【実施例】
【0078】
[実施例1]
以下、実施の形態による構造物の劣化予測処理装置Aを用いた劣化予測の実施例について説明する。
【0079】
(実橋における劣化予測の実施例)
上記において、点検結果を用いた劣化予測の補正方法と点検結果が多いほど誤差の範囲が狭くなり、劣化予測の精度が向上する仮説を示した。ここでは高知県の点検データを用いて、実際の橋梁の劣化予測と点検結果を用いた補正と劣化予測の精度について検証する。
【0080】
(1)高知県における点検システム概要について
点検データは高知県で5年に1回実施する定期点検のデータを用いる。高知県では職員による点検を実施しており、平成31年3月現在で、2順目(2回目)の点検を実施している状況である。
【0081】
高知県の点検システムでは、
図10および
図11に示す指標によって、劣化度を判定する。特許文献1の
図1や
図4(本願)に示す様な要素毎に劣化度を集計することで、橋梁毎の劣化のばらつきの情報を得ることができる。なお、本論文の解析は高知県管内の橋梁の中で、点検結果が3回以上データベースに登録されているPC橋の「片粕大橋」、「荷滝橋」、「轟崎橋」、「熊野神代橋」等を対象として実施した。それらの実橋の地図に示した図が
図12である。
劣化予測処理は、点検結果の測定誤差および時間誤差を考慮した上で、点検結果による劣化予測の補正過程を示す。
【0082】
また、点検で補正しない劣化予測と1回目点検で補正した劣化予測、1回目と2回目点検結果で補正した劣化予測、及び1回目〜3回目点検結果で補正した劣化予測の結果と3回目点検結果との比較による精度検証について説明する。
【0083】
(2)実橋における点検結果
2−1)橋梁(解析)諸元
「片粕大橋」、「荷滝橋」、「轟崎橋」、「熊野神代橋」は、1973年〜1998年に架設されたPC橋である。また、詳細な構造図や配筋図が存在しないため、建設省標準図集や同じ示方書(S36年プレストレストコンクリート道路橋示方書)、S43年プレストレスとコンクリート道路橋示方書により設計された同規模の類似橋梁の設計図等を参考に、必要な諸元を想定した上で解析を実施する。表6に解析諸元を示す。
【0084】
【表6】
【0085】
2−2)測定誤差を考慮した1回目点検結果について
解析対象の4橋の点検実施年は表7に示す通りとなっている。
【0086】
【表7】
【0087】
1回目点検は「片粕大橋」において2008年(供用24年)、「荷滝橋」は2009年(供用33年)、「轟崎橋」は2010年(供用37年)、「熊野神代橋」は2008年(供用10年)に1回目の点検を実施している。
2回目以降の点検は、基本的に1回目点検から5年経過毎に実施することとなるが、点検計画上5年未満の橋梁も存在する。
【0088】
上述した様に、ここで得られた点検結果は測定誤差を含んでいると考えられることから表1に示す測定誤差の補正行列により、得られた点検結果を補正する。
なお、本発明の劣化予測の劣化速度は1回目点検結果を用いて設定するため、1回目点検結果に測定誤差を考慮した劣化度分布を設定する。
補正の例として、ここでは表8に片粕大橋における1回目点検結果、表9に測定誤差の補正行列により補正した点検結果を示す。
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】
また、本発明の劣化予測の対象となる1から3回目の点検結果を表10に示し、測定誤差を考慮して補正した1〜3回目の点検結果を表11に示す。
【0092】
【表10】
【0093】
【表11】
【0094】
さらに上記において説明したように、測定誤差を考慮した1〜3回目の点検結果に対して補正が必要になる。
補正は、1回目から2回目、あるいは、2回目から3回目点検において、劣化度が2段階以上進んでいるものが物理現象の範囲か範囲外か否かを確認し、範囲外の点検結果は除外する。
確認方法は、考えられる最大劣化速度を考慮した劣化予測との比較により行う。
【0095】
表11は、劣化予測の本数を示しており、2段階以上劣化が進んだ結果と劣化予測の比較ができる様にしている。
ここで、劣化度が2段階以上進む現象に対応する劣化予測が0本であるもの(太字箇所)は範囲外と考える。範囲外を除外し劣化度分布の合計が1.000になるように割り戻した結果を表12に示す。
【0096】
【表12】
【0097】
(3)点検結果を用いた劣化予測の補正
3−1)概要
次に、解析対象橋梁に対して点検結果を用いて劣化予測の補正を実施する。点検結果を用いた劣化予測の補正方法は上記の実施の形態で説明した方法を用いる。
また、ここでは、片粕大橋について点検で補正しない劣化予測と、1回目点検で補正した劣化予測、1回目と2回目点検結果で補正した劣化予測、及び1回目〜3回目点検結果で補正した劣化予測を、点検結果と比較する具体的な例で示した。そして、補正する点検回数が劣化予測に与える精度を検証する。
他の解析対象橋梁については簡単に説明する。
【0098】
3−2)初期解析における劣化速度係数の設定
本発明では、確定的な劣化予測に対して任意の倍数を与えて実橋のばらつきに補正することを提案している。従って、解析対象橋梁の確定的な劣化予測に「0倍速〜実橋の劣化分布を網羅できる範囲の倍速」を乗じて任意にばらつかせ、測定誤差行列で補正した点検結果を用いて劣化予測を補正する流れとなる。
【0099】
ここで、上記の「実橋の劣化分布を網羅できる範囲の倍速」とは、ばらつかせた劣化予測で最も進行している劣化度と実橋の点検結果で最も進行している劣化度が同じになる倍速をいう。
【0100】
なお、実橋の劣化分布は点検結果から得られるが、点検結果には上述した様に測定誤差と時間誤差を考慮する必要がある。すなわち、「実橋の劣化分布を網羅できる範囲の倍速」は、点検実施時から4年遡った点検結果の劣化分布と、劣化予測の劣化分布を比較して決めると、4年前の供用20年目に1回目点検結果で得られた劣化分布となる可能性を考慮する必要性がある。
【0101】
1回目点検結果では、表9に示す様に、eの割合が6.1%存在する。従って、時間誤差を考慮する場合、供用20年目で劣化度eが存在することを考慮する必要がある。一方劣化予測は、1倍速で供用20年目を予測すると
図13に示すように、劣化速度が遅いためeは存在しない。
【0102】
従って、実橋の劣化分布を網羅できるように任意の倍数を劣化速度に乗じる必要がある。倍数を徐々に上げていった結果、供用20年目で劣化度eが存在するためには、倍数を7とする必要がある。従って、片粕大橋においては「0倍〜7.0倍まで0.07倍間隔(100要素)でばらつかせる」ことによって、「0倍速〜実橋の劣化分布を網羅できる範囲の倍速」でばらつかせたことになる。
【0103】
図14は、片粕大橋の4年前の時間誤差を考慮した劣化予測を示す図であり、劣化速度補正係数7倍の場合の図である。
図14に示すように、解析結果の劣化分布は点検結果の劣化分布を網羅することができる。本発明では、この任意の倍数のことを「劣化速度補正係数」と称する。
なお、同様に他の解析対象橋梁に対して劣化速度補正係数を設定した結果、荷滝橋の劣化速度係数は0.1、轟崎橋の劣化速度係数は5、熊野神代橋の劣化速度係数は717となった。
【0104】
3−3)片粕大橋の劣化予測の精度について
次に、1〜3回目の点検結果に対し、劣化予測の適合度を確認する。表12に示す対象とする点検結果に対し、太字で示すように劣化予測が存在しない劣化度がある。これは100本の劣化予測では予測の間隔が大きく、予測することができなかったことを示している。予測できなかった劣化度を除いて劣化度分布を集計した結果を表13に示す。
【0105】
【表13】
【0106】
表13に示すように、劣化度の合計は0.913となる。これが劣化予測を100本にばらつかせた場合の劣化予測の精度となる。
【0107】
3−4) 片粕大橋の劣化予測結果について
片粕大橋について、上述した結果を整理して劣化予測の精度検証を行う。以上に説明した手法を用いて、点検で補正しない劣化予測と1回目点検で補正した劣化予測、1回目と2回目点検結果で補正した劣化予測、及び1回目〜3回目点検結果で補正した劣化予測の結果を表14から表17までに示す。
【0108】
【表14】
【0109】
【表15】
【0110】
【表16】
【0111】
【表17】
【0112】
また、表12に示す片粕大橋の点検結果とそれぞれの劣化予測の結果を重ね合わせたグラフを
図15に、点検結果と劣化予測の劣化度の割合について、小さい値÷大きい値×点検結果の確率関数を合計した整合度を
図16に示す。
【0113】
劣化予測の精度について、表14に示す様に、まず点検結果で補正しない劣化予測は100本の劣化予測のうち、1本毎の劣化表現率は全て同じ0.010を初期値としている。
図15に示すように、全体的に点検結果と整合している度合いが少なく、
図16に示すように、整合度は0.235となっている。
【0114】
同様に、1回目点検のみで補正した劣化予測は点検結果で補正しない点検結果に対して大幅に精度が向上していることが分かる。aaa、dee及eeeと言った割合が比較的大きい劣化度に対しては、ある程度整合していることが分かる。
ただし、bbb、bccと言った比較的割合の小さい劣化度に対して、点検結果はほとんど割合が無いのに対し、劣化予測は3.0%程度の割合がでており、整合していない。
【0115】
図16の整合度は0.802となっていることから、8割程度の精度となっている。
点検1回目と2回目で補正した劣化予測は、
図15を見ると、点検1回目で補正した劣化予測に見られたbbbやbccと言った割合の低い劣化度の不整合に対して改善が見られており、点検結果と同様にほとんど割合が無い結果を得ている。
ただし、劣化度の割合が大きいaaaやdee及びeeeに対して、やや点検結果との不整合が見られる。
【0116】
図16に示すように、全体的な整合度は0.818であり、結果的には1回目点検で補正した劣化予測と比較して大きな精度向上とはなっていない。
最後に、点検1〜3回目の点検で補正した劣化予測は、どの劣化度に対しても点検結果と整合している。しかし、aabやabcといった劣化度に対し、点検結果では割合があるが、これらの劣化度を予測することができなかったため、図-16に示す整合度は0.913となっている。
【0117】
しかし、片粕大橋において、点検結果を用いて劣化予測を補正することで、劣化予測の精度が向上する結果を得ており、補正する点検回数が増えることで劣化予測精度が向上していることが分かった。
【0118】
次に片粕大橋について1〜3回目の点検結果で補正した劣化予測のaabやabcといった劣化度を予測できなかった課題に対して、要素数を増やし1000要素で予測した場合の精度への影響を検証する。
解析結果を表18に、点検結果と1回目〜3回目点検結果で補正した劣化予測100要素の場合及び1000要素の場合の比較を
図17に、100要素の場合と1000要素の場合の整合度を
図18に示す。
【0119】
【表18】
【0120】
点検1回目〜3回目点検結果で補正した劣化予測について100要素の場合と1000要素とを比較すると、表17と表18及び
図17を見ると、ほぼ傾向は同じであるが、1000要素に増やすことによって、abbやbbcといった100要素では予測できなかった割合の低い劣化度に対して、1000要素では予測できるようになっている。しかし、その割合は合計で0.066程度であり、
図18に示す様に100要素で0.913だった整合度が1000要素では0.920とわずかな精度向上しか見込めない結果となった。
【0121】
以上の結果から、片粕大橋の事例では要素数を、100要素を1000要素に増やしても、大幅な精度向上が見込めない結果となることが分かった。従って、100要素程度の分割でも十分であることがわかった。
【0122】
3−5) 荷滝橋、轟崎橋、熊野神代橋の補正結果
荷滝橋、轟崎橋、熊野神代橋について、片粕大橋と同様に、1〜3回目点検結果の補正前と補正後及び、点検で補正しない劣化予測と1回目点検で補正した劣化予測、1回目と2回目点検結果で補正した劣化予測、及び1回目〜3回目点検結果で補正した劣化予測の結果と点検結果との比較による精度検証を行った。
図19は、荷滝橋における点検結果と劣化予測の整合度を示す図である(100要素)。
図20は、轟橋における点検結果と劣化予測の整合度を示す図である(100要素)。
図21は、熊野神代橋における点検結果と劣化予測の整合度を示す図である(100要素)。それぞれ、
図16に対応する図である。
【0123】
詳細は省略するが、点検結果の補正前、補正後の比較、劣化予測の結果の比較を行ったところ、荷滝橋、轟崎橋、熊野神代橋とも、点検結果で補正しない場合の劣化予測の精度は良く無いことが分かった。
一方、1回目点検結果で補正することで大幅に予測精度が向上し、1,2回目点検結果及び1〜3回目点検結果で補正する毎に予測精度が向上しており、片粕大橋と概ね同様の傾向を示していることが分かった。また、実橋における点検結果と劣化予測の整合度は、
図16と同様である。従って、本発明の予測補正技術には、汎用性があることがわかった。
【0124】
(まとめ)
以上の劣化予測の解析結果と点検結果についてまとめる。
(1)片粕大橋、荷滝橋、轟崎橋、熊野神代橋の4橋は点検結果で補正しない劣化予測の精度は悪くなっている。
これは、本実施例の劣化予測技術は、測定誤差や時間誤差を考慮して広範囲を予測対象としており、広範囲の劣化分布のうち、最も劣化速度が速いものを対象に劣化速度係数を設定し、確定的な劣化予測をばらつかせている。
【0125】
これら4橋の実際の劣化分布において、劣化速度が速い割合は小さいが、点検結果で補正しない劣化予測は均等な割合となるため、実際の劣化分布との乖離は大きくなる傾向になると考えられる。
【0126】
(2)4橋は、より多くの点検結果で補正した劣化予測の精度が良くなることがわかった。
図8,
図9に示すように、点検結果が多くなる毎に劣化の経緯が明確になる。本発明の劣化予測は点検結果と整合する劣化予測を残して密度を増やし、整合しない劣化予測は除外している。
【0127】
従って、劣化の経緯が整合する劣化予測が残り、その密度が濃くなることによって、精度が向上していると考えられる。
【0128】
(3)片粕大橋において、劣化予測の本数を100本とした場合と1000本とした場合で予測精度の比較を行い、大きな差が無いことを確認した。
【0129】
これは、表17、表18に示すように、本発明の劣化予測は劣化速度係数を乗じることから、劣化の速度が速い分布に対して劣化予測本数が多くなり、その場合、劣化速度が遅い分布に対しては劣化予測本数が少なくなる傾向にある。
【0130】
片粕大橋のように、3回の点検による劣化の経緯において、「aab」、「abb」や「abc」のような劣化速度が遅い範囲に対しては劣化予測本数が少なくなり、劣化予測が点検結果の経緯と整合しにくい傾向となる。これは、劣化予測の本数を100本から1000本にしても多少の精度向上はあるが、傾向としては変わらないためと考えられる。
【0131】
(結論)
本発明は、実用的なBMSを開発する際の課題の一因となっていた、劣化予測にばらつきを考慮し、さらに、測定誤差や時間誤差を考慮した点検結果を用いて劣化予測補正モデルを提供するものである。
【0132】
(1)本発明では、確定的な予測に対してばらつきを与え、点検結果を用いて劣化予測のばらつきの分布を点検結果のばらつきの分布に補正する方法を提示した。ばらつきの考慮方法は確定的な劣化予測を0倍から実橋の劣化を網羅できる任意の倍数にばらつかせる方法を提案する。
また、ばらつかせるだけでは点検結果の劣化分布と整合しないため、ばらつかせた劣化予測に「劣化表現率」と言う重みを与え、それを点検結果の分布に合うように補正する方法を提案する。
【0133】
以上により、劣化予測の密度を変えることで、点検結果の劣化分布と整合した劣化予測を可能とした。
【0134】
(2)補正に用いる点検結果には測定誤差や時間的な誤差が含まれているため、点検結果に対して測定誤差を考慮するとともに、いつその劣化状態になったかの時間誤差を考慮した。
これにより、物理現象として起こり得る劣化速度を網羅的に予測できることがわかった。
【0135】
(3)高知県管内の塩害を受ける橋梁の中から、3回目点検を実施している片粕大橋を始めとした4橋に着目して、本発明の劣化予測モデルを適用して解析を行った。
確定的な劣化予測に与える任意倍数を示すとともに、点検結果で補正した劣化予測は、点検結果で補正しない劣化予測よりも予測精度が向上することがわかった。
また、点検結果による補正についても回数が増える毎に予測精度が向上することがわかった。
【0136】
(補足)本発明で用いた劣化予測モデル
本発明で用いる劣化予測モデルはこれまでの既往研究成果を用いて構成している。劣化予測モデルは飛来塩分ひび割れモデル、剥落モデルから構成される。飛来塩分量算出モデル、塩化物イオン移動モデル、腐食モデル、水分の移動モデルは、1次元の物質移動方程式を用いる。量算出モデルは小窪モデル(小窪 幸恵,岡村 甫:海水飛沫の発生過程に着目した飛来塩化物イオン量の算定モデル,土木学会論文集B, Vol.65 No.4, pp.259-268, 2009.8)を用いる。
【0137】
塩化物イオン・腐食モデルは環境の変化、電気防食や補修効果を考慮できる電気化学腐食モデル(前川宏一,石田哲也,岸利治:Multi-Scale Modeling of Structural Concrete9)を用いる。
【0138】
ひび割れモデルはFEM 解析と腐食ひび割れ実験から求めた提案式(Lukuan Q., 関 博:鉄筋腐食によるコンクリートのひび割れ発生状況及びひび割れ幅に関する研究,土木学会論文集,No.669/V-50, pp.161-171, 2001.)を用いる。
剥落モデルは腐食深さが限界値を超えるとかぶりが剥落することをFEM解析と実験から求めた提案式(鳥取誠一,宮川豊章:初期塩化物イオンの影響を受ける場合の鉄筋腐食に関する劣化予測,土木学会論文集,No.781/V-65, pp.157-170, 2005. (2020. 8.14 受付)を用いる。
【0139】
本明細書における処理および制御は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)によるソフトウェア処理、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)によるハードウェア処理によって実現することができる。
【0140】
また、上記の実施の形態において、図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0141】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
また、本実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。尚、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0142】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また前記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。機能の少なくとも一部は、集積回路などのハードウェアで実現しても良い。
【0143】
(付記)
尚、本発明は、特許文献1に関する以下の開示および上記の記載に基づくその改良発明の開示を含む。
【0144】
(参考)
(発明1)
複数の面要素に分割されている実構造物について点検者が行った点検により把握された前記複数の面要素ごとのばらついた劣化状態である複数の面要素ごとのばらついた腐食量(mg/m
2)を把握する工程と、
分割した前記複数の面要素ごとの前記腐食量(mg/m
2)と構築時から前記点検を行ったときまでの経過時間(年)とに基づき、劣化予測速度(mg/m
2/時間)を表す曲線である劣化予測曲線を、横軸を構築時からの経過時間(年)、縦軸を累積腐食量(mg/m
2)として複数の面要素に分割されている前記実構造物について点検者が行った前記点検に基づいて表す工程と、
分割した前記複数の面要素ごとの前記劣化予測曲線1本あたりが表現している前記実構造物における表面積の割合を劣化表現率として把握し、確定的に算出した劣化予測速度を1倍速として、前記点検を行ったときにまったく劣化していない最も遅い劣化予測速度を0倍速とし、最も速い劣化速度として前記実構造物の劣化分布を把握した上で確定的に算出した劣化速度と比較し、累積腐食量(mg/m
2)から求められ累積腐食量(mg/m
2)が変換され、前記実構造物の劣化状態である劣化度を、分割した前記複数の面要素のすべてにわたって表現できる倍速とし、確定的に算出した劣化予測速度に、最も遅い劣化速度と最も早い劣化速度の間で前記実構造物の劣化分布に対応する間隔に相当する所定の間隔の倍率をそれぞれ掛けて、最も遅い劣化速度から最も早い劣化速度まで前記所定の間隔の倍率で刻んでばらつかせた複数の劣化表現率を得る工程と、
前記劣化予測曲線1本あたりの、前記ばらつかされた劣化表現率を前記実構造物について点検者が行った前記点検結果の劣化表現率に合うように補正することで、前記実構造物について点検者が行った前記点検結果と整合させる補正を行って前記劣化予測曲線1本あたりの、前記ばらつかされた劣化表現率を補正した劣化表現率を得る工程と、
前記実構造物の劣化状態を表す複数の劣化度に応じてそれぞれ所定の点数を定義し、定義した劣化度ごとの点数に、各劣化度の前記実構造物の面積割合を乗じ、その合計を劣化評点とする工程と、
分割した複数の面要素ごとの前記劣化評点を劣化予測速度を表す劣化評点曲線として、横軸を構築時からの経過時間(年)、縦軸を劣化評点として表す工程と、
前記劣化評点曲線のn年(nは2以上の整数)ごとに行われる点検時ごとに、
構造物の構築後所定の年数が経過してから行う点検の際に発生する「点検結果による測定誤差」について、点検を行う者が判定した劣化度と、専門家が判定した劣化度を比較することで分析し、あらかじめ把握されている、点検を行う者による測定誤差の傾向を用いて、点検を行う者が判定した劣化度についての点検結果を補正して得られた「点検結果による測定誤差」と、
前記点検時の劣化分布となるn年前の累積確率を0、前記点検時の劣化分布となる前記点検時の累積確率を1として、劣化予測が有する確率を{(1/n)×100}%とすることで得られた「時間的な誤差」
との範囲で囲まれる範囲を「誤差ボックス」として設定する工程と、
前記「誤差ボックス」の範囲に含まれる前記劣化予測に基づいて構造物の将来の劣化を予測する工程
を備えている
測定誤差、時間誤差を考慮した点検結果を用いた構造物の将来の劣化を予測する方法。
【0145】
(発明2)
コンピュータシステムによって構成されている劣化予測システムであって、
実構造物における分割した複数の面要素ごとの劣化予測速度(mg/m
2/時間)を表す曲線である劣化予測曲線を、横軸を構築時からの経過時間(年)、縦軸を累積腐食量(mg/m
2)として複数の面要素に分割されている前記実構造物について点検者が行った点検に基づいて表す処理を行う劣化予測曲線作成処理部と、
実構造物における分割した複数の面要素ごとの劣化予測曲線1本あたりが表現している前記実構造物における表面積の割合を劣化表現率として把握し、確定的に算出した劣化予測速度を1倍速として、前記点検を行ったときにまったく劣化していない最も遅い劣化予測速度を0倍速とし、最も速い劣化速度として前記実構造物の劣化分布を把握した上で確定的に算出した劣化速度と比較し、累積腐食量(mg/m
2)から求められ累積腐食量(mg/m
2)が変換され、前記実構造物の劣化状態である劣化度を、分割した前記複数の面要素のすべてにわたって表現できる倍速とし、確定的に算出した劣化予測速度に、最も遅い劣化速度と最も早い劣化速度の間で前記実構造物の劣化分布に対応する間隔に相当する所定の間隔の倍率をそれぞれ掛けて、最も遅い劣化速度から最も早い劣化速度まで前記所定の間隔の倍率で刻んでばらつかせた複数の劣化表現率を作成する処理を行う修正劣化表現率作成処理部と、
前記劣化予測曲線1本あたりの、前記ばらつかされた劣化表現率を前記実構造物について点検者が行った前記点検結果の劣化表現率に合うように補正することで、前記実構造物について点検者が行った前記点検結果と整合させる補正を行って前記劣化予測曲線1本あたりの、前記ばらつかされた劣化表現率を補正した劣化表現率を得る劣化予測曲線補正処理部と、
前記実構造物の劣化状態を表す複数の劣化度に応じてそれぞれ所定の点数を定義し、定義した劣化度ごとの点数に、各劣化度の前記実構造物の面積割合を乗じ、その合計を劣化評点とする処理を行う劣化評点演算処理部と、
分割した複数の面要素ごとの前記劣化評点を劣化予測速度を表す劣化評点曲線として、横軸を構築時からの経過時間(年)、縦軸を劣化評点として表す処理を行う劣化評点曲線作成処理部と、
前記劣化評点曲線のn年(nは2以上の整数)ごとに行われる点検時ごとに、
構造物の構築後所定の年数が経過してから行う点検の際に発生する「点検結果による測定誤差」について、点検を行う者が判定した劣化度と、専門家が判定した劣化度を比較することで分析し、あらかじめ把握されている、点検を行う者による測定誤差の傾向を用いて、点検を行う者が判定した劣化度についての点検結果を補正して得られた「点検結果による測定誤差」と、
前記点検時の劣化分布となるn年前の累積確率を0、前記点検時の劣化分布となる前記点検時の累積確率を1として、劣化予測が有する確率を{(1/n)×100}%とすることで得られた「時間的な誤差」
との範囲で囲まれる範囲を「誤差ボックス」として設定する処理を行う「誤差ボックス」設定処理部と、
前記「誤差ボックス」の範囲に含まれる前記劣化予測に基づいて構造物の将来の劣化を予測する処理部と
を備えている劣化予測システム。