【実施例】
【0046】
試験区分1(ポリカルボン酸系共重合体の製造)
・製造例1{ポリカルボン酸系共重合体(A−1)の製造}
蒸留水1687g、マレイン酸174g(1.5モル)及びα−アリル−ω−メトキシ−ポリ(n=33)オキシエチレン1526g(1.0モル)を温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器(以下、同様のものを使用した)に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて70℃に保ち、過硫酸ナトリウム25gを蒸留水100gに溶解した水溶液を投入して、ラジカル共重合反応を開始した。1時間後更に過硫酸ナトリウム25gを蒸留水100gに溶解した水溶液を投入して、3時間70℃に保持し、重合反応を終了した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH3に調整し、蒸留水にてポリカルボン酸系共重合体(A−1)の固形分を25質量%に調整して、その水溶液を得た。A−1をGPCにて分析したところ、質量平均分子量は6600であり、A−1の質量平均分子量は式1で示される単量体の質量平均分子量の4.3倍であった。
【0047】
・製造例2{ポリカルボン酸系共重合体(A−2)の製造}
蒸留水1397g、無水マレイン酸216g(2.2モル)及びα−メタリル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=20)オキシエチレン1273g(1.3モル)、アクリル酸 5g、メルカプトプロピオン酸4gを温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器(以下、同様のものを使用した)に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて90℃に保ち、35%過酸化水素22gを蒸留水141gに溶解した水溶液とL−アスコルビン酸8gを順次投入して、ラジカル共重合反応を開始した。2時間後に35%過酸化水素22gを蒸留水141gに溶解した水溶液とL−アスコルビン酸8gを順次投入し、2時間90℃に保持し、重合反応を終了した。その後、水酸化カルシウムを加えてpH4に調整し、蒸留水にてポリカルボン酸系共重合体(A−2)の固形分を25質量%に調整して、その水溶液を得た。A−2をGPCにて分析したところ、質量平均分子量は5000であり、A−2の質量平均分子量は式1で示される単量体の質量平均分子量の5.2倍であった。
【0048】
・製造例3{ポリカルボン酸系共重合体(A−3)の製造}
蒸留水1414g、マレイン酸93g(0.8モル)及びα−イソプレニル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=50)オキシエチレン1602g(0.7モル)、アリルスルホン酸ナトリウム2g、チオリンゴ酸12gを温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器(以下、同様のものを使用した)に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて85℃に保ち、35%過酸化水素22gを蒸留水31gに溶解した水溶液とL−アスコルビン酸8gを順次投入して、ラジカル共重合反応を開始した。1時間後にさらに35%過酸化水素22gを蒸留水31gに溶解した水溶液とL−アスコルビン酸8gを順次投入し、3時間85℃に保持し、重合反応を終了した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH5に調整し、蒸留水にてポリカルボン酸系共重合体(A−3)の固形分を25質量%に調整して、その水溶液を得た。A−3をGPCにて分析したところ、質量平均分子量は7300であり、A−3の質量平均分子量は式1で示される単量体の質量平均分子量の3.2倍であった。
【0049】
・製造例4{ポリカルボン酸系共重合体(A−4)の製造}
蒸留水3300g、マレイン酸174g(1.5モル)及びα−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリ(繰返し単位70)オキシエチレンポリ(繰返し単位2)(繰返し単位合計n=72)オキシプロピレン3258g(1.0モル)を温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器(以下、同様のものを使用した)に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて70℃に保ち、過硫酸ナトリウム30gを蒸留水120gに溶解した水溶液を投入して、ラジカル共重合反応を開始した。1時間後、更に過硫酸ナトリウム20gを蒸留水120gに溶解した水溶液を投入して、3時間70℃に保持し、重合反応を終了した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH4に調整し、蒸留水にてポリカルボン酸系共重合体(A−4)の固形分を25質量%調整して、その水溶液を得た。A−4をGPCにて分析したところ、質量平均分子量は8600であり、A−4の質量平均分子量が式1で示される単量体の質量平均分子量の2.6倍であった。
【0050】
・製造例5{比較のための共重合体(R−1)の製造}
無水マレイン酸147g(1.5モル)及びα−アリル−ω−メトキシ−ポリ(n=33)オキシエチレン1526g(1.0モル)を反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて80℃に保ち、アゾビスイソブチロニトリル12.8gを投入して、ラジカル共重合反応を開始した。4時間ラジカル共重合反応を行なった後、反応系に水300gを加えてラジカル共重合反応を停止した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7に調整し、蒸留水にて比較のための共重合体(R−1)の固形分を25質量%に調整して、その水溶液を得た。R−1をGPCにて分析したところ、質量平均分子量は30500であり、R−1の質量平均分子量は式1で示される単量体の質量平均分子量の20倍であった。
【0051】
・製造例6{比較のための共重合体(R−2)の製造}
蒸留水1216g、α−イソプレニル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=50)オキシエチレン1749gを温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器(以下、同様のものを使用した)に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて65℃に保ち、アクリル酸過硫酸ナトリウム1.0gを蒸留水8.7gに溶解した水溶液、メルカプトプロピオン酸1.9gを蒸留水7.8gに溶解した水溶液と、アクリル酸19.4gを蒸留水58.3gに溶解した水溶液をそれぞれ3時間かけて滴下した。1時間65℃に保持し、重合反応を終了した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7に調整し、蒸留水にて比較のための共重合体(R−2)の固形分を25質量%に調整して、その水溶液を得た。R−2をGPCにて分析したところ、質量平均分子量は38000の共重合体であり、R−2の質量平均分子量が式1で示される単量体の質量平均分子量の16.6倍であった。以上製造したポリカルボン酸系共重合体について、表1にまとめて示した。
【0052】
合成した各共重合体(A−1)〜(A−4)、(R−1)、(R−2)の質量平均分子量を下記測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定した。
【0053】
[測定条件]
装置:Shodex GPC−101
カラム:OHpak SB−G+SB−806M HQ+SB−806M HQ
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:0.7mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:ポリエチレングリコール
【0054】
【表1】
【0055】
表1において、
d−1:α−アリル−ω−メトキシ−ポリ(n=33)オキシエチレン
d−2:α−メタリル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=20)オキシエチレン
d−3:α−イソプレニル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=50)オキシエチレン
d−4:α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリ(繰返し単位70)オキシエチレンポリ(繰返し単位2)オキシプロピレン(繰返し単位の合計n=72)
e−1:マレイン酸
e−2:マレイン酸:アクリル酸=97:3(モル比)
e−3:アクリル酸
【0056】
試験区分2(セメント用混和剤の調製)
・実施例1〜12及び比較例1〜5{セメント用混和剤(P−1〜P−12、Pr−1〜Pr−5)の調製}
表2記載の内容の通りポリカルボン酸系共重合体とポリオキシアルキレン系化合物を混合してセメント用混和剤を調製した。
【0057】
【表2】
【0058】
表2において、
BE1:モノエチレングリコールモノブチルエーテル
BE2:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
BE3:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
BP2:ジプロピレングリコールモノブチルエーテル
BE2P2:ジプロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテル
ME3:α−メチル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=23)オキシエチレン
【0059】
試験区分3(超高強度コンクリート組成物の調製及び評価)
・実施例13〜24及び比較例6〜13{超高強度コンクリート組成物の調製}
下記の表3記載の配合条件で、各試験例の超高強度コンクリート組成物を以下のように調製した。100Lの二軸型強制練りミキサーにシリカフュームセメント(宇部三菱社製、比重=3.08、ブレーン値5600)、シリカフューム微粉末(エルケム社製の商品名マイクロシリカ940U、比重=2.20)及び細骨材(大井川水系砂、比重=2.58)を順次投入して15秒間空練りした後、表2記載のセメント用混和剤を、また結合材100重量部当たり0.05質量部の割合となるよう脂肪族ポリエーテル系消泡剤(竹本油脂社製の商品名AFK−2)を練り混ぜ水と共に投入し、配合条件のNo.1では10分間、No.2では15分間練り混ぜた。その後、粗骨材(岡崎産砕石、比重=2.68)を投入し、5分間練り混ぜた。セメント混和剤の使用量を調整して、目標スランプフローが65±3cmとなるようにした。空気量は3%以下となった。
【0060】
【表3】
【0061】
・超高強度コンクリート組成物の評価
調製した各例のセメント組成物について、凝結時間、練り混ぜ直後のスランプフロー、空気量及び粘性の評価、また、更に硬化体の自己収縮ひずみ及び圧縮強度を下記のように求めた。結果を表4にまとめて示した。
【0062】
・スランプフロー:JIS−A1150に準拠して測定した。
・空気量:JIS−A1128に準拠して測定した。
・自己収縮ひずみ:日本コンクリート工学協会の自己収縮研究委員会報告書の「コンクリートの自己収縮応力試験方法(案)」に準拠したが、ひずみの測定は埋め込み型ひずみゲージを用いて測定し、凝結始発以後のひずみ変化を自己収縮ひずみとした材齢28日について測定した。自己収縮ひずみの数値が小さいほど、自己収縮が小さいことを示す。一般に、水/結合材比の小さい配合の超高強度コンクリート組成物ほど自己収縮ひずみが大きくなる傾向があるため、自己収縮ひずみは水/結合材比が同じ超高強度コンクリート組成物間で比較する必要がある。
・圧縮強度:JIS−A1108に準拠し、材齢28日を測定した。
・凝結時間:JIS−A1107に準拠し測定した。
・粘性の評価:下記の基準とし、到達時間が短いものが良いとした。
配合条件1の場合:
スランプフロー50cm到達時間
◎:20秒未満
○:20秒以上30秒未満
△:30秒以上40秒未満
×:40秒以上
配合条件2の場合:
スランプフロー50cm到達時間
◎:30秒未満
○:30秒以上40秒未満
△:40秒以上50秒未満
×:50秒以上
【0063】
【表4】
【0064】
表4において、
※:セメント用混和剤の添加量を増やしても流動性が不足して目標のスランプフロー値が得られなかった。
【0065】
(結果)
実施例13〜24においては、ポリカルボン酸系共重合体及びポリオキシアルキレン系化合物を含むセメント用混和剤を用いることにより、比較例6〜13に比して、粘性、自己収縮ひずみ、圧縮強度のいずれにおいても優れた値を示すことが確認された。