【実施例1】
【0037】
一般廃棄物であるプラスチック容器や小型家電及び産業廃棄物である廃自動車、家電製品、建築材等の廃棄物が処理対象物である。
【0038】
図2は、廃棄物からケミカルリサイクル原料と燃料用原料とを効率的に製造する工程を表す作業フローである。
【0039】
まず、多種の材質を含む廃棄物(以下、廃棄物と称する)を、破砕工程S10にて、廃棄物を所定の大きさに破砕する。金属土砂回収工程S20では、破砕した破砕物から金属などの有価物を分離するとともに、土砂、スポンジ系を回収する。
【0040】
金属土砂回収工程で回収された破砕物を、洗浄工程S30にて洗浄した後、破砕物について、土砂、非金属、ハロゲン系樹脂を除去する除去工程として第1の比重選別工程S40を行う。第1の比重選別工程S40の前に、洗浄工程S30を行うことで、破砕物にぬれ性を持たせることができ、第1の比重選別工程S40の選別時間の短縮化や選別精度を向上させることができる。第1の比重選別工程S40には、比重1.10〜1.35の重液を用いる。本明細書において、第1の比重選別工程S40で用いる重液の比重1.10〜1.35を重比重、あるいは、第1の比重と称する。重液には、塩、フェロクロム、硝酸カリウム等を用いる。第1の比重選別工程S40で、破砕した廃棄物から沈降物を取り除く。この沈降物には、土砂、非金属の他、主にハロゲン系樹脂等を取り除く。ハロゲン系樹脂には、塩ビ系樹脂や臭素系樹脂が含まれる。塩素が燃料用原料に含まれると、炉内や周辺を腐食するため、これらを燃料用原料から除去するためである。
【0041】
破砕物の大きさは60mm以上とする。破砕物の大きさを50mm以下とすると、破砕物に含まれる樹脂が汚れと共に破砕物が、洗浄工程S30を実施する洗浄機の排水側に混入するため、メンテナンスの頻度が高くなり作業効率が悪化するためである。そのため、破砕物の大きさは、50mm以上であれば良い。
【0042】
一方、破砕物の大きさが100mm〜300mmであれば、第1の比重選別工程S40の後に、磁力選別機、ふるい選別機や風力選別機による乾式選別や、手作業による金属や土砂等の不純物のピッキング作業効率を向上させることができる。そのため、破砕物の大きさは、60mm以上、好ましくは100mm〜300mmとする(第1の粒度と称する)。
【0043】
塩素系異物が除去された破砕物は、粉砕洗浄工程S50において、洗浄と同時に大きさが50mm以下、好ましくは15mm程度に細かく粉砕される。
【0044】
粉砕物を洗浄することにより、第1の比重選別工程で用いた重液を取り除くとともに、粉砕物のぬれ性が向上し、選別効率を向上させることができる。また、粉砕物の大きさを50mm以下、好ましくは15mm程度(第2の粒度)にすることで、第2の比重選別工程S60の比重による選別の高速化と選別精度を向上させることができる。
【0045】
粉砕物は、高品質樹脂選別工程として第2の比重選別工程S60を実施する。第2の比重選別工程S60では、比重0.92〜1.20の液体(水溶液、油)を用いる。本明細書において、第2の比重選別工程S60で用いられる液体の比重0.92〜1.20を軽比重、あるいは第2の比重と称する。第2の比重選別工程S60で、浮遊物となるケミカルリサイクル原料と、沈降物となる燃料用原料とを回収する。第2の比重選別工程S60の浮遊物は第1回収工程で脱水、乾燥してケミカルリサイクル原料として第1の回収物を回収し、第2の比重選別工程S60の沈降物は第2回収工程で脱水、乾燥して燃料用原料として第2の回収物を回収する。
【0046】
尚、第2の比重選別工程S60を得て回収された第1の回収物には、不純物が極めて少なく、ケミカルリサイクルに供することができることを確認している。特に、第1の回収物には、塩素含有量が300ppm以下であることを確認した。
【0047】
また、第2の比重選別工程S60の第2の回収物にも、塩素などの不純物が極めて低水準に抑えることができることを確認した。
【0048】
<リサイクル原料の製造方法の各ステップ>
<破砕工程S10>
破砕工程S10は、廃棄物を破砕する処理工程である。破砕工程S10では、
図3に示す、破砕機10を用いて廃棄物を破砕し、破砕物を得る。破砕物の大きさは、60mm以上、好ましくは、100〜300mm程度とする。実施例1の処理では破砕物について、例えば破砕物(シュレッダーダスト)をスクリュウコンベアのようなコンベアを用いて次工程へ搬送する。
【0049】
破砕工程S10は、破砕工程以下の処理を行うため必要であり、特に、破砕物の大きさは、洗浄工程S30において、破砕物に付着した金属類や土砂などの異物を除去し、第1の比重選別工程S40による選別効率を向上させるのに好適なものとする。破砕物の大きさを50mm以下とすると、破砕物に含まれる樹脂が汚れと共に、洗浄工程S30を実施する洗浄機の排水側に混入するため、メンテナンスの頻度が高くなり作業効率が悪化するためである。
【0050】
廃棄物が、例えば廃自動車には駆動用のモーター、ワイヤーハーネスが備えられているものを対象とする場合、破砕工程S10の前に、手選別工程S01(図視せず)や乾式選別工程S02を実施することが望ましい。
【0051】
これらのモーター、ワイヤーハーネスなどの線材には銅線が使用され、線材の表皮には塩化ビニルが多く使用されている。破砕工程S10において、この塩化ビニルが摩擦性を有する樹脂(ウレタン樹脂等)と絡み、塩素が混入しやすくなるためである。回収金属には塩素分、銅分が多く含まれている。自動車破砕残渣(シュレッダーダスト)であるASR(Automobile Shredder Residue)にも塩素分、銅分が多く含まれている。焼却処理する際に、塩素分は炉内や周辺を腐食するために好ましくない。そのため、ハロゲン系樹脂は、破砕工程S10前に極力取り除くことが望ましい。
【0052】
手選別工程S01は、廃自動車、家電製品、建築材、プラスチック容器等の廃棄物から、金属類、ガラス類、紙類、木片を除去して手選別残存物を取り出す作業である。手選別工程S01では、その後の各処理作業に不具合が生じないようにする工程で、例えば、ベルトコンベア上で人が肉眼で見ながら、回収目的物以外のものを手作業で取り出す。取り除いたものは残渣として扱われる。金属類はそのままリサイクル材料となる。
【0053】
また、乾式選別工程S02として、光学式選別機、ふるい選別機や風力選別機による選別や、磁気選別機による選別を行っても良い。光学式選別機や風力選別機による選別は、例えば、近赤外線により波長を解析して特定の材質を認識し、エアーノズルでその対象物を吹き飛ばすことで選別する。
【0054】
<金属土砂回収工程S20>
金属土砂回収工程S20は、破砕された廃棄物から樹脂類と、金属、土砂とを分離し、次工程で不要となる金属、土砂、スポンジ系とを廃棄物から除去する乾式による工程である。例えば、
図3に示すように、磁力選別機20、非鉄分分離機として、ふるい選別機21を用いる。尚、鉄分を回収する必要のない場合には、ふるい選別機21により、鉄と土砂とスポンジとを、破砕物から分離しても良い。
【0055】
選別された、金属類は金属として、土砂は残渣として回収する。金属土砂回収工程S20は、磁力選別機20(
図3参照)を用いて、破砕物から鉄分を分離、回収する。この工程で、鉄分が分離された破砕物(鉄分離破砕物)は次工程に搬送する。
【0056】
また、金属土砂回収工程S20は、ふるい選別機21(
図3参照)を用いて、破砕物から土砂を分離し、非鉄、ガラス等、土砂、スポンジ系を残渣として回収する。ふるい選別機21は、磁石につかないアルミや銅を、回転磁界により発生する渦電流と磁界相互作用により、前方に弾き飛ばす渦電流選別や、穴の開いた板を斜めにし、下から風を当てながら振動を加える乾式比重選別を用いることができる。
【0057】
金属土砂回収工程S20で処理した破砕物は、必要に応じて、破砕物に含有する金属、土砂、ガラス、スポンジ系を選別し除去するため、光学式選別機や風力選別機等の乾式選別工程や手選別工程を実施し、金属や土砂等の不純物をさらに除去することが望ましい。金属類はそのままリサイクル材料となる。
【0058】
<洗浄工程S30>
鉄や土砂が除去された破砕物は、次に、洗浄工程S30で処理される。洗浄工程S30では、所定の大きさに破砕された廃棄物を洗浄し、破砕物に付着した汚れを洗浄する。尚、洗浄工程S30により破砕物にぬれ性を持たせることができ、次工程の第1の比重選別工程S40の選別効率を向上させる。破砕物に付着する気泡等の影響による比重誤差を減少できるためである。洗浄工程S30は、例えば、ドラム洗浄機等を用いる。
【0059】
この工程でも破砕物の大きさは、60mm以上、100〜300mmであることが好ましい。
【0060】
<第1の比重選別工程S40>
第1の比重選別工程S40は、破砕物から土砂、非鉄金属の他、主としてハロゲン樹脂を除去する。ハロゲン系樹脂には、塩ビ系樹脂や臭素系樹脂が含まれる。第1の比重選別工程S40の前に、洗浄工程S30を行うことで、破砕物にぬれ性を持たせることができ、第1の比重選別工程S40の選別時間の短縮化や選別精度を向上させることができる。
【0061】
第1の比重選別工程S40には、比重1.10〜1.35の重液を用いる。
図1に示した比重の通り、ポリ塩化ビニルや塩化ビニル樹脂等の塩ビ系樹脂の比重が1.3〜1.4であるため、塩ビ系樹脂を選別するための比重を用いる。重液は、塩、フェロクロム、硝酸カリウム等を用いて作成することができる。第1の比重選別工程S40で、土砂、非鉄金属の他、主にハロゲン系異物として、塩ビ系樹脂や臭素系樹脂を取り除く。塩素が燃料用原料に含まれると、炉内や周辺を腐食するため、これらを燃料用原料から除去するためである。第1の比重選別工程S40では、破砕物に混入した土砂なども塩ビ系樹脂と共に分離され、選別される。塩ビ系樹脂を取り除くためには、重液の比重は1.3程度が好ましいが、他の材料も取り除くためには、他の材料より若干小さな値の比重とする。即ち、第1の比重選別工程S40で取り除きたい材料の比重に応じて、比重1.10から1.35の間で適宜設定する。
【0062】
この工程においても破砕物は、所定の大きさとして60mm以上とし、好ましくは100mm〜300mmとする。破砕物が60mm以上といったある程度の大きさを有するため、第1の比重選別工程S40の後に、乾式選別工程(磁力選別機、ふるい選別機、風力選別機等)S41や手選別工程S42(図視せず)を実施することで、破砕物に付着した残存金属材料を効率よく取り除くことができる。一方、50mm以下とすると、洗浄工程S30の洗浄効率が悪化し、破砕物に含まれる樹脂が汚れと共に、洗浄工程S30を実施する洗浄機の排水側に混入するため、メンテナンスの頻度が高くなり作業効率が悪くなる。
【0063】
第1の比重選別工程S40では、破砕物の大きさを60mm以上として、重液による比重選別を行い、第1浮遊物と第1沈降物とに選別し回収する。
【0064】
第1の比重選別工程S40の第1浮遊物を対象として手選別工程S42を更に実施しても良い。手選別工程S42は、廃自動車、家電製品、建築材、プラスチック容器等の廃棄物から、金属類、ガラス類、紙類、木片を除去して手選別残存物を取り出す作業である。手選別工程S42では、その後の各処理作業に不具合が生じないようにする工程で、例えば、ベルトコンベア上で人が肉眼で見ながら、廃棄物以外のものを手作業で取り出す。取り除いたものは残渣として扱われる。金属類はそのままリサイクル材料となる。
【0065】
<粉砕洗浄工程S50>
ハロゲン系異物が除去された破砕物は、粉砕洗浄工程S50で、破砕物の洗浄と同時に大きさが50mm以下、好ましくは15mm程度に細かく粉砕される。洗浄により、破砕物あるいは粉砕物に付着した塩水、フェロクロム、硝酸カリウム等の重液を除去し、粉砕物のぬれ性を向上させるので、次工程の第2の比重選別工程S60の選別精度を向上させることができる。
【0066】
また、粉砕洗浄工程S50では、それより前の工程で、金属類を徹底して除去しているため、粉砕洗浄機の刃の損傷を防止することができる。一般的に、廃棄物を50mm以下の大きさに粉砕するための粉砕洗浄機の刃は、その用途ごとに多種類存在するが、リサイクル粉砕用の刃は、樹脂用に適した粉砕刃でリサイクル率の向上に寄与しているため、金属を破砕すると、直ぐに劣化し、交換を要するため作業効率が悪化する。そのため、本実施例では、粉砕洗浄工程S50の前に金属類を徹底して除去するようにしている。
【0067】
<第2の比重選別工程S60>
第2の比重選別工程S60は、粉砕物を第2浮遊物と第2沈降物とに選別する。第2の比重選別工程S60は、第2浮遊物をケミカルリサイクル原料とするため、比重0.92〜1.20(0.92〜1.20g/cm3)の液体、例えば水、水溶液、油を入れた水槽において浮遊するものと沈降するものに選別する水槽選別工程である。
【0068】
第2の比重選別工程により第2浮遊物はケミカルリサイクル原料として回収し、第2沈降物は、燃料用原料として回収される。 本発明では、第1の比重選別工程S40の「重液」の比重(第1の比重)と、第2の比重選別工程S60の「液体」の比重(第2の比重)には、一連の作業フローにおいて、第1の比重が第2の比重より大きい値とする。即ち、第1の比重>第2の比重の関係が成り立つ。そして、回収物から除外したい材料により比重1.10〜1.35の範囲から第1の比重の値が決まり、ケミカルリサイクル原料として回収する材料に応じて、比重0.92〜1.20の範囲から第2の比重の値を設定することとなる。
【0069】
第2の比重選別工程S60と前述した第1の比重選別工程S40には、例えば水槽を用いる。この水槽は、その上面に取り付けられた複数のパドルと、この箱型選別水槽の底部に取り付けられた、沈降した粉砕物を排出するらせん状の排出機を備えた処理装置を用いる。
【0070】
第1の比重選別工程S40と第2の比重選別工程S60は、それぞれの水槽において、表層の液体をパドルで掻くことで流水を形成する。ケミカルリサイクル原料として「石油精製原料」、「ナフサ原料」を回収するため、第2の比重選別工程S60では、水槽の液体として水を用いることができる。一方、第1の比重選別工程では、主として塩ビ系樹脂を除去するため、比重1.10〜1.35の重液を用いる。
【0071】
第1の比重選別工程S40と第2の比重選別工程S60は、それぞれの水槽の液体より、比重の小さい第1浮遊物、第2浮遊物と、沈降する比重の大きい第1沈降物、第2沈降物とに選別する処理工程である。自然沈降では長時間を要するが、流水を用いることで比重の異なる廃棄物粉砕物を短時間で選別することができる。
【0072】
この第2の比重選別工程S60では、液体に水を使用した場合、水の比重未満の廃棄物粉砕物は第2浮遊物として、比重1.00以上の廃棄物粉砕物は第2沈降物として選別する。例えば、表1の「各プラスチックと比重」の表に記載されているように、粉砕物から、分類1(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレンタルク入り(PP))が、第2浮遊物として選別される。選別された分類1の物質は、第1回収工程S70(脱水工程、乾燥工程)の処理を経て、ケミカルリサイクル原料として「石油精製原料」、「ナフサ原料」を回収する。
【0073】
第2の比重選別工程S60において、分類2(AS樹脂(アクリロニトリルスチレン)(AS)、ポリスチレン(PS)等)、が第2沈降物として選別される。
【0074】
なお、水の比重1.00より軽い廃棄物粉砕物を選別するときは、比重1.00より小さい比重の液体(比重が0.90)を用いることも可能である。
【0075】
実施例1では、第2沈降物は、第2回収工程S80(脱水工程、乾燥工程)の処理を経て、燃料用原料である「セメント原燃料」、「工業炉原燃料」として回収する。
【0076】
第1の比重選別工程S40により、第1沈降物として選別された、分類3のポリ塩化ビニル、塩化ビニル樹脂(PVC)等のハロゲン系樹脂や、金属、土砂は残渣として回収する。回収物は、例えば、脱塩素処理を行った後、埋立地等に利用される。
【0077】
また、必要に応じて、第2の比重選別工程S60の次に更に比重選別を組み入れてもよい。
【0078】
また、第2の比重選別工程では、水を用いて選別されるため、第2浮遊物や第2沈降物に対する洗浄効果が得られる。
【0079】
<第1回収工程S70、第2回収工程S80>
第1回収工程S70では、第2の比重選別工程S60の第2浮遊物を、脱水及び乾燥して、ケミカルリサイクル原料として第1の回収物を回収する。ケミカルリサイクル原料には、「石油精製原料」「ナフサ原料」が含まれる。
【0080】
第2回収工程S80では、第2沈降物を、脱水及び乾燥して、燃料用原料として第2の回収物を回収する。燃料用原料には、「セメント原燃料」「工業炉原料」が含まれる。
【0081】
図3は、実施例1の廃棄物の選別処理の装置ブロック図である。
【0082】
実施例1の廃棄物の選別処理装置は、主に、破砕機10と、磁力選別機20と、非鉄分離機としてふるい選別機21と、ドラム洗浄機30と、第1の比重選別機40と、粉砕洗浄機50と、第2の比重選別機60と、図示しない脱水機と乾燥機とをそれぞれ備える第1の回収機と第2の回収機とを備える。
【0083】
破砕機10の前に、手選別や光学式選別機や風力選別機により、ハロゲン系樹脂を極力取り除く。例えば、手選別は、ベルトコンベア上で人が肉眼で見ながら、廃棄物以外のものを手作業で取り出す。取り除いたものは残渣として扱われる。また、光学式選別機は、近赤外線により波長を解析して特定の材質を認識し、エアーノズルでその対象物を吹き飛ばす。光学式選別機に代えて、又は共に乾式選別機(磁力選別機、ふるい選別機、風力選別機等)を用いることも可能である。
【0084】
破砕機10は、廃棄物を所定の大きさに破砕する回転刃と固定刃とから成る装置である。破砕機10は、
図2の破砕工程S10に対応する。
【0085】
磁力選別機20は、廃棄物の破砕物について、磁力を利用して鉄分を分離、回収する。ふるい選別機21は、廃棄物破砕物の土砂やスポンジ等の非鉄分を、分離、回収する。磁力選別機20と、ふるい選別機21は、
図2の金属土砂回収工程に対応する。
【0086】
第1の比重選別機40は、第1の比重選別工程S40に対応し、廃棄物の破砕物を第1の水槽において、第1の比重を有する重液(比重1.10から1.35)の比重より小さく、浮遊する第1浮遊物と、重液の比重より大きく、沈降する第1沈降物とに分離、回収する。主として廃棄物の破砕物からハロゲン系樹脂を除去する。除去したい材料により重液の比重は、1.10から1.35の範囲で適宜設定される。
【0087】
粉砕洗浄機50は、粉砕洗浄工程S50に対応し、プラスチック破砕物を所定の大きさに粉砕し、洗浄する。粉砕洗浄機50は、水を注入しながら破砕物を粉砕する。
【0088】
第2の比重選別機60は、第2の比重選別工程S60に対応し、第1の比重選別機40により選別した第1浮遊物を、更に第2の水槽において第2の比重の液体(例えば、水)に浮遊する第2浮遊物と、沈降する第2沈降物とに選別する。
【0089】
次に、第2浮遊物は、脱水機と乾燥機からなる第1の回収機により、脱水し、乾燥して、ケミカルリサイクル原料として第1の回収物を回収する。(第1回収工程S70)。
【0090】
一方、第2沈降物は、脱水機と乾燥機からなる第2の回収機により、脱水し、乾燥して、燃料用原料として第2の回収物を回収する。(第2回収工程S80)。
【0091】
第1比重選別機40と第2の比重選別機60との二つの水槽において、第1の比重が第2の比重より大きい値をとる。即ち、第1の比重>第2の比重の関係が成り立つ。そして、回収物から除外したい材料に応じて比重1.10〜1.35の範囲から第1の比重の値が決まり、ケミカルリサイクル原料として回収する材料に応じて比重0.92〜1.20の範囲から第2の比重の値を設定する。また、第1の比重選別機40と第2の比重選別機60との二つの水槽において、廃棄物の大きさを変え、それぞれ比重の異なる液体を用いることにより、廃棄物からリサイクルの用途に応じたリサイクル原料を効率よく回収することができる。
【0092】
第1の回収機と第2の回収機の脱水機は、第2浮遊物と第2沈降物とを脱水する。第1の回収機と第2の回収機の乾燥機は、脱水した第2浮遊物と第2沈降物とを乾燥する。
【0093】
実施例1によれば、第1の比重選別機40に投入される廃棄物の大きさを60mm以上としたことで、第1の比重選別工程の効率を向上させることができる。
【0094】
また、第2の比重選別工程S60で廃棄物を処理するため、粉砕洗浄工程S50で廃棄物を50mm以下に粉砕する必要があるが、第1の比重選別工程S40では廃棄物を60mm以上の破砕物を処理して土砂、非鉄金属、塩ビ系樹脂などを残渣として分離しているため、残渣について、粉砕洗浄工程S50を行うことを回避し、省エネルギー化を図ることができる。即ち、リサイクル資源の利用者に応じて、ケミカルリサイクル原料と、燃料用原料とを、それぞれ効率よく回収するリサイクル原料の製造方法とすることができる。
【0095】
また、ドラム洗浄機30の排水側のつまりを防止できるので、メンテナンスの省力化が図れる。また、第1の比重選別機40により回収された第1浮遊物から、乾式選別工程(磁力選別機、ふるい選別機、風力選別機等による選別)S41や手選別工程S42による、金属類のピッキング作業効率を向上させることができる。さらに、第1浮遊物から金属類を除去することができるため、粉砕洗浄機50のダメージを防止することができる。
【0096】
また、実施例1によれば、第1の比重選別機40と第2の比重選別機60とで、廃棄物の大きさを最適にすることで、全体工程の短縮化や選別精度向上を図ることができる。
【0097】
実施例1の選別処理装置によれば、廃棄物を、リサイクル原料を利用目的に応じて、それぞれ異なる比重の液体を用いた複数の比重選別により、ケミカルリサイクル原料、セメント原燃料及び工業炉原燃料等の燃料用原料として、リサイクルでき、低コストで廃棄物のリサイクル率を向上させることできる。
【実施例2】
【0098】
実施例1の第1の比重選別工程S40と第2の比重選別工程S60は、破砕物や粉砕物を液体の比重により選別する工程であるため、液体の比重を正しく設定する必要がある。
【0099】
これは、実施例1の第1の比重選別機40と第2の比重選別機60の水槽に満たされる液体の温度を制御することによって成し得る。
【0100】
実施例2では、第1の比重選別機40の水槽内の重液の比重を1.10−1.35の範囲から、除去したい材料の比重に応じて決まる第1の比重を安定して得るため水槽内に温度制御器を備える。また、第2の比重選別機60の水槽内の液体の比重を0.92〜1.20の範囲で、回収したい材料に応じて決まる第2の比重を安定して得るために、第1の比重選別機と同様、水槽内に温度制御器を備える。
【0101】
図4Aに水槽比重選別工程に用いる第1の比重選別機40及び第2の比重選別機60(以下、比重選別機と称することがある)の一実施形態を示す。水槽401は、廃棄物投入のための投入口402と、浮遊物を回収するための排出口403とを両端に有する。また、水槽401は、投入口402の近傍に位置する液体放出口404と、水槽中の水面付近に位置する複数のパドル405とを有する。
【0102】
液体406を溜めた水槽401に、廃棄物を投入口402より投入し、浮遊物と沈降物を別々に回収することにより、破砕物、あるいは粉砕物を選別する。廃棄物を投入する際は、投入口402においてスクリューコンベア等を用いて強制的に投入する。プラスチックは軽く水に浮かぶものが多いため、単にプラスチックを水槽401に投入するだけでは洗浄効果が十分ではない場合があるため、液体放出口404から投入口402の上部近傍から液体を放出して比重選別機内に下降流を生じさる。
【0103】
温度制御器は、水槽401内に設けられたヒーター410及びクーラー411と、ヒーター410及びクーラー411の温度を制御する温度制御部412とを有する。
【0104】
例えば、第1の比重選別機40の第1の比重は、除去したい材料の比重に応じて比重1.10−1.35の範囲から決まり、その比重を安定して得るため水槽内に温度制御器を備え、温度制御部412によりヒーター410及びクーラー411を制御する。また、第2の比重選別機60の第2の比重は、回収したい材料の比重応じて比重0.92〜1.20の範囲から決まり、その比重を安定して得るために温度制御部412はヒーター410及びクーラー411を制御する。
【0105】
第1の比重選別工程S40と第2の比重選別工程S60とに用いられる水槽の構造は、共通である。
【0106】
尚、第1の比重選別工程S40と第2の比重選別工程S60の比重を所定の値とするために、水や油等の液体の補充、塩、フェロクロム、硝酸カリウムの量を調整する比重調整器を備えても良い。
【0107】
図4Bに実施例2の水槽比重選別工程に用いる比重選別機の他の一実施形態を示す。
図4Bは、廃棄物が投入される投入口402から水槽401までの構造が
図4Aの比重選別機とは異なる。第1の比重選別機に投入される廃棄物の破砕物や、第2の比重選別機に投入される廃棄物の粉砕物には、気泡が付着して破砕物や粉砕物の正味の比重より軽くなる場合がある。
【0108】
破砕物や粉砕物に気泡が付着した状態では、比重選別機により浮遊物と沈降物とに効率よく分離、選別することはできない。そのため、破砕物や粉砕物に付着した気泡を除去するため、投入口402から水槽401までを連結する連結部421を設ける。この連結部には、比重選別機の水槽401と同じ液体が満たされている。
【0109】
連結部421は、投入口側から水槽に向かって傾斜している。連結部421には、超音波発生器423が設置されており、超音波発生器423から照射される超音波により、破砕物や粉砕物に付着した気泡を取り除く。気泡は、連結部421の上面に沿って、投入口402から外に排出される。
【0110】
また、連結部421の傾斜によっては、破砕物や粉砕物が連結部に滞留し、水槽に投入されにくい場合には、連結部421の内部にスクリューコンベア等の強制挿入装置422を設置する。
【0111】
図4Bの比重選別機によれば、水槽401に気泡が付着していない破砕物や粉砕物を投入することができ、水槽401内の液体に応じた比重選別が可能となる。
【実施例3】
【0112】
図5は、実施例における廃棄物からケミカルリサイクル原料を効率的に製造する工程を表す作業フローである。
【0113】
実施例3は、実施例1の第1の比重選別工程S40と第2の比重選別工程S60が液体の比重による比重選別であるのに対し、第1の比重選別工程S40或いは第2の比重選別工程S60の少なくとも一方が、水流を用いた水流比重選別工程を利用する。
図5においては、第1の比重選別工程S40に対応して第1の選別工程S450、第2の比重選別工程S60に対応して第2の選別工程S650と示す。
【0114】
例えば、第1の選別工程S450と第2の選別工程S650との双方が、水流による水流比重選別を行うか、第1の選別工程S450あるいは第2の選別工程S650のいずれか一方が、水流による水流比重選別を行い、他方は実施例1と同じ液体による比重選別を行なう。
【0115】
第1の選別工程S450と第2の選別工程S650以外のその他の工程は、基本的に実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0116】
この水流比重選別工程とは、水槽内において液体、例えば水を循環させた状態又は渦流の状態で、液体の比重を比重1.00から1.20の間に設定することができ、廃棄物粉砕物を選別することを可能とする選別方法である。
【0117】
図6A及び
図6Bに水流比重選別工程に用いる水流比重選別機500を示す。
図6Aは水流比重選別機600の正面斜め上から見た図で、
図6Bは水流比重選別機600の一部断面図であり、
図6Aの補助線604Aの断面を示している。
【0118】
投入口602から投入された廃棄物の破砕物や粉砕物が、移動する水中においてその重力で沈降する前に、排出口603に移動し、浮遊物として回収される。水槽601内撹拌機611により、液体610に水流を起こす。この水流の流速が速いと比重1より大きい粉砕物を浮遊物として選別できる。水流の流速が遅いと比重1に近い粉砕物を浮遊物として選別できる。この流速を調節することで、液体の比重を比重1.00から1.20の間に設定することができ、微妙に比重の異なる廃棄物を選別することができる。
【0119】
第1の選別工程S450が水流による第1の水流比重選別工程S451である場合、例えば、塩ビ系異物を除去するため、破砕物を水槽における水流において浮遊する第1水流浮遊物と、第1水流沈降物とに分離する。第1の水流比重選別工程S451は、水流の流速を可変することで、比重選別するようになっている。
【0120】
第2の選別工程S650が水流による第2の水流比重選別工程S651である場合、例えば、分類1の材料を回収するため、粉砕物を水槽における水流において浮遊する第2水流浮遊物と、第2水流沈降物とに分離する。第2の水流比重選別工程S651は、水流の流速を可変することで、比重選別するようになっている。
【0121】
実施例3によれば、破砕物が投入される第1の水流比重選別S400の液体に水を用いることができる。
【0122】
実施例3の廃棄物の選別処理の装置ブロックは、
図3の第1の比重選別機40と第2の比重選別機60に変え、第1の水流比重選別機、第2の水流選別機を用いればよい。
【0123】
なお、本発明は、複数の比重選別により、廃棄物をリサイクル目的に応じて選別回収できれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0124】
以上の通り、各実施例によれば、本発明の廃棄物の比重選別処理及びその処理装置は、産業廃棄物に限定されず、一般廃棄物を、リサイクルの目的に応じて選別回収することで、容易かつ低コストでリサイクル率を向上させることができる。