(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1関係式は、前記ファン(31)のファンモータ(31b)の回転数毎に測定した前記ファン(31)の風量と前記前後差圧との関係を示す曲線の極値を通る曲線で表される、
請求項2に記載のファンユニット(30)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1)全体構成
図1は、本開示の一実施形態に係るファンユニットを搭載した空気処理システム10の構成図である。
図1において、空気処理システム10は、第1ユニット20と、複数の第2ユニット30と、ダクト40と、コントローラ50とを備えている。本願では、説明の便宜上、ファンユニットを第2ユニットと呼ぶ。
【0018】
第1ユニット20は、第1ファン21を有する。各第2ユニット30は、第2ファン31を有する。各第2ファン31は、空気を第2ユニット30から対象空間100に供給する。
【0019】
対象空間100は、例えば、建物内の部屋である。部屋は、例えば、床、天井及び壁によって空気の移動が制限された空間である。1つまたは複数の対象空間100に対して、複数の第2ユニット30が配設される。
【0020】
図1には、複数の第2ユニット30を備える空気処理システム10の代表例として、2つの第2ユニット30を備える空気処理システム10が1つの対象空間100に対して配設されている例が示されている。
【0021】
第2ユニット30の個数は、3以上であってもよく、適宜設定されるものである。第2ユニット30が配設される対象空間100は、2以上であってもよい。
【0022】
ダクト40は、第1ユニット20から第1ファン21により送出される第1空気SAを、複数の第2ユニット30に分配する。ダクト40は、主管41と、主管41から分岐した枝管42とを含んでいる。
【0023】
図1では、主管41が、第1ユニット20の外に配置されている場合が示されているが、主管41は、第1ユニット20の中に配置されてもよく、また第1ユニット20の中から第1ユニット20の外まで延びるように配置されてもよい。
【0024】
主管41は、第1ユニット20の中に配置されている場合には、第1ユニット20のケーシング26の一部が主管41として機能する場合も含む。
図1では、主管41の入口41aは、第1ユニット20に接続されている例が示されている。
【0025】
第1ファン21は、第1ユニット20内に配置されている。ここでは、第1ファン21から吹出される空気は、全てダクト40に流れ込むように構成されている。
【0026】
ダクト40の主管41の出口41bは、枝管42の入口42aに接続されている。主管41から枝管42に分岐させる構成として、分岐チャンバを用いた構成であってもよい。
【0027】
第2ユニット30のケーシング33は、吸込口33aと吹出口33bとを有し、枝管42の複数の出口42bは、複数の第2ユニット30の吸込口33aに接続されている。
【0028】
各第2ユニット30と、対象空間100とは、通風路81により繋がっている。通風路81の入口81aが第2ユニット30の吹出口33bに接続されている。各第2ファン31は、第2ユニット30の中で、ダクト40の出口42bから通風路81の入口81aに向う気流を発生させる。したがって、各第2ファン31は、枝管42の出口42bから第1空気SAを吸引している。
【0029】
各第2ファン31は、モータの回転数を変更することにより各第2ユニット30の吸込口33aと吹出口33bとの空気の圧力差である前後差圧を変更することができる。各第2ファン31は、ダクト40の静圧が一定であるとすると、回転数を大きくすることにより、各第2ユニット30の前後差圧を大きくすることができる。
【0030】
第2ユニット30の前後差圧が大きくなると、通風路81を流れる第1空気SAの空気量が多くなる。このように流れる空気量が変わることによって、各通風路81の出口81bから対象空間100に吹出される給気風量が変わる。
【0031】
コントローラ50は、第1コントローラ51と複数の第2コントローラ52とを含んでいる。第1コントローラ51と複数の第2コントローラ52とは互いに接続されている。
【0032】
第1コントローラ51は、第1ファン21のファンモータ21bの回転数を制御する。第1ファン21の回転数が増加すると、第1ファン21の送風量が多くなる。
【0033】
1つの第2ユニット30に対して、1つの第2コントローラ52が設けられている。各第2コントローラ52は、対応する第2ファン31の風量を制御する。各第2コントローラ52は、第1コントローラ51から受信する風量目標値を記憶する。
【0034】
各第2コントローラ52は、風量目標値に対して給気風量が不足していれば第2ファン31の回転数を増加させる。逆に、第2コントローラ52は、風量目標値に対して給気風量が過剰であれば、第2ファン31の回転数を減少させる。
【0035】
コントローラ50は、複数の第2ファン31により対象空間100に供給される空気の空気量の情報を得る。空気量の情報は、例えば、1秒間当たり、または1分間当たりに対象空間100に供給すべき必要給気風量である。
【0036】
各第2コントローラ52は、空気量の情報を第1コントローラ51に出力する。第1コントローラ51は、得られた空気量の情報を基に、第1ファン21に要求すべき出力を決定する。
【0037】
(2)詳細構成
(2−1)第1ユニット20
第1ユニット20は、第1ファン21、熱交換器22、第1風量検出手段23、温度センサ24及び水量調整弁25を有している。
【0038】
(2−1−1)熱交換器22
熱交換器22には、熱源ユニット60から熱媒体として例えば冷水または温水が供給される。熱交換器22に供給される熱媒体は、冷水または温水以外のもの、例えばブラインであってもよい。
【0039】
(2−1−2)第1風量検出手段23
第1風量検出手段23には、例えば、風量センサ、風速センサまたは差圧センサを用いることができる。本実施形態では、第1風量検出手段23は、第1ファン21が送風する風量を検出する。
【0040】
第1風量検出手段23は、第1コントローラ51に接続されている。第1風量検出手段23が検出した風量値は、第1風量検出手段23から第1コントローラ51に送信される。
【0041】
第1風量検出手段23が検出した風量は、ダクト40の主管41を流れる風量であり、複数の第2ユニット30から対象空間100に供給される給気風量の総量でもある。
【0042】
(2−1−3)温度センサ24
温度センサ24は、第1ファン21からダクト40に送られる第1空気SAの温度を検出する。温度センサ24は、第1コントローラ51に接続されている。温度センサ24が検出した値は、第1コントローラ51に入力される。
【0043】
(2−1−4)水量調整弁25
第1ユニット20は、通風路82を介して、対象空間100に繋がっている。通風路82を通って対象空間100から戻ってきた第2空気RAは、第1ファン21により、熱交換器22を通ってダクト40に送り出される。
【0044】
対象空間100から戻ってきたこの第2空気RAは、対象空間100の中に在った空気である。熱交換器22を通るときに、戻ってきた第2空気RAは、熱交換器22を流れる冷水または温水と熱交換して調和空気になる。
【0045】
熱交換器22で熱交換をしてダクト40に送り出される第1空気SAに与えられる熱量は、水量調整弁25によって調整される。水量調整弁25の開度は、第1コントローラ51により制御される。水量調整弁25の開度が大きくなれば、熱交換器22に流れる水量が多くなり、熱交換器22と第1空気SAとの間で単位時間あたりに交換される熱量が多くなる。逆に、水量調整弁25の開度が小さくなれば、熱交換器22に流れる水量が少なくなり、熱交換器22と第1空気SAとの間の単位時間あたりの熱交換量が少なくなる。
【0046】
(2−2)第2ユニット30
第2ユニット30は、第2ファン31と、第2ファン31を回転させるファンモータ31bと、第2風量検出手段32とを有している。
【0047】
各ファンモータ31bは、対応する1つの第2コントローラ52に接続されており、ファンモータ31bから回転数が第2コントローラ52に送られる。各第2風量検出手段32は、対応する1つの第2コントローラ52に接続されている。
【0048】
第2風量検出手段32には、例えば、風量センサ、風速センサまたは差圧センサを用いることができる。本実施形態では、第2風量検出手段32は、第2ファン31が送風する風量を検出する。
【0049】
第2風量検出手段32が検出した風量値は、第2コントローラ52に入力される。第2風量検出手段32が検出した風量は、通風路81を流れる風量であり、各第2ユニット30から対象空間100に供給される給気風量でもある。
【0050】
(2−3)リモートセンサ70
複数のリモートセンサ70は、温度センサの機能を有している。各リモートセンサ70は、対応する第2コントローラ52に、対象空間100の第2空気RAの温度を示すデータを送信できるように構成されている。
【0051】
(2−4)コントローラ50
図2は、コントローラ50の構成を説明するためのブロック図である。
図2において、コントローラ50は、第1コントローラ51と複数の第2コントローラ52とを含んでいる。第1コントローラ51と複数の第2コントローラ52とは互いに接続されている。
【0052】
(2−4−1)第1コントローラ51
第1コントローラ51は、プロセッサ51aと、メモリ51bとを含む。プロセッサ51aは、メモリ51bに記憶されている第1ファン21の風量制御プログラムを読み取り、第1ファン21、各第2コントローラ52に必要な指令を出力する。
【0053】
メモリ51bは、第1ファン21の風量制御プログラムの他、第1風量検出手段23および温度センサ24の検出値を随時記憶する。
【0054】
プロセッサ51aは、メモリ51bに記憶された第1風量検出手段23および温度センサ24の検出値を読み取り、第1ファン21の風量目標値(対象空間100に供給すべき目標風量の総量)を演算する。
【0055】
上記の記載は、一例であって、上記記載内容に限定されるものではない。
【0056】
(2−4−2)第2コントローラ52
第2コントローラ52は、プロセッサ52aと、メモリ52bとを含む。プロセッサ52aは、メモリ52bに記憶されている第2ファン31の風量制御プログラムを読み取り、第2ファン31に必要な指令を出力する。
【0057】
メモリ52bは、第2ファン31の風量制御プログラムの他、第1コントローラ51から出力される風量目標値、第2風量検出手段32の検出値を随時記憶する。
【0058】
プロセッサ52aは、メモリ52bに記憶された風量目標値および第2風量検出手段32の検出値を読み取り、第2ファン31の回転数目標値を演算する。
【0059】
上記の記載は、一例であって、上記記載内容に限定されるものではない。
【0060】
(3)空気処理システム10の動作の概要
各第2コントローラ52は、それぞれに接続されているリモートセンサ70から対象空間100の温度測定値を受信する。各第2コントローラ52は、設定温度を示すデータを温度設定値として保持している。
【0061】
各第2コントローラ52は温度設定値と温度測定値を第1コントローラ51に送信する。第1コントローラ51は、温度設定値と温度測定値に基づき、各第2ユニット30の風量目標値を決定する。第1コントローラ51は、風量目標値の値を各第2コントローラ52に送信する。
【0062】
第1コントローラ51は、対象空間100に供給すべき目標風量の総量に応じて、各第2ファン31の風量目標値を決定して各第2コントローラ52に送信する。各第2ユニット30では、対応する第2コントローラ52によって第2ファン31の回転数が調整される。複数の第2ファン31の回転数の調整は互いに独立して行われる。
【0063】
各第2コントローラ52は、給気風量を風量目標値に一致させるべく、各第2ファン31の回転数を制御する。複数の第2コントローラ52は、互いに独立して、複数の第2ファン31の回転数を制御する。各第2コントローラ52は、風量目標値に対して、第2風量検出手段32が検出した風量が小さければ、各第2ファン31の回転数を増加させる。各第2コントローラ52は、風量目標値に対して、第2風量検出手段32が検出した風量が大きれば、各第2ファン31の回転数を減少させる。
【0064】
具体的な風量制御については、「(5)風量制御」の節で述べる。
【0065】
(4)ダクト抵抗について
(4−1)ダクト抵抗の特性
第1ユニット20と第2ユニット30とを接続するダクト40の長さは、第2ユニット30の吹出口の位置によって異なり、また、第1ユニット20と第2ユニット30とが据え付けられる物件によっても異なる。
【0066】
ダクト40内を流れる空気とダクト40の内面との間には抵抗(以後、ダクト抵抗という。)があり、ダクト40内を流れる空気の静圧は摩擦により減少する。ダクト40が長いほど、ダクト抵抗は大きくなる。
【0067】
図3は、ダクト長さをパラメータとして、風量とダクト抵抗との関係を示したグラフである。
図3において、ダクト抵抗は、ダクト40内を流れる空気の風量に対して非線形に変化している。したがって、風量はファンの回転数に比例しない。それゆえ、目標風量値を実現する回転数は比例的に計算できない。
【0068】
(4−2)第2ユニット30の送風特性
第2ユニット30の吹出口における静圧と吸込口における静圧の差を、第2ユニット30の前後差圧という。
【0069】
図4は、ファンモータ31bの回転数を1[r/m]変更したときの風量変化量を、第2ユニット30の前後差圧を変えて測定した結果を示すグラフである。変更前のファンモータ31bの回転数は100[r/m]である。
【0070】
図3および
図4において、温度調節をするために風量を変化させると、ダクト抵抗が変動するので、第2ユニット30の前後差圧が変化する。ファン回転数を1[r/m]変えたときに変化する風量がそのときの状況(前後差圧)によって異なるので、調整が困難である。それゆえ、ダクト抵抗の変化分を考慮してファン回転数を調整しなければ、目標風量に到達しない可能性がある。
【0071】
例えば、
図5に示すように、風量を10[m
3/min]から15[m
3/min]に変更する場合でも、ダクト抵抗が異なれば同じ風量変化量であっても、必要となるファンモータ31bの回転数変更量は異なる。なぜなら、風量変化によってダクト抵抗も変化するからである。したがって、ダクト抵抗の変化を考慮した風量調整機能が必要となる。
【0072】
また、
図1のように、主管41から分岐した枝管42がそれぞれ第2ユニット30に接続されている場合には、第2ユニット30の前後差圧が、他の第2ユニット30の風量変化や、第1ユニット20の空気吐出圧の影響を受ける。
【0073】
また、
図6に示すように、他の第2ユニット30の風量や、第1ユニット20からの空気吐出圧が変化して、前後差圧が
図6の点線ラインまで増加した場合、ファンモータ31bの回転数を維持しただけでは、風量は10[m
3/min]から5[m
3/min]まで低下するので、当初の風量10[m
3/min]を維持するためには、ファンモータ31bの回転数を増加させなければならない。
【0074】
一方、前後差圧が
図6の2点鎖線ラインまで低下した場合、ファンモータ31bの回転数を維持し続けると、風量は10[m
3/min]から15[m
3/min]まで増加するので、当初の風量10[m
3/min]を維持するためには、ファンモータ31bの回転数を減少させなければならない。
【0075】
したがって、第2ユニット30は、前後差圧の変化を考慮した風量維持機能も必要となる。
【0076】
(5)風量制御
上記の通り、第2ユニット30の風量制御には、ダクト抵抗、他の第2ユニット30の風量、および第1ユニット20の空気吐出圧を考慮した風量維持機能が必要であることは分かった。しかしながら、第1ユニット20および第2ユニット30が据え付けられる物件、または第2ユニット30の据え付け位置によってダクト長さは変わり、そのダクト抵抗もダクト長さ、そのダクト内を流れる空気の風量によって変動する。それゆえ、従来の試運転調整によってファンモータ31bの回転数と風量との関係をデータ化することは困難である。
【0077】
そこで、出願人は、ダクト抵抗の変化は前後差圧となって現れることに着目し、第2ユニット30の風量、風速または前後差圧の情報を取得して、ファンモータ31bの回転数および目標風量値を加えた変数を用いる関数によって、ファンモータ31bの回転数目標値またはファンモータ31bの回転数変更量を算出することを見出した。
【0078】
これによって、事前の試験工数が低減され、およびダクト接続時の試運転が不要となる。以下、風量制御ロジックについて説明する。
【0079】
(5−1)前後差圧△Pの導出
図7は、前後差圧△Pをパラメータとして、風速Vとファンモータ31bの回転数Nとの関係を示すグラフである。
図7において、前後差圧△Pが同じ場合、ファンモータ31bの回転数Nは、係数aおよび定数項bを用いて、風速Vの一次式で表すことができる。
N=a×V+b [1]
図7に示す通り、前後差圧一定の場合、少なくとも3点の値を得る試験を実施することにより、[1]式を導き出すことができる。
【0080】
また、
図8は、
図7から導き出した前後差圧△Pと係数aおよび定数項bとの関係を示すグラフである。
図8において、前後差圧△Pと係数aおよび定数項bとの関係は、以下の式で表すことができる。
a=m×△P+n [2]
b=p×△P+q [3]
上記[1]、[2]および[3]式から、回転数N、風速V、前後差圧△Pの関係は、次式で表される。
N=(m×△P+n)×V+(p×△P+q) [4]
[4]式から、さらに次式が導き出される。
△P=(N−n×V−q)/(m×V+p) [5]
[5]式は、第2ファン31のファンモータ31bが回転数Nで運転したときの風速Vを計測すれば前後差圧△Pを計算することができることを意味している。
【0081】
したがって、ファンモータ31bの回転数Nと、第2ファン31の風速Vまたは風量Qと、前後差圧△Pとは、それらの内の2つの値から残り1つの値が導き出される関係を有するパラメータである。
【0082】
(5−2)ダクト抵抗変化を考慮した風量調整機能
上記[5]式とファンの理論式とから、回転数目標値Nyを算出する計算式を導き出すことができる。現在の前後差圧△Px、現在の風量Qx、前後差圧目標値△Pyおよび風量目標値Qyの関係は、ファンの理論式より、
△Py/△Px=(Qy/Qx)
2 [6]
となる。
【0083】
上記[5]式および[6]式より、
(Ny−n×Vy−q)/(m×Vy+p)=(Qy/Qx)
2×△Px [7]
となる。また、Vy=(Qy/Qx)×Vxであるので、
Ny=(Qy/Qx)
2×△Px×{m×(Qy/Qx)×Vx+p}+n×(Qy/Qx)×Vx+q [8]
となる。以下、この[8]式を第1関数とよぶ。
【0084】
第1関数の技術的意義を、
図9を参照しながら説明する。
図9は、前後差圧△Pをパラメータとして、風量とファンモータ31bの回転数との関係を示すグラフである。
図9において、ダクト抵抗の変化は前後差圧△Pの変化として現れる。
【0085】
例えば、前後差圧50[Pa]で風量10[m
3/min]を維持するためのファンモータ31bの回転数は920[r/m]である。仮に、風量に関係なくダクト抵抗が一定であるならば、風量を15[m
3/min]に変更する場合、単に回転数を1100[r/m]にすればよい。
【0086】
しかしながら、風量を変化させることによってダクト抵抗が変化する。
図9によれば、風量を15[m
3/min]に変更することによって、ダクト抵抗の変化に起因して前後差圧が109.9[Pa]まで増加する。前後差圧が109.9[Pa]のときに風量15[m
3/min]を維持するためには、ファンモータ31bの回転数を1348[r/m]に維持する必要がある。
【0087】
したがって、ダクト抵抗の変化を考慮した風量調整機能が必要であり、第1関数(上記[8]式)の回転数Nyはダクト抵抗の変化を考慮した回転数である。
【0088】
第2コントローラ52は、第1コントローラ51からの風量指示値である風量目標値Qyが変更されたときは、第1関数を用いて、第2ファン31のファンモータ31bの回転数目標値を計算する。
【0089】
(5−3)前後差圧の変化を考慮した風量調整機能
ファンモータ31bの回転数が回転数目標値に到達した後も前後差圧△Pが変動しなければ、その回転数が維持されるが、他の第2ユニット30の風量や、第1ユニット20の空気吐出圧が変化した場合に、前後差圧△Pが変動する。
【0090】
図10は、風速とファンモータ31bの回転数との関係を示すグラフである。
図10において、例えば、前後差圧50[Pa]で風速目標値Vyを維持するために必要なファンモータ31bの回転数は、980[r/m]である。
【0091】
ここで、前後差圧△Pが
図10の点線ラインまで増加した場合、ファンモータ31bの回転数980[r/m]を維持しただけでは、風速Vxまで低下するので風量が不足する。
【0092】
風量目標値を維持するためには、風速をVxからVyまで戻す必要があり、ファンモータ31bの回転数を200r/m増加させて1180[r/m]にする必要がある。
【0093】
このファンモータ31bの回転数変更量△Nは、[2]式および[4]式から、
△N=a×(Vy−Vx) [9]
となる。以下、この[9]式を第2関数とよぶ。
【0094】
第2関数が用いられる場面は、風量目標値Qyに変更がないが、前後差圧△Pの変動でファンモータ31bの回転数の変更が必要なときの回転数変更量を計算するときである。
【0095】
図11は、風量制御のフローチャートである。以下、
図11を参照しながら、風量制御について説明する。
【0096】
(ステップS1)
先ず、第2コントローラ52は、ステップS1において、第1コントローラ51から風量目標値Qyを受信したか否かを判定する。第2コントローラ52は、風量目標値Qyを受信したときにステップS2へ進む。また、第2コントローラ52は、風量目標値Qyを受信していないときにステップS6へ進む。
【0097】
(ステップS2)
次に、第2コントローラ52は、ステップS2において、風量目標値Qyを実現する風速目標値Vyを算出する。
【0098】
(ステップS3)
次に、第2コントローラ52は、ステップS3において、風速目標値VyをステップS2で算出した値に更新する。
【0099】
(ステップS4)
次に、第2コントローラ52は、ステップS4において、ステップS3で更新された風速目標値Vyを実現するファンモータ31bの回転数目標値Nyを、第1関数を用いて算出する。
【0100】
(ステップS5)
次に、第2コントローラ52は、ステップS5において、ファンモータ31bの回転数目標値をステップS4で計算された値Nyへ更新する。第2コントローラ52は、回転数目標値をNyへ更新した後、ファンモータ31bの回転数が目標値になるように制御する。
【0101】
(ステップS6)
次に、第2コントローラ52は、ステップS6において、第2風量検出手段32の検出値を現在の風速Vxとして取得する。
【0102】
(ステップS7)
次に、第2コントローラ52は、ステップS7において、風速目標値Vyと現在の風速Vxとの差を算出する。
【0103】
(ステップS8)
次に、第2コントローラ52は、ステップS8において、前後差圧△Pを算出する。
【0104】
(ステップS9)
次に、第2コントローラ52は、ステップS9において、制御パラメータとしての係数aを算出する。
【0105】
(ステップS10)
次に、第2コントローラ52は、ステップS10において、ステップS7で算出した風速目標値Vyと現在の風速Vxとの差と、ステップS9で算出した係数aとを第2関数に適用して回転数変更量△Nを算出する。
【0106】
(ステップS11)
次に、第2コントローラ52は、ステップS11において、ステップS10で算出した回転数変更量△Nに基づき回転数目標値Nyを算出する。
【0107】
(ステップS12)
次に、第2コントローラ52は、ステップS12において、回転数をステップS11で算出した回転数目標値Nyへ更新する。そして、第2コントローラ52は、ステップS1へ戻る。
【0108】
上記の通り、第1コントローラ51から風量目標値の指示があるときはステップS1からステップS5までの第1プログラムを実行し、第1コントローラ51から風量目標値の指示がないときはステップS6からステップS12までの第2プログラムを実行する。
【0109】
第1プログラムは第1関数を用いて回転数目標値を算出するプログラムであり、第2プログラムは第2関数を用いて回転数変更量を算出するプログラムである。
【0110】
また、第2関数を用いて回転数目標値Nyを算出することもでき、且つ第2コントローラ52は第1プログラムと第2プログラムとを切換可能であるので、第2ユニット30では、新たな風量目標値Qyまたは風速目標値Vyを取得した場合でも、第1関数を用いずに、第2関数で回転数変更量△Nを演算しながら回転数を制御することができる。
【0111】
(5−4)サージング検知機能
(5−4−1)サージングの発生要因
図12は、第2ファン31のファンモータ31bの回転数Nをパラメータとする、風量Qと前後差圧△Pとの関係を表すグラフである。
図12において、横軸が風量Q、縦軸が前後差圧△Pを表している。
【0112】
図12に示すように、第2ユニット30において、第2ファン31のファンモータ31bの回転数Nを一定に維持した状態で、風量Qが変化すると、前後差圧△Pは上昇から下降に転じる1つの極値を有することがわかる。以後、極値を示す点を極値点という。
【0113】
この極値点における風量は、第2ユニット30に接続されているダクト40の抵抗に拮抗しているので、そこから風量が下がるとダクト40の抵抗が下がる。そのため、今度は風量が極値点よりも右側に振れ、風量が増える。その結果、ダクト40の抵抗が増加し、空気を押し返す。このように、空気の挙動が繰り返される状態をサージングという。
【0114】
サージングによって、周期的な圧力変動が起こり、機器に悪影響を及ぼす音、振動を招来する。通常、ファンは、そのような風量およびその風量近傍を避けた使われ方がなされるが、本実施形態に係る空気処理システム10では、第2ユニット30が、第1ユニット20の吐出圧、他の第2ユニット30の風量の増減によって前後差圧が変動するため、
図12に示す極値に意図せず到達する可能性がある。
【0115】
(5−4−2)サージングの判定方法
図13は、
図12に表された各回転数における極値点を通る曲線を描いたグラフである。
図12において、風量が極値点よりも左側に振れたときにサージングが発生する。したがって、風量と前後差圧との組合せが、
図13の縦軸と曲線とで囲まれた領域(以後、サージング発生領域という)の外側にあれば、サージングは発生しない。
図13に記載の曲線を式で表すと、
f(Q)=r×Q
2+s×Q [10]
である。rおよびsは、実験データにより決定することができる。
【0116】
(5−4−2−1)現在の風量Qxによるサージングの判定
したがって、上記[10]式に現在の風量Qxを代入して算出したf(Qx)は、風量Qxのときにサージングを起こし得る前後差圧に相当する。
【0117】
仮に、現在の前後差圧△Pxがサージ発生領域にあるならば、△Px−f(Qx)≧0となる。逆に、現在の前後差圧△Pxがサージ発生領域の外側にあるならば、△Px−f(Qx)<0となる。
【0118】
(5−4−2−2)風量目標値Qyによるサージングの予測
例えば、第2コントローラ52が、第1コントローラ51から風量目標値Qyの指示信号を受信すると、第2コントローラ52は、[6]式:△Py/△Px=(Qy/Qx)
2 に風量目標値Qy、現在の前後差圧△Pxおよび風量Qxを代入して、前後差圧目標値△Pyを算出する。さらに、上記[10]式に風量目標値Qyを代入してf(Qy)を算出する。
【0119】
仮に、前後差圧目標値△Pyがサージ発生領域にあるならば、△Py−f(Qy)≧0となる。逆に、前後差圧目標値△Pyがサージ発生領域の外側にあるならば、△Py−f(Qy)<0となる。
【0120】
したがって、風量目標値Qyがサージングを招来するか否かは、△Py−f(Qy)≧0であるか否かで判断することができる。
【0121】
(5−4−3)サージング判定制御
図14は、第2コントローラ52がサージングの発生を判定してサージングを解消するサージング判定制御のフローチャートである。
図14において、第2コントローラ52は、ステップS21からステップS28までの制御フローを、
図11のステップS1からステップS12までの制御フローと並行して行っている。
【0122】
(ステップS21)
第2コントローラ52は、ステップS21において、現在のファンモータ31bの回転数Nxを取得する。
【0123】
(ステップS22)
次に、第2コントローラ52は、ステップS22において、第2風量検出手段32の検出値を現在の風速Vxとして取得する。
【0124】
(ステップS23)
次に、第2コントローラ52は、ステップS23において、現在の風量Qxを算出する。風量Qxは、風速Vxから算出することができる。
【0125】
(ステップS24)
次に、第2コントローラ52は、ステップS24において、現在の前後差圧△Pxを算出する。前後差圧△Pxは、[5]式に、現在の回転数Nxおよび風速Vxを代入することによって算出することができる。
【0126】
(ステップS25)
次に、第2コントローラ52は、ステップS25において、f(Qx)を算出する。f(Qx)は、[10]式に、風量Qxを代入することで算出することができる。
【0127】
(ステップS26)
次に、第2コントローラ52は、ステップS26において、△Px−f(Qx)≧0であるか否かを判断する。第2コントローラ52は、△Px−f(Qx)≧0であると判断したときはステップS27へ進む。
【0128】
ここでは、「△Px−f(Qx)≧0」と判断したことは、サージングの発生を確定したことと同じである。
【0129】
一方、第2コントローラ52は、△Px−f(Qx)<0であると判断したときはステップS21へ戻り、サージング発生の有無の判定を継続する。
【0130】
(ステップS27)
次に、第2コントローラ52は、ステップS27において、ファンモータ31bの回転数を、現在の回転数Nxに所定比率Cを乗じたC×Nxまで上昇させる。比率Cの初期の設定値は1.05であるが、ユーザー側で設定変更することができる。
【0131】
ここでは、先のステップS26において、△Px−f(Qx)≧0であると判断し、サージングの発生を確定したので、ファンモータ31bの回転数を漸近的に上昇させて、サージングの解消を図る。
【0132】
(ステップS28)
次に、第2コントローラ52は、ステップS28において、所定時間だけ待機してステップS21へ戻る。所定時間だけ待機させる目的は、ファンモータ31bの回転数を上昇させてから風速が変化するまでの応答時間を確保するためである。所定時間の初期の設定値は1秒であるが、ユーザー側で設定変更することができる。
【0133】
上記のように、空気処理システム10が稼働している間、
図14に記載のステップS21からステップS28のルーティンを繰り返す。それによって、△Px−f(Qx)≧0となるか否かを監視し、△Px−f(Qx)≧0となったときは、サージングが発生していると判断し、ファンモータ31bの回転数を上昇させる。
【0134】
このサージング判定制御のメリットは、第2コントローラ52単独でサージングを解消することができることである。
【0135】
さらに、ファンモータ31bの回転数を漸近的に上昇させるので、サージングを解消するためだけに回転数に余裕をとり過ぎる、という事態を回避することができる。
【0136】
(6)サージング判定制御の変形例
図14に記載の制御では、第2コントローラ52はサージングの発生を確定後、第2コントローラ52単独でサージングを解消しているが、以下の変形例では、第1コントローラ51と協業してサージングを解消する
図15は、変形例に係るサージング判定制御のフローチャートである。
図15において、
図14との相違点は、ステップS27〜ステップS28がステップ27x〜ステップS32xに置き換わった点である。
【0137】
第2コントローラ52は、
図15のステップS21からステップS32xまでの制御フローを、
図11のステップS1からステップS12までの制御フローと並行して行っている。
【0138】
ステップS21からステップS26までは既に説明しているので、ここではステップ27x以降を説明する。
【0139】
(ステップS27x)
第2コントローラ52は、ステップS27xにおいて、△Px−f(Qx)≧0であることを第1コントローラ51に通知する。具体的には、予め設定された「△Px−f(Qx)≧0である」ことを示す信号Sig1を第1コントローラ51に送信する。
【0140】
(ステップS28x)
次に、第2コントローラ52から信号を受信した第1コントローラ51は、サージングが発生している、またはサージングが発生する虞があると判断し、サージングを解消するために、新たに風量目標値Qyを設定し、第2コントローラ52に指示する。
【0141】
第1コントローラ51が新たに風量目標値Qyを設定する場合、他のファンユニットの風量および空気処理の対象空間100に必要な総風量を考慮して、風量目標値Qyを設定してもよい。
【0142】
(ステップS29x)
第2コントローラ52は、ステップS29xにおいて、第1コントローラ51から風量目標値Qyを受信したか否かを判定する。第2コントローラ52は、風量目標値Qyを受信したときにステップS30xへ進む。
【0143】
(ステップS30x)
次に、第2コントローラ52は、ステップS30xにおいて、前後差圧目標値△Pyを算出する。前後差圧目標値△Pyは、[6]式に風量目標値Qy、現在の前後差圧△Pxおよび風量Qxを代入することによって算出することができる。
【0144】
(ステップS31x)
次に、第2コントローラ52は、ステップS31xにおいて、f(Qy)を算出する。f(Qy)は、[10]式に、風量目標値Qyを代入することで算出することができる。
【0145】
(ステップS32x)
次に、第2コントローラ52は、ステップS32xにおいて、△Py−f(Qy)≧0であるか否かを判断する。
【0146】
第2コントローラ52は、△Py−f(Qy)≧0であると判断したときは、サージングを解消することができないと判断し、ステップS27xへ戻り、△Py−f(Qy)≧0であることを第1コントローラ51に通知する。
【0147】
具体的には、予め設定された「△Py−f(Qy)≧0である」ことを示す信号Sig2を第1コントローラ51に送信する。ここでは、「△Py−f(Qy)≧0」と判断したことは、サージングの発生の虞があることと同じである。
【0148】
一方、第2コントローラ52は、△Py−f(Qy)<0であると判断したときはステップS21へ戻り、サージング発生の有無の判定を継続する。
【0149】
風量目標値Qyが再設定され、第2コントローラ52に送信されると、
図11のステップS1からステップS12の制御が行われる。
【0150】
以後、第2コントローラ52は、
図15に記載のステップS21からステップS32xのルーティンを繰り返して、サージングの発生の有無を監視する。
【0151】
(7)特徴
(7−1)
サージングが発生するかどうかは前後差圧に依存するので、第2ユニット30では、前後差圧からサージングの発生・非発生を判断することによって、第2ファン31の出口側の圧力で判断するよりも高精度でサージングを検知し、回避することが可能となる。
【0152】
(7−2)
第2ユニット30では、第2コントローラ52が、現在の前後差圧△Pxと現在の回転数Nxにおける前後差圧の許容上限値との比較という簡単な手段でサージングの発生・非発生を判断することができるので、新たに専用のセンサを設ける必要が無い。
【0153】
(7−3)
第2ユニット30では、第2ファン31の回転数毎に測定した第2ファンの風量と前後差圧との関係を示す曲線の極値を、少なくとも3点測定するだけで、関係式:f(Q)=r×Q
2+s×Qを得ることができ、機種ごとの対応が容易である。
【0154】
(7−4)
第2ユニット30では、第2コントローラ52が、第2ファン31によるサージングが発生していると判断したときは、第2ファン31の回転数を増加させる。回転数の増加は、第2ユニット単独で対応することができるので、サージングの回避が容易である。
【0155】
(7−5)
第2ユニット30単体で回転数を上昇させるなどによってサージングを回避しても、ダクト40を介して接続されている他のファンユニットの前後差圧が変化するので、それによって別のファンユニットがサージングを発生させる可能性がある。また、空気処理の対象空間100に必要な総風量に無関係に設定することはできない。それゆえ、空気処理システム10では、第1コントローラ51が、空気処理の対象空間100に必要な総風量を考慮し、且つサージングを回避する第2ユニット30の風量目標値Qyを決定する。その結果、サージング解消の信頼性が高い。
【0156】
(8)他の実施形態
上記実施形態では、第1ユニット20が第1ファン21を有しているが、必ずしも第1ユニット20が第1ファン21を必要とするものではない。本開示の風量制御は、ファンを有しない第1ユニットにダクトを介して接続される第2ユニットにも適用可能である。
【0158】
(8−1)
図16は、他の実施形態に係るファンユニットを搭載した空気処理システム110の構成図である。
図16において、空気処理システム110は、建物BLの一フロアの天井裏に配置されており、部屋の換気を行う。空気処理システム110は、空気処理ユニットとしての第1ユニット120と、給気ファンユニットとしての第2ユニット130と、排気ファンユニットとしての第3ユニット135とを備えている。
【0159】
空気処理システム110は、外気ダクト150と給気ダクト160と還気ダクト170と排気ダクト180とをさらに備えている。外気ダクト150と給気ダクト160と還気ダクト170と排気ダクト180は、第1ユニット120に接続されている。
【0160】
外気ダクト150は、建物BLの外へ通じる開口部104から第1ユニット120に繋がる空気流路を構成する。給気ダクト160は、第1ユニット120から部屋に設けられた吹出口102に繋がる空気流路を構成する。
【0161】
還気ダクト170は、部屋に設けられた吸込口103から第1ユニット120に繋がる空気流路を構成する。排気ダクト180は、第1ユニット120から建物BLの外へ通じる開口部105に繋がる空気流路を構成する。
【0162】
給気ダクト160は、分岐チャンバ191により、1つの主ダクト161から複数の分岐ダクト162に枝分かれしている。
【0163】
還気ダクト170は、分岐チャンバ192により、1つの主ダクト171から複数の分岐ダクト172に枝分かれしている。
【0164】
第1ユニット120は、ユニット内を通過する空気に対して、空気の中の塵埃を除去、空気の温度の変更、空気の湿度の変更、空気中の所定化学成分および所定病原体の除去を行う。
【0165】
第2ユニット130は、各給気ダクト160に接続されている。第3ユニット135は、各還気ダクト170に接続されている。
【0166】
空気処理システム110では、第1ユニット120がファンを有していないので、第1ユニット120内の空気の流れを、第2ユニット130と第3ユニット135が発生させる。
【0167】
したがって、第2ユニット130の前後差圧の変化は主に他の第2ユニット130のファンの風量変化により生じる。また、第3ユニット135の前後差圧の変化は主に他の第3ユニット135のファンの風量変化により生じる。
【0168】
空気処理システム110では、上記実施形態と同様に、回転数目標値の演算式の変数として「前後差圧」を導入しているので、刻々と変化するダクト抵抗の変化を風量目標値の演算に反映することができ、入力値(回転数)に対する出力値(風量)の応答時間の短縮を図ることができる。
【0169】
また、この空気処理システム110では、サージングが発生するかどうかは前後差圧に依存する。第2ユニット130では第2コントローラ152が、或いは第3ユニット135では第3コントローラ153が、現在の前後差圧と現在の回転数における前後差圧の許容上限値との比較という簡単な手段でサージングの発生・非発生を判断することができる。それゆえ、この空気処理システム110では、サージングの発生を検知するだけのために、新たに専用のセンサを設ける必要は無い。
【0170】
(8−2)
図17は、さらに他の実施形態に係るファンユニットを搭載した空気処理システム210の構成図である。
図17において、空気処理システム210は、建物の一フロアの天井裏に配置されている。
【0171】
空気処理システム210と
図1の空気処理システム10との相違点は、第1ユニットが第1ファンを有していないことであり、それ以外の構成は
図1の空気処理システム10と同じである。それゆえ、
図1の空気処理システム10と同じ構成には同一符号を付して、説明を省略する。
【0172】
第1ユニット220の利用側熱交換器22は、熱源ユニット60から熱交換に要する熱エネルギーを供給される。第1ユニット220は、利用側熱交換器22での熱交換によって調和空気を生成する。
【0173】
第1ユニット220には、ダクト40が接続されている。ダクト40は、主管41および枝管42を含む。主管41の一端は、第1ユニット220に接続されている。主管41の他端は、分岐されて複数の枝管42と接続されている。1つの枝管42の終端に1つの第2ユニット30が接続されている。
【0174】
各第2ユニット30は、第2ファン31を有している。第2ファン31が回転することによって、第1ユニット20で生成された調和空気がダクト40を介して第2ユニット30内に吸引され、その後、対象空間100に供給される。
【0175】
各第2ファン31のファンモータ31aは個別に回転数を変更できるように構成されている。各ファンモータ31aの回転数が個別に変更されることによって、各第2ユニット30の供給空気量が個別に変更される。
【0176】
空気処理システム210では、第1ユニット220がファンを有していないので、第1ユニット220内の空気の流れを、第2ユニット30が発生させる。
【0177】
したがって、第2ユニット30の前後差圧の変化は主に他の第2ユニット30の第2ファン31の風量変化により生じるが、回転数目標値の演算式の変数として「前後差圧」を導入しているので、刻々と変化するダクト抵抗の変化を風量目標値の演算に反映することができ、入力値(回転数)に対する出力値(風量)の応答時間の短縮を図ることができる。
【0178】
また、この空気処理システム210では、サージングが発生するかどうかは前後差圧に依存する。第2ユニット30では第2コントローラ52が、現在の前後差圧と現在の回転数における前後差圧の許容上限値との比較という簡単な手段でサージングの発生・非発生を判断することができる。それゆえ、この空気処理システム210では、サージングの発生を検知するだけのために、新たに専用のセンサを設ける必要は無い。
【0179】
(9)その他
(9−1)
上記実施形態および変形例では、第2風量検出手段32から取得した風速または風量に基づき、前後差圧を算出している。但し、第2ユニットの吸込口と吹出口にそれぞれ圧力センサを配置し、前後差圧値をセンサ値から計算し、前後差圧と回転数とから風速値を求めても良い。
【0180】
(9−2)
図7では、5つの前後差圧において、ファンモータの回転数を変化させた場合の、ファンの風速変化をみている。これは、回転数、風速、前後差圧の関係式を導くためのデータとして利用されるが、必ずしも5つの前後差圧におけるデータを必要とするものではなく、少なくとも3つの前後差圧におけるデータがあれば当該関係式を導き出すことができる。
【0181】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【解決手段】サージングが発生するかどうかは前後差圧に依存するので、第2ユニット30では、前後差圧からサージングの発生・非発生を判断することによって、第2ファン31の出口側の圧力で判断するよりも高精度でサージングを検知し、回避することが可能となる。