特許第6985665号(P6985665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985665
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】管材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20211213BHJP
   C22C 5/04 20060101ALI20211213BHJP
   C22F 1/14 20060101ALI20211213BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20211213BHJP
   H01T 13/32 20060101ALN20211213BHJP
   H01T 13/39 20060101ALN20211213BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20211213BHJP
【FI】
   H01T13/20 E
   C22C5/04
   C22F1/14
   B23K20/00 310M
   B23K20/00 310L
   !H01T13/32
   !H01T13/39
   !C22F1/00 613
   !C22F1/00 626
   !C22F1/00 624
   !C22F1/00 627
   !C22F1/00 650D
   !C22F1/00 651B
   !C22F1/00 661A
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 691Z
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-219944(P2017-219944)
(22)【出願日】2017年11月15日
(65)【公開番号】特開2018-92918(P2018-92918A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2020年10月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-235315(P2016-235315)
(32)【優先日】2016年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000198709
【氏名又は名称】石福金属興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】土井 義規
(72)【発明者】
【氏名】田中 真也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敦
(72)【発明者】
【氏名】田村 正行
(72)【発明者】
【氏名】梶 勇司
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−051635(JP,A)
【文献】 特開平03−101086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
C22C 5/04
C22F 1/14
B23K 20/00
H01T 13/32
H01T 13/39
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni基合金からなる外層と、
前記外層の内側に設けられ、Pt基合金からなる内層と、
前記外層と前記内層との間に中間層とを備えており、
前記中間層が、Pd、PtNi合金、PdNi合金のいずれかからなる層であり、前記外層と前記中間層とが拡散接合され、前記中間層と前記内層とが拡散接合されている管材。
【請求項2】
Ni基合金からなる外層と、
前記外層の内側に設けられ、Pt基合金からなる内層と、
前記外層と前記内層との間に中間層とを備えており、
前記中間層が2層からなり、
第1の中間層は前記外層の内側に設けられ、第2の中間層は前記第1の中間層と前記内層との間に設けられ、
第1の中間層が前記外層及び第2の中間層の成分のほかにAu、Cu、Niのいずれかを含む組成であり、
第2の中間層が、Pd、PtNi合金、PdNi合金のいずれかからなる層であり、前記第2の中間層と内層とが拡散接合されている管材。
【請求項3】
請求項に記載の管材の製造方法であって、
前記外層に対応するNi基合金からなる断面中空円形の第1の管材と、前記中間層に対応するPd、PtNi合金、PdNi合金のいずれかからなる断面中空円形の第2の管材と、前記内層に対応するPt基合金からなる断面円形の丸棒とを、その第1の管材の孔部にその第2の管材が位置し、かつ、その第2の管材の孔部にその丸棒が位置するように組み合わせる組み合わせ工程と、
組み合わされた前記第1の管材と前記2の管材と前記丸棒とを密着させる加工工程と、
真空又は不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、または、不活性ガス雰囲気中で熱間等方圧加圧することにより、前記密着された第1の管材と第2の管材と丸棒とを接合する熱処理工程と、
前記接合された丸棒付き管材の丸棒部分に機械的手段により孔を設けて管材とする穴あけ工程と、
前記孔が設けられた管材を切断する切断工程と、
を含む管材の製造方法。
【請求項4】
請求項に記載の管材の製造方法であって、
請求項の管材の製造方法の工程に加え、
請求項の前記組み合わせ工程の前に、前記第1の管材の内側面あるいは、前記第2の管材の外側面にAu、Cu、Niのいずれかのめっき層を設けるめっき工程をさらに含むことを特徴とする、管材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関用スパークプラグの放電電極として用いられる管材及びその製造方法に関する。
【0002】
円環状の接地電極を設け、その接地電極の内周面と中心電極の外周面との間に放電ギャップを形成するスパークプラグが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−51636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、Ni基合金からなる環状の電極母材と、その内周面に設けたPt、Irなどの単体、もしくはこれらの合金からなる貴金属層とが接合された円環状の接地電極が記載されている。
【0005】
接地電極である管材は中心電極とともに高性能、高信頼性が望まれている。特に接合信頼性を向上させる必要がある。エンジンの始動・停止による冷熱サイクルの激しいスパークプラグの電極においては、層間に繰返し熱応力が発生し、割れ、層間はく離等の不具合を生じやすい(接合信頼性が低い)。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接合信頼性の高い多層の管材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
Ni基合金からなる外層と、
前記外層の内側に設けられ、Pt基合金からなる内層と、
前記外層と前記内層との間に中間層とを備えた管材、及びその製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、層間の拡散促進により接合が改善し、接合信頼性の高い多層の管材を提供することができる。例えば、スパークプラグの電極としてこの管材を用いると、中間層が外層・内層間の熱応力を緩和し、エンジンの始動・停止に伴う繰返し熱応力による割れ、層間はく離等の不具合を抑制できる。また、拡散に必要な熱処理温度を低くできるため、外層及び内層の粒成長が進まず、粒界割れ等の不具合発生も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に示す管材の断面模式図である。
図2】第1の実施形態に示す管材の断面拡大像である。
図3】本発明によらない管材の断面拡大像である。
図4】第2又は第3の実施形態に示す管材の断面模式図である。
図5】第2の実施形態に示す管材の断面拡大像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、Ni基合金からなる外層と、前記外層の内側に設けられ、Pt基合金からなる内層と、前記外層と前記内層との間に中間層とを備えた管材において(図1)、前記中間層が、前記外層及び前記外層の成分のほかにAu、Ni、Ag、Pd、Ptのいずれかを含む組成である管材である。または、前記中間層が、前記外層及び前記外層の成分のほかにAgとPd、PdとNi、PtとNiのいずれかの組み合わせを含む組成である管材である。
【0011】
Ni基合金としては、例えばスペシャルメタル社製インコネル600、インコネル601等の合金を用いることができる。また、Pt基合金としては、例えば90Pt10Ni(mass%)、74.4Pt20Ir5.6Ni(mass%)などを用いることができる。
【0012】
第1の実施形態に対応する製造方法は、外層に対応するNi基合金からなる管材の内側面(内周面)あるいは、内層に対応するPt基合金からなる丸棒の外側面(外周面)のいずれかの面に、Au、Ni、Ag、Pd、Pt、または、AgとPdの2層、PdとNiの2層、PtとNiの2層、のいずれかのめっき層を設けるめっき工程と、それらのいずれかの面にめっき層が設けられた、管材と丸棒とを、その管材の孔部にその丸棒が位置するように組み合わせる組み合わせ工程と、組み合わされた管材と丸棒とを密着させる加工工程と、真空又は不活性ガス雰囲気中で、所定温度(例えば900℃〜1265℃)、所定時間(例えば0.5〜6時間)で加熱することにより、または、Ar等の不活性ガス雰囲気中で所定温度(例えば800℃〜1200℃)、所定圧力(例えば30〜180MPa)、所定時間(例えば0.5〜6時間)で熱間等方圧加圧することにより、密着された管材と丸棒とを接合する熱処理工程と、接合された丸棒付き管材の丸棒部分に機械的手段により孔を設けて管材とする穴あけ工程と、孔が設けられた管材を切断する切断工程と、を含む。
【0013】
めっき工程では、めっきの手段は公知の方法が適用でき、電解めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタリングなどが適する。
【0014】
次に、組み合わせ工程では、いずれかの面にめっき層が設けられた、管材と丸棒とを、その管材の孔にその丸棒が位置するように組み合わせる。例えば、管材の孔の中にその丸棒を挿入する。
【0015】
加工工程では、組み合わされた管材と丸棒とを密着させる。加工には、たとえば、スエージング機を用いることができる。スエージング機における、回転しながら往復運動する1組のダイス間に、組み合わされた管材と丸棒とを挿入する。管材は直径方向に加圧され、その外径が絞られることにより、管材と丸棒とは緊密に密着される。このほか、管材の外径を伸線ダイスで縮径する引抜加工としてもよい。
【0016】
次に、熱処理工程では、例えば、真空中又は不活性ガス雰囲気中で、所定温度で加熱することにより密着された管材と丸棒とを接合する。加熱温度は1150℃〜1265℃とするのが好ましい。
または、熱処理工程では、Ar等の不活性ガス雰囲気中で所定温度(例えば800℃〜1200℃)、所定圧力(例えば30〜180MPa)、所定処理時間(例えば0.5〜6時間)で熱間等方圧加圧することにより密着された管材と丸棒とを接合する。
【0017】
熱処理工程においてめっき層は、両隣接面に拡散し、中間層を形成する。中間層は、外層、内層及びめっき層の成分が拡散し、各々の成分を含む組成となる。めっきが、AgとPdの2層、PdとNiの2層、PtとNiの2層の場合であっても、中間層は、外層、内層及びめっき層の成分が拡散し、各々の成分を含む組成となる。めっき層の成分元素はNi基合金及びPt基合金との拡散性がよく、めっき層を備えない管材に比べ非拡散部分の少ない又は全くない、接合信頼性の高い管材とすることができる。
【0018】
特に、めっき層にAu又はPdを含む場合には、これら成分と外層成分であるNiとが低融点相を形成し拡散がより促進されるため、より接合信頼性の高い管材とすることができる。
【0019】
次に、穴あけ工程では、拡散接合された丸棒付き管材の丸棒部分に機械的手段により孔を設け、多層の管材を得る。次に、切断工程では、ワイヤーソー等により、多層の管材を切断する。
【0020】
本発明の第1の実施形態の管材では、めっき工程においてめっき層が設けられることにより、熱処理工程において、内層(Pt基合金)と外層(Ni基合金)の拡散が促進され、良好な接合が得られる(図2)。一方、めっき層を設けない場合、部分的な接合不良(はく離又は非拡散)が観察されることがある(図3)。
【0021】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、Ni基合金からなる外層と、外層の内側に設けられ、Pt基合金からなる内層と、外層と前記内層との間に中間層とを備えた管材において、中間層が、Pd、PtNi合金、PdNi合金のいずれかからなる層であり、外層と中間層とが拡散接合され、中間層と内層とが拡散接合されている管材である。すなわち、外層と中間層とは拡散層を介して一体化されており、中間層と内層とは拡散層を介して一体化されている。
【0022】
中間層として、Pd、PtNi合金、PdNi合金のいずれかからなる断面中空円形の第2の管材を用いる。内層(Pt基合金)の線膨張係数が約9×10−6−1、外層(Ni基合金)は線膨張係数が約16×10−6−1であるのに対し、中間層(Pd、PtNi合金、PdNi合金)の線膨張係数は12×10−6−1であり、両者の線膨張係数の値の中間に設定される。
【0023】
第2の実施形態に対応する製造方法は、外層に対応するNi基合金からなる断面中空円形の第1の管材と、中間層に対応するPd、PtNi合金、PdNi合金のいずれかからなる断面中空円形の第2の管材と、内層に対応するPt基合金からなる断面円形の丸棒とを、その第1の管材の孔部にその第2の管材が位置し、かつ、その第2の管材の孔部にその丸棒が位置するように組み合わせる組み合わせ工程と、組み合わされた第1の管材と2の管材と丸棒とを密着させる加工工程と、真空又は不活性ガス雰囲気中で、所定温度(例えば900℃〜1265℃)、所定時間(例えば0.5〜6時間)で加熱することにより、または、Ar等の不活性ガス雰囲気中で所定温度(例えば800℃〜1200℃)、所定圧力(例えば30〜180MPa)、所定時間(例えば0.5〜6時間)で熱間等方圧加圧することにより、密着された第1の管材と第2の管材と丸棒とを接合する熱処理工程と、接合された丸棒付き管材の丸棒部分に機械的手段により孔を設けて管材とする穴あけ工程と、孔が設けられた管材を切断する切断工程と、を含む。熱処理工程における加熱温度は1050℃〜1265℃とするのが好ましい。
【0024】
第2の実施形態の管材では、中間層として、Pd、PtNi合金、PdNi合金のいずれかからなる第2の管材を挿入することにより、熱処理工程の加熱時に想定される間隙が軽減できる(図4図5)。すなわち、上述の通り、中間層の線膨張係数は、内層、外層の線膨張係数の値の中間に設定されているため、外層と中間層の膨張差、及び、中間層と内層の膨張差が、この中間層を備えない場合に比べて小さくなり、間隙形成をさらに軽減し、拡散接合が促進される。
【0025】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、中間層が2層からなり、 第1の中間層は前記外層の内側に設けられ、第2の中間層は前記第1の中間層と前記内層との間に設けられ、第1の中間層が外層及び第2の中間層の成分のほかにAu、Cu、Niのいずれかを含む組成であり、第2の中間層が、Pd、PtNi合金、PdNi合金のいずれかからなる層であり、前記第2の中間層と内層とが拡散接合されている管材である。外層と第2の中間層とは第1の中間層を介して一体化されており、第2の中間層と内層とは拡散層を介して一体化されている。
【0026】
第3の実施形態に対応する製造方法は、第2の実施形態の製造方法に加え、外層に対応するNi基合金からなる第1の管材の内側面あるいは、第2の中間層に対応するPd、PtNi合金、PdNi合金のいずれかからなる断面中空円形の第2の管材の外側面にAu、Cu、Niのいずれかのめっき層を設けるめっき工程を備える。
【0027】
このように形成されためっき層は、熱処理工程で両隣接面に拡散し、第1の中間層を形成する。第1の中間層は、外層、第2の中間層及びめっき層の成分が拡散し、各々の成分を含む組成となる。熱処理工程では、例えば、真空中、熱処理を所定温度(例えば900℃〜1265℃)とすることができる。または、熱処理工程では、Ar等の不活性ガス雰囲気中で所定温度(例えば800℃〜1200℃)、所定圧力(例えば30〜180MPa)、所定時間(例えば0.5〜6時間)で熱間等方圧加圧することができる。熱処理工程における加熱温度は1050℃〜1265℃とするのが好ましい。
【0028】
本発明の第3の実施形態の管材では、第2の中間層(Pd、PtNi合金、PdNi合金)を備えることで線膨張係数の差を緩衝させることができ、かつ、めっき層を設けることにより、第2の中間層(Pd、PtNi合金、PdNi合金)と外層(Ni基合金)の拡散を促進し、その結果、接合が促進される。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
外層に対応するインコネル601からなる断面中空円形の管材と、内層に対応する90PtNi(mass%)からなる断面円形の丸棒とを用意した。管材の寸法は、外径6.4mm、内径4.0mmと、丸棒の直径は3.8mmとした。
【0030】
上記丸棒の外側面に、電解めっきにより下記元素及び厚さのめっき層を形成した(めっき工程)。
実施例1−1 Au5μm
実施例1−2 Pd5μm
実施例1−3 Ni5μm
【0031】
次に、上記管材の孔に上記めっき層が形成された丸棒を挿入することにより、管材と丸棒とを組み合わせた(組み合わせ工程)。
【0032】
次に、丸棒と組み合わせられた管材をスエージング加工した。スエージング加工により管材の直径を絞り、管材と丸棒とを密着させた(加工工程)。その後、管材を長さ20mmに切断した。
【0033】
切断した管材を、真空中で熱処理し、管材と丸棒とを拡散接合した(熱処理工程)。熱処理温度・時間は、次の通りとした。
実施例1−1 1250℃、1時間
実施例1−2 1250℃、1時間
実施例1−3 1265℃、1時間
【0034】
次に、管材と接合された丸棒の中央に、ドリル及びリーマで断面円形の孔を軸に沿って開けた(穴あけ工程)。
【0035】
丸棒の中央に孔が開けられた多層の管材をワイヤーソーにて所定の寸法に切断した(切断工程)。
【0036】
実施例1−4及び実施例1−5では、外層の材料をNi基合金であるインコネル600とするとともに、90PtNi(mass%)からなる断面円形の丸棒の外周面のめっき層を2層とした。実施例1−4では、丸棒にPdを2μmめっきし、さらにNiを1μmめっきした。実施例1−5では、丸棒にPtを4μmめっきし、さらにNiを1μmめっきした。また、熱処理工程における、熱処理温度・時間は、実施例1−4、実施例1−5とも、1150℃、1時間とした。それ以外の工程、条件は実施例1−1〜実施例1−3と同様とした。
【0037】
実施例1−6〜実施例1−9では、外層の材料をNi基合金であるインコネル601とするとともに、90PtNi(mass%)からなる断面円形の丸棒の外周面のめっき層をNi10μmとした。また、加工工程では、組み合わされた第1の管材と2の管材と丸棒とを冷間にて密着させた。また熱処理工程では、Ar雰囲気中で、熱間等方圧加圧した。熱処理温度・圧力・時間は、次の通りとした。それ以外の工程、条件は実施例1−1〜実施例1−3と同様とした。
実施例1−6 900℃、150MPa、5時間
実施例1−7 1000℃、150MPa、5時間
実施例1−8 1100℃、150MPa、5時間
実施例1−9 1200℃、150MPa、5時間
【0038】
実施例1−10〜実施例1−13では、外層の材料をNi基合金であるインコネル601とするとともに、90PtNi(mass%)からなる断面円形の丸棒の外周面のめっき層をAu10μmとした。また、加工工程では、組み合わされた第1の管材と2の管材と丸棒とを冷間にて密着させた。また熱処理工程では、Arガス雰囲気中で、熱間等方圧加圧した。熱処理温度・圧力・時間は、次の通りとした。それ以外の工程、条件は実施例1−1〜実施例1−3と同様とした。
実施例1−10 900℃、150MPa、5時間
実施例1−11 1000℃、150MPa、5時間
実施例1−12 1100℃、150MPa、5時間
実施例1−13 1200℃、150MPa、5時間
【0039】
(実施例2)
実施例2では、外層としてNi基合金であるインコネル601からなる断面中空円形の第1の管材を、中間層として厚さ0.5mmのPdからなる第2の管材を、内層として74.4Pt20IrNi (mass%)からなる断面円形の丸棒をそれぞれ使用した。
【0040】
組み合わせ工程では第1の管材の孔部に第2の管材を挿入、第2の管材の孔部に丸棒を挿入することにより、組み合わせた。
【0041】
熱処理工程における熱処理温度・時間は1100℃、1時間とした。それ以外は実施例1−1〜実施例1−3と同様の工程、条件とした。
【0042】
(実施例3)
実施例3では、中間層としての厚さ0.5mmのPdからなる第2の管材の外周面にAuを1μmめっきした。それ以外は、実施例2と同様の工程、条件とした。
【0043】
(比較例)
比較例1及び比較例2では、実施例1−1〜実施例1−3におけるめっき工程を省略するとともに、熱処理工程における熱処理温度・時間をそれぞれ1270℃、1時間及び1250℃、1時間とした。それ以外は実施例1−1〜実施例1−3と同様の工程、条件とした。
【0044】
実施例並びに比較例の構成,熱処理条件及び判定結果を表1に示す。
【0045】
(評価)
接合性は、管材の切断面を耐水研磨紙及びバフにより研磨し、電子顕微鏡及び付属のエネルギ分散形X線分析装置(以下、SEM/EDSという。)で観察して、又は線分析によって評価した。Ptを含む内層の平均原子量は外層のNi基合金よりも大きいため明るく観察される。外層及び内層の間に拡散層すなわち組成傾斜があると、コントラストは濃淡のグラデーションとして表れ、その厚さも測定できる。また、SEM/EDSの線分析によっても拡散層の厚さを測定できる。
表1に示す判定は次によった。各層間の周において非拡散部分がないか又は周の1割以下のものは“○”、非拡散部分が周の1割を超え5割未満のものは“△”、5割以上のものは“×”とした。
【0046】
(結果)
実施例1の管材は、いずれも図2の断面像を呈した。実施例1−1〜実施例1−5では、外層及び内層の間に厚さ70μm以上の中間層(拡散層)が存在していた。熱間等方圧加圧した実施例1−6〜実施例1−13の管材では最大で厚さ100μm以上の中間層(拡散層)が存在していた。いずれも、この中間層内をEDSにて定性分析すると、めっき層の成分が検出された。
実施例2の管材は、図5の断面像を呈し、外層(第1の管材)及び中間層(第2の管材)の間、並びに中間層(第2の管材)及び内層の間にそれぞれ厚さ30μm以上の拡散層が存在していた。拡散層の厚さはEDSの線分析によって測定した。
実施例3の管材は、外層(第1の管材)及び中間層(第2の管材)の間に厚さ70μm以上の中間層(拡散層)が存在していた。この中間層内をEDSにて定性分析すると、めっき層の成分Auが検出された。また、中間層(第2の管材)及び内層の間に厚さ30μm以上の拡散層が存在していた。拡散層の厚さはEDSの線分析によって測定した。
一方、比較例1の管材は、熱処理温度が1270℃という高温にもかかわらず拡散が不十分で、外層と内層との間には、コントラストの明瞭な界面(非拡散部分)が全周の2割程度残存していた。また、比較例2の管材は、図3の断面像を呈し、全周にわたり拡散層が観察されなかった。EDSの線分析によっても拡散層は確認されなかった。
【0047】
以上の結果から、本発明の管材は、中間層を備えない管材に比べて層間の拡散が促進されることが明らかとなった。また、本発明の管材は、中間層を備えない管材に比べてより低い熱処理温度でも十分な拡散が得られた。
【0048】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5