、分割空間(S)の上下方向の長さを示す。幅Wは、分割空間(S)の左右方向の長さを示す。奥行き長さDは、分割空間(S)の前後方向の奥行き長さを示す。
【0086】
本実施形態では、全ての分割空間(S)の高さHが互いに異なる。
【0087】
本実施形態では、上下に並ぶ3つの分割空間(S)の幅Wは互いに等しい。詳細には、第1〜第3分割空間(S1〜S3)の幅Wが互いに等しい。第4〜第6分割空間(S4〜S6)の幅Wが互いに等しい。第7及び第8分割空間(S8)の幅Wが互いに等しい。
【0088】
第1〜第3分割空間(S1〜S3)の幅Wと、第4〜第6分割空間(S4〜S6)の幅Wと、第7及び第8分割空間(S8)の幅Wとは、互いに異なる。言い換えると、少なくとも3つの分割空間(S)の幅Wが異なる。詳細には、第2方向に仕切られる分割空間(S)の幅が互いに異なる。
【0089】
本実施形態では、全ての分割空間(S)の奥行き長さDは互いに等しい。
【0090】
−実施形態の効果−
仮に吐出空間(36)が1つの空間である場合、圧縮機構(20)の吐出脈動に起因して吐出空間(36)の音響共鳴周波数が低くなり易い。このため、油分離器(30)及び圧縮機(10)が加振され、圧縮機ユニット(U)の振動及び騒音が増大してしまう。これに対し、本実施形態では、吐出空間(36)を複数の分割空間(S)に仕切ることで、各分割空間(S)における音響共鳴周波数を高くできる。これにより、吐出脈動に起因して油分離器(30)が加振されることを抑制でき、圧縮機ユニット(U)の振動及び騒音の増大を抑制できる。
【0091】
吐出空間(36)が上下方向に延びたカバー部(31)は、吐出脈動に起因して幅方向に加振され易い。これに対し、本実施形態では、吐出空間(36)が、上下方向に延びる縦壁(37a,37b)によって左右方向に仕切られる。これにより、分割空間(S)の幅を短くできるので、分割空間(S)における幅方向の音響共鳴周波数を高くできる。この結果、油分離器(30)が幅方向に加振されることを抑制できる。
【0092】
縦壁(37a,37b)は上下方向に直線状に延びるため、加工も容易である。加えて、縦壁(37a,37b)により、カバー部(31)の長手方向の剛性を高めることができる。さらに、横壁(37c,37d,37e,37f)を形成することで、カバー部(31)の左右方向の剛性を高めることができる。
【0093】
複数の分割空間(S)の形状が全く同じである場合、これらの分割空間(S)の共鳴モードが励起され、油分離器(30)の加振力が増大してしまう。これに対し、本実施形態では、複数の分割空間(S)の形状が互いに異なるので、これらの分割空間(S)の共鳴モードの励起を抑制できる。この結果、共鳴モードの励起に起因して油分離器(30)の加振力が増大することを抑制できる。特に、本実施形態では、全ての分割空間(S)の形状が互いに異なる。このため、共鳴モードの励起を十分に抑制できる。
【0094】
複数の分割空間(S)は、互いに幅Wが異なる。このため、特に油分離器(30)の揺れの原因となり易い幅方向における共鳴モードの励起を抑制できる。
【0095】
複数の分割空間(S)は、互いに高さHが異なる。このため、高さ方向における共鳴モードの励起を抑制できる。
【0096】
複数の分割空間(S)は、互いに奥行き長さDが等しい。このため、第3側壁(32d)の内面を平坦に形成でき、カバー部(31)の構造を簡素化できる。第3側壁(32d)は、カバー部(31)を形成する壁のうち最も面積が広い。第3側壁(32d)を平坦とすることで、カバー部(31)を成型するための鋳型を効果的に簡素化できる。
【0097】
複数の分割空間(S)の奥行き長さDを等しくすると、各分割空間(S)の幅W及び高さHの2つのパラメータに基づいて、各分割空間(S)の共振点を容易に調整できる。これにより、各分割空間(S)において共鳴モードの励起を抑制できる。
【0098】
吐出空間(36)の全体の奥行き長さは、吐出空間(36)の全体の高さ及び全体の幅よりも短い。このため、複数の分割空間(S)の奥行き長さDを異なる長さにしたとしても、油分離器(30)の加振力を抑制できる効果は低い。逆にいうと、吐出空間(36)の全体の高さ及び幅は、吐出空間(36)の全体の奥行き長さより長い。このため、複数の分割空間(S)の高さHを異なる長さとすることで、油分離器(30)の加振力を効果的に抑制できる。複数の分割空間(S)の幅Wを異なる長さとすることで、油分離器(30)の加振力を効果的に抑制できる。
【0099】
《実施形態の変形例》
図9に示す変形例は、上述した実施形態とカバー部(31)の構成が異なる。本例のカバー部(31)は、上述した実施形態よりも小型の圧縮機(10)に適用される。
【0100】
カバー部(31)の隔壁部(37)は、第1縦壁(37a)と、第1横壁(37c)と、第2横壁(37d)と、第3横壁(37e)と、第4横壁(37f)とを有する。第1縦壁(37a)は、吐出空間(36)のうち左右方向の中間部に設けられる。第1縦壁(37a)は、上下方向に延び、吐出空間(36)を左右方向に仕切っている。
【0101】
第1側壁(32b)と第1縦壁(37a)との間には、上から下に向かって順に、第1分割空間(S1)、第2分割空間(S2)、及び第3分割空間(S3)が形成される。第1縦壁(37a)と第2側壁(32c)との間には、上から下に向かって順に、吐出流路(38)、第4分割空間(S4)、第5分割空間(S5)が形成される。
【0102】
変形例においても、全ての分割空間(S)の形状が互いに異なる。具体的には、全ての分割空間(S)の高さHが、互いに異なる。第1分割空間(S1)、第2分割空間(S2)、及び第3分割空間(S3)の幅Wは、互いに等しい。第4分割空間(S4)及び第5分割空間(S5)の幅Wは、互いに等しい。第1分割空間(S1)、第2分割空間(S2)、及び第3分割空間(S3)の幅Wと、第4分割空間(S4)及び第5分割空間(S5)の幅Wは、互いに異なる。全ての分割空間(S)の奥行き長さDは、互いに等しい。
【0103】
変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0104】
《その他の実施形態》
隔壁部(37)は、内部空間(36)を少なくとも2つ以上に仕切る構成であればよい。
【0105】
複数の空間(S)は、2つの空間(S)のみの形状が異なる構成としてもよい。この場合、2つの空間(S)では、高さH、幅W、及び奥行き長さDの少なくとも一つが異なる。
【0106】
空間(S)の形状は、直方体状に限られず、円柱状、卵状などであってもよい。このように空間(S)の形状が直方体でない場合、その最大高さを本開示の高さHとし、その最大幅を本開示の幅Wとし、その最大奥行き長さを本開示の奥行き長さDとする。
【0107】
複数の空間(S)の形状を異ならせる場合、これらの空間(S)を相似関係としてもよい。
【0108】
曲がり管(70)は、流入口(吐出流路(38))から流出口(73)に亘って高さ位置が徐々に変化してもよい。
【0109】
圧縮機(10)は、2つのスクリューロータを有するツインスクリュー圧縮機であってもよい。圧縮機(10)は、1つのスクリューロータと、2つのゲートロータを有する2ゲート型のシングルスクリュー圧縮機であってもよい。
【0110】
圧縮機(10)は、スクリュー式以外にも、ロータリ式、スイング式、スクロール式、ターボ式などであってもよい。
【0111】
冷凍装置は、室内の空調を行う空気調和装置、庫内の空気を冷却する冷却器、ヒートポンプ式の給湯器などであってもよい。
【0112】
油分離器(30)は、遠心分離式以外の他の方式であってもよい。