【実施例2】
【0040】
ナノシリカ複合メチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマーとして調製例2で調製されたものを実施例1の場合と同量用い、その他の条件はすべて実施例1の場合と同様にして実施例2の被検試料を得た。
【0041】
[比較例1]
3級アミノ基含有アクリル樹脂としてアクリディックA9521を68質量部、シリコーンアルコキシオリゴマーを含まず、紫外線吸収剤(チヌビン400,BASF製)1質量部、光安定剤(チヌビン123,BASF製)1質量部、酢酸ブチル30質量部からなる透明な木材用塗料組成物を用いた以外は実施例1の場合と同様に塗装して比較例1の被検試料を得た。この比較例1の被検試料は、従来の3級アミノ基含有アクリル樹脂を主成分とする塗料組成物と加水分解性シリコン化合物を主成分とする硬化剤とからなる塗料により防腐剤を含んでいる木材の表面に直接塗膜を形成したものに対応する。
【0042】
[比較例2]
3級アミノ基含有アクリル樹脂として、アクリディックA9521を63質量部、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマーとしてKR401N(信越化学工業(株)製、商品名)11質量部、メチルイソブチルケトン分散シリカゾルとしてMIBK−ST(日産化学(株)製、商品名)14質量部、紫外線吸収剤としてチヌビン400を1質量部、光安定剤としてチヌビン123を1質量部、溶剤として酢酸ブチル10質量部からなる透明な木材用塗料組成物を用いた以外は実施例1の場合と同様にして比較例2の被検試料を得た。この比較例2の被検試料は、実施例1におけるナノシリカ複合メチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマーに換えてナノシリカが複合化されていないメチル系シリコーンアルコキシオリゴマーを用いた塗料組成物と加水分解性シリコン化合物を主成分とする硬化剤とからなる塗料により防腐剤を含んでいる木材の表面に直接塗膜を形成した例に対応する。
【0043】
[比較例3]
メチル系シリコーンアルコキシオリゴマーとして調製例3で調製されたものを実施例1の場合と同量用いた以外は全て実施例1の場合と同様に塗装してして比較例3の被検試料を得た。この比較例3の被検試料は、実施例1におけるナノシリカ複合メチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマーに換えて比較例2とは異なるナノシリカ複合メチル系シリコーンアルコキシオリゴマーを用いた塗料組成物と加水分解性シリコン化合物を主成分とする硬化剤とからなる塗料により防腐剤を含んでいる木材の表面に直接塗膜を形成した例に対応する。
【0044】
[比較例4]
水系アクリルシリコーン樹脂としてゼムラックW3108F(不揮発分50%、(株)カネカ)を30質量部、紫外線吸収剤としてチヌビン400を1質量部、光安定剤としてチヌビン123を1質量部、溶剤としてイソプロピルアルコールを10質量部、残部水からなる透明塗料組成物に対し、硬化剤として水系シロキサンDynasylan HYDROSIL1151((株)エボニック)40質量部、プロピレングリコール60質量部からなるものを用い、質量比で塗料:硬化剤=100:10となるよう混合して比較例4の高耐候性水性塗料を得た。次いで、実施例1の場合と同様に塗装して比較例4の被検試料を得た。この比較例4の被検試料は、ナノシリカ複合シリコーンアルコキシオリゴマーを含んでいない従来の水系アクリルシリコーン樹脂を主成分とする塗料を用いて防腐剤を含んでいる木材の表面に直接塗膜を形成したものに対応する。
【0045】
[比較例5]
塗料として、市販の木材用高耐候性塗料アクレックスNo.3200外部用クリアー(和信化学工業(株))を用い、実施例1の場合と同様に塗装して比較例5の被検試料を得た。この比較例5の被検試料は、ナノシリカ複合シリコーンアルコキシオリゴマーを含んでいない従来のイソシアネート硬化型のアクリル樹脂を主成分とする塗料を用いて防腐剤を含んでいる木材の表面に塗膜を形成したものに対応する。
【0046】
[比較例6]
建築外装用として汎用的に使用されているイソシアネート硬化型のアクリル樹脂アクリディック49−394−BA(水酸基価22〜28、DIC(株))65質量部、紫外線吸収剤としてチヌビン400を1質量部、光安定剤としてチヌビン123を1質量部、溶剤として酢酸ブチル33質量部からなる比較例6の透明塗料を得た。硬化剤としては、耐候性の良い無黄変型ポリイソシアネートであるデュラネートTPA(NCO23.1%、旭化成(株))を、塗料:硬化剤=100:10となるよう混合して比較例6のアクリルウレタン塗料を得た。次いで、実施例1の場合と同様に塗装して比較例6の被検試料を得た。この比較例6の被検試料は、ナノシリカ複合シリコーンオリゴマーを含んでいない従来のイソシアネート硬化型のアクリル樹脂を主成分とする塗料組成物と耐候性の良くなることが知られている硬化剤とからなる塗料を用いて防腐剤を含んでいる木材の表面に直接塗膜を形成したものに対応する。
【0047】
[試験条件]
上述のようにして作成された実施例1〜3及び比較例1〜6のそれぞれの被検試料について、造膜性、塗装作業性、耐水性、耐候性(変色)及び耐候性(割れ・剥がれ)について試験を行った。結果は、以下のようにして判定し、纏めて表1に示した。
【0048】
造膜性…塗装後に木材表面で不安定化して正常な透明塗膜を形成しなかったものを「×」と判断し、問題のなかったものを「〇」と判定した。
塗装作業性…スプレー塗装を行った際に、塗布ムラや外観不良が生じなかったものを「〇」、塗布ムラや外観不良が生じたものを「×」と判定した。
耐水性…60℃温水浸漬1時間→60℃×2時間恒温器 を1サイクルとして、3サイクル実施。割れや剥がれのないものを「〇」、割れや剥がれの生じたものを「×」と判定した。
耐候性(変色)及び耐候性(割れ・剥がれ)…JIS K5600−7−7のサイクルA法に準じて行った。
結果はいずれも1000時間まで異常が無かったものを「〇」と判定し、500時間まで異常が無かった1000時間で異常があったものを「△」と判定し、500時間で異常が認められたものを「×」と判定した。
【0049】
【表1】
【0050】
また、参考試料として、何も塗膜を形成しない木材試料を上記の耐候性試験に準じてそのまま6ヵ月間放置した際の表面写真を
図1として示した。また、実施例1の塗膜を形成した木材試料の6ヵ月経過後の表面写真を
図2に、比較例4の塗膜を形成した木材試料の乾燥後の表面写真を
図3に示した。なお、
図1に示した参考試料の耐候試験結果によれば、塗膜を形成しなくても木材試料の腐食は生じないが、大きな変色が生じていることが分かる。
【0051】
表1に示した結果から、以下のことが分かる。すなわち、比較例4及び5の結果から、塗料中にナノシリカ複合シリコーンアルコキシオリゴマーが含まれていないと、従来の水系アクリルシリコーン樹脂を主成分とする塗料及びイソシアネート硬化型のアクリル樹脂を主成分とする塗料では、防腐剤を含んでいる木材の表面に直接塗膜を形成すると良好な塗膜を形成できず、また、
図3に示したように、塗装中に塗料の一部がゲル化してしまうために作業性が非常に悪いことが分かる。なお、比較例6の結果から、ナノシリカ複合シリコーンアルコキシオリゴマーを含んでいない従来のイソシアネート硬化型のアクリル樹脂と耐候性の良いことが知られている硬化剤とを主成分とする塗料の場合は、防腐剤を含んでいる木材の表面に塗膜を直接形成しても造膜性及び塗料作業性は良好で、一応の塗膜を形成することができることが分かる。しかしながら、比較例6で得られた塗膜は、耐水性に劣っているだけでなく、耐候性試験結果では変色、割れ・はがれが見られた。
【0052】
また、比較例1の結果から、従来の3級アミノ基含有アクリル樹脂を主成分とする塗料組成物と加水分解性シリコン化合物を主成分とする硬化剤とを組み合わせた塗料を用いた場合には、シリコーンアルコキシオリゴマーが含まれていなくても、防腐剤を含んでいる木材の表面に塗膜を直接形成しても造膜性及び塗料作業性は良好で、一応良好な塗膜を形成することができることが分かる。しかしながら、比較例1で得られた塗膜は、耐水性に劣っているほか、耐候性試験のうちの耐変色性も劣っており、さらに耐候性試験の最中に部分的に割れないし剥がれが見られた。
【0053】
また、比較例2の結果から、従来の3級アミノ基含有アクリル樹脂とナノシリカが複合化されていないメチル系シリコーンアルコキシオリゴマーとを主成分とする塗料組成物を用いた場合には、防腐剤を含んでいる木材の表面に塗膜を直接形成しても造膜性及び塗料作業性は良好で、一応良好な塗膜を形成することができることが分かる。しかしながら、比較例2で得られた塗膜は、耐水性は良好であったが、耐候性試験で部分的に変色が見られるほか、かなりの割れ・剥がれが見られた。
【0054】
また、比較例3の結果から、従来の3級アミノ基含有アクリル樹脂とナノシリカが複合化されたメチル系シリコーンアルコキシオリゴマーとを主成分とする塗料組成物を用いた場合には、防腐剤を含んでいる木材の表面に塗膜を直接形成しても造膜性及び塗料作業性は良好で、一応良好な塗膜を形成することができることが分かる。しかしながら、比較例3で得られた塗膜は、耐水性に劣り、耐候性試験で部分的に変色が見られるほか、かなりの割れ・剥がれが見られた。
【0055】
それに対し、実施例1及び2の塗料の場合は、防腐剤を含んでいる木材の表面に塗膜を直接形成しても良好な塗膜を形成することができ、この塗膜は耐水性が良好で、例えば
図2に示したように、耐候性試験を行っても変色や割れ・剥がれが実質的に見られず、良好な結果が得られることが分かる。従って、実施例1、2、比較例1〜6の結果を総合的に勘案すると、3級アミノ基含有アクリル樹脂を塗料成分とする場合には、ナノシリカを複合したメチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマーをも含有させた塗料組成物とするとともに、硬化剤として加水分解性シリコン化合物を用いた塗料とすることにより、たとえ防腐剤等の木材保存剤を含んでいる木材の表面に塗膜を直接形成しても、木材の寸法変化に対する追随性に優れた有機無機複合塗膜を形成することができることが分かる。
【0056】
なお、塗料組成物中の3級アミノ基含有アクリル樹脂とメチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマーとの含有割合は、3級アミノ基含有アクリル樹脂100質量部に対し、ナノシリカを複合したメチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマー含有量が20〜50質量部とすることが好ましい。メチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマー含有量が20質量%未満では耐水性や耐候性の改良効果が小さくなり、50質量%を越えるとひび割れ防止効果が低下する。
【0057】
なお、実施例1、2および比較例1〜6では、塗料の塗布方法として「刷毛塗り法」を採用した例を示したが、本発明はこれに限らず、周知の「スプレー法」や「ローラー法」等を採用することもできる。