(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記六角格子秩序変数は、複数の前記細胞のうちの1つの細胞を中心にして当該細胞に最も近い6つの細胞で形成される六角形の6つの中心角に基づき求められる、請求項1〜4の何れか一項に記載の細胞評価方法。
前記評価ステップでは、前記指標算出ステップで算出した前記指標に基づいて、前記撮像画像を撮像した時点よりも将来においての前記細胞集団の品質を予測する、請求項1〜9の何れか一項に記載の細胞評価方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る細胞評価装置を示す構成図である。
【
図2】
図2(a)は、動径分布関数を説明する図である。
図2(b)は、ポテンシャル関数を説明する図である。
【
図3】
図3は、六角格子秩序変数を説明する図である。
【
図4】
図4(a)は、低品位の細胞集団の撮像画像を示す写真図である。
図4(b)は、高品位の細胞集団の撮像画像を示す写真図である。
【
図5】
図5(a)は、OVLの比較評価を説明するためのグラフである。
図5(b)は、OVLの比較評価を説明するための他のグラフである。
【
図6】
図6は、細胞評価プログラムを示す図である。
【
図7】
図7(a)は、第1実施形態に係るin vitroにおける密度と良細胞率との関係を示すグラフである。
図7(b)は、第1実施形態に係るin vitroにおけるばね定数と良細胞率との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8(a)は、第1実施形態に係るin vitroにおける密度とばね定数との関係を示すグラフである。
図8(b)は、第1実施形態に係るin vitroにおける密度のOVLとばね定数のOVLとを比較評価するグラフである。
【
図9】
図9(a)は、第1実施形態に係るin vitroにおける密度と平均距離との関係を示すグラフである。
図9(b)は、第1実施形態に係るin vitroにおける密度のOVLと平均距離のOVLとを比較評価するグラフである。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る細胞評価装置を示す構成図である。
【
図11】
図11(a)は、低品位の細胞集団のスペキュラー画像を示す写真図である。
図11(b)は、高品位の細胞集団のスペキュラー画像を示す写真図である。
【
図13】
図13(a)は、第2実施形態に係るin vivoにおける密度と良細胞率との関係を示すグラフである。
図13(b)は、第2実施形態に係るin vivoにおけるばね定数と良細胞率との関係を示すグラフである。
【
図14】
図14(a)は、第2実施形態に係るin vivoにおける密度とばね定数との関係を示すグラフである。
図14(b)は、第2実施形態に係るin vivoにおける密度のOVLとばね定数のOVLとを比較評価するグラフである。
【
図15】
図15(a)は、第2実施形態に係るin vivoにおける密度と平均距離との関係を示すグラフである。
図15(b)は、第2実施形態に係るin vivoにおける密度のOVLと平均距離のOVLとを比較評価するグラフである。
【
図16】
図16(a)は、密度と時間との関係を示すグラフである。
図16(b)は、3か月時点の密度と3か月時点のばね定数との関係を示すグラフである。
図16(c)は、24か月時点の密度と3か月時点のばね定数との関係を示すグラフである。
図16(d)は、3か月時点の密度のOVLと3か月時点のばね定数のOVLとを比較評価するグラフである。
図16(e)は、24か月時点の密度のOVLと3か月時点のばね定数のOVLとを比較評価するグラフである。
【
図17】
図17(a)は、第1実施形態に係るin vitroにおける密度と良細胞率との関係を示すグラフである。
図17(b)は、第1実施形態に係るin vitroにおけるばね定数と良細胞率との関係を示すグラフである。
【
図18】
図18は、第1実施形態に係るin vitroにおける密度とばね定数との関係を示すグラフである。
【
図19】
図19は、第1実施形態に係るin vitroにおける密度と平均距離との関係を示すグラフである。
【
図20】
図20(a)は、第2実施形態における密度と良細胞率との関係を示すグラフである。
図20(b)は、第2実施形態に係るin vivoにおけるばね定数と良細胞率との関係を示すグラフである。
【
図21】
図21は、第2実施形態に係るin vivoにおける密度とばね定数との関係を示すグラフである。
【
図22】
図22は、第2実施形態に係るin vivoにおける密度と平均距離との関係を示すグラフである。
【
図23】
図23(a)は、第1実施形態に係るin vitroの密度と第2実施形態に係るin vivoの密度との関係を示すグラフである。
図23(b)は、第1実施形態に係るin vitroのばね定数と第2実施形態に係るin vivoの密度との関係を示すグラフである。
図23(c)は、第1実施形態に係るin vitroの密度を変数とし、第2実施形態に係るin vivoの密度が2000を下回る場合を真として行ったROC解析の結果を示すグラフである。
図23(d)は、第1実施形態に係るin vitroのばね定数を変数とし、第2実施形態に係るin vivoの密度が2000を下回る場合を真として行ったROC解析の結果を示すグラフである。
【
図24】
図24(a)は、密度と時間との関係を示すグラフである。
図24(b)は、6か月時点のばね定数と24か月時点の密度との関係を示すグラフである。
図24(c)は、6か月時点の密度と24か月時点の密度との関係を示すグラフである。
図24(d)は、24か月時点の密度が1000以下となる症例を、6か月時点の密度で判定した場合のROC曲線のグラフである。
図24(e)は、24か月時点の密度が1000以下となる症例を、6か月時点のばね定数で判定した場合のROC曲線のグラフである。
【
図25】
図25は、筋繊維の断面画像に自動抽出された細胞位置及び輪郭を重ねて表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る細胞評価装置1を示す構成図である。
図1に示されるように、細胞評価装置1は、複数の細胞を含む細胞集団C1の品質を評価する装置である。細胞評価装置1は、例えば眼科治療薬の開発において、薬剤候補物質(化合物等)における細胞集団C1の評価に用いられる。特に細胞評価装置1は、角膜内皮の再生医療における細胞懸濁液注入法に用いられる培養細胞の品質管理に利用される。細胞集団C1は、角膜内皮細胞の培養細胞を複数含んでいる。細胞集団C1に含まれる細胞は、六角格子の二次元最密充填構造を有する。細胞評価装置1は、コンピュータ10、表示部20及び操作部30を少なくとも備えている。
【0021】
コンピュータ10は、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等を実行するプロセッサ(例えばCPU)と、ROM、RAM及びハードディスク等で構成される記憶部と、ネットワークカード又は無線通信モジュールで構成される通信制御部と、を有する。コンピュータ10は、後述する細胞評価プログラムをプロセッサ上に読み込ませて実行することによって細胞評価方法を実現する。コンピュータ10の記憶部内には、処理に必要なデータ又はデータベースが記憶される。コンピュータ10は、1台で構成されてもよいし、複数台で構成されてもよい。複数台で構成されている場合には、これらがインターネット又はイントラネット等の通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つのコンピュータ10が構築される。
【0022】
コンピュータ10には、位相差顕微鏡2で撮像されて画像処理装置3で画像処理が施された、培養皿5上の細胞集団C1の撮像画像が入力される。位相差顕微鏡2としては、特に限定されず、種々の位相差顕微鏡を採用できる。画像処理装置3は、公知の画像処理手法により、撮像画像において細胞集団C1に含まれる複数の細胞の輪郭に関するエッジ情報を抽出する。画像処理装置3は、抽出したエッジ情報をコンピュータ10に出力する。コンピュータ10は、機能的構成として、指標算出部11及び評価部12を含む。
【0023】
指標算出部11は、細胞集団C1の撮像画像に基づいて、当該細胞集団C1を定量的に評価するための指標を算出する指標算出処理を実行する。具体的には、指標算出部11は、画像処理装置3から入力された撮像画像のエッジ情報に基づく演算処理を行い、「平均距離」、「ばね定数」及び「六角格子秩序変数」を少なくとも含む指標を算出する。
【0024】
平均距離は、複数の細胞が詰まっている程度を表す指標である。ばね定数は、複数の細胞の間の距離が揃っている程度(均一性)を表す指標である。平均距離及びばね定数は、ボルツマン分布を利用して得られた関数であって複数の細胞の動径分布関数に基づくポテンシャル関数に、二次曲線フィッティングを施して求められる。平均距離が小さいほど、複数の細胞が密であると評価できる。ばね定数が大きいほど、複数の細胞の間の距離が揃っている(平均距離からの差異が小さい)と評価できる。例えば指標算出部11では、以下のように平均距離及びばね定数を算出できる。
【0025】
図2(a)は、動径分布関数g(r)を説明する図である。
図2(b)は、ポテンシャル関数w(r)を説明する図である。
図2(a)に示されるように、細胞集団C1では、ある細胞から距離rの位置drに他の細胞が存在する確率は、動径分布関数g(r)として表される。そして、動径分布関数g(r)は、下式(1)に示されるボルツマン分布の関数として表すことができる。この動径分布関数g(r)の自然対数をとることで、下式(2)に示されるポテンシャル関数w(r)を得る。
【数1】
【数2】
【0026】
そこで、撮像画像の細胞集団C1に含まれる複数の細胞のエッジ情報から、これら複数の細胞の重心位置を算出する。複数の細胞の中から選択される一対の細胞の組合せの全てについて、その重心位置間距離を横軸としたヒストグラムを生成する。このヒストグラムから算出される重心位置間距離それぞれの頻度(度数)に基づいて、動径分布関数g(r)を取得する。取得した当該動径分布関数g(r)を、上式(2)のポテンシャル関数w(r)に導入する。これにより、ポテンシャル関数w(r)のプロファイルを得ることができる。
【0027】
図2(b)に示されるように、ポテンシャル関数w(r)のプロファイルに対して、二次曲線フィッティングを施す。ここでは、最小二乗法を用いて二次曲線をフィッティングすることで、下式(3)が求められる。その結果、下式(3)において、r
0が平均距離として算出され、kがばね定数として算出される。
【数3】
【0028】
六角格子秩序変数は、複数の細胞の配置が正六角形に近い程度を表す指標である。六角格子秩序変数は、複数の細胞のうちの1つの細胞を中心にして当該細胞に最も近い6つの細胞で形成される六角形の6つの中心角に基づき求められる。六角格子秩序変数は、0から1の値を有している。六角格子秩序変数が1に近いほど、複数の細胞の配置が正六角形に近いと評価できる。例えば指標算出部11では、以下のように六角格子秩序変数を算出する。
【0029】
図3は、六角格子秩序変数Q
6を説明する図である。下式(4),(5)により、任意の細胞iについての六角格子秩序変数Q
i6を算出する。そして、細胞集団C1に含まれる複数の細胞に関して六角格子秩序変数Q
i6の平均をとることで、六角格子秩序変数Q
6を算出する。
図3に示されるように、θ
ijは任意の細胞iを中心にした中心角であり、N(i)は任意の細胞iに最も近い6つの細胞である。
【数4】
【数5】
【0030】
図4(a)は、低品位の細胞集団C1の撮像画像を示す写真図である。
図4(b)は、高品位の細胞集団C1の撮像画像を示す写真図である。
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、細胞集団C1において最終的に望まれる品質は、小さい細胞が秩序良く配列されている(揃っている)ことであることが見出される。平均距離r
0、ばね定数k及び六角格子秩序変数Q
6は、このような品質に立脚した、コロイド物理学及び結晶物理学の基礎学理に基づく指標であるといえる。
【0031】
図1に戻り、評価部12は、指標算出部11で算出した指標に基づいて、細胞集団C1を評価する評価処理を実行する。評価部12は、指標に平均距離r
0が含まれる場合、平均距離r
0が小さいほど細胞集団C1が高品位(複数の細胞が密である)と評価してもよいし、平均距離r
0が閾値以下のときに細胞集団C1が高品位と評価してもよい。評価部12は、指標にばね定数kが含まれる場合、ばね定数kが大きいほど細胞集団C1が高品位(複数の細胞の間の距離が揃っている)と評価してもよいし、ばね定数kが閾値以上のときに細胞集団C1が高品位と評価してもよい。評価部12は、指標に六角格子秩序変数Q
6が含まれる場合、六角格子秩序変数Q
6が1に近いほど細胞集団C1が高品位(複数の細胞の配置が正六角形に近い)と評価してもよいし、六角格子秩序変数Q
6が閾値以上のときに細胞集団C1が高品位と評価してもよい。
【0032】
評価部12は、指標の値及びその誤差成分から定まるガウス分布の重なり度合いを表すオーバラップ係数(overlapping coefficient:以下、「OVL」という)を算出するOVL算出処理を実行する。OVLは、0以上1以下の値を有する。OVLが0の場合、当該ガウス分布が完全に分離していることを表し、OVLが1の場合、当該ガウス分布が完全に重なることを表す。以下、OVL算出処理及びOVLによる評価について、2つの任意の指標であるパラメータA,BのOVLを比較評価する場合を例示して具体的に説明する。
【0033】
図5(a)及び
図5(b)は、OVLの比較評価を説明するためのグラフである。
図5(a)に示されるグラフでは、パラメータAを横軸とし、パラメータBを縦軸としている。このグラフ上において、複数のデータ点がプロットされている。例えば(A
1,B
1)について、その値A
1,B
1及び誤差成分から定まるガウス分布GA
1,GB
1が得られる。また例えば(A
2,B
2)について、その値A
2,B
2及び誤差成分から定まるガウス分布GA
2,GB
2が得られる。図中において、データ点を中心に広がる線分は、誤差成分を示すエラーバーである(他の図において同様)。なお、平均距離r
0及びばね定数kの誤差成分は、フィッティングの際に生じる誤差(フィッティングエラー)を含む。六角格子秩序変数Q
6の誤差成分は、標準偏差及び標準誤差の少なくとも何れかを含む。
【0034】
ガウス分布GA
1,GA
2の重なりから、パラメータAのOVLであるA
OVLがパラメータ差A
diff(=|A
2−A
1|)と関連付けて算出される。ガウス分布GB
1,GB
2の重なりから、パラメータBのOVLであるB
OVLがパラメータ差B
diff(=|B
2−B
1|)と関連付けて算出される。このようなA
OVL及びB
OVLの算出を、グラフ上の複数のデータ点の全てに関して実施する。
【0035】
パラメータAとパラメータBとを同じ尺度で比較可能にするために、これらの間の線形関係を仮定し、その勾配から、パラメータAが1変化したときにパラメータBがいくつ変化するかを求める。パラメータAが1変化したときに1変化するようにパラメータBを尺度補正してなるパラメータ#B(#B=B/slope)を定義する。そして、
図5(b)に示されるように、パラメータ差A
diff,#B
diffを横軸とし、A
OVL,B
OVLを縦軸としたグラフを作成したとき、例えばOVLが小さい一方(図中では、差分が大きくなるにつれてOVLが急峻に低下するパラメータB)が、誤差が重ならない繊細な指標であると評価できる。
【0036】
なお、3つ以上のパラメータのOVLを比較評価する場合には、基準パラメータを定め、この基準パラメータに基づく尺度補正を当該3つのパラメータに行った上で、評価してもよい。例えば、平均距離r
0、ばね定数k及び六角格子秩序変数Q
6のOVLを比較評価する場合、まず、これらそれぞれと細胞集団C1の細胞の密度(後述)との比較評価を行う。そして、その各比較評価結果に基づいて、平均距離r
0、ばね定数k及び六角格子秩序変数Q
6のOVLを比較評価してもよい。
【0037】
あるいは、3つ以上のパラメータのOVLを比較評価する場合には、これらのパラメータのOVLが小さい順位を算出することで評価してもよい。例えば平均距離r
0、ばね定数k及び六角格子秩序変数Q
6のOVLを比較評価する場合、まず、平均距離r
0及びばね定数kのOVLを比較評価する。平均距離r
0及び六角格子秩序変数Q
6のOVLを比較評価する。六角格子秩序変数Q
6及びばね定数kのOVLを比較評価する。これにより、平均距離r
0、ばね定数k及び六角格子秩序変数Q
6について、OVLが小さい順位を算出して比較評価してもよい。
【0038】
図6は、細胞評価プログラムP1を示す図である。
図6に示されるように、細胞評価プログラムP1は、細胞集団C1の品質を評価するプログラムであって、コンピュータ10の記憶部13内に記憶されている。細胞評価プログラムP1は、指標算出モジュールP11及び評価モジュールP12を含む。指標算出モジュールP11は、上述した指標算出処理をコンピュータ10に実行させる。評価モジュールP12は、上述した評価処理及びOVL算出処理をコンピュータ10に実行させる。
【0039】
細胞評価プログラムP1は、例えば、CD−ROMやDVD−ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、細胞評価プログラムP1は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0040】
図1に示されるように、表示部20は、位相差顕微鏡2の撮像画像、指標算出部11による指標の算出結果、及び、評価部12による細胞集団C1の評価結果の少なくとも何れかを表示させる。表示部20としては、例えばディスプレイ等を用いることができる。操作部30は、細胞評価装置1に対するオペレータの各種操作を行う。操作部30としては、例えばマウス又はキーボード等を用いることができる。
【0041】
次に、細胞評価装置1を用いて細胞集団C1の品質を評価する細胞評価方法(細胞評価装置1の作動方法)について説明する。
【0042】
まず予め、位相差顕微鏡2により、培養皿5上に載置された細胞集団C1を撮像する。位相差顕微鏡2で撮像した撮像画像に画像処理装置3により画像処理を施し、撮像画像に含まれる各細胞のエッジ情報を取得する。
【0043】
続いて、細胞評価装置1において、画像処理装置3で取得した撮像画像のエッジ情報に基づいて、細胞集団C1の品質を評価する。すなわち、指標算出部11により、上述した指標算出処理を実行し、平均距離r
0とばね定数kと六角格子秩序変数Q
6とを含む指標を算出する(指標算出ステップ)。算出した指標に基づいて、評価部12により、上述した評価処理を実行し、細胞集団C1を評価する(評価ステップ)。また、算出した指標について、評価部12により、上述したOVL算出処理を実行し、OVLを算出する(オーバラップ係数算出ステップ)。そして、撮像画像、算出した指標、算出したOVL及び細胞集団C1の評価結果の少なくとも何れかを、表示部20に表示させる。
【0044】
図7(a)は、密度dと良細胞率との関係を示すグラフである。
図7(b)は、ばね定数kと良細胞率との関係を示すグラフである。密度dは、細胞集団C1における複数の細胞の粗密の度合いであって、1つの細胞の面積の平均値をS
Aとした場合に下式(6)で表される指標である。良細胞率は、細胞集団C1中における品質が良好である割合である。密度dの誤差成分は、標準偏差、標準誤差及び細胞の面積S
Aの計測誤差の少なくとも何れかを含む。
d=1/S
A …(6)
【0045】
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、密度d及びばね定数kの双方は、良細胞率に対して正に相関する。特にばね定数kにあっては、密度dに比べて、誤差成分が少ない。このことから、細胞集団C1の評価に際して、ばね定数kは、感度が良く、指標としての信頼性が高いことが分かる。
【0046】
図8(a)は、密度dとばね定数kとの関係を示すグラフである。
図8(b)は、密度dのOVLとばね定数kのOVLとを比較評価するグラフである。
図8(b)の横軸は、密度差d
diff及びばね定数差k
diffである。密度差d
diff及びばね定数差k
diffの何れかには、上記の尺度補正が施されている。
図8(a)に示されるように、ばね定数kは、密度dとの対比において誤差成分が少ないことが分かる。
図8(b)に示されるように、ばね定数kは、密度dとの対比においてOVLが非常に小さく、繊細な指標であることが分かる。これにより、細胞集団C1の評価に際して、ばね定数kは、感度が良く、指標としての信頼性が高いことが分かる。
【0047】
図9(a)は、密度dと平均距離r
0との関係を示すグラフである。
図9(b)は、密度dのOVLと平均距離r
0のOVLとを比較評価するグラフである。
図9(b)の横軸は、密度差d
diff及び平均距離差r
0_diffである。密度差d
diff及び平均距離差r
0_diffの何れかには、上記の尺度補正が施されている。
図9(b)に示されるように、平均距離r
0は、細胞集団C1の評価に際して、密度dとの対比においてOVLが小さい場合が多く、繊細な指標であることが分かる。
【0048】
以上、本実施形態に係る細胞評価方法、細胞評価装置1及び細胞評価プログラムP1では、平均距離r
0、ばね定数k及び六角格子秩序変数Q
6を含む指標を算出し、その指標に基づいて細胞集団C1を評価する。細胞集団C1において最終的に望まれる品質は、小さい細胞が秩序良く配列されている(揃っている)ことである。よって、本実施形態では、集団秩序に基づく指標を評価に適用し、細胞集団C1において小さい細胞が秩序良く配列されているかどうかに関して数値化して把握できる。指標に品質との相関を持たせることができ、指標と品質との間に定量的な意味付けを与えることができる。
【0049】
したがって、本実施形態によれば、細胞集団C1の品質を定量的に評価することが可能となる。本実施形態によれば、撮像画像だけで細胞集団C1の品質を非破壊的に評価でき、細胞集団C1が高品位であるか低品位であるかを明確に識別でき、定量数値化も可能である。本実施形態によれば、統計物理学的手法を用いた2次元細胞集団の定量標準技術を提供できる。本実施形態は、眼科一般の診断における定量標準としての運用に期待される。本実施形態に係る細胞評価プログラムP1は、移植細胞培養プラットフォームへの工程管理プログラムとして適用できる。
【0050】
なお、一度減少した角膜内皮細胞は自然には回復しないために効果的な治療が必要であるところ、角膜内皮の機能不全に対する治療法として、角膜内皮細胞を懸濁液の状態で移植する「角膜内皮細胞移入療法」が近年提唱されている。本実施形態の細胞評価装置1によれば、当該治療法に用いられる培養細胞の品質管理工程において、細胞マーカーでの染色を行わずに顕微鏡観察だけで、移植前の品質管理ないし細胞選別が可能となる。
【0051】
本実施形態では、指標のOVLを算出している。これにより、OVLを用いて指標の感度を把握することができる。指標に加えてそのOVLに基づいて細胞集団C1を評価することで、細胞集団C1の定量的な品質評価をより精度よく行うことができる。
【0052】
本実施形態においては、平均距離r
0、ばね定数k及び六角格子秩序変数Q
6を指標として算出したが、これら全てを指標としなくてもよく、平均距離r
0、ばね定数k及び六角格子秩序変数Q
6の少なくとも何れかを指標としてもよい。また、指標は、平均距離r
0、ばね定数k及び六角格子秩序変数Q
6に限定されず、その他のパラメータを含んでいてもよい。例えば指標は、密度d、六角形率、アスペクト比、隣接細胞数及び膜厚(反射率)の少なくとも何れかを更に含んでいてもよい。六角形率、アスペクト比、隣接細胞数及び膜厚(反射率)は、公知手法により算出できる。さらにまた、指標として含む少なくとも何れかのパラメータを、適宜選択してもよい。
【0053】
本実施形態は、例えば眼科治療薬の開発において、薬剤候補物質における細胞集団C1の評価に用いることができる。このように、薬剤候補物質における細胞集団C1の評価に本実施形態を適用することで、薬剤候補物質の有効性及び安全性の検証時間を短縮することができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。本実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、重複する説明は省略する。
【0055】
図10は、第2実施形態に係る細胞評価装置50を示す構成図である。
図10に示すように、本実施形態の細胞評価装置50は、例えば眼科用の眼検査装置として用いられる装置であり、スペキュラー顕微鏡60、コンピュータ70、表示部20及び操作部30を少なくとも備えている。
【0056】
スペキュラー顕微鏡60は、患者80の眼の角膜内皮細胞を複数含む内皮組織である細胞集団を撮像し、スペキュラー画像を撮像画像として取得する。スペキュラー顕微鏡60は、スペキュラー画像をコンピュータ70へ出力する。
【0057】
コンピュータ70は、物理的構成としては、上記コンピュータ10(
図1参照)と同様に構成されている。コンピュータ70は、機能的構成として、画像処理部71、指標算出部72及び評価部73を含む。
【0058】
画像処理部71は、公知の画像処理手法により、スペキュラー顕微鏡60で撮像されたスペキュラー画像において細胞集団に含まれる複数の角膜内皮細胞の輪郭に関するエッジ情報を抽出する。画像処理部71は、抽出したエッジ情報を指標算出部72に出力する。指標算出部72は、画像処理部71から入力されたスペキュラー画像のエッジ情報に基づき、上述した指標算出処理を実行する。これにより、指標算出部72は、「平均距離r
0」、「ばね定数k」及び「六角格子秩序変数Q
6」を少なくとも含む指標を算出する。評価部73は、指標算出部72で算出した指標に基づき、上述した評価処理を実行し、細胞集団を評価する。また評価部73は、OVL算出処理を実行し、指標のOVLを算出する。
【0059】
図11は、複数の角膜内皮細胞を含む細胞集団のスペキュラー画像を示す写真図である。
図11(a)は低品位の細胞集団を示し、
図11(b)は高品位の細胞集団を示す。
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、複数の角膜内皮細胞を含む細胞集団において最終的に望まれる品質は、第1実施形態と同様に、小さい細胞が秩序良く配列されている(揃っている)ことであることが見出される。
【0060】
次に、細胞評価装置50を用いて細胞集団の品質を評価する細胞評価方法(細胞評価装置50の作動方法)について説明する。
【0061】
まず、スペキュラー顕微鏡60により、患者80の角膜内皮細胞を含む細胞集団を撮像する。スペキュラー顕微鏡60で撮像したスペキュラー画像に画像処理部71により画像処理を施し、スペキュラー画像に含まれる各角膜内皮細胞のエッジ情報を取得する。取得したスペキュラー画像のエッジ情報に基づいて、指標算出部72により上述した指標算出処理を実行し、指標を算出する(指標算出ステップ)。算出した指標に基づいて、評価部73により上述した評価処理を実行し、細胞集団を評価する(評価ステップ)。また、算出した指標について、評価部12により上述したOVL算出処理を実行し、OVLを算出する(オーバラップ係数算出ステップ)。そして、スペキュラー画像、算出した指標、算出したOVL及び細胞集団の評価結果の少なくとも何れかを、表示部20に表示させる。
【0062】
図12は、表示部20の表示の一例を示す図である。
図12に示されるように、例えば表示部20上には、スペキュラー顕微鏡60で撮像したスペキュラー画像61、指標の名称と値とOVLが互いに関連付けられたチャート62、及び、各種のアイコンボタンが表示されている。ここでの指標は、ばね定数k、平均距離r
0、六角格子秩序変数Q
6、密度d、六角形率、アスペクト比、隣接細胞数及び膜厚を含んでいる。このような表示によれば、細胞集団を容易に評価ないし診断することができる。
【0063】
図13(a)は、密度dと良細胞率との関係を示すグラフである。
図13(b)は、ばね定数kと良細胞率との関係を示すグラフである。本実施形態において、密度dは、角膜内皮細胞を含む細胞集団における複数の細胞の粗密の度合いであり、良細胞率は、角膜内皮細胞を含む細胞集団中における品質が良好である割合である。
図13(a)及び
図13(b)に示されるように、密度d及びばね定数kの双方は、良細胞率に対して正に相関する。特にばね定数kにあっては、密度dに比べて、誤差成分が少ない。このことから、角膜内皮細胞を含む細胞集団の評価に際して、ばね定数kは、感度が良く、指標としての信頼性が高いことが分かる。
【0064】
図14(a)は、密度dとばね定数kとの関係を示すグラフである。
図14(b)は、密度dのOVLとばね定数kのOVLとを比較評価するグラフである。
図14(b)の横軸は、密度差d
diff及びばね定数差k
diffである。密度差d
diff及びばね定数差k
diffの何れかには、上記の尺度補正が施されている。
図14(a)に示されるように、ばね定数kは、密度dとの対比において誤差成分が少ないことが分かる。
図14(b)に示されるように、ばね定数kは、密度dとの対比においてOVLが非常に小さく、繊細な指標であることが分かる。これにより、角膜内皮細胞を含む細胞集団の評価に際して、ばね定数kは、感度が良く、指標としての信頼性が高いことが分かる。
【0065】
図15(a)は、密度dと平均距離r
0との関係を示すグラフである。
図15(b)は、密度dのOVLと平均距離r
0のOVLとを比較評価するグラフである。
図15(b)の横軸は、密度差d
diff及び平均距離差r
0_diffである。密度差d
diff及び平均距離差r
0_diffの何れかには、上記の尺度補正が施されている。
図15(b)に示されるように、平均距離r
0は、角膜内皮細胞を含む細胞集団の評価に際して、密度dとの対比においてOVLが小さい場合が多く、繊細な指標であることが分かる。
【0066】
なお、評価部73は、指標算出部72で算出した指標に基づいて、撮像画像を撮像した時点よりも将来においての細胞集団の品質を予測してもよい。すなわち、上述した評価ステップでは、上述した指標算出ステップで算出した指標に基づいて、スペキュラー画像を撮像した撮像時点よりも将来においての細胞集団の品質を予測してもよい。これにより、細胞集団の予後予測に対応できる。本実施形態では、例えば以下に説明するように、特に眼の細胞を注入治療した後での予後予測にも対応できる。
【0067】
図16は、角膜移植後における6人の患者の角膜内皮細胞の状態を示す各図である。
図16中においては、移植時を基準に(0か月として)示している。
図16(a)は、各患者の角膜内皮細胞の密度dと時間との関係を示すグラフである。
図16(b)は、各患者の角膜内皮細胞についての3か月時点の密度dと3か月時点のばね定数kとの関係を示すグラフである。
図16(c)は、各患者の角膜内皮細胞についての24か月時点の密度dと3か月時点のばね定数kとの関係を示すグラフである。
図16(d)は、各患者の角膜内皮細胞についての3か月時点の密度dのOVLと3か月時点のばね定数kのOVLとを比較評価するグラフである。
図16(e)は、各患者の角膜内皮細胞についての24か月時点の密度dのOVLと3か月時点のばね定数kのOVLとを比較評価するグラフである。
図16(d)及び
図16(e)の横軸は、密度差d
diff及びばね定数差k
diffである。密度差d
diff及びばね定数差k
diffの何れかには、上記の尺度補正が施されている。
【0068】
図16(a)に示されるように、3か月時点では、全患者の密度dに差はみられないものの、24か月時点では、数名の患者の密度dが著しく低下している。
図16(d)に示されるように、3か月時点においては、密度dは、OVLが高く、細胞集団の評価の感度が低いことがわかる。
図16(e)に示されるように、密度dは、その低下が実際に顕著化した24か月時点になって、OVLが低くなり、細胞集団の評価の感度が高まっている。これらにより、3か月時点においては、密度dを指標として細胞集団を評価した場合、長期予後の細胞品質及び組織品質の低下までは判断できないことがわかる。
【0069】
一方、
図16(b)及び
図16(c)に示されるように、3か月時点のばね定数kは、3か月時点及び24か月時点の密度dに対して、誤差成分が少ない。
図16(d)に示されるように、3か月時点において、ばね定数kは、OVLが十分に低く、細胞集団の評価の感度が高いことがわかる。つまり、3か月時点において、ばね定数kを指標として細胞集団を評価することで、密度dからでは判断し得なかった長期予後の細胞品質及び組織品質の低下までを予測することができる。よって、ばね定数kを指標として細胞集団を評価する場合、例えば3か月時点の経過観察にて、長期予後に低品位化する可能性が高い細胞集団を分離することが可能となる。なお、このような長期予後の細胞品質及び組織品質の予測に関して、対象となる細胞によっては、平均距離r
0及び六角格子秩序変数Q
6を指標としても同様な結果が得られることが想定できる。
【0070】
以上、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果、すなわち、細胞集団の品質を定量的に評価することが可能となる等の効果を奏する。また、本実施形態では、薬剤・眼科手術・コンタクトレンズ等による角膜内皮障害の発症・進展予測が可能になる。例えば眼科手術前のスクリーニング検査やコンタクトレンズ外来等の眼科一般における角膜内皮診断への応用が可能である。
【0071】
図17(a)は、第1実施形態に係るin vitro(培養細胞)における密度dと良細胞率との関係を示すグラフである。
図17(b)は、第1実施形態に係るin vitroにおけるばね定数kと良細胞率との関係を示すグラフである。密度dは、角膜内皮細胞を含む細胞集団C1における複数の細胞の粗密の度合いである。良細胞率は、角膜内皮細胞を含む細胞集団C1中における品質が良好である割合である。図中においてr
2は、決定係数である。
【0072】
図17(a)及び
図17(b)に示されるように、密度d及びばね定数kの双方は、良細胞率に対して正に強く相関する。このことから、細胞集団C1の評価に際して、ばね定数kは、指標としての信頼性が(密度と同程度に)高いことがわかる。
【0073】
図18は、第1実施形態に係るin vitroにおける密度dとばね定数kとの関係を示すグラフである。
図18に示されるように、密度dとばね定数kとは正に強く相関することから、細胞集団C1の評価に際して、ばね定数kは、密度dと同様に用いることができることがわかる。
【0074】
図19は、第1実施形態に係るin vitroにおける密度dと平均距離r
0との関係を示すグラフである。
図19に示されるように、密度dと平均距離r
0とは正に強く相関することから、細胞集団C1の評価に際して、平均距離r
0は、密度dと同様に用いることができることがわかる。
【0075】
図20(a)は、第2実施形態に係るin vivo(再生角膜)における密度dと良細胞率との関係を示すグラフである。
図20(b)は、第2実施形態におけるばね定数kと良細胞率との関係を示すグラフである。
図20(a)及び
図20(b)に示されるように、密度d及びばね定数kの双方は、良細胞率に対して正に相関する。このことから、細胞集団C1の評価に際して、ばね定数kは、感度がよく、指標としての信頼性が高いことがわかる。
【0076】
図21は、第2実施形態に係るin vivoにおける密度dとばね定数kとの関係を示すグラフである。密度dとばね定数kとは正に強く相関することから、角膜内皮細胞を含む細胞集団C1の評価に際して、ばね定数kは、密度dと同様に用いることができることがわかる。
【0077】
図22は、第2実施形態に係るin vivoにおける密度dと平均距離r
0との関係を示すグラフである。
図22に示されるように、密度dと平均距離r
0とは正に強く相関することから、角膜内皮細胞を含む細胞集団C1の評価に際して、平均距離r
0は、密度dと同様に用いることができることがわかる。
【0078】
図23は、第1実施形態に係るin vitroの結果と第2実施形態に係るin vivoの結果との関係を示す各図である。
図23(a)は、第1実施形態に係るin vitroの密度dと第2実施形態に係るin vivoの密度dとの関係を示すグラフである。
図23(b)は、第1実施形態に係るin vitroのばね定数kと第2実施形態に係るin vivoの密度dとの関係を示すグラフである。
図23(c)は、第1実施形態に係るin vitroの密度dを変数とし、第2実施形態に係るin vivoの密度dが2000を下回る場合を真として行ったROC解析の結果を示すグラフである。
図23(d)は、第1実施形態に係るin vitroのばね定数kを変数とし、第2実施形態に係るin vivoの密度dが2000を下回る場合を真として行ったROC解析の結果を示すグラフである。
【0079】
図23(a)〜
図23(d)に示される決定係数及びROC曲線下面積から分かるように、ばね定数kは、密度dと同等の成績を有することがわかる。このことから、第1実施形態に係るin vitroにおいてばね定数kを用いれぱ、密度dを用いるのと同等の精度で、第2実施形態に係るin vivoの密度dを予測できることがわかる。つまり、ばね定数kが有用であることがわかる。
【0080】
ROC(Receiver Operating Characteristics:受信者操作特性)解析とは、信号処理の概念である。ある変数を用いて正常と異常との二項分類を行うとき、その変数の分類精度の測度となる。例えば、ある検査の結果から得られる数値を用いて、被検査群を陽性と陰性とに二項分類する場合を考える。この検査数値に対してある閾値を導入すると、閾値以上を陽性、閾値未満を陰性と判定するとき、真の陽性者を正しく陽性として補足する割合(感度)、真の陰性者を正しく陰性として補足する割合(特異度)が得られる。閾値を媒介変数として単調に変化させながら、横軸に偽陽性率(=1−特異度)、縦軸に感度をプロットすると、曲線が得られる(ROC曲線)。このとき、曲線下面積は0から1までの値をとり得るが、曲線下面積が1に近いほど、使用した変数が被検査群をより正確に二項分類する性能を有することを示す。
【0081】
評価部12は、平均距離r
0、ばね定数k及び六角格子秩序変数Q
6の少なくとも何れかを含む指標を変数としてROC解析を行うROC解析処理を実行する。つまり、評価部12により、指標を変数としてROC解析処理を実行し、ROC解析を行う(ROC解析ステップ)。これにより、ROC解析を利用して指標を評価することができる。
【0082】
図24は、角膜移植後における12人の患者の角膜内皮細胞の状態を示す各図である。
図24(a)は、密度dと時間との関係を示すグラフである。
図24(b)は、6か月時点の密度dと24か月時点の密度dとの関係を示すグラフである。
図24(c)は、6か月時点のばね定数kと24か月時点の密度dとの関係を示すグラフである。
図24(d)は、24か月時点の密度dが1000以下となる症例を、6か月時点の密度dで判定した場合のROC曲線のグラフである。
図24(e)は、24か月時点の密度dが1000以下となる症例を、6か月時点のばね定数kで判定した場合のROC曲線のグラフである。
図24(a)では、散布図及び箱ひげ図で密度dの推移が表されている。
【0083】
図24(a)に示されるように、3か月時点では、全患者の密度dに差はみられないものの、24か月時点では、数名の患者の密度dが著しく低下している。
図24(b)に示されるように、6か月時点での密度dと24か月時点での密度dとは、互いに無相関である。
図24(c)に示されるように、6か月時点でのばね定数kと24か月時点での密度dとは、弱く相関している。つまり、6か月時点では密度dよりもばね定数kを用いるほうが、24か月時点での密度dをより正確に予測できることがわかる。
【0084】
一方、ROC解析の結果、
図24(d)に示されるように、6か月時点の密度dを変数に用いた場合、曲線下面積は小さく、細胞集団の評価の感度が低いことがわかる。
図24(e)に示されるように、6か月時点のばね定数kは、曲線下面積が大きく、細胞集団の評価の感度が高まっている。つまり、6か月時点において、ばね定数kを指標として細胞集団を評価することで、密度dからでは判断し得なかった長期予後の細胞品質及び組織品質の低下までを予測することができる。よって、ばね定数kを指標として細胞集団を評価する場合、例えば6か月時点の経過観察にて、長期予後に低品位化する可能性が高い細胞集団を分離することが可能となる。なお、このような長期予後の細胞品質及び組織品質の予測に関して、対象となる細胞によっては、平均距離r
0及び六角格子秩序変数Q
6を指標としても同様な結果が得られることが想定できる。
【0085】
図25は、筋繊維の断面画像に自動抽出された細胞位置及び輪郭を重ねて表示した図である。
図25中の断面画像については、「“Multiple Sclerosis Affects Skeletal Muscle Characteristics”、Inez Wens, et al.、PLoS ONE 9, 9, e180158 (2014)、doi:10.1371/journal.pone.0108158」を参照している。
図25中の断面画像は、平滑筋繊維の断面の染色画像である。事前に自動抽出された細胞の位置の情報から、ばね定数kが0.00051、平均距離r
0が72、六角格子秩序変数Q
6が0.18であることが求められた。筋繊維の断面のような構造に対しても、構成要素1つ1つの配置から同様に評価することもできる。このように、その種類に制限されず、多様な対象に対して構造を評価することができる。
【0086】
以上、実施形態について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態に限られるものではない。
【0087】
上記実施形態において、評価の対象となる細胞集団に含まれる細胞は、特に限定されるものではない。細胞としては、角膜内皮細胞、上皮系細胞、肝細胞、又はこれらの何れかの培養細胞であってもよい。なお、上皮系細胞としては、例えば、角膜上皮細胞、小気道上皮細胞、乳腺上皮細胞、もしくは網膜色素上皮細胞等が挙げられる。
【0088】
上記第1実施形態では、角膜内皮細胞の移植前の培養細胞における品質評価に適用され、上記第2実施形態では、移植後の角膜内皮細胞の品質評価及び予後予測に適用されているが、本発明の一側面は、術前及び術後の両方に適用可能なものである。すなわち、本発明の一側面によれば、術前及び術後の両方の細胞集団の定量的評価を、品質に基づく同じ指標により行うことができる。術前及び術後の両方に適用できる画像診断プラットフォームを確立できる。細胞移植治療における術前工程管理と予後診断と予後予測とに適用可能である。臨床眼科学における診断の定量標準化ないし細胞移植型再生医療における工程管理等、幅広い分野での応用が見込まれる。
【0089】
上記実施形態では、平均距離r
0及びばね定数kを算出する際、複数の細胞の中から選択される一対の細胞の組合せ全てのうち、対象領域における最外周の細胞が含まれる組合せを除いたものについて、その重心位置間距離を横軸としたヒストグラムを生成しているが、これに限定されない。例えば、対象領域における最外周の細胞が含まれる組合せを除かずに、複数の細胞の中から選択される一対の細胞の組合せ全てについて、その重心位置間距離を横軸としたヒストグラムを生成してもよい。
【0090】
上記実施形態では、六角格子秩序変数Q
6を算出する際、上式(4),(5)により、対象領域における最外周の細胞を除いた任意の細胞iについての六角格子秩序変数Q
i6を算出しているが、これに限定されない。例えば、対象領域における最外周の細胞を除かずに、任意の細胞iについての六角格子秩序変数Q
i6を算出してもよい。上記実施形態では、指標の感度は、OVLを利用して把握してもよいし、これに代えてもしくは加えて、ROC解析を利用して把握してもよい。上記において、ばね定数は、例えば「弾性ポテンシャル曲率」とも称される。
【0091】
上記実施形態では、細胞評価プログラムP1は、コンパクトディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ又は半導体メモリ等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体に記録することができる。つまり、本発明の一態様は、細胞評価プログラムP1を記録するコンピュータ読取可能な記録媒体であってもよい。
【0092】
本発明の一側面に係る細胞評価装置は、複数の細胞を含む細胞集団の品質を評価する細胞評価装置であって、前記細胞集団の撮像画像に基づいて、複数の前記細胞が詰まっている程度を表す平均距離、複数の前記細胞の間の距離が揃っている程度を表すばね定数、及び、複数の前記細胞の配置が正六角形に近い程度を表す六角格子秩序変数の少なくとも何れかを含む指標を算出する指標算出部と、前記指標算出部で算出した前記指標に基づいて、前記細胞集団を評価する評価部と、を含み、前記平均距離及び前記ばね定数は、ボルツマン分布を利用して得られた関数であって複数の前記細胞の動径分布関数に基づくポテンシャル関数に、二次曲線フィッティングを施して求められ、前記六角格子秩序変数は、複数の前記細胞のうちの1つの細胞を中心にして当該細胞に最も近い6つの細胞で形成される六角形の6つの中心角に基づき求められていてもよい。
【0093】
本発明の一側面に係る細胞評価プログラムは、複数の細胞を含む細胞集団の品質を評価する細胞評価プログラムであって、前記細胞集団の撮像画像に基づいて、複数の前記細胞が詰まっている程度を表す平均距離、複数の前記細胞の間の距離が揃っている程度を表すばね定数、及び、複数の前記細胞の配置が正六角形に近い程度を表す六角格子秩序変数の少なくとも何れかを含む指標を算出する指標算出処理と、前記指標算出処理で算出した前記指標に基づいて、前記細胞集団を評価する評価処理と、をコンピュータに実行させ、前記平均距離及び前記ばね定数は、ボルツマン分布を利用して得られた関数であって複数の前記細胞の動径分布関数に基づくポテンシャル関数に、二次曲線フィッティングを施して求められ、前記六角格子秩序変数は、複数の前記細胞のうちの1つの細胞を中心にして当該細胞に最も近い6つの細胞で形成される六角形の6つの中心角に基づき求められていてもよい。