(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、適宜図を参照して詳説する。
【0018】
[液面距離計測装置]
[第一実施形態]
本発明の一実施形態に係る液面距離計測装置1は、
図1に示すように、光源2、光カプラ3、光送受部4、受光部5、及び信号処理部6を主に備え、電気ハーネス7さらに有する。液面距離計測装置1は、容器Aの液面Wにパルス光を照射し、この反射光を受光することで液面Wの距離を計測することができる。
【0019】
<光源>
光源2は、パルス光を発光して光カプラ3に送出する。光源2は、パルス光を発光できるものであれば特に限定されず、例えばパルスジェネレーターを用いたレーザダイオード(Laser Diode:LD)、LED(Light Emitting Diode)等の公知のものを使用することができる。なお、パルス光とは、狭い(短い)時間間隔で点滅を繰り返す光のことをいう。
【0020】
光源2が発光する光のパルス幅の下限値、すなわち光源2が発光している時間長さの下限値は、特に限定されないが、可能な限り狭い発光時間とすることが好ましい。パルス幅を狭くすることで、高分解能性能を実現することができる。ただし、受光器の帯域に比べて狭すぎるパルス幅は、計測されるパルス振幅(パルス高さ、すなわち信号成分)を大きくするという観点からは無駄になるおそれがある。具体的には、例えば、10GHz帯域の受光回路を使用して、ガウス型のパルス波形とした場合、パルス幅の下限値としては44psとすることができる。一方、パルス幅の上限値としては、特に限定されないが、計測対象の液面の最短距離から決定することができる。すなわち、基準反射面から計測対象の液面までの距離が最短となる距離によって求めることができる。具体的には、例えば、基準反射面から計測対象の液面までの最短距離が15cmとなる場合では、液面距離を計測するためのパルス幅の上限値としては1ns、当該最短距離が150cmとなる場合では、パルス幅上限は10nsとすることができる。
【0021】
パルス間隔、すなわち一つのパルス光が発光されてから次のパルス光が発光されるまでの光源2が発光を停止している時間間隔は、特に限定されないが、可能な限り狭いパルス間隔とすることが好ましい。パルス間隔を狭くすることで、より頻繁にパルス光を送信することができるため、液面が動揺している場合に液面が平坦になる瞬間にパルスを照射できる確率を向上させることができる。ただし、基準反射面から計測対象の液面までの距離が最大となる距離によって、パルス間隔はその下限値が制限される。具体的には、例えば、1地点のみの液面距離計測で、光源2から光送受部4(測定地点)までを配線用の光ファイバで接続し、この光ファイバの長さが10m、基準反射面から液面までの最大距離が30mとなる場合、パルス間隔の下限値としては300nsとすることができる。また、多地点液面距離一括計測の場合も同様に、最も遠い計測地点が10km、すなわち光源と測定地点とを結ぶ光ファイバの長さが10kmであり、この光ファイバの伝搬遅延が5μs/kmとして、基準反射面から液面までの最大距離が30mとなる場合、パルス間隔の下限値としては100μsとすることができる。
【0022】
<光カプラ>
光カプラ3は、光源2が発光するパルス光と、光送受部4が有する基準反射面で反射される反射光及び液面Wで反射される戻り光とを分岐する。具体的には、光カプラ3は、光源2が発光したパルス光を光送受部4に向けて反射させ、基準反射面で反射される反射光及び液面Wで反射される戻り光を透過して受光部5に受光させる。光カプラ3は、パルス光と反射光及び戻り光とを分岐可能なものであれば特に限定されず、例えばビームスプリッタ(Beam Splitter:BS)、光サーキュレータ等の公知のものを使用することができる。
【0023】
<受光部>
受光部5は、反射光及び戻り光を受光し、この光信号を電気信号に変換する。変換された電気信号は電気ハーネス7によって信号処理部6に送信される。受光部5は、受光した光信号を電気信号に変換できるものであれば特に限定されず、フォトダイオード(Photo Diode:PD)等の公知のものを使用することができる。
【0024】
<電気ハーネス>
電気ハーネス7は、受光部5と信号処理部6とを接続する。受光部5が光信号から変換した電気信号は、電気ハーネス7によって信号処理部6に送信される。
【0025】
<信号処理部>
信号処理部6は、受光部5が受光した反射光の受光タイミングと戻り光の受光タイミングとの時間差を計測して、基準反射面と液面Wとの距離を算出する。この計測結果は、図示しない表示器、例えば液晶ディスプレイ等に表示される。信号処理部6としては、特に限定されず、例えばパルスアナライザ、オシロスコープ等の公知のものを使用することができる。
【0026】
<光送受部>
光送受部4は、光カプラ3が反射して放射状に広がるパルス光を平行光線束として、液面Wに対して略垂直に照射する。また、このパルス光が液面Wで反射される戻り光を受光部5に集光する。光送受部4は、光カプラ3が反射して放射状に広がるパルス光を平行光線束にすると共に、液面Wからの戻り光を受光部5に集光するための光学系を有する。光送受部4は、パルス光の一部を液面Wに照射させることなく反射し、この反射光を受光部5に受光させるための基準反射面を含む。この基準反射面で反射される反射光を受光部5が受光したタイミングと液面Wで反射される戻り光を受光したタイミングとを信号処理部6が計測することで、液面Wまでの距離が算出される。
【0027】
〔光学系〕
光学系は、光カプラ3が反射する放射状の光を平行光線束とすると共に、液面Wで反射される戻り光を当該端部に集光する。当該光学系は、シュバルツシルト光学系である。シュバルツシルト光学系は、
図2で示すように、凸面鏡8と凹面鏡9を含み、光カプラ3が反射する放射状の光を凸面鏡8が反射し、この凸面鏡8の反射光を凹面鏡9がさらに反射することで、容易に平行光線束とすることができる。また、凸面鏡8の天頂部の一部を光カプラ3が反射する放射状の光線軸中心と垂直な平面に形成することで、この平面を基準反射面10とすることができる。当該平面が、光カプラ3が反射する放射状の光の一部を正反射し、基準反射面10の反射光として受光部5に受光される。当該平面以外の凸面鏡8で反射された光は凹面鏡9でさらに反射され、液面Wを照射し、液面Wで反射した光の一部が液面Wの戻り光として凹面鏡9及び凸面鏡8を反射して受光部5に集光される。
【0028】
また、凸面鏡8の中心部が開口部11を有し、この開口部11の中心軸が、光カプラ3が反射する放射状の光線軸中心上にあるのが好ましい。開口部11を有することで、光カプラ3が反射する放射状の光線の一部が開口部11を通過し、直接液面Wを照射することができる。また、液面Wで反射される戻り光の一部が開口部11へ導入されて、受光部5に入射することができる。よって、光源2のパルス光及び液面Wの戻り光の光損失を抑制することができる。
【0029】
光学系は、レンズで構成することも可能である。例えば、
図3に示すように、レンズ12とレンズホルダ13とレンズ保護ガラス14とレンズホルダ13を固定するカバー15とカバーガラス16とを有するものとすることができる。
【0030】
(レンズ)
レンズ12は、光カプラ3が反射する放射状の光を平行光線束とし、液面Wで反射される戻り光を受光部5に集光する。レンズ12としては、放射状の光を平行光線束とすること、及び平行光線束を集光することができるものであれば特に限定されず、例えばコリメータレンズ等の公知のものを使用することができる。
【0031】
(レンズホルダ、レンズ保護ガラス)
レンズホルダ13は、レンズ12を保持し、レンズ保護ガラス14を有する。レンズホルダ13は、円筒状、角筒状等の筒状で形成され、底部が開口している。一方の底部にはレンズ保護ガラス14を有し、レンズ12を保護すると同時に、レンズ保護ガラス14の一方の表面を反射基準面とする。光カプラ3が反射する放射状の光の一部は、当該レンズ保護ガラス14の一方の表面で反射して、反射光として受光部5に入射する。光カプラ3が反射する放射状の光の他の一部は、レンズ保護ガラス14を透過して、レンズ12で平行光線束とされ、液面Wを照射する。レンズ12は、レンズホルダ13内で、光カプラ3が反射する放射状の光線束の中心軸上にレンズ12のレンズ面の中心軸が重なるように配置される。
【0032】
(カバー)
レンズホルダ13は、カバー15に収納されていることが好ましい。レンズホルダ13が、カバー15及びカバーガラス16内に収納されることで、外乱の影響を抑制することができ、特に当該液面距離計測装置1が屋外で使用される場合、風雨等の影響を抑制することができる。
【0033】
(カバーガラス)
カバー15は、カバーガラス16を有することが好ましい。また、カバーガラス16は、光カプラ3が反射する放射状の光線の中心軸に対してガラス面を垂直にした状態から1度以上30度以下傾斜して配置されるのが好ましい。光カプラ3が反射する放射状の光線の中心軸に対してガラス面を垂直に配置した場合、当該光線の一部がカバーガラス16で正反射することで、液面Wに向かう光量の損失が発生するおそれがあり、また当該正反射した光が受光部5に入射することで、測定ノイズになるおそれがある。ガラス面を光カプラ3が反射する放射状の光線の中心軸に対して垂直にした状態から、ガラス面の傾斜が1度未満である場合、正反射を抑制できないおそれがある。一方、当該傾斜が30度以上である場合、カバーガラス16及びカバー15が、不必要に大きくなるおそれがある。カバーガラス16としては、光を透過するものであれば特に限定されないが、液面Wの計測に必要とする波長の光のみを透過し、他の波長を透過させないフィルターであることが好ましい。液面Wの計測に使用されない波長の光を透過させないことで外乱の影響を抑制し、測定ノイズが低減されて、より精度の高い計測をすることができる。
【0034】
<利点>
当該液面距離計測装置1は、平行光線束を液面Wに照射するため、当該平行光線束の少なくとも一部を液面Wで反射される戻り光として受光することができる。従って、液面Wに波や泡が一部に存在する等の全面が平坦でない液面の場合でも、液面Wまでの距離を安定して計測することができる。連続して複数回の計測を行った際に異なる計測が得られた場合には、液面Wに波や泡が存在する等と判断して、異なる計測結果の平均値を算出する、又は極端に異なる計測結果を排除する等して、液面Wまでの距離を高精度に計測することができる。また、当該液面距離計測装置1は、光の空間での伝搬遅延を光速で除することで距離に換算するため、測定誤差要因がほとんどなく、高精度な液面距離計測をすることができる。
【0035】
[第二実施形態]
本発明の別の実施形態に係る液面距離計測装置20について、
図4を用いて説明する。なお、上述した液面距離計測装置と同一の構成については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0036】
液面距離計測装置20は、パルス光を発光する半導体光源21、発光されたパルス光を平行光線束にする反射部22を主に備え、半導体光源21を発光させる順バイアス回路部23、半導体光源21に逆バイアスをかけて半導体光源21を受光素子とさせる逆バイアス回路部24、半導体光源21が発光したタイミングと受光したタイミングとの時間差から液面距離を計算する信号処理部6、及び半導体光源21と順バイアス回路部23と逆バイアス回路部24と信号処理部6とを接続する電気ハーネス25を有する。
【0037】
<半導体光源>
半導体光源21は、パルス光を発光して反射部22で反射させて、このパルス光を液面Wに照射すると共に、反射部22で反射された液面Wが反射した戻り光を受光する。受光した光信号を電気信号に変換して、電気ハーネス25によって信号処理部6に送信する。半導体光源21は、反射部22の反射面の全面にパルス光を照射するため、パルス光を拡散するためのレンズ等を含むことができる。半導体光源21としては、特に限定されず、例えばLD、LED等の公知のものが使用することができるが、中でも広角に光を発光することができ、逆バイアスを印加することにより光を受光することができるLEDを使用することが好ましい。
【0038】
<反射部>
反射部22は、半導体光源21によって発光されるパルス光を平行光線束として液面Wに反射する。また、反射鏡22は、照射して液面Wで反射される戻り光を半導体光源21に集光する。反射面の鏡面加工としては、光を反射するものであれば特に限定されないが、液面Wの計測に必要とする波長の光のみを反射し、他の波長を反射させないコーティング等がされていることが好ましい。液面Wの計測に使用されない波長の光を反射させないことで外乱の影響を抑制し、測定ノイズが低減されて、より精度の高い計測をすることができる。
【0039】
<順バイアス回路部>
順バイアス回路部23は、順バイアス回路及びパルスジェネレーターを含み、半導体光源21に順バイアスをかけてパルス光を発光させる。
【0040】
<逆バイアス回路部>
逆バイアス回路部24は、逆バイアス回路を含み、半導体光源21が発光していないタイミングで半導体光源21に逆バイアスをかけて液面で反射される戻り光を受光する受光器とする。順バイアス回路部23と逆バイアス回路部24とは、一体で構成することも可能である。
【0041】
<信号処理部>
本実施形態での信号処理部6は、順バイアス回路部23が半導体光源21を発光させたタイミングと、逆バイアス回路24が半導体光源21に逆バイアスをかけて半導体光源21が液面Wで反射される戻り光を受光したタイミングとの時間差から、液面Wまでの距離を算出する。液面Wの距離としては、測定対象の底部から液面Wまでの高さ、或いは半導体光源21の高さ等を仮想的に基準面として当該基準面から液面Wまでの距離、又は液面Wの時間あたりの変化量等を計測することができる。
【0042】
<電気ハーネス>
電気ハーネス25は、半導体光源21と順バイアス回路部23と逆バイアス回路部24とを接続する。具体的には、順バイアス回路部23から順バイアス信号を半導体光源21に送信、逆バイアス信号部24から逆バイアス信号を半導体光源21に送信、及び半導体光源21が受光した信号を信号処理部6に送信する。
【0043】
具体的には、例えば半導体光源21をLEDとした場合、順バイアス回路部23から順バイアスのパルスをLEDに印加して発光させ、液面からの戻り光を逆バイアス回路部24から逆バイアスしたLEDをフォトダイオードとして受光する。電気ハーネス25を同軸ケーブルとして、当該同軸ケーブルの特性インピーダンスに対してLEDの直列抵抗と終端抵抗の和が整合するように終端抵抗値を選択する。LEDに逆方向に流れる光電流による終端抵抗両端の電圧低下を信号処理部6に含まれる測定パルス受信回路で受信して、信号処理部6にて発光及び受光のパルスの相対遅延を計測する。発光及び受光のパルス時間幅が、発光した光の液面距離伝搬時間よりも大きくなる場合、受光パルスを微分処理、原パルス波形の立ち上がりに相当する発光パルスの遅れを計測することで、液面距離伝搬時間を計測することができる。
【0044】
<利点>
当該液面距離計測装置20は、半導体光源21が発光と受光を兼ねるため、より簡易な構成で液面Wの距離を計測することができる。また、反射部22のサイズを小さくすることで、大型の液面距離計測装置の設置が困難な挟所に、当該液面距離計測装置20を設置することができる。さらに、反射部22のサイズを大きくすることで、容易に大きい平行光線束を得ることができるため、液面Wへの照射面積を大きくすることができ、濁流や大波等、液面Wが大きく荒れて不安定な動揺液面の場合でも、液面Wの距離を安定して高精度に計測することができる。また、半導体光源21をインコヒーレント光源とした場合、液面Wを照射する光が鉛直平面波とされないため、液面Wで反射された戻り光の受光確率を向上させることができ、動揺液面の計測を容易により安定して高精度に計測することができる。
【0045】
[多地点液面距離一括計測システム]
[第三実施形態]
本発明の別の実施形態に係る多地点液面距離一括計測システム30について、適宜図を用いて説明する。なお、上述した液面距離計測装置と同一の構成については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0046】
多地点液面距離一括計測システム30は、
図5に示すように、複数の波長を含むパルス光を発光する光源31、上記パルス光からそれぞれ特定波長の光を分波する特定波長分波部32、上記特定波長の光を液面Wに照射する光送受部33、上記パルス光と後述する基準反射面で反射される反射光及び液面Wで反射される戻り光とを伝播する光ファイバ34、光ファイバ34中の上記パルス光と反射光及び戻り光とを分配する光分配部35、反射光及び戻り光の光信号を受光して電気信号に変換する受光部36及び信号処理部37を主に備える。
【0047】
多地点液面距離一括計測システム30は、光ファイバ34に伝播されるパルス光を増幅するための送信側光増幅部38と、反射光及び戻り光を増幅するための受信側光増幅部39と、受光部36が変換した電気信号を信号処理部37に送信する電気ハーネス7と、光ファイバ34の終端部に配置される光ファイバ終端器(不図示)とをさらに有することができる。
【0048】
<光源>
光源31は、複数の波長を含むパルス光を発光し、光ファイバ34に送出する。光源31は、複数の波長を含むパルス光を発光できるものであれば特に限定されず、例えばパルスジェネレーターを用いた波長掃引型レーザー、スーパーコンティニウム光源等の公知のものを使用することができる。
【0049】
<光増幅器>
送信側光増幅器38は光源31が発光する光を増幅させ、受信側光増幅器39は基準反射面で反射される反射光及び液面Wで反射される戻り光を増幅させることで、パルス光と反射光及び戻り光とを安定した光信号とする。送信側光増幅器38と受信側光増幅器39とは、同一の光増幅器を使用することができる。光増幅器としては、特に限定されるものでなく、例えばエルビウム添加光ファイバ増幅器(Erbium−Doped Fiber Amplifier:EDFA)等の公知のものを使用することができる。
【0050】
<光ファイバ>
光ファイバ34は、光源31、特定波長分波部32、光送受部33、光分配部35、及び受光部36を連通し、パルス光と反射光及び戻り光とを伝播する。また、光送受部33に含まれる光ファイバ34は、端部を液面Wに向けて略垂直に固定され、当該端部がパルス光を液面Wに向けて出射すると共に、液面からの戻り光を受容する。光ファイバ34は、光を効率的に伝送できるものであれば特に限定されず、例えば、シングルモードファイバ(Single Mode Fiber:SMF)、マルチモードファイバ(Multi Mode Fiber:MMF)等の公知のものを使用することができる。
【0051】
少なくとも光送受部33に含まれる光ファイバ34は、デュアルモードファイバ(Dual Mode Fiber:DMF)であることが好ましい。DMFは、SMF及びMMFの両方の特性を有するため、例えば、光源31が発光するパルス光を光の分散の少ないSMFで送信し、SMFよりコア径の大きなMMFで、液面Wで反射される戻り光を受容することができる。よって、効率的に光源が発光するパルス光を液面Wに照射することができると共に、効率的に戻り光を受容することができ、安定して高精度な液面距離計測をすることができる。
【0052】
また、その他で使用される光ファイバ34としては、SMFであることが好ましい。その他で使用される光ファイバ34を、光の分散の少ないSMFとすることで、例えば数十km先の遠隔地の計測も可能とすることができる。
【0053】
当該多地点液面距離一括計測システムに用いられるDMFのMMF部のコア径としては、特に限定されるものではないが、一般的な100μmとすることができる。MMF部のコア径の下限としては、150μmが好ましく、200μmがより好ましい。MMF部のクラッド径を大きくすることで、戻り光を受容する確率(捕捉率)を向上させることができる。当該DMFのSMF部のコア径としては、特に限定されるものではないが、一般的な10μmとすることができる。
【0054】
<光分配部>
光分配部35は、光源31が発光するパルス光と、光送受部33が有する基準反射面で反射される反射光及び液面Wで反射される戻り光とを分岐する。具体的には、光分配部35は、光源31が発光したパルス光を特定波長分波部32に向けて送出し、基準反射面で反射される反射光及び液面Wで反射される戻り光を分岐して受光部5に送出する。光分配部35は、パルス光と反射光及び戻り光とを分岐可能なものであれば特に限定されず、例えば光サーキュレータ等の公知のものを使用することができる。
【0055】
<特定波長分波部>
特定波長分波部32は、光源31のパルス光から特定の波長の光を取り出して、この特定波長光を光送受部33へ送出する。取り出された特定波長光以外の波長の光は特定波長分波部32を通過し、次の特定波長分波器へ送信される。特定波長分波部32としては、複数の波長を含む光から特定の波長の光を取り出すことができるものであれば特に限定されず、例えば
図6で示すように、一対の光合分波器40を含むものとすることができる。一対の光合分波器40を含むことで、個々の特定波長分波部32で所望する波長の光のみを取り出すことができる。
【0056】
(光合分波素子)
一対の光合分波器40を含む特定波長分波部32によって所望する波長を取り出すには、光ファイバ34aを伝播する複数の波長を含む光が光分波素子40aによって所定の波長毎に分波される。所定の波長毎に分波された中から波長λ(1)の光を取り出して光ファイバ34bに分岐し、図示しない光送受部33へと送信する。他の波長の光は、光合波素子40bによって一つの光にまとめられ、光ファイバ34c送信される。続いて、波長λ(2)の波長の光を取り出すには上記同様に、光ファイバ34cを伝播する複数の波長を含む光を光分波素子40cによって所定の波長毎に分波し、所定の波長毎に分波された中から波長λ(2)の光を取り出して光ファイバ34dに分岐し、上記光送受部33とは異なる光送受部33へと送信する。他の波長の光は、光合波素子40dによって一つの光にまとめられ、光ファイバ34eへと送信される。
【0057】
光送受部33から光ファイバ34bを伝播する波長λ(1)の反射光及び戻り光は、他の波長の光と共に光ファイバ34aに伝送され、受光部36へと送信される。他の光送受部33から光ファイバ34dを伝播する波長λ(2)の反射光及び戻り光は、他の波長の光と共に、光ファイバ34cに伝送され、受光部36へと送信される。
【0058】
(光サーキュレータ)
特定波長分波部32が、3端子光サーキュレータ41と上記特定波長の出射光を反射する光デバイスであるブラッグ格子光ファイバ(Fiber Bragg Grating:FBG)42を含むと良い。3端子光サーキュレータ41とFBG42とを含むことにより、簡易な構成で特定の波長の光を取り出すことができ、光損失を抑制することができる。
【0059】
特定波長分波部32が3端子光サーキュレータ41とFBG42を含む構成で、波長λ1の光を取り出す場合について、
図7を用いて説明する。光ファイバ34aを伝播する複数の波長を含む光は、3端子光サーキュレータ41aによって光ファイバ34fに伝送される。波長λ(1)の光は、波長λ(1)の光のみを反射することができるFBG42aによって反射され、3端子光サーキュレータ41aによって光ファイバ34gに伝送される。さらに波長λ(1)の光は、3端子光サーキュレータ41bにより光ファイバ34bに伝送され、図示されない光送受部33に向かう。光送受部33から光ファイバ34bを伝播する波長λ(1)の反射光及び戻り光は、3端子光サーキュレータ41bにより光ファイバ34hに伝送される。波長λ(1)の戻り光は、光ファイバ34hの一端に配置される波長λ(1)の光のみを反射することができるFBG42bによって反射され、3端子光サーキュレータ41bによって光ファイバ34gに伝送され、さらに3端子光サーキュレータ41aによって光ファイバ34aへと伝送され、受光部36へと送信される。
【0060】
光ファイバ34aを伝播する波長λ(1)以外の波長λ(1+n)の光は、
図8で示すように、3端子光サーキュレータ41aによって光ファイバ34fに伝送される。波長λ(1+n)の光は、波長λ(1)の光のみを反射することができるFBG42aを通過して、光ファイバ34iを伝播し、3端子光サーキュレータ41cによって光ファイバ34cに伝送される。光ファイバ34cを伝播する波長λ(1+n)の反射光及び戻り光は、3端子光サーキュレータ41cによって光ファイバ34jに伝送され、FBG42bを通過し、光ファイバ34hを伝播して、3端子光サーキュレータ41bによって光ファイバ34gに伝送され、さらに3端子光サーキュレータ41aによって光ファイバ34aに伝送されて、受光部36へと送信される。
【0061】
特定波長分波部32が4端子光サーキュレータ43をさらに含むのがより好ましい。4端子光サーキュレータ43をさらに含むことで、特定波長分波部32をより簡易な構成とすることができ、光損失をより抑制することができる。
【0062】
特定波長分波部32が4端子光サーキュレータ43をさらに含む構成で、波長λ(1)の光を取り出す場合について、
図9を用いて説明する。光ファイバ34aを伝播する複数の波長を含む光は、4端子光サーキュレータ43によって光ファイバ34kに伝送される。波長λ(1)の光は、波長λ(1)の光のみを反射することができるFBG42cによって反射され、4端子光サーキュレータ43によって光ファイバ34bに伝送され、図示されない光送受部33へと向かう。光送受部33から光ファイバ34bを伝播する波長λ(1)の反射光及び戻り光は、4端子光サーキュレータ43により光ファイバ34lに伝送され、光ファイバ34lの一端に配置される波長λ(1)の光のみを反射することができるFBG42dによって反射される。さらに、4端子光サーキュレータ43によって光ファイバ34aに伝送され、受光部36へと送信される。
【0063】
光ファイバ34aを伝播する波長λ1以外の波長λ(1+n)の光は、
図10で示すように、4端子光サーキュレータ43によって光ファイバ34kに伝送され、波長λ(1)の光のみを反射することができるFBG42cを通過し、光ファイバ34mを伝播して、3端子光サーキュレータ41dによって光ファイバ34cに伝送される。光ファイバ34cを伝播する波長λ(1+n)の反射光及び戻り光は、3端子光サーキュレータ41dによって光ファイバ34nに伝送されFBG42dを通過し、光ファイバ34lを経て4端子光サーキュレータ43によって光ファイバ34aに伝送され、受光部36へと送信される。
【0064】
<光送受部>
光送受部33は、光ファイバ34の端部を略垂直に液面Wに向け、特定波長光を液面Wに照射する。また、この特定波長光の液面Wで反射した戻り光を光ファイバ34の端部に集光し、受光部36に伝送させる。光送受部33は、光ファイバ34の端部から出射されて放射状に広がる特定波長光を平行光線束にすると共に、液面Wからの戻り光を光ファイバ34の端部に集光するための光学系を有する。また、光ファイバ34の端部から出射される特定波長光の一部を液面Wに照射させることなく反射して、この反射光を受光部36に伝送させるための基準反射面を有する。この基準反射面からの反射光を受光部36が受光したタイミングと液面Wからの戻り光を受光したタイミングとを信号処理部37が計測することで、液面Wまでの距離が算出される。
【0065】
〔光学系〕
光学系は、光ファイバ34の端部から出射される放射状の特定波長光を平行光線束とすると共に、液面Wで反射される戻り光を当該端部に集光する。光学系は、当該端部で出射される放射状の光を平行光線束とし、戻り光を当該端部に集光することができる構成であれば特に限定されるものではなく、例えば
図8に示すように、レンズ12とレンズホルダ45と光ファイバ34の端部をレンズホルダ45に固定するファイバコネクタ46とカバー47とカバーガラス16を有するものとすることができる。或いは、上述したシュバルツシルド光学系とすることも可能である。
【0066】
(レンズホルダ)
レンズホルダ45は、光ファイバ34の端部とレンズ12とを保持する。レンズホルダ45は、円筒状、角筒状等の筒状で形成され、一方が有底であり、他方が開口している。有底部には貫通孔を有し、これに光ファイバコネクタ46によって光ファイバ34の端部が嵌挿される。光ファイバ34の端部は、レンズホルダ45内に特定波長光を送出する。レンズ12は、レンズホルダ45内に、光ファイバ34の端部から出射される光線束の中心軸上にレンズ12のレンズ面の中心軸が重なるように配置される。光ファイバ34の端部から出射された特定波長光はレンズ12によって平行光線束とされ、液面Wへと向かう。液面Wで反射される戻り光は、レンズ12によって光ファイバ34の端部に集光され光ファイバ34を伝播し、受光部36で受光される。
【0067】
(カバー)
レンズホルダ45は、カバー47に収納されていることが好ましい。レンズホルダ45が、カバー47及びカバーガラス16内に収納されることで、外乱の影響を抑制することができ、特に当該液面距離計測装置1が屋外で使用される場合、風雨等の影響を抑制することができる。
【0068】
〔基準反射面〕
基準反射面は、光ファイバ34の端部から出射された特定波長光の一部を反射して、反射光を受光部36に送信する。基準反射面としては、特に限定されず、例えば光ファイバ34の端部を基準反射面とすることができる。或いは、カバーガラス16を基準反射面とすることも可能である。
【0069】
<受光部>
受光部36は、光送受部33が備える基準面で反射される反射光と液面Wで反射される反射光とを受光して電気信号に変換し、この電気信号は電気ハーネス7を通じて信号処理部37に送信される。受光部36としては、特に限定されず、例えばフォトダイオード等の公知のものを使用することができる。
【0070】
<信号処理部>
信号処理部37は、受光部36が変換した電気信号を受信して液面距離を算出する。具体的には、光送受部33から送信された特定波長の基準反射面の反射光及び液面Wの戻り光を受光部36が電気信号に変換し、信号処理部37に送信する。信号処理部37は、基準反射面の反射光を受光したタイミングと液面Wの戻り光を受光したタイミングとの差から、基準反射面から液面Wまでの距離を算出し、図示しない表示器、例えば液晶ディスプレイ等に表示する。
【0071】
<利点>
当該多地点液面距離一括計測システム30は、光源31が発光するパルス光を分岐することで、複数の計測地点をツリー型のネットワークで一括計測するため、それぞれの計測地点に光源31、受光部36、信号処理部37等を配備する必要がなく、またそれぞれの計測地点に電源を供給する必要もないため、簡易な構成で多地点の液面距離を一括して計測することができる。また、光源31及び受光部36と複数の光送受部33とを光ファイバ34で接続するため、雷害等を受けにくく、誘導電流の影響も少ない。よって、信号送受信の安定性に優れ、遠隔地の液面距離を高精度に計測することができる。さらに、光パルスを使用するため、超音波や電波を使用する方式に比べて、マンホールや洞穴等の狭い空間においても非接触で液面高さが計測可能であり、光の空間での伝搬遅延を光速で除することで距離に換算するため、測定誤差要因がほとんどなく、高精度な距離計測をすることができる。加えて、機械部品が使用されないため、摩耗や錆び等による劣化がほとんどなく、耐久性に優れる。
【0072】
[その他の実施形態]
本発明の液面距離計測装置及び多地点液面距離一括計測システムは、上記実施形態に限定されるものではない。
【0073】
上述した光源、信号処理部、光カプラ又は反射光分配部、及び受光部に換えて、OTDR(Optical Time−Domain Reflectometer)を使用することも可能である。
【0074】
第一実施形態では、光源2、光カプラ3及び受光部5を一体の構成としたが、光ファイバでそれぞれを連通し、当該光ファイバの一方の端部が光送受部4に光パルスを出射する構成とすることもできる。
【0075】
第二実施形態では、信号処理部6が、順バイアス回路部23が半導体光源21を発光させたタイミングと、逆バイアス回路24が半導体光源21に逆バイアスをかけて半導体光源21が液面Wで反射される戻り光を受光したタイミングとの時間差から、液面Wまでの距離を算出するとしたが、当該液面距離計測装置に反射基準面を配置して、当該反射基準面からの反射光を受光したタイミングと液面Wで反射される戻り光を受光したタイミングとの時間差から、液面Wまでの距離を算出することも可能である。或いは、反射部22の頂点を反射基準面として、当該頂点で正反射する光を反射光とすることができる。
【0076】
また、上述した液面距離計測装置は、液面距離計測に限られず、平行光線束を水平方向に測定対象物に向けることで、測距計とすることができる。