【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0050】
<調製例1−1>
固形分34質量%の生ローヤルゼリーに対して蒸留水を加えて、その乾燥固形分含量が11質量%となるように調整し、これを攪拌して成分をよく溶解・分散させ、3Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整した。このローヤルゼリー溶液(RJ溶液:以下、「ローヤルゼリー」を「RJ」と称する場合がある。)の100gに対して、市販のパン酵母含有製剤A500mgを添加し、好気条件下に30℃で24時間インキュベートすることにより、酵母発酵処理を行なった。酵母発酵処理後、80℃で30分間加熱殺菌し、その後に凍結乾燥、粉末化して、調製例1−1の酵母発酵RJ末を得た。
【0051】
<調製例1−2>
RJ溶液の100gに対して、パン酵母含有製剤Aの500mgに加えて、糖化酵素製剤(「グルクザイムAF6」天野エンザイム株式会社製)の100mgを添加した以外は、調製例1−1と同様にして、調製例1−2の酵母発酵RJ末を得た。
【0052】
<調製例2−1>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Bを使用した以外は、調製例1−1と同様にして、調製例2−1の酵母発酵RJ末を得た。
【0053】
<調製例2−2>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Bを使用した以外は、調製例1−2と同様にして、調製例2−2の酵母発酵RJ末を得た。
【0054】
<調製例3−1>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Cを使用した以外は、調製例1−1と同様にして、調製例3−1の酵母発酵RJ末を得た。
【0055】
<調製例3−2>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Cを使用した以外は、調製例1−2と同様にして、調製例3−2の酵母発酵RJ末を得た。
【0056】
<調製例4−1>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Dを使用した以外は、調製例1−1と同様にして、調製例4−1の酵母発酵RJ末を得た。
【0057】
<調製例4−2>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Dを使用した以外は、調製例1−2と同様にして、調製例4−2の酵母発酵RJ末を得た。
【0058】
<調製例5−1>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Eを使用した以外は、調製例1−1と同様にして、調製例5−1の酵母発酵RJ末を得た。
【0059】
<調製例5−2>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Eを使用した以外は、調製例1−2と同様にして、調製例5−2の酵母発酵RJ末を得た。
【0060】
<調製例6−1>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Fを使用した以外は、調製例1−1と同様にして、調製例6−1の酵母発酵RJ末を得た。
【0061】
<調製例6−2>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Fを使用した以外は、調製例1−2と同様にして、調製例6−2の酵母発酵RJ末を得た。
【0062】
[試験例1]
調製例1−1〜調製例6−2で得られた酵母発酵RJ末のそれぞれについて、その糖分含量を以下に示す方法で測定した。なお、比較のために、酵母発酵処理の原料としたRJ溶液や、酵母を添加直後に殺菌を行い、酵母発酵処理を施さないで調製例1−1と同様にして調製したRJ末についても、同様に、それらの糖分含量を測定した。
【0063】
(糖分含量の測定方法)
標準品(グルコース、フルクトース、スクロースその他の糖)50mgを50mL容のメスフラスコに合一して秤量し、50%アセトニトリルで1.00mg/mLに定容した。公比5で段階希釈し、0.20mg/mL、0.04mg/mLの標準溶液を調製した。また、各被測定検体については、その60mgを20mL容のメスフラスコに秤量し、50%アセトニトリルで定容し、0.20μmフィルターで濾過をして分析試料とした。分析にはHPLC−RID(示差屈折系)を使用し、各被測定検体について得られた測定値曲線下面積値を、別途上記標準溶液により予め作成した検量線にあてはめ、定量した。なお、HPLC−RID(示差屈折系)の分析条件は、以下のとおりとした。
【0064】
・移動相:72%アセトニトリル
・カラム:Cosmosil Sugar−D Pached Column
・流速:1mL/m
・検出:RI(30℃、ポジティブ)
・注入量10μL
【0065】
その結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
その結果、表2に示すように、酵母発酵処理を施さないで調製した対照のRJ末では糖分がほとんど減量されなかったのに対して、酵母発酵処理によりローヤルゼリー含有の糖分が顕著に減量され、なかでもグルコースやフルクトースの減量化が顕著であった。
【0068】
[試験例2]
ローヤルゼリー素材においてローヤルゼリー含有の糖分を減量することによるメリットを検証するため、以下に示す錠剤を調製した。
【0069】
(錠剤1)
ローヤルゼリーの凍結乾燥製品(アピ株式会社製)を使用し、その192.5mgに対して、賦形剤を57.5mg使用して、1錠あたり250mgの錠剤を常法に従い打錠成形した。
【0070】
(錠剤2)
ローヤルゼリーの酵素処理製品(アピ株式会社製)(10質量%の乾燥助剤を含有)を使用し、その192.5mgに対して、賦形剤を57.5mg使用して、1錠あたり250mgの錠剤を常法に従い打錠成形した。
【0071】
(錠剤3)
調製例5−1と同様にして調製した酵母発酵RJ末を使用し、その192.5mgに対して、賦形剤を57.5mg使用して、1錠あたり250mgの錠剤を常法に従い打錠成形した。
【0072】
(錠剤4)
調製例5−1と同様にして調製した酵母発酵RJ末を使用し、調製例5−1と同様にローヤルゼリーの酵母発酵処理を行ない、その発酵処理液の固形分100質量部に対して、乾燥助剤を37質量部添加し、80℃で15分間加熱殺菌した後、凍結乾燥、粉末化した。得られた粉末の192.5mgに対して、賦形剤を57.5mg使用して、1錠あたり250mgの錠剤を常法に従い打錠成形した。
【0073】
(錠剤5)
調製例5−1と同様にローヤルゼリーの酵母発酵処理を行ない、その後さらに酵素処理を施した。具体的には、酵母発酵処理後のRJ溶液のpHを3Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.75に再調整し、その1500mLに対して、蛋白質分解酵素製剤(「スミチームFP−G」新日本化学工業株式会社製)の1.65gを添加し、50℃で3時間、酵素処理を行なった。その酵素処理液の固形分100質量部に対して、乾燥助剤を30質量部添加し、80℃で15分間加熱殺菌した後、凍結乾燥、粉末化した。得られた粉末の192.5mgに対して、賦形剤を57.5mg使用して、1錠あたり250mgの錠剤を常法に従い打錠成形した。
【0074】
(錠剤6)
錠剤5の調製において、酵素処理液の固形分100質量部に対して、乾燥助剤を10質量部添加した以外は、錠剤5と同様にして、1錠あたり250mgの錠剤を得た。
【0075】
得られた錠剤1〜錠剤6について、その錠剤中の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)、10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10HDA)含有量、及び錠剤を所定環境下に保管したときの外観の変色を調べた。具体的には、糖分は、試験例1で測定した方法と同様にして測定した。10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10HDA)は、以下に示す方法で測定した。錠剤の外観の変色は、常温、40℃、50℃の環境下(それぞれ湿度75%の環境下)に3日間保管した後の錠剤の色調を、目視により観察した。
【0076】
(10HDAの含有量の測定方法)
標準品(10−ヒドロキシ−2−デセン酸:10-hydroxy-2-decenoic acid)5mgを100mL容のメスフラスコに秤量し、100%メタノールで50.0μg/mLに定容した。公比5で段階希釈し、10.0μg/mL、2.0μg/mLの標準溶液を調製した。また、各被測定検体については、その25mgを50mL容のメスフラスコに秤量し、100%メタノールで定容し、0.20μmフィルターで濾過をして分析試料とした。分析にはUPLC(超高速液体クロマトグラフ)を使用し、各被測定検体について得られた測定値曲線下面積値を、別途上記標準溶液により予め作成した検量線にあてはめ、定量した。なお、UPLC(超高速液体クロマトグラフ)の分析条件は、以下のとおりとした。
【0077】
・移動相:超純水/アセトニトリル(ともに0.1%リン酸を含む)
・カラム:BEH−C18(10cm)
・流速:0.3mL/min
・検出:PDA(210nm)
・注入量:1μL
【0078】
その結果を
図1に示す。
【0079】
図1に示すように、酵母発酵処理を施さないローヤルゼリー素材を使用して調製した錠剤1,2に比べ、酵母発酵処理を経たローヤルゼリー素材を使用して調製した錠剤3〜6では、錠剤中の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)が顕著に減量され、40℃や50℃での加速試験における褐変が抑制された。また、乾燥助剤を使用せずに調製された錠剤1と錠剤3との比較において、酵母発酵処理を施さないローヤルゼリー素材を使用して調製した錠剤1に比べ、酵母発酵処理を経たローヤルゼリー素材を使用して調製した錠剤3では、錠剤中の10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10HDA)含有量が相対的に増量された。よって、ローヤルゼリー含有の糖分が減量されたローヤルゼリー素材を使用することによって、錠剤全体の糖分含量が減量され、それに伴いデセン酸含有量が相対的に増量されるとともに、経時的な外観の変色(特に褐変)が抑制されることが明らかとなった。
【0080】
[試験例3]
ローヤルゼリー素材においてローヤルゼリー含有の糖分を減量することによるメリットを検証するため、以下に示す粉末を準備した。
【0081】
(粉末1)
調製例5−1と同様にして調製した酵母発酵RJ末。この粉末の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)は0質量%(測定限界以下)であった。
【0082】
(粉末2)
ローヤルゼリーの凍結乾燥処理製品(アピ株式会社製)。この粉末の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)は35.2質量%であった。
【0083】
(粉末3)
ローヤルゼリーの加熱処理製品(アピ株式会社製)。この粉末の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)は36.4質量%であった。
【0084】
(粉末4)
ローヤルゼリーの酵素処理製品(アピ株式会社製)。この粉末の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)は26.0質量%であった。
【0085】
上記粉末1〜粉末4について、その粉末をサンプル袋に入れ、40℃、湿度75%の環境下で保存することで加速試験を行い、経時的にサンプリングし、試料中の10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10HDA)の含有量を測定して、その安定性を検証した。10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10HDA)は、試験例3で測定した方法と同様にして測定した。
【0086】
その結果を
図2に示す。
【0087】
図2に示すように、酵母発酵処理を施さないローヤルゼリー素材である粉末2〜4に比べ、酵母発酵処理を経たローヤルゼリー素材である粉末1では、粉末中の10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10HDA)含有量が、糖分含量の減量に伴い相対的に増量されるとともに、保存時の安定性も向上することが明らかとなった。これは、ローヤルゼリー原料に含まれる糖分その他の成分であって、デセン酸の安定性に影響を与える成分が、酵母発酵処理によって減量されたためであろうと考えられた。
【0088】
[試験例4]
発酵処理のための酵母として酵母含有製剤Eを使用した調製例5−1において、酵母発酵処理するRJ溶液の乾燥固形分換算含量を2.6、5.1、7.7、11質量%と変え、更にpH条件をpH4〜7の範囲で変えて、それ以外は調製例5−1と同様にして、それぞれの条件における酵母発酵RJ末を調製し、試験例1と同様にして、それらの糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)を求めた。なお、それぞれのpH条件において、RJ溶液の乾燥固形分換算含量を10質量%に調整した場合であって、酵母を添加直後に殺菌を行い、酵母発酵処理を施さないで調製例5−1と同様にして調製したRJ末についても、対照として、同様にそれらの糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)を求めた。
【0089】
その結果を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
その結果、表3に示すように、液状基質たるRJ溶液のpHをpH5.0から酸性側に調整して酵母発酵処理を行なった場合、ローヤルゼリー含有の糖分はほとんど減量されなかった。また、液状基質たるRJ溶液のpHをpH6.0に調整して酵母発酵処理を行なうと、RJ溶液の乾燥固形分含量が5.1質量%以下の場合には、ローヤルゼリー含有の糖分はほぼ消失したが、RJ溶液の乾燥固形分含量が7.7質量%の場合には、ローヤルゼリー含有の糖分は半分程度残存し、RJ溶液の乾燥固形分含量が11質量%の場合には、ローヤルゼリー含有の糖分はほとんど減量されなかった。一方、液状基質たるRJ溶液のpHをpH7.0に調整して酵母発酵処理を行なうと、RJ溶液の乾燥固形分含量が2.6〜11質量%の範囲で、いずれの場合においても、ローヤルゼリー含有の糖分はほぼ消失した。よって、ローヤルゼリー含有の糖分を効率よく減量するには、pHと固形分含量の両方のファクターが重要であることが明らかとなった。
【0092】
[試験例5]
発酵処理のための酵母として酵母含有製剤Eを使用した調製例5−1において、酵母発酵処理するRJ溶液の乾燥固形分換算含量を、下記表4に示すとおりに2.6〜30質量%の範囲で変え、更にpH条件をpH5.5〜12の範囲で変えて、それ以外は調製例5−1と同様にして、それぞれの条件における酵母発酵RJ末を調製した。なお、酵母発酵処理の時間は、基本的には調製例5−1と同様に24時間とし(下記表4では「1d」で示される。)、RJ溶液の乾燥固形分換算含量を25又は30質量%に調製した場合にあっては、更に3日間(下記表4中「3d」で示される。)、5日間(下記表4では「5d」で示される。)、又は7日間(下記表4では「7d」で示される。)の処理時間についても酵母発酵RJ末を調製した。得られた酵母発酵RJ末について、試験例1と同様にして、それらの糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量、ないしはグルコースとフルクトースとスクロースの合計含有量)を求めた。また、試験例2と同様にして、それらの10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10HDA)の含有量を求めた。また、以下に示す方法で、それらの蛋白質及び/又はペプチドの含有量を求めた。なお、それぞれのpH条件において、RJ溶液の乾燥固形分換算含量を11、22、25、又は30質量%に調整した場合であって、酵母を添加直後に殺菌を行い、酵母発酵処理を施さないで調製例5−1と同様にして調製したRJ末についても、対照として(下記表4では「N」で示される。)、同様にそれらの糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量、ないしはグルコースとフルクトースとスクロースの合計含有量)、10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10HDA)の含有量、及び蛋白質及び/又はペプチドの含有量を求めた。
【0093】
(蛋白質・ペプチドの含有量の測定方法)
標準品(ウシ血清アルブミン:BSA)20mgを10mL容のメスフラスコに秤量し、超純水で2.00mg/mLに定容した。その後、公比2で段階希釈し、1.00mg/mL〜0.03mg/mLの標準溶液を調製した。また、各被測定検体については、その5mgを15mL容の遠沈管に秤量し、2.5%SDS水溶液を5mL加えたうえ、95℃で10分間加熱した後、3000rpmで、5分間後遠心分離して、得られた上清を分析試料とした。分析には、蛋白質・ペプチド用定量キット(「BCA Protein assay kit」Thermo Fisher Scientific社)を使用し、キットの添付プロトコールに従い、プレートリーダーにて562nmの吸光度を測定した。別途上記標準溶液により予め作成した検量線にあてはめ、定量した。
【0094】
その結果を表4に示す。
【0095】
【表4】
【0096】
その結果、表4に示すように、液状基質たるRJ溶液のpHがpH5.5〜11の範囲において、ローヤルゼリー含有の糖分を減量する効果や10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10HDA)の増量効果が認められた。更には、蛋白質及び又はペプチドについても、増量効果が認められた。また、液状基質たるRJ溶液の乾燥固形分含量が2.6〜30質量%の範囲において、ローヤルゼリー含有の糖分を減量する効果や10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10HDA)の増量効果が認められた。更には、蛋白質及び又はペプチドについても、増量効果が認められた。ただし、液状基質たるRJ溶液の乾燥固形分含量が25質量%や30質量%の場合には、本試験例の条件においては、処理に時間を要した。一方、液状基質たるRJ溶液のpHをpH12に調整して酵母発酵処理を行なうと、液状基質たるRJ溶液の乾燥固形分含量が11質量%の場合であっても、ローヤルゼリー含有の糖分を減量する効果は得られなかった。よって、試験例4の結果同様に、ローヤルゼリー含有の糖分を効率よく減量するには、pHと固形分含量の両方のファクターが重要であることが明らかとなった。
【0097】
[試験例6]
特開2006−219434号公報に記載された発明と、本発明の相異を検証するため、以下に示す検体を調製した。
【0098】
(検体1)
特開2006−219434号公報の製造例4と同様にしてローヤルゼリーの酵母発酵物を調製した。
【0099】
具体的には、ローヤルゼリーの凍結乾燥製品(アピ株式会社製)を使用し、その凍結乾燥ローヤルゼリー粉末30gに、蒸留水970gを加えて懸濁液を調製し、加熱殺菌した。この懸濁液にグルコアミラーゼ0.3g、パパイン0.3g、及びペクチナーゼ0.3gを加えた後、市販のパン酵母含有製剤Eを酵母菌数が10
8個/mLとなるように接種し、37℃で3日間静置培養した。培養終了後培養液を加熱殺菌し、その後に凍結乾燥して、これを検体1のRJ末とした。
【0100】
(検体2)
特開2006−219434号公報の製造例9と同様にしてローヤルゼリーの酵母発酵物を調製した。
【0101】
具体的には、ローヤルゼリーの凍結乾燥製品(アピ株式会社製)を使用し、その凍結乾燥ローヤルゼリー粉末30gに、蒸留水970gを加えて懸濁液を調製し、加熱殺菌した。この懸濁液に市販のパン酵母含有製剤Eを酵母菌数が10
8個/mLとなるように接種し、37℃で3日間静置培養した。培養終了後培養液を加熱殺菌し、その後に凍結乾燥して、これを検体2のRJ末とした。
【0102】
(検体3)
検体1の調製において、酵母を接種する前の懸濁液に添加したグルコアミラーゼ、パパイン、及びペクチナーゼを、いずれも加熱失活させて使用し、その後接種する酵母含有製剤Eも加熱失活させて使用した以外は、上記検体1と同様にして、検体3のRJ末を調製した。
【0103】
(検体4)
検体2の調製において、酵母含有製剤Eを加熱失活させて使用した以外は、上記検体2と同様にして、検体4のRJ末を調製した。
【0104】
(検体5)
検体2の調製において、酵母を接種する懸濁液のpHを6Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整した以外は、上記検体2と同様にして、検体5のRJ末を調製した。
【0105】
得られた検体1〜検体5について、その粉末中のグルコース、フルクトース、及びスクロースの含有量を、試験例1で測定した方法と同様にして測定した。なお、比較のために、原料としたローヤルゼリーの凍結乾燥製品についても、同様に、糖分含量を測定した。
【0106】
その結果を表5に示す。
【0107】
【表5】
【0108】
その結果、表5に示すように、特開2006−219434号公報の製造例4と同様にして調製した検体1のRJ末や、同製造例9と同様にして調製した検体2のRJ末では、酵素や酵母を加熱失活させて添加して調製した検体3のRJ末や、酵素処理を施さずに酵母を加熱失活させて添加して調製した検体4のRJ末に比べて、糖分の減量がほとんど認められなかった。これに対して、酵母を接種する際の懸濁液のpHをpH7.0に調整して調製した検体5のRJ末では、糖分の減量が顕著であった。よって、特開2006−219434号公報に記載された酵母発酵物では、糖分の減量化が本発明のようには十分になされておらずに、その原因の1つにはpH条件の不適合が挙げられるのではないかと考えられた。
【0109】
[試験例7
]
ローヤルゼリー素材においてローヤルゼリー含有の糖分を減量することによるメリットを検証するため、以下に示すようにして検体を調製した。
【0110】
<A>ローヤルゼリーの酵母発酵処理
固形分30質量%の生ローヤルゼリーの3.95kgに対して超純水8.00kgを加えて、これを攪拌して成分をよく溶解・分散させるとともに、20%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整した(乾燥固形分含量:約10質量%)。このローヤルゼリー溶液(RJ溶液)の約12.2kgに対して、市販のパン酵母含有製剤E60gを添加し(RJ溶液の固形分の5%)、好気条件下に30℃で48時間インキュベートすることにより、酵母発酵処理を行なった。酵母発酵処理後には、60℃達温後に30分間維持して加熱殺菌した。このようにして得られたローヤルゼリーの酵母発酵処理液を、以下「FY−RJ溶液」と称する場合がある。
上記FY−RJ溶液の糖分含量(グルコース、フルクトース、及びスクロース)を試験例1と同様にして測定したところ、いずれも検出限界以下の含有量であり、ローヤルゼリー含有の糖分は著しく減量していた。
上記FY−RJ溶液に対して、後述の表6に示す乾燥助剤をそれぞれ、乾燥固形分換算にして15質量%の量となるように添加し、よく混合したうえ、ディスポーザブルアルミ角皿に20g程度分注し、棚式凍結乾燥器にて凍結乾燥した。乾燥温度は35℃とし、乾燥時間は3日とした。また、コントロールとして、乾燥助剤を添加していないFY−RJ溶液も同様に凍結乾燥した。なお、乾燥助剤として増粘性のあるペクチン、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガムを使用する場合については、それぞれを乾燥固形分換算にして5質量%の量となるように添加したうえ、更に微結晶セルロースを併用して、これを10質量%の量となるように添加した。
得られたブロック状の凍結乾燥物を卓上ミルで粉砕し、検体とした。
【0111】
<B>ローヤルゼリー溶液(非処理)
上記<A>で使用した固形分30質量%の生ローヤルゼリーの4.00kgに対して超純水8.00kgを加えて、これを攪拌して成分をよく溶解・分散させ、乾燥固形分含量約10.92質量%のローヤルゼリー溶液(RJ溶液)を得、この非処理のローヤルゼリー溶液に対して、上記<A>で行ったのと同様にして、後述の表6に示す乾燥助剤をそれぞれ添加したうえ、凍結乾燥物を得た。得られたブロック状の凍結乾燥物を卓上ミルで粉砕し、検体とした。
なお、上記RJ溶液の糖分含量(グルコース、フルクトース、及びスクロース)を試験例1と同様にして測定したところ、それぞれの乾燥固形分換算質量は、グルコースで13.86質量%であり、フルクトースで13.22質量%であり、スクロースで0.97質量%の含有量であった。
【0112】
<C>ローヤルゼリー酵母発酵液の酵素処理
上記<A>で調製したFY−RJ溶液の4.75kgに20%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8.75に調整したうえ、蛋白質分解酵素製剤(「スミチームFP−G」新日本化学工業株式会社製)の4.96gを添加し(FY−RJ溶液の固形分の1%)、50℃で3時間、酵素処理を行なった。酵素処理後には、78℃達温後に15分間維持して失活処理した。このようにして得られたローヤルゼリー酵母発酵液の酵素処理液に対して、上記<A>で行ったのと同様にして、後述の表6に示す乾燥助剤をそれぞれ添加したうえ、凍結乾燥物を得た。得られたブロック状の凍結乾燥物を卓上ミルで粉砕し、検体とした。
【0113】
<D>ローヤルゼリー溶液の酵素処理
上記<B>で調製したRJ溶液の6.00kgに20%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8.74に調整したうえ、蛋白質分解酵素製剤(「スミチームFP−G」新日本化学工業株式会社製)の6.56gを添加し(RJ溶液の固形分の1%)、50℃で3時間、酵素処理を行なった。酵素処理後には、80℃達温後に15分間維持して失活処理した。このようにして得られたローヤルゼリー溶液の酵素処理液に対して、上記<A>で行ったのと同様にして、後述の表6に示す乾燥助剤をそれぞれ添加したうえ、凍結乾燥物を得た。得られたブロック状の凍結乾燥物を卓上ミルで粉砕し、検体とした。
【0114】
表6には、上記の検体の調製に使用した乾燥助剤の情報とともに、各乾燥助剤ごとに付したサンプル名をまとめて示す。
【0115】
【表6-1】
【0116】
【表6-2】
【0117】
【表6-3】
【0118】
【表6-4】
【0119】
[評価1]
(1)苛酷試験による色調の変化
50℃での苛酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた。具体的には、サンプルRJ粉末を約10gずつ樹脂フィルムからなるジップ容器に入れ、封を閉じて容器ごと50℃の恒温器に入れた。苛酷試験開始前と、開始1日後、3日後、7日後、14日後に写真撮影と色差測定を行った。
【0120】
色差測定には色差計(ZE-2000、NIPPON DENSHOKU)を使用し、CIE(国際照明委員会)L*a*b*色空間表示系におけるa*値、b*値、L*値を測定し、下記式(1)によってRJ粉末の色差(ΔE
i)を算出した(n=3)。
【0121】
ΔE
i={(L
i−L
0)
2+(a
i−a
0)
2+(b
i−b
0)
2}
1/2・・・(1)
(式中、L
0、a
0、及びb
0は、それぞれ苛酷試験開始前におけるRJ粉末のL*値、a*値、及びb*値であり、L
i、a
i、及びb
iは、それぞれ苛酷試験後におけるRJ粉末のL*値、a*値、及びb*値である。)
【0122】
写真撮影の結果を
図3〜
図10に、色差測定の結果を表7に、それぞれ示す。また、
図11及び
図12には、色差測定の結果をグラフ化して示す。
【0123】
【表7-1】
【0124】
【表7-2】
【0125】
【表7-3】
【0126】
【表7-4】
【0127】
その結果、特に、
図11にグラフ化して示されるように、ローヤルゼリーに酵母発酵処理を施して調製したRJ粉末(A0〜A16のサンプル)は、酵母発酵処理を施さないで調製したRJ粉末(B0〜B16のサンプル)に比べ、苛酷試験における経時的な外観の変色(特に褐変)が抑制された。また、
図12にグラフ化して示されるように、ローヤルゼリーに酵母発酵処理と酵素処理を施して調製したRJ粉末(C0〜C16のサンプル)は、ローヤルゼリーに酵素処理を施したが、酵母発酵処理を施さないで調製したRJ粉末(D0〜D16のサンプル)に比べ、苛酷試験における経時的な外観の変色(特に褐変)が抑制された。このような変色抑制効果は、酵母発酵処理が施されたことにより糖分が減量し、メーラード反応や酸化反応等の変色に関わる反応が抑制されたことが1つの原因として考えられた。
【0128】
また、サンプルA5(デキストリンDE3)、A1(ヒドロキシプロピルデンプン)、A2(α化デンプン)、A16(還元デンプン分解物)、A7(γ-シクロデキストリン)、A8(α-シクロデキストリン)、A10(アルギン酸ナトリウム)、A14(キトサン)、A11(イヌリン)、A12(ローカストビーンガム)、A13(微結晶セルロース)、A15(ゼラチン)、C4(デキストリンDE11)、C5(デキストリンDE3)、C1(ヒドロキシプロピルデンプン)、C2(α化デンプン)、C16(還元デンプン分解物)、C6(クラスターデキストリン)、C7(γ-シクロデキストリン)、C8(α-シクロデキストリン)、C10(アルギン酸ナトリウム)、C14(キトサン)、C11(イヌリン)、C12(ローカストビーンガム)、C15(ゼラチン)の結果にみられるように、それぞれに使用された乾燥助剤、デキストリン(DE3)、デキストリン(DE11)、ヒドロキシプロピルデンプン、α化デンプン、還元デンプン分解物、γ-シクロデキストリン、α-シクロデキストリン、アルギン酸ナトリウム、キトサン、イヌリン、ローカストビーンガム、微結晶セルロース、ゼラチン、クラスターデキストリンによって、酵母発酵処理による変色抑制効果は、更に増長された。一方で、サンプルA3、A9、C3、C9の結果にみられるように、それぞれに使用された乾燥助剤、デキストリン(DE25)、ペクチンは、かえって酵母発酵処理による変色抑制効果を打ち消してしまう結果となった。
【0129】
[評価2]
(2)苛酷試験による凝集状態の変化
上記(1)と同様にして50℃での苛酷試験を行って、その際の粉末の凝集状態の変化を調べた。具体的には、下記の基準で評価した。
【0130】
(スコア基準)
0 - 凝集がまったく認められない
1 * ごく僅かに凝集が認められるが、流動しただけで崩壊する程度
2 ** 凝集物の長径が4mm未満の凝集が多数認められる
3 *** 凝集物の長径が4mm以上8mm未満の凝集が多数認められる
4 **** 凝集物の長径が8mm以上の凝集が認められる
5 ***** 完全に固化している
【0131】
結果は、表8にまとめた。
【0132】
【表8-1】
【0133】
【表8-2】
【0134】
【表8-3】
【0135】
【表8-4】
【0136】
その結果、上記表8−1及び表8−3に示した結果にみられるように、ローヤルゼリーに酵母発酵処理を施して調製したRJ粉末(A0〜A16のサンプル)は、酵母発酵処理を施さないで調製したRJ粉末(B0〜B16のサンプル)に比べ、苛酷試験における粉末の凝集が抑制された。また、上記表8−2及び表8−4に示した結果にみられるように、ローヤルゼリーに酵母発酵処理と酵素処理を施して調製したRJ粉末(C0〜C16のサンプル)は、ローヤルゼリーに酵素処理を施したが、酵母発酵処理を施さないで調製したRJ粉末(D0〜D16のサンプル)に比べ、苛酷試験における粉末の凝集が抑制された。このような凝集抑制効果は、酵母発酵処理が施されたことにより糖分が減量し、RJ粉末を構成する粒子どうしの結着に関わる性質が変化したことが1つの原因として考えられた。
【0137】
なお、サンプルA3、A4、A6の結果にみられるように、それぞれに使用された乾燥助剤、デキストリン(DE25)、デキストリン(DE11)、クラスターデキストリンにより、かえって酵母発酵処理による粉末の凝集抑制効果が打ち消される結果となった。