(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
絶縁筒と、絶縁筒の外周面にモールドされた外被部と、絶縁筒に埋設される下部電極を有する下部金具とを備える従来構造の複合碍管では、絶縁筒と下部電極の下端に形成されたフランジ部とを接触させるように構成されている。そのため、絶縁筒とフランジ部との間に隙間がほとんど形成されていない。
【0012】
上記複合碍管は、例えば次のようにして製造される。まず、下部金具を金型内に配置した状態で絶縁樹脂を注入して絶縁筒をモールドし、絶縁筒の下端に一体に下部金具を設ける。このとき、下部金具の表面に離型剤を塗布して、絶縁筒と下部金具とが接着されないようにすることがあり、この場合、絶縁筒と下部金具のフランジ部との間に極僅かな隙間が生じる。この隙間の幅は、後工程でモールドする外被部のポリマー材料が入り込まない程度に狭い幅(例えば、1mm未満)である。その後、下部金具を一体化した絶縁筒を金型内に配置し、ポリマー材料を注入して絶縁筒の外周面に外被部を直接モールドすることで、複合碍管を製造している。
【0013】
外被部の下端側を絶縁筒から下部金具のフランジ部まで延長し、フランジ部の外周面も覆うように外被部を形成する場合がある。この場合、絶縁筒とフランジ部とを跨ぐ箇所に位置する外被部の表面に気泡痕が発生することがある。外被部の表面に気泡痕が発生する理由は、絶縁筒の外周面に外被部をモールドする際に、絶縁筒とフランジ部との間の上記隙間内に存在する空気が熱膨張して外周側の開口から徐々に抜け出て、気泡が外被部を突き破るからと考えられる。ポリマー材料を注入する前に金型内を真空状態にして脱気した場合であっても、上記隙間は極めて狭いため、隙間内の空気を完全に除去することは難しい。
【0014】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものである。最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0015】
(1)本発明の実施形態に係る複合碍管は、
電力ケーブルの終端部が収容される中空空間を有する絶縁筒と、
前記絶縁筒の外周面にポリマー材料でモールドされた外被部と、
前記絶縁筒の下端部に設けられる下部電極と、前記下部電極の下端に形成されて前記絶縁筒の下端面に対向するフランジ部とを有する下部金具と、を備え、
前記絶縁筒と前記フランジ部との間には、外周側に開口する隙間を有し、
前記外被部は、前記フランジ部の外周面の少なくとも一部も覆うように前記絶縁筒と前記下部金具とを跨いで形成され、前記隙間に前記外被部のポリマー材料が侵入している。
【0016】
上記複合碍管によれば、絶縁筒と下部金具のフランジ部との間に形成された隙間に外被部のポリマー材料が侵入していることで、モールド時に外被部の表面に発生する気泡痕を低減できる。よって、上記複合碍管は、外被部のモールド時に外被部表面に目立った気泡痕が発生し難いので、見映えに優れる。
【0017】
気泡痕を低減できる理由は、次のように推測される。絶縁筒とフランジ部との間に形成された隙間の幅が、外被部のモールド時にポリマー材料が入り込む程度に広い幅になっている。そのため、絶縁筒の外周面に外被部をモールドする際に、ポリマー材料が隙間の外周側の開口から内部に侵入していき、隙間内の空気が追い出される。これにより、隙間内の空気が除去されることから、隙間内の空気に起因する気泡痕の発生を低減できるので、絶縁筒とフランジ部とを跨ぐ箇所に位置する外被部の表面に気泡痕が発生し難くなる。
【0018】
(2)上記複合碍管の一形態として、前記隙間の開口幅が1mm以上であることが挙げられる。
【0019】
隙間の開口幅が1mm以上であることで、外被部のモールド時にポリマー材料が隙間内に侵入し易く、隙間内の空気が除去され易い。よって、外被部の表面に発生する気泡痕を効果的に低減できる。開口幅の上限は、例えば10mm以下であることが挙げられる。隙間の開口幅が10mm以下の場合、複合碍管を曲げ試験したときに外被部における隙間に侵入した部分が曲げ歪みによる損傷を受け難く、外被部の強度を確保し易い。
【0020】
(3)上記複合碍管の一形態として、前記隙間は、外周側に向かって幅が広くなるように形成されていることが挙げられる。
【0021】
この場合、隙間の外周側の開口が広くなっているので、外被部のモールド時にポリマー材料が隙間内に侵入し易くなり、隙間内の空気を容易に除去できる。よって、外被部の表面に発生する気泡痕を効果的に低減できる。
【0022】
(4)上記複合碍管の一形態として、前記隙間の全体に前記外被部のポリマー材料が充填されていることが挙げられる。
【0023】
隙間全体に外被部のポリマー材料が充填されている場合、外被部のモールド時にポリマー材料が隙間内に行き渡り、隙間内の空気が大幅に除去されることから、気泡痕の発生を著しく低減でき、外被部の表面に発生する気泡痕を解消できる。
【0024】
(5)本発明の実施形態に係る終端接続部は、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の複合碍管を備える。
【0025】
上記終端接続部は、本実施形態に係る上記複合碍管を備えることで、複合碍管における外被部表面に目立った気泡痕が発生しておらず、複合碍管の外被部表面の見映えに優れる。
【0026】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る複合碍管、及び終端接続部の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
図1〜
図3を参照して、実施形態に係る複合碍管10、及び終端接続部1を説明する。
図1は、複合碍管10を軸方向に切断した半断面図を示している。終端接続部1は、
図3に示すように、導体101が露出された電力ケーブル100の終端部と、電力ケーブル100の終端部が収容される複合碍管10と、導体101に接続される導体引出棒20とを備える。本例では、気中終端接続部である。ここでは、終端接続部1及び複合碍管10において、導体引出棒20が引き出される側(
図1、
図3の紙面上側)を上、その反対側、換言すれば電力ケーブル100の終端部が挿入される側を下とする。また、複合碍管10の軸方向を長手方向とする。
【0028】
複合碍管10は、
図1に示すように、絶縁筒11と、絶縁筒11の外周面にモールド成形された外被部12と、絶縁筒11の下端に設けられる下部金具13とを備える。下部金具13は、絶縁筒11の下端部に配置される下部電極131と、下部電極131の下端に形成されたフランジ部132とを有する。複合碍管10の特徴の1つは、
図2に示すように、絶縁筒11の下端面と下部金具13のフランジ部132との間に外周側に開口する隙間15を有する点にある。複合碍管10のもう1つの特徴は、外被部12がフランジ部132の外周面の少なくとも一部も覆うように形成され、隙間15に外被部12を構成するポリマー材料が侵入している点にある。以下、終端接続部1及び複合碍管10の構成を詳しく説明する。
【0029】
<電力ケーブル>
電力ケーブル100は、
図3に示すように、導体101と、導体101の外周に形成された絶縁層102と、絶縁層102の外周に形成された遮蔽層103とを備え、シース104で被覆されている。電力ケーブル100としては、例えばCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁シースケーブル)などが挙げられる。電力ケーブル100の終端部は、端末処理が施され、複合碍管10の下端側から挿入されて複合碍管10内に収容される。
【0030】
電力ケーブル100の終端部は、
図3に示すように、端末処理によって段剥ぎされ、先端側から順に導体101、絶縁層102が露出されている。本例では、露出された導体101の先端に接続端子25が圧縮接続によって接続されている。また、電力ケーブル100の終端部において、露出された絶縁層102の外周には、プレモールド絶縁体40が装着されている。プレモールド絶縁体40は、ケーブル終端部において絶縁層102から絶縁筒11への電気的ストレスを緩和する部材であり、例えば、エチレンプロピレンゴムやシリコーンゴムなどの絶縁ゴムで形成されている。プレモールド絶縁体40の形状は、長手方向の中間部が太径で、両端部がそれぞれ先細りする筒状に形成されており、その中心にはケーブル終端部が挿入される円形の孔が形成されている。
【0031】
<導体引出棒>
導体引出棒20は、銅やアルミニウム又はそれらの合金に代表される導電材料で構成された丸棒状の部材であり、電力ケーブル100の導体101と電気的に接続される。導体引出棒20は、
図1、
図3に示すように、複合碍管10の中心に設けられ、複合碍管10の上端側から引き出されている。導体101との接続箇所となる導体引出棒20の接続部21は、複合碍管10内に配置されており、本例では、接続部21にリング状の接触子22(例、チューリップコンタクト)が取り付けられている。そして、
図3に示すように、導体101に接続された接続端子25が接触子22に差し込まれることで、導体101と導体引出棒20とが電気的に接続されるように構成されている。
【0032】
<複合碍管>
(絶縁筒)
絶縁筒11は、機械的強度に優れる絶縁材料、例えば、エポキシ樹脂や繊維強化プラスチック(FRP)などの絶縁樹脂で構成された円筒状の部材である。本例では、絶縁筒11がエポキシ樹脂からなり、導体引出棒20の外周面にモールドされている。本例の絶縁筒11は、
図3に示すように、電力ケーブル100の終端部が収容される中空空間を有している。絶縁筒11は、電力ケーブル100の終端部が収容される下側が内径の大きい太径部となっており、導体引出棒20が配置される上側が太径部よりも内径の小さい細径部となっている。絶縁筒11の下端には、下部電極131とフランジ部132とを有する下部金具13が一体に設けられている。
【0033】
(外被部)
外被部12は、耐候性及び電気絶縁性能に優れるポリマー材料、例えば、シリコーンゴムやエチレンプロピレンゴムなどの絶縁ゴムで構成されている。本例では、外被部12がシリコーンゴムからなり、絶縁筒11の外周面にモールドされている。本例の外被部12は、
図1に示すように、その外周面に複数の傘状の襞121が長手方向に離間して形成されている。外被部12の外周面に複数の襞121が形成されていることで、外被部12の沿面距離が長くなり、複合碍管10の絶縁性能を高めることができる。
【0034】
また、外被部12は、絶縁筒11と下部金具13(フランジ部132)とを跨いで形成されている。具体的には、
図2に示すように、外被部12の下端側が絶縁筒11からフランジ部132まで延長されており、外被部12には、フランジ部132の外周面の少なくとも一部を覆う延長部122を有する。外被部12の下端側を延長して延長部122が形成されていることで、絶縁筒11とフランジ部132との間から絶縁筒11内に水などの異物が浸入することを抑制できる。また、延長部122を有することで、外被部12の沿面距離がより長くなり、複合碍管10の絶縁性能を高めることができる。延長部122の長さ(
図2中のa)は、例えば10mm以上50mm以下、更に20mm以上40mm以下であることが挙げられ、本例では30mm程度である。ここでいう延長部122の長さとは、フランジ部132の上端面の位置から延長部122の下端面までの距離を指す。延長部122の厚さ(
図2中のt2)は、例えば3mm以上6mm以下であることが挙げられ、本例では4mm程度である。
【0035】
(下部金具)
下部金具13は、銅やアルミニウム又はそれらの合金に代表される導電材料で構成されたリング状の部材であり、
図1に示すように、絶縁筒11の下端に設けられる。下部金具13は、絶縁筒11の下端部に設けられる筒状の下部電極131と、下部電極131の下端から径方向外方に突出して形成されたフランジ部132とを有する。
【0036】
下部電極131は、電界を緩和する機能を有し、電界が集中し易い複合碍管10の下部での電界を制御し、複合碍管10の絶縁性能を高める。フランジ部132は、絶縁筒11から露出しており、絶縁筒11の下端面に対向している。本例では、
図2に示すように、絶縁筒11の下端部の外周面とフランジ部132の外周面とが面一又は略面一になっている。
【0037】
(隙間)
図2に示すように、絶縁筒11とフランジ部132との間には、外周側に開口する隙間15が形成されている。そして、隙間15に外被部12のポリマー材料が侵入しており、外被部12には、隙間15内に侵入する侵入部123を有する。隙間15の幅(絶縁筒11の下端面とフランジ部132の上端面との間隔)は、外被部12のモールド時にポリマー材料が入り込む程度の幅に設定されている。隙間15に外被部12のポリマー材料が侵入していることで、外被部12のモールド時に隙間15内の空気が除去されることから、モールド時に外被部12の表面に発生する気泡痕を低減できる。
【0038】
隙間15の開口幅(
図2中のw)は、例えば1mm以上である。これにより、外被部12のモールド時にポリマー材料が隙間15内に侵入し易く、隙間15内の空気が除去され易い。よって、気泡痕の発生を効果的に低減できる。隙間15の開口幅の上限は、特に限定されないが、例えば10mm以下であることが挙げられる。隙間15の開口幅が10mm以下の場合、外被部12の侵入部123の幅が10mm以下となり、複合碍管10を曲げ試験したときに侵入部123が曲げ歪みによる損傷を受け難く、外被部12の機械的強度を確保し易い。本例では、隙間15の開口幅が6mm程度である。ここでいう隙間15の開口幅とは、絶縁筒11の下端面とフランジ部132の上端面との間隔のうち、外周側の間隔を指す。
【0039】
隙間15の深さ(
図2中のd)は、例えば10mm以上50mm以下であることが挙げられる。隙間15は内周側の底が下部電極131まで達しており、隙間15の深さは絶縁筒11の下端部の外周面と下部電極131の外周面との間隔によって決まる。つまり、隙間15の深さは、下部電極131の外周面を覆う絶縁筒11の外側の厚さ(
図2中のt1)と同じである。隙間15の深さが10mm以上の場合、絶縁筒11の径方向の厚さを確保して、絶縁筒11の下端部の絶縁耐力や機械的強度の低下を抑制できる。隙間15の深さが50mm以下の場合、絶縁筒11の下端部の太径化を抑制できる。本例では、隙間15の深さ(絶縁筒11の外側の厚さ)が30mm程度である。ここでいう隙間15の深さとは、隙間15の開口から底までの距離(絶縁筒11の下端部の外周面と下部電極131の外周面との間隔と同義)を指す。
【0040】
一方、絶縁筒11の下端部の内周面と下部電極131の内周面との間隔、換言すれば下部電極131の内周面を覆う絶縁筒11の内側の厚さ(
図2中のt3)は、絶縁筒11に下部金具13(下部電極131)をモールドするために必要な厚さに設定されている。絶縁筒11の内側の厚さは、本例では8mm程度である。本例では、下部電極131が絶縁筒11の下端部に埋設された構造を例示しているが、絶縁筒11の内周面と下部電極131の内周面とが面一であって、下部電極131の内周面が絶縁筒11から露出していてもよい(この場合、t3=0)。
【0041】
本例では、
図2に示すように、隙間15の全体に外被部12のポリマー材料が充填されているが、ポリマー材料が隙間15の開口から深さの途中まで侵入している場合も許容する。この場合、ポリマー材料の侵入量が隙間15の深さの50%以上、更に60%以上、80%以上であることが挙げられる。ポリマー材料が隙間15内に半分以上侵入していれば、外被部12のモールド時に隙間15内から空気がある程度除去されることになるため、気泡痕の発生を低減する効果が得られる。本例のように、隙間15の全体に外被部12のポリマー材料が充填されている場合は、ポリマー材料が隙間15内に行き渡り、隙間15内の空気が大幅に除去される。そのため、気泡痕の発生を著しく低減でき、外被部12の表面に発生する気泡痕を解消できる。
【0042】
また、本例の隙間15は、
図2に示すように、外周側に向かって幅が広くなるように形成されている。つまり、隙間15の開口幅が底側の幅よりも広い。この場合、隙間15の外周側の開口が広くなっているので、外被部12のモールド時にポリマー材料が隙間15内に侵入し易くなり、隙間15内の空気が容易に除去される。よって、気泡痕の発生を効果的に低減できる。本例では、フランジ部132に対向する絶縁筒11の下端面が絶縁筒11の軸方向に直交する方向に対して傾斜している。具体的には、絶縁筒11の下端面がその外周側に向かってフランジ部132の上端面から離れる方向に傾斜する傾斜面になっている。これにより、隙間15の幅が開口から底側に向かって狭くなるように形成されている。本例とは異なり、例えば、絶縁筒11の下端面がフランジ部132の上端面と略平行になっており、隙間15の幅が開口から底側に向かって実質的に同じであってもよい。
【0043】
《複合碍管の製造方法》
図1、
図2に示す実施形態の複合碍管10は、例えば、以下の工程を備える製造方法により製造することができる。
・絶縁筒11を下部金具13と一体にモールドする工程
・下部金具13を一体にした絶縁筒11に外被部12をモールドする工程
【0044】
(1.絶縁筒のモールド工程)
絶縁筒11を下部金具13と一体にモールドして形成する。本例の場合、導体引出棒20と下部金具13とを金型内に配置した状態で絶縁樹脂を注入して、導体引出棒20の外周面に絶縁筒11を直接モールドすると共に、絶縁筒11の下端に下部金具13を一体にモールドする。これにより、絶縁筒11の下端に下部金具13を一体に設け、絶縁筒11の下端部に下部電極131を配置する。導体引出棒20の接続部21には、予め接触子22を取り付けておくとよい。
【0045】
この工程では、絶縁筒11をモールドする際、絶縁筒11の下端面と下部金具13のフランジ部132との間に上述した隙間15を形成するため、金型内には、フランジ部132の上端面にスペーサを配置する。このスペーサは、モールドした絶縁筒11の下端面とフランジ部132との間に外周側に開口する隙間15を形成するものである。スペーサの形状は、形成する隙間15に対応した形状である。これにより、下部金具13を一体にモールドした絶縁筒11には、絶縁筒11とフランジ部132との間に隙間15が形成される。
【0046】
本例では、絶縁筒11の下端面を上述した傾斜面とするため、それに合わせてスペーサの上面が傾斜面になっている。スペーサの表面のうち、絶縁筒11の絶縁樹脂が接触する箇所(上面)に離型剤を塗布しておくと、絶縁筒11のモールド後にスペーサを取り外し易い。また、絶縁筒11の絶縁樹脂が接触するスペーサの上面にサンドブラスト加工などの表面処理を施して、微細な凹凸を形成しておいてもよい。これにより、絶縁筒11の下端面に微細な凹凸を形成することができる。スペーサによって形成される絶縁筒11の下端面は、隙間15の内面の1つであり、微細な凹凸が形成されていることによって、後工程でモールドした外被部12のポリマー材料(侵入部123)と隙間15との密着性が高まり、絶縁筒11に対する外被部12の密着力が向上する。
【0047】
また、本例では、絶縁筒11の絶縁樹脂が接触する下部金具13(下部電極131など)の表面にも離型剤を塗布しており、絶縁筒11と下部金具13とが絶縁樹脂によって接着されないようにしている。
【0048】
(2.外被部のモールド工程)
下部金具13を一体にした絶縁筒11の外周面に外被部12をモールドして形成する。具体的には、下部金具13を一体に設けた上述の絶縁筒11を金型内に配置し、ポリマー材料を注入して絶縁筒11の外周面に外被部12を直接モールドして、襞121付きの外被部12を形成する。
【0049】
この工程では、下部金具13のフランジ部132の外周面の少なくとも一部も覆うように外被部12をモールドすることによって、外被部12を絶縁筒11と下部金具13(フランジ部132)とを跨いで形成する。これにより、外被部12に延長部122が形成される。このとき、絶縁筒11とフランジ部132との間に形成された隙間15に外被部12のポリマー材料が侵入することで、侵入部123が形成される。
【0050】
外被部12のモールド時に、ポリマー材料が隙間15の外周側の開口から内部に侵入することによって、隙間15内の空気が追い出され、隙間15内の空気が除去される。そのため、隙間15内に空気が残存し難いので、隙間15上(絶縁筒11とフランジ部132跨ぐ箇所)に位置する外被部12の表面において、隙間15内の空気に起因する気泡痕が発生し難くなる。よって、モールド時に外被部12の表面に発生する気泡痕が低減される。
【0051】
本例では、上述したように、隙間15の開口幅が1mm以上に設定されているため、外被部12のモールド時にポリマー材料を隙間15内に侵入させ易く、隙間15内の空気を除去し易い。また、本例の隙間15は、外周側に向かって幅が広くなるように形成されているため、ポリマー材料が隙間15内に侵入し易くなり、隙間15内の空気が容易に除去される。よって、気泡痕の発生を効果的に低減できる。
【0052】
更に、本例のように、隙間15の全体に外被部12のポリマー材料が充填されるようにすると、ポリマー材料が隙間15内に行き渡り、隙間15内の空気が大幅に除去される。そのため、気泡痕の発生を著しく低減でき、外被部12の表面に発生する気泡痕を解消できる。
【0053】
また、本例では、外被部12のポリマー材料が接触するフランジ部の表面に離型剤を塗布しており、外被部12と下部金具13とがポリマー材料によって接着されないようにしている。したがって、絶縁筒11及び外被部12が下部金具13に接着されないようにしており、これにより、下部金具13との熱膨張差に起因する応力によって絶縁筒11及び外被部12が損傷することを抑制できる。
【0054】
その他、外被部12をモールドする際、予め金型内を真空状態にして脱気しておくと、隙間15内にポリマー材料を充填し易い。
【0055】
<終端接続部>
図3に示す実施形態の終端接続部1は、例えば、以下の工程を備える製造方法により構築することができる。
・複合碍管10を用意する工程
・電力ケーブル100の終端部を端末処理する工程
・電力ケーブル100の終端部を複合碍管10に挿入して終端接続部1を組み立てる工程
【0056】
(1.複合碍管の用意工程)
上述した実施形態の複合碍管10を用意する。複合碍管10は、工場などで予め作製しておくとよい。
【0057】
(2.電力ケーブル終端部の端末処理工程)
布設した電力ケーブル100の終端部に端末処理を施す。具体的には、電力ケーブル100の終端部のシース104を除去した後、ケーブル終端部を段剥ぎして、導体101、絶縁層102などを順に露出させる。本例では、露出させた導体101の先端に接続端子25を圧縮接続する。また、露出させた絶縁層102の外周にプレモールド絶縁体40を装着する。
【0058】
端末処理を施した電力ケーブル100の終端部を複合碍管10の下端側から挿入して、複合碍管10内(絶縁筒11の中空空間)にケーブル終端部を収容する。そして、導体101に接続した接続端子25を、導体引出棒20の接続部21に取り付けられた接触子22に差し込んで、導体101と導体引出棒20とを電気的に接続する。これにより、終端接続部1が組み立てられる。
【0059】
図3に示す終端接続部1の場合、下部金具13の下端面に取付金具30をボルトなどで取り付け、取付金具30を支持碍子31を介して設置することで、終端接続部1を構築している。下部金具13は接地されている。
【0060】
《効果》
実施形態に係る複合碍管10は、絶縁筒11と下部金具13のフランジ部132との間に形成された隙間15に外被部12のポリマー材料が侵入していることで、モールド時に外被部12の表面に発生する気泡痕を低減できる。よって、複合碍管10は、外被部12の表面に目立った気泡痕が発生し難いので、見映えに優れる。
【0061】
実施形態に係る終端接続部1は、上述した複合碍管10を備えることで、複合碍管10における外被部12の表面に目立った気泡痕が発生しておらず、複合碍管10の見映えに優れる。
【0062】
《用途》
実施形態に係る複合碍管10は終端接続部1に好適に利用できる。実施形態に係る終端接続部1は、電力ケーブル100の終端において架空線などとの接続に好適に利用できる。